(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電体の上端に接続された導電路は、前記第1のプラズマ形成室と第2のプラズマ形成室との間の領域である窪み領域の外側に引き回され、更に下方側に屈曲して前記窪み領域の外側にて前記導電体の下部側まで伸びるように配線され、
前記導電体の下端に接続された導電路は、前記導電体の下部側から高周波電源まで引き回されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
前記第1のプラズマ形成室と、前記第2のプラズマ形成室との間の距離は、30mm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る縦型熱処理装置1について、縦断側面図及び横断平面図である
図1及び
図2を参照して説明する。基板処理装置の一実施形態である縦型熱処理装置1は、ALDによりウエハWにSiN(窒化シリコン)膜を形成する成膜装置である。図中11は、例えば石英により縦型の円筒状に形成された処理容器であり、この処理容器11内の上部側は、天井板12により封止されている。また処理容器11の下端側には、例えば円筒状に形成されたマニホールド2が連結されている。マニホールド2の下端は基板搬入出口21として開口され、ボートエレベータ22に設けられた石英製の蓋体23により気密に閉じられるように構成されている。蓋体23の中央部には回転軸24が貫通して設けられ、その上端部には基板保持具であるウエハボート3が搭載されている。
【0012】
前記ウエハボート3は、
図2に示すように例えば3本の支柱31を備えており、ウエハWの外縁部を支持して、複数枚例えば125枚のウエハWを棚状に保持できるようになっている。以降、ウエハボート3において、ウエハWが保持される領域をスロットと記載する。つまり、ウエハボート3は多数のスロットを上下方向に備えている。
【0013】
図中32は断熱ユニットである。前記ボートエレベータ22は図示しない昇降機構により昇降自在に構成されている。こうしてウエハボート3は、当該ウエハボート3が処理容器11内にロード(搬入)され、蓋体23により処理容器11の基板搬入出口21が塞がれる処理位置と、処理容器11の下方側の搬出位置との間で昇降自在に構成される。前記搬出位置とは、図示しないローディングエリア内に設けられた移載機構によりウエハボート3に対してウエハWが移載される位置である。また、上記の回転軸24は、蓋体23に設けられた回転機構をなすモータ25により鉛直軸周りに回転自在に構成されている。このウエハボート3の回転によって、ウエハボート3に載置されたウエハWが中心回りに回転する。
【0014】
処理容器11の側壁には開口部13、14が形成されており、この開口部13、14の外側にはプラズマ発生部4が設けられている。開口部13、14は、プラズマ発生部4にて発生する活性種を各ウエハWに供給できるように、例えばウエハボート3の上端よりも高い位置から下端のウエハWよりも低い位置に亘って上下に細長く、互いに並行するように形成されている。そして、開口部13、14は夫々横断面が凹部状に形成されたプラズマ発生部4を構成するプラズマ形成用ボックス41、42により、外側から塞がれている。従って、プラズマ形成用ボックス41、42は処理容器11の側壁を形成しており、当該側壁が処理容器11の外側へ向けて膨らんでいる。また、プラズマ形成用ボックス41、42は、処理容器11の周方向に離間すると共に、互いに近接して配置されている。プラズマ形成室であるプラズマ形成用ボックス41、42は、石英により構成されている。プラズマ発生部4のさらなる構成については後述する。
【0015】
処理容器11における前記開口部13、14に対向する領域には、処理容器11内の雰囲気を真空排気するために、上下に細長い排気口15が形成されている。この排気口15には、これを覆うようにして例えば石英よりなる断面コ字状に形成された排気カバー部材16が取り付けられている。排気カバー部材16は、例えば処理容器11の側壁に沿って上下に伸びて、処理容器11の上方側を覆うように構成されており、例えば当該排気カバー部材16の天井側にはガス出口17が形成されている。このガス出口17には、真空ポンプ及び排気流量を調整するための調整部などにより構成された排気機構18が接続されている。
【0016】
処理容器11の外周を囲むように、有天井の筒状のシールド19が設けられている。このシールド19は、金属により構成されると共に接地されており、プラズマ発生部4により発生する電界を遮蔽する。また、シールド19の内側面には図示しないヒーターが設けられており、処理容器11内を加熱することができる。
【0017】
上記のマニホールド2の側壁には、シラン系のガス例えばジクロロシラン(DCS:SiH
2Cl
2)を供給するためのジクロロシランガス供給路51が挿入され、このジクロロシランガス供給路51の先端部には、ガスノズル52が設けられている。ガスノズル52は例えば石英管よりなり、排気口15に対向し、且つ開口部13、14から外れた位置を処理容器11の側壁に沿って上方へ伸びるように設けられている。ガスノズル52には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔53が所定の間隔を隔てて形成されている。
【0018】
また、マニホールド2の側壁には、アンモニア(NH
3)ガスを供給するためのアンモニアガス供給路61、62の各一端と、窒素(N
2)ガスを処理容器11内に供給するための窒素ガス供給路55の一端と、が挿入されている。アンモニアガス供給路61の先端部には、例えば石英管よりなるガスノズル63、64が設けられており、
図1では図が煩雑化することを防ぐために、アンモニアガス供給路62及びガスノズル64の図示を省略している。ガス供給部であるガスノズル63、64は互いに同様に構成されており、処理容器11内を上方向へ延びる途中で屈曲し、上記のプラズマ形成用ボックス41、42内を夫々上方向に延びている。ガスノズル63、64には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔65が所定の間隔を隔てて形成されている。
【0019】
ジクロロシランガス供給路51の上流側は、バルブV1、流量調整部MF1をこの順に介してDCSガスの供給源54に接続されている。アンモニアガス供給路61の上流側は、夫々バルブV2、流量調整部MF2をこの順に介してNH
3ガスの供給源66に接続されている。アンモニアガス供給路62の上流側は、バルブV3、流量調整部MF3をこの順に介して、アンモニアガス供給路61における流量調整部MF2と、NH
3ガス供給源66との間に接続されている(
図2参照)。窒素ガス供給路55の上流側は、バルブV4、流量調整部MF4をこの順に介してN
2ガスの供給源56に接続されている。各バルブVはガスの給断を、流量調整部MFはガス供給量の調整を夫々行うものである。
【0020】
続いて、プラズマ発生部4についてさらに説明する。このプラズマ発生部4を説明するにあたり、ウエハWに近接する側を前方側、ウエハWから遠ざかった側を後方側とする。プラズマ発生部であるプラズマ形成用ボックス41、42内において、上記のガスノズル63、64の後方側に配置され、前方側に向けてNH3ガスを吐出する。処理容器11の外部において、プラズマ形成用ボックス41、42により互いに挟まれる縦長の領域を窪み領域43とすると、この窪み領域43には、
図3の概略図に示すように、プラズマ形成用ボックス41、42内に共に誘導結合プラズマを発生させるための導電体であるアンテナが、プラズマ形成用ボックス41、42の下端部から上端部に亘って縦方向に伸びるように設けられている。このアンテナは縦方向に伸びる途中で前後に繰り返し蛇行するように形成されており、以下、蛇行アンテナ44と記載する。
【0021】
また、窪み領域43の外側には、棒状の導電部材45が垂直に設けられており、この棒状導電部材45と蛇行アンテナ44とにより、プラズマ形成用ボックス41は左右から挟まれている。棒状導電部材45の上端は折り返され、蛇行アンテナ44の上端に接続されている。つまり、プラズマ形成用ボックス41から見て、棒状導電部材45は窪み領域43とは反対の領域に向けて引き回され、更に下方側に向けて屈曲するように設けられている。
【0022】
蛇行アンテナ44の下端部には導電路46の一端が接続され、この導電路46の他端はシールド19の外側へと引き出され、整合回路47を介して高周波電源48に接続されている(
図1参照)。つまり、導電路46は、蛇行アンテナ44の下部側から囲み部材の外に引き出されている。
【0023】
また、棒状導電部材45の下端は、窪み領域43の外側を蛇行アンテナ44の下部側まで伸びるように形成されると共に、導電路49の一端に接続されている。導電路49の他端はシールド19の外側に引き出され、整合回路47を介して分岐し、分岐した一端は接地され、分岐した他端は高周波電源48に接続されている。従って、蛇行アンテナ44の両端部に高周波電源48が接続されており、高周波電源48は、例えば13.56MHzの高周波電力を蛇行アンテナ44に印加することができる。
【0024】
図4の横断平面図では電界を点線の矢印で、
図5の側面図では鎖線の矢印で模式的に示している。電界は蛇行アンテナ44を中心に当該蛇行アンテナ44から広がるように形成される。プラズマ形成用ボックス41、42は互いに近接しているため、電界によってガスノズル63、64からプラズマ形成用ボックス41、42の手前側に吐出されたNH
3ガスは、
図2に示すボックス41、42内のプラズマ形成領域PS1、PS2にて夫々誘導結合型のプラズマを生じる。そして、アンモニアラジカルなどの各種のラジカルが生じ、これらのラジカルがウエハWに供給される。
【0025】
このように蛇行アンテナ44は、プラズマ形成用ボックス41、42内に共に電界を形成する。つまりプラズマ形成用ボックス41、42に共用される。このようにプラズマ形成用ボックス41、42に電界を形成するために、
図2に示すプラズマ形成用ボックス41、42の間の距離(窪み領域43の幅)L1は30mm以下とすることが好ましく、この例では10mmとされている。また、この例では蛇行アンテナ44から見てプラズマ形成用ボックス41、42は互いに対称に形成されているため、これらプラズマ形成用ボックス41内、42内には共に同様の強度の電界が形成され、これらプラズマ形成用ボックス41、42間では均一性高くプラズマが形成される。そのため、処理容器11内に供給される活性種の分布の偏りが抑えられ、ウエハWの面内における処理の均一性が高くなる。
【0026】
窪み領域43に設けるプラズマ形成用のアンテナとしては蛇行アンテナ44に限られず、例えばコイル状のアンテナを配置してもよい。ところで、棒状導電部材45を窪み領域43の外側に配置しているのは、蛇行アンテナ44との距離を比較的大きくするためである。具体的には、蛇行アンテナ44と棒状導電部材45との距離が近すぎると、これらのアンテナ44と導電部材45との間に強い電界が形成され異常放電が起り、ウエハWがダメージを受けるため、それを防ぐために棒状導電部材45を上記の位置に設けている。
【0027】
また、窪み領域43において、蛇行アンテナ44の前方側には垂直な棒状の導電部材40が設けられている。この導電部材40は接地されており、蛇行アンテナ44からウエハWに向かう電界を遮断し、当該電界によって、ウエハWが損傷することを防いでいる。なお、
図3ではこの導電部材40の図示を省略している。
【0028】
また、上記の縦型熱処理装置1は、制御部5を備えている。前記制御部5は、例えばコンピュータからなり、ボートエレベータ22、シールド19のヒーターの温度、流量調整部MFによるガスの供給量、高周波電源のオンオフ、排気機構18による排気量、モータ25による回転軸24の回転などを制御するように構成されている。より具体的には、制御部5は処理容器11内で行われる後述する一連の処理のステップを実行するためのシーケンスプログラムを記憶した記憶部、各プログラムの命令を読み出して各部に制御信号を出力する手段等を備えている。なお、このプログラムは例えばハードディスク、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリーカード等の記憶媒体に格納された状態で制御部5に格納される。
【0029】
続いて、縦型熱処理装置1にて実施される成膜処理について説明する。この説明では、各ガスの供給及び高周波電源48のオンオフのタイミングを示すタイミングチャートである
図6も参照しながら説明する。先ず、多数枚のウエハWをウエハボート3に棚状に載置し、処理容器11内にその下方より搬入(ロード)して、蓋体23で基板搬入出口21を閉じ、処理容器11を密閉する。そして処理容器11内を排気機構18によって所定の圧力の真空雰囲気となるように真空引きすると共に、処理容器11内の温度を所定の温度に加熱する。また、モータ25によりウエハボート3が回転する。
【0030】
その後、ガスノズル52により処理容器11内にDCSガスが、高周波電源48がオフの状態で供給され、当該DCSガスの分子は、各ウエハWの表面に吸着される。その後、DCSガスの供給を止め、処理容器11内にN2ガスを供給し、残留するDCSガスをパージする。次いで、このN
2ガスの供給の停止と、ガスノズル63、64からのNH3ガスの吐出開始とが行われる。また、このNH3ガスの吐出の開始と共に高周波電源38がオンになる。それによってプラズマ形成用ボックス41、42内のプラズマ形成領域PS1、PS2にて、ガスノズル63、64から吐出されたNH
3ガスが電離して、Nラジカル,Hラジカル,NHラジカル,NH2ラジカル,NH3ラジカル等の各種の活性種が生じる。
【0031】
このようにプラズマ形成用のガスであるNH3ガスをプラズマ形成領域PS1、PS2の夫々に供給しているため、1つのプラズマ形成領域PSの圧力が過度に上昇することが抑えられる。従って、これらのラジカルは互いの衝突による失活が抑えられた状態でウエハWに供給される。従って、ウエハWには比較的多くの量のラジカルが供給される。当該ラジカルによりウエハWの周縁部においてDCSが窒化されてSiN膜が形成されることに加えて、周縁部で消費しきれないラジカルがウエハWの中心部にも到達し、当該中心部でもDCSが窒化されてSiN膜が形成される。つまり、ウエハWの面内で均一性高くSiN膜が形成される。
【0032】
然る後、NH3ガスの供給が停止し、処理容器11内にはN2ガスが供給され、処理容器11内に残留するNH3ガス及びその分解物がパージされる。このようなDCSガスの供給、パージ、NH3ガスの活性種の供給、パージからなるサイクルを複数回繰り返す。これによって、ウエハWの表面にSiN膜の薄膜が、いわば一層ずつ積層されて成長し、ウエハWの表面に所望の厚さのSiN膜が形成される。プロセス終了後、ウエハボート3が処理容器11から搬出される。
【0033】
この縦型熱処理装置1によれば、プラズマ形成領域PS1、PS2を形成するプラズマ形成用ボックス41、42で共用の蛇行アンテナ44を、ボックス41、42間の窪み領域43に上下方向に設け、この蛇行アンテナ44にボックス41の上端を介して接続される棒状導電部材45は、窪み領域43から外れた位置にて上下方向に設けている。これによって蛇行アンテナ44からなる高周波の伝播路の長さを抑え、異常放電が発生することを抑えつつ、プラズマ形成領域PS1、PS2に共にプラズマを形成し、活性種をウエハWに供給することができる。従って、異常放電によるウエハWへのダメージが抑えられる。また、上記のようにプラズマ形成領域PS1、PS2の圧力が大きくなることが抑えつつ、処理容器11へ比較的多くの量のNH
3ガスを供給することができるので、多くの活性種であるラジカルをウエハWに供給することができる。従って、ウエハWの表面積が比較的大きくても、ラジカルをウエハWの周縁部から中心部に亘って供給することができるため、ウエハWに成膜されるSiN膜の面内均一性を高くすることができる。
【0034】
ところで上記のように多くのラジカルをウエハWに供給可能であることは、表面積が比較的大きく無いウエハWを処理する場合には、このラジカルの供給に要する時間を短縮できることになる。つまり、既述のALDの1つのサイクルにおいて、NH
3ガスを供給する時間(ラジカルを供給する時間)の短縮化を図ることができる。また、1つのサイクルにおいて、ウエハWに供給されるラジカルが多いことは、1サイクルあたりに成膜される膜厚の量が大きくなる。従って、所望の膜厚のSiN膜を得るためのサイクル数の削減を図ることができる。このように縦型熱処理装置1によれば、1サイクル中のラジカル供給時間の短縮化あるいはサイクル数の削減が図ることができる。従って、成膜処理に要する時間の短縮化による装置の生産性の向上を図ることができる。
【0035】
導電路をなす棒状導電部材45を配置する位置は上記の例に限られず、蛇行アンテナ44の上端からプラズマ形成用ボックス42の上方を通過するように窪み領域43の外側へ引き出された後に下方へ向かい、蛇行アンテナ44と共に当該プラズマ形成用ボックス42を左右から挟むように配置されていてもよい。さらに、蛇行アンテナ44の上端に接続された棒状導電部材45の端部が分岐し、分岐した両端がプラズマ形成用ボックス41における窪み領域43の反対側、及び第2のプラズマ形成用ボックス42における窪み領域43の反対側のいずれにも引き回された構成であってもよい。
【0036】
また、棒状導電部材45は、例えば
図7に示すように蛇行アンテナ44の後方側に配置してもよい。このように配置することで、蛇行アンテナ44から見て左右により均一性の高い電界を形成することができるため、プラズマ形成領域PS1、PS2からウエハWに供給されるラジカルの量が互いに揃い、ウエハWにより均一性高い成膜を行うことができる。ただし、この場合も蛇行アンテナ44と棒状導電部材45との間で異常放電が起きないように、これらアンテナ44と導電部材45との間の距離を適切に設定する必要があるため、
図7に示すように例えば棒状導電部材45は窪み領域43の外側に配置される。
図7では表示していないが、処理容器11を覆うシールド19は、このように配置された棒状導電部材45に干渉しないように比較的大きく形成されることになる。つまり、上記の
図1〜
図3で説明した棒状導電部材45の配置によれば、縦型熱処理装置1の大型化を防ぐことができるという利点がある。なお、窪み領域43が前後に長ければ、棒状導電部材45は窪み領域43の外側に配置されることには限られない。
【0037】
ところで、上記のように高周波電源48に接続される導電路46はアンテナの下部側から囲み部材であるシールド19の外に引き出されるが、このアンテナの下部側とは、アンテナの下端よりも下方側、下端と同じ高さ位置、当該高さ位置付近のいずれをも含む意味である。
【0038】
ここではSiN膜を成膜する場合を例にとって説明したが、本発明において成膜する膜種は特に限定されない。また、ここではプラズマ処理としてプラズマALD処理を例にとって説明したが、これに限定されず、プラズマCVD処理、プラズマ改質処理、プラズマ酸化拡散処理、プラズマスパッタ処理、プラズマ窒化処理等のプラズマを用いる全ての処理に対して本発明を適用することができる。ところで、上記のように蛇行アンテナ44を設けることでプラズマ形成領域PS1、PS2に形成されるプラズマは、理論的には既述してきたように誘導結合型プラズマである。ただし、導電体である蛇行アンテナ44と導電体であるシールド19とが互いに電極として機能し、プラズマ形成領域PS1、PS2に形成されるプラズマは、容量結合型プラズマであることも考えられる。
【0039】
評価試験
本発明に関連して行われた評価試験について説明する。この評価試験では既述の縦型熱処理装置1と、本発明の比較例の装置である縦型熱処理装置7と、を用いて行った。
図8は縦型熱処理装置7の概略図を示しており、縦型熱処理装置7は、プラズマ形成用ボックス42、アンモニアガス供給路62及びガスノズル64が設けられないことを除いて、縦型熱処理装置1と同様に構成される。つまり、この縦型熱処理装置7においては、プラズマ形成領域が1つのみ設けられている。
図8についても
図5と同様に、鎖線の矢印で電界を模式的に表示している。
【0040】
(評価試験1)
縦型熱処理装置1、7におけるガス出口17と排気機構18とを接続する排気路に四重極質量分析計を接続し、当該排気路のガス成分の質量について測定可能にした。そして各装置1,7の処理容器11にNH3ガスを供給して当該処理容器11内の圧力を34.7Pa(0.260Torr)とし、高周波電源48をオンにしてプラズマを形成した。このプラズマ形成時において上記の質量分析計による測定を行った。高周波電源48からの供給電力は、装置1、7共に同じ値に設定した。そして得られたスペクトルからm/z=2、即ち水素の量を示すピークの大きさを観察した。
【0041】
図9は、評価試験1の結果を示すグラフである。グラフの縦軸は上記のピークの大きさを示しており、数値の単位は任意単位である。グラフに示すように装置1の測定値の方が、装置7の測定値よりも大きい。即ち、装置1の方が水素の検出量が大きい。試験中、処理容器11内には水素ガスを供給していないため、検出される水素の量は、NH
3ガスの分解によって生じる活性種の量に対応する。つまり、H
2の検出量が多いということは、窒化に必要な各ラジカルが多く生成していることになる。従って、この評価試験1においては、装置1は装置7よりもウエハWに多くのラジカルを供給できることが確認された。
【0042】
ところで、
図8に示すように、蛇行アンテナ44の後方側から見て、縦型熱処理装置7は当該蛇行アンテナ44の左右に発生する電界のうち一方のみを利用してプラズマを形成しているが、縦型熱処理装置1では
図5に示すように両方の電界を利用して、プラズマを形成している。つまり、縦型熱処理装置1は、縦型熱処理装置7に比べて電界をより有効に利用した装置であり、このように電界を有効に利用しているため、ウエハW1枚あたりの処理に要する消費電力を低下させることができるという、装置7に対して有利な効果を備えている。
【0043】
(評価試験2)
表面にパターン即ち凹凸が形成されていないベアウエハをウエハボート3の各スロットに搭載し、縦型熱処理装置1を用いて実施形態で説明した手順でALDを行い、SiN膜を形成した。この成膜処理を評価試験2−1とする。また、縦型熱処理装置1の代わりに縦型熱処理装置7を用いて処理を行った他は、評価試験2−1と同様の条件で成膜処理を行った。この成膜処理を評価試験2−2とする。なお、評価試験2−1では、ガスノズル63、64からNH
3ガスを各々3L/分で吐出し、評価試験2−2では、ガスノズル63からNH
3ガスを6L/分で吐出した。つまり、処理容器11内に供給されるNH3ガスの総流量は互いに等しい。
【0044】
さらに、パターンが形成されているウエハをウエハボート3の各スロットに搭載した他は、評価試験2−1、2−2と同様の条件で夫々縦型熱処理装置1、7を用いて成膜処理を行った。このパターンが形成されたウエハの外形は、上記のベアウエハの外形と同じ大きさであるが、パターンが形成されていることでその表面積はベアウエハの表面積の5倍であり、以下、このパターンが形成されたウエハを5倍パターンウエハとする。そして、当該5倍パターンウエハに対して、縦型熱処理装置1を用いて行った成膜処理を評価試験2−3、縦型熱処理装置7を用いて行った成膜処理を評価試験2−4とする。これら、評価試験2−1〜2−4で成膜された各ウエハについて、ウエハの中心を含む31箇所のSiN膜の膜厚を測定した。そして評価試験2−1、2−2についてはウエハ毎に当該測定値の平均値を算出した。また、評価試験2−3、2−4については下記の式1によりウエハWの面内の膜厚の均一性を表す指標を算出した。この式1中の膜厚の最大値、最小値、平均値は互いに同じウエハの面内から測定された値である。
面内均一性の指標(単位:±%)=(膜厚の最大値−膜厚の最小値)/膜厚の平均値×100・・・式1
【0045】
図10、
図11のグラフは、この評価試験2の結果を示している。各グラフの縦軸は算出された膜厚の平均値(単位:Å)を示している。各グラフの横軸はウエハボート3のスロットの番号を表し、番号が小さいほどウエハボート3の上の方のスロットである。
図10のグラフが、評価試験2−1、2−2の結果を示し、
図11のグラフが評価試験2−3、2−4の結果を示している。
【0046】
図10のグラフより同じスロットにおける評価試験2−1のウエハWの膜厚と、評価試験2−2のウエハWの膜厚と、を比較すると、全てのスロットで評価試験2−1の方が大きい膜厚となっている。従って、評価試験2−1、2−2の結果から、装置1は、装置7よりもウエハに多くの量のラジカルを供給可能であると考えられる。
【0047】
図11のグラフより、上記の面内均一性の指標について同じスロットにおける評価試験2−3の値と評価試験2−4の値とを比較すると、全てのスロットで評価試験2−3の方が低い。つまり、評価試験2−3の方がウエハWの膜厚の面内均一性が高い。このような結果になったのは、評価試験2−4に比べて評価試験2−3の方がウエハWの中心部の膜厚が大きかったためである。従って、装置1によればウエハの表面積が大きい場合にもウエハの中心へラジカルを供給することができ、膜厚の面内均一性を高くすることができるという本発明の効果が確認された。