(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
  1.  蛍光材料の組成
  本発明は、一般式(以下、一般式(1)と呼ぶ):(Gd
1-α-β-γR
αCe
βTb
γ)
3+a(Al
1-u-vGa
uSc
v)
5-bO
12(RはYおよびLuから選択される少なくとも一つの元素)で表される組成を有する蛍光材料である。ここで、a、b、α、β、γ、u、vはそれぞれ、以下の関係を満たしている。
0≦a≦0.1、
0≦b≦0.1、
0≦α≦0.8、
0.0003≦β≦0.005、
0.02≦γ≦0.2、
0.27≦u≦0.75、
0≦v≦0.02
【0029】
  また、本発明の蛍光材料は、99%以上の相対密度を有し、蛍光材料の有効原子番号は35以上60以下である。
【0030】
  本発明の蛍光材料の上記一般式(1)において、酸素の組成比は12であると定めている。これは、本発明の蛍光材料がガーネット構造を備えているとし、酸素を基準として組成比を決定しているからである。しかし、本発明の蛍光材料は完全なガーネット構造を備えていなくてもよい。上述したようにaおよびbの値によっては、本発明の蛍光材料は、酸素欠損または酸素過剰であるガーネット構造を備えていることもある。つまり、酸素欠損や酸素過剰であるかどうかにかかわらず、酸素の組成比を12であるとして組成式を定めた場合に、組成式の組成比a、b、α、β、γ、u、vがそれぞれ関係を満たしていればよい。
【0031】
  ガーネット型の酸化物からなる蛍光材料は、放射線に対して安定な金属酸化物で、高い発光強度をもつ蛍光材料として知られている。蛍光材料の発光は、X線励起により生成した電子と正孔が発光イオンにおいて結合することにより生じる。Gd、Al、Gaを含むガーネット型の酸化物において、発光イオンとしてCeおよびTbを添加することで、Ce単独、Tb単独の組成とするよりも発光強度が向上する。CeとTbのどちらかのみを添加すると、ある程度の添加量までは発光強度が高まるが、以下において説明するように、多量に添加しすぎると濃度消光が起こって発光強度が下がる。本発明は、Gd、Al、Gaを含む組成のガーネット型の酸化物を母材とし、かつ、CeとTbの発光元素の両方を微量に共添加することで高い発光強度を実現した。
【0032】
  Ceの量を示すβは、0.0003≦β≦0.005の範囲とする。βが0.0003未満の場合には、発光元素であるCe原子の数が少なすぎるために、吸収したX線のエネルギーを効率良く光エネルギーに変換することができない。βが0.005よりも大きいと、Ce原子間の距離が小さくなりすぎるために、エネルギーの回遊が起こり(いわゆる濃度消光が起こり)発光強度が低下する。特に高い発光強度を得るには、βを0.0003≦β≦0.004の範囲内にすることが好ましい。より好ましくは0.0005≦β≦0.003である。
【0033】
  同様に、Tbの量を示すγは、0.02≦γ≦0.2の範囲とする。γが0.02未満の場合には、発光元素であるTb原子の数が少なすぎるために、吸収したX線のエネルギーを効率よく光エネルギーに変換することができない。γが0.2よりも大きいと、Tb原子間の距離が小さくなりすぎるために、エネルギーの回遊が起こり(いわゆる濃度消光が起こり)発光強度が低下する。特に高い発光強度を得るには、γを0.03≦γ≦0.15の範囲内にすることがより好ましい。さらに好ましくは0.03≦γ≦0.1である。
【0034】
  本発明者の詳細な検討によれば、CeまたはTbのいずれかを単独で、Gd、Al、Gaを含むガーネット型の酸化物に添加する場合、β=0.001またはγ=0.05の割合まで、CeまたはTbの添加量が増大するにつれて蛍光強度も増大する。また、これらの値より添加量が増えると、発光強度は逆に減少する。
【0035】
  しかし、例えば、CeまたはTbの単独での添加が、発光強度を減少させる添加量Mであっても、添加をCeとTbとに分散させ、Tbの添加量とCeの添加量との合計がMとなるようにTbおよびCeの両方を添加することによって、さらに発光強度を高められることが分かった。これは、TbとCeとでは、蛍光が生じる電子の遷移状態が異なるため(Tbは4f−4f電子の遷移、Ceは、4f−5d遷移)、異なる遷移エネルギーの発光元素を共添加することで、X線励起により生成された電子と正孔を無駄なく結合させることができるからと考えられる。
【0036】
  a、bの範囲は共に、0≦a≦0.1、0≦b≦0.1とする。
【0037】
  aとbは同じ値をとることが好ましいが、素原料などに含まれるSiやFe等の不純物元素の固溶や秤量誤差などにより、異なる値をとる場合もある。a≠bのときは結晶中に酸素欠陥が生じ易く、発光強度が低下する場合がある。
【0038】
  aが0未満の負の数であると、希土類元素が占有する(Gd
1-α-β-γR
αCe
βTb
γ)サイトにイオンの空孔が生成し残光が増加する。また、発光強度が極端に低下する。よってaは0以上とする。量産においては組成のバラツキを考慮して0<a、0<bさらには0.0001≦a、0.0001≦bとすることが好ましい。但し、a、bが0.1を超えるとガーネット型ではない異相(ペロブスカイト相GdAlO
3)が生成されやすくなる。この異相は母材のガーネット型の相と屈折率が異なるため光散乱が生じ発光強度が低下する。
【0039】
  特に高い発光強度と低い残光特性を両立するには、aを0<a≦0.07、bを0<b≦0.07の範囲内にすることがより好ましく、さらには0.0001≦a≦0.05、0.0001≦b≦0.05の範囲内にすることが特に好ましい。
【0040】
  R元素(YまたはLu)の量を示すαは、0≦α≦0.8とする。好ましくは、αは、0.3<α≦0.8を満たし、さらに好ましくは0.5<α≦0.8を満たしている。
【0041】
  上述したように、一般式(1)で示される組成を有する蛍光材料は、αの値が0≦α≦0.8の範囲にあることによって、高い蛍光発光強度を有する。一方、一般式(1)におけるαを0≦α≦0.8の範囲で調整することによって、GdのR元素による置換の割合が調節でき、蛍光材料の有効原子番号を変えることができる。
【0042】
  Gaの量を示すuは、0.27≦u≦0.75とする。
【0043】
  uが0.27未満の場合には上記のペロブスカイト相が析出し、発光強度が低くなる。また、焼結性も低下する。例えば、u≦0.2では焼結性が低下し、ボイドが多くなる。一方、uが0.75を超える場合は発光強度が低下し、残光が大幅に増加する。特に高い相対発光強度を得るには、uを0.35≦u≦0.70の範囲内にすることが好ましく、0.4≦u≦0.6の範囲内にすることがより好ましい。
【0044】
  Scの量を示すvは、0≦v≦0.02とする。
【0045】
  Scは、発光強度を向上させ残光を低減させる添加元素である。
【0046】
  Gaは+3価イオンであるが、+1価に価数変動しやすい性質を持つ。ガーネット型の構造の中でGaが+1価になると、発光強度が低下し残光が増加する。Sc
3+のイオン半径は、Al
3+及びGa
3+のイオン半径よりも大きく、Ga
3+の価数変化を抑制するものと考えられる。特に高い相対発光強度比を得るには、vを0.003≦v≦0.02の範囲内にすることがより好ましい。
【0047】
  また、Scを添加することで、焼結後に得られる蛍光材料は、微細な結晶が密に存在する構造を備える。一般に多結晶セラミックは、内部のどこかで破壊が生じても、破壊による亀裂の拡大が結晶粒で止められる確率が高くなる。このため微細な結晶が密に分布するほど破壊靭性が高まり、その結果として機械的強度も高くなる。
【0048】
  焼結体の結晶の平均粒径は、焼結体に空孔がなく、十分な密度を達成できるのであればどのような範囲でも構わない。焼結前の成形において、十分な密度を達成したほうが、焼結後の密度も高くなりやすいため、粉末の状態において10μm以下であることが好ましく、かつ、焼結後も同程度に留めることが好ましい。
【0049】
  Sc量を示すvが0.003以上であると蛍光材料の平均結晶粒径を5μm以下まで小さくできる。vが0.02以下であれば、発光強度はGd
2O
2S:Tbの蛍光材料と同等かもしくはそれ以上とすることができる。
【0050】
  本発明の蛍光材料の相対密度は99%以上である。相対密度の計算方法は以下の通りである。まず、一般式(1)において、a=0、b=0、α=0、β=0、γ=0、u=2/5、v=0の場合(組成式:Gd
3Al
3Ga
2O
12)の格子定数をICDD(International Centre for Diffraction Data)のデータより引用し、それを基準に体積を算出する。次に相対密度を算出しようとする試料の組成式から質量として式量を算出し、式量と体積とから求めた密度を理論密度とする。次に、蛍光材料の実測密度を測定し、前記理論密度で割って相対密度を算出する。相対密度が小さい場合、十分なX線の吸収が行われなくなるため、99%以上が好ましい。また、Gd元素をαの組成比に基づいてR元素に置換するために、a=0、b=0、α=0、β=0、γ=0、u=2/5、v=0の格子定数を基準に算出しており、場合によっては、相対密度は100%を超えることもある。ただし、大きく超える場合、結晶構造が変わってしまっている可能性が高い。本発明の実施例からは相対密度は102.5%以下であればガーネット構造を備えていることを確認している。
【0051】
  本発明の蛍光材料は、硫黄を含まない。このためGd
2O
2S系の蛍光材料と異なり、硫化物を原料として用いないことにより、高い密度の焼結体を得ることができ、これによって透過率が上がり高い発光強度を実現し得る。
【0052】
  本発明の蛍光材料の有効原子番号(実効原子番号)は35以上60以下である。有効原子番号は、以下の式で定義される。
【0053】
【数1】
【0054】
  ここで、f
1、f
2、f
3、・・・は、一般式(1)中の全元素の電子数に対する各元素の電子数の比を示し、Z
1、Z
2、Z
3、・・・は各元素の原子番号を示す。
【0055】
  有効原子番号が大きいほどより高いエネルギーを吸収できるようになり、有効原子番号が小さければ高いエネルギーを透過できるようになる。例えば、X線CTの放射線検出器に汎用される、蛍光材料である、組成式Gd
2O
2Sで示されるセラミックスシンチレータの有効原子番号は59.5であり、Gd−Al−Gaガーネットシンチレータの有効原子番号は約52である。ここで、有効原子番号が52から59の間の蛍光材料、及び有効原子番号が52より小さい範囲の蛍光材料を用いて、吸収するX線のエネルギー範囲が分離したシンチレータを構成することができる。吸収するX線のエネルギー範囲が大きく分離した2つのシンチレータを実現するためには、それぞれのシンチレータを構成する蛍光材料の有効原子番号は離れている方が好ましい。
【0056】
  前述した有効原子番号の一般式(1)に示したとおり、有効原子番号は、材料の組成に依存している。すなわち、用いる元素と組成比を適切に決定し、かつ、前述した相対密度が99%以上であるとき、有効原子番号に基づいた高いエネルギーの吸収可能な蛍光材料が得られる。
【0057】
  本発明において、組成R=Yであれば0.3<α≦0.8で、有効原子番号35以上50以下であることが好ましく、さらには、0.5<α≦0.8で、有効原子番号37以上45以下であることが好ましい。R=Luであれば0.3<α≦0.8で、有効原子番号53以上57以下であることが好ましく、さらには、0.5<α≦0.8で、有効原子番号54以上56以下であることが好ましい。上述したように、Rの元素に応じて、R元素量αを上述した範囲に決定することにより、有効原子番号の差が大きい蛍光材料の組み合わせを一般式(1)に基づき、簡単に製造することができる。
【0058】
  例えば、一般式(1)において、R=Y、0.3<α≦0.8であり、有効原子番号が35以上50以下の第1の蛍光材料と、一般式(1)において、R=Lu、0.3<α≦0.8であり、有効原子番号が53以上57以下の第2の蛍光材料との組み合わせを簡単に製造することができる。
【0059】
  蛍光材料の有効原子番号は、Rとして選択する元素および各元素の割合を示すa、b、α、β、γ、u、vによって調節し得る。特に、R元素としてYおよびLuのいずれを選ぶか、および、R元素の組成比αによって、蛍光の発光強度を大きく低下させることなく有効原子番号を変化させることができる。
【0060】
  本発明の蛍光材料は、一般式(1)で示される組成を有し、上述した範囲の密度を有することにより、高い蛍光発光強度を実現することができる。また、一般式(1)で示される範囲でRとなる元素を選択し、各元素の組成比を調整することによって、35以上60以下の有効原子番号を有する蛍光材料を実現できる。これにより、発光強度が高く、異なるエネルギー吸収係数を備える蛍光材料を実現することが可能となる。よって、一般式(1)で表される蛍光材料は、異なるエネルギーの放射線の検出に好適に用いられる。
【0061】
  2.  蛍光材料の製造方法
  以下、蛍光材料の製造方法の一例を説明する。本発明はこれに限定されない。
【0062】
  <無機塩法>
  無機塩法とは、原料を酸などにより溶解した前駆体を乾燥し、焼結する方法である。
【0063】
  例えば原料として、目標の組成に秤量した、硝酸ガドリニウム、硝酸イットリウムまたは硝酸ルテチウム、硝酸セリウム、硝酸テルビウム、硝酸アルミニウム、硝酸ガリウム、硝酸スカンジウム等を純水に溶かし、前駆体溶液を形成する。代替的には、出発物質すべてを酢酸塩、ギ酸塩、乳酸塩など、またはこれらの組合せにしてもよい。または、酸化物原料を硝酸水溶液や塩酸水溶液に溶かしてもよい。さらに、クエン酸を加えて、60℃〜80℃に加熱しながら撹拌を行い重合により粘度を高めることができる。この際、粘度の調整としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどを少量添加してもよい。これによって成形に適した粘度に調整されたゲル状の前駆体が得られる。
【0064】
  この前駆体をドクターブレード法等でシート状に成形することができる。得られたシート状の成形体を約100℃〜150℃で乾燥し、その後、酸素中で1100℃〜1500℃の温度で、0.5〜5.0時間保持することにより成形体を焼結させる。これにより、シート状の蛍光材料が得られる。
【0065】
  <スラリー法>
  スラリー法とは、スラリー状にした原料をバインダーと混ぜた後に乾燥し、焼結する方法である。
【0066】
  例えば原料として、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化ルテチウム、酸化セリウム、酸化テルビウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを適宜目的組成に秤量した平均粒径1μm以下の酸化物原料の微粉を、アルミナボールなどの粉砕メディアと、水やエタノールなどの粉砕媒体と共に容器に入れ、容器を回転させる装置を用いて湿式ボールミル混合を行い、スラリーを作製する。この際、発光イオンであるセリウムとテルビウムなどの少量添加する物質は、硝酸塩などを用いてもよい。また、作製したスラリーに分散剤やバインダーなどをあらかじめ加えるか、混合後に加えてもよい。このスラリーをブレードを用いて一定の厚さでフィルムの上に塗布するシート成形装置などを用いてシート成形体を得ることができる。このシート成形体を約100℃〜150℃で乾燥し、その後、酸素中で1100℃〜1500℃の温度で、0.5〜5.0時間保持することによって、シート成形体を焼結させる。これより、シート状の蛍光材料が得られる。
【0067】
  <その他>
  粉体の蛍光材料を得る場合には、一般的なセラミックス焼成体を製造する方法を用いることができる。
【0068】
  例えば原料として、ガドリニウム、イットリウムまたはルテチウム、セリウム、テルビウム、アルミニウム、ガリウムおよびスカンジウムの酸化物、炭酸塩等をこれらの元素が目標の組成比となるように秤量し、必要に応じて溶媒を加え、ボールミル等で混合及び粉砕する。混合物を乾燥後、混合物を適当な容器などに入れるか適当な形に成形し、酸素中で1100℃〜1500℃の温度で、0.5〜5.0時間保持することによって、焼結する。得られた焼結物をボールミル等を用いて粉砕することによって、粉体の蛍光材料を得ることができる。また、粉砕せずに、そのまま蛍光材料として用いてもよい。
【0069】
  3.蛍光材料を用いた実施形態
  [シンチレータ]
  上述した方法によって作製した板状の蛍光材料、成形体または粉体の蛍光材料を、そのままのシンチレータとして用いることができる。また、粉体の蛍光材料を樹脂に分散させ、樹脂を成形することによって、所望の形状を有するシンチレータを作製してもよい。
【0070】
  [シンチレータアレイ]
  
図8に、本発明によるシンチレータアレイの一実施形態を示す。
図8(a)は、シンチレータアレイ13の上面図であり、
図8(b)は
図8(a)におけるA−A断面を示す。また、
図8(c)は、
図8(a)におけるB−B断面を示す。
【0071】
  シンチレータアレイ13は、検出感度、つまり、エネルギー吸収係数が異なる二種のシンチレータアレイを含むデュアルアレイ構造を備えている。
図8(a)に示すように、シンチレータアレイ13は、第1の方向(x方向)に複数のシンチレータが配列された1次元配列のシンチレータアレイ10が、第1の方向と直交する第3の方向(y方向)に複数配列されている。
図8(b)および(c)に示すように、各シンチレータアレイ10は、第1の蛍光材料からなる複数の第1のセル21が配列された第1のアレイ11と、第2の蛍光材料からなる複数の第2のセル22が配列された第2のアレイ12とを含む。第1のアレイ11および第2のアレイ12は、それぞれ複数の第1のセル21および複数の第2のセル22の周りに位置する樹脂層23を含む。
【0072】
  第1のアレイ11および第2のアレイ12において、複数の第1のセル21および複数の第2のセル22は、それぞれ、第1の方向(x方向)に配列されている。また、第1のアレイ11の各第1のセル21は、第1の方向および第2の方向と直交する第2の方向(z方向)において、第2のアレイ12の複数の第2のセル22の1つと隣接するよう配列されている。
【0073】
  第2の方向における第1のセル21および第2のセル22の高さはそれぞれh1、h2である。第1のセル21および第2のセル22の高さh1、h2は、検出すべき放射線の強度に応じて決定し得る。
【0074】
  第1のアレイ11は、X線が入射する入射面11aと複数の第1のセル21による蛍光を検出するための検出面11cとを有する。検出面11cにおいて、複数の第1のセル21のそれぞれ1つの面が露出している。同様に第2のアレイ12は、X線が入射する入射面12aと複数の第2のセル22による蛍光を検出するための検出面12cとを有する。検出面12cにおいて、複数の第2のセル22のそれぞれ1つの面が露出している。第1のアレイ11の検出面11cと第2のアレイ12の入射面12aとは対向している。
【0075】
  第1のアレイ11の入射面11aから入射したX線は、第1のセル21を透過する。この際、X線の一部が吸収され、第1のセル21が蛍光を発する。吸収されなかったX線は、検出面11cから出て、第2のアレイ12の入射面12aから第2のセル22に入射する。第2のセル22はX線を吸収し、蛍光を発する。したがって、検出面11cおよび検出面12cにそれぞれ蛍光を検出する光電変換素子を配置することによって、第1のセル21および第2のセル22における蛍光を検出することができる。
【0076】
  第1の蛍光材料および第2の蛍光材料は、一般式(1)で示され、互いに異なる組成を有する。例えば、第1の蛍光材料にX線を照射し、吸収させると同時に透過させて、第2の蛍光材料にX線を照射させる場合は、第1の蛍光材料のエネルギー吸収係数は第2の蛍光材料のエネルギー吸収係数よりも小さいことが好ましい。
【0077】
  シンチレータアレイ13は、例えば、以下の方法によって作製することができる。まず、異なるエネルギー吸収係数を有する第1の蛍光材料および第2の蛍光材料を作製する。これは、一般式(1)を用い、例えば、組成式(1)におけるαを異ならせたり、元素Rとして異なるYとLuを異ならせたりすることによって、第1の蛍光材料および第2の蛍光材料の組成を決定することができる。次に、例えば、焼成によって、第1の蛍光材料および第2の蛍光材料から複数の第1のセル21および複数の第2のセル22を作製する。複数の第1のセル21を所定の間隔で配列し、周囲を樹脂23で固めることによって、第1のアレイ11を作製する。同様に、複数の第2のセル22を所定の間隔で配列し、周囲を樹脂23で固めることによって、第2のアレイ12を作製する。これらを積層することによって、シンチレータアレイ13が完成する。
【0078】
  シンチレータアレイ13において、第1のセル21を構成している第1の蛍光材料のエネルギー吸収係数は第2のセル22を構成している第2の蛍光材料のエネルギー吸収係数よりも小さい。それによりエネルギーを分離して検出する例を以下に説明する。
【0079】
  一般に被検体中の血管や筋肉などの部位は、骨などの部位に比べて、エネルギーの相対的に小さい軟X線を吸収しやすく、エネルギーの相対的に大きい硬X線を透過しやすい。一方、骨などの部位は、血管や筋肉などの部位に比べてエネルギーの相対的に大きい硬X線を吸収しやすい。このため、軟X線および硬X線のいずれか一方を用いて被検体を撮影した場合、血管や筋肉などの部位および骨などの部位のいずれか一方が明瞭に画像化され、他方は明瞭に画像化されない場合がある。
【0080】
  シンチレータアレイ13によれば、血管や筋肉などの部位および骨などの部位の両方の明瞭な画像を得ることができる。例えば、軟X線および硬X線等エネルギーの強度分布が異なる複数のX線を被検体に同時にまたは時間をずらして照射し、シンチレータアレイ13に入射させる。第1のセル21のエネルギー吸収係数は小さいため、第1のセル21では、エネルギーの低いX線のみが吸収され、エネルギーの高いX線はあまり吸収されずに透過する。第1のセル21を透過したエネルギーの高いX線は、第2のセル22に入射する。第2の蛍光材料のエネルギー吸収係数は第1の蛍光材料に比べて相対的に大きいため、第1のセル21を透過して第2のセル22に入射したX線は、第2のセル22で吸収される。よって、第2のセル22は、第1のセル21で吸収されたX線以外のエネルギーの強度分布に応じた蛍光を発する。したがって、第1のセル21で検出されたX線による画像には、血管や筋肉などの部位が明瞭に示される。第2のセル22で検出されたX線による画像には、骨などの部位が明瞭に示される。これら2つの画像を合成することによって、血管や筋肉などの部位および骨などの部位の両方が明瞭に示された画像を得ることが可能である。
【0081】
  このようにシンチレータアレイ13によれば、異なるエネルギーのX線を1つのシンチレータアレイ13で検出することが可能である。また、シンチレータアレイ13の異なるエネルギーのX線を好適に吸収する第1の蛍光材料および第2の蛍光材料を同じ一般式(1)を用いて製造することができる。
【0082】
  図8に示すシンチレータアレイ13は、第1のセル21および第2のセル22が第1の方向(x方向)および第3の方向(y方向)に配置された2次元アレイであるが、本発明のシンチレータアレイは、2次元アレイに限らない。シンチレータアレイ10を単独で1次元配列アレイとして用いてもよい。
【0083】
  [放射線検出器]
  シンチレータと、光を電気信号、電流値または電圧値に変換する光電変換素子を組み合わせることによって、高感度、高解像度かつ放射線劣化の小さい放射線検出器を作製することができる。
【0084】
  板状の蛍光材料、成形体または粉体の蛍光材料を、そのままのシンチレータとして用いる場合には、これらの蛍光材料に蛍光材料の蛍光を検出する光電変換素子を隣接して配置することにより、放射線検出器を構成できる。板状の蛍光材料を用いる場合には、2次元光電変換素子アレイを用いてもよい。
【0085】
  図9は、本発明の実施形態によるデュアルアレイ構造の放射線検出器14の断面図である。放射線検出器14は、
図8に示すシンチレータアレイ13と複数の光電変換素子アレイ31、32とを含む。光電変換素子アレイ31、32は、それぞれ、例えば、第1の方向(x方向)に配列された複数の光電変換素子を含む。光電変換素子は、例えば、シリコンフォトダイオード等のフォトダイオードであってもよい。
【0086】
  シンチレータアレイ13に含まれる各シンチレータアレイ10において、光電変換素子アレイ31は、第1のアレイ11の検出面11cと第2のアレイ12の入射面12aとの間に配置され、光電変換素子アレイ31の受光面31aが検出面11cと対向している。また、光電変換素子アレイ32は、第2のアレイ12の検出面12cに配置され、受光面32aが検出面12cと対向している。
【0087】
  放射線検出器14によれば、第1のセル21を構成する第1の蛍光材料および第2のセル22を構成する第2の蛍光材料のエネルギー吸収係数が異なるため、異なるエネルギーのX線を1つの放射線検出器14で検出することが可能である。よって、放射線検出器14を用いれば、異なる内部組織を含む生体や、異なる材料で内部が構成された被検査対象物、材料の異なる物品が収納された手荷物等を、複数の異なるエネルギーのX線で照射して検出することにより、内部の構造がより鮮明に示されたX線画像を得ることができる。
【0088】
  図9に示す放射線検出器14は、第1のセル21および第2のセル22が第1の方向(x方向)および第3の方向(y方向)に配置された2次元アレイである。しかし、1次元配列のシンチレータアレイ10と光電変換素子アレイ31、32とを用いて1次元配列の放射線検出器を構成してもよい。
【0089】
  また、
図10(a)および(b)に示すように、第1の蛍光材料からなる第1のセル21を透過したX線が、光電変換素子を透過しないで第2の蛍光材料からなる第2のセル22に入射するように光電変換素子アレイを配置してもよい。具体的には、
図10(a)および(b)に示す放射線検出器15は、複数の1次元配列のシンチレータアレイ10’と、複数の光電変換素子アレイ33とを備える。シンチレータアレイ10’は、
図8に示す1次元配列のシンチレータアレイ10の第1のアレイ11と第2のアレイ12とが接合した構造を備える。シンチレータアレイ10’は、入射面10’aと、入射面10’aに垂直な検出面10’bとを有している。光電変換素子アレイ33は、シンチレータアレイ10’に対して、第3の方向(y方向)に隣接して配置されている。シンチレータアレイ10’の検出面10’bにおいて、複数の第1のセル21及び第2のセル22のそれぞれ1つの面が露出しており、光電変換素子アレイ33の受光面33aは、検出面10’bと第3の方向において対向している。放射線検出器15において、光電変換素子アレイ33の受光面33aはX線の透過方向と平行であり、シンチレータアレイ10’の入射面10’aから入射したX線が光電変換素子アレイ33の受光面33aを透過しない。このため、光電変換素子アレイの上にX線を透過させないようにすることで光電変換素子へのダメージを小さくできる。
【0090】
  上記実施形態では、エネルギー吸収係数が異なる2つの蛍光材料によって構成されるデュアルアレイシンチレータおよびデュアルアレイ放射線検出器を説明した。しかし、エネルギー吸収係数が異なる3以上の蛍光材料を用いて、シンチレータマルチアレイおよびマルチアレイ放射線検出器を実現してもよい。
【0091】
  4.  実施例
  (実施例1)
  Ce量、Tb量と相対発光強度の関係を調べた。
【0092】
  シンチレータの発光は、X線励起により生成した電子と正孔が発光イオンにおいて結合することにより生じる。本発明の組成系では、発光イオンはCeおよびTbの2元素である。
【0093】
  Ce量βと相対発光強度の関係を述べる。表1に示す組成式になるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム(酸化セリウムでもよい。以下同様)、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。その際、Ce量βが下記組成式で、0、0.00033、0.00066、0.0010、0.0017、0.0033、0.0050、0.0066となるようにした。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を40時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成は1660℃で12時間保持にて行った。これにより得られた蛍光材料をICP−AES分析(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法、パーキンエルマー製:OPTIMA−3300XL)により組成を特定したところ、表1に示す組成の蛍光材料であることが確認できた。表1の組成を用いて有効原子番号を計算すると50.7〜50.8であった。焼成温度は相対密度が99%以上となるように決めており、実際に得られた蛍光材料の相対密度は99%以上であった。平均結晶粒径は約3μmであった。
【0094】
  Ce量βと相対発光強度の関係を
図1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
  図1の相対発光強度はGd
2O
2S:Tbの発光強度を100%とした場合の値(%)である。発光強度はシリコンフォトダイオード(浜松ホトニクス製S2281)を用いて測定した。以下の実施例の発光強度も同様に測定した。
【0097】
  図1よりβの値が0.0003≦β≦0.005の範囲で100%より大きい相対発光強度が得られた。Ceは微量でも発光強度を向上させるため、βが0.0003以上であれば十分に発光強度を高めることができる。βの値が0.0003≦β≦0.004の範囲で、105%以上の相対発光強度が得られ、0.0005≦β≦0.003の範囲で、110%以上の相対発光強度が得られた。
【0098】
  Tb量γと相対発光強度の関係を述べる。表2に示す組成式になるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。その際、Tb量γが下記組成式で、0、0.01、0.017、0.033、0.05、0.066、0.10、0.13、0.20となるようにした。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を40時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成は1660℃で12時間保持にて行った。これにより得られた蛍光材料をICP−AES分析により組成を特定したところ、表2に示す組成の蛍光材料であることが確認できた。表2の組成を用いて有効原子番号を計算すると50.7〜50.9であった。焼成温度は相対密度が99%以上となるように決めており、実際に得られた蛍光材料の相対密度は99%以上であった。平均結晶粒径は約3μmであった。
【0099】
  Tb量γと相対発光強度の関係を
図2Aに示す。
【0100】
【表2】
【0101】
  γの値が0.02≦γ≦0.2の範囲で発光強度が十分に高いものが得られた。γの値が0.03≦γ≦0.15の範囲とすることでさらに発光強度を高くすることができる。
【0102】
  表2に示すように、
図2Aの結果は、Ceの添加量βが0.001である場合を示しており、
図1から、Ceの添加量βが0.001である場合、Ceについては、蛍光材料の最も発光強度が高くなる。したがって、
図2Aは、最も発光強度が高くなる条件でCeが含まれている場合でも、Tbを添加することにより、発光強度をさらに高めることができ、Tbの添加量γが0.05程度で発光強度が最も高くなることを示している。
【0103】
  同様に、
図1の結果は、Tbの添加量γが0.05である場合を示しているため、
図1は、最も発光強度が高くなる条件でTbが含まれている場合でも、Ceを添加することにより、発光強度をさらに高めることができ、Ceの添加量βが0.001程度で発光強度が最も高くなることを示している。
【0104】
  これらの結果から、CeおよびTbを単独で蛍光材料に添加する場合に比べて、CeおよびTbの合計の添加量を高めることができ、これによって、CeおよびTbを単独で蛍光材料に添加する場合に比べて、より高い発光強度を得られることが分かる。
【0105】
  さらに、R=Yであり、α=0.797である場合におけるTb量γと相対発光強度の関係を以下に説明する。表3に示す組成式になるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。その際、Tb量γが下記組成式で、0、0.02、0.05、0.1、0.199となるようにした。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を40時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成は1700℃で12時間保持にて行った。表3の組成を用いて有効原子番号を計算すると37.5〜38.0であり、エネルギー吸収係数は3.8〜4.2であった。焼成温度は相対密度が99%以上となるように決めており、実際に得られた蛍光材料の相対密度は99%以上であった。
R=Y、α=0.797の場合の、Tb量γと相対発光強度の関係を
図2Bに示す。
【0106】
【表3】
【0107】
  γの値が0.02≦γ≦0.199の範囲で発光強度が十分に高いものが得られた。γの値が0.05≦γ≦0.199の範囲とすることでさらに発光強度を高くすることができる。この結果から、Yの量をα=0.033からα=0.797に増やすことで、より高い発光強度を得られることが分かった。
【0108】
  (実施例2)
  Y量およびLu量と相対発光強度、有効番号、相対密度およびエネルギー吸収係数との関係を調べた。表4に示す組成式になるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウムまたは酸化ルテチウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。その際、Y量αが下記組成式で、0.033、0.325、0.617、0.783、0.949となるようにした。また、Lu量αが下記組成式で、0、0.285、0.617、0.783、0.949となるようにした。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を60時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成は1660℃から1700℃のいずれかの温度で12時間保持にて行った。これにより得られた蛍光材料をICP−AES分析により組成を特定したところ、表4に示す組成の蛍光材料であることが確認できた。平均結晶粒径は約3.5〜8.1μmであった。
【0109】
  有効原子番号は上述した式によって求めた。得られた蛍光材料の実測密度をアルキメデスの原理に基き、水を使用した液中秤量法によって求めた。相対密度は、実測密度を理論密度で除することによって求めた。エネルギー吸収係数は、ICPで組成を分析し、組成から線エネルギー吸収係数を求め、線エネルギー吸収係数を密度で除することによって求めた。
【0110】
  Y量と相対発光強度の関係を
図3Aに示す。また、Lu量と相対発光強度の関係を
図3Bに示す。
【0111】
【表4】
【0112】
  RがYである場合、αの値が0≦α≦0.949の範囲で110%以上の相対発光強度が得られる。一方、RがLuである場合、αの値が0≦α≦0.8の範囲で100%以上の相対発光強度が得られる。
【0113】
  表5に、R量(YまたはLu)αと、有効原子番号、エネルギー吸収係数および相対密度との関係を示す。また、
図3Cおよび
図3Dに、それぞれ、Y量およびLu量と有効原子番号との関係を示す。
【0114】
【表5】
【0115】
  RがYである場合、GdよりもYの原子番号が小さいため、αが増大するにつれて、有効原子番号は小さくなる。また、エネルギー吸収係数も、αが増大すると小さくなる。αが0.8よりも大きくなると、有効原子番号が35よりも小さくなり、エネルギー吸収係数も7よりも小さくなる。その結果、X線を吸収しにくくなり、蛍光が発生しにくくなる。このため、αは0≦α≦0.8の範囲であることが好ましい。
図3Cより、αを0.5<α≦0.8の範囲に設定することによって、有効原子番号を有効原子番号37以上45以下程度に調整し得ることが分かる。なお、有効原子番号は、Rおよびαのみによって決まるのではなく、一般式(1)中のR以外の元素の組成比にも依存する。
【0116】
  RがLuである場合、GdよりもLuの原子番号が大きいため、αが増大するにつれて、有効原子番号は大きくなる。また、エネルギー吸収係数もαが増大するにつれて大きくなる。αが0.8よりも大きくなると、焼結温度が上昇し、十分な密度の焼結体を得ることが難しくなり、相対発光強度も小さくなる。
図3Dより、αを0.3<α≦0.8の範囲に設定することによって、有効原子番号53以上57以下であることが好ましく、さらには、0.5<α≦0.8で、有効原子番号54以上56以下であることが好ましい。
【0117】
  このようにRとして、Yを選択するかLuを選択するかにより、同じ結晶構造でありながら、Rの添加量に対する有効原子番号およびエネルギー吸収係数を変化させられるため、Rとして用いる元素およびαの値に応じて、加工性などの特性がほぼ同じでありながら、種々の有効原子番号およびエネルギー吸収係数を備えた蛍光材料を実現することができる。
【0118】
  (実施例3)
  Ga量と相対発光強度の関係を調べた。表6に示す組成式になるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。その際、Ga量uが下記組成式で、0.232、0.293、0.333、0.373、0.413、0.453、0.493、0.573、0.593、0.693、0.754、0.794となるようにした。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を40時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成は1660℃で12時間保持にて行った。これにより得られた蛍光材料をICP−AES分析により組成を特定したところ、表6に示す組成の蛍光材料であることが確認できた。表6の組成を用いて有効原子番号を計算すると49.8〜51.2であった。焼成温度は相対密度が99%以上となるように決めており、実際に得られた蛍光材料の相対密度は99%以上であった。平均結晶粒径は約3μmであった。
【0119】
  Ga量と相対発光強度の関係を
図4に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
  図4よりGa量を示すuの値が0.27≦u≦0.75の範囲であれば、相対発光強度の低下を防ぐことができ、0.35≦u≦0.70の範囲であれば高い発光強度が得られる。特に、uが0.4≦u≦0.6を満たす場合、更に高い発光強度を得ることができる。
【0122】
  (実施例4)
  (Gd
1-α-β-γY
αCe
βTb
γ)
3+a(Al
1-u-vGa
uSc
v)
5-bO
12の組成において、a、bの値と相対発光強度の関係を調べた。なお、aとbは同じ値とした。表7に示す組成式となるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。その際、a、bが下記組成式で、−0.01、0、0.01、0.02、0.05、0.1、0.15、0.20となるようにした。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を40時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成は1660℃で12時間保持にて行った。これにより得られた蛍光材料をICP−AES分析により組成を特定したところ、表7に示す組成の蛍光材料であることが確認できた。表7の組成を用いて有効原子番号を計算すると50.7〜50.8であった。焼成温度は相対密度が99%以上となるように決めており、実際に得られた蛍光材料の相対密度は99%以上であった。平均結晶粒径は約3μmであった。
【0123】
  a、bの値と相対発光強度の関係を
図5に示す。
【0124】
【表7】
【0125】
  図5よりa<0、b<0の場合、発光イオンであるCeおよびTbのサイトに空孔が生じることで、X線励起で生成した電子が捕捉され、発光強度が低下する。0≦a、0≦bとすることで、空孔が抑制され、良好な発光強度を示す。一方、aとbとが共に0.1より大きくなると、シンチレータ中にガーネット型の相とは異なるペロブスカイト型の相GdAlO
3が異相として形成されやすくなる。この異相は、母材のガーネット型の相と屈折率が異なる為に、ペロブスカイト型の相で光散乱が生じ、発光強度が低下する。0≦a≦0.1、0≦b≦0.1の範囲であれば、相対発光強度の低下を防ぐことができる。0<a≦0.07、0<b≦0.07であればさらに高い発光強度が得られ、0.0001≦a≦0.05、0.0001≦b≦0.05であれば、さらに高い発光強度が得られる。
【0126】
  (実施例5)
  Yの代わりにLuを用いた場合とY及びLuの両方を用いた場合について、αの値と相対発光強度の関係を調べた。
【0127】
  表8に示す3種の組成式となるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化ルテチウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を40時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成は1660℃で12時間保持にて行った。これにより得られた蛍光材料をICP−AES分析により組成を特定したところ、表8に示す組成の蛍光材料であることが確認できた。表8の組成を用いて有効原子番号を計算すると50.7〜52.5であった。焼成温度は相対密度が99%以上となるように決めており、実際に得られた蛍光材料の相対密度は99%以上であった。平均結晶粒径は約3μmであった。表8には、実施例1で得られたYを用いた試料の結果も示している。
【0128】
  表8より、この3種の実施例による蛍光材料は、他の実施例の蛍光材料と同様に、Gd
2O
2S:Tbを100%としたときの相対発光強度で95%以上の高い発光強度が得られることを確認した。
【0129】
【表8】
【0130】
  (実施例6)
    Sc量と相対発光強度の関係を調べた。表9に示す組成式となるように、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化テルビウム、硝酸セリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウムを秤量した。その際、Sc量vが下記組成式で、0、0.003、0.006、0.012、0.020、0.025となるようにした。樹脂製のポットにこれらの原料粉を入れ、アルミナボールを用いて湿式ボールミル混合を40時間行い、原料スラリーを作製した。作製したスラリーを乾燥後、平板状にプレス成型し、酸素中にて焼成を行った。焼成条件は1660℃で12時間保持にて行った。これにより蛍光材料を得た。
【0131】
    これにより得られた蛍光材料をICP−AES分析により組成を特定したところ、表9に示す組成の蛍光材料であることが確認できた。表9の組成を用いて有効原子番号を計算すると50.7〜50.8であった。焼成温度は相対密度が99%以上となるように決めており、実際に得られた蛍光材料の相対密度は99%以上であった。
【0132】
    Sc量vと相対発光強度の関係を
図6に示す。
【0133】
【表9】
【0134】
  また、Sc量と蛍光材料における平均結晶粒径の関係を調べた。上記で得た蛍光材料のSc量と平均結晶粒径との関係を
図7に示す。
【0135】
  表10はSc量と平均結晶粒径、発光強度について調べたものである。
図7、表10より、Sc量を示すvの値が0.02以下であれば、発光強度の低下を防ぐことができる。また、vを0.003以上とすれば結晶粒成長が抑制され平均結晶粒径を十分に小さくすることができる。Scの原料は高価であることから多量の添加はコストを増大させることや、発光強度を高める効果を考慮すればvの上限値を0.02とすることが好ましく、0.015とすることがより好ましい。
【0136】
【表10】