(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上に形成された光学膜と、該光学膜の上記基板と離間する側に接して形成された薄膜とを有し、該薄膜が最表層として形成されたフォトマスクブランクの表面部に存在する欠陥を、検査光学系を用いて検査する方法であって、
(A1)上記フォトマスクブランクを準備する工程と、
(A2)該フォトマスクブランクの上記光学膜及び薄膜の態様に対応する検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準を選択して指定する工程と、
(A3)上記フォトマスクブランクを移動させて、上記欠陥を上記検査光学系の観察位置に移動させ、
上記(A2)工程で指定した検査処理手順に基づき、上記欠陥と検査光学系の対物レンズとの間の距離を保って、検査光を、上記欠陥を含む領域に照射し、
検査光が照射された領域からの反射光を、検査光学系を介して上記領域の拡大像として収集する工程と、
(A4)上記拡大像の光強度分布から、上記(A2)工程で指定した判定基準に基づき、上記欠陥の凹凸形状を判定する工程
とを含むことを特徴とするフォトマスクブランクの欠陥検査方法。
上記(A4)工程が、上記拡大像における欠陥部の光強度レベルの変化を欠陥周辺部の光強度レベルと比較する処理と、該処理の結果を上記判定基準と対比する処理とを含むことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査方法。
上記(A2)の検査処理手順が、上記(A3)工程についての複数種の検査条件を含み、上記検査処理手順に含まれる全ての検査条件について、順次上記(A3)工程を実施した後、上記(A4)工程を実施することを特徴とする請求項1又は2記載の欠陥検査方法。
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における上記距離が、フォーカス距離である検査条件と、デフォーカス距離である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4記載の欠陥検査方法。
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における上記距離が、フォーカス距離である検査条件と、正のデフォーカス距離である検査条件と、負のデフォーカス距離である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4記載の欠陥検査方法。
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における検査光の照射条件が、無偏光である検査条件と、偏光である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における検査光の照射条件が、無偏光である検査条件と、TE偏光である検査条件と、TM偏光である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における上記距離及び検査光の照射条件が、正のデフォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、正のデフォーカス距離及びTM偏光である検査条件と、負のデフォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、負のデフォーカス距離及びTM偏光である検査条件とを含み、各々の検査条件で拡大像を収集することを特徴とする請求項4記載の欠陥検査方法。
上記複数種の検査条件が、更に、上記(A3)工程における上記距離及び検査光の照射条件が、フォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、フォーカス距離及びTM偏光である検査条件とを含むことを特徴とする請求項9記載の欠陥検査方法。
上記(A4)工程が、各々の拡大像における欠陥部の光強度レベルの最小値を算出する処理と、該処理の結果を上記判定基準と対比する処理とを含むことを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
上記検査光を、その光軸が上記薄膜の検査光が照射される面の法線に対して所定の角度傾斜する斜方照明により照射することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
上記(A3)工程において、フォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、上記ステージを上記面内方向に移動させて、上記欠陥と上記検査光学系の対物レンズとを近接させることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項1乃至16のいずれか1項記載の欠陥検査方法により判定された欠陥の凹凸形状に基づき、凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することを特徴とするフォトマスクブランクの選別方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの回路パターンの継続的な微細化に伴って、波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いたArFリソグラフィ技術が駆使されるとともに、露光プロセスや加工プロセスを複数回組み合わせるマルチパターニングというプロセスを採用することにより、最終的には露光波長と比べて十分に小さい寸法のパターンを形成する技術が精力的に検討されている。上述したように、転写用マスクは、微細パターンの原版として使用されるので、パターン転写の忠実性を阻害する転写用マスク上の欠陥はすべて排除しなければならない。従って、フォトマスクブランクの製造段階においても、マスクパターン形成において障害となる欠陥をすべて検出する必要がある。
【0007】
転写用マスクにおいて、凹欠陥、特にピンホール欠陥は、フォトマスクパターンの形成において致命的となる。一方で、凸欠陥については、欠陥の高さにもよるが、フォトマスクパターンの形成において致命的にならない場合もある。また、表面に付着した異物に起因する凸欠陥は、洗浄で除去可能であれば致命的な欠陥とはならない。そのため、これらの凸欠陥の全てを致命的な欠陥として、フォトマスクブランクを不良品として排除すると、歩留りの低下をもたらす。従って、欠陥検査においては、欠陥の凹凸形状を、高い精度で区別することが、致命的な欠陥を有するフォトマスクブランクの確実な排除と、歩留の確保との両面から極めて重要である。
【0008】
上記特許文献1〜4に記載されている検査装置は、いずれも光学的な欠陥検出法を採用した装置である。光学的な欠陥検出法は、比較的短時間での広域欠陥検査を可能とし、光源の短波長化などにより、微細欠陥の精密検出も可能となるという利点がある。また、上記特許文献1〜4に記載されている検査装置は、斜方照明法や空間フィルタを用いた検査光学系で得られた検査信号の明部と暗部の位置関係から、欠陥の凹凸を判定できる方法を提供している。更に、上記特許文献5には、検査対象がEUVマスクブランクに限られるが、位相欠陥の凹凸形状を判定する方法が記載されている。
【0009】
しかし、原子間力顕微鏡や電子顕微鏡を併用した検査実験によれば、フォトマスクブランクの検査信号の明部と暗部との配置を調べる方法では、欠陥の凹凸形状の判定ができない場合があることがわかった。具体的には、ピンホール欠陥などの凹欠陥の検査信号において、凹凸形状を区別するための明部と暗部の位置関係が不明瞭な場合や、凹欠陥と判断された欠陥の中には凸欠陥が含まれる場合などがあることがわかった。特に、ハードマスク膜などの加工補助膜には、先端のフォトマスクの加工のためには、例えば、厚さが10nm以下のものが用いられるが、このような厚さの薄膜における欠陥の凹凸形状の判定に、このような問題が発生しやすいことがわかった。
【0010】
上記特許文献1〜4に記載されている欠陥検査方法では、必ずしも欠陥の凹凸形状を高い精度で判定することができるとは限られない。また、上記特許文献5に記載されている欠陥検査方法は、EUVマスクブランク固有の位相欠陥に適用され、現在主流のArFリソグラフィに使用されるフォトマスクブランクには、適用が困難な方法である。そのため、従来の手法では困難であった、薄膜化されたハードマスク膜に存在する欠陥の凹凸形状を高い精度で判定する手法の確立が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光学的な欠陥検出法を用いて、欠陥の表面形状の凹凸を高い信頼性で判定できる欠陥検査方法、特に、マスクパターンの加工の際の加工補助膜として用いられるハードマスク膜のような、膜厚が10nm以下の薄膜に存在する欠陥を検査する方法、並びにこの欠陥検査方法を適用したフォトマスクブランクの選別方法及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、光学膜上に形成されたハードマスク膜のような膜厚が10nm以下の薄膜に存在する欠陥の検査方法について、その光学的検出法による実測とシミュレーションとの両面から検討し、光学膜及びその上に形成された薄膜の検査光に対する反射率や複素屈折率の値などに依存して、光学的検出法に基づく観察画像の光強度の明暗の変化や、その位置関係が、欠陥の態様によって異なることを知見した。
【0013】
そして、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、上記光学膜及び薄膜の態様と、欠陥の態様とに応じた検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準を定め、検査処理手順及び判定基準に従って、光学的検出法により、欠陥の検査画像を収集して、検査画像の光強度分布(光強度プロファイル)、特に、明暗の配置や、明暗の光強度又は強度差を評価することによって、凹欠陥と凸欠陥とをより正確に区別できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
従って、本発明は、以下のフォトマスクブランクの欠陥検査方法、選別方法及び製造方法を提供する。
請求項1:
基板上に形成された光学膜と、該光学膜の上記基板と離間する側に接して形成された薄膜とを有し、該薄膜が最表層として形成されたフォトマスクブランクの表面部に存在する欠陥を、検査光学系を用いて検査する方法であって、
(A1)上記フォトマスクブランクを準備する工程と、
(A2)該フォトマスクブランクの上記光学膜及び薄膜の態様に対応する検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準を選択して指定する工程と、
(A3)上記フォトマスクブランクを移動させて、上記欠陥を上記検査光学系の観察位置に移動させ、
上記(A2)工程で指定した検査処理手順に基づき、上記欠陥と検査光学系の対物レンズとの間の距離を保って、検査光を、上記欠陥を含む領域に照射し、
検査光が照射された領域からの反射光を、検査光学系を介して上記領域の拡大像として収集する工程と、
(A4)上記拡大像の光強度分布から、上記(A2)工程で指定した判定基準に基づき、上記欠陥の凹凸形状を判定する工程
とを含むことを特徴とするフォトマスクブランクの欠陥検査方法。
請求項2:
上記(A4)工程が、上記拡大像における欠陥部の光強度レベルの変化を欠陥周辺部の光強度レベルと比較する処理と、該処理の結果を上記判定基準と対比する処理とを含むことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査方法。
請求項3:
上記(A3)工程における上記距離がフォーカス距離であり、検査光の照射条件が、無偏光であることを特徴とする請求項1又は2記載の欠陥検査方法。
請求項4:
上記(A2)の検査処理手順が、上記(A3)工程についての複数種の検査条件を含み、上記検査処理手順に含まれる全ての検査条件について、順次上記(A3)工程を実施した後、上記(A4)工程を実施することを特徴とする請求項1又は2記載の欠陥検査方法。
請求項5:
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における上記距離が、フォーカス距離である検査条件と、デフォーカス距離である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4記載の欠陥検査方法。
請求項6:
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における上記距離が、フォーカス距離である検査条件と、正のデフォーカス距離である検査条件と、負のデフォーカス距離である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4記載の欠陥検査方法。
請求項7:
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における検査光の照射条件が、無偏光である検査条件と、偏光である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項8:
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における検査光の照射条件が、無偏光である検査条件と、TE偏光である検査条件と、TM偏光である検査条件とを含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項9:
上記複数種の検査条件が、上記(A3)工程における上記距離及び検査光の照射条件が、正のデフォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、正のデフォーカス距離及びTM偏光である検査条件と、負のデフォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、負のデフォーカス距離及びTM偏光である検査条件とを含み、各々の検査条件で拡大像を収集することを特徴とする請求項
4記載の欠陥検査方法。
請求項10:
上記複数種の検査条件が、更に、上記(A3)工程における上記距離及び検査光の照射条件が、フォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、フォーカス距離及びTM偏光である検査条件とを含むことを特徴とする請求項9記載の欠陥検査方法。
請求項11:
上記(A4)工程が、各々の拡大像における欠陥部の光強度レベルの最小値を算出する処理と、該処理の結果を上記判定基準と対比する処理とを含むことを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項12:
上記薄膜がハードマスク膜であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項13:
上記薄膜の膜厚が10nm以下であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項14:
上記検査光が、波長210〜550nmの光であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項15:
上記検査光を、その光軸が上記薄膜の検査光が照射される面の法線に対して所定の角度傾斜する斜方照明により照射することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項16:
上記(A3)工程において、フォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、上記ステージを上記面内方向に移動させて、上記欠陥と上記検査光学系の対物レンズとを近接させることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項17:
請求項1乃至16のいずれか1項記載の欠陥検査方法により判定された欠陥の凹凸形状に基づき、凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することを特徴とするフォトマスクブランクの選別方法。
請求項18:
基板上に光学膜と、該光学膜の上記基板と離間する側に接して、薄膜を最表層として形成する工程と、
請求項1乃至16のいずれか1項記載の欠陥検査方法により、上記薄膜に存在する欠陥の凹凸形状を判定する工程と
を含むことを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光学的な欠陥検査方法を用いて、欠陥の凹凸形状を高い信頼性で区別して、フォトマスクブランクの欠陥を検査することができる。また、本発明の欠陥検査方法を適用することにより、致命的な欠陥である凹欠陥を有するフォトマスクブランクを確実に排除することができ、致命的な欠陥を含まないフォトマスクブランクを、より低コスト、かつ高い歩留まりで提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
フォトマスクブランクの薄膜にピンホールなどの欠陥が存在すると、これを用いて作製したフォトマスク上のマスクパターンの欠陥の原因となる。フォトマスクブランクの典型的な凹欠陥の例を
図1に示す。
図1(A)は、透明基板101上に、遮光膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などとして機能する光学膜102と、光学膜102の高精度な加工を行なうためのハードマスク膜(加工補助膜)103が形成されているフォトマスクブランク100を示す断面図である。この場合、ハードマスク膜103にはピンホール欠陥DEF1が存在している。このようなフォトマスクブランク100から、通常の製造工程によりフォトマスクを製造すると、光学膜102の、ハードマスク膜103のピンホール欠陥DEF1に対応する位置に、ピンホール欠陥が形成されてしまうことになるため、
図1(B)に示されるフォトマスク100aのように、フォトマスクブランク由来の欠陥DEF2が光学膜パターン102aに存在するフォトマスクとなってしまう。そして、このような欠陥は、フォトマスクを用いた露光において、パターン転写エラーを引き起こす原因となる。そのため、フォトマスクブランクの欠陥は、フォトマスクブランクを加工する前の段階で検出して、欠陥を有するフォトマスクブランクを排除したり、欠陥の修正を施したりする必要がある。
【0018】
一方、
図2はフォトマスクブランクの凸欠陥の例を示す図であり、透明基板101上に、光学膜102と、ハードマスク膜103が形成され、ハードマスク膜103に、ハードマスク膜103と一体に形成された凸欠陥DEF3が存在するフォトマスクブランク100の例を示す断面図である。このようなフォトマスクブランク100では、
図1(B)に示される場合のような、光学膜102のピンホール欠陥DEF2は形成されないので、このような凸欠陥は、通常は、致命的な欠陥とはならない。また、表面に付着した異物に起因する凸欠陥は、洗浄で除去可能であれば、致命的な欠陥とはならない。
【0019】
このように、フォトマスクブランクに存在する欠陥が、致命的な欠陥であるピンホールなどの凹欠陥か、必ずしも致命的な欠陥ではない凸欠陥かの判定は、フォトマスクブランクの品質保証と、フォトマスクブランク製造における歩留りのカギを握ることになる。そこで、光学的な検査手法により高い信頼性で欠陥の凹凸形状を区別できる方法が望まれる。
【0020】
まず、フォトマスクブランクの欠陥検査に好適に用いられる検査光学系、具体的には、フォトマスクブランクの表面部における欠陥の凹凸形状を判定するために好適に用いられる検査光学系について説明する。
図3は検査光学系の基本構成の一例を示す概念図であり、光源ILS、ビームスプリッタBSP、対物レンズOBL、フォトマスクブランクMBを載置し移動できるステージSTG及び画像検出器SEを備えている。光源ILSは、波長が210nm〜550nm程度の光を射出することができるように構成されており、この光源ILSから射出された検査光BM1は、ビームスプリッタBSPで折り曲げられ、対物レンズOBLを通してフォトマスクブランクMBの所定領域を照射する。フォトマスクブランクMB表面で反射した光BM2は対物レンズOBLで集められるとともに、ビームスプリッタBSP、レンズL1を透過して画像検出器SEの受光面に到達する。このとき、画像検出器SEの受光面にマスクブランクMBの表面の拡大検査画像が形成されるように画像検出器SEの位置が調整されている。そして、画像検出器SEで収集された拡大検査画像のデータは、画像処理演算を施すことにより、欠陥の寸法演算や凹凸形状の判定がなされ、それらの結果は欠陥情報として記録されるようになっている。
【0021】
拡大検査画像は、例えば、画像検出器SEを、CCDカメラのような多数の光検出素子を画素として配列した検出器とし、フォトマスクブランクMBの表面で反射した光BM2が対物レンズOBLを介して形成する拡大像を2次元画像として一括して収集する直接法で収集することができる。また、検査光BM1を走査手段でマスクブランクMBの表面上を走査し、反射光BM2の光強度を、逐次、画像検出器SEで収集し、光電変換して記録して、全体の2次元画像を生成する方法を採用してもよい。更に、
図3に示されるように、反射光BM2の一部を遮蔽する空間フィルタSPFを、検査光学系の瞳位置、例えば、反射光BM2の光路上、特に、ビームスプリッタBSPとレンズL1との間に配設してもよく、この場合、必要に応じて反射光BM2の光路の一部を遮蔽して、拡大検査画像を、画像検出器SEで捉えることができる。検査光BM1の入射角度は、フォトマスクブランクMBに対して所定の角度に設定することができる。なお、検査する欠陥の位置決めは、対象とする欠陥を、対物レンズOBLで観察可能な位置に位置決めすればよいが、この場合は、フォトマスクブランクMBがマスクステージSTGに載置されており、マスクステージSTGの移動により、対物レンズOBLで観察可能な位置に位置決めできるようになっている。なお、図示されていないが、光路の中の所定位置に、適宜偏光板を挿入して、偏光照明とすることも可能である。
【0022】
次に、
図3に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランク表面部の欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を、合焦点距離(本発明においては、これをフォーカス距離と称する)に設定して反射光を収集したときの、凹欠陥と凸欠陥の検査画像の相違について
図4及び
図5を示して説明する。
図4(A)は、
図3に示される検査光学系から、検査光BM1が、典型的な凹欠陥DEF4を含むフォトマスクブランクの表面MBSに対して左斜め方向から照明されている例を示す概念図である。このような斜方照明は、例えば、
図3に示される光源ILSからフォトマスクブランクに射出される検査光BM1の位置を、所定のアパーチャ(絞り)を介して制御することにより実現することができる。この場合、凹欠陥DEF4の図中左側の側面LSFで反射された反射光BM2は、正反射により、対物レンズOBLよりも右側に集中するので、対物レンズOBLに十分には取り込まれない。一方、凹欠陥DEF4の図中右側の側面RSFで反射された反射光は、正反射により、対物レンズOBLに十分に取り込まれる。その結果、画像検出器SEで得られる検査画像の光強度分布は、凹欠陥DEF4の左側は暗部、右側は明部となり、
図4(B)に示されるような断面プロファイルPR1となる。
【0023】
一方、
図5(A)は、
図3に示される検査光学系から、検査光BM1が、典型的な凸欠陥DEF5を含むフォトマスクブランクの表面MBSに対して左斜め方向から照明されている例を示す概念図である。この場合、凸欠陥DEF5の図中左側の側面LSFで反射された反射光BM2は、正反射により、対物レンズOBLに十分に取り込まれる。一方、凸欠陥DEF5の図中右側の側面RSFで反射された反射光は、正反射により、対物レンズOBLよりも右側に集中するので、対物レンズOBLに十分には取り込まれない。その結果、画像検出器SEで得られる検査画像の光強度分布は、凸欠陥DEF5の左側は明部、右側は暗部となり、
図5(B)に示されるような断面プロファイルPR2となる。
【0024】
また、
図3に示されるように、検査光学系において、反射光の光路上に反射光の一部を遮蔽する空間フィルタSPFを設け、空間フィルタSPFを通して反射光を収集するように構成した場合、フォトマスクブランクの表面に、検査光を垂直方向から照射しても、上述した斜方照明を用いた場合のように、検査画像に明暗を生じさせることができる。この場合、例えば、反射光の光路の半分を遮蔽すれば、検査光の入射側を基準にして、検査画像の明暗の位置関係又は光強度の差から、欠陥の凹凸形状を判定することができる。
【0025】
以上のように、典型的な凹欠陥及び凸欠陥では、斜方照明を適用することにより、得られた検査画像の明暗の位置関係から、欠陥の凹凸形状を判定することができる。
図4及び
図5では、図中左側からの斜方照明の例を示したが、照明方向は任意に設定でき、得られた検査画像において、検査光の入射側を基準にして、検査画像の明暗の位置関係又は光強度の差から同様に、欠陥の凹凸形状を判定することが可能である。
【0026】
しかし、フォトマスクブランクの膜の態様によっては、上述した検査画像の明暗の位置関係だけでは、欠陥が凹欠陥か凸欠陥かを正しく判定できない場合がある。このような場合の例について、以下に説明する。
【0027】
〔第1の膜態様〕
まず、透明基板上に、透明基板から離間する最表面層として反射率が高い膜(後述する例では、ハードマスク膜103がこれに該当する)、この反射率が高い膜の透明基板側に接して反射率が同じ又は反射率が低い膜(後述する例では、光学膜102がこれに該当する)が、各々形成され、反射率が高い膜の膜厚が薄い場合の検査画像の光強度分布について説明する。
【0028】
図6(A)及び(B)は、各々、凹欠陥を有するフォトマスクブランク100の平面図及び断面図である。これらは、検査光に対して透明な石英基板などの透明基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、及び厚さ10nm程度のCr系材料からなるハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103にピンホール欠陥などの凹欠陥DEF6が存在している状態を示している。この凹欠陥DEF6に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離に設定し、
図3に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面MBSに斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集した場合、
図6(C)に示される光強度分布の検査画像が得られ、
図6(C)のA−A’線に沿った断面における光強度分布は、
図6(D)に示されるような断面プロファイルPR3となる。この場合、検査画像の光強度分布は、凹欠陥DEF6の部分で明部が現れず、暗部のみとなり、
図4に示される典型的な凹欠陥の検査画像の光強度分布に対応しない。
【0029】
この場合の凹欠陥が暗部のみとして観察される理由は、凹欠陥DEF6の深さがないため欠陥の側面からの反射光の光量が少なく、光強度変化に対して検査光の反射率の影響の方が大きいためであると考えられる。
図7は、
図6(A)及び(B)に示されるフォトマスクブランク100のMoSi系材料からなる光学膜102の上に形成されたCr系材料からなるハードマスク膜103の厚さと、検査光の反射率との関係を示す図である。
図7中、厚さが0のときの反射率は、ハードマスク膜103の凹欠陥部の反射率(図中、REF10)に相当し、この反射は、光学膜102からの反射である。一方、ハードマスク膜103が所定の厚さ(図中、TH1)のときの反射率は、ハードマスク膜103の欠陥のない部分(例えば欠陥周辺部)の反射率(図中、REF11)に相当し、この反射は、ハードマスク膜103からの反射である。この場合、REF11に対してREF10が低い(REF10<REF11)ため、凹欠陥部は、全体が暗部として観察されると考えられる。このように、ハードマスク膜103のみに凹欠陥が形成されている場合には、観察画像における欠陥部の光強度分布は、
図4に示される左側が暗部、右側が明部の典型的な凹欠陥の分布にはならない。
【0030】
しかし、凹欠陥が十分に深い場合、例えば、凹欠陥が、ハードマスク膜103を貫通して、更に光学膜102にも形成されている場合には、欠陥の側面からの反射光の光量が相応に多くなり、左右の側面からの反射光の光量に十分な差が生じるため、
図4に示される典型的な凹欠陥の検査画像の光強度分布に対応した左側が暗部、右側が明部の観察画像が得られる。
【0031】
一方、
図8(A)は、凸欠陥を有するフォトマスクブランク100の断面図である。これは、検査光に対して透明な石英基板などの透明基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、及び厚さ10nm程度のCr系材料からなるハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103に、ハードマスク膜103と同質の材料(例えば、Cr系材料)からなる凸欠陥DEF7が存在している状態を示している。この凸欠陥DEF7に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離に設定し、
図3に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面に斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集した場合、
図8(B)に示される光強度分布の検査画像が得られ、
図8(B)のA−A’線に沿った断面における光強度分布は、
図8(C)に示されるような断面プロファイルPR4となる。この場合、検査画像の光強度分布は、凸欠陥DEF7の部分で、左側は明部、右側は暗部となり、
図5に示される典型的な凸欠陥の場合と同様の光強度分布を示す。
【0032】
以上から、第1の膜態様の場合の欠陥の凹凸形状は、観察画像の光強度分布において、(1−1)欠陥部が暗部のみであれば、反射率の高い膜(ハードマスク膜103)のみに形成された凹欠陥、
(1−2)欠陥部の左側が暗部、右側が明部であれば、反射率の高い膜(ハードマスク膜103)を貫通して、更に反射率が高い膜と反射率が同じ又は反射率が低い膜(光学膜102)にも形成されている凹欠陥、
(1−3)欠陥部の左側が明部、右側が暗部であれば凸欠陥
と判定することができる。
【0033】
第1の膜態様の判定基準は、
図4及び
図5に示される典型的な凹欠陥及び凸欠陥の場合と異なる基準であり、第1の膜態様の場合に特有の判定基準である。この第1の膜態様の判定基準は、透明基板から離間する最表面層として反射率が高い膜、この反射率が高い膜の透明基板側に接して反射率が同じ又は反射率が低い膜が各々形成され、反射率が高い膜の膜厚が薄い場合、例えば、膜厚が5〜10nmの場合に好適である。
【0034】
〔第2の膜態様〕
次に、透明基板上に、透明基板から離間する最表面層として検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜(後述する例では、ハードマスク膜103がこれに該当する)、この検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜の透明基板側に接して検査光に対して不透明又は半透明膜(後述する例では、光学膜202がこれに該当する)が、各々形成され、検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜の膜厚が薄い場合の検査画像の光強度分布について説明する。
【0035】
図9(A)は、凹欠陥を有するフォトマスクブランク100の断面図である。これは、検査光に対して透明な石英基板などの透明基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、Cr系材料からなる光学膜202、及び厚さ5〜10nm程度の検査光に対して実質的に透明な材料、例えば酸化ケイ素からなるハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103に、ピンホール欠陥などの凹欠陥DEF8が存在している状態を示している。この凹欠陥DEF8に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離に設定し、
図3に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面に斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集した場合、
図9(B)に示される光強度分布の検査画像が得られ、
図9(B)のA−A’線に沿った断面における光強度分布は、
図9(C)に示されるような断面プロファイルPR5となる。この場合、検査画像の光強度分布は、凹欠陥DEF8の部分で、左側がわずかに暗いものの、明部が支配的で、実質的には明部のみであり、
図4に示される典型的な凹欠陥の検査画像の光強度分布のような明瞭な明暗の差が現われない。
【0036】
この場合の凹欠陥が、明部が支配的に観察される理由は、
図6(A)〜(D)に示される第1の膜態様の凹欠陥DEF6の場合と同様に、凹欠陥DEF8の深さがないため欠陥の側面からの反射光の光量が少なく、光強度変化に対して検査光の反射率の影響の方が大きいためであると考えられる。
図10は、
図9(A)に示されるフォトマスクブランク100のCr系材料からなる光学膜202の上に形成された検査光に対して実質的に透明な材料からなるハードマスク膜103の厚さと、検査光の反射率との関係を示す図である。
図10中、厚さが0のときの反射率は、ハードマスク膜103の凹欠陥部の反射率(図中、REF20)に相当し、この反射は、光学膜202からの反射である。一方、ハードマスク膜103が所定の厚さ(図中、TH2)のときの反射率は、ハードマスク膜103の欠陥のない部分(例えば欠陥周辺部)の反射率(図中、REF21)に相当し、この反射は、ハードマスク膜103からの反射である。この場合、REF21に対してREF20が高い(REF20>REF21)ため、凹欠陥部は、明部が支配的に観察されると考えられる。このように、ハードマスク膜103のみに凹欠陥が形成されている場合には、観察画像における欠陥部の光強度分布は、
図4に示される左側が暗部、右側が明部の典型的な凹欠陥のようにはならない。
【0037】
しかし、凹欠陥が十分に深い場合、例えば、凹欠陥が、ハードマスク膜103を貫通して、更に光学膜202にも形成されている場合には、欠陥の側面からの反射光の光量が相応に多くなり、左右の側面からの反射光の光量に十分な差が生じるため、
図4に示される典型的な凹欠陥の検査画像の光強度分布に対応した左側が暗部、右側が明部の観察画像が得られる。
【0038】
図11(A)は、凹欠陥を有するフォトマスクブランク100の断面図である。これは、検査光に対して透明な石英基板などの透明基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、Cr系材料からなる光学膜202、及び厚さ5〜10nm程度の検査光に対して実質的に透明な材料、例えば酸化ケイ素からなるハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103を貫通して、更に光学膜202にもピンホール欠陥などの凹欠陥DEF9が存在している状態を示している。この凹欠陥DEF9に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離に設定し、
図3に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面に斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集した場合、
図11(B)に示される光強度分布の検査画像が得られ、
図11(B)のA−A’線に沿った断面における光強度分布は、
図11(C)に示されるような断面プロファイルPR6となる。この場合、検査画像の光強度分布は、凹欠陥DEF9の部分で、左側は暗部、右側は明部となり、
図4に示される典型的な凹欠陥の場合と同様の光強度分布を示す。
【0039】
一方、
図12(A)及び(B)は、各々、凸欠陥を有するフォトマスクブランク100の平面図及び断面図である。これらは、検査光に対して透明な石英基板などの透明基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、Cr系材料からなる光学膜202、及び厚さ5〜10nm程度の検査光に対して実質的に透明な材料、例えば酸化ケイ素からなるハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103に、ハードマスク膜103と同質の材料(例えば、検査光に対して実質的に透明な材料)からなる凸欠陥DEF10が存在している状態を示している。この凸欠陥DEF10に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離に設定し、
図3に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面MBSに斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集した場合、
図12(C)に示される光強度分布の検査画像が得られ、
図12(C)のA−A’線に沿った断面における光強度分布は、
図12(D)に示されるような断面プロファイルPR7となる。この場合、検査画像の光強度分布は、凸欠陥DEF10の部分で、左側は暗部、右側は明部となり、特に、高さが50nmを超える凸欠陥において、より明瞭な暗部と明部が現われる。
【0040】
このように、ハードマスク膜などの薄膜に、薄膜と同質の材料からなる凸欠陥が形成されている場合には、観察画像における欠陥部の光強度分布は、
図5に示される左側が明部、右側が暗部の典型的な凸欠陥のようにはならない。しかも、この場合、
図11(A)〜(C)に示される、凹欠陥が、ハードマスク膜103を貫通して、更に、光学膜202にも形成されている場合と同じ検査画像の明暗の位置関係を示すため、両者の区別がつかない。
【0041】
ところが、
図11(A)に示されるような凹欠陥と、
図12(A)及び(B)に示されるような凸欠陥に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を、フォーカス距離から外れたデフォーカス距離に設定すると共に、斜方照明する検査光を、異なる偏光条件(TE偏光又はTM偏光)で照射して、その反射光を収集すると、TM偏光で得られる観察画像の光強度の最小値の、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離に対する依存性(以下、単に距離依存性と称する)に違いがあることがわかった。
【0042】
図13はこの違いを示す図であり、
図13(A)は、
図11(A)に示される凹欠陥
DEF9を有するフォトマスクブランク100の断面図、
図13(B)は、
図12(B)に示される凸欠陥DEF10を有するフォトマスクブランク100の断面図である。
【0043】
これらの凹欠陥DEF9及び凸欠陥DEF10に、
図3に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面に斜方照明により、TE偏光又はTM偏光で、図中左側から検査光を照射して、反射光を収集すると、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離が合焦点に設定されたフォーカス距離(Δz=0、なお、Δzは、フォーカス距離との差を示す(以下同じ))の場合は、凹欠陥DEF9の光強度分布の断面プロファイルとして、
図13(E)に示されるPR12(TE偏光)及びPR13(TM偏光)、凸欠陥DEF10の光強度分布の断面プロファイルとして、
図13(F)に示されるPR14(TE偏光)及びPR15(TM偏光)が得られる。
【0044】
また、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離が正のデフォーカス距離、即ち、フォトマスクブランクMBが載置されたマスクステージSTGを上昇させて、フォーカス距離より近く設定された正のデフォーカス状態(Δz>0)の場合は、凹欠陥DEF9の光強度分布の断面プロファイルとして、
図13(C)に示されるPR8(TE偏光)及びPR9(TM偏光)、凸欠陥DEF10の光強度分布の断面プロファイルとして、
図13(D)に示されるPR10(TE偏光)及びPR11(TM偏光)が得られる。
【0045】
一方、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離が負のデフォーカス距離、即ち、フォトマスクブランクMBが載置されたマスクステージSTGを下降させて、フォーカス距離より遠く設定された負のデフォーカス状態(Δz<0)の場合は、凹欠陥DEF9の光強度分布の断面プロファイルとして、
図13(G)に示されるPR16(TE偏光)及びPR17(TM偏光)、凸欠陥DEF10の光強度分布の断面プロファイルとして、
図13(H)に示されるPR18(TE偏光)及びPR19(TM偏光)が得られる。
【0046】
これらの観察画像における明部と暗部の位置関係に着目すると、いずれの距離条件および偏光条件においても、凹欠陥DEF9と凸欠陥DEF10との間に、検査画像の明暗の位置関係に差はなく、両者を区別することはできない。しかし、TE偏光で得られる観察画像の光強度の最小値と、TM偏光で得られる観察画像の光強度の最小値との距離依存性を比較すると、凹欠陥DEF9と凸欠陥DEF10との間に差があることがわかる。即ち、凹欠陥DEF9では、TE偏光で得られる観察画像の光強度の最小値と、TM偏光で得られる観察画像の光強度の最小値は、いずれもフォーカス距離(Δz=0)で最小となり、最小値を与える距離が一致する。これに対して、凸欠陥DEF10では、TE偏光で得られる観察画像の光強度の最小値はフォーカス距離(Δz=0)で最小となるが、TM偏光で得られる観察画像の光強度の最小値は正のデフォーカス状態(Δz>0)で最小となる。これは、検査光に対して透明な材料からなる凸欠陥DEF10の部分を透過するTE偏光とTM偏光との透過特性の差に起因していると考えられる。このように、フォーカス距離を変えてTM偏光の検査画像の光強度の最小値を評価することにより、凹欠陥DEF9と凸欠陥DEF10とを区別することができる。
【0047】
一方、凸欠陥が、ハードマスク膜上に、検査光に対して透過率の低い物質が付着して形成された凸欠陥の場合には、
図5に示される典型的な凸欠陥の検査画像の光強度分布に対応した左側が明部、右側が暗部の観察画像が得られる。
【0048】
以上から、第2の膜態様の場合の欠陥の凹凸形状は、観察画像の光強度分布において、(2−1)欠陥部が、明部が支配的又は明部のみであれば、検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜(ハードマスク膜103)のみに形成された凹欠陥、
(2−2)欠陥部の左側が暗部、右側が明部であり、観察画像の光強度において、距離依存性がなければ、検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜(ハードマスク膜103)を貫通して、更に検査光に対して不透明又は半透明膜(光学膜202)にも形成されている凹欠陥、
(2−3)欠陥部の左側が暗部、右側が明部であり、観察画像の光強度において、距離依存性があれば、検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜(ハードマスク膜103)と同質の材料からなる凸欠陥、
(2−4)欠陥部の左側が明部、右側が暗部であれば検査光に対して透過率の低い物質が付着して形成された凸欠陥
と判定することができる。
【0049】
第2の膜態様の判定基準は、
図4及び
図5に示される典型的な凹欠陥及び凸欠陥の場合と異なる基準であり、第2の膜態様の場合に特有の判定基準である。この第2の膜態様の判定基準は、透明基板から離間する最表面層として検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜、この膜の透明基板側に接して検査光に対して不透明又は半透明膜が各々形成され、検査光に対して実質的に透明な材料からなる膜の膜厚が薄い場合、例えば、膜厚が5〜10nmの場合に好適である。
【0050】
本発明では、基板、例えば、石英基板などの透明基板上に形成された光学膜と、光学膜の基板と離間する側に接して形成された薄膜とを有し、薄膜が最表層として形成されたフォトマスクブランクの表面部に存在する欠陥を、検査光学系を用いて検査して欠陥の凹凸形状を判定するに際し、フォトマスクブランクの膜の態様に固有の検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準を選択して指定する。検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準は、膜の態様に依存して多種存在することが予測されるが、薄膜とその直下の光学膜の検査光に対する反射率と透過率の高低により大別することが可能である。
【0051】
検査処理手順には、1種又は2種以上の検査条件が含まれ、検査条件には、欠陥と検査光学系の対物レンズとの間の距離条件(具体的には、フォーカス距離、又は正若しくは負のデフォーカス距離)や、検査光条件(具体的には、無偏光、又はTE偏光、TM偏光などの偏光)などが含まれ、2種以上の検査条件を適用する場合は、これらの条件を変更した2種以上の検査条件を含む検査処理手順を適用すればよい。通常、フォーカス距離と無偏光とを適用した検査条件で、欠陥の凹凸形状の判定が可能である場合は、1種の検査条件のみが検査処理手順に含まれることになるが、1種の検査条件のみでは、欠陥の凹凸形状の判定が可能でない場合は、この検査条件とは異なる他の検査条件を含む検査処理手順が適用される。検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準は、実際の検査実験のデータや、光学シミュレーションで得られる結果から決定することが可能である。判定基準に含まれる具体的な基準としては、検査画像の光強度分布から得られる、欠陥部における明部又は暗部の存在、明部と暗部の配置、光強度の最大値又は最小値などが挙げられる。検査処理手順が2以上の検査条件を含む場合は、例えば、検査光学系の制御部に演算処理やデフォーカス制御等の選択肢を準備しておき、被検査フォトマスクブランクを準備した際に、選択肢から選択して指定する方法を採用してもよい。
【0052】
本発明の欠陥検査方法においては、検査光が、波長210〜550nmの光であることが好ましい。また、設定するデフォーカス距離の範囲は、欠陥のサイズ、深さ又は高さにもよるが、好ましくは−300nm〜+300nmの領域、より好ましくは−250nm〜+250nmの範囲である。また、デフォーカス距離のステップ幅は100nm程度が好ましい。
【0053】
本発明では、基板上に形成された光学膜と、光学膜の基板と離間する側に接して形成された薄膜とを有し、薄膜が最表層として形成されたフォトマスクブランクの表面部に存在する欠陥を、検査光学系を用いて検査する。この薄膜としては、例えば、光学膜の加工補助膜として用いられるハードマスク膜などを挙げることができる。また、薄膜は、膜厚が10nm以下のものが好適な対象となる。なお、薄膜の膜厚の下限は、通常3nm以上である。
【0054】
本発明の欠陥検査には、
(A1)フォトマスクブランクを準備する工程と、
(A2)フォトマスクブランクの光学膜及び薄膜の態様に対応する検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準を選択して指定する工程と、
(A3)フォトマスクブランクを移動させて、欠陥を検査光学系の観察位置に移動させ、
(A2)工程で指定した検査処理手順に基づき、欠陥と検査光学系の対物レンズとの間の距離を保って、検査光を、欠陥を含む領域に照射し、
検査光が照射された領域からの反射光を、検査光学系を介して上記領域の拡大像として収集する工程と、
(A4)拡大像の光強度分布から、(A2)工程で指定した判定基準に基づき、欠陥の凹凸形状を判定する工程
とが含まれる。(A2)の検査処理手順が、(A3)工程についての複数種の検査条件を含んでいる場合は、検査処理手順に含まれる全ての検査条件について、順次(A3)工程を実施した後、(A4)工程を実施する。また、(A4)工程は、拡大像における欠陥部の光強度レベルの変化を欠陥周辺部の光強度レベルと比較する処理と、この処理の結果を判定基準と対比する処理とを含むことが好適である。なお、(A4)工程は、電子計算機(コンピュータ)による演算により実施することが可能である。
【0055】
(A2)の検査処理手順が、(A3)工程についての検査条件を1種のみ含んでいる場合は、欠陥と検査光学系の対物レンズとの間の距離をフォーカス距離とし、検査光の照射条件を無偏光とすることが好ましい。この検査処理手順は、上述した第1の膜態様に対する欠陥検査において特に好適である。
【0056】
一方、(A2)の検査処理手順が、(A3)工程についての複数種の検査条件を含んでいる場合は、欠陥と検査光学系の対物レンズとの間の距離が、フォーカス距離である検査条件と、デフォーカス距離である検査条件とを含むようにすることが好ましい。デフォーカス距離である検査条件には、正のデフォーカス距離である検査条件及び負のデフォーカス距離である検査条件の一方又は双方が含まれていることが好ましい。
【0057】
また、(A2)の検査処理手順が、(A3)工程についての複数種の検査条件を含んでいる場合は、検査光の照射条件を、無偏光である検査条件と、偏光である検査条件とを含むようにすることが好ましい。偏光である検査条件には、TE偏光である検査条件及びTM偏光である検査条件の一方又は双方が含まれていることが好ましい。
【0058】
特に、複数種の検査条件が、(A3)工程における距離及び検査光の照射条件が、正のデフォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、正のデフォーカス距離及びTM偏光である検査条件と、負のデフォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、負のデフォーカス距離及びTM偏光である検査条件とを含むことが好ましく、更に、フォーカス距離及びTE偏光である検査条件と、フォーカス距離及びTM偏光である検査条件とを含んでいてもよい。この検査処理手順は、上述した第2の膜態様に対する欠陥検査において特に好適である。この場合、(A3)工程において、各々の検査条件で、欠陥を含む領域の拡大像が収集され、特に、(A4)工程は、各々の拡大像における欠陥部の光強度レベルの最小値を算出する処理と、この処理の結果を判定基準と対比する処理とを含むようにすることが好適である。
【0059】
検査光としては、その光軸が薄膜の検査光が照射される面の法線に対して所定の角度傾斜する斜方照明が好適である。また、(A3)工程において、フォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、ステージを面内方向に移動させて、欠陥と検査光学系の対物レンズとを近接させることも好適である。上述した(A1)〜(A4)工程を含む方法で欠陥を検査することにより、欠陥の凹凸形状をより正確に判定することができる。
【0060】
次に、本発明の欠陥検査方法を、
図14に示されるフローチャートに沿って、更に具体的に説明する。まず、(A1)工程として、欠陥を有する検査対象のフォトマスクブランク(被検査フォトマスクブランク)を準備する(工程S201)。
【0061】
次に、(A2)工程として、被検査フォトマスクブランクの膜の態様に対応する固有の検査処理手順及び欠陥の凹凸形状の判定基準を選択して、指定する(工程S202)。次に、フォトマスクブランク上に存在する欠陥の位置座標情報を取り込む(工程S203)。欠陥の位置座標は、別途、公知の欠陥検査により特定された欠陥の位置座標を用いることができる。
【0062】
次に、(A3)工程として、検査光学系の検査位置に欠陥の位置を合わせ、欠陥と検査光学系の対物レンズとを近接させると共に、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離に設定して、フォーカス距離を保って、検査光を、対物レンズを介して、例えば、斜め方向から(フローチャートで示す方法においては、欠陥の左側から)照射し(工程S204)、検査光が照射された領域の反射光を、検査光学系の対物レンズを介して欠陥を含む領域の拡大像として収集する(工程S205)。位置合わせは、検査対象のフォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、検査対象のフォトマスクブランクの欠陥の位置座標に基づき、ステージを上記面内方向に移動させて、欠陥と上記検査光学系の対物レンズとを近接させる方法で実施してもよい。なお、(A3)工程は、検査処理手順によっては、必要に応じて、他の検査条件でも実施される。
【0063】
次に、収集した拡大像の光強度分布(画像データ(検査画像)や断面プロファイルなど)から、欠陥部における検査画像の光強度の変化部分を特定し(工程S206)、その後、(A4)工程として、工程S202で指定された凹凸形状の判定基準に従い、欠陥の凹凸形状を判定する(工程S207)。凹凸形状の判定工程の具体例については、後述する。工程S207において、凹欠陥と判定された場合には、欠陥情報を凹欠陥として記録し(判断D201、工程S208)、凹欠陥と判定されなかった場合には、欠陥情報を凸欠陥として記録する(判断D201、工程S209)。次に、予め取り込んだ欠陥位置座標情報に基づく全ての欠陥に対して検査が終了したかを判断し(判断D202)、未了であれば、新たな欠陥の位置を指定して(工程S210)、工程S204に戻り、検査画像データの収集と欠陥の凹凸判断を繰り返す。そして、予め取り込んだ全ての欠陥に対して検査が終了したと判断した場合(判断D202)は、欠陥検査が終了する。
【0064】
次に、凹凸形状の判定基準に従った判定工程である(A4)工程(工程S207)の具体例として、第1の膜態様のフォトマスクブランクの検査に好適な判定工程について、
図15に示されるフローチャートに沿って説明する。
図15は、
図14に示されるフローチャートにおける工程S207の詳細を示している。
【0065】
まず、最初の判断工程(判断D221)において、工程S206で得られた拡大像の画像データのうち、欠陥部に対応する光強度分布が暗部のみであるかを調べ、暗部のみであれば薄膜のみに形成された凹欠陥と判定する(工程S221)。次に、判断D221で暗部のみではないと判断された場合は、次の判断工程(判断D222)において明部と暗部の配置を調べ、左側が暗部、右側が明部の配置であれば、薄膜を貫通して下層膜(光学膜)にも形成されている凹欠陥と判定し(工程S222)、そうでなければ、凸欠陥と判定する(
工程S223)。第1の膜態様では、薄膜のみに形成された凹欠陥では、拡大像の欠陥部は暗部のみとなり、
図4(B)に示される典型的な凹欠陥の光強度分布(断面プロファイルPR1)と異なることが、この第1の膜態様における凹凸形状の判定基準の特徴である。
【0066】
また、凹凸形状の判定基準に従った判定工程である(A4)工程(工程S207)の具体例として、第2の膜態様のフォトマスクブランクの検査に好適な判定工程について、
図16に示されるフローチャートに沿って説明する。
図16は、
図14に示されるフローチャートにおける工程S207の詳細を示している。
【0067】
まず、最初の判断工程(判断D231)において、工程S206で得られた拡大像の画像データのうち、欠陥部に対応する光強度分布が、明部が支配的又は明部のみであるかを調べ、明部が支配的又は明部のみであれば薄膜のみに形成された凹欠陥と判定する(工程S237)。次に、判断D231で明部が支配的又は明部のみではないと判断された場合は、次の判断工程(判断D232)において明部と暗部の配置を調べ、左側が暗部、右側が明部の配置であれば、工程S231に進む。
【0068】
判断工程D232で左側が暗部、右側が明部の配置であった場合は、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を、フォーカス距離から外れたデフォーカス距離(正のデフォーカス距離又は負のデフォーカス距離)に設定する条件変更、及び
図3に示される検査光学系において照明光をTE偏光又はTM偏光に設定する変更の一方又は双方による新たな検査条件で、欠陥の検査画像を更に収集してから、欠陥の凹凸形状の判定に進む。例えば、デフォーカス距離を一の距離(初期値)に設定(工程S231)した後、設定したデフォーカス距離で、TE偏光の照射による拡大像を収集(工程S232)し、次いで、TM偏光の照射による拡大像を収集(工程S233)して(なお、工程S232と工程S233は入れ替えてもよい)、拡大像の光強度分布から各々の光強度の最小値を算出する(工程S234)。なお、このとき、必要に応じて、無偏光の照射による拡大像を収集してもよい。次に、デフォーカス距離の所定の全ての設定で、拡大像の収集を実施したかを判断し(判断D233)、未了であれば、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を他の距離(次の距離)に設定して(工程S235)、工程S232〜工程S234を繰り返す。なお、このとき、必要に応じて、フォーカス距離による拡大像を収集してもよい。全ての検査条件が終了したら、各々の距離及び照射条件で得られた光強度の最小値を集約する(
工程S236)。次に、判断工程D234において、TE偏光で得られた光強度の最小値のうち、最も小さい値を示す距離と、TM偏光で得られた光強度の最小値のうち、最も小さい値を示す距離とを対比して距離依存性を評価し、両者が実質的に同じであれば、薄膜を貫通して下層の光学膜にも形成されている凹欠陥と判定し(
工程S238)、そうでなければ、薄膜と同質の材料からなる凸欠陥と判定する(工程S239)。
【0069】
一方、判断工程D232で左側が暗部、右側が明部の配置でないと判断された場合は、検査光に対して透過率の低い物質が付着して形成された凸欠陥と判定する(工程S240)。
【0070】
なお、工程S231から判断工程D234までの工程は、薄膜を貫通して下層の光学膜にも形成されている凹欠陥か、薄膜と同質の材料からなる凸欠陥かを区別をするための工程である。下層の光学膜には欠陥がなく、薄膜における欠陥の凹凸形状のみを判定すればよい場合は、工程S231から判断工程D234は不要であり、判断工程D232において、左側が暗部、右側が明部の配置であれば、
図16中の鎖線矢印に沿って進み、薄膜と同質の材料からなる凸欠陥と判定することができる。第2の膜態様では、薄膜のみに形成された凹欠陥では、拡大像の欠陥部は実質的に明部のみとなり、
図4(B)に示される典型的な凹欠陥の光強度分布(断面プロファイルPR1)と異なること、また、薄膜と同質の材料からなる凸欠陥では、
図5(B)に示される典型的な凸欠陥の光強度分布(断面プロファイルPR2)と異なることが、この第2の膜態様における凹凸形状の判定基準の特徴である。従って、この検査処理手順及び判定基準によれば、凸欠陥を凹欠陥と誤判定せずに正しく判定することができる。
【0071】
本発明の欠陥検査方法によれば、フォトマスクブランクの最表面部に、ハードマスク膜などの、例えば膜厚が10nm以下の薄膜が形成されている場合に、膜態様に固有の検査処理手順及び凹凸形状の判定基準を用い、所定の検査処理手順に沿って、検査画像を収集し、凹凸形状を判断するための処理を実施することにより、欠陥の凹凸形状を高い信頼性で区別することができる。
【0072】
欠陥の凹凸形状を、高い信頼性で区別できる本発明の欠陥検査方法を、フォトマスクブランクの製造工程に適用することにより、凹欠陥、特にピンホール欠陥を有するフォトマスクブランクを、高い信頼性で抽出して、ピンホール欠陥などの凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することができる。また、本発明の欠陥評価方法で得られた欠陥の凹凸形状の情報は、検査票を付帯させることなどの方法により、フォトマスクブランクに付与することができる。更に、フォトマスクブランクに付与された情報に基づいて、ピンホール欠陥などの凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することもできる。従来では、付着物に起因する凸欠陥を、光学検査で凹欠陥と判定してしまう場合があり、本来、必ずしも致命的な欠陥ではない欠陥を有するフォトマスクブランクを不良品として排除する可能性が高かったため、歩留り低下の要因となっていたが、本発明の欠陥検査方法により、フォトマスクブランクに存在する致命的な欠陥となる凹欠陥を有するフォトマスクブランクを選択的に排除することができるため、製品スペックに合致したフォトマスクブランクを、歩留りよく提供することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
第1の膜態様の凹欠陥及び凸欠陥を含むフォトマスクブランクの欠陥検査を実施した。この例では第1の膜態様の判定基準を適用した。検査光学系として、
図3に示される検査光学系を用い、開口数NAを0.75、検査波長を248nmとし、検査光はフォトマスクブランク上の欠陥に対して、図中、左上方から平均入射角度38度で照明する斜方照明とした。なお、検査
光の照射条件は無偏光とした。
【0075】
図17(A)に示されるフォトマスクブランク100は、検査光に対して透明な石英基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、及び厚さ10nmのCr系材料からなるハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103にピンホール欠陥などの凹欠陥DEF6が存在している状態を示している。凹欠陥DEF6の幅W1を100nmとし、深さD1を5nm(ハードマスク膜103を貫通していない凹欠陥)又は10nm(ハードマスク膜103を貫通した凹欠陥)の2種類としたときの、フォーカス距離で得られる検査画像の光強度の断面プロファイルを
図17(B)に示す。ハードマスク膜103のみに形成された致命的な凹欠陥、特にピンホール欠陥では、欠陥部で明部は現われず、暗部のみが現れる。
【0076】
図18(A)に示されるフォトマスクブランク100は、検査光に対して透明な石英基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、及び厚さ10nmのCr系材料からなるハードマスク膜103が形成されており、光学膜102及びハードマスク膜103にピンホール欠陥などの凹欠陥DEF11が存在している状態を示している。凹欠陥DEF11の幅W1を100nmとし、深さD1を30nm又は40nm(ハードマスク膜103を貫通し、光学膜102にも形成されている凹欠陥)の2種類としたときの、フォーカス距離で得られる検査画像の光強度の断面プロファイルを
図18(B)に示す。ハードマスク膜103を貫通し、光学膜102にも形成されている致命的な凹欠陥、特にピンホール欠陥では、欠陥部は左側が暗部、右側が明部となり、深さに依存して強度レベルは変化するものの、
図4(B)に示される典型的な凹欠陥の光強度分布(断面プロファイルPR1)と同様の明暗の位置関係となる。
【0077】
図19(A)に示されるフォトマスクブランク100は、検査光に対して透明な石英基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、及び厚さ10nmのCr系材料からなるハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103に凸欠陥DEF7が存在している状態を示している。凸欠陥DEF7の幅W1を100nmとし、高さH1を10nm、20nm又は40nmの3種類としたときの、フォーカス距離で得られる検査画像の光強度の断面プロファイルを
図19(B)に示す。凸欠陥では、欠陥部は左側が明部、右側が暗部となり、高さに依存して強度レベルは変化するものの、
図5(B)に示される典型的な凸欠陥の光強度分布(断面プロファイルPR2)と同様の明暗の位置関係となる。
【0078】
以上から、光学膜の上に高反射率材料からなるハードマスク膜などの薄膜が形成されたフォトマスクブランクにおいては、
フォーカス距離における欠陥の検査画像の光強度分布が、暗部のみであれば、又は左側が暗部、右側が明部であれば凹欠陥、
左側が明部、右側が暗部であれば凸欠陥
とする判定基準で、正しい凹凸判定を行なうことができることがわかる。
【0079】
[実施例2]
第2の膜態様の凹欠陥及び凸欠陥を含むフォトマスクブランクの欠陥検査を実施した。この例では第2の膜態様の判定基準を適用した。検査光学系として、
図3に示される検査光学系を用い、開口数NAを0.75、検査波長を248nmとし、検査光はフォトマスクブランク上の欠陥に対して、図中、左上方から平均入射角度38度で照明する斜方照明とした。なお、検査
光の照射条件は、特記した場合を除き、無偏光とした。
【0080】
図20(A)に示されるフォトマスクブランク100は、検査光に対して透明な石英基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、Cr系材料からなる光学膜202、及び酸化ケイ素からなる厚さ5nmのハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103にピンホール欠陥などの凹欠陥DEF8が存在している状態を示している。凹欠陥DEF8の幅W2を100nmとし、深さD2を3nm(ハードマスク膜103を貫通していない凹欠陥)又は5nm(ハードマスク膜103を貫通した凹欠陥)の2種類としたときの、フォーカス距離で得られる検査画像の光強度の断面プロファイルを
図20(B)に示す。ハードマスク膜103のみに形成された致命的な凹欠陥、特にピンホール欠陥では、欠陥部で、明部が支配的、又は暗部は現われず明部のみとなる。
【0081】
図21(A)に示されるフォトマスクブランク100は、検査光に対して透明な石英基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、Cr系材料からなる光学膜202、及び酸化ケイ素からなる厚さ5nmのハードマスク膜103が形成されており、光学膜202及びハードマスク膜103にピンホール欠陥などの凹欠陥DEF9が存在している状態を示している。凹欠陥DEF9の幅W2を100nmとし、深さD2を20nm、25nm又は30nm(ハードマスク膜103を貫通し、光学膜102にも形成されている凹欠陥)の3種類としたときの、フォーカス距離で得られる検査画像の光強度の断面プロファイルを
図21(B)に示す。ハードマスク膜103を貫通し、光学膜102にも形成されている致命的な凹欠陥、特にピンホール欠陥では、欠陥部は左側が暗部、右側が明部となり、深さに依存して強度レベルは変化するものの、
図4(B)に示される典型的な凹欠陥の光強度分布(プロファイルPR1)と同様の明暗の位置関係となる。
【0082】
図22(A)に示されるフォトマスクブランク100は、検査光に対して透明な石英基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、Cr系材料からなる光学膜202、及び酸化ケイ素からなる厚さ5nmのハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103に、ハードマスク膜103と同質の材料からなる凸欠陥DEF10が存在している状態を示している。凸欠陥DEF10の幅W2を100nmとし、高さH2を20nm又は60nmの2種類としたときの、フォーカス距離で得られる検査画像の光強度の断面プロファイルを
図22(B)に示す。この凸欠陥では、欠陥部は左側が暗部、右側が明部となり、
図5(B)の典型的な凸欠陥の光強度分布(断面プロファイルPR2)に対応しない。しかも、光強度分布の明部と暗部の位置関係に着目する限りでは、
図21(A)に示される凹欠陥と同じ位置関係となっており、
図21(A)に示される致命的な凹欠陥と、
図22(A)に示される凸欠陥とを区別することができない。
【0083】
そこで、
図21(A)に示される凹欠陥と、
図22(A)に示される凸欠陥とについて、複数のデフォーカス距離で観察画像を収集して光強度の変化を調べた。
図23(A)は
図21(A)の凹欠陥DEF9を有するフォトマスクブランクの断面図、
図23(B)は
図22(A)の凸欠陥DEF10を有するフォトマスクブランクの断面図である。凹欠陥DEF9は、欠陥の幅W2を100nm、深さD2を25nmとし、凸欠陥DEF10は、欠陥の幅W2を100nm、高さH2を60nmとした。また、
図23(C)〜(H)は、2種のデフォーカス距離、及びフォーカス距離における観察画像の光強度分布の断面プロファイルを示す図である。
【0084】
距離Δzが+200nm、0nm、−200nmにおける凹欠陥DEF9の観察画像の光強度分布の断面プロファイルを、各々、
図23(C)、
図23(E)、
図23(G)に示す。また、距離Δzが+200nm、0nm、−200nmにおける凸欠陥DEF10の観察画像の光強度分布の断面プロファイルを、各々、
図23(D)、
図23(F)、
図23(H)に示す。この結果から、デフォーカス距離で対比しても、観察画像の光強度分布における明部と暗部の位置関係で両欠陥を区別することはできないことがわかる。
【0085】
そこで、検査光の照射条件を、TE偏光又はTM偏光に変更して、フォーカス距離及び複数のデフォーカス距離において、観察画像を収集すると共に、無偏光の場合においても、距離Δzが+200nm及び−200nm以外のデフォーカス距離において、更に観察画像を収集し、その光強度分布の最小値を求めた。
図24(A)及び
図24(B)は、各々、凹欠陥DEF9及び凸欠陥DEF10の観察画像の光強度分布の最小値の距離依存性を示す図である。
図24(A)と
図24(B)とを比較すると、凹欠陥DEF9では、無偏光、TE偏光及びTM偏光で得られる観察画像の光強度分布の最小値は、いずれもフォーカス距離(Δz=0)で最小となる。一方、凸欠陥DEF10では、無偏光及びTE偏光で得られる観察画像の光強度分布の最小値は、いずれもフォーカス距離(Δz=0)で最小となるが、TM偏光で得られる観察画像の光強度分布の最小値はΔz=約+200nmのデフォーカス距離で最小となる。これは、検査光に対して透明な材料からなる凸欠陥DEF10の部分を透過するTE偏光とTM偏光の透過特性の差に起因していると考えられ、このように、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を変えて、TM偏光での検査画像の光強度分布の最小値の距離依存性を評価することにより、凹欠陥DEF9と凸欠陥DEF10とを区別することができる。
【0086】
図25(A)に示されるフォトマスクブランク100は、検査光に対して透明な石英基板101上に、MoSi系材料からなる光学膜102、Cr系材料からなる光学膜202、及び酸化ケイ素からなる厚さ5nmのハードマスク膜103が形成されており、ハードマスク膜103に、検査光に対して透過率の低い物質が付着して形成された凸欠陥DEF12が存在している状態を示している。凸欠陥DEF12の幅W2を100nmとし、高さH2を20nm又は40nmの2種類としたときの、フォーカス距離で得られる検査画像の光強度の断面プロファイルを
図25(B)に示す。検査光に対して透過率の低い物質が付着して形成された凸欠陥では、欠陥部は左側が明部、右側が暗部となり、高さに依存して強度レベルは変化するものの、
図5(B)に示される典型的な凸欠陥の光強度分布(断面プロファイルPR2)と同様の明暗の位置関係となる。
【0087】
以上から、光学膜の上に検査光に対して実質的に透明な材料からなるハードマスク膜などの薄膜が形成されたフォトマスクブランクにおいては、
フォーカス距離における欠陥の検査画像の光強度分布が、明部が支配的若しくは明部のみであれば、又は欠陥の検査画像の光強度分布が、欠陥部の左側が暗部、右側が明部であり、観察画像の光強度において、距離依存性がなければ凹欠陥、
欠陥の検査画像の光強度分布が、欠陥部の左側が暗部、右側が明部であり、観察画像の光強度において、距離依存性があれば、又はフォーカス距離における欠陥の検査画像の光強度分布が、左側が明部、右側が暗部であれば凸欠陥
とする判定基準で、正しい凹凸判定を行なうことができることがわかる。