【実施例】
【0035】
以下、実施例等によってより具体的に説明する。
【0036】
[実施例1]
水系溶媒に分散された市販の酸化ニオブゾル及びシュウ酸水溶液を、物質量比(COOH)
2/Nb
2O
5がモル基準で0.2となるように混合し、ニオブ濃度が0.47mol/L、密度1.05g/cm
3のシュウ酸含有酸化ニオブゾルを得た。
【0037】
コア粒子として層状構造を有し、組成が式Li
1.15Ni
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用意した。コア粒子1000gを羽根型混合機で撹拌しながら、シュウ酸含有ニオブゾル392gを20分かけて滴下し、ゾル含有粒子を得た。
【0038】
得られたゾル含有粒子を大気雰囲気下400℃で5時間熱処理し、目的の正極活物質を得た。
【0039】
[実施例2]
水系溶媒に分散された市販の酸化ニオブゾル及びシュウ酸水溶液を、物質量比(COOH)
2/Nb
2O
5が0.5となるように混合し、ニオブ濃度が0.94mol/L、密度1.03g/cm
3のシュウ酸含有酸化ニオブゾルを得た。
【0040】
実施例1と同様のコア粒子を用意した。コア粒子1000gを羽根型混合機で撹拌しながら、シュウ酸含有ニオブゾル490gを20分かけて滴下し、ゾル含有粒子を得た。
【0041】
得られたゾル含有粒子を大気雰囲気下400℃で5時間熱処理し、目的の正極活物質を得た。
【0042】
[実施例3]
水系溶媒に分散された市販の酸化ニオブゾル及びシュウ酸水溶液を、物質量比(COOH)
2/Nb
2O
5が0.5となるように混合し、ニオブ濃度が0.84mol/L、密度1.05g/cm
3のシュウ酸含有酸化ニオブゾルを得た。
【0043】
実施例1と同様のコア粒子を用意した。コア粒子1000gを羽根型混合機で撹拌しながら、コア粒子1000gを羽根型混合機で撹拌しながら、シュウ酸含有ニオブゾル700gを20分かけて滴下し、ゾル含有粒子を得た。
【0044】
得られたゾル含有粒子を大気雰囲気下400℃で5時間熱処理し、目的の正極活物質を得た。
【0045】
[比較例1]
実施例1における市販の酸化ニオブゾルを用意した。この酸化ニオブゾルは、ニオブ濃度が0.47mol/L、密度1.05g/cm
3であった。また、実施例1と同様のコア粒子を用意した。コア粒子1000gを羽根型混合機で撹拌しながら、市販の酸化ニオブゾル390gを20分かけて滴下し、ゾル含有粒子を得た。
【0046】
得られたゾル含有粒子を大気雰囲気下400℃で5時間熱処理し、目的の正極活物質を得た。
【0047】
[比較例2]
水系溶媒に分散された市販の酸化ニオブゾル及びシュウ酸水溶液を、物質量比(COOH)
2/Nb
2O
5が1.0となるように混合し、ニオブ濃度が0.46mol/L、密度1.05g/cm
3のシュウ酸含有酸化ニオブゾルを得た。
【0048】
実施例1と同様のコア粒子を用意した。コア粒子1000gを羽根型混合機で撹拌しながら、シュウ酸含有ニオブゾル399gを20分かけて滴下し、ゾル含有粒子を得た。
【0049】
得られたゾル含有粒子を大気雰囲気下400℃で5時間熱処理し、目的の正極活物質を得た。
【0050】
[比較例3]
熱処理工程における熱処理温度が600℃であった以外は、実施例1と同様にし、目的の正極活物質を得た。
【0051】
<正極活物質の評価>
実施例及び比較例1、2について正極活物質の特性を以下の方法で測定した。
【0052】
[赤外分光分析]
正極活物質粒子について、拡散反射法による赤外分光分析を行った。
【0053】
[炭酸イオンの測定]
正極活物質10gを純水50mLに1時間、室温(25℃)で分散させた後、正極活物質と溶液とを分離した。溶液をWarder法に準じて滴定して炭酸イオンの量を求めた。なお、指示薬は第一段にフェノールフタレイン溶液を、第二段にブロモフェノールブルーを用いた。
【0054】
[ニオブ含有量の測定]
正極活物質について、誘導プラズマ結合(ICP)分析を行い、リチウム遷移金属複合酸化物に対するニオブの含有量を求めた。
【0055】
<電池評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた正極活物質を用いて、以下のようにして二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0056】
[固体電解質作製]
アルゴン雰囲気下で硫化リチウム及び五硫化リンを、その物質量比が7:3となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合した。得られた混合物をさらにボールミルによって粉砕混合し、硫化物ガラスを得た。得られた硫化物ガラスを固体電解質として用いた。
【0057】
[正極合剤作製]
正極活物質60重量部、固体電解質36重量部及びVGCF(気相法炭素繊維)4重量部を混合し、正極合剤を得た。
【0058】
[負極作製]
厚さ0.05mmのインジウム箔を直径11.00mmの円形にくり抜き、負極とした。
【0059】
[電池作製]
内径11.00mmの円筒状外型に外径11.00mmの円柱状下型を、外型下部から挿入した。下型の上端は外型の中間に位置に固定した。この状態で外型の上部から下型の上端に固体電解質80mgを投入した。投入後、外径11.00mmの円柱状上型を外型の上部から挿入した。挿入後、上型の上方から90MPaの圧力をかけて、固体電解質を成形し、固体電解質層とした。成形後上型を外型の上部から引き抜き、外型の上部から固体電解質層の上部に正極合剤20mgを投入した。投入後、再度上型を挿入し、今度は360MPaの圧力をかけて正極合剤を成形し、正極層とした。成形後上型を固定し、下型の固定を解除して外型の下部から引き抜き、外型の下部から固体電解質層の下部に負極を投入した。投入後、再度下型を挿入し、下型の下方から150MPaの圧力をかけて負極を成形し、負極層とした。圧力をかけた状態で下型を固定し、上型に正極端子、下型に負極端子を取り付け、全固体二次電池を得た。
【0060】
[放電特性]
電流密度0.195μA/cm
2、充電電圧4.0Vで定電流定電圧充電を行った。充電後、電流密度0.195μA/cm
2、放電電圧1.9Vで定電流放電を行い、放電容量Qdを測定した。非水電解液に比べてリチウムイオン伝導性の低い固体電解質を用いた全固体二次電池において、正極活物質と固体電解質との界面抵抗は放電容量に影響する。その為、Qdの高さで界面抵抗の低さを判断した。
【0061】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた正極活物質の赤外分光分析スペクトルを
図1に示す。また、実施例1〜3及び比較例1〜3における製造条件を表1に、正極活物質の特性及び放電特性を表2に示す。さらに、実施例1及び比較例1、3で得られた正極活物質を用いた全固体二次電池について、放電曲線を
図2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1、2及び
図1から、(COOH)
2/Nb
2O
5を適切に調整したシュウ酸含有ニオブゾルを用い、適切な熱処理温度で熱処理して得られた実施例1〜3の正極活物質は、所定の炭酸イオン濃度と所定の赤外分光スペクトルのピーク(
図1の破線部囲み)とを有すことが分かる。その結果、実施例1〜3の正極活物質を用いた全固体二次電池は、比較例1、2の正極活物質を用いた全固体二次電池に比べて放電容量Qdが高くなっている。
【0065】
図1、
図2より、(COOH)
2/Nb
2O
5が少なすぎる比較例1の正極活物質及び熱処理温度が高過ぎる比較例3の正極活物質は、所定の炭酸イオン濃度を満たさず、所定の赤外分光スペクトルのピークも示さないことが分かる。その結果、比較例1、3の正極活物質を用いた全固体二次電池は放電時の平均電圧が低くなっている。これらの結果は、充放電によって被覆層が破壊された結果と推測される。放電時の平均電圧が低いと、全固体二次電池のエネルギー密度が低下するため不利である。