(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の画線は、第1の方向に沿って隣接して形成された各々の前記ユニット内に形成された複数の前記第1の画線によって、直線又は曲線状のパターンが形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止用印刷物。
各々の前記ユニットに形成された前記第1の画線及び前記第2の画線の合計面積が15%から30%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の偽造防止用印刷物。
各々の前記ユニットに形成された前記第3の画線の面積率を変化させることで、連続階調を有する可視画像が形成されたことを特徴とする請求項5又は6記載の偽造防止用印刷物。
【背景技術】
【0002】
銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において、偽造、改竄防止策は重要な要素である。これらの印刷物の偽造、改竄防止策は、主に、幾何学模様を多様化した図柄をデザインに用いる方法と、印刷物に対して何等かの手段と作用を加えることで、目視では認識することができない潜像が現出する方法がある。前者の代表的な例は、証券印刷物等のデザインに広く用いられる地紋、彩紋模様及びレリーフ模様等があり、後者の代表的な例は、潜像凹版やカラー複写機で色が正常に再現されないような機能性インキ又はコピー防止画線等がある。
【0003】
前述の地紋、彩紋模様及びレリーフ模様等は、基本的には一定の画線幅による曲画線の集合によって模様を構成しているものであり、印刷物のデザイン等の意匠性を加味した偽造、改竄防止策とすることができる。模様を複雑にすることによって、偽造物において同一の模様を作製することを困難とし、カラー複写機では再現されにくい色彩を用いることや、複雑な曲画線を用いることでカラー複写機、モノクロ複写機又はスキャナの走査入出力に対してモアレを発生させることで偽造防止策としての役割を高めている。
【0004】
また、前述の模様類は、証券印刷物等のデザインにおいて世界的に広く用いられるとともに、銀行券、株券及び債券等の金銭的価値を有する印刷物の模様として古くから用いられ、現在でも高級感を印象付けるデザインとして重要な模様となっている。したがって、銀行券、株券及び債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において、地紋、彩紋模様及びレリーフ模様等は、デザイン上欠かすことのできない模様である。しかしながら、最近では、高機能化した写真製版装置、カラー複写機又はモノクロ複写機の出現によって、充分な偽造、改竄防止効果をもたらしていないという欠点がある。
【0005】
また、前述の印刷物に対し、何等かの手段と作用を加えることで、目視では認識することができなかった潜像を複写物に現出させる方法の代表的な技術として、一般的にコピー防止画線と称する一連の技術がある。また、用紙の表面に網点で潜像を印刷し、万線で潜像と同濃度の背景を同時印刷し、背景を含む潜像の上面に装飾模様をコピーで再現されない程度の薄色の透明性インキで重ね刷りすることにより、印刷物表面を体裁良く仕上げ、コピーにかけると模様は見えなくなり、背景は再現されるとともに、潜像は再現されず、背景と潜像の濃度差が歴然となって複写物であることが一見して分かるといった方法は、これまでも数多くの出願がある。
【0006】
それらの発明の多くは、網点又は万線等の点及び線が一定周期で連続配置する画線群(以下「スクリーンパターン」という。)の粗密によって潜像が施され、印刷物に示すように、印刷面全体の模様が均一濃度を持ったスクリーンパターンとなっている。この潜像が施された印刷物において、カラー複写機又はモノクロ複写機によって複写した際、再生されない密構成のスクリーンパターンと、再生される粗構成のスクリーンパターンとは、複写物の模様に濃度差が生じて、再生される粗構成のスクリーンパターンに対して、再生されない密構成のスクリーンパターンの潜像部分が現出するようにして、複写物であることが一目瞭然となるようにしたものである。
【0007】
また、本願出願人も、用紙表面に網点又は万線等のパターンからなる潜像と、該潜像周囲に前述の潜像とは粗密が異なるパターンからなる背景を1色で同時印刷した印刷物において、該潜像を施した潜像模様が肉眼では識別されないことを特徴とする複写防止に適する印刷物として、潜像をカムフラージュするための別の模様や薄色の透明インキ、さらには、淡色の重ね刷りを施さず、白抜きの円形模様や、全面的なスクリーンパターンに対する部分的なスクリーンパターンの網点パーセントを増加した同心円模様等で、カムフラージする方法を既に出願している(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、万線と網点のいずれか一方を構成子として潜像を形成し、かつ、他方を構成子として背景を形成し、万線が50線10%、網点が150線10%であるフィルム原版において、潜像の画線と背景の画線の全体をカムフラージュするために、175線10%の網点からなる地紋を組み込み、一度刷りで用紙に印刷を施すという画線構成が既に出願されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
また、本願出願人は、曲線状の集合模様を、潜像を施さない部分の画線を連続線、潜像を施した部分の画線を基本線方向に一定の間隔で配列された形状の画線からなる定周期断絶線で構成し、潜像を施した部分の定周期断絶線のうち、基本線方向に連続した一つの画線部と非画線部からなる一周期に相当する部分の画線面積の総和が、潜像を施さない部分の連続線のうち、前述の潜像部における画線部と非画線部からなる一周期と同一の長さに相当する部分の画線面積と等しくし、更に、潜像を施した部分の定周期断絶線となっている画線において、定周期断絶線の画線同士が交差する部分で、画線同士のどちらか一方の画線を、もう一方の画線の画線幅の範囲内で削除することを特徴とした、複写防止模様の作成方法及びその印刷物を出願している(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
また、本願出願人は、直線又は曲線状の1本又は複数の直線又は曲線からなる画線模様を、潜像を施さない部分の画線を実線で、潜像を施した部分の画線を基本線方向を基準として等距離により複数に分岐し、複数に分岐した画線がそれぞれ一定の間隔で配列された形状の画線からなる定周期断絶線で構成した印刷物において、潜像を施した部分の画線は基本線方向に複数に分岐した画線部と非画線部からなる一周期に相当する部分の画線面積の総和が、潜像を施さない部分の実線のうち、前述の潜像部における画線部と非画線部からなる一周期と同一の長さに相当する部分の画線面積と等しくすることにより、複写すると非視認性となり、複写前に視認される画像を構成する画線は、前述の潜像部における画線部と非画線部からなる一周期と同一の長さに相当する部分の画線面積より大きくするといった印刷物を出願している(例えば、特許文献4参照。)。この印刷物は、カラー複写機又はモノクロ複写機での複写後には、不可視画像であった潜像が現れ、そして、可視画像であった模様が入れ替わるように観察することができることで真偽判別性を高めている。
【0011】
さらに、本願出願人は、複写機で再生される第1の大きさの画線と、複写機で再生されない第2の大きさの画線によって同一濃度の背景部を形成し、更には、複写機で再生されない第3の大きさの画線によって可視画像部を形成することで、印刷物を通常光下で観察した場合には、背景部上に形成された可視画像部の濃度によって可視画像が観察されるが、印刷物をカラー複写機等の複写機で複写した場合、可視画像部を形成する第3の大きさの画線と、背景部を形成する第2の大きさの画線は再生されないことで、可視画像とは全く異なる潜像画像が出現するという、画像のチェンジ効果を備えた複写、改竄防止印刷物を出願している(例えば、特許文献5参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1及び2の印刷物は、近年の高機能化された製版及び印刷出力装置を用いた場合、その画線構成を容易に再現することができてしまうことで複写防止機能が発揮されないことがあった。
【0014】
また、特許文献3及び特許文献4の印刷物は、複写時の効果は向上したものの、可視画像であった模様が完全に入れ替わるものでなく、可視画像と潜像が重なっている部分については可視画像が優先され、潜像が部分的に欠けた状態となり、複写後に視認される画像の視認性を向上させるという課題があった。
【0015】
さらに、特許文献5の印刷物は、印刷物と複写物において、可視画像と複写物に出現する潜像画像が完全に入れ替わることから、複写後に視認される画像の視認性は向上したが、可視画像と潜像画像を形成する規則的な画線が、残る又は消失するというオン・オフの関係により画像のチェンジ効果を創出しており、潜像画像自体が2値画像であることから、可視画像が消失し、潜像画像が出現した複写物の画像を加工することで偽造品を作成する方法に対しては、高い偽造抵抗力を有するものではないという課題が残されていた。
【0016】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、印刷物上に形成された可視画像と複写機で複写した際に出現する潜像画像がチェンジする効果を有し、かつ、複写物に出現する潜像画像を写真画像等の連続階調画像とすることができる偽造防止用印刷物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の偽造防止用印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、印刷領域は、潜像領域とカムフラージュ領域を少なくとも有するユニットが規則的に一定ピッチで複数形成され、潜像領域は、複写機で再現される第1の画線が形成されて成り、カムフラージュ領域は、複写機で再現されない第2の画線が形成されて成り、各々のユニットに形成される第1の画線と第2の画線の合計面積が全てのユニットにおいて同一面積で形成され、潜像領域に形成される第1の画線の面積の大小によって連続階調を有する潜像画像が形成され、印刷物を通常光下で観察した場合、同一濃度の状態で観察されるが、印刷物を複写機で複写した場合に、各々のユニットに形成された第2の画線が消失することで、第1の画線で形成された連続階調を有する潜像画像が顕在化することを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0018】
また、本発明の偽造防止用印刷物における第1の画線は、第1の方向に沿って隣接して形成された各々のユニット内に形成された複数の第1の画線によって、直線又は曲線状のパターンが形成されたことを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0019】
また、本発明の偽造防止用印刷物における第2の画線は、画線又は画素によって形成されたことを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0020】
また、本発明の偽造防止用印刷物は、各々のユニットに形成された第1の画線及び第2の画線の合計面積が15%から30%の範囲内であることを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0021】
また、本発明の偽造防止用印刷物における各々のユニットのカムフラージュ領域は、さらに複写機で再現されない第3の画線を有し、第3の画線によって可視画像が形成され、印刷物を通常光下で観察した場合、第3の画線で形成された可視画像が観察され、印刷物を複写した場合に、各々のユニットに形成された第2の画線及び第3の画線が消失することで、可視画像から潜像画像にチェンジすることを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0022】
また、本発明の偽造防止用印刷物における第3の画線は、画線又は画素によって形成されたことを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0023】
また、本発明の偽造防止用印刷物は、各々のユニットに形成された第3の画線の面積率を任意の面積率で形成することで、連続階調を有する可視画像が形成されたことを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0024】
また、本発明の偽造防止用印刷物は、ユニット同士の一定ピッチが1mm以下であることを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0025】
さらに、本発明の偽造防止用印刷物は、各々のユニットに形成される第1の画線、第2の画線及び第3の画線の合計面積が15%から45%の範囲内であることを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の偽造防止用印刷物は、複写物に視認される画像を複雑な連続階調を有する画像とすることができることから、複写物を加工する偽造に対して高い偽造抵抗力を有する。
【0027】
また、本発明の偽造防止用印刷物は、顔画像等を含む身分証明書として用いた場合、顔写真と同一絵柄の潜像模様を形成することができることから、複写物上に形成された顔写真と潜像画像を比較することで、容易に真偽判別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明するが、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のさまざまな実施の形態が含まれる。
【0030】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態における偽造防止用印刷物(以下「印刷物」という。)について
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態における印刷物(1)を示すものであり、基材上に複写防止機能を有する印刷模様(2)が形成されたものである。
図1の拡大図に示すように、印刷模様(2)は、複写時に再生される大きさの第1の画線(3)と、複写時に再生されない大きさの第2の画線(4)が形成される。第1の画線(3)は、規則的に一定ピッチで形成された万線パターンであり、潜像画像を形成する濃淡画像に合わせて第1の画線(3)の画線幅を形成することで、潜像画像を形成している。
【0031】
第2の画線(4)は、規則的に一定ピッチで形成された第1の画線(3)に近接する位置に配置された複数の画線によって形成され、特定の領域内における第1の画線(3)と第2の画線(4)を合計した画線面積率が一定になるように、潜像画像の階調を表現する第1の画線(3)の画線幅の増減に合わせて画線面積率を変化させて形成される。
【0032】
第2の画線(4)は、カラー複写機等の複写機で再生されない画線として形成する必要があるため、各々の画線との間隔を120μm以上離して形成する必要があり、可視光下での視認状態を考慮すると、一定の間隔を持って規則的に形成されることが好ましい。第2の画線(4)を配置する間隔が120μmに満たない場合、複写機で二つの第2の画線(4)が離れた状態として検出されず、二つの第2の画線(4)の合計面積率として再現され、第2の画線(4)の目的である再生されない画線とすることができない。
【0033】
なお、第1の実施の形態では、第1の画線(3)を規則的に一定ピッチで形成された万線パターンとし、第2の画線(4)を一定の間隔により配置された定周期断絶線で形成しているが、第1の画線(3)を点線、波線及び2重線等の異なる形状により形成しても、複写機で再生される構成であれば特に限定されず、更には、第2の画線(4)を、複写機で再生されない微小網点で形成する等、複写機で再生されない画線形状で形成すれば、同様の効果を得ることができる。
【0034】
図2は、第1の実施の形態における印刷物(1)の複写物(6)を示すものである。
図2に示すように、複写物(6)における複写模様(7)は、第1の画線(3)の画線幅を増減させることで形成された潜像画像が可視化される。これは、
図2の拡大図に示すように、カラー複写機で再生されない大きさで形成された第2の画線(4)が複写物(6)では消失するため、特定の領域内において同一濃度で観察された状態が保たれなくなり、潜像画像の濃淡を表現している第1の画線(3)の濃度差がそのまま再現され、複写模様(7)が可視化されるものである。なお、
図2の拡大図において、消失する第2の画線(4)を点線で示しているが、実際の複写物(6)における第2の画線(4)は消失し、第1の画線(3)のみが再現される。
【0035】
次に、第1の実施の形態における印刷物(1)の画線構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、第1の実施の形態における印刷物1に形成される最小単位の画線ユニット(U)を示すものであり、各々のユニット(U)において一対の関係で形成される第1の画線(3)が配置される領域(A)と、第2の画線(4)が配置される領域(B)を有し、全てのユニット(U)において、第1の画線(3)と第2の画線(4)の画線面積の合計値が同一となるように形成される。これにより、全てのユニット(U)のおける濃度を一定とすることができるため、印刷模様(2)の濃度が一定となり、潜像画像を隠蔽することができる。
【0036】
各々のユニット(U)は、1mm以下のピッチで形成することが好ましい。1mm以上のピッチでユニット(U)を形成した場合、潜像画像の解像度が低下するため、通常光下で印刷物(1)を観察した際に、潜像画像がうっすらと観察されるおそれがあり、好ましくない。
【0037】
第1の実施の形態における印刷物(1)では、第1の画線(3)を幅130μm、高さ320μmの領域(A)内で形成し、第2の画線(4)を幅290μm、高さ320μmの領域(B)内で形成した最小単位のユニット(U)をマトリクス状に形成することで印刷模様(2)を形成している。第1の画線(3)は、縦方向に隣接するユニット(U)に形成された第1の画線(3)は、各々の第1の画線(3)と画線の中心が隣接することで、1本の万線を形成しており、各々のユニット(U)において表現する潜像画像の濃淡に合わせて画線幅を増減させて配置される。
【0038】
第1の画線(3)は、潜像画像の最低濃度を表現する幅55μmの画線から、最高濃度を表現する幅91μmの画線幅(W1)によって形成される。なお、第1の画線(3)の画線幅(W1)を50μm未満の画線幅で形成した場合、複写機の解像度によっては再生されない画線幅となることから、本発明の効果を得ることができない。また、各々のユニット(U)において形成される第1の画線(3)と第2の画線(4)の距離は、10μm以上離して配置する必要がある。これは、複写機で近接する第1の画線(3)と結合した画線として検出され、第2の画線(4)が消失しない可能性があるためである。
【0039】
また、第2の画線(4)は、各々のユニット(U)において所定の位置に形成することで、規則的に一定ピッチで形成された定周期断絶線を形成する。第2の画線(4)は、複写機で再生されない大きさの画線として、画線幅(W2)を45μm以下の画線で形成する必要があり、好ましくは、40μm以下で印刷可能な画線幅である。各々のユニット(U)に形成される第2の画線(4)は、
図3に示す第2の画線(4)の位置に必ずしも形成する必要はなく、各々のユニット(U)における第1の画線(3)及び第2の画線(4)の合計画線面積が同一の面積率となれば、場所は特に限定されない。ただし、隣接する各々のユニット(U)に形成された第2の画線(4)同士が100μm未満の距離で形成された場合、これらの画線を1本の画線として検出することで、複写物に第2の画線(4)が再現されるおそれがあるため、隣接するユニット(U)間に形成される第2の画線(4)も含めて、間隔を100μm以上離して配置することが好ましく、更に好ましくは、各々のユニット(U)において同一の位置(縦方向の位置)に第2の画線(4)を配置することで、全てのユニット(U)において形成された第2の画線(4)が同一ピッチで形成されることから、印刷模様(2)内の濃度をより一定に保つことができる。なお、各々のユニット(U)で画線面積を同一にするには、第2の画線(4)の画線幅(W3)が適時調整される。これについては後述につて詳細に説明する。
【0040】
図4は、潜像画像を形成する第1の画線(3)と潜像画像の背景を形成する第2の画線(4)の構成を示すものであり、各々のユニット(U)における画線面積率の最大値を22%として形成したものである。第1の画線(3)は、複写模様のポジ画像(3a)をそのまま再現するものであり、画像を画線面積率22%で表現することができる潜像画像に濃度補正して形成する。また、第2の画線(4)は、複写模様のネガ画像(4a)を形成するものであり、第1の画線(3)が潜像画像の最も淡い濃度の画線として配置された場合の最大値である、画線面積率9%の画線で形成することができるネガ画像まで濃度補正した画像を用い、各々のユニット(U)に対応する第2の画線(4)を形成することで、各々のユニット(U)における濃度を一定に保つことができる。
【0041】
図4は、各々のユニット(U)に形成された画線面積率を22%とした場合に第1の画線(3)で表現できる階調画像を示すものである。
図4に示すように、潜像画像の最も淡色部分を形成する場合、第1の画線(3)の面積率を最小値の13%で形成し、当該ユニット(U)内に形成された第1の画線(3)の濃度を補う画線面積率9%で形成された第2の画線(4)を形成することで、ユニット(U)内の画線面積率を22%とすることができる。
【0042】
同様に、画線面積率が15%の第1の画線(3)が形成された場合、7%の第2の画線(4)が形成され、18%の第1の画線(3)が形成された場合、4%の第2の画線(4)が形成され、20%の第1の画線(3)が形成された場合、2%の第2の画線(4)が形成され、22%の第1の画線(3)が形成された場合、0%として第2の画線(4)が配置されない状態となる。以上の組み合わせとすることで、各々のユニット(U)における画線面積率を22%に保つことで、印刷模様(2)内に形成された潜像画像を可視化されない状態として形成することができる。また、第2の画線(4)については画線幅(W2)を固定し、画線幅(W3)を変化させることが望ましい。なお、
図4では、第1の画線(3)と第2の画線(4)の各々が整数の%で変動した例で説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1の画線(3)を13.5%、第2の画線(4)を8.5%とし、ユニット(U)内における第1の画線(3)及び第2の画線(4)の合計面積率を22%とすることができれば良い。
【0043】
また、
図4では、各々のユニット(U)における第1の画線(3)及び第2の画線(4)の合計面積を22%とした例で説明したが、これに限定されるものではなく、2つの画線の合計面積を15%から30%の範囲内に設定すれば、本発明の印刷物の効果を得ることができる。各々のユニット(U)における画線面積率が15%未満となった場合、潜像画像の連続階調を表現する幅が小さくなることで、不鮮明な潜像画像となり好ましくない。また、各々のユニット(U)における画線面積率が30%を超える面積率で形成した場合、印刷物全体の濃度が高くなることで、デザイン性を損なうため、好ましくない。
【0044】
図5は、第1の画線(3)及び第2の画線(4)によって、潜像画像のハイライト又はシャドーを形成したものであり、第1の画線(3)によってシャドー部を形成する場合(
図5の下部分)、第2の画線(4)は全く形成されない状態となり、第1の画線(3)によってハイライト部を形成する場合、第2の画線(4)は最も濃度の高い画線として形成される。
【0045】
図6は、第1の実施の形態の印刷物(1)におけるユニット(U)の変形例を示すものであり、前述したとおり、各々のユニット(U)における画線面積率を一定濃度として形成することができれば、第1の画線(3)と第2の画線(4)の形状、配置位置及び個数等は特に限定されず、
図6(a)に示すように、第2の画線(4)を第1の画線(3)と同じ方向に形成する構成や、
図6(b)に示すように、複写機で再生されない太さに分割して形成された複数の画線や、
図6(c)に示すように、第2の画線(4)のみを複数の網点形状の合計によって形成する等の方法を用いることができ、これらの構成は、本発明の範囲内である。
【0046】
また、複数隣接して形成されるユニット(U)は、第1の方向(
図7における縦方向)に隣接して配置されるユニット(U)の上辺と下辺が一致していれば、各々のユニット(U)をひし形状に歪ませて形成することができる。ひし形の歪みを任意の角度で形成することで、第1の方向に隣接して形成された第1の画線(3)の集合により、曲線上の画線パターンを形成することができる。これにより、第1の画線(3)によってデザイン性を考慮した地紋模様等を形成することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における印刷物(1)について、図面を参照して説明するが、第1の実施の形態の印刷物(1)と同様の構成である第1の画線(3)及び第2の画線(4)の説明は省略し、第2の実施の形態の特徴的部分である、可視画像を形成する第3の画線(8)について詳細に説明する。
【0048】
図8は、第2の実施の形態における印刷物(1)を示すものであり、基材上に形成された印刷模様(2)内に通常光下で観察される可視画像が形成されたものである。第2の実施の形態における印刷物(1)は、第1の実施の形態における印刷物(1)と同様に、潜像画像を形成する第1の画線(3)と、第1の画線(3)の画線幅の増減によって形成された濃度差をカムフラージュする第2の画線(4)を配置することで、各々のユニット(U)における画線濃度を一定に保ち、潜像画像が可視化されない状態としている。
【0049】
図8の拡大図に示すように、第2の実施の形態における印刷物(1)は、第1の画線(3)の画線幅の増減によって形成された階調をカムフラージュしている第2の画線(4)以外に、複写機で再生されない第3の画線(8)が形成されており、第1の実施の形態の印刷物(1)を可視光下で観察した場合に一定濃度として視認された印刷模様(2)内に可視画像を形成する第3の画線(8)を形成することで、印刷物(1)を通常光下で観察した場合に、第3の画線(8)で形成された可視画像が視認される。
【0050】
図9は、第2の実施の形態における印刷物(1)の複写物(6)を示すものである。
図9に示す複写物(6)上に形成された複写模様(7)は、第1の画線(3)で形成された潜像画像が可視化したものである。この理由は、第2の実施の形態における印刷物(1)に形成された第2の画線(4)及び第3の画線(8)が、複写時に再生されない大きさの画線で形成されているため、
図9の拡大図に示すように、複写物(6)上に再現されず、第1の画線(3)のみが形成されることで、第1の画線(3)の画線幅の増減によって濃淡表現された連続階調を有する潜像画像が出現するものである。なお、
図9の拡大図において、第2の画線(4)及び第3の画線(8)を点線で示しているが、実際の複写物(6)における第2の画線(4)及び第3の画線(8)は消失し、第1の画線(3)のみが再現される。
【0051】
図10は、第2の実施の形態における印刷物(1)に形成される最小単位の画線ユニット(U)を示すものである。各々のユニット(U)には、第1の画線(3)が配置される領域(A)と、第2の画線(4)及び第3の画線が配置される領域(B)を有し、第1の実施の形態における印刷物(1)と同様に、全てのユニット(U)において、第1の画線(3)で形成された階調差を第2の画線(4)でカムフラージュし、全てのユニット(U)における第1の画線(3)と第2の画線(4)の画線面積の合計値が同一となるように形成され、更には、可視画像の濃淡を表現する第3の画線(8)を形成することで、第1の画線(3)及び第2の画線(4)で形成された潜像画像が隠蔽された印刷模様内に、第3の画線(8)の有無で形成された可視画像が形成される。
【0052】
第2の実施の形態における各々のユニット(U)は、第1の画線(3)が形成される幅130μm、高さ320μmの領域(A)と、第2の画線(4)及び第3の画線が形成される幅290μm、高さ320μmの領域(B)が隣接して配置されることで最小単位のユニット(U)を形成している。第1の画線(3)は、潜像画像の最低濃度を表現する幅55μmの画線から、最高濃度を表現する幅91μmの画線幅(W1)によって形成される。なお、第1の画線(3)の画線幅(W1)を50μm未満の画線幅で形成した場合、複写機の解像度によっては再生されない画線幅となることから、本発明の効果を得ることができない。また、各々のユニット(U)において形成される第1の画線(3)と第2の画線(4)及び第3の画線(8)との距離は、10μm以上離して配置する必要がある。これは、複写機で近接する第1の画線(3)と結合した画線として検出され、第2の画線(4)及び第3の画線(8)が消失しない可能性があるためである。
【0053】
また、第2の画線(4)は、各々のユニット(U)において所定の位置に形成することで、規則的に一定ピッチで形成された画線で形成し、第3の画線(8)は、縦方向(S1方向)に隣接して形成されるユニット(U)に形成された第2の画線(3)同士の中心位置に形成することで、第2の画線(3)と第3の画線(8)が交互に一定ピッチで形成している。第2の画線(4)及び第3の画線(8)は、複写機で再生されない大きさの画線で形成する必要があるため、画線幅(W4)を45μm以下の画線で形成する必要があり、好ましくは、40μm以下の画線幅で形成する。
【0054】
第2の実施の形態では、各々のユニット(U)に形成される第2の画線(4)及び第3の画線(8)を、規則的に所定のピッチで形成した例で説明したが、必ずしも所定の位置に形成する必要はなく、各々のユニット(U)に形成された第1の画線(3)に対応する第2の画線(4)分の画線面積と、可視画像に対応する第3の画線(8)分の画線面積の合計値がユニット(U)内に形成されれば良い。また、第3の画線(8)については、第2の画線(4)と同様に画線幅(W4)を固定し、画線幅(W5)を変化させることが望ましい。
【0055】
例えば、第1の実施の形態の印刷物(1)のように、第1の画線(3)と第2の画線(4)の合計値を22%とし、可視画像を形成する第3の画線(8)を2%の面積で形成するユニット(U)と仮定した場合、第1の画線(3)、第2の画線(4)及び第3の画線(8)の合計面積率が24%となる。この濃度とするユニット(U)において、第1の画線(3)が20%で形成された場合、第2の画線(4)を2%、第3の画線(8)を2%の画線で形成しても良いが、第2の画線を4%の画線面積で形成し、第3の画線(8)を形成しない構成としても、ユニット(U)内の画線面積率を24%とし、かつ、複写機で再生されない画線の合計面積を4%とすることができることから、可視画像を形成する濃度を得るとともに、複写物(6)に20%の面積率を有する第1の画線(3)が再現されることから、同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、第2の画線(3)及び第3の画線(8)は、隣接するユニット(U)に形成された画線間隔(D)を含めて100μm以上離して形成する必要がある。第2の画線(3)及び第3の画線(8)同士が100μm未満の距離で形成された場合、複写機がこれらの画線を1本の画線として検出することで、複写物(6)に第2の画線(4)及び第3の画線(8)の合計濃度が再現されるおそれがある。よって、印刷模様(2)内に形成される全ての第2の画線(4)及び第3の画線(8)の間隔を100μm以上離して配置することが好ましい。
【0057】
図11は、第2の実施の形態における印刷物(1)のユニット(U)における画線構成を示すものである。第2の実施の形態では、各々のユニット(U)における最大濃度、すなわち、最も濃度の高い可視画像領域を表現するユニット(U)の画線面積率を31%とし、最低濃度、すなわち、最も濃度の低い可視画像部位分を表現するユニット(U)の画線面積率を22%としたものである。
【0058】
図11に示すユニット(U)は、可視画像のポジ画像(8a)を9%の画線濃度で再現した第3の画線(8)と潜像画像を形成する第1の画線(3)と第2の画線(4)で形成される画像を合成することで、印刷模様(2)を形成している。各々のユニット(U)において潜像画像と潜像画像をカムフラージュする第1の画線(3)及び第2の画線(4)を画線面積率22%で形成し、可視画像を形成する第3の画線(8)を画線面積率0から9%で任意に形成することで可視画像が形成される。なお、第2の実施の形態における印刷物(1)では、可視画像を形成する画線面積率の範囲を0〜9%としているが、更に豊かな階調を表現する場合には、画線面積率の範囲を広げれば良い。
【0059】
また、第2の実施の形態における印刷物(1)では、ユニット(U)の最高濃度を31%としているが、45%以下で形成すれば本発明の効果を得ることができる。ユニット(U)の最高濃度を、45%を超える面積率とした場合、ユニット(U)内の余白領域(第2の画線(3)及び第3の画線(8)が形成されない領域)が少なくなることで、複写物(6)上に再生されない第2の画線(4)及び第3の画線(8)を形成することが難しくなるとともに、印刷模様(2)の全体が高濃度となり、デザイン性を損なうため、好ましくない。
【0060】
図11は、潜像画像を形成する第1の画線(3)の面積率を段階的に大きくした場合であって、かつ、可視画像を形成する第3の画線(8)を段階的に大きく形成した例を示すものである。ここでは、第1の画線(3)及び第2の画線(4)の画線面積の変動については説明を省略し、可視画像を形成する第3の画線(8)についてのみ説明する。
図11では、画線面積率9%の範囲で階調を表現したものであり、縦方向に隣接して形成されたユニット(U)における第2の画線(4)の中心に第3の画線(8)が形成された構成としており、上から、第3の画線(8)なし、2%、4%、7%、9%と、段階的に第3の画線(8)の面積率を増加させた例を示している。なお、第3の画線(8)は、各々のユニット(U)において可視画像に合わせた濃淡を表現すれば良く、各々のユニット(U)に形成された第1の画線(3)及び第2の画線(4)との組合せについては特に限定されない。
【0061】
第2の実施の形態では、第2の画線(4)及び第3の画線(8)を一定ピッチで形成した例で説明したが、第1の実施の形態と同様に、第2の画線(4)及び第3の画線(8)を複写機で再生されない網点の集合によって形成する方法や、複写機で再生されない画線幅で形成された複数の画線で形成する等の方法を用いることができ、これらは本発明の範囲内である。
【0062】
(第3の実施の形態)
図12は、第3の実施の形態における身分証明書タイプの印刷物(1)であり、基材上に顔写真と複写防止機能を有する印刷模様(2)が形成された印刷物(1)である。印刷模様(2)には、可視画像と潜像画像が形成されており、地紋領域内に顔写真画像(9)と、顔写真画像(9)と同じ潜像画像が形成されている。
【0063】
印刷模様(2)は、潜像画像の階調を表現するために各々のユニット(U)において画線幅を増減して形成された第1の画線(3)と、第1の画線(3)の階調をカムフラージュする第2の画線(4)と、可視画像を形成する第3の画線(8)が形成される。なお、第1の画線(3)、第2の画線(4)及び第3の画線(8)の構成については、第2の実施の形態の印刷物(1)と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
図13は、第3の実施の形態における複写物(6)に形成された複写領域(7)を示すものであり、第2の画線(4)及び第3の画線(8)は複写機で再生されない大きさの画線で形成せれていることから、複写物(6)上に再現されず、第1の画線(3)で形成された潜像画像が観察される。これにより、複写模様(7)が、写真画像(9)と一致するか否かを確認することで、写真画像(9)を張り替える改竄行為に対しても確実な真偽判別が可能となる。