【文献】
Guan Sun, Ruolin Chen, Yujie J. Ding, Hongping Zhao, Guangyu Liu, Jing Zhang,Strikingly Different Behaviors of Photoluminescence and Terahertz Generation in InGaN/GaN Quantum Wells,IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS,米国,IEEE,2012年10月25日,VOL. 19, NO. 1,8400106 (1-6),Digital Object Identifier 10.1109/JSTQE.2012.2218093
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0032】
<1. 第1実施形態>
<1.1. フォトデバイス検査装置の構成および機能>
図1は、第1実施形態に係る検査装置100の概略構成図である。また、
図2は、
図1に示す照射部12、電磁波検出部13およびPL光検出部14の概略構成図である。
【0033】
検査装置100は、フォトデバイスが形成された基板の一種である太陽電池90の特性検査に適するように構成されている。太陽電池などフォトデバイスは、例えば、p型とn型の半導体が接合されたpn接合部を有している。このpn接合部付近では電子と正孔とが互いに拡散して結びつく拡散電流が生じることによって、pn接合部付近に電子と正孔とがほとんど存在しない空乏層が形成されている。この領域では、電子と正孔をそれぞれn型、p型領域に引き戻す力が生じるため、フォトデバイスの内部に電場(内部電界)が生じている。
【0034】
ここで、禁制帯幅を超えるエネルギーを持つ光がpn接合部に照射された場合、pn接合部において発生した自由電子および自由正孔が、内部電界によって、自由電子がn型半導体側へ、取り残された自由正孔がp型半導体側へ移動する。フォトデバイスでは、この電流がn型半導体およびp型半導体のそれぞれに取り付けられた電極を介して、外部に取り出される。例えば太陽電池の場合、pn接合部の空乏層に光が照射されたときに生じる自由電子と自由正孔の移動が、直流電流として利用される。
【0035】
フォトデバイスに所定波長のパルス光を照射したとき、特定波長の電磁波パルスが発生する。マクスウェルの方程式によると、電流に変化が生じたとき、その電流の時間微分に比例した強度の電磁波が発生する。すなわち、空乏層などの光励起キャリア発生領域にパルス光が照射されることで、瞬間的に光電流の発生および消滅が起こる。この瞬間的に発生する光電流の時間微分に比例して、電磁波パルスが発生する。
【0036】
ここで、光電流の発生は、空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を反映したものである。したがって、発生した電磁波パルスを解析することによって、空乏層などの光励起キャリア発生領域の特性を検査することができる。このような原理に基づき、検査装置100は、太陽電池90に向けて所定波長のパルス光を照射したときに発生する電磁波パルスを検出するように構成されている。
【0037】
図1に示すように、検査装置100は、ステージ11、照射部12、電磁波検出部13、PL光検出部14、ステージ移動機構15、制御部16、モニター17および操作入力部18を備えている。
【0038】
ステージ11は、所要の固定手段によって、太陽電池90をステージ11上に保持する。固定手段としては、基板を挟持する挟持具を利用したもの、粘着性シート、または、ステージ11の表面に形成される吸着孔などが想定される。ただし、太陽電池90を固定できるのであれば、これら以外の固定手段が採用されてもよい。本実施形態では、ステージ11は、太陽電池90の受光面91S側に照射部12および電磁波検出部13が配置されるよう、太陽電池90を保持する。
【0039】
図2に示すように、照射部12は、フェムト秒レーザ121を備えている。フェムト秒レーザ121は、例えば、360nm(ナノメートル)以上1.5μm(マイクロメートル)以下の可視光領域を含む波長のパルス光(パルス光LP1)を放射する。具体例としては、中心波長が800nm付近であり、周期が数kHz〜数GHz、パルス幅が10〜150フェムト秒程度の直線偏光のパルス光が、フェムト秒レーザから放射される。もちろん、その他の波長領域(例えば、青色波長(450〜495nm)、緑色波長(495〜570nm)などの可視光波長)のパルス光が出射されるようにしてもよい。
【0040】
フェムト秒レーザ121から出射されたパルス光LP1は、ビームスプリッタB1により2つに分割される。分割された一方のパルス光(パルス光LP11)は、太陽電池90に照射される。このとき、照射部12は、パルス光LP11の照射を、受光面91S側から行う。また、パルス光LP11の光軸が、太陽電池90の受光面91Sに対して斜めに入射するように、パルス光LP11が太陽電池90に対して照射される。本実施形態では、入射角度が45度となるように照射角度が設定されている。ただし、入射角度はこのような角度に限定されるものではなく、0度から90度の範囲内で適宜変更することができる。
【0041】
図3は、太陽電池90の概略断面図である。また、
図4は、受光面91S側から見た太陽電池90の平面図である。さらに、
図5は、裏面側から見た太陽電池90の平面図である。太陽電池90は、結晶シリコン系である太陽電池として構成されている。太陽電池90は、下から順にアルミニウムなどで形成された平板状の裏面電極92と、p型シリコン層93と、n型シリコン層94と、反射防止膜95と、格子状の受光面電極96とで構成される積層構造を有する結晶シリコン系太陽電池として構成されている。反射防止膜95は、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸化チタンなどで形成されている。
【0042】
太陽電池90の主面のうち、受光面電極96が設けられている側の主面が、受光面91Sとなっている。つまり、太陽電池90は、受光面91S側から光を受けることで発電するように設計されている。受光面電極96には、透明電極が用いられていてもよい。なお、検査装置100は、結晶シリコン系以外の太陽電池(アモルファスシリコン系など)の検査に適用してもよい。アモルファスシリコン系太陽電池の場合、一般的に、エネルギーギャップが1.75eV〜1.8eVといったように、結晶シリコン系太陽電池のエネルギーギャップ1.2eVに比べて大きい。このような場合、フェムト秒レーザ121の波長を、例えば700μm以下とすることで、アモルファスシリコン系太陽電池において、テラヘルツ波を良好に発生させることができる。同様の考え方で、他の半導体太陽電池(CIGS系、GaAS系など)にも適用可能である。
【0043】
太陽電池90の受光面91Sは、光の反射損失を抑えるために、所要のテクスチャー構造を有している。具体的には、異方性エッチングなどにより形成される数μm〜数十μmの凹凸、または機械的方法によるV字状の溝などが形成されている。このように、太陽電池90の受光面91Sは、一般的に、できるだけ効率良く採光できるように形成されている。したがって、所定波長のパルス光が照射されたときに、該パルス光はpn接合部97に届きやすくなっている。例えば、太陽電池の場合、主に可視光の波長領域を有する波長1μm以下の光であれば、pn接合部97に容易に到達し得る。このように、使用状態において受光する側の主面がパルス光LP11の受光面91Sとなるように、太陽電池90を検査装置100に設置すれば、良好に電磁波パルスLT1を発生させることができる。
【0044】
また、p型シリコン層93とn型シリコン層94との接合部分は、空乏層が形成されるpn接合部97となっている。この部分にパルス光LP11が照射されることによって、電磁波パルスが発生し、外部に放射される。本実施形態において、電磁波検出部13において検出される電磁波パルスは、主にテラヘルツ領域(周波数0.01THz〜10THz)の電磁波パルス(以下、電磁波パルスLT1と称する。)となっている。
【0045】
なお、検査装置100において、検査対象となる基板は、太陽電池90に限定されるものではない。他のフォトデバイスまたは半導体デバイスも、検査対象となりうる。本願においては、フォトデバイスとは、フォトダイオード、CMOSセンサ若しくはCCDセンサなどのイメージセンサ、太陽電池またはLED、レーザ等、半導体の光電効果を利用する電子デバイスをいう。また、半導体デバイスとは、Si、Ge、GaAsなどの半導体で形成されたトランジスタ、集積回路(ICやLSI)、抵抗またはコンデンサ、ワイドギャップ半導体を用いたパワーデバイスなどの電子デバイスであって、フォトデバイスとは相違するものをいう。検査対象物の表面は、平面状に形成されているものとするが、曲面状などに形成されていてもよい。
【0046】
なお、イメージセンサの中には、使用状態においてフォトデバイスが形成された基板の裏面側となる部分に受光素子が形成されているものが知られている。このような基板であっても、使用状態において受光する側の主面を受光面として検査装置100に設置すれば、良好に電磁波パルスLT1を検出することができる。
【0047】
図2に戻って、ビームスプリッタB1によって分割された他方のパルス光は、プローブ光LP12として遅延部131およびミラーなどを経由して、検出器132に入射する。また、パルス光LP11の照射に応じて発生した電磁波パルスLT1は、放物面鏡M1,M2において集光されて検出器132に入射する。
【0048】
検出器132は、電磁波検出素子として、例えば、光伝導スイッチを備えている。電磁波パルスが検出器132に入射する状態で、プローブ光LP12が検出器132に照射されると、この光伝導スイッチに瞬間的に電磁波パルスLT1の電界強度に応じた電流が発生する。この電界強度に応じた電流は、I/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このようにして、電磁波検出部13は、プローブ光LP12の照射に応じて、太陽電池90で発生した電磁波パルスLT1の電界強度を検出する。検出器132に、その他の素子、例えば非線形光学結晶を適用することも考えられる。
【0049】
遅延部131は、遅延ステージ131aおよび遅延ステージ移動機構131bを備えている。遅延部131は、ビームスプリッタB1から検出器132までのプローブ光LP12の到達時間を連続的に変更するための光学素子である。遅延ステージ131aは、遅延ステージ移動機構131bによって、プローブ光LP12の入射方向に沿って直線移動する。また、遅延ステージ131aは、プローブ光LP12を入射方向に折り返させる折り返しミラー10Mを備えている。
【0050】
より詳細には、遅延ステージ131aは、制御部16の制御に基づいて遅延ステージ移動機構131bを駆動して折り返しミラー10Mを移動させることによって、プローブ光LP12の光路長を精密に変更する。これにより、遅延ステージ131aは、電磁波パルスLT1が電磁波検出部13(検出器132)に到達する時間と、プローブ光LP12が電磁波検出部13(検出器132)へ到達する時間との時間差を変更する。したがって、遅延ステージ131aでプローブ光LP12の光路長を変化させることによって、電磁波検出部13(検出器132)において電磁波パルスLT1の電界強度を検出するタイミング(検出タイミングまたはサンプリングタイミング)を遅延させることができる。
【0051】
なお、その他の態様でプローブ光LP12の検出器132への到達時間を変更することも考えられる。具体的には、電気光学効果を利用すればよい。すなわち、印加する電圧を変化させることで屈折率が変化する電気光学素子を、遅延素子として用いてもよい。具体的には、特開2009−175127号公報に開示されている電気光学素子を利用することができる。
【0052】
また、パルス光LP11(ポンプ光)の光路長、もしくは、太陽電池90から放射された電磁波パルスLT1の光路長を変更するようにしてもよい。この場合においても、検出器132に電磁波パルスLT1が到達する時間を、検出器132にプローブ光LP12が到達する時間に対して、相対的にずらすことができる。これにより、検出器132における電磁波パルスLT1の電界強度の検出タイミングを遅延させることができる。
【0053】
太陽電池90には、検査時に裏面電極92と受光面電極96との間に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス電圧印加回路99が接続される。逆バイアス電圧が電極間に印加されることによって、pn接合部97の空乏層の幅が大きくなり、内部電界を大きくすることができる。これによって、パルス光LP11によって発生する電流量を増大することができる。また、検出器132において検出される電磁波パルスLT1の電界強度を増大できるため、検出器132における電磁波パルスLT1の検出感度を向上できる。なお、逆バイアス電圧印加回路99は、省略することも可能である。
【0054】
PL光検出部14は、分光器141および光検出器143を備えている。光検出器143は、フォトダイオードで構成される。PL光検出部14は、パルス光LP11(例えば、80MHz〜1GHzの繰り返し周波数)が照射されることによって、太陽電池90で発生するフォトルミネッセンス光(PL光)PL1を検出する。太陽電池90に照射されるパルス光LP11は、連続光に近似することができるが、パルス状である。このため、発生するPL光PL1も厳密にはパルス状となる。
【0055】
従来の検査装置(例えば、特許文献1に記載の検査装置)では、検査対象物(太陽電池)の全面に光を照射する。このため、光検出器が、比較的広い検出面を有している必要があった。これに対して、本実施形態では、パルス光LP11が、太陽電池90に対してスポット状に照射される。このため、光検出器143の検出面は比較的小さくて済む。したがって、比較的少ないフォトダイオードで光検出器143を構成できる。よって、従来に比べて装置コストを抑えることができる。
【0056】
PL光PL1を発生させる光(パルス光LP11)は、電磁波パルスLT1を発生させる光である。これらの光は、いずれも同一の光源であるフェムト秒レーザ121から出射されるものである。
【0057】
PL光は、物質に光を照射し、励起された電子が基底状態に遷移する際に発生する光である。この発光現象は、検査対象物中の不純物や欠陥の影響を受けやすい。このため、発生した光を分光器141によって分光し、解析することによって、検査対象物中の不純物や欠陥の情報を得ることができる。
【0058】
上述したように、パルス光LP11によって発生する電磁波(テラヘルツ波)は、主に空乏層の内部電界によって加速された光キャリアの移動、すなわち、光電流の時間変化によって発生するものである。このため、PL光とは発生メカニズムが異なる。したがって、その発生原理の差異を利用することで、フォトデバイスのより詳細な解析が可能となる。
【0059】
PL光検出部14にバンドパスフィルターを採用することによって、PL光とは異なる波長の光を除外するようにしてもよい。また、分光器141の代わりに、バンドパスフィルターを用いてもよい。
【0060】
なお、フェムト秒レーザ121から出射されたパルス光LP11の波長と、PL光PL1の波長が近接している場合、PL光PL1をパルス光LP11から分離するためには、高精度の分光器141を用いる必要がある。しかしながら、パルス光LP11を直線偏光とし、分光器141の手前に該パルス光LP11の偏向方向に直交する偏向子を設置すれば、光検出器143において、パルス光LP11を除くことができる。
【0061】
検査装置100は、CCDカメラおよび撮影用の光源としてLEDまたはレーザを備えていてもよい。CCDカメラは、太陽電池90の全体像の撮影、または、パルス光LP11が照射される位置を撮影するのに用いることができる。CCDカメラによって取得された画像データは、制御部16へ送信され、モニター17などに表示されてもよい。
【0062】
ステージ移動機構15は、ステージ11を二次元平面内で移動させるX−Yテーブルを備えている。ステージ移動機構15は、このX−Yテーブルを駆動することによって、ステージ11に保持された太陽電池90を、照射部12に対して相対的に移動させる。検査装置100は、ステージ移動機構15により、太陽電池90を2次元平面内で任意の位置に移動させることができる。検査装置100は、ステージ移動機構15によって、太陽電池90のある程度の広い範囲(検査対象領域)をパルス光LP11で走査することができる。
【0063】
なお、ステージ移動機構15は、走査機構の一例である。例えば、太陽電池90を移動させる代わりに、もしくは、太陽電池90を移動させると共に、照射部12および電磁波検出部13を2次元平面内で移動させる移動手段を設けてもよい。これらの場合においても、太陽電池90の各領域にパルス光LP11を照射できる。また、パルス光LP11の光路を変更することによって、検査対象領域をパルス光LP11で走査することも考えられる。具体的には、ガルバノミラーを設けて、太陽電池90の受光面91Sに平行であって、かつ、互いに直交する二方向に、パルス光LP11を走査することが考えられる。また、ガルバノミラーの代わりに、ポリゴンミラー、ピエゾミラーまたは音響光学素子などを用いることも考えられる。また、ステージ移動機構15を省略して、ステージ11を人手で移動できるようにしてもよい。
【0064】
制御部16は、CPU、ROM、RAMおよび補助記憶部(例えばハードディスク)などを備えた一般的なコンピュータとしての構成を備えている。制御部16は、照射部12のフェムト秒レーザ121、電磁波検出部13の遅延ステージ131aおよび検出器132、並びにステージ移動機構15に接続されており、これらの動作を制御したり、これらからデータを受け取ったりする。
【0065】
より詳細には、制御部16は、検出器132から電磁波パルスLT1の電界強度に関するデータを受け取る。また、制御部16は、遅延ステージ131aを移動させる遅延ステージ移動機構131bを制御する。さらに制御部16は、該遅延ステージ131aに設けられたリニアスケールなどから、折り返しミラー10Mの移動距離などの遅延ステージ131aの位置に関連するデータを受け取る。
【0066】
また、制御部16は、時間波形復元部21、電磁波パルス解析部23、電磁波強度分布画像生成部25、PL光強度分布画像生成部27、画像合成部28および検査位置設定部29を備えている。これら各処理部は、CPUがプログラムに従って動作することにより実現される機能である。ただし、これらの処理部の機能の一部または全部が、専用の演算回路によってハードウェア的に実現されるようにしてもよい。
【0067】
時間波形復元部21は、太陽電池90において発生した電磁波パルスLT1について、電磁波検出部13(検出器132)にて検出される電界強度に基づいて、電磁波パルスLT1の時間波形を復元する。具体的には、時間波形復元部21は、遅延ステージ131aの折り返しミラー10Mを移動させることで、プローブ光LP12の光路長(第1光路の光路長)を変更し、プローブ光LP12が検出器132に到達する時間を変更する。これによって、検出器132において電磁波パルスLT1の電界強度を検出するタイミング(位相)が変更される。すると、時間波形復元部21は、電磁波パルスLT1の電界強度を、異なる位相毎に検出し、検出された電界強度を、時間軸に沿ってプロットしていく。これによって、時間波形復元部21は、電磁波パルスLT1の時間波形を復元する。
【0068】
電磁波パルス解析部23は、時間波形復元部21により復元された時間波形を解析する。電磁波パルス解析部23は、時間波形復元部21によって復元された電磁波パルスLT1の時間波形における、電界強度のピーク検出、あるいは、フーリエ変換による周波数分析などを行う。これによって、太陽電池90の特性が、電磁波パルスに基づいて解析される。
【0069】
電磁波強度分布画像生成部25は、太陽電池90の検査対象領域(太陽電池90の一部または全部)に関して、電磁波強度分布画像を生成する。電磁波強度分布画像は、パルス光LP11の照射に応じて放射された電磁波パルスLT1の電界強度の分布を視覚化した画像である。電磁波強度分布画像は、パルス光LP11の照射箇所毎に、検出された電磁波パルスLT1の電界強度に応じた色または模様を付した画像である。
【0070】
PL光強度分布画像生成部27は、太陽電池90の検査対象領域に関して、PL光強度分布画像を生成する。PL光強度分布画像は、パルス光LP11の照射に応じて、太陽電池90から放射されたPL光PL1の強度分布を視覚化した画像である。PL光強度分布画像は、パルス光LP11の照射箇所毎に、検出されたPL光の強度に応じた色または模様を付した画像である。
【0071】
画像合成部28は、電磁波強度分布画像生成部25が生成した電磁波強度分布画像と、PL光強度分布画像生成部27が生成したPL光画像とを、画素演算によって、双方の電磁波強度分布およびPL光強度分布の情報を含んだ新たな合成画像を生成する。
【0072】
例えば、合成画像を、電磁波強度分布画像とPL光画像との差分画像とした場合、電磁波の放射またはPL光の発生のどちらかに異常がある箇所を、この合成画像から容易に特定することができる。
【0073】
ここで、光の波長と検査対象物に対する進入長との関係について説明する。検査対象物にI
0という強さを持った光が入射したとする。この光が検査対象物中をx(cm)進んだとき、光吸収係数をαとすると、光の強さI(x)は、以下の式(1)で表される。
【0074】
I(x)=I
0・e
−αx・・・式(1)
【0075】
例えば、α=10
4cm
−1の場合、x=1/α=10
−4(cm)進んだとき、入射光の1/e=0.37に減衰する。例えば、厚み3μmの場合では、光強度は5%以下となる。光吸収係数αは、物質と波長に依存して決まるものである。このため、検査対象物の材料が既知であれば、特定の波長の光が当該検査対象物に侵入する深さを特定することが可能である。
【0076】
具体的には、
図3に示す太陽電池90において、n型シリコン層94が結晶シリコンで構成されており、その厚みが0.3μmであるとする。また、太陽電池90に対して、365nmまたは500nmのパルス光LP11を照射する場合を想定する。
【0077】
波長が365nmの場合、結晶シリコンの光吸収係数αは10
5(cm
−1)である。このため、パルス光LP11が0.3μm進んだとき、透過率I(x)/I
0は、0.05となる。すなわち、n型シリコン層94において95%吸収され、p型シリコン層93までほとんど到達できないこととなる。
【0078】
一方、波長が500nmの場合、結晶シリコンの光吸収係数αは10
4(cm
−1)である。このため、パルス光LP11が0.3μm進んだとき、透過率I(x)/I
0は0.74となる。すなわち、n型シリコン層94において26%吸収され、残りはp型シリコン層93にまで到達することとなる。
【0079】
このような原理に基づいて、検査対象物である太陽電池90に照射するパルス光LP11の波長を適宜に選択することによって、検査対象物の深さ方向に関してより詳細な検査を行うことができる。
【0080】
すなわち、上述したように、空乏層は、
図3に示す太陽電池90の場合、pn接合部97に形成される。パルス光LP11の波長を、このpn接合部97まで到達可能な波長とすれば、空乏層に依存して発生する電磁波パルスLT1と、n型シリコン層94で励起された光キャリアによって発生するPL光PL1を検出できる。
【0081】
この場合、特定の検査箇所において、電磁波パルスLT1の強度のみに異常があった場合は、当該検査箇所における空乏層付近に欠陥などがあることを推定できる。また、PL光PL1の強度のみに異常があった場合は、当該検査箇所におけるn型シリコン層94(太陽電池90の表面付近)における欠陥などがあることを推定できる。
【0082】
空乏層まで到達可能なパルス光LP11としては、n型シリコン層94が0.3μmである場合、例えば、波長を365nmとすればよい。なぜなら、上述したように、波長が365nmの光は、結晶シリコン層を0.3μm進んだところで、95%吸収されるからである。なお、本願においては、光が到達可能な深さ(侵入長)を、その透過率I(x)/I
0が0.37となるときの深さ(すなわち、63%吸収されるときの深さ)とする。
【0083】
一方、空乏層よりも深い部分に到達可能、すなわち、p型シリコン層93にまで到達可能なパルス光LP11を照射すれば、n型シリコン層94およびp型シリコン層93の双方において光キャリアを励起させることができる。したがって、n型シリコン層94およびp型シリコン層93の双方で発生した光キャリアに依存するPL光PL1を検出できる。
【0084】
p型シリコン層93まで到達可能なパルス光LP11を照射した場合において、特定の検査箇所において、電磁波パルスLT1の強度のみに異常があった場合は、当該検査箇所における空乏層付近に欠陥などがあることが推定できる。また、PL光PL1の強度のみに異常があった場合は、当該検査箇所におけるn型シリコン層94またはp型シリコン層93に欠陥などがあることを推定できる。
【0085】
空乏層よりも深い部分に到達可能なパルス光LP11としては、n型シリコン層94が0.3μmである場合、例えば、波長を500nmとすればよい。なぜなら、上述したように、波長が500nmの光は、結晶シリコン層を0.3μm進んだところで、26%しか吸収されないからである。
【0086】
検査位置設定部29は、電磁波強度分布またはPL光強度分布を取得するために、パルス光LP11を照射する領域を設定する。検査位置設定部29は、後述するモニター17に、領域指定用画面を表示し、オペレータが操作入力部18を介して行う指定入力を受け付ける。そして、検査位置設定部29は、指定入力に基づいて、パルス光LP11を照射する領域を設定する。制御部16は、このようにして設定された領域を、パルス光LP11で走査するように、照射部12およびステージ移動機構15を制御する。
【0087】
制御部16には、モニター17および操作入力部18が接続されている。モニター17は、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、オペレータに対して各種画像情報を表示する。モニター17には、例えばCCDカメラで撮影された太陽電池90の受光面91Sの画像、時間波形復元部21によって復元された電磁波パルスLT1の時間波形、電磁波パルス解析部23による解析結果が表示される。また、モニター17には、電磁波強度分布画像生成部25が生成した電磁波強度分布画像、PL光強度分布画像生成部27が生成したPL光強度分布画像、画像合成部28が生成した合成画像、および、検査位置設定部29が指定操作を受け付けるための画面が表示される。また、モニター17には、検査の条件設定などをするために必要なGUI(Graphical User Interface)画面が適宜表示される。
【0088】
操作入力部18は、マウスおよびキーボードなどの各種入力デバイスで構成されている。オペレータは、操作入力部18を介して検査装置100に対して各種操作入力を行うことができる。なお、モニター17がタッチパネルとして構成されることによって、モニター17が操作入力部18として機能するようにしてもよい。
【0089】
以上が、検査装置100の構成についての説明である。次に、検査装置100において実行可能な太陽電池90の検査の具体例を説明する。
【0090】
<1.2. 太陽電池の検査>
<1.2.1. 検査例1>
図6は、太陽電池90の検査例1を示す流れ図である。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、検査装置100の各動作が制御部16による制御下のもとに行われるものとする。また、各工程の内容に応じて、複数の工程が並列に実行されたり、複数の工程の実行順序が適宜変更されたりしてもよい。
【0091】
まず、ステージ11に検査対象となる太陽電池90が設置される(ステップS11)。このとき、上述したように、受光面91S(すなわち、太陽電池90が使用される状態において、太陽光を受光する側の主面)に向けて、パルス光LP11が照射されるように、太陽電池90が設置される。
【0092】
太陽電池90が設置されると、太陽電池90の裏面電極92および受光面電極96に逆バイアス電圧印加回路99が接続され、逆バイアス電圧が印加される(ステップS12)。なお、逆バイアス電圧を印加しない場合は、このステップS12を省略することも可能である。
【0093】
次に、電磁波検出部13による電磁波パルスLT1の検出タイミングが設定される(ステップS13)。具体的には、制御部16が遅延ステージ131aを制御することによって、プローブ光LP12が検出器132に到達するタイミングが所要の検出タイミングに固定されるように、折り返しミラー10Mの位置が調整される。なお、検出される電磁波強度ができるだけ大きくなるように検出タイミングが設定することで、S/N比を高めることができる。
【0094】
検出タイミングが設定されると、ステージ移動機構15が駆動されることによって、太陽電池90を2次元平面内で移動させる。これによって、検査対象領域がパルス光LP11で走査される(ステップS14)。そして、パルス光LP11の各照射位置で放射される電磁波パルスLT1の電界強度が検出器132によって検出されるのと同時に、パルス光LP11の各照射位置で発生するPL光PL1がPL光検出部14によって検出される。
【0095】
ステップS14において、パルス光LP11の照射位置毎の電磁波パルスLT1の電界強度およびPL光PL1の光強度が取得されると、電磁波強度分布画像生成部25およびPL光強度分布画像生成部27によって、電磁波強度分布画像およびPL光強度分布画像が生成される。そして、それらの画像がモニター17の同一画面上に表示される(ステップS15)。なお、ステップS15において、電磁波強度分布画像およびPL光強度分布画像を合成した合成画像が画像合成部28によって生成され、該画像がモニター17に表示されてもよい。
【0096】
図7は、電磁波強度分布画像i1を示す図である。また、
図8は、PL光強度分布画像i2を示す図である。電磁波強度分布画像i1によると、太陽電池90における電界強度分布を容易に把握することができる。また、PL光強度分布画像i2によると、太陽電池90における電界強度分布を容易に把握することができる。
【0097】
図6に戻って、各画像の表示が完了すると、検査位置設定部29は、電磁波パルスLT1の時間波形を復元して検査する領域(時間波形復元検査領域)の指定を受け付ける(ステップS16)。ステップS16においては、オペレータが、モニター17に表示された電磁波強度分布画像i1、PL光強度分布画像i2、または、これらの合成画像を確認しつつ、詳細な検査が必要な領域を、操作入力部18を介して、指定する。そして、検査位置設定部29が、指定された領域を時間波形復元検査領域に設定する。
【0098】
なお、時間波形復元検査領域は、自動で設定されるようにすることも考えられる。例えば、電磁波強度またはPL光強度が正常とされる基準値の範囲を予め定めておき、この基準値の範囲から外れる電磁波強度またはPL光強度が検出された位置を、検査位置設定部29が時間波形復元検査領域として自動的に設定するようにしてもよい。
【0099】
検査装置100は、ステップS16において設定された時間波形復元検査領域に関して、再びパルス光LP11を照射し、電磁波パルスLT1の復元および解析を行う(ステップS17)。電磁波パルスLT1の復元および解析については、
図9を参照しつつ説明する。
【0100】
図9は、時間波形復元部21によって復元された電磁波パルスLT1の時間波形40の一例を示す図である。
図9に示すグラフの横軸は、時間を示しており、縦軸は電界強度を示している。また、
図9における、時間波形40を示すグラフの下側には、遅延ステージ131aによって遅延されたために、検出器132に到達するタイミング(t1〜t8)が相互に異なる、複数のプローブ光LP12が概念的に示されている。
【0101】
太陽電池90に、パルス光LP11が照射されると、検出器132には、
図9に示すような時間波形40を示す電磁波パルスLT1が、パルス光LP11のパルス周期に一致する周期で繰り返し到来する。
【0102】
例えば、検出器132に対して、検出タイミングt1でプローブ光LP12が到達するように遅延ステージ131aが調整された場合、検出器132では、値E1の電界強度が検出される。また、遅延ステージ131aが調整されることによって、検出タイミングがt2〜t8にそれぞれ遅延されると、それぞれ値E2〜E8の電界強度が電磁波検出部13において検出されることとなる。このように、遅延ステージ131aが制御されることで検出タイミングが細かく変更されることによって、各検出タイミング(各位相)での電磁波パルスLT1の電界強度が測定される。そして、時間波形復元部21が、取得された電界強度値を時間軸に沿ってグラフ上にプロットしていくことによって、電磁波パルスLT1の時間波形40が復元される。
【0103】
時間波形40は、パルス光LP11の照射に応じた光励起キャリアの発生、移動、および、消滅の各過程の情報を含んでいる。すなわち、時間波形40を取得することによって、光励起キャリアのダイナミクスを解析することが可能となる。これによって、太陽電池90の欠陥(例えば、結晶の格子欠陥など)または不純物などをより詳細に解析することができる。
【0104】
また、上述のステップS13においては、試験的に時間波形が復元され、この時間波形に基づいて、検出タイミングが設定されてもよい。例えば、検査対象領域内の任意の位置において、パルス光LP11の照射に応じて放射される電磁波パルスLT1の時間波形を、
図9において説明した手法で復元することが考えられる。復元された時間波形から、電界強度が大きくなるタイミング(位相)を容易に把握できる。このため、S/N比が十分高くなるように検出タイミングを適切に設定できる。
【0105】
図10は、電磁波パルスLT1のスペクトル分布50の一例を示す図である。
図10中、縦軸はスペクトル強度を示し、横軸は周波数を示している。電磁波パルス解析部23が、時間領域を周波数空間に変換するフーリエ変換を実行することによって、
図9に示す時間波形40から、
図10に示すスペクトル分布50を取得してもよい。スペクトル分布50を取得することによって、検査対象領域における物性情報をさらに詳細に分析することが可能となる。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る検査装置100によると、電磁波強度のデータと、PL光強度のデータとを、同一の光源(フェムト秒レーザ121)から出射されたパルス光LP11を使って取得することができる。このため、それぞれのデータを取得するために個別に光源を用意せずに済む。したがって、装置のコスト増大、および、大型化を抑制できる。また、検査コストを抑えることができ、かつ、検査エリアの大スペースかを抑制できる。
【0107】
また、
図6に示す検査例1によると、同一のパルス光LP11で太陽電池90を一度走査することによって、電磁波強度のデータおよびPL光強度のデータを同時に収集することができる。したがって、効率的にデータ収集を行うことができる。ただし、検査対象領域をパルス光LP11で二度走査することによって、電磁波強度のデータおよびPL光強度のデータが別の走査で収集されるようにしてもよい。
【0108】
電磁波パルスLT1は、パルス光LP11の照射によって発生した光励起キャリアの移動、すなわち光電流の時間微分に比例して発生するものである。一方、PL光PL1は、パルス光LP11の照射によって発生した光励起キャリアである電子および正孔が、再結合することによって発生するものである。このように、発生原理が異なる2種の物理現象を計測することによって、検査装置100において、異なる角度から太陽電池90を検査できる。
【0109】
また、時間波形を復元する検査は、遅延ステージ131aの調整を伴うため、電磁波強度のデータの取得に比較的長い時間を要する。これに対して、検査例1では、電磁波強度分布およびPL光強度分布に基づいて、時間波形の復元を伴う検査の領域を限定するため、太陽電池90の検査を効率的に行うことが可能となっている。
【0110】
<1.2.2. 検査例2>
図11は、太陽電池90の検査例2を示す流れ図である。
図11に示す検査例2の流れにおいて、太陽電池90の設置(ステップS20)、逆バイアス電圧の印加(ステップS21)および検出タイミングの設定(ステップS22)は、
図6に示す検査例1のステップS11〜S13のそれぞれと同様であるため、説明を省略する。
【0111】
ステップS22の検出タイミングの設定が完了すると、検査装置100は、検査対象領域をパルス光LP11で走査した際、太陽電池90におけるパルス光LP11の照射部分にて発生したPL光PL1の強度データのみを検出する(ステップS23)。そして、ステップS23にて取得されたPL光強度データに基づいて、PL光強度分布画像がPL光強度分布画像生成部27によって生成され、該画像がモニター17に表示される(ステップS24)。
【0112】
次に、検査位置設定部29が、電磁波パルスLT1の電界強度を取得すべき領域の指定を受け付け、指定された領域を電磁波検査領域に設定する(ステップS25)。具体的には、オペレータが、モニター17に表示されたPL光強度分布画像を確認しつつ、電磁波検査領域を指定する操作入力を行う。これに基づき、検査位置設定部29が電磁波検査領域を設定する。
【0113】
なお、ステップS25における電磁波検査領域の設定は、自動で設定されるようにすることも考えられる。例えば、PL光強度が正常とされる基準値の範囲を予め定めておく。そして、検査対象領域のうち、当該基準値の範囲から外れたPL光強度が検出された位置が含まれるように、電磁波検査領域が自動的に設定する。この場合、検査位置設定部29は、PL光強度が予め定められた基準値を満たすか否かを判定する判定部として機能することとなる。
【0114】
電磁波検査領域が設定されると、検査装置100は、電磁波検査領域をパルス光LP11で走査し、放射された電磁波パルスLT1の電界強度を検出する(ステップS26)。PL光強度に異常がある領域は、欠陥候補領域または不純物含有領域と考えられる。このため、この領域を電磁波検査領域として引き続き検査することによって、より有益な情報を得ることができる。そして、収集された電磁波強度データに基づく電磁波強度分布画像が電磁波強度分布画像生成部25によって生成され、該画像がモニター17に表示される(ステップS27)。
【0115】
電磁波強度分布画像がモニター17に表示されると、検査位置設定部29が、時間波形復元分析領域指定を設定する(ステップS28)。そして、時間波形復元分析領域における時間波形の復元および解析が行われる(ステップS29)。このステップS28,S29は、
図6に示す検査例1のステップS16,S17のそれぞれと略同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0116】
信頼性の高い電磁波強度データを取得するためには、パルス光LP11を同じ箇所に所要回数繰り返し照射する必要がある。このため、一般的には、電磁波強度の取得は、PL光強度の取得よりも長い測定時間を要する。
図11に示す検査例2では、電磁波強度を取得する範囲(電磁波検査領域)が、先に取得した検査対象領域のPL光強度分布に基づいて絞り込まれる。このため、太陽電池90における検査対象領域の検査を効率的に行うことができる。
【0117】
なお、ステップS23の実行中(すなわち、PL光強度データ取得のための走査中)、ある地点にパルス光LP11を照射した際に、得られたPL光強度データが予め定められた基準値の範囲から外れている場合、当該地点での電磁波強度を直ちに取得するようにしてもよい。この場合、一度の走査で、検査対象領域のPL光強度データと、特定箇所の電磁波データとを取得することができるため、検査の効率化を図ることができる。
【0118】
また、
図11に示す検査例2では、検査対象領域におけるPL光強度データの収集が行われた後に、電磁波検査領域における電磁波強度データの収集が行われている。しかしながら、先に、検査対象領域についての電磁波強度データの収集が行われた後、検査対象領域よりも狭い領域において、PL光強度データの収集が行われてもよい。
【0119】
また、電磁波強度を取得する電磁波検査領域は、必ずしも、PL光強度を取得した領域(PL光検査領域)に含まれている必要はない。例えば、電磁波検査領域とPL光検査領域とが、互いの一部分のみ重複する、あるいは、全く重複しないように設定されてもよい。
【0120】
また、電磁波検査領域、PL光検査領域および電磁波復元検査領域は、検査を開始する前に、検査位置設定部29によって設定されるようにしてもよい。この場合、例えばオペレータが、CCDカメラで撮影された画像上で、各検査領域を指定できるようにすればよい。
【0121】
<2. 第2実施形態>
図12は、第2実施形態に係る検査装置100Aが備える照射部12Aおよび電磁波検出部13Aの概略構成図である。なお、以下の説明において、第1実施形態に係る検査装置100の構成要素と同様の機能を有する要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0122】
図12に示すように、検査装置100Aにおいては、ビームスプリッタB1によって分割されたパルス光LP11が、透明導電膜基板(ITO)19を透過して、太陽電池90の受光面91Sに対して垂直にパルス光LP11に入射する。そして、パルス光LP11の照射に応じて、太陽電池90から放射される電磁波パルスLT1のうち、受光面91S側に放射される電磁波パルスLT1が、透明導電性基板19を反射した後、レンズによって集光されて、検出器132に入射する。
【0123】
また、検査装置100Aにおいては、パルス光LP11の照射に応じて太陽電池90から放射されたPL光PL1が、透明導電性基板19を通過して、PL光検出部14に入射する。
図12に示すPL光検出部14の設置態様は一例であり、これに限定されるものではない。
【0124】
このような検査装置100Aによっても、第1実施形態に係る検査装置100と同様に、太陽電池90から放射される電磁波パルスLT1を検出することができる。また、太陽電池90に接続されたPL光検出部14によって、パルス光LP11の照射に応じて太陽電池90で発生するPL光PL1を検出できる。
【0125】
<3. 第3実施形態>
図13は、第3実施形態に係る検査装置100Bが備える照射部12Bおよび電磁波検出部13Bの概略構成図である。検査装置100Bにおいては、ビームスプリッタB1によって分割されたパルス光LP11が、太陽電池90の受光面91Sに対して垂直に入射する。そして、パルス光LP11の照射に応じて、太陽電池90から放射される電磁波パルスLT1のうち、太陽電池90の裏面側に放射される(すなわち透過する)電磁波パルスLT1が、放物面鏡M1,M2などを介して、検出器132に入射する。
【0126】
また、検査装置100Bにおいては、太陽電池90に入射するパルス光LP11と同軸の方向に放射されたPL光PL1が、PL光検出部14によって検出される。
図13に示すPL光検出部14の設置態様は一例であり、これに限定されるものではない。
【0127】
このような検査装置100Bによっても、太陽電池90から放射される電磁波パルスLT1を検出することができる。また、太陽電池90に接続されたPL光検出部14によって、パルス光LP11の照射に応じて太陽電池90で発生するPL光PL1を検出できる。
【0128】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせたることができる。