特許第6394592号(P6394592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394592
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】光学異方性フィルム用配向層
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20180913BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20180913BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20180913BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1337 525
   G02F1/13363
   B32B7/02 103
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-511324(P2015-511324)
(86)(22)【出願日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】JP2014060882
(87)【国際公開番号】WO2014168256
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-82699(P2013-82699)
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠弘
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/122889(WO,A1)
【文献】 特開2007−225765(JP,A)
【文献】 特開2008−209509(JP,A)
【文献】 特開2012−087197(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0002773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、光学異方性フィルムとの間に配置され、配向処理を施すことなく、液晶化合物を垂直配向させる配向規制力を有する光学異方性フィルム用配向層であって、水の接触角が75°〜90°である光学異方性フィルム用配向層
【請求項2】
ポリイミド及びポリアミック酸から選ばれる少なくとも1種の配向性ポリマーを含む請求項1に記載の光学異方性フィルム用配向層。
【請求項3】
珪素原子及びフッ素原子から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する配向性ポリマーを含む請求項1または請求項2に記載の光学異方性フィルム用配向層。
【請求項4】
光学異方層形成用組成物の接触角が0°〜10°である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層の上に形成された光学異方性フィルム。
【請求項6】
光学異方性フィルム表面の水の接触角が75°〜90°である請求項に記載の光学異方性フィルム。
【請求項7】
IPS(in−plane switching)液晶表示装置用の請求項に記載の光学異方性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層の上に、光学異方性フィルムが形成された積層体。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層を、ロール状の基材に連続的に形成し、その上に光学異方性フィルムを連続的に形成する光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項請求項7のいずれかに記載の光学異方性フィルムを有する偏光板。
【請求項11】
請求項請求項7のいずれかに記載の光学異方性フィルムを備えた表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性フィルム用配向層に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材を配向処理して、得られた配向層の上に液晶組成物を塗工して、光学フィルムを製造する方法が記載されている。特許文献1では、配向処理としてラビング処理を行なったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−148098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ラビング処理を行なうことにより、細かな塵が生じるため、配向層上に形成される光学異方性フィルムに欠陥を生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含む。
[1] 基材と、光学異方性フィルムとの間に配置される光学異方性フィルム用配向層であって、配向処理を施すことなく、液晶化合物を垂直配向させる配向規制力を有する光学異方性フィルム用配向層。
[2] 水の接触角が70°〜90°である[1]に記載の光学異方性フィルム用配向層。
[3] ポリイミド及びポリアミック酸から選ばれる少なくとも1種の配向性ポリマーを含む[1]又は[2]に記載の光学異方性フィルム用配向層。
[4] 珪素原子及びフッ素原子から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する配向性ポリマーを含む[1]〜[3]のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層。
[5] 光学異方層形成用組成物の接触角が0°〜10°である[1]〜[4]のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層の上に形成された光学異方性フィルム。
[7] 光学異方性層フィルム表面の水の接触角が75°〜90°である[6]に記載の光学異方性フィルム。
[8] IPS(in−plane switching)液晶表示装置用の[6]に記載の光学異方性フィルム。
[9] [1]〜[5]のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層の上に、光学異方性フィルムが形成された積層体。
[10] [1]〜[5]のいずれかに記載の光学異方性フィルム用配向層を、ロール状の基材に連続的に形成し、その上に光学異方性フィルムを連続的に形成する光学異方性フィルムの製造方法。
[11] [6]〜[8]のいずれかに記載の光学異方性フィルムを有する偏光板。
[12] [6]〜[8]のいずれかに記載の光学異方性フィルムを備えた表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、欠陥数が少ない光学異方性フィルムを与える、光学異方性フィルム用配向層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る偏光板の一例を示す断面模式図である。
図2】本発明に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光学異方性フィルム用配向層は、基材と、光学異方性フィルムとの間に配置される光学異方性フィルム用配向層であって、配向処理を施すことなく、液晶化合物を垂直配向させる配向規制力を有する。
【0009】
<光学異方性フィルム用配向層>
本発明の光学異方性フィルム用配向層(以下、本配向層ということがある。)は、基材と光学異方性フィルムとの間に配置されるものであり、本配向層は、配向層形成用組成物を基材に塗布し、乾燥することで、配向処理を施すことなく形成されるものである。配向処理とは、配向層形成用組成物からなる塗布膜にラビング処理および光照射等を行なうことにより、配向規制力を付与することをいう。本配向層には配向処理を施さないため、ラビングなどの配向処理で生じる細かな塵の発生がなく、さらに、光照射などの他の配向処理も必要としないため、生産性が高い。
【0010】
本配向層の厚さは、通常10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nm、より好ましくは20nm〜200nmである。本配向層の厚さが上記範囲にあると、液晶化合物を本配向層上でムラなく配向させることができるため好ましい。
【0011】
本配向層の、水の接触角は、通常70°〜90°である。好ましくは70°〜85°であり、より好ましくは75°〜85°である。水の接触角が上記範囲にあると、垂直方向への配向規制力を得やすい傾向にあるため好ましい。
【0012】
本配向層表面における、後述する光学異方層形成用組成物の接触角は、好ましくは0°〜10°である。
前記接触角が上記範囲であると、光学異方層形成用組成物を本配向層表面に均一に塗布することが可能となり、得られる光学異方性フィルムの欠陥発生をより抑制できることから好ましい。
【0013】
配向層形成用組成物は、通常、配向性ポリマーを含む。
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミド及びゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸エステル類等を挙げることができる。好ましくは、ポリイミド及びポリアミック酸である。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、複数種類のポリマーを組み合わせた組成物でもよいし、複数種類のポリマーを組み合わせた共重合体でもよい。これらのポリマーは、単量体を脱水や脱アルコール等の重縮合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合又は開環重合等することで得ることができる。
配向性ポリマーは、珪素原子及びフッ素原子等から選ばれる少なくとも1種の置換基を有することが好ましい。例えば、特許第4605016号、特許第4985906号、特許第4502119号またはWO2008/117760号に記載されているような、一般的に垂直配向型液晶表示素子の液晶配向膜として用いられている材料を使用することができる。
市販の配向性ポリマーとしては、サンエバー(登録商標、日産化学社製)、オプトマー(登録商標、JSR製)等が挙げられる。中でも、ポリイミドまたはポリアミック酸を含むサンエバーが特に好ましい。
【0014】
配向層形成用組成物は、通常、溶剤を含む。溶剤を含むことで、基材への塗布が容易となり、本配向層の形成が容易となる。
溶剤としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもよいし、組み合わせてもよい。
【0015】
溶剤の含有量は、固形分100質量部に対して、通常10質量部〜100000質量部であり、好ましくは1000質量部〜50000質量部であり、より好ましくは2000質量部〜20000質量部である。
【0016】
本発明において、配向規制力とは、後述する液晶化合物の配向を制御することが可能な、配向層の機能として定義される。
一般的な液晶セルに用いられる配向層は、電圧オフの状態において充填された液晶化合物の配向方向を制御するために用いられており、液晶状態にある化合物の配向を定めることができる。かかる配向層には、電圧駆動後の液晶材料の配向をオフ時の状態に戻す配向規制力が求められるが、液晶状態にある化合物そのものが配向性を有していることから、一定の配向規制力さえあれば液晶セルへの適用が可能であった。
一方、本配向層は、液晶状態にない液晶化合物の溶液を塗布し、乾燥するだけで、液晶化合物の配向を達成することができる。
【0017】
<基材>
基材には、通常透明基材が用いられる。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透光性を有する基材を意味し、透光性とは、波長380〜780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、ガラスおよび透光性樹脂基材が挙げられ、透光性樹脂基材が好ましい。基材は、通常フィルム状のものが用いられ、中でも、ロールtoロールによる巻出・巻取が可能であるフィルムロール状の基材が、生産性の点において特に好ましい。
【0018】
透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;セルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルフォン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;およびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリメタクリル酸エステルであり、より好ましくは前記ポリオレフィンである。
【0019】
基材には、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、真空下または大気圧下、コロナまたはプラズマで基材の表面を処理する方法、基材表面をレーザー処理する方法、基材表面をオゾン処理する方法、基材表面をケン化処理する方法または基材表面を火炎処理する方法、基材表面にカップリング剤を塗布するプライマー処理する方法、及び、反応性モノマーや反応性を有するポリマーを基材表面に付着させた後、放射線、プラズマまたは紫外線を照射して反応させるグラフト重合法などが挙げられる。中でも、真空下や大気圧下で、基材表面をコロナまたはプラズマ処理する方法が好ましい。
【0020】
コロナまたはプラズマで基材の表面処理を行う方法としては、
大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナまたはプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、
対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法、および、
低圧条件下で、グロー放電プラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法が挙げられる。
【0021】
中でも、大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナまたはプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、または、対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法が好ましい。かかるコロナまたはプラズマによる表面処理は、通常、市販の表面処理装置により行われる。
【0022】
<光学異方性フィルム>
本発明における光学異方性フィルム(以下、本光学フィルムということがある)は、垂直配向した液晶化合物を含む。本光学フィルムは、光学異方性層形成用組成物から形成され、該光学異方性層形成用組成物は前記液晶化合物の他に、溶剤を含み、さらに、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、カイラル剤、反応性添加剤等を含んでもよい。液晶化合物が重合性液晶化合物である場合は、好ましくは重合開始剤を含む。
【0023】
本光学フィルムの厚さは、その用途により、又は、積層する表示装置の位相差値によって適宜調節すればよいが、通常0.1μm〜10μmであり、好ましくは0.2μm〜5μmであり、より好ましくは0.3μm〜2μmである。上記範囲にあると光弾性を抑制できるため好ましい。
【0024】
本光学フィルム表面の、水の接触角は、通常75°〜90°である。好ましくは75°〜85°であり、より好ましくは75°〜85°である。本光学フィルムの水の接触角が上記範囲となるように前記液晶化合物を選択することで、液晶化合物の垂直方向への配向が起きやすくなる。
【0025】
垂直配向とは基材面に対して垂直な方向に液晶化合物の長軸を有することである。
【0026】
液晶化合物としては、例えば、式(X)で表される基を含む化合物(以下「化合物(X)」という場合がある)が挙げられる。
11−B11−E11−B12−A11−B13− (X)
[式(X)中、P11は、重合性基又は水素原子を表わす。
11は、2価の脂環式炭化水素基または2価の芳香族炭化水素基を表わす。該2価の脂環式炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1〜6のアルキル基および該炭素数1〜6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
11は、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR16−、−NR16−CO−、−CO−、−CS−または単結合を表わす。R16は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
12およびB13は、それぞれ独立に、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR16−、−NR16−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表わす。
11は、炭素数1〜12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する−CH−は、−O−または−CO−に置き換わっていてもよい。]
【0027】
11の芳香族炭化水素基および脂環式炭化水素基の炭素数は、3〜18の範囲であることが好ましく、5〜12の範囲であることがより好ましく、5または6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0028】
11としては、直鎖状の炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基を構成する−CH−は、−O−に置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基およびドデカン−1,12−ジイル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルカンジイル基;−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−および−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−等が挙げられる。
11としては、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−が好ましく、中でも、−CO−O−がより好ましい。
12およびB13としては、それぞれ独立に、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−が好ましく、中でも、−O−または−O−C(=O)−O−がより好ましい。
【0029】
11は好ましくは重合性基である。重合性基としては、重合反応性、特に光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P−11)〜式(P−15)で表わされる基であることが好ましい。
[式(P−11)〜(P−15)中、
17〜R21はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0030】
式(P−11)〜式(P−15)で表わされる基の具体例としては、下記式(P−16)〜式(P−20)で表わされる基が挙げられる。
【0031】
11は、式(P−14)〜式(P−20)で表わされる基であることが好ましく、ビニル基、p−スチルベン基、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
11−B11−で表わされる基が、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0032】
化合物(X)としては、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
11−B11−E11−B12−A11−B13−A12−B14−A13−B15−A14−B16−E12−B17−P12 (I)
11−B11−E11−B12−A11−B13−A12−B14−A13−B15−A14−F11 (II)
11−B11−E11−B12−A11−B13−A12−B14−A13−B15−E12−B17−P12 (III)
11−B11−E11−B12−A11−B13−A12−B14−A13−F11 (IV)
11−B11−E11−B12−A11−B13−A12−B14−E12−B17−P12 (V)
11−B11−E11−B12−A11−B13−A12−F11 (VI)
(式中、
12〜A14はそれぞれ独立に、A11と同義であり、B14〜B16はそれぞれ独立に、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
11は、水素原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する−CH−は、−O−に置き換っていてもよい。)
【0033】
液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物、特開2010−31223号公報、特開2010−270108号公報、特開2011−6360号公報および特開2011−207765号公報記載の液晶化合物等が挙げられる。
【0034】
化合物(X)の具体例としては、下記式(I−1)〜式(I−4)、式(II−1)〜式(II−4)、式(III−1)−式(III−26)、式(IV−1)−式(IV−26)、式(V−1)〜式(V−2)および式(VI−1)−式(VI−6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2〜12の整数を表わす。これらの化合物(X)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
[溶剤]
光学異方層形成用組成物は、溶剤を含む。
溶剤としては、液晶化合物等の光学異方層形成用組成物の構成成分を溶解し得る有機溶剤が好ましく、また、光学異方層形成用組成物が重合性液晶化合物を含む場合には、さらに、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な有機溶剤が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;およびクロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;等が挙げられる。二種以上の有機溶剤を組み合わせて用いてもよい。中でも、アルコール溶剤、エステル溶剤、ケトン溶剤、非塩素化脂肪族炭化水素溶剤および非塩素化芳香族炭化水素溶剤が好ましい。
【0045】
溶剤の含有量は、固形分100質量部に対して、10質量部〜10000質量部が好ましく、より好ましくは100質量部〜5000質量部である。光学異方層形成用組成物中の固形分濃度は、好ましくは2質量%〜50質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。”固形分”とは、光学異方層形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計を意味する。
【0046】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤がより好ましい。
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170(以上、全て株式会社ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)およびTAZ−104(三和ケミカル社製)が挙げられる。中でも、α−アセトフェノン化合物が好ましく、α−アセトフェノン化合物としては、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オン及び2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−(4−メチルフェニルメチル)ブタン−1−オン等が挙げられ、より好ましくは2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン及び2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オンが挙げられる。α−アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)及びセイクオールBEE(精工化学社製)等が挙げられる。
【0047】
重合開始剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱し難いため好ましい。
【0048】
[重合禁止剤]
重合禁止剤としては、ハイドロキノンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類;ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類;ピロガロール類、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤;チオフェノール類;β−ナフチルアミン類およびβ−ナフトール類が挙げられる。
光学異方層形成用組成物における重合禁止剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物の配向を乱し難いため好ましい。
【0049】
[光増感剤]
光増感剤としては、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。
光増感剤を用いることにより、光重合開始剤の反応を高感度化することができる。光増感剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0050】
[レベリング剤]
レベリング剤としては、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。具体的には、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22−161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC−72、同FC−40、同FC−43、同FC−3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R−08、同R−30、同R−90、同F−410、同F−411、同F−443、同F−445、同F−470、同F−477、同F−479、同F−482、同F−483(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S−381、同S−382、同S−383、同S−393、同SC−101、同SC−105、KH−40、SA−100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100、BYK−352、BYK−353及びBYK−361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)が挙げられる。2種以上のレベリング剤を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
レベリング剤により、より平滑な光学異方性フィルムを得ることができる。また、光学異方性フィルムの製造過程で、光学異方層形成用組成物の流動性を制御したり、光学異方性フィルムの架橋密度を調整したりすることができる。レベリング剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.1質量部〜10質量部である。
【0052】
[カイラル剤]
カイラル剤としては、公知のカイラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)が挙げられる。
カイラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物としては、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が挙げられる。
具体的には、特開2007−269640号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−176870号公報、特開2003−137887号公報、特表2000−515496号公報、特開2007−169178号公報および特表平9−506088号公報に記載されているような化合物が挙げられ、好ましくはBASFジャパン(株)製のpaliocolor(登録商標) LC756である。
カイラル剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは1.0質量部〜25質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱し難いため好ましい。
【0053】
[反応性添加剤]
反応性添加剤としては、その分子内に炭素−炭素不飽和結合と活性水素反応性基とを有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアナト基、チオイソシアナト基、無水マレイン酸基等がその代表例である。
【0054】
反応性添加剤において、活性水素反応性基は少なくとも2つ存在することが好ましく、この場合、複数存在する活性水素反応性基は同一でも、異なるものであってもよい。
【0055】
反応性添加剤が有する炭素−炭素不飽和結合とは、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合、あるいはそれらの組み合わせであってよいが、炭素−炭素二重結合であることが好ましい。中でも、反応性添加剤としては、ビニル基及び/又は(メタ)アクリル基として炭素−炭素不飽和結合を含むことが好ましい。さらに、活性水素反応性基が、エポキシ基、グリシジル基及びイソシアナト基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるものが好ましく、アクリル基と、イソシアナト基とを有する反応性添加剤が特に好ましい。
【0056】
反応性添加剤の具体例としては、メタクリロキシグリシジルエーテルやアクリロキシグリシジルエーテルなどの、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物;オキセタンアクリレートやオキセタンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とオキセタン基とを有する化合物;ラクトンアクリレートやラクトンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とラクトン基とを有する化合物;ビニルオキサゾリンやイソプロペニルオキサゾリンなどの、ビニル基とオキサゾリン基とを有する化合物;イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート及び20イソシアナトエチルメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とイソシアナト基とを有する化合物のオリゴマー等が挙げられる。また、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、無水マレイン酸及びビニル無水マレイン酸などの、ビニル基やビニレン基と酸無水物とを有する化合物などが挙げられる。中でも、メタクリロキシグリシジルエーテル、アクリロキシグリシジルエーテル、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、ビニルオキサゾリン、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート及び前記のオリゴマーが好ましく、イソシアナトメチルアクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート及び前記のオリゴマーが特に好ましい。
【0057】
ここで、活性水素反応性基としてイソシアナト基を有し、反応性添加剤としてより好ましいものを具体的に示す。この好ましい反応性添加剤は例えば、下記式(Y)で表される。
[式(Y)中、
nは1〜10までの整数を表わし、R1’は、炭素数2〜20の2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、或いは炭素数5〜20の2価の芳香族炭化水素基を表わす。各繰り返し単位にある2つのR2’は、一方が−NH−であり、他方が>N−C(=O)−R3’で示される基である。R3’は、水酸基又は炭素−炭素不飽和結合を有する基を表す。
式(Y)中のR3’のうち、少なくとも1つのR3’は炭素−炭素不飽和結合を有する基である。]
【0058】
前記式(Y)で表される反応性添加剤の中でも、下記式(YY)で表される化合物(以下、場合により「化合物(YY)」という。)が特に好ましいものである(なお、nは前記と同じ意味である)。
化合物(YY)には、市販品をそのまま又は必要に応じて精製して用いることができる。市販品としては、Laromer(登録商標)LR−9000(BASF社製)等が挙げられる。
【0059】
反応性添加剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.1質量部〜5質量部である。
【0060】
<本配向層を用いた光学異方性フィルムの製造方法>
本配向層の上に形成された本光学フィルム、及び、本配向層の上に本光学フィルムが形成された積層体の製造方法は、通常、以下の(1)〜(4)の工程を含む。工程(2)及び(3)の間に、配向処理は施されない。光学異方層形成用組成物に含まれる液晶化合物が重合性液晶化合物である場合には、さらに、(5)の工程を含むことが好ましい。以下の(1)〜(5)の工程は、ロール状の基材を用いて、連続的に実施することが好ましい。
(1)基材に配向層形成用組成物を塗布する工程;
(2)塗布された配向層形成用組成物を乾燥し、本配向層を形成する工程;
(3)形成された本配向層の上に、光学異方層形成用組成物を塗布する工程;
(4)塗布された光学異方層形成用組成物を乾燥して乾燥被膜を得る工程;
(5)得られた乾燥被膜に光照射し、重合性液晶化合物を重合する工程。
【0061】
<工程(1)>
基材に配向層形成用組成物を塗布する方法としては、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング、ロールコーティング、バーコーティング法等が挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法も挙げられる。
【0062】
<工程(2)>
塗布された配向層形成用組成物を乾燥することで本配向層が基材に形成される。
配向層形成用組成物の乾燥方法としては、自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。乾燥温度は、10〜250℃が好ましく、40〜200℃がより好ましく、60℃〜150℃がさらに好ましい。乾燥時間は、溶剤の種類にもよるが、5秒間〜60分間が好ましく、10秒間〜30分間がより好ましい。
【0063】
<工程(3)>
光学異方性層形成用組成物を本配向層上に塗布する方法としては、前記した配向層形成用組成物の塗布方法と同じ方法が挙げられる。中でも、バーコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティングまたはロールコーティングのいずれかの方法が、Roll to Roll形式で連続的に本配向層上に光学異方性層形成用組成物を塗布できる点で好ましい。Roll to Roll形式で塗布する場合、基材に配向層形成用組成物を塗布して、該基材上に本配向層を形成し、さらに得られた本配向層上に光学異方性層形成用組成物を連続的に塗布することもできる。
【0064】
<工程(4)>
塗布された光学異方性層形成用組成物を乾燥することで、液晶化合物垂直配向した、乾燥被膜が得られる。
垂直配向した液晶化合物がネマチック相等の液晶相を示す場合、得られた乾燥被膜はモノドメイン配向による複屈折性を有する。すなわち、かかる乾燥被膜は光学異方性フィルムである。
【0065】
乾燥方法としては、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。中でも、加熱乾燥が好ましい。乾燥温度は、通常0℃〜250℃の範囲であり、好ましくは50℃〜220℃の範囲であり、より好ましくは60℃〜170℃の範囲である。乾燥温度は、液晶化合物が、溶剤が除去可能な温度よりも低い温度に固体−液晶相転移温度を有するものであれば、溶剤が除去可能な温度が好ましく、液晶化合物が、溶剤が除去可能な温度よりも高い温度に固体−液晶相転移温度を有するものであれば、液晶化合物の固体−液晶相転移温度以上の温度が好ましい。本配向層上で液晶相を形成させることで、自発的に液晶化合物が垂直方向に配向し、容易に光学異方性を発現させることができる。
乾燥時間は、通常10秒間〜60分間であり、好ましくは30秒間〜30分間である。
【0066】
<工程(5)>
乾燥被膜に含まれる液晶化合物が重合性液晶化合物である場合には、得られた乾燥被膜に光を照射し、重合性液晶化合物を重合することが好ましい。
【0067】
光としては、可視光、紫外光及びレーザー光等が挙げられる。中でも、紫外光が好ましい。紫外光によれば、低温で重合を実施できるため、耐熱性の点で、用いる基材の選択幅が広がる。
紫外光を照射するランプとしては、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ及びメタルハライドランプ等が挙げられ、中でも高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが好ましい。
【0068】
重合性液晶化合物を重合して得られる本光学フィルムは、重合性液晶化合物の配向が固定化されており、熱による複屈折の変化の影響を受けにくい。
【0069】
上記製造方法は、配向処理工程がないため、例えばラビング処理に付随するゴミの発生がなく、配向欠陥の発生が抑制される。
【0070】
本光学フィルムは、基材、又は、基材及び本配向層と積層された積層体として用いてもよいし、基材、又は、基材及び本配向層を取り除いて用いてもよい。
基材、又は、基材及び本配向層を有さない本光学フィルムは、通常、接着剤を介して偏光フィルム等のその他の部材と組み合わされる。
接着剤を介してその他の部材と組み合わせる方法としては、基材、又は、基材及び本配向層を有さない本光学フィルムを、接着剤を用いてその他の部材へ貼合する方法、及び、基材表面に形成された本配向層の表面に形成された本光学フィルムを、接着剤を用いてその他の部材へ貼合した後に基材、又は、基材及び本配向層を取り除く方法等が挙げられる。この際、接着剤は、本光学フィルムに塗布されてもよく、その他の部材に塗布されてもよい。
【0071】
本光学フィルムは、光射出側の斜角から確認した場合の直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、円偏光または楕円偏光を直線偏光に変換したり、直線偏光の偏光方向を変換したりするために用いられる位相差フィルムとして有用であり、特にIPS(in−plane switching)液晶表示装置用の位相差フィルムとして有用である。
【0072】
本光学フィルムは、可視光領域における透明性にも優れ、様々な表示装置用部材として使用し得る。
【0073】
本光学フィルムは、複数枚積層させて用いてもよいし、他のフィルムと組み合わせて用いてもよい。光学特性の異なる本光学フィルムを複数枚積層する、又は、本光学フィルムと他のフィルムと組み合わせることで、視野角補償フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、偏光板、円偏光板、楕円偏光板および輝度向上フィルムとして利用できる。
【0074】
一般的な位相差フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をn、面内の遅相軸と直交する方向(進相軸方向)の屈折率をn、厚み方向の屈折率をnとした場合、以下のように分類できる。本光学フィルムは、特にポジティブCプレートに好ましく用いられる。
>n≒nのポジティブAプレート、
≒n>nのネガティブCプレート、
≒n<nのポジティブCプレート、
≠n≠nのポジティブOプレートおよびネガティブOプレート
【0075】
本光学フィルムをポジティブCプレートとして用いる場合、正面位相差値Re(549)は通常0〜10nmの範囲に、好ましくは0〜5nmの範囲に調整すればよく、厚み方向の位相差値Rthは、通常−10〜−300nmの範囲に、好ましくは−20〜−200nmの範囲に調整すればよい。上記正面位相差値Re(549)は液晶セルの特性に合わせて、適宜選択することが好ましい。
【0076】
厚み方向の屈折率異方性を意味する厚み方向の位相差値Rthは、面内の進相軸を傾斜軸として50度傾斜させて測定される位相差値R50と面内の位相差値Rとから算出できる。すなわち、厚み方向の位相差値Rthは、面内の位相差値R、進相軸を傾斜軸として50度傾斜させて測定した位相差値R50、フィルムの厚みd、及びフィルムの平均屈折率nから、以下の式(9)〜(11)によりn、n及びnを求め、これらを式(8)に代入して、算出することができる。
【0077】
th=[(n+n)/2−n]×d (8)
=(n−n)×d (9)
50=(n−n’)×d/cos(φ) (10)
(n+n+n)/3=n (11)
ここで、
φ=sin−1 〔sin(50°)/n
’=n×n/〔n×sin (φ)+n×cos (φ)〕1/2
【0078】
本光学フィルム及び本光学フィルムを有する積層体は、偏光板を構成する部材としても有用である。本発明の偏光板は、本光学フィルムを少なくとも一つ含むものであり、位相差フィルムとして含まれてもよい。
偏光板の具体例としては、図1(a)〜図1(e)で示される偏光板が挙げられる。図1(a)で示される偏光板4aは、位相差フィルム1と、偏光フィルム2とが、直接積層された偏光板であり、図1(b)で示される偏光板4bは、位相差フィルム1と偏光フィルム2とが、接着剤層3’を介して貼り合わされた偏光板である。図1(c)で示される偏光板4cは、位相差フィルム1と、位相差フィルム1’とを積層させ、さらに、位相差フィルム1’と偏光フィルム2とを積層させた偏光板であり、図1(d)で示される偏光板4dは、位相差フィルム1と、位相差フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、位相差フィルム1’上に偏光フィルム2を積層させた偏光板である。図1(e)で示される偏光板4eは、位相差フィルム1と、位相差フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、位相差フィルム1’と偏光フィルム2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板である。”接着剤”とは、接着剤および/または粘着剤の総称を意味する。
【0079】
偏光フィルム2は、偏光機能を有するフィルムであればよい。偏光フィルムとしては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、及び、吸収異方性を有する色素を塗布したフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、ヨウ素及びアゾ化合物等の二色性色素が挙げられる。
【0080】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムとしては、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性色素を吸着させて延伸したフィルム及び、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
【0081】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物又は、二色性色素と重合性液晶化合物とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。
【0082】
偏光機能を有するフィルムは、好ましくは、その片面又は両面に保護フィルムを有する。当該保護フィルムとしては、上記した基材と同一のものが挙げられる。
【0083】
前記吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムとしては、具体的には、特許第3708062号、特許第4432487号等に記載の偏光板が挙げられる。
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012−33249号公報等に記載の偏光フィルムが挙げられる。
【0084】
接着剤層3および接着剤層3’に用いられる接着剤は、透明性が高く、耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。
【0085】
本発明の表示装置は、本光学フィルムを備える。該表示装置としては、本光学フィルムと液晶パネルとが貼り合わされた液晶パネルを備える液晶表示装置、および、本光学フィルムと発光層とが貼り合わされた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)パネルを備える有機EL表示装置が挙げられる。本光学フィルムを備えた表示装置の実施形態として、液晶表示装置について説明する。
【0086】
液晶表示装置としては、図2(a)および図2(b)に示す液晶表示装置10aおよび10bが挙げられる。図2(a)に示す液晶表示装置10aでは、本発明の偏光板4と液晶パネル6とが、接着層5を介して貼り合わされている。図2(b)に示す液晶表示装置10bでは、本発明の偏光板4が液晶パネル6の一方の面に、本発明の偏光板4’が液晶パネル6の他方の面に、接着層5および接着層5’をそれぞれ介して貼り合わされた構造を有している。これら液晶表示装置では、図示しない電極を用いて、液晶パネルに電圧を印加することにより、液晶分子の配向が変化し、白黒表示が実現できる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではない。なお、例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部を意味する。
【0088】
[配向膜形成用組成物の調製]
配向膜形成用組成物の組成を、表1に示す、市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE−610(日産化学工業株式会社製)にN−メチル−2−ピロリドン、2−ブトキシエタノールおよびエチルシクロヘキサンを加えて配向層形成用組成物(1)を得た。
【0089】
【表1】
表1における値は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を表す。
SE−610については、固形分量を納品仕様書に記載の濃度から換算した。
【0090】
[光学異方層形成用組成物の調製]
光学異方層形成用組成物の組成を表2に示す。各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し、光学異方層形成用組成物(1)を得た。
【0091】
【表2】
【0092】
表2における括弧内の値は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を表す。
表2におけるLR9000は、BASFジャパン社製のLaromer(登録商標)LR−9000を、Irg907は、BASFジャパン社製のイルガキュア907を、BYK−361Nは、ビックケミージャパン製のレベリング剤を、LC242は、下記式で示されるBASF社製の重合性液晶化合物を、PGMEGAは、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタートを表す。
【0093】
実施例1
シクロオレフィンポリマーフィルム(ZF−14、日本ゼオン株式会社製)の表面を、コロナ処理装置(AGF−B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kw、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、配向膜形成用組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた配向層の厚さをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、34nmであった。続いて、配向層上に、光学異方層形成用組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY−A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を、波長365nmにおいて1000mJ/cmの積算光量で照射することにより重合を行い、光学異方性フィルム(1)を得た。得られた光学異方性フィルムの膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は970nmであった。
【0094】
比較例1
配向層を形成した後に、ラビング処理を施した以外は、実施例1と同じ条件で光学異方性フィルム(2)を作製した。配向層および光学異方性フィルムの厚さをレーザー顕微鏡で測定したところ、配向層は37nm、光学異方性フィルムは985nmであった。
【0095】
[透明性評価]
スガ試験機株式会社製 ヘイズメーター(型式HZ−2)を用いて、ダブルビーム法で、光学異方性フィルム(1)及び(2)のヘイズ値を測定した。結果を表3に示す。
【0096】
[光学特性の測定]
光学異方性フィルム(1)及び(2)の位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)により測定した。サンプルへの光の入射角を変えて測定し、液晶化合物の配向方向を確認した。結果を表3に示す。
【0097】
[欠陥数の測定]
光学異方性フィルム(1)及び(2)の欠陥数について、レーザー顕微鏡を用いて、25cmあたりの直径100μm以上の大きさの欠陥をカウントした。結果を表3に示す。
【0098】
[接触角測定]
実施例1及び比較例1に用いた配向層表面の水接触角を、協和界面科学株式会社製 DropMaster700を用いて、液滴法(液量:1.1μL)により測定した。また、光学異方層形成用組成物(1)を配向層表面に滴下したときの接触角、光学異方性フィルム(1)表面の水の接触角及び、光学異方性フィルム(2)表面の水の接触角を同様の方法によって測定した。結果を表4に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
実施例1で作製した光学異方性フィルムは、欠陥が少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、欠陥発生が抑制された光学異方性フィルムを製造することができる。
【符号の説明】
【0103】
1、1’:位相差フィルム
2、2’:偏光フィルム
3、3’:接着剤層
4a、4b、4c、4d、4e、4、4’:偏光板
5、5’:接着層
6:液晶パネル
10a、10b:液晶表示装置
図1
図2