特許第6394967号(P6394967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6394967移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394967
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20180913BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20180913BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20180913BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   H01L21/68 K
   H02K41/03 A
   G05D1/00 B
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-539782(P2014-539782)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2013076819
(87)【国際公開番号】WO2014054689
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-219946(P2012-219946)
(32)【優先日】2012年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 祐一
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4352445(JP,B2)
【文献】 特開2011−165990(JP,A)
【文献】 特開2001−102429(JP,A)
【文献】 特開2007−215264(JP,A)
【文献】 特開2008−005669(JP,A)
【文献】 特開2000−312465(JP,A)
【文献】 特開2008−166615(JP,A)
【文献】 特開2001−217183(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/006730(WO,A1)
【文献】 米国特許第06408767(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/68
H02K 41/03
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材上に配置され、該ベース部材上で移動可能な移動体と、
前記ベース部材に設けられた固定子と、前記移動体に設けられた可動子とを有し、前記移動体を前記ベース部材上で駆動する磁気浮上方式の平面モータと、を備え、
前記移動体は、枠状部材と、噴出し口とを有し、前記移動体の下面側に前記可動子が設けられ、
前記枠状部材は、その内周面で前記可動子を取り囲むように、前記ベース部材に対向する前記移動体の下面に設けられ、前記ベース部材に対向する面が、前記可動子を含む他の部分と同一面となる、又は前記可動子を含む他の部分より前記ベース部材側に突出し、
前記噴出し口は、前記可動子の前記ベース部材に最も近接する部分より前記ベース部材から離れた前記移動体の前記下面位置で且つ前記枠状部材の前記内周面の内側の空所に対向する位置に設けられ、外部から供給された加圧気体を前記ベース部材に向けて噴き出す移動体装置。
【請求項2】
前記噴出し口は、前記空所に対向する、前記移動体の下面の異なる位置に複数設けられている請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記枠状部材は、樹脂又は弾性体から成る請求項1又は2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記移動体と前記枠状部材との間、又は前記枠状部材に、前記枠状部材の内部と外部とを連通する少なくとも1つの通気路が設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記通気路は、前記枠状部材を貫通する貫通孔である請求項4に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記移動体に接続され、前記ベース部材に接した状態で所定軸周りに回転して前記移動体の全体を前記軸に直交する方向に案内する案内体と、該案内体を前記ベース部材に接する第1位置と、前記ベース部材に接しない第2位置との間で変位させる変位装置とをさらに備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記案内体として、第1軸周りに回転する第1回転転体と、水平面内において前記第1軸に直交する第2軸周りに回転する第2回転体とが、少なくとも各1つ設けられ、
前記変位装置は、前記第1回転体と、前記第2回転体とを独立して前記第1位置と前記第2位置との間で変位させる請求項6に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記移動体は、前記案内体を回転駆動する駆動装置をさらに含み、
前記変位装置及び前記駆動装置を制御する制御系をさらに備える請求項6又は7に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記制御系は、その少なくとも一部が、遠隔操縦装置によって構成される請求項8に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記遠隔操縦装置は、前記移動体に着脱自在に接続可能である請求項9に記載の移動体装置。
【請求項11】
前記移動体は、前記加圧気体の供給流路を有し、前記供給流路は一端が前記噴出し口に接続され、他端が前記加圧気体の供給系に接続される供給管と着脱可能に接続される請求項1〜10のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項12】
前記平面モータによって前記移動体が浮上されている間も、前記噴出し口から前記加圧気体が噴き出される請求項1〜11のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項13】
前記枠状部材と前記ベース部材との接触・非接触を検知するセンサを更に備え、該センサが両者の接触を検知したとき、前記噴出し口から前記加圧気体が噴き出される請求項1〜12のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項14】
所定の物体が前記移動体に保持される請求項1〜13のいずれか一項に記載の移動体装置と、
前記物体にエネルギビームを照射して所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、磁気浮上型の平面モータによってベース部材上で駆動される移動体を含む移動体装置、該移動体装置を備える露光装置、及び該露光装置を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置は、露光対象物体であるウエハ又はガラスプレート等の基板を保持してステージベース(以下、適宜、ベースと略記する)上で移動する基板ステージを備えている。この基板ステージの駆動源として、基板ステージが有する可動子と、ステージベースが有する固定子とを含む平面モータを用いる基板ステージ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
基板ステージの駆動源として用いられる平面モータには、エアベアリングによりステージをベース上で浮上させるエア浮上方式と、平面モータが発生する磁気的浮上力によりステージをベース上で浮上させる上記特許文献1などに記載される磁気浮上方式とがある。平面モータには、可動子が磁石を含み、固定子がコイルを含むムービングマグネット型と、可動子がコイルを含み、固定子が磁石を含むムービングコイル型とがある。しかるに、ステージが配線等を引き摺るのは好ましくないことから、基板ステージ装置では、主としてムービングマグネット型の平面モータが採用されている。
【0005】
ここで、コイル及び/又はマザーボードが壊れるなど、何らかの故障が生じた時、又は製造時あるいはメンテナンス時など、基板ステージの駆動源である平面モータが駆動力を発生していない、あるいは発生させることができない場合を考える。このような場合、基板ステージを移動させるためには、エアベアリングの軸受面とベース上面との間の高圧空気の静圧(いわゆる隙間内圧力)により基板ステージの浮上状態を維持できるエア浮上方式の平面モータと異なり、磁気浮上方式の平面モータを採用した基板ステージ装置では、人間の力で基板ステージを持ち上げる必要がある。しかるに、最新の基板ステージはその重量が例えば150kg程度にもなっているため、人間の力で基板ステージを持ち上げ移動させることは、一人ではできない。作業スペースに余裕があれば、数人が協力することで、基板ステージの移動は可能であるが、作業スペースに余裕がなければ、基板ステージの移動は事実上できなくなってしまう。そこで、これを打開する方法として、基板ステージに上下動機構を介して車輪を設ける案も考えられるが、この場合、固定子(ベース)の上面がフラットでかつある程度硬くないといけない。しかるに、磁気浮上方式のムービングマグネット型の平面モータの固定子上面は、それ程の硬さはなく、車輪を介して与えられる点荷重により、固定子側のマイクロチャネルが破損する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,452,292号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の態様によれば、ベース部材と、前記ベース部材上に配置され、該ベース部材上で移動可能な移動体と、前記ベース部材に設けられた固定子と、前記移動体に設けられた可動子とを有し、前記移動体を前記ベース部材上で駆動する磁気浮上方式の平面モータと、を備え、前記移動体は、枠状部材と、噴出し口とを有し、前記移動体の下面側に前記可動子が設けられ、前記枠状部材は、その内周面で前記可動子を取り囲むように、前記ベース部材に対向する前記移動体の下面に設けられ、前記ベース部材に対向する面が、前記可動子を含む他の部分と同一面となる、又は前記可動子を含む他の部分より前記ベース部材側に突出し、前記噴出し口は、前記可動子の前記ベース部材に最も近接する部分より前記ベース部材から離れた前記移動体の前記下面位置で且つ前記枠状部材の前記内周面の内側の空所に対向する位置に設けられ、外部から供給された加圧気体を前記ベース部材に向けて噴き出す移動体装置が、提供される。
【0008】
これによれば、移動体のベース部材に対向する下面のうち、前記可動子の周囲に設けられた枠状部材の前記ベース部材に対向する面が、ベース部材の上面に接すると、ベース部材の上面と移動体の下面と枠状部材とによって、外部に対して実質的に気密状態とされた閉空間が形成される。そして、外部から供給された加圧気体が噴出し口を介してベース部材に向けて噴き出されることで、その閉空間が外部に対して陽圧となり、移動体の重量(質量×重力加速度に相当する鉛直下向きの力)が、供給された加圧気体の圧力によって少なくとも一部キャンセル(相殺)される。これにより、平面モータによる移動体に対する駆動力(浮上力を含む)の発生が停止した状態でも、ベース部材上で移動体を例えば手動で移動することが可能になる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、所定の物体が前記移動体に保持される第1の態様に係る移動体装置と、前記物体にエネルギビームを照射して所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置が、提供される
【0010】
本発明の第の態様によれば、第2の態様に係る露光装置を用いて基板を露光することと、前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の露光装置が有するウエハステージ装置の斜視図である。
図3図2のウエハステージ装置の側面図である。
図4図2のウエハステージ装置の底面図である。
図5図5(A)及び図5(B)は、X駆動用車輪及びY駆動用車輪の格納装置の構成の一例を示す図であって、図5(A)は各駆動用車輪の格納状態を示し、図5(B)は、各駆動用車輪の着地状態を示す。
図6】一実施形態に係る露光装置の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である
図7】気体供給装置からウエハステージ装置内に送り込まれた加圧気体の流れを説明するための図である。
図8図8(A)は、変形例に係るウエハステージ装置の側面図、図8(B)は、変形例に係るウエハステージ装置の底面図である。
図9】枠状部材にオリフィス孔を形成したウエハステージ装置の側面図である。
図10】枠状部材の外周部に接触計測系を設けたウエハステージ装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、図1図7に基づいて説明する。
【0013】
図1には、一実施形態に係る露光装置10の構成が概略的に示されている。露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置、すなわちいわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルRとウエハWとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0014】
露光装置10は、照明系12、該照明系12からの露光用照明光(以下、照明光と略記する)ILにより照明されるレチクルRを保持して所定の走査方向(ここでは、図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に移動するレチクルステージRST、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW上に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPU、ウエハWが載置されるウエハステージWSTを含むウエハステージ装置20、及びこれらの制御系を備えている。
【0015】
ここで、通常、スキャナ等の露光装置では、上記構成各部のうち、後述する光源及び制御系を除き、内部の温度、圧力等がほぼ一定に維持された環境制御チャンバ内に収容されるが、以下では、チャンバに関する説明は省略する。
【0016】
照明系12は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系12は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、例えばArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0017】
レチクルステージRSTは、パターン面(図1における−Z側の面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRを、例えば真空吸着により保持している。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系13(図1では不図示、図6参照)によって、走査方向(Y軸方向)に所定のストロークで駆動可能、かつX軸、及びθz方向に微小駆動可能となっている。レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報を含む)は、例えばレーザ干渉計システム(あるいはエンコーダシステム)を含むレチクルステージ位置計測系15(図1では不図示、図6参照)により所定の分解能、例えば0.25nm程度の分解能で常時計測され、その計測値は主制御装置90(図6参照)に送られる。主制御装置90は、レチクルステージ位置計測系15の計測値に基づいてレチクルステージ駆動系13(図6参照)を介してレチクルステージRSTのX軸方向、Y軸方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)の位置(及び速度)を制御する。
【0018】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの下方(−Z側)に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒16と、鏡筒16内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。
【0019】
このため、照明系12からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面とがほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRが走査方向に相対移動するとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWが走査方向に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では、照明系12、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0020】
ウエハステージ装置20は、図1に示されるように、定盤30、及びウエハステージWSTを備えている。ウエハステージ装置20は、更に、ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系27(図6参照)、及びウエハステージWSTの位置を計測するウエハステージ位置計測系25(図6参照)を備えている。
【0021】
定盤30は、平面視(+Z方向から見て)でY軸方向を長手方向とする矩形の板状(図2参照)の外形形状を有し、上面がXY平面(水平面)にほぼ平行となるように複数の支持装置28により下方から非接触支持されている。複数の支持装置28は、定盤30の4隅部近傍を支持可能なように、例えば4つ設けられている(−X側に配置されている2つの支持装置28は、図1において紙面内奥側に隠れている)。支持装置28は、例えば米国特許出願公開第2009/0316133号明細書に開示される防振装置とほぼ同様に構成され、定盤30及び床100(図1参照)相互間での振動の伝達を抑制する。定盤30の上部には、ウエハステージ駆動系27を構成する後述する平面モータの固定子50が収容されている。
【0022】
ウエハステージWSTは、図1に示されるように、ウエハステージ本体22と、該ウエハステージ本体22上に固定されたウエハテーブル92とを備えている。
【0023】
ウエハステージ本体22は、図3に示されるように直方体部材から成り、XY平面とほぼ平行なその底面(下面)に、上記固定子50とともに、平面モータを構成する可動子26が固定されている。ウエハステージ本体22の構成等の詳細については、さらに後述する。
【0024】
ウエハテーブル92には、ウエハWを真空吸着等によって保持する例えばピンチャック方式のウエハホルダ(不図示)と、該ウエハホルダの外径より一回り大きい、具体的には、ウエハホルダ上に載置され、吸着保持されるウエハWの直径より0.1〜2mm程度直径が大きな円形開口が形成されたプレート93(図1図3参照)とを備えている。ウエハホルダは、円形の板状の本体部と、該本体部の上面に突設されたウエハWの直径より僅かに小さい外径を有する円環状の凸部(リム部)と、該凸部の内側の本体部の上面に所定間隔で配置された多数のピンを有している。そして、ウエハWは、その多数のピン及び凸部によって支持された状態で、ウエハホルダに真空吸着されている。この場合、ウエハWが真空吸着された状態では、そのウエハW表面とプレート93の表面とはほぼ同一の高さとなっている。すなわち、ウエハテーブル92の上面は、ウエハWの上面を含み、見かけ上フルフラットな面が形成されている。このため、本実施形態に係るウエハテーブル92は、いわゆる液浸露光装置にも好適である。ただし、露光装置10が液浸タイプでない場合、ウエハWの上面と、プレート93の表面とを同一の高さにする必要はない。
【0025】
ウエハステージ駆動系27(図6参照)は、ウエハステージ本体22の下面に固定された前記可動子26と、定盤30上部に収容された前記固定子50とを含み、可動子26と固定子50との間の電磁相互作用によって発生する電磁力(ローレンツ力)を駆動力とする磁気浮上方式のムービングマグネット型の平面モータを含む。以下では、便宜上、この平面モータを、ウエハステージ駆動系27と同じ符号を用いて、平面モータ27と表記する。
【0026】
可動子26は、図4に示されるように、ウエハステージ本体22の下面に固定された各2つのX磁石ユニット26X及びY磁石ユニット26Yから成る。図4に示されるように、2つのX磁石ユニット26Xは、ウエハステージWST下面の中心を原点とし、その原点に対して+X側かつ+Y側(第1象限)及び−X側かつ−Y側(第3象限)にそれぞれ配置され、2つのY磁石ユニット26Yは、原点に対して−X側かつ+Y側(第2象限)及び、+X側かつ−Y側(第4象限)にそれぞれ配置されている。ただし、以下では、X磁石ユニット26XとY磁石ユニット26Yとを、適宜、可動子26と同じ符号を用いて磁石ユニット26と総称する。
【0027】
4つの磁石ユニット26は、Y軸方向に関してほぼ隙間なく配置され、X軸方向に関しては所定の隙間72を隔てて配置されている。
【0028】
X磁石ユニット26Xは、X軸方向に所定ピッチで配列されたY軸方向を長手とする直方体状の複数の磁石から構成される。これらの複数の磁石は、XY平面と平行なその磁極面の極性が交互に逆極性となるように定められている。同様に、Y磁石ユニット26Yは、Y軸方向に所定ピッチで配列されたX軸方向を長手とする直方体状の複数の磁石から構成される。これらの複数の磁石は、XY平面と平行なその磁極面の極性が交互に逆極性となるように定められている。X磁石ユニット26X、及びY磁石ユニット26Yのそれぞれにおいて、隣接する磁石同士は、接していても良いし、所定の隙間を介していても良い。
【0029】
固定子50は、図1及び図2に簡略化して示されるように、X軸、及びY軸方向に互いに隣接するように(マトリクス状に)規則的に配置された複数のコイルユニット(以下、固定子50と同じ符号を用いて、コイルユニット50と称する)から成る。複数のコイルユニット50のそれぞれには、電力及び電気信号等を、それぞれのコイルユニット50に分配する不図示のマザーボード等が接続されている。
【0030】
複数のコイルユニット50それぞれは、複数の平面視ほぼ正方形の直方体形状を有する。各コイルユニット50は、例えば、X軸方向に互いに隣接して配置されたY軸方向を長手方向とする3つのXコイルを含むXコイルユニットと、その上に積層され、Y軸方向に互いに隣接して配置されたX軸方向を長手方向とする3つのYコイルを含むYコイルユニットとを含む2層コイルによって構成することができる。XコイルユニットとYコイルユニットとのそれぞれは、平面視ほぼ正方形状を有する。
【0031】
固定子50の下段の複数のXコイルユニットに三相交流電流が供給されると、可動子26に対向するXコイルユニット(を構成するXコイル)にX軸方向及びZ軸方向の電磁力(ローレンツ力)が発生し、その電磁力の反力がウエハステージWSTをX軸方向及びZ軸方向に駆動する駆動力となる。固定子50の上段の複数のYコイルユニットに三相交流電流が供給されると、可動子26に対向するYコイルユニット(を構成するYコイル)にY軸方向及びZ軸方向の電磁力(ローレンツ力)が発生し、その電磁力の反力がウエハステージWSTをY軸方向及びZ軸方向に駆動する駆動力となる。なお、固定子50の構成は、これに限定されるものではなく、例えば、マトリクス状に配置された複数の正方形状のコイルによって構成しても良く、この場合には、可動子26を構成する磁石ユニットもこれに応じた磁石の配置にする。
【0032】
いずれにしても、平面モータ27としては、例えば米国特許第6,452,292号明細書などに開示されるような、上記電磁力(ローレンツ力)によりウエハステージWSTを定盤30に対して6自由度方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向)に適宜駆動することが可能な、いわゆる6DOF(degrees of freedom)駆動タイプの平面モータが用いられている。これにより、主制御装置90(図1では不図示。図6参照)は、平面モータ27、すなわちウエハステージ駆動系27(図6参照)を用いて、ウエハステージWSTを定盤30上でX軸方向、及び/又はY軸方向に(XY平面に沿って)所定の長ストロークで駆動すること、ウエハステージWSTを定盤30上に所定の隙間(ギャップ、クリアランス)を介して浮上(磁気浮上)させること、並びに、XY平面に沿って移動するウエハステージWSTをピッチング方向(θx方向)、ヨーイング方向(θz法句)、及びローリング方向(θy方向)に適宜微少駆動することができる。
【0033】
ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報を含む)は、例えば2次元(あるいは3次元)のエンコーダシステム、又は光干渉計システム(あるいはエンコーダシステムと光干渉計システムとを組み合わせたシステム)を含むウエハステージ位置計測系25(図1では不図示。図6参照)を用いて、主制御装置90(図6参照)によって求められる。なお、ウエハステージ位置計測系25の構成は、所望の分解能でウエハステージWSTの6DOF方向の位置情報を求めることができれば、その構成は特に限定されない。
【0034】
ここで、平面モータ27を用いて定盤30上でウエハステージWSTに対して水平面に平行な(X軸、及び/又はY軸方向に)駆動力を作用させる場合、定盤30には、水平面内でウエハステージWSTとは反対の方向に上記駆動力の反力が作用する。そして、定盤30が複数の支持装置28により非接触支持されていることから、定盤30は、運動量保存則により水平面内でウエハステージWSTとは反対の方向に移動することにより上記反力を吸収し、これにより上記反力に起因する振動の発生などが抑制される。なお、定盤30の重量は、ウエハステージWSTの重量に比べて大きいので、定盤30の移動量は、ウエハステージWSTに比べて微少量である。また、ウエハステージ装置20は、上記反力により移動した定盤30を所定位置に復帰させるための、いわゆるトリムモータ(不図示)を複数有している。
【0035】
図3に戻り、ウエハステージ本体22下面の外周部には、可動子26(4つの磁石ユニット)を囲む状態で、矩形の枠状部材23が固定されている(図3では、枠状部材23の断面のみが示されている)。枠状部材23は、下面が可動子26(4つの磁石ユニット)の下面(又は、可動子26の下面に保護部材(例えばテフロン(登録商標)製の保護フィルムなど)が設けられている場合は、その保護部材の下面)とほぼ同じ高さ位置又は幾分低くなるよう設定されて、上面がウエハステージ本体22下面に固定されている。すなわち、ウエハステージWSTが定盤30上に着地する場合、枠状部材23(又は保護部材)の下面の全面が、定盤30上面に当接する。このとき、ウエハステージ本体22の下面、枠状部材23の内周面、及び定盤30の上面によって、外部に対してほぼ気密状態とされた閉じられた空間が形成される。以下、この閉じられた空間を、隙間72と同じ符号を用いて気室72と称する。
【0036】
ウエハステージ本体22の下面には、中心点を挟んでY軸方向の一側と他側に噴出し口73が各1つ形成されている(図4参照)。また、ウエハステージ本体22の内部には、ウエハステージ本体22の側面に一端が開口し、他端が2つに枝分かれして、それぞれの枝の先端に噴出し口73がそれぞれ設けられた管路74が設けられている。管路74の一端に、例えばコンプレッサから成る気体供給装置82(図3では不図示、図6参照)に一端が接続された不図示の配管部材の他端が、着脱自在に接続できるように構成されている。すなわち、気体供給装置82は、不図示の配管部材を介してウエハステージ本体22に着脱自在に接続可能である。
【0037】
気体供給装置82が不図示の配管部材を介してウエハステージ本体22に接続された状態では、気体供給装置82から配管部材を介して供給された加圧気体(例えば高圧空気)が管路74を介して2つの噴出し口73のそれぞれから噴き出される。主制御装置90(図6参照)は、前述の気室72が形成された状態では、気室72内の加圧気体の圧力を、気室72の外部空間に対して陽圧にすることで、ウエハステージ本体22の重量(鉛直方向下向きの力)の少なくとも一部を相殺(キャンセル)する。気体供給装置82から気室72内に送られる気体の流量等は、流量制御系84(図3では不図示、図6参照)を介して主制御装置90(図6参照)によって制御される。
【0038】
ウエハステージ本体22の内部には、図5(A)に示されるように、中央部のY軸方向の一側と他側に、一対のY駆動用車輪61のそれぞれが格納装置66a、66bによってそれぞれ格納されている。また、ウエハステージ本体22の内部には、ほぼ中央の位置にX駆動用車輪62がその格納装置66cによって格納されている。格納装置66a、66b、66cのそれぞれは、図5(A)に示される例えば航空機の車輪格納機構と同様の四節リンク機構から成る。例えば、−Y側のY駆動用車輪61の格納装置66aは、一端が軸54を介して回動自在にウエハステージ本体22に取付けられた駆動リンクと、一端が軸55を介して回動自在にウエハステージ本体22に取付けられた従動リンクと、駆動リンクと従動リンクとを、それぞれ関節を介して連結する中間リンクとを有する。中間リンクと従動リンクとの関節を構成する部材に、Y駆動用車輪61の回転軸が回転自在に支持されている。格納装置66aのリンク機構は、図5(A)に示される状態(格納状態)と図5(B)に示される状態(使用状態)との間で変化する。例えば、図5(B)に示される使用状態で、一番上の駆動リンクが、不図示のストッパに押し当てられている。すなわち、このストッパには、Y駆動用車輪61の着地反力(接地反力)が作用している。格納装置66aのリンク機構では、駆動リンクの一部をストッパに押し当てることで動作を拘束し、外力を受けるとリンク全体が拘束される機能を持っている。また、駆動リンクを図中の時計回りに駆動させると拘束が解けリンクが格納される。図5(A)及び図5(B)から次のことがわかる。Y駆動用車輪61が着地すると反力によって駆動リンクがストッパに押し当てられ、リンク機構が拘束される。これにより、荷重を受けることが可能になる。着地による負荷を解除した後、駆動リンクを時計回りさせると、Y駆動用車輪61が付いた従動リンクが持ち上げられ、折りたたまれることで格納できる。この機構では、思案点を通り越してから折りたたまれるため、思案点を通過するときに瞬間的にY駆動用車輪61が相対的に下側に伸びるスペースを必要とする。格納装置66aは、上記のリンク機構の他、駆動モータを含む駆動リンクの駆動機構を備えている。
【0039】
もう一方のY駆動用車輪61の格納装置66b及びX駆動用車輪の格納装置66cも、格納装置66aと同様に構成されている。格納装置66a、66b、及び66c(それぞれの駆動リンクの駆動機構)は、制御系によって個別に制御される(図6参照)。本実施形態では、格納装置66a、66b、66cに対する指令は、外部制御系からコントローラ94(図6参照)を介してなされる。外部制御系としては、一例として、コントローラ94に電気的に接続され、ウエハステージ本体22に設けられた不図示のコネクタに、着脱自在に接続可能なティーチング・ペンダント64が用いられる(図6参照)。
【0040】
図4に戻り、ウエハステージ本体22の下面には、2つの噴出し口73を挟んでY軸方向の両外側に開口56、57がそれぞれ形成されている。これらの開口56、57は、開閉扉63、64によって開閉されるようになっている。開閉扉63、64のそれぞれは、Y駆動用車輪61が格納状態から使用状態に移行する際にこれに連動して徐々に開けられ、Y駆動用車輪61が使用状態から格納状態に移行する際に閉じられる。すなわち、開口56、57は、2つのY駆動用車輪61の出入口である。
【0041】
また、ウエハステージ本体22の下面には、2つの噴出し口73の間に、開口58が形成されている。開口58は、前述と同様に、X駆動用車輪62の格納状態と使用状態との遷移に応じて開閉扉65によって開閉されるようになっている。
【0042】
なお、3つの開閉扉63,64又は65の少なくとも1つが開けられると、開口56、57又は58を介してウエハステージ本体22の下面(低壁)の上下の空間が連通するので、ウエハステージ本体22の格納機構が収容された空間が、気室72とともに1つの気密室を構成するように、ウエハステージ本体22の内部に図5(A)及び図5(B)に点線で示されるような隔壁69が設けられている。
【0043】
図6には、露光装置10の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置90の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置90は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置10の構成各部を統括制御する。また、図6には、ウエハステージ本体22内部のコントローラ94の入出力関係も併せて示されている。
【0044】
上記のように構成された露光装置10では、まず、レチクルR及びウエハWが、それぞれレチクルステージRST及びウエハステージWST上にロードされ、ウエハステージWST上の不図示の基準マーク及び不図示のレチクルアライメント検出系等を用いたレチクルアライメント及び不図示のウエハアライメント検出系のベースライン計測、並びにウエハアライメント(例えばEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等)などの所定の準備作業が行われる。その後、主制御装置90の管理の下、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の複数のショット領域の配列座標の算出結果)に基いて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。ステップ・アンド・スキャン方式の露光では、ウエハアライメントの結果に基いて、ウエハW上の第1番目のショット領域に対する露光のための加速開始位置にウエハステージWSTへ移動されるとともに、レチクルRの位置が加速開始位置となるように、レチクルステージRSTが駆動される。そして、レチクルステージRSTと、ウエハステージWSTとがY軸方向に沿って同期駆動されることで、ウエハW上の第1番目のショット領域に対する露光(走査露光)が行われる。以後、ウエハW上の第2番目以降の各ショット領域に対する露光のための加速開始位置へのウエハステージWSTの移動と、各ショット領域に対する露光(走査露光)とが交互に繰り返される。
【0045】
ところで、例えばコイルユニット50で用いられる電力及び電気信号等を、それぞれのコイルユニット50に分配する不図示のマザーボードが故障し、ウエハステージ駆動系27(図6参照)によって所望のウエハステージWSTの駆動ができなくなった時(平面モータ27のサーボが掛からなくなった時)には、他の部分の損傷を回避するため、ウエハステージWSTを強制的に停止し、ウエハステージWSTが定盤30上に着地される。そのような緊急停止時、あるいはメンテナンス時など、ウエハステージWSTが定盤30上に着地している場合、すなわち平面モータ27によるウエハステージWSTの駆動(浮上を含む)ができない場合、修理等のため、ウエハステージWSTは、定盤30上で(あるいは、定盤30と同一高さの他の支持部材上で)所定の位置(修理等が可能となる位置)まで移動させる必要がある。
【0046】
以下、本実施形態に係る露光装置10における、上述のウエハステージ駆動系27によるウエハステージWSTの駆動ができない場合の、ウエハステージWSTの移動手順について説明する。
【0047】
なお、ウエハステージWSTの移動は、複数の作業者の共同作業によるが、以下では、個々の作業者を区別することなく、単に作業者と呼ぶ。
【0048】
先ず、作業者は、ウエハステージWSTの移動の前処理として、図3に示されるウエハステージ本体22の管路74に、気体供給装置82(図3では不図示、図6参照)に一端が接続された不図示の配管部材の他端を接続する。
【0049】
なお、これに先立って、不図示の環境制御チャンバの開閉可能なパネルの開放、必要に応じて定盤30と同一高さの敷板の敷設などの所定の準備作業が行われている。
【0050】
次に、作業者は、露光装置10のメインパネル(不図示)からエア供給開始の指令を与える。この指令に応答して、主制御装置90は、気体供給装置82からの高圧空気の供給を開始する。これにより、図7に示されるように、供給された高圧空気が管路74を介して2つの噴出し口73から定盤30に向かって噴き出される。
【0051】
このとき、ウエハステージWSTと定盤30との間には、前述した外部に対してほぼ気密状態の気室72が形成されている。
【0052】
次に、作業者は、図5(A)に示される格納装置66a及び66b、又は66cを操作するためのリモコン装置(ティーチング・ペンダント)64(図6参照)を、ウエハステージ本体22に設けられ、格納装置66a及び66b、又は66cのコントローラ94に電気的に接続されたコネクタ部(不図示)に接続する。
【0053】
次いで、作業者は、ティーチング・ペンダント64を介して、例えば、格納装置66a及び66bに対して、Y駆動用車輪61の中間位置への駆動を指示する。ここで、中間位置とは、Y駆動用車輪61の下降に連動して開閉扉63,64が半分程度開放されるが、Y駆動用車輪61は、ウエハステージ本体22の外部に露出しない位置を指す。
【0054】
上記の指示に応じて、コントローラ94によって格納装置66a及び66bが制御され、Y駆動用車輪61が格納位置(図5(A)に示される位置)から中間位置へ駆動され、開閉扉63,64が半分程度開放される。この開閉扉63,64の開放により、気室72が、ウエハステージ本体22の内部空間と連通し、全体として大容量の気密室が形成される。
【0055】
このとき、気体供給装置82から送り込まれる高圧空気の流量などは、その気密室の内圧が所定の値以上になるよう上述の流量制御系84(図6参照)によって制御されている。このため、高圧空気の供給開始から一定時間が経過すると、気室72を含む気密室の内圧が外部空間に対して陽圧となり、ウエハステージWSTの重量(の少なくとも一部)がキャンセルされる。
【0056】
そこで、高圧空気の供給開始から一定時間が経過した時点で、作業者は、ティーチング・ペンダント64を介して、例えば、Y駆動用車輪61の着地位置(図5(B)に示される位置)への駆動を指示する。この指示に応じて、コントローラ94によって格納装置66a及び66bが図5(B)に示される着地状態に設定され、Y駆動用車輪61が定盤30上面へ着地される。このとき、Y駆動用車輪61の着地反力に応じた力が、Y駆動用車輪61を介して定盤30上面に作用するが、ウエハステージWSTの重量(の少なくとも一部)が、気密室の内圧によってキャンセルされているので、Y駆動用車輪61を介して定盤30上面に作用する力は、小さく、固定子50側のマイクロチャネルが破損する可能性は殆どない。
【0057】
次に、作業者は、ウエハステージWSTを定盤30上でY軸方向に手動で牽引及び/又は押す。これにより、2つのY駆動用車輪61がX軸方向の回転軸周りに回転し、ウエハステージWSTが、2つのY駆動用車輪61によって、Y軸方向に案内される。
【0058】
ここで、目的の位置への移動のためには、Y軸方向の移動に加えて、X軸方向の移動が必要な場合、作業者は、次のようにして、ウエハステージWSTを定盤30上でX軸方向に手動で駆動する。
【0059】
すなわち、作業者は、ティーチング・ペンダント64(図6参照)を介して、例えば、Y駆動用車輪61の格納(又は中間位置への移動)とX駆動用車輪62の着地位置への駆動を指示する。この指示に応じて、コントローラ94によって格納装置66a及び66bが制御され、Y駆動用車輪61が図5(A)に示されるようにウエハステージ本体22内に格納される(又はY駆動用車輪61の中間位置へ駆動される)とともに、図5(B)に示されるように格納装置66cによりX駆動用車輪62が定盤30上面へ着地される。このとき、ウエハステージWSTの重量(の少なくとも一部)が、気密室の内圧によってキャンセルされているので、X駆動用車輪62を介して定盤30上面に作用する力は、小さく、固定子50側のマイクロチャネルが破損する可能性は殆どない。
【0060】
次に、作業者は、ウエハステージWSTを定盤30上でX軸方向に手動で牽引及び/又は押す。これにより、X駆動用車輪62がY軸方向の回転軸周りに回転し、ウエハステージWSTが、X駆動用車輪62によって、X軸方向に案内される。このとき、ウエハステージWSTに水平方向の慣性力が作用するので、安全性の観点から駆動開始直後と停止直前は、ウエハステージWSTの駆動速度を控えめにすることが望ましい。
【0061】
なお、目的の位置への移動のためには、X軸方向の移動のみが必要な場合には、作業者は、ティーチング・ペンダント64(図6参照)を介して、例えば、X駆動用車輪62の着地位置への駆動を指示した後、ウエハステージWSTを定盤30上でX軸方向に手動で駆動すれば良い。
【0062】
いずれにしても、ウエハステージWSTが目的の位置(所定の位置)まで移動すると、作業者は、露光装置10のメインパネル(不図示)からエア供給停止の指令を与える。この指令に応答して主制御装置90は、気体供給装置82からの高圧空気の供給を停止する。
【0063】
上記のエア供給停止の指令を与えるのと前後して、作業者は、ティーチング・ペンダント64を介して、Y駆動用車輪61及びX駆動用車輪62の格納を指示する。この指示に応じて、コントローラ94によって、格納装置66a、66b及び66cが制御され、2つのX駆動用車輪61及びY駆動用車輪62が、ウエハステージ本体22内に格納され、開口56,57,58が開閉扉63,64,65でそれぞれ閉じられる。
【0064】
これにより、時間の経過とともに気室72内が外部空間と同じ圧力になり、ウエハステージWSTの全重量が、枠状部材23(及び可動子26)を介して定盤30に支持されるようになる。
【0065】
ウエハステージWSTを、元の位置に戻す場合には、作業者は、上記と逆の手順により、ティーチング・ペンダント64、露光装置10のメインパネルを介しての指令、ウエハステージWSTの手動での移動を行えば良い。また、ウエハステージWSTを、元の位置に戻した後、作業者は、ティーチング・ペンダント64を、ウエハステージ本体22に設けられたコネクタ部(不図示)から取り外すとともに、ウエハステージ本体22の管路74に対する不図示の配管部材の接続を解除する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によると、ウエハステージWSTが定盤30の上面に着地しているとき、作業者が、エア供給の指令と、Y駆動用車輪61(又はX駆動用車輪62)の着地指令を与えると、主制御装置90により、ウエハステージ本体22の下方及び内部に、外部に対して陽圧の気密室が形成されるとともに、コントローラ94によりY駆動用車輪61(又はX駆動用車輪62)が定盤30の上面に着地される。このため、作業者は、ウエハステージWSTの重量の少なくとも一部がキャンセルされた状態で、手動でウエハステージWSTを引く又は押すことにより、Y駆動用車輪61(又はX駆動用車輪62)が回転して、ウエハステージWSTがY軸方向(又はX軸方向)に案内される。従って、故障又はメンテナンス時など、平面モータ27によるウエハステージWSTに対する駆動力(浮上力)の発生が停止したときであっても、作業者は、手動にて、ウエハステージWSTを定盤30上で移動させることが可能になる。
【0067】
なお、上記実施形態に係る露光装置10の構成等は、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態では、気体供給装置82とウエハステージ本体22とを接続する配管部材を、使用時にウエハステージ本体22に接続し、不使用時に取り外すものとしたが、これは、その配管部材をウエハステージWSTが引き摺ることにより、ウエハステージWSTの位置制御性が低下することを考慮してこのようにしているものである。しかしながら、これに限らず、その配管部材をウエハステージWSTに常時接続する構成を採用しても良い。
【0068】
また、上記実施形態では、エア供給開始及び停止の指令を、露光装置10のメインパネルから与え、格納装置66a、66b、及び66cに対する指令をティーチング・ペンダント64から与えるものとしたが、これに限らず、いずれの指令も、露光装置10のメインパネル又はティーチング・ペンダント64から与えるようにしても良い。また、上記実施形態では、ウエハステージ本体22に対するティーチング・ペンダント64の接続を容易に行えるとの前提の下、ティーチング・ペンダント64を用いる場合について説明した。しかしながら、ウエハステージ本体22に対するティーチング・ペンダントの配線接続が困難なことが予想される場合などには、格納装置66a、66b、及び66cのコントローラ94との間で無線通信が可能な無線通信装置を備えたティーチング・ペンダント64を用いても良い。
【0069】
また、上記実施形態において、2つのY駆動用車輪61及びX駆動用車輪62を駆動するモータを含む駆動機構を設け、この駆動機構をコントローラ94を介してティーチング・ペンダント64により制御することとしても良い。すなわち、格納装置66a、66b、及び66cに加えて、2つのY駆動用車輪61及びX駆動用車輪62を電動式にしても良い。かかる場合には、ウエハステージWSTに水平方向の慣性力が作用するので、安全性の観点から駆動開始直後と停止直前は、2つのY駆動用車輪61又はX駆動用車輪62の回転速度を低くし、それ以外のときには、回転速度を高くするようにすることが望ましい。かかる速度制御を実現するため、ウエハステージWSTの移動経路にウエハステージWSTの位置を計測可能な各種のセンサ、例えば反射型の光センサ、あるいはホール素子センサなどを設けることが望ましい。
【0070】
なお、上記実施形態では、2つのY駆動用車輪61と1つのX駆動用車輪62とが設けられるものとしたが、Y駆動用車輪61とX駆動用車輪62の数は特に問わないが、Y駆動用車輪61とX駆動用車輪62が少なくとも各1つ設けられていると、ウエハステージWSTをXY2次元方向に駆動できて便利である。また、上記実施形態では、全ての駆動用車輪が、非使用時には、ウエハステージ本体22の内部に格納されるものとしたが、これに限らず、少なくとも1つの駆動用車輪が、非使用時に、ウエハステージ本体22の外部の所定位置を格納位置として、ウエハステージ本体22の外部に露出したまま、その格納位置に保持される構成を採用しても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、一対のY駆動用車輪61とX駆動用車輪62とは、同時に定盤30上に着地させない場合について説明したが、各軸周りの一方の駆動輪が回転することにより、ウエハステージWSTを一軸方向に駆動する際、他方の駆動輪の定盤30上面との間の摩擦力がウエハステージWSTの移動に悪影響を及ぼさないのであれば、一対のY駆動用車輪61とX駆動用車輪62とは、同時に定盤30上に着地させても良い。
【0072】
《変形例》
また、上記実施形態では、一対のY駆動用車輪61とX駆動用車輪62とが設けられた場合について説明したが、駆動輪は、必ずしも設けなくても良い。図8(A)及び図8(B)には、駆動輪が設けられていない変形例に係るウエハステージWST’の側面図及び底面図がそれぞれ示されている。この場合、図8(B)からわかるように、ウエハステージ本体22の底面には、2つの噴出し口73のみが設けられ、開口及び開閉扉等は存在しない。しかるに、図8(A)に示されるように、ウエハステージWST’が定盤30の上面に着地している場合、気室72が形成されている。このため、気体供給装置82から加圧気体(高圧空気)を管路74内に送り込み、噴出し口73から気室72内に噴き出させることで、気室72内を、外部に対して陽圧にすることができる。これにより、ウエハステージWST’の重量を少なくとも一部キャンセルすることができ、この状態で、ウエハステージWST’を作業者が、牽引及び/又は押すことで、手動によりウエハステージWST’を定盤30上で移動させることが可能である。
【0073】
なお、上記実施形態及び変形例では、ウエハステージWST(WST’)が定盤30上に着地した状態では、枠状部材23によって気室72は完全に閉じられている(密閉されている)が、これに限らず、例えば図9に示されるように、ウエハステージWST(WST’)の一部に気室72と外部空間とを連通する複数の貫通孔(以下オリフィス孔76と称する)が形成されていても良い。オリフィス孔76は、図9中に示される枠状部材23のうち、+X側に位置する枠状部材23の断面図に示されるように、枠状部材23の高さ方向中央に形成されていても良いし、−X側に位置する枠状部材23の断面図に示されるように、枠状部材23の上端とウエハステージ本体22との境目の部分に形成されていても良い。気体供給装置82(図6参照)によって、気室72内に加圧気体(高圧空気)が流入され、気室72内が外部空間に比べて陽圧となると、気室72内の加圧気体は、その一部が複数のオリフィス孔76を介して気室72内から外部空間に排出される。これにより、ウエハステージ本体22の外周部及び、枠状部材23が振動する、いわゆるニューマチックハンマ現象を防止することができる。
【0074】
また、上記実施形態及び変形例では、定盤30上にウエハステージWST(WST’)が着地した状態で気体供給装置82から加圧気体(高圧空気)を供給するものとしたが、これに限らず、更にウエハステージ駆動系27によってウエハステージWST(WST’)が定盤30上で駆動されている際にも加圧気体(高圧空気)を管路74内に供給しても良い。すなわち、ウエハステージWST(WST’)が平面モータ27によって6自由度方向で駆動されている間にも、気体供給装置82から加圧気体(高圧空気)を供給することとしても良い。特にウエハステージの一部に少なくとも1つのオリフィス孔が設けられる場合には、気室72内の圧力が所定の値に自動的に調整されるので、ウエハステージWST(WST’)が平面モータ27によって6自由度方向で駆動されている間にも気体供給装置82から加圧気体(高圧空気)を供給し続けるようにしても良い。ただし、この場合、緊急停止時などに、ウエハステージWSTが慣性力により不要に移動しないことが望ましく、必要であればその対策を併せて行うことが望ましい。
【0075】
また、図10に示されるように、枠状部材23外周部に、例えばひずみゲージ又は圧力センサ等からなる接触計測系40を設け、主制御装置90は、その接触計測系40の計測結果の変化から、枠状部材23が定盤30上面に着地した瞬間を検出し、但ちに気体供給装置82からの加圧気体の供給を開始するようにしても良い。また、上記実施形態及び変形例では、気体噴出し口73は2つ設けられる場合について説明したが、気体噴出し口73の数は、1つ、又は3つ以上であっても良い。
【0076】
なお、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、照明光ILの波長は、100nm以上の光に限られず、波長100nm未満の光を用いても良く、例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置にも上記実施形態を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0077】
さらに、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0078】
また、上記各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0079】
また、上記各実施形態では、定盤30上にひとつのウエハステージWST(WST’)が配置されたウエハステージ装置について説明したが、定盤30上に配置される移動体の数、種類は、適宜変更が可能であり、例えば米国特許出願公開第2010/0066992号明細書に開示されるようなウエハステージを2つ備えたウエハステージ装置、あるいは米国特許出願公開第2009/0268178号明細書に開示されるようなウエハステージと、計測ステージとを備えるウエハステージ装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0080】
さらに、例えば米国特許第8,004,650号明細書に開示されるような、投影光学系と露光対象物体(例えばウエハ)との間に液体(例えば純水)を満たした状態で露光動作を行う、いわゆる液浸露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
【0081】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
【0082】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0083】
また、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0084】
さらに、露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0085】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態に係る露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【0086】
また、上記実施形態の露光装置(パターン形成装置)は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0087】
なお、これまでの説明で引用した露光装置などに関する全て国際公開、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、移動体をベース部材上で駆動するのに適している。また、本発明の露光装置は、物体に所定のパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
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