【実施例】
【0032】
以下、実施例、
参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0033】
[実施例1]
平均粒子径5μmの一般式SiOx(x=1.02)で表される酸化珪素粉末1,000gをバッチ式ロータリーキルン内(内径;200mmφ、長さ;300L、内面積;0.188m
2)に仕込んだ。次に回転数1rpmにて回転させながら、窒素ガスを3NL/min流入させ、300℃/hrの昇温速度で1,000℃まで昇温・保持した。次に、CH
4ガスを3NL/min追加流入し、3時間の黒鉛被覆処理を行った。処理後は降温し、約1,050gの黒色粉末を得た。得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.1μm、BET比表面積=5.5m
2/g、黒鉛被覆率=5.2質量%の黒鉛被覆粒子であった(黒鉛被覆量=55g)。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.10kg/hr・m
2となる。なお、この粉末を顕微ラマン分析(HORIBA製 XploRA PLUSを使用、532nmの緑色レーザーにて測定)を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=47.3counts,I
G強度=46.5countsであり、その強度比I
si/I
Gは1.0であった。
【0034】
[電池評価]
次に、以下の方法で、得られた導電性粉末を負極活物質として用いた電池評価を行った。
まず、得られた導電性粉末にポリイミドを10質量%加え、さらにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとし、このスラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布し、80℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、この電極を350℃で1時間真空乾燥した後、2cm
2に打ち抜き、負極とした。
【0035】
ここで、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0036】
作製したリチウムイオン二次電池は、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用い、テストセルの電圧が0Vに達するまで0.5mA/cm
2の定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が40μA/cm
2を下回った時点で充電を終了した。放電は0.5mA/cm
2の定電流で行い、セル電圧が2.0Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。
【0037】
以上の充放電試験を繰り返し、評価用リチウムイオン二次電池の50サイクル後の充放電試験を行った。その結果、初回充電容量1,880mAh/g、初回放電容量1,520mAh/g、初回充放電効率80.9%、50サイクル目の放電容量1,400mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率92.1%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0038】
[実施例2]
仕込量を500g、黒鉛被覆処理温度を950℃、処理時間を5時間とした他は実施例1と同様の条件で黒鉛被覆処理を行った。
得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.1μm、BET比表面積=6.8m
2/g、黒鉛被覆率=5.1質量%の黒鉛被覆粒子であった(黒鉛被覆量=27g)。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.03kg/hr・m
2となる。なお、この粉末を顕微ラマン分析を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=42.1counts,I
G強度=55.8countsであり、その強度比I
si/I
Gは0.8であった。
【0039】
この黒鉛被覆粒子を実施例1と同様な方法で電池評価を行った結果、初回充電容量1,910mAh/g、初回放電容量1,510mAh/g、初回充放電効率79.1%、50サイクル目の放電容量1,400mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率92.7%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0040】
[実施例3]
CH
4量を1NL/min、処理時間を10時間とした他は実施例1と同様な条件で黒鉛被覆処理を行った。
得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.1μm、BET比表面積=6.3m
2/g、黒鉛被覆率=4.9質量%の黒鉛被覆粒子であった(黒鉛被覆量=52g)。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.03kg/hr・m
2となる。なお、この粉末について顕微ラマン分析を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=46.3counts,I
G強度=54.5countsであり、その強度比I
si/I
Gは0.8であった。
【0041】
この黒鉛被覆粒子を実施例1と同様な方法で電池評価を行った結果、初回充電容量1,890mAh/g、初回放電容量1,510mAh/g、初回充放電効率79.9%、50サイクル目の放電容量1,400mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率92.7%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0042】
[
参考例1]
CH
4量を10NL/min、処理時間を1時間とした他は実施例1と同様の条件で黒鉛被覆処理を行った。
得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.2μm、BET比表面積=4.8m
2/g、黒鉛被覆率=4.8質量%の黒鉛被覆粒子であった(黒鉛被覆量=50g)。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.27kg/hr・m
2となる。なお、この粉末について顕微ラマン分析を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=75.3counts,I
G強度=40.8countsであり、その強度比Isi/I
Gは1.8であった。
【0043】
この黒鉛被覆粒子を実施例1と同様の方法で電池評価を行った結果、初回充電容量1,850mAh/g、初回放電容量1,480mAh/g、初回充放電効率80.0%、50サイクル目の放電容量1,360mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率91.9%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0044】
[実施例
4]
CH
4量を1NL/min、処理時間を15時間とした他は実施例1と同様な条件で黒鉛被覆処理を行った。
得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.1μm、BET比表面積=7.2m
2/g、黒鉛被覆率=7.2質量%の黒鉛被覆粒子であった(黒鉛被覆量=78g)。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.03kg/hr・m
2となる。なお、この粉末について顕微ラマン分析を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=0counts,I
G強度=80.3countsであり、その強度比I
si/I
Gは0であった。
【0045】
この黒鉛被覆粒子を実施例1と同様な方法で電池評価を行った結果、初回充電容量1,830mAh/g、初回放電容量1,460mAh/g、初回充放電効率79.8%、50サイクル目の放電容量1,360mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率93.2%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0046】
[
参考例2]
CH
4量を8NL/min、処理時間を1時間とした他は実施例1と同様の条件で黒鉛被覆処理を行った。
得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.1μm、BET比表面積=4.5m
2/g、黒鉛被覆率=4.3質量%の黒鉛被覆粒子であった(黒鉛被覆量=45g)。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.24kg/hr・m
2となる。なお、この粉末について顕微ラマン分析を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=80.3counts,I
G強度=40.1countsであり、その強度比I
si/I
Gは2.0であった。
【0047】
この黒鉛被覆粒子を実施例1と同様な方法で電池評価を行った結果、初回充電容量1,860mAh/g、初回放電容量1,480mAh/g、初回充放電効率79.6%、50サイクル目の放電容量1,350mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率91.2%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0048】
[比較例1]
CH
4量を12NL/min、処理時間を0.8時間とした他は実施例1と同様の条件で黒鉛被覆処理を行った。
得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.2μm、BET比表面積=4.5m
2/g、黒鉛被覆率=4.9質量%の黒鉛被覆粒子であり(黒鉛被覆量=52g)、粗大粒の形成が見られた。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.34kg/hr・m
2となる。なお、この粉末の顕微ラマン分析を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=82.5counts,I
G強度=36.6countsであり、その強度比I
si/I
Gは2.3であった。
【0049】
この黒鉛被覆粒子を実施例1と同様な方法で電池評価を行った結果、初回充電容量1,840mAh/g、初回放電容量1,450mAh/g、初回充放電効率78.8%、50サイクル目の放電容量1,300mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率89.7%であり、明らかに実施例に比べ、初回充放電容量、サイクル性に劣るリチウムイオン二次電池であった。
【0050】
[比較例2]
黒鉛被覆処理温度を1,100℃、処理時間を0.5時間とした他は実施例1と同様の条件で黒鉛被覆処理を行った。
得られた黒色粉末は、平均粒子径=5.3μm、BET比表面積=4.3m
2/g、黒鉛被覆率=5.5質量%の黒鉛被覆粒子であり(黒鉛被覆量=58g)、粗大粒の形成が見られた。この条件でのロータリーキルン内面積当たりの黒鉛被覆速度は0.62kg/hr・m
2となる。なお、この粉末を顕微ラマン分析を行った結果、ラマンスペクトルは、ラマンシフトが500cm
-1(I
si)と1,580cm
-1(I
G)付近にスペクトルを有しており、I
si強度=86.5counts,I
G強度=32.6countsであり、その強度比I
si/I
Gは2.7であった。
【0051】
この黒鉛被覆粒子を実施例1と同様な方法で電池評価を行った結果、初回充電容量1,780mAh/g、初回放電容量1,400mAh/g、初回充放電効率78.7%、50サイクル目の放電容量1,220mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率87.1%であり、明らかに実施例に比べ、初回充放電容量、サイクル性に劣るリチウムイオン二次電池であった。
【0052】
実施例1〜
4、参考例1,2、比較例1,2の結果を表1〜4に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】