【実施例】
【0022】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例1,2はK
2SiF
6:Mn、実施例3はK
2TiF
6:Mnの例である。
【0023】
[参考例]
[K
2MnF
6の調製]
丸善株式会社発行、日本化学会編、新実験化学講座8「無機化合物の合成III」、1977年発行、1166ページ(非特許文献1)に記載されている方法に準拠し、以下の方法で調製した。
塩化ビニル樹脂製の反応槽の中央にフッ素樹脂系イオン交換膜の仕切り(隔膜)を設け、イオン交換膜を挟む2室の各々に、いずれも白金板からなる陽極と陰極を設置した。反応槽の陽極側にフッ化マンガン(II)を溶解させたフッ化水素酸水溶液、陰極側にフッ化水素酸水溶液を入れた。両極を電源につなぎ、電圧3V、電流0.75Aで電解を行った。電解を終えた後、陽極側の反応液に、フッ化水素酸水溶液に飽和させたフッ化カリウムの溶液を過剰に加えた。生成した黄色の固体生成物を濾別、回収し、K
2MnF
6を得た。
【0024】
[実施例1]
40質量%のケイフッ化水素酸(H
2SiF
6)水溶液(森田化学工業(株)製)234cm
3を、まず50質量%フッ化水素酸(HF)(SA−X、ステラケミファ(株)製)2,660cm
3と混合した。これに、予め参考例の方法で作製したK
2MnF
6粉末を13.32g加えて撹拌し溶解させた(第1の溶液:Si−F−Mn)。
これとは別に、フッ化水素カリウム(ステラケミファ製酸性フッ化カリウム、KHF
2)210.5gを50質量%フッ化水素酸水溶液680cm
3、純水1,270cm
3と混合し溶解させた(第2の溶液:K−H−F)。
第1の溶液を室温(16℃)で撹拌翼とモーターを用いて撹拌しながら、第2の溶液(15℃)を1分30秒かけて少しずつ加えていった。液の温度は26℃になり、淡橙色の沈殿(K
2SiF
6:Mn)が生じた。更に10分撹拌を続けたのち、この沈殿をブフナー漏斗で濾別し、できるだけ脱液した。更にアセトンで洗浄し、脱液、真空乾燥して、K
2SiF
6:Mnの粉末製品183.0gを得た。
ここまでの反応に用いた原料の仕込み量から計算すると、混合後の全液中のSiの濃度は0.182モル/リットル、K/(Si+Mn)=2.83(モル比)、フッ化水素の量は全体の34.9質量%であった。
得られた粉末製品の粒度分布を、気流分散式レーザー回折法粒度分布測定器(HELOS&RODOS、Sympatec社製)によって測定した。その結果、粒径8.8μm以下の粒子が全体積の10%(D10=8.8μm)、粒径19.4μm以下の粒子が全体積の50%(D50=19.4μm)、粒径29.6μm以下の粒子が全体積の90%(D90=29.6μm)を占めた。
【0025】
[実施例2]
第2の溶液を作成する際の50質量%HFの量を1,110cm
3、水の量を910cm
3にしたことのほかは、実施例1と同様に各原料を秤量準備した。第1の溶液、第2の溶液ともねじ式の蓋がついているプラスチック容器に入れて、容器ごと冷水浴につけておくことにより、7℃に冷却した。
ここから実施例1と同様に反応させた。第1の溶液を撹拌しながら第2の溶液を1分30秒かけて注ぎ込んだ。液の温度は14℃になり、淡橙色の沈殿が生じた。更に10分撹拌を続けたのち、この沈殿をブフナー漏斗で濾別し、できるだけ脱液した。更にアセトンで洗浄し、脱液、真空乾燥して、K
2SiF
6:Mnの粉末製品182.3gを得た。
ここまでの反応に用いた原料の仕込み量から計算すると、混合後の全液中のSiの濃度、K/(Si+Mn)は実施例1と同じ、フッ化水素の量は全体の39.5質量%であった。
実施例1と同様にして測定した粒度分布の結果は、D10=13.6μm、D50=32.1μm、D90=50.8μmであった。
【0026】
[実施例3]
40質量%のチタンフッ化水素酸(H
2TiF
6)水溶液(森田化学工業(株)製)436cm
3を、まず50質量%HF2,458cm
3と混合した。これに、実施例1と同じ予K
2MnF
6粉末を14.8g加えて撹拌し溶解させた(第1の溶液:Ti−F−Mn)。
これとは別に、KHF
2468.6gを純水1,910cm
3と混合し溶解させた(第2の溶液:K−H−F)。
両液を実施例2と同様に容器ごと冷水浴につけ、10℃に冷却した。
第1の溶液を撹拌翼とモーターを用いて撹拌しながら、第2の溶液を1分35秒かけて少しずつ加えていった。液の温度は22℃になり、淡橙色の沈殿(K
2TiF
6:Mn)が生じた。更に10分撹拌を続けたのち、この沈殿をブフナー漏斗で濾別し、できるだけ脱液した。更にアセトンで洗浄し、脱液、真空乾燥して、K
2TiF
6:Mnの粉末製品250.2gを得た。
ここまでの反応に用いた原料の仕込み量から計算すると、混合後の全液中のTiの濃度は0.297モル/リットル、K/(
Ti+Mn)=3.85(モル比)、フッ化水素の量は全体の25.8質量%であった。
実施例1と同様にして測定した粒度分布の結果は、D10=17.2μm、D50=57.3μm、D90=113.5μmであった。
【0027】
[比較例1]
40質量%H
2SiF
6溶液26.1cm
3を、まず50質量%HF975cm
3と混合した。これに、実施例1と同じK
2MnF
6粉末を1.48g加えて撹拌して溶解させた(第1の溶液:Si−F−Mn)。
別に、17.38gのKHF
2を500cm
3の50%HFに溶解させた(第2の溶液:K−H−F)。
第1の溶液を室温(19℃)で撹拌翼とモーターを用いて撹拌しながら、第2の溶液(18℃)を1分15秒かけて少しずつ加えていった。液の温度は21℃になった。20分撹拌を続けたが、沈殿は生じなかった。
ここまでの反応での原料の仕込み量から計算すると、混合後の全液中のSiの濃度は0.071モル/リットル、K/(Si+Mn)=2.1(モル比)、フッ化水素の量は全体の48.6質量%であった。
【0028】
[比較例1A]
比較例1の結果の沈殿の生じていない混合液に、撹拌をしながらアセトン(和光純薬製試薬特級)800cm
3を滴下漏斗から5分かけて添加した。沈殿が生じ、最後には液は28℃になっていた。この沈殿を濾別し、アセトンで洗浄し真空乾燥して、13.88gの粉末製品を得た。実施例1と同様にして測定した粒度分布の結果は、D10=0.58μm、D50=1.52μm、D90=3.16μmであった。
【0029】
[比較例2]
40質量%H
2SiF
6溶液261cm
3を、まず50質量%HF740cm
3と混合した。これに、実施例1と同じK
2MnF
6粉末を14.8g加えて撹拌して溶解させた(第1の溶液:Si−F−Mn)。
別に、173.8gのKHF
2を500cm
3の50質量%HFに溶解させた(第2の溶液:K−H−F)。
第1の溶液を室温(17℃)で撹拌翼とモーターを用いて撹拌しながら、第2の溶液(16℃)を1分15秒かけて少しずつ加えていった。液の温度は21℃になり、淡橙色の沈殿が生じた。更に10分撹拌を続けたのち、この沈殿をブフナー漏斗で濾別し、できるだけ脱液した。更にアセトンで洗浄し、脱液、真空乾燥して、粉末製品206.7gを得た。
ここまでの反応での原料の仕込み量から計算すると、混合後の全液中のSiの濃度は0.706モル/リットル、K/(Si+Mn)=2.1(モル比)、フッ化水素の量は全体の37.6質量%であった。
実施例1と同様にして測定した粒度分布の結果は、D10=10.9μm、D50=25.4μm、D90=37.8μmであった。
【0030】
[実験例1]
実施例及び比較例によって得られた蛍光体の発光特性、発光スペクトルと吸収率、量子効率を量子効率測定装置QE1100(大塚電子(株)製)で測定した。励起波長450nmでの吸収率と量子効率を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
[実験例2]
実施例及び比較例によって得られた蛍光体の発光特性の温度による変化を測定した。分光蛍光光度計FP6500(日本分光(株)製)を用いた。光の出入りする部分が石英ガラス、その他の部分が金属でできた試料ホルダを用い、この金属部分をヒーターに接触させて試料を温度制御して加熱できるようにして測定を行った。室温(20℃)と130℃で蛍光スペクトルを、450nmの励起(励起光のスリット幅5nm)により測定した。その結果を表2に示す。発光強度は、蛍光スペクトル(50nm/分で掃引し、0.2nm間隔で読み取ったもの)の、550nmから700nmの範囲の積分値で示している。
【0033】
【表2】
【0034】
なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。