特許第6394690号(P6394690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許63946901,1−ジ置換ヒドラジン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394690
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】1,1−ジ置換ヒドラジン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/82 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   C07D277/82
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-505217(P2016-505217)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2015055122
(87)【国際公開番号】WO2015129654
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-39673(P2014-39673)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】奥山 久美
【審査官】 吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−151181(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/018570(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/010325(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/147904(WO,A1)
【文献】 CHAPLEO,C.B. et al,Journal of Medicinal Chemistry,1986年,Vol.29, No.11,p.2273-80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 277/82
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、−CH−、−CHR−、−CR−、−NR−を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又は、−C(=O)−O−Rを表す。ここで、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。複数のR同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する任意のC−Rは窒素原子に置き換えられていてもよい。)で表されるヒドラジノ化合物を、該ヒドラジノ化合物に対し、1.0〜3.0当量の、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基の存在下、非プロトン性極性溶媒中、式(III):R−Hal(Halは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜12の有機基を表す。)
で示される化合物と反応させることを特徴とする、下記式(II)
【化2】
(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を表す。)
で示される1,1−ジ置換ヒドラジン化合物の製造方法。
【請求項2】
反応終了後、反応液にプロトン性溶媒を添加して、直接結晶化させる工程を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記プロトン性溶媒が水である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物が、式(I)中、Rが水素原子の化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物が、式(I)中、Xが硫黄原子の化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記式:R−Halで表される化合物が、式(III)中、Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基の化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記塩基を、前記ヒドラジノ化合物に対し、1.0〜2.0当量用いる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記非プロトン性極性溶媒が、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造中間体として有用な1,1−ジ置換ヒドラジン化合物を、低コストで収率よく工業的に有利に製造する方法に関する。
【0002】
1,1−ジ置換ヒドラジノベンゾチアゾール等の1,1−ジ置換ヒドラジン化合物は、各種工業原料や医薬、農薬などの製造中間体として有用な化合物である。
従来、1,2−ジ置換ヒドラジン化合物の製造方法としては、次のものが知られている。
(a)特許文献1には、2−(1−メチルヒドラジノ)ベンゾチアゾールに関し、「このものは、例えば、2−クロロベンゾチアゾールとメチルヒドラジンとの反応によって、又は、2−(N−メチルアミノ)ベンゾチアゾール等を、亜硝酸を用いてニトロソ体とし、次いで還元剤を用いて還元することによって得られる」と記載されている。しかし、この文献には、製造方法の詳細や反応収率などは記載されていない。
【0003】
(b)また、特許文献2には、原料にヒドラジノベンゾチアゾールを用い、塩基として炭酸カリウム、炭酸セシウム、又はヘキサメチルジシラザンを用いた、多種の1,1−ジ置換ヒドラジノベンゾチアゾールの合成例が記載されている。
この文献に記載の製造方法に用いるヒドラジノベンゾチアゾールは、工業的に生産されており入手が容易であるため、工業的製造方法には有利な原料といえる。しかしながら、この方法には、ヒドラジノベンゾチアゾールに直接置換基を導入しようとすると、競争反応が進行し、1,2−ジ置換ヒドラジノベンゾチアゾールが副生するため、収率よく目的物を得ることができないという問題があった。また、塩基として高価な炭酸セシウム等を大過剰用いる必要があるため、コスト面にも問題があった。さらに、記載されている合成方法は、分液処理後にカラム精製が必要であるため、目的物を工業的生産規模で製造することが困難なものであった。
【0004】
このように、従来の1,1−ジ置換ヒドラジノベンゾチアゾールの製造方法は、高価な試薬を大量に用いて反応を行い、その後カラム精製により、副生成物である1,2−ジ置換ヒドラジノベンゾチアゾール等を除去する工程を含むものであって、工業的に実施するにはコスト面で大きな課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−151181号公報
【特許文献2】国際公開2012−147904号(US2014/0142266 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、安価に入手容易なヒドラジノベンゾチアゾール等を原料とし、安価な試薬を用いて、低コストで1,1−ジ置換ヒドラジノベンゾチアゾール等の1,1−ジ置換ヒドラジン化合物を合成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、下記式(I)で表される化合物を、特定量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基の存在下、非プロトン性極性溶媒中、下記式(III)で表されるハロゲン化合物と反応させることにより、目的とする、下記式(II)で表される1,1−ジ置換ヒドラジン化合物を収率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、(1)〜(10)の1,1−ジ置換ヒドラジン化合物の製造方法が提供される。
(1)下記式(I)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、−CH−、−CHR−、−CR−、−NR−を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基又は、−C(=O)−O−Rを表す。ここで、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。複数のR同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する任意のC−Rは窒素原子に置き換えられていてもよい。)で表されるヒドラジノ化合物を、該ヒドラジノ化合物に対し1.0〜3.0当量の、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基の存在下、非プロトン性極性溶媒中、式(III):R−Hal(Halは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜12の有機基を表す。)で表される化合物と反応させることを特徴とする、下記式(II)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を表す。)で表される1,1−ジ置換ヒドラジン化合物の製造方法。
【0013】
(2)反応終了後、反応液にプロトン性溶媒を添加して、直接結晶化させる工程を有することを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)前記プロトン性溶媒が水である、(2)に記載の製造方法。
(4)前記式(I)で表される化合物が、式(I)中、Rが水素原子の化合物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
(5)前記式(I)で表される化合物が、式(I)中、Xが硫黄原子の化合物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記式:R−Halで表される化合物が、式中、Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基の化合物である、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記塩基が、アルカリ金属水酸化物である(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
(8)前記塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)前記塩基を、前記ヒドラジノ化合物に対し1.0〜2.0当量用いる(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記非プロトン性極性溶媒が、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種である、(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
なお、本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換又は置換基を有する」を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、工業的に製造されており、入手が容易なヒドラジノベンゾチアゾール等を原料とし、安価な試薬だけを用いて、高い反応選択性で直接置換基を導入し、高収率で1,1−ジ置換ヒドラジノベンゾチアゾール等の1,1−ジ置換ヒドラジン化合物を製造することができる。
すなわち、本発明によれば、下記に示す1,2−ジ置換ヒドラジン化合物を副生することなく、高反応選択性で、高収率にて、目的とする化合物(II)(1,1−ジ置換ヒドラジン化合物)を得ることができる。
【0017】
【化3】
【0018】
また、予め精製することなく直接結晶化することにより、短工程で、高純度の目的物を高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、詳細に説明する。
本発明は、下記式(I)で表されるヒドラジノ化合物(以下、「ヒドラジノ化合物(I)」ということがある。)を、前記ヒドラジノ化合物に対し1.0〜3.0当量の、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基の存在下、非プロトン性極性溶媒中、式(III):R−Halで表される化合物(以下、「化合物(III)」ということがある。)と反応させることを特徴とする、下記式(II)で表される1,1−ジ置換ヒドラジン化合物の製造方法である。
【0020】
【化4】
【0021】
式中、Xは酸素原子、硫黄原子、−CH−、−CHR−、−CR−、−NR−を表す。
ここでR、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0022】
、Rの、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0023】
炭素数1〜10のアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;水酸基;等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、本発明の効果がより得られやすいことから、Xは、酸素原子、硫黄原子、−CH−であるのが好ましく、酸素原子、硫黄原子であるのがより好ましく、硫黄原子であるのが特に好ましい。
【0025】
は、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シアノ基;ニトロ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1〜6のフルオロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6のアルキルチオ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、アセチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;又は、−C(=O)−O−Rを表す。ここで、Rは、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
の置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、R等の置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0026】
複数のR同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する任意のC−Rは窒素原子に置き換えられていてもよい。下記に、C−Rが窒素原子に置き換えられた場合の、式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【0027】
【化5】
【0028】
これらの中でも、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子であるのが好ましく、水素原子であるのが特に好ましい。
前記式(III)中、Halは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。なかでも、本発明の効果がより得られやすい観点から、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0029】
Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の有機基を表す。炭素数1〜12の有機基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜12のアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基;炭素数2〜12のアルキニル基;及び炭素数6〜12のアリール基等の炭化水素基;カルボキシル基、酸無水物基、アミド基等が挙げられる。なお、有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子は加えないものとする。
【0030】
炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基等が挙げられる。
炭素数2〜12のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブチニル基等が挙げられる。
炭素数2〜12のアルキニル基としては、プロピニル基、プロパルギル基、ブチニル基等が挙げられ、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
【0031】
前記炭化水素基の置換基としては、シアノ基;ニトロ基;水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等、t−ブトキシ基の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等の、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換された炭素数1〜6のアルコキシ基;フェニル基、2−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等の置換基を有していてもよいアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;等が挙げられる。
これらの中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
【0032】
本発明においては、塩基として、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を用いる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。また、水酸化マグネシウムも用いることができる。
これらの中でも、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0033】
これらの塩基の使用量は、通常1.0〜3.0当量であり、1.0〜2.0当量であるのが好ましい。前記塩基をこのような量で使用することにより、目的物を高収率で得ることができる。
【0034】
反応は非プロトン性極性溶媒中で行う。
前記非プロトン性極性溶媒は、プロトン供与性を有さない極性溶媒であり、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル系溶媒;ジエチルスルホン、ジフェニルスルホン等のスルホン系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のウレア系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;等が挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
これらの中でも、本発明においては、本発明の効果がより得られやすいことから、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒を用いるのが好ましく、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドを用いるのがより好ましい。
【0036】
溶媒の使用量は特に制限されないが、前記式(I)で表される化合物1g当たり、通常、0.1〜50ml、好ましくは0.5〜20ml、より好ましくは1〜15mlである。
【0037】
化合物(I)と化合物(III)の使用割合は、化合物(I)と化合物(III)とのモル比で、通常、1:1〜1:2、好ましくは1:1〜1:1.3である。このような使用割合で反応を行うことにより、目的物を収率よく得ることができる。
【0038】
化合物(I)と化合物(III)との反応は、前記アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基の存在下、非プロトン性極性溶媒中で行われる。
具体的には、(α)化合物(I)を非プロトン性極性溶媒に溶解し、ここに、所定量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基と、化合物(III)を添加し、全容を撹拌する方法、(β)化合物(III)を非プロトン性極性溶媒に溶解し、ここに、所定量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基と、化合物(I)を添加し、全容を撹拌する方法、(γ)化合物(I)及び化合物(III)を非プロトン性極性溶媒に溶解し、ここに、所定量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基を添加し、全容を撹拌する方法等が挙げられ、(α)の方法が好ましい。
【0039】
(α)の方法においては、化合物(I)の非プロトン性極性溶媒溶液に、所定量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基及び化合物(III)を同時に添加してもよいし、化合物(I)の非プロトン性極性溶媒溶液に、所定量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基を添加した後、化合物(III)を添加してもよい。
また、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基は、固体状態のものを反応液に添加してもよいし、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる塩基を非プロトン性極性溶媒に溶解(懸濁)させたものを反応液に添加してもよい。
さらに、化合物(III)は、そのまま反応液に添加してもよいし、化合物(III)を非プロトン性極性溶媒に溶解させたものを反応液に添加してもよい。
【0040】
反応温度は、通常、−10℃から用いる溶媒の沸点まで、好ましくは、0℃〜60℃である。反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
また、反応は、窒素気流中等の不活性雰囲気下で行うのが好ましい。
【0041】
反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行うことによって、目的物を単離することができるが、本発明は、反応液にプロトン性溶媒を添加して、直接結晶化させる工程を有するのが好ましい。予め精製することなく直接結晶化することにより、容易に、高収率で高純度の目的物を得ることができる。
【0042】
用いるプロトン性溶媒としては、目的とする1,1−ジ置換ヒドラジン化合物の貧溶媒であるプロトン性溶媒であれば、特に制限されないが、例えば、水;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の一価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、ジメトキシプロパノール等のオキシアルコール化合物類;等が挙げられる。これらの中でも、水を用いるのが特に好ましい。
【0043】
目的とする化合物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0044】
本発明の製造方法によれば、入手容易な化合物(I)を原料とし、安価な試薬を用いて、高い反応選択性で、高収率で、目的とする1,1−ジ置換ヒドラジン化合物を製造することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、転化率、反応選択性は、以下のようにして求めた値である。
【0046】
(転化率)
転化率は、下記式により求めた値である。
【0047】
【数1】
【0048】
(反応選択性)
反応選択性は、下記式により求めた値である。
【0049】
【数2】
【0050】
(実施例1)化合物1の合成
【0051】
【化6】
【0052】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化カリウム2.55g(45.4mol)、及び、1−ブロモヘキサン6.00g(36.3mol)を加え、全容を25℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物1を6.42g得た(転化率95.1%、反応選択性96.7%、収率85.0%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0053】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.60(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.53(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.27(ddd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz,8.0Hz)、7.06(ddd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz,8.0Hz)4.22(s,2H)、3.74(t,2H,J=7.5Hz)、1.69−1.76(m,2H)、1.29−1.42(m,6H)、0.89(t,3H,J=7.0Hz)
【0054】
(実施例2)化合物2の合成
【0055】
【化7】
【0056】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化ナトリウム1.82g(45.4mol)、及び、1−ブロモヘプタン6.50g(36.3mol)2反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を、水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物2を6.97g得た(転化率94.6%、反応選択性95.7%、収率87.3%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0057】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.59(dd,1H,J=1.5Hz,8.0Hz)、7.53(dd,1H,J=1.5Hz,8.0Hz)、7.06−7.28(m,2H)、4.22(s,2H)、3.75(t,2H,J=7.0Hz)、1.29−1.38(m,10H)、0.88(t,3H,J=7.0Hz)
【0058】
(実施例3)化合物3の合成
【0059】
【化8】
【0060】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びジメチルスルホキシド40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化カリウム2.55g(45.4mol)、及び、1−ブロモドデカン9.05g(36.3mol)を加え、全容を25℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を、水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物3を8.48g得た(転化率91.3%、反応選択性97.7%、収率83.9%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0061】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.60(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.53(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.27(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,8.0Hz)、7.06(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,8.0Hz)、4.22(s,2H)、3.74(t,2H,J=7.5Hz)、1.73(tt,2H,J=7.5Hz,7.5Hz)、1.41−1.25(m,18H)、0.88(t,3H,J=7.0Hz)
【0062】
(実施例4)化合物4の合成
【0063】
【化9】
【0064】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びジメチルスルホキシド40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化カリウム2.55g(45.4mol)、及び、2−ブロモヘキサン5.99g(36.3mol)を加え、全容を25℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を、水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物4を6.39g得た(転化率92.3%、反応選択性96.6%、収率84.5%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0065】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.59(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.52(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.24−7.30(m,1H)、7.05(ddd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz,8.0Hz)、3.97(s,2H)、1.47−1.74(m,3H)、1.20−1.41(m,7H)、0.89(t,3H,J=5.5Hz)
【0066】
(実施例5)化合物5の合成
【0067】
【化10】
【0068】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びアセトニトリル40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化ナトリウム1.82g(45.4mol)、及び、3−ブロモヘプタン6.50g(36.3mol)を加え、全容を25℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を、水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物5を6.80g得た(転化率93.0%、反応選択性95.5%、収率85.2%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0069】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.58(dd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz)、7.51(dd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz)、7.27(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,7.5Hz)、7.04(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,7.5Hz)、3.94(s,2H)、1.48−1.72(m,5H)、1.18−1.41(m,4H)、0.91(t,3H,J=7.5Hz)、0.86(t,3H,J=7.5Hz)
【0070】
(実施例6)化合物6の合成
【0071】
【化11】
【0072】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化ナトリウム1.82g(45.4mol)、及び、(ブロモメチル)シクロヘキサン6.43g(36.3mol)を加え、全容を25℃で4時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物6を6.66g得た(転化率91.3%、反応選択性95.6%、収率84.1%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0073】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS,δppm):7.58(d,1H,J=8.5Hz)、7.51(d,1H,J=8.1Hz)、7.26(dd,1H,J=7.0Hz,8.1Hz)、7.04(dd,1H,J=7.0Hz,8.1Hz)、4.24(s,2H)、3.59(d,2H,J=7.4Hz,)1.84−1.92(m,1H)、1.67−1.77(m,5H)、1.16−1.29(m,3H)、1.02−1.13(m,2H)。
【0074】
(実施例7)化合物7の合成
【0075】
【化12】
【0076】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びN−メチルピロリドン40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化カリウム2.55g(45.5mol)、及び、ブチル2−クロロエチルエーテル4.96g(36.3mol)を加え、全容を2時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、5℃にて析出した固体をろ取した。5℃にてろ取した固体を水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物7を6.73g得た(転化率90.8%、反応選択性94.4%、収率83.7%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0077】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.61(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.50(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.27−7.29(m,1H)、7.04−7.08(m,1H)、4.70(s,2H)、4.01(t,2H,J=5.0Hz)、3.82(t,2H,J=5.0Hz)、3.44(t,2H,J=7.0Hz)、1.52−1.57(m,2H)、1.31−1.39(m,2H)、0.90(t,3H,J=7.0Hz)
【0078】
(実施例8)化合物8の合成
【0079】
【化13】
【0080】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びN−メチルピロリドン40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化ナトリウム1.82g(45.4mol)、及び、5−ブロモバレロニトリル5.88g(36.3mol)を加え、全容を25℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を、水10ml、n−ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物8を6.19g得た(転化率91.1%、反応選択性97.7%、収率82.9%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0081】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS,δppm):7.60(d,1H,J=7.8Hz)、7.51(d,1H,J=8.1Hz)、7.28(dd,1H,J=7.3Hz,7.8Hz)、7.07(dd,1H,J=7.3Hz,7.8Hz)、4.23(s,2H)、3.81(t,2H,J=6.9Hz)、2.46(t,2H,J=7.1Hz,)1.88−1.95(m,2H)、1.71−1.79(m,2H)
【0082】
(実施例9)化合物9の合成
【0083】
【化14】
【0084】
温度計を備えた3つ口反応器に窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化カリウム2.55g(45.4mol)、及び、1−ブロモ−2−ブチン4.83g(36.3mol)を加え、全容を25℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を、水10ml、ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物9を5.47g得た(転化率94.1%、反応選択性95.7%、収率85.1%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0085】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.63(dd,1H,J=1.3Hz,7.8Hz)、7.58(dd,1H,J=1.3Hz,7.8Hz)、7.29(ddd,1H,J=1.3Hz,7.8Hz,7.8Hz)、7.10(ddd,1H,J=1.3Hz,7.8Hz,7.8Hz)、4.56(q,2H,J=2.5Hz)、4.36(s,2H)、1.84(t,3H,J=2.5Hz)
【0086】
(実施例10)化合物10の合成
【0087】
【化15】
【0088】
温度計を備えた3つ口反応器に窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mol)、及びN−メチルピロリドン40mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化ナトリウム1.82g(45.4mol)、及び、4−ブロモ−1−ブテン4.90g(36.3mol)を加え、全容を25℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却した後、水40mlを加え、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を、水10ml、ヘプタン25mlで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて白色固体として化合物10を6.00g得た(転化率94.0%、反応選択性96.6%、収率84.9%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0089】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.60(d,1H,J=7.8Hz)、7.54(d,1H,J=7.5Hz)、7.30(dd,1H,J=7.8Hz,7.8Hz)、7.07(dd,1H,J=7.5Hz,7.8Hz)、5.89(ddt,1H,J=10.3Hz,17.0Hz,7.0Hz)5.18(dd,1H,J=1.5Hz,17.0Hz)、5.09(dd,1H,J=1.5Hz,10.3Hz)、4.27(s,2H)、3.86(t,2H,J=7.0Hz)、2.53(dt,2H,J=7.0Hz,7.0Hz)
【0090】
(比較例1)化合物1の合成
実施例1と同様の条件において、溶媒として2−プロパノールを用いて全容を80℃で6時間反応させた後、酢酸エチル20mlを加えて同様に後処理を行い、化合物1を2.67g得た(転化率68.3%、反応選択性56.4%、収率35.4%)。
【0091】
(比較例2)化合物1の合成
実施例1と同様の条件において、溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルを用いて全容を80℃で6時間反応させた後、酢酸エチル20mlを加えて同様に後処理を行い、化合物1を2.14g得た(転化率48.3%、反応選択性72.9%、収率28.3%)。
【0092】
(比較例3)化合物1の合成
実施例1と同様の条件において、溶媒としてトルエンを用いて全容を80℃で6時間反応させた後、同様に後処理を行い、化合物1を0.26g得た(転化率12.1%、反応選択性59.4%、収率3.5%)。
【0093】
(比較例4)化合物1の合成
実施例1と同様の条件において、無溶媒下で全容を80℃で6時間反応させた後、酢酸エチル20mlを加えて同様に後処理を行い、化合物1を2.95g得た(転化率55.1%、反応選択性76.4%、収率39.1%)。
【0094】
(比較例5)化合物1の合成
実施例1と同様の条件において、塩基として40%水酸化カリウム水溶液を用いて全容を50℃で8時間反応させた後、同様に後処理を行い、化合物1を2.61g得た(転化率72.5%、反応選択性66.7%、収率34.6%)。
【0095】
(比較例6)化合物1の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール2.00g(12.1mmol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド20mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、炭酸カリウム8.36g(60.5mmol)、及び、1−ヨードヘキサン3.08g(14.5mmol)を加え、全容を50℃で7時間撹拌した。反応終了後、反応液を20℃まで冷却した後、水200mlに投入し、酢酸エチル300mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータローエバポレーターにて、ろ液から酢酸エチルを減圧留去して、黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=75:25(体積比、以下にて同じ。))により精製し、白色固体として化合物1を2.10g得た(転化率92.1%、反応選択性73.3%、収率69.6%)。
【0096】
(比較例7)化合物2の合成
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール2.00g(12.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド30mlに溶解させた。この溶液に炭酸セシウム7.88g(24.2mol)を加えて25℃に冷却し、1−ヨードヘプタン3.28g(14.5mmol)を5分間かけて滴下し、その後反応液を25℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水200mlを加え、酢酸エチル100mlで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=85:15)により精製することで、白色固体として化合物2を1.81g得た(転化率90.3%、反応選択性70.6%、収率56.9%)。
【0097】
(比較例8)化合物3の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール3.00g(18.2mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド45mlに溶解した。この溶液に炭酸セシウム11.9g(36.4mmol)、1−ヨードドデカン6.45g(21.8mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。反応終了後、反応液を水200mLに投入し、酢酸エチル300mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去して、黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=95:5)により精製し、白色固体として化合物3を2.93g得た(転化率89.0%、反応選択性72.2%、収率:48.3%)。
【0098】
(比較例9)化合物4の合成
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール2.00g(12.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド30mlに溶解させた。この溶液に炭酸セシウム7.88g(24.2mol)を加えて0℃に冷却し、2−ブロモヘキサン2.39g(14.5mmol)を5分間かけて滴下し、その後反応液を25℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水200mlを加え、酢酸エチル100mlで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=93:7)により精製することで、白色固体として化合物4を1.61g得た(転化率90.2%、反応選択性63.5%、収率53.4%)。
【0099】
(比較例10)化合物5の合成
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール2.00g(12.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド30mlに溶解させた。この溶液に炭酸セシウム7.88g(24.2mol)を加えて0℃に冷却し、3−ブロモヘプタン2.60g(14.5mmol)を5分間かけて滴下し、その後反応液を25℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水200mlを加え、酢酸エチル100mlで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製することで、白色固体として化合物5を1.80g得た(転化率88.9%、反応選択性66.7%、収率56.4%)。
【0100】
(比較例11)化合物6の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール3.00g(18.2mmol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド30mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、炭酸カリウム7.55g(54.6mmol)、及び、(ブロモメチル)シクロヘキサン3.86g(21.8mmol)を加え、全容を80℃で9時間撹拌した。反応終了後、反応液を20℃まで冷却した後、水300mlに投入し、酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータローエバポレーターにて、ろ液から酢酸エチルを減圧留去して、黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=85:15)により精製し、白色固体として化合物6を2.36g得た(転化率87.3%、反応選択性65.6%、収率49.7%)。
【0101】
(比較例12)化合物7の合成
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール2.00g(12.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド30mlに溶解させた。この溶液に炭酸セシウム7.88g(24.2mol)を加えて0℃に冷却し、ブチル2−クロロエチルエーテル1.98g(14.5mmol)を5分かけて滴下し、その後反応液を25℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水200mlを加え、酢酸エチル100mlで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=75:25)により精製することで、白色固体として化合物7を1.70g得た(転化率86.3%、反応選択性69.4%、収率53.0%)。
【0102】
(比較例13)化合物8の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール5.00g(30.3mmol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、炭酸カリウム20.9g(152mmol)、及び、5−ブロモバレロニトリル5.17g(31.9mmol)を加え、全容を60℃で8時間撹拌した。反応終了後、反応液を20℃まで冷却した後、水500mlに投入し、酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータローエバポレーターにて、ろ液から酢酸エチルを減圧留去して、黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=60:40)により精製し、白色固体として化合物8を3.41g得た(転化率87.3%、反応選択性66.3%、収率45.7%)。
【0103】
前記実施例1〜10及び比較例1〜13の結果を、下記表1にまとめて示す。
なお、表1中、溶媒は以下のものを示す。
1:N、N−ジメチルホルムアミド
2:ジメチルスルホキシド
3:アセトニトリル
4:1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
5:N−メチルピロリドン
6:2−プロパノール
7:シクロペンチルメチルエーテル
8:トルエン
9:水
また、表1中、*は窒素原子との結合を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1から、実施例1〜10の製造方法によれば、高い転化率及び反応選択性で、収率よく目的物を得られることが分かる。
一方、塩基として、アルカリ金属等の水酸化物を用いない比較例6〜13では、反応選択性が低く、目的物の単離収率が低いものとなっている。また、溶媒として、非プロトン性極性溶媒を用いない比較例1〜5においては、転化率、反応選択性、単離収率がいずれも低くなっている。