(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態により説明する。なお、この実施形態は、発明の趣旨をよりよく理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0013】
[膜の洗浄方法]
本実施の形態に係る膜の洗浄方法は、焼却灰、溶融飛灰及びセメント製造プロセスダストの少なくとも1種を含む塩素含有廃棄物の水洗によって生じる洗浄排水の膜分離処理に用いられた膜の洗浄方法であって、前記膜を、アミノカルボン酸系キレート剤を含むキレート剤を含有するキレート剤洗浄液で洗浄する、膜の洗浄方法である。
【0014】
当該膜の洗浄方法によって膜の透過流速が向上する理由は明確ではないが、以下のとおりであると推定される。
従来、前述の特許文献3に関する説明で述べたとおり、膜を目詰まりさせる原因は主にカルシウムスケールであり、重金属も膜に付着しているものと考えられていた。
しかしながら、本発明者らが膜の付着物を詳細に分析した結果、焼却灰、溶融飛灰及びセメント製造プロセスダストの少なくとも1種を含む塩素含有廃棄物の洗浄排水を膜分離処理した場合、膜の付着物は、カルシウムスケールや重金属の他に、バリウムに起因するスケールも含有していることを見出した。また、本発明者らは、カルシウムスケールや重金属は、逆洗等によって容易に除去できるが、バリウムに起因する付着物は、逆洗や酸洗浄等では容易には除去できないことを見出した。
このバリウムに起因する付着物は硫酸バリウムと考えられ、膜に付着した硫酸バリウムは、前記特定のキレート剤洗浄液で洗浄することによって膜から除去され、膜の透過流速が向上するものと考えられる。
【0015】
<洗浄排水>
洗浄排水については、後述の塩素含有廃棄物の処理方法において説明する。
<膜>
本実施の形態に係る膜の洗浄方法に適用される膜には特に限定はなく、精密濾過膜(MF)、限外濾過膜(UF)及び逆浸透膜(RO)のいずれであってもよい。また、膜の構造は、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜、及び平膜のいずれであってもよい。
また、膜の材質についても特に限定はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セラミック等が挙げられる。
前述のとおり、この膜を用いて、焼却灰、溶融飛灰及びセメント製造プロセスダストの少なくとも1種を含む塩素含有廃棄物の水洗によって生じる洗浄排水を膜分離処理すると、膜に、カルシウムスケール及び重金属の他に、バリウムに起因する付着物も付着する。このように付着物が付着した膜を後述のキレート剤洗浄液で洗浄する。
【0016】
<キレート剤洗浄液>
本実施の形態で用いられるキレート剤洗浄液は、アミノカルボン酸系キレート剤を含むキレート剤を含有する。
アミノカルボン酸系キレート剤は、膜付着物の洗浄効果を向上させる観点から、好ましくはエチレンジアミン四酢酸及びその塩、ニトリロ三酢酸及びその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩、並びにトリエチレンテトラアミン六酢酸及びその塩の少なくとも1種であり、より好ましくはエチレンジアミン四酢酸及びその塩、ニトリロ三酢酸及びその塩の少なくとも1種であり、更に好ましくはニトリロ三酢酸及びその塩の少なくとも1種である。また、上記アミノカルボン酸の塩は、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1種であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0017】
このキレート剤洗浄液は、アミノカルボン酸系キレート剤以外のキレート剤を含んでもよいが、含まない方が好ましい。キレート剤中におけるアミノカルボン酸系キレート剤の含有量は、膜付着物を十分に洗浄する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
キレート剤洗浄液中におけるキレート剤の含有量は、膜の洗浄効果の向上及びキレート剤の使用量の低減の観点から、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、より更に好ましくは2〜5質量%である。
【0018】
このキレート剤洗浄液は、pH緩衝剤を含むことが好ましい。これにより、キレート剤洗浄液の洗浄能力が向上する。
このpH緩衝剤は、好ましくは炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩、リン酸二水素ナトリウムやリン酸二水素カリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウムや酢酸カリウム等の酢酸塩等であり、より好ましくは炭酸水素塩であり、更に好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
キレート剤洗浄液中におけるpH緩衝剤の含有量は、膜の洗浄効果の向上及びキレート剤の使用量の低減の観点から、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜1質量%、より更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0019】
このキレート剤洗浄液の溶媒は、水である。
このキレート剤洗浄液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、キレート剤、pH緩衝剤及び溶媒の他に、任意成分を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。キレート剤洗浄液中における任意成分の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。従って、キレート剤洗浄液中における、キレート剤、pH緩衝剤及び溶媒の合計含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは99.9質量%以上である。
【0020】
このキレート剤洗浄液のpHは、膜の洗浄効果の向上の観点から、好ましくは7.5〜12.5、より好ましくは8〜12、更に好ましくは8.5〜12.5である。
【0021】
また、このキレート剤洗浄液がpH緩衝剤を含有する場合、キレート剤洗浄液のpHは、好ましくは8〜10、より好ましくは8.5〜10、更に好ましくは8.5〜9.5である。
また、このキレート剤洗浄液がpH緩衝剤を含有しない場合、キレート剤洗浄液のpHは、好ましくは11〜13、より好ましくは11.5〜12.5、更に好ましくは12〜12.5である。
【0022】
<キレート剤洗浄液による膜の洗浄>
キレート剤洗浄液を用いた膜の洗浄方法には特に制限はない。例えば、膜分離処理に用いられた膜を、キレート剤洗浄液内に浸漬してもよい。また、膜分離処理に用いられた膜を、膜分離処理時の洗浄排水の透過方向と逆方向にキレート剤洗浄液を透過させて膜を逆洗してもよく、膜分離処理時の洗浄排水の透過方向と同方向にキレート剤洗浄液を透過させて膜を洗浄してもよい。ただし、作業容易性の観点から、膜をキレート剤洗浄液内に浸漬するのが好ましい。
膜をキレート剤洗浄液内に浸漬する場合、浸漬時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは3〜24時間、更に好ましくは6〜12時間である。
【0023】
<酸洗浄液による膜の洗浄>
また、このキレート剤洗浄液による洗浄の前又は後に、膜を酸洗浄液により酸洗浄することが好ましい。この酸洗浄により、主にカルシウムスケールや重金属が膜から除去される。
この酸洗浄は、キレート剤洗浄液による洗浄よりも前に実施するのがより好ましい。このように予め酸洗浄を行って膜の付着物の一部を除去することにより、キレート剤洗浄液で除去すべき付着物の量を低減することができ、キレート剤洗浄液の使用量を抑えることができる。
この酸洗浄液は、水に酸を溶解させてなる酸水溶液であることが好ましい。
酸洗浄液に用いられる酸は、好ましくは無機酸であり、より好ましくは炭酸、塩酸、硝酸、及び硫酸の少なくとも1種であり、更に好ましくは塩酸である。
酸洗浄液のpHは、好ましくは−1〜1であり、より好ましくは−0.3〜0.6であり、更に好ましくは−0.1〜0.1である。
【0024】
この酸洗浄液を用いた膜の洗浄方法には特に制限はない。例えば、膜を、酸洗浄液内に浸漬してもよく、膜分離処理時の洗浄排水の透過方向と逆方向に酸洗浄液を透過させて膜を逆洗してもよく、膜分離処理時の洗浄排水の透過方向と同方向に酸洗浄液を透過させて膜を洗浄してもよい。ただし、作業容易性の観点から、膜を酸洗浄液内に浸漬するのが好ましい。
膜を酸洗浄液内に浸漬する場合、浸漬時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは3〜24時間、更に好ましくは6〜12時間である。
【0025】
<その他の洗浄液による膜の洗浄>
また、キレート剤洗浄液による洗浄の前又は後好ましくは後に、その他の洗浄液で膜を洗浄してもよい。
例えば、苛性ソーダのようなアルカリ洗浄液や次亜塩素酸を含む洗浄液で、膜を洗浄してもよい。これにより、有機系物質からなる付着物を除去することができる。
これらアルカリ洗浄液や次亜塩素酸を含む洗浄液による膜洗浄は、上記酸洗浄の前でも後でもよいが、後の方が好ましい。
また、洗浄方法には特に制限はなく、好ましくは酸洗浄液による洗浄の場合と同様である。
【0026】
[塩素含有廃棄物の処理方法]
本実施の形態に係る塩素含有廃棄物の処理方法は、焼却灰、溶融飛灰及びセメント製造プロセスダストの少なくとも1種を含む塩素含有廃棄物の処理方法であって、前記塩素含有廃棄物を水洗する工程、前記水洗によって生じた洗浄排水を、膜を用いて膜分離処理する工程、前記膜による膜分離を停止し、前述の膜の洗浄方法により前記膜を洗浄し、再生膜を得る工程、及び、前記再生膜を用いて、前記洗浄排水を膜分離処理する工程、を有する、塩素含有廃棄物の処理方法である。
以下に、図面を参照して、本実施の形態に係る塩素含有廃棄物の処理方法の好適例を説明する。
図1は、本実施の形態に係る塩素含有廃棄物の処理方法の好適例の概略を示す図である。
【0027】
<塩素含有廃棄物>
塩素含有廃棄物Dは、焼却灰、溶融飛灰及びセメント製造プロセスダストの少なくとも1種を含むものであり、これらの少なくとも1種であることが好ましい。
ここで、焼却灰としては、都市ごみなどの一般廃棄物や産業廃棄物の焼却によって発生する焼却灰が挙げられる。
焼却灰は、一般的なストーカ炉(火格子炉)を用いた焼却による場合に、焼却炉底に残る焼却残渣(焼却主灰)と、集塵装置に捕集されるばいじん(焼却飛灰)とに大別される。
なお、一般廃棄物とは、一般家庭の日常生活に伴って生じた廃棄物(生ごみ、不燃性ごみ、粗大ごみなど)の「家庭系一般廃棄物」と、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち産業廃棄物以外の廃棄物の「事業系一般廃棄物」とに分類される、いわゆる都市ごみのことである。
また、産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物であって、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類の6種類と、その他「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」で定めるゴムくず、金属くず、ガラスくずなどの13種類の計19種類の廃棄物のことである。
また、セメント製造プロセスダストとは、セメントキルン等のセメント製造設備に付設した塩素バイパス装置で得られた塩素バイパスダスト、セメント焼成排ガス処理装置で得られるスタビライザーダスト,EPダスト又はバグダストのことである。
【0028】
上記塩素含有廃棄物Dは、酸化カルシウム、シリカ、酸化ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、及び酸化カリウムの少なくとも1種以上である金属酸化物を含むと共に、塩素及び硫黄(無水硫酸等)を含んでいる。また、この塩素含有廃棄物は、微量成分として、種々の重金属(比重4以上)及び軽金属(比重4未満)を含む。重金属としては、銅、亜鉛、鉛、クロム及びセレンの少なくとも1種が挙げられる。また、軽金属としては、少なくともバリウムが挙げられ、更にマグネシウム及びストロンチウムの1種以上を含む場合もある。
【0029】
<<塩素含有廃棄物Dの水洗工程>>
本工程では、塩素含有廃棄物Dを水洗する。この水洗方法には特に制限はなく、例えば、塩素含有廃棄物Dに高圧水を吹き付けて水洗してもよいが、下記のように水洗するのが好ましい。
【0030】
(水洗処理)
図1に示すとおり、塩素含有廃棄物Dを溶解槽11に投入し、さらに新水Wを添加して撹拌し、スラリー化するとともに、含有する塩素化合物等の可溶成分を溶出させリパルプさせる。
新水Wとしては、工業用水、製造工程等から排出される2次排水等が好適に用いられる。
ここで、新水Wの添加量は、塩素含有廃棄物Dに対して2〜10質量倍であることが好ましい。2質量倍以上であると、塩素含有廃棄物D中の塩素(可溶成分)の溶出が十分となり、後段の濾過機12により濾過して得られる固形分C1中に残存する可溶成分が少なくなる。また、2質量倍以上であると、得られるスラリーの粘性が低くなり、後の工程へのポンプ輸送が容易になる。一方、10質量倍以下であると、カルシウム成分や重金属類等の他の成分の溶出を抑制することができ、したがって、後段の工程においては、これらの成分を取り除くための薬剤の使用量が抑えられる。
【0031】
上記のリパルプでは、塩素(可溶成分)の溶解速度を高めるため、溶解槽11内の温度を40℃以上に高めてもよい。また、撹拌時間は10時間以内で十分塩素成分を溶解することができる。また、撹拌時間が10時間以内であると、塩素含有廃棄物Dに含有するカルシウムとアルカリ成分及び塩素との複塩が生成して沈殿物が生じることが防止されるため、十分な脱塩を行うことができる。
【0032】
このリパルプにより生成したスラリーS1を濾過機12に投入し、圧搾して固液分離を行い、固形分C1と濾液F1に分離する。
次いで、濾過機12内に新水Wを導入し、固形分C1に残留する可溶成分を含有する水分を新水Wで洗浄するのが好ましい。この新水Wでの洗浄は、濾過機12を加圧した状態で、固形分C1に一方向から新水Wを圧送することにより、少ない水量で効率のよい洗浄を行うことができる。
この洗浄のために使用する新水Wは、脱塩洗浄に供する廃棄物量に対して0.5〜2.0質量倍が好ましい。
【0033】
この新水Wを用いた洗浄により、固形分C1中の塩素含有量を十分に低下させることができる。
また、得られた固形分C1はセメント原料として有効利用される。例えば、固形分C1を直接セメント製造設備に送った場合には、他のセメント原料と混合され、乾燥・粉砕の後、粉末セメント原料としてセメント焼成工程にて再循環使用され、セメントクリンカとして焼成される。
この濾液F1は、浮遊物質の他、前述の各種重金属及び軽金属を含んでおり、また、塩素成分、硫黄成分、及び窒素成分を含んでいる。例えば、重金属として、銅、亜鉛、鉛、クロム及びセレンの少なくとも1種が挙げられる。また、軽金属としては、少なくともバリウムが挙げられ、更にナトリウム、カリウム、マグネシウム及びストロンチウムの1種以上を含む場合もある。なお、この濾液中にダイオキシンが含まれる場合、このダイオキシンは浮遊物質中に付着している。
この濾液F1を、洗浄排水として、後述する膜分離処理工程に供してもよい。しかし、以下のとおり、この濾液F1にpH調整処理を施して得られる上澄み液を、洗浄排水として、後述する膜分離処理工程に供するのが好ましい。
【0034】
(pH調整処理)
濾過機12から排出された濾液F1のpH(水素イオン濃度)は、通常は10〜12程度である。その場合、pH調整槽21内で、この濾液F1にpH調整剤P1を添加してpHを調整し、固形分を沈降分離し、上澄み液F2を得ることが好ましい。この沈降分離時の上澄み液F2のpHは、重金属水酸化物の沈殿物を生成させて重金属を除去する観点から、好ましくは7〜10であり、より好ましくは8.5〜9.5であり、更に好ましくは9〜9.5である。
pH調整剤P1は、好ましくは無機酸であり、より好ましくは炭酸、塩酸、硝酸、及び硫酸の少なくとも1種であり、更に好ましくは塩酸である。
【0035】
このpH調整工程により、液中の重金属の一部が除去される。ただし、依然として、上澄み液F2は、浮遊物質及び前述の重金属及び軽金属を含有し、また、塩素成分、硫黄成分、及び窒素成分を含んでいる。例えば、重金属として、銅、亜鉛、鉛、クロム及びセレンの少なくとも1種が挙げられる。また、軽金属としては、少なくともバリウムが挙げられ、更にナトリウム、カリウム、マグネシウム及びストロンチウムの1種以上を含む場合もある。
【0036】
<膜分離処理工程>
本工程では、前述の塩素含有廃棄物Dの水洗工程によって生じた洗浄排水を、膜を用いて膜分離処理する。
【0037】
<<洗浄排水>>
洗浄排水中の各成分の含有量は、塩素含有廃棄物の組成、前述の水洗工程等によって異なる。
洗浄排水中のバリウムの含有量は、水洗工程により生じる洗浄排水量の低減、膜分離処理工程における透過流速の急速な低下の防止、再生膜を得る工程の頻度の低減等の観点から、好ましくは1mg/L以上、より好ましくは5mg/L以上、更に好ましくは10mg/L以上、より更に好ましくは20mg/L以上であり、また、好ましくは100mg/L以下、より好ましくは80mg/L以下、更に好ましくは50mg/L以下、より更に好ましくは30mg/L以下である。
同様の観点から、洗浄排水中のカルシウムの含有量は、好ましくは500mg/L以上、より好ましくは1000mg/L以上、更に好ましくは2000mg/L以上、より更に好ましくは5000mg/L以上であり、また、好ましくは500000mg/L以下、より好ましくは200000mg/L以下、更に好ましくは100000mg/L以下、より更に好ましくは50000mg/L以下である。
同様の観点から、洗浄排水中の硫酸イオンの含有量は、好ましくは100mg/L以上、より好ましくは500mg/L以上、更に好ましくは1000mg/L以上、より更に好ましくは2000mg/L以上であり、また、好ましくは50000mg/L以下、より好ましくは10000mg/L以下、更に好ましくは5000mg/L以下、より更に好ましくは3000mg/L以下である。
同様の観点から、洗浄排水中の塩素の含有量は、好ましくは1000mg/L以上、より好ましくは5000mg/L以上、更に好ましくは10000mg/L以上、より更に好ましくは20000mg/L以上であり、また、好ましくは500000mg/L以下、より好ましくは100000mg/L以下、更に好ましくは50000mg/L以下、より更に好ましくは30000mg/L以下である。
【0038】
<<膜分離処理>>
この膜分離処理は、
図1に示すとおり、膜を備えた膜濾過装置22を用いて行うのが好ましい。この膜の詳細は、前述したとおりであり、例えば、精密濾過膜(MF)が用いられる。この膜により、洗浄排水(上澄み液F2)中の浮遊物質が取り除かれる。この洗浄排水(上澄み液F2)は、浮遊物質が取り除かれたことでダイオキシンも取り除かれることとなり、ダイオキシン濃度を極めて速やかに排水基準以下に低減することができる。この膜を透過した透過水は、下水道等の系外に放流される。
なお、膜分離処理としては、全量濾過方式及びクロスフロー方式のいずれでもよいが、高い濾過性能を長く維持させる観点から、クロスフロー方式が好ましい。クロスフロー方式の場合、膜を透過しなかった逆洗液F3は、必要に応じて再度pH調整槽21内でpH調整された後、再度膜分離処理に供される。
前述のように膜分離処理に供された膜は、浮遊物等が徐々に付着し、透過流速が低下する。その場合、洗浄水又は気体を用いて膜を逆洗することが好ましい。これら逆洗により、透過流速が回復する。
ただし、膜分離処理を継続すると、逆洗をしても透過流速が回復しなくなる。その場合、以下の再生膜を得る工程を実施する。
【0039】
<再生膜を得る工程>
本工程では、膜分離処理を停止し、前述の膜の洗浄方法により当該膜を洗浄し、再生膜を得る。
膜の洗浄方法の詳細は、前述したとおりである。
【0040】
<再生膜を用いた膜分離処理工程>
本工程では、上記再生膜を用いて、前記洗浄排水を膜分離処理する。本工程における膜分離処理の詳細は、再生膜を用いたこと以外は前述の膜分離処理工程と同様である。
なお、膜分離装置22用の膜を複数セット用意しておき、膜分離処理により膜が目詰まりした場合、当該目詰まりした膜を膜分離装置22から取り外し、当該目詰まりした膜とは異なる再生膜を取り付けて膜分離処理を再開するのが好ましい。これにより、膜の再生を待つことなく膜分離処理を再開することができる。また、当該目詰まりした膜は、前述の再生膜を得る工程によって再生膜として、次回以降の膜分離処理に用いることが好ましい。
また、膜分離処理により膜が目詰まりした場合、膜を膜分離装置22内に取り付けた状態で、膜分離装置22内にキレート剤洗浄液及び必要に応じてその他の洗浄液を注入し、再生膜を得てもよい。
【実施例】
【0041】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、キレート剤としては、以下のものを用いた。
【0042】
<キレート剤>
・エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩(EDTA−4Na)、キレスト社製、品番「キレスト40」
・アクリル酸・マレイン酸コポリマーのナトリウム塩、日本触媒社製、品番「TL37」
・クエン酸のナトリウム塩(クエン酸Na)、和光純薬工業社製、特級試薬
・ニトリロ三酢酸のナトリウム塩(NTA−3Na)、キレスト社製、品番「キレスト70」
【0043】
実施例1
(1)塩素含有廃棄物の洗浄処理
塩素含有廃棄物として、一般ごみ焼却場から排出されるばいじんを用いた。
このばいじんの組成は下記のとおりであった。
【0044】
【表1】
【0045】
このばいじん100kgに水500kgを添加して60分撹拌し、スラリーとした。このスラリーの温度は25℃であった。次いで、このスラリーを、フィルタプレスを用いて固形分と濾液に分離した。
この濾液の組成は下記のとおりであった。
【0046】
【表2】
【0047】
(2)塩素含有廃棄物の濾液の酸処理
この濾液にpH調整剤として塩酸を添加し、撹拌混合して、濾液のpHを9.5に調整した。次いで、このpH調整後の濾液を1時間静置し、上澄み液と固形分とを沈殿分離した。この上澄み液が、塩素含有廃棄物の洗浄排水である。
この塩素含有廃棄物の洗浄排水の組成は下記のとおりであった。
【0048】
【表3】
【0049】
(3)塩素含有廃棄物の洗浄排水の膜分離処理
図2の膜処理設備を用いて、塩素含有廃棄物の洗浄排水の膜分離処理を行った。以下に、
図2の膜処理設備を用いた運転方法について説明する。
図2は、膜分離処理運転している状態を示しており、バルブV1,V2及びV3は開、バルブV4は閉とされている。洗浄排水は、洗浄排水貯留タンク31に貯留される。この貯留タンク31内の洗浄排水は、ポンプXを介して膜分離装置32に導入され、その一部が膜を透過して膜濾過液とされ、残部が膜を透過することなく膜濾過装置32から流出する。膜を透過した膜濾過液の一部は逆洗用タンク34に貯留され、残部は膜濾過液貯留タンク33に貯留される。膜を透過することなく膜濾過装置32から流出された洗浄排水は、洗浄排水貯留タンク31に戻される。
逆洗する際には、バルブV2、V4を開とし、バルブV1,V3を閉とする。これにより、逆洗用タンク34に貯留された膜濾過液は、エアーによって押圧され、膜を透過する。透過後の逆洗排液F3は、バルブV2を介して貯留タンク31内に貯留される。
膜を交換する際には、少なくともバルブV1、V2及びV4を閉とし、洗浄排水の循環を停止すると共にエアーの供給を停止した状態で、膜を交換する。
【0050】
<膜分離処理運転>
膜分離装置として、膜モジュールを配置した装置を用いた。膜モジュールとしては、住友電気化学工業社製ポアフロンモジュール(内圧クロスフロー方式、膜の材質:ポリテトラフルオロエチレン、穴径:0.45μm、表面積:2m
2)を用いた。
上記の塩素含有廃棄物の洗浄排水を、膜分離装置に通水して、膜分離処理した。
なお、膜モジュールは2本用意しておき、後述のとおり、これら2本を交互に交換して使用した。
また、膜濾過液の回収量が0.6m
3/hrとなるように膜分離装置への通水量を調整して、膜分離処理した。膜分離装置への通水量は、概略6〜9m
3/hrの範囲内で推移した。
運転中、4回/hrの頻度で逆洗を行った。逆洗水としては膜濾過液を用い、1回の逆洗につき6Lの膜濾過液を用いた。
【0051】
<膜モジュールの交換>
膜分離装置22の入口側の圧力が240kPaに達した時点で運転を停止し、膜モジュールを取り外して別の膜モジュールに交換した。
なお、取り外された膜モジュールは、後述する膜洗浄処理を行った後、次回の膜分離処理用の膜モジュールとして保管した。
上記の膜分離処理運転及び膜モジュールの交換を繰り返した。
【0052】
(4)膜洗浄処理
上記(3)の膜モジュールの交換において取り外された膜モジュールを、後述する酸洗浄に供し、次いでキレート剤洗浄に供した。
<酸洗浄>
膜モジュールを、5質量%塩酸水溶液が10L入った容器内に12hr浸漬させることにより、膜モジュールを酸洗浄した。
<キレート剤洗浄>
表4に示すキレート剤およびpH緩衝剤を、表4に示す濃度となるように水に添加して、洗浄液を作成した。得られた洗浄液のpHは表4に示すとおりであった。
この洗浄液が10L入った容器内に、上記酸洗浄後の膜モジュールを12hr浸漬することにより、当該膜モジュールをキレート剤洗浄した。
【0053】
(5)透過流速の測定
膜モジュールを交換し、水道水を用いて膜分離処理を再開した。膜分離装置への通水量が5m
3/hrの条件で運転し、回収量(L/hr)を測定し、透過流速(L/m
2/hr)を得た。その結果を表4に示す。
【0054】
(6)膜の付着物の分析
酸洗浄を行った後の膜について、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光器(SEM−EDS)による元素分析を行った。その結果、バリウムが検出された。元素分析の結果を
図3に示す。
【0055】
実施例2〜7及び比較例1〜3
上記(4)膜洗浄処理において、表4に示すキレート剤洗浄液を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表4に示す。
【0056】
参考例1
新品の膜モジュールを用いて、実施例1の(1)に示す膜分離処理を開始した後、運転が安定した状態において、実施例1と同様の条件で透過流速を測定した。その結果を表4に示す。
【0057】
参考例2
実施例1において、膜モジュールの入口側の圧力が240kPaに達した時点で、実施例1の(4)に示す条件で透過流速を測定した。その結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表1に示すとおり、キレート剤としてアミノカルボン酸系キレート剤を用いた実施例2〜7は、その他のキレート剤を用いた比較例1〜3と比べて、膜洗浄効果が優れていた。
なお、実施例1は、キレート剤洗浄液中におけるアミノカルボン酸系キレート剤の含有量が少ないため、当該キレート剤洗浄液中への膜の浸漬時間が12時間では透過流速が210(L/m
2/h)と小さかったが、浸漬時間を48時間とした場合には透過流速が350(L/m
2/h)となり、透過流速が十分に改善した。