(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0024】
<1. 第1実施形態>
<1.1. 改質処理装置1の構成>
図1は、第1実施形態に係る改質処理装置1の概略構成図である。改質処理装置1は、半導体を含む半導体基板9における膜を改質する装置である。
【0025】
本願でいう半導体とは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)ならびにヒ化ガリウム(GaAs)等の化合物半導体、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)など、Siよりもバンドギャップが大きいワイドギャップ半導体を含む。本実施形態では、半導体基板9にSiCショットキーバリアダイオードが形成された、あるいは、形成されるものとして説明する。
【0026】
図2は、半導体基板9に形成されるSiCショットキーバリアダイオード91を示す概略断面図である。
図3は、SiCショットキーバリアダイオード91を示す概略平面図である。SiCショットキーバリアダイオード91は、低抵抗のn型不純物、例えばN(窒素)やP(リン)などを含むn型の半導体基板92の上に、耐圧を保持するための耐圧層としてn型のSiCのドリフト層93がエピタキシャル成長層として配設されている。
【0027】
ドリフト層93の上層部には、p型不純物、例えばB(ホウ酸)やAl(アルミニウム)などをドーピングすることによって、p型領域94が形成されている。p型領域94は、ドリフト層93の上方からp型不純物をイオン注入された後、活性化のための熱処理(アニール処理)工程が行われることによって形成される。改質処理装置1は、上述したp型領域94を形成するためのアニール処理を実行可能に構成されている。
【0028】
ドリフト層93の上方には、アノード電極95が配設されている。また、半導体基板92の下方には、カソード電極96が配設されている。アノード電極95は、ドリフト層93に対してショットキー電極となっている。p型領域94は、アノード電極95の周端部の位置に設けられており、アノード電極95の周端部付近で電界が集中することを防ぐ目的で設けられるガードリング領域である。ドリフト層93の表面部における、p型領域94が形成されない領域は、ショットキーバリアダイオードとして機能する。
【0029】
図1に戻って、改質処理装置1は、ステージ11、光照射部12、電磁波検出部13、フォトルミネッセンス光(以下、「PL光」と表記する。)検出部14、ステージ移動機構15、制御部16、モニター17および操作入力部18を備えている。
【0030】
ステージ11は、所要の固定手段によって、半導体基板9を該ステージ11の上に保持する。固定手段としては、半導体基板9を挟持する挟持具を利用するもの、半導体基板9を貼り付けて固定する粘着性シート、または、半導体基板9を吸着固定する吸着孔などが想定される。もちろん、半導体基板9が固定可能であれば、これら以外の固定手段が採用されてもよい。
【0031】
図4は、第1実施形態に係る光照射部12および電磁波検出部13の概略構成図である。光照射部12は、パルスレーザ121を備えている。パルスレーザ121は、好ましくはパルス幅が1フェムト秒〜10ピコ秒のレーザ光(パルス光LP1)を出射する。
【0032】
パルスレーザ121から出射されたパルス光LP1は、ビームスプリッタB1により2つに分割される。分割された一方のパルス光(パルス光LP11)は、レンズなどの光学系を介して、半導体基板9に照射される。これによって、アニール処理が行われる。
【0033】
図1または
図4に示す例では、パルス光LP11の光軸が半導体基板9の主面に対して斜めに入射するように、該パルス光LP11が半導体基板9に対して照射されている。より詳細には、入射角度が45度となるように照射角度が設定されている。ただし、パルス光LP11の入射角度はこのような角度に限定されるものではなく、0度から90度の範囲内で適宜変更することができる。また、パルス光LP11は、必ずしも半導体基板9の表面に照射する必要はなく、半導体基板9の側面または裏面に照射してもよい。
【0034】
図2または
図3に示すように、アニール処理を目的として、p型領域94にSiCショットキーバリアダイオード91の表面にパルス光LP11が照射されると、電磁波パルスLT1が発生する。SiCショットキーバリアダイオード91のp型領域94の部分にパルス光LP11が照射されることによって、光キャリア(自由電子、正孔)が発生すると、pn接合部の空乏層やショットキー接合などに存在する内部電界によって加速され、瞬間的に光電流の発生および消滅が起こる。マクスウェルの方程式によると、電流に変化が生じたとき、その電流の時間微分に比例した強度の電磁波が発生する。p型領域94から発生する電磁波パルスLT1は、ミリ波(30GHz〜300GHz)またはテラヘルツ波(0.1THz〜30THz)を含む。発生した電磁波パルスLT1は、後に詳述する電磁波検出部13によって検出される。
【0035】
ビームスプリッタB1によって分割された他方のパルス光は、検出用パルス光LP12として、遅延部131およびミラーなどを経由して、検出器132に入射する。また、パルス光LP11の照射に応じて発生した電磁波パルスLT1は、放物面鏡(図示せず。)において集光されてミラーなどを経由して検出器132に入射する。
【0036】
検出器132は、電磁波検出素子として、例えば、光伝導スイッチを備えている。仮に、電磁波パルスLT1が検出器132に入射する瞬間に、検出用パルス光LP12が検出器132に入射したとする。すると、この光伝導スイッチに瞬間的に電磁波パルスLT1の電界強度に応じた電流が発生する。この電界強度に応じた電流は、I/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このように、電磁波検出部13は、検出用パルス光LP12の照射に応じて、半導体基板9で発生した電磁波パルスLT1の電界強度を検出する。なお、検出器132に、その他の素子、例えば非線形光学結晶を適用したものを採用してもよい。
【0037】
遅延部131は、遅延ステージ131aおよび遅延ステージ移動機構131bを備えている。遅延部131は、ビームスプリッタB1から検出器132までの検出用パルス光LP12の到達時間を連続的に変更するための光学素子である。遅延ステージ131aは、遅延ステージ移動機構131bによって、検出用パルス光LP12の入射方向に沿って直線移動する。また、遅延ステージ131aは、検出用パルス光LP12を入射方向に折り返させる折り返しミラー10Mを備えている。
【0038】
より詳細には、遅延ステージ131aは、制御部16の制御に基づいて遅延ステージ移動機構131bを駆動する。すると、遅延ステージ131aが検出用パルス光LP12の入射方向に沿って直線移動し、折り返しミラー10Mもこれに伴って直線移動することとなる。これによって、検出用パルス光LP12の光路長が精密に変更される。
【0039】
遅延ステージ131aは、電磁波パルスLT1が電磁波検出部13(検出器132)に到達する時間と、検出用パルス光LP12が電磁波検出部13(検出器132)へ到達する時間との時間差を変更する。したがって、遅延ステージ131aで検出用パルス光LP12の光路長を変化させることによって、電磁波検出部13(検出器132)において電磁波パルスLT1の電界強度を検出するタイミング(検出タイミングまたはサンプリングタイミング、位相)を遅延させることができる。
【0040】
なお、その他の態様で検出用パルス光LP12の検出器132への到達時間を変更することも考えられる。具体的には、電気光学効果を利用すればよい。すなわち、印加する電圧を変化させることで屈折率が変化する電気光学素子を、遅延素子として用いてもよい。具体的には、特開2009−175127号公報に開示されている電気光学素子を利用することができる。
【0041】
また、パルス光LP11の光路長、もしくは、半導体基板9から放射された電磁波パルスLT1の光路長を変更する遅延部を設けてもよい。この場合においても、検出器132に電磁波パルスLT1が到達する時間を、検出器132に検出用パルス光LP12が到達する時間に対して、相対的にずらすことができる。これによって、検出器132における電磁波パルスLT1の電界強度の検出タイミングを遅延させることができる。
【0042】
PL光検出部14は、分光器141および光検出器143を備えている。光検出器143は、フォトダイオードで構成される。パルス光LP11の照射によって、SiCショットキーバリアダイオード91にて発生した光キャリアが再結合すると、PL光PL1が発生する。PL光検出部14は、発生した該PL光PL1を検出する。
【0043】
図5は、半導体基板9のバンド構造を示す模式図である。
図5に示すように、アニール処理を行う際には、半導体基板9を構成する半導体(ここでは、SiC)のエネルギーギャップである基底準位から励起準位を超えるエネルギーE1のパルス光LP11が照射される。これによって、励起された光キャリアが基底準位に遷移する際に、熱およびPL光PL1が発生する。このうち、発生した熱によって、p型領域94のアニール処理されることとなる。
【0044】
バンドギャップエネルギーEgと、光の波長λ(nm)の関係式は、「λ=hc/Eg」である。例えば、4H−SiCのバンドギャップは、3.26eVである。この半導体に吸収される波長は、380nm未満となる。
【0045】
なお、
図5中右側に示すように、不純物や欠陥によるトラップ準位を利用することによって、禁制帯を超えるエネルギーE1よりも小さいエネルギーE2である波長のパルス光LP11を用いて、アニール処理を行うことも可能である。つまり、光のエネルギーが熱に変化されればよく、改質のためのパルス光LP11は、必ずしもバンドギャップ以上のエネルギーの波長でなくてよい。
【0046】
また、発生する熱量は、パルス光LP1の強度(光子数)に依存する。そこで、照射するパルス光LP1の強度を落とすことによって、アニールが進行しないようにしつつ、かつ、電磁波パルスLT1およびPL光を発生させることができる。これによって、処理半導体基板9の膜の改質状況などを、電磁波パルスLT1またはPL光PL1に基づいて検査することが可能である。
【0047】
図1に戻って、ステージ移動機構15は、ステージ11を二次元平面内で移動させるX−Yテーブルを備えている。ステージ移動機構15は、このX−Yテーブルを駆動することによって、ステージ11に保持された半導体基板9を、光照射部12に対して相対的に移動させる。つまり改質処理装置1は、ステージ移動機構15を備えることによって、半導体基板9を2次元平面内で任意の位置に移動させることができる。これによって、例えば半導体基板9におけるアニール処理が必要な領域(アニール処理対象領域)をパルス光LP11で走査できる。また、ステージ移動機構15の駆動源を省略し、ステージ11を人手で移動させるようにしてもよい。
【0048】
ステージ移動機構15は、走査機構の一例である。例えば、半導体基板9を移動させる代わりに、もしくは、半導体基板9を移動させると共に、光照射部12を2次元平面内で移動させる移動手段を設けてもよい。いずれの場合においても、半導体基板9におけるアニール処理対象領域にパルス光LP11を照射できる。また、パルス光LP11の光路を変更することによって、検査対象領域をパルス光LP11で走査することも考えられる。具体的には、ガルバノミラーを設けて、半導体基板9の表面に平行であって、かつ、互いに直交する二方向に、パルス光LP11を走査することが考えられる。また、ガルバノミラーの代わりに、ポリゴンミラー、ピエゾミラーまたは音響光学素子などを用いることも考えられる。
【0049】
制御部16は、CPU、ROM、RAMおよび補助記憶部(例えばハードディスク)などを備えた一般的なコンピュータとしての構成を備えている。制御部16は、光照射部12のパルスレーザ121、電磁波検出部13の遅延ステージ131aおよび検出器132、PL光検出部14、並びにステージ移動機構15に接続されており、これらの動作を制御したり、これらからデータを受け取ったりする。
【0050】
より具体的には、制御部16は、例えば検出器132から電磁波パルスLT1の電界強度に関するデータを受け取る。また、制御部16は、遅延ステージ131aを移動させる遅延ステージ移動機構131bを制御する。さらに制御部16は、該遅延ステージ131aに設けられたリニアスケールなどから、折り返しミラー10Mの移動距離などの遅延ステージ131aの位置に関連するデータを受け取る。
【0051】
また、制御部16は、画像生成部21、時間波形復元部22、スペクトル解析部23、分光器データ解析部24、改質判定部25、照射制御部26および照射領域特定部27を備えている。これらは、制御部16が備えるCPUがプログラムにしたがって動作することにより実現される機能であってもよいし、専用回路によってハードウェア的に構成されていてもよい。
【0052】
画像生成部21は、半導体基板9から発生した電磁波パルスLT1の電界強度の分布を視覚化した、電界強度分布画像を生成する。この電界強度分布画像では、電界強度の相違が、異なる色、色の濃淡または異なる模様などで視覚的に表現される。
【0053】
時間波形復元部22は、電磁波検出部13(検出器132)にて検出される電磁波パルスLT1の電界強度に基づき、電磁波パルスLT1の時間波形を復元する。具体的には、時間波形復元部22は、遅延ステージ131aの折り返しミラー10Mを移動させることで、検出用パルス光LP12の光路長(第1光路の光路長)を変更し、検出用パルス光LP12が検出器132に到達する時間を変更する。これによって、検出器132において電磁波パルスLT1の電界強度を検出するタイミング(位相)が変更される。時間波形復元部22は、電磁波パルスLT1の電界強度を、位相毎に検出する。検出された電界強度を、時間軸に沿ってプロットしていく。これによって、時間波形復元部22は、電磁波パルスLT1の時間波形を復元する。
【0054】
スペクトル解析部23は、復元された電磁波パルスLT1のスペクトル分析を行う。詳細には、スペクトル解析部23は、時間波形復元部22によって復元された時間波形をフーリエ変換することによって、周波数毎の振幅強度スペクトルを取得する。
【0055】
図6は、電磁波パルスLT1の時間波形41の一例を示す図である。また、
図7は、電磁波パルスLT1のスペクトル分布51の一例を示す図である。
図6に示すような時間波形41をフーリエ変換することによって、
図7に示すスペクトル分布51が得られる。例えば、アニール処理前と、アニール処理後の半導体基板9のそれぞれについて、半導体基板9から発生した電磁波パルスLT1のスペクトル分布を解析すれば、アニール処理による改質状況が反映された電磁波パルスLT1の電界強度変化をより詳細に解析できる。
【0056】
分光器データ解析部24は、PL光検出部14によって検出したPL光PL1を解析する。具体的には、PL光検出部14において検出されたPL光PL1の波長毎の強度(波長プロファイル)を取得する。PL光PL1の波長プロファイルを取得することによって、アニール処理による改質状況を解析できる。また、アニール処理が進行すると、発生するPL光PL1の強度または波長が変化する。このため、PL光PL1の強度または波長を監視することによって、膜の改質状況を適切に把握できる。
【0057】
改質判定部25は、検出器132によって検出される電磁波パルスLT1の強度に基づき、半導体基板9の膜の改質、すなわち、アニール処理が完了したか否かを判定する。
【0058】
アニール処理によって、膜が改質されると、発生する電磁波パルスLT1およびPL光PL1の強度が変化する。例えば、p型領域94の改質は、p−n接合部またはp−金属接合部の特性を変化させる。これによって、発生する電磁波パルスLT1の強度が変化することとなる。すなわち、アニール処理を実行しながら、電磁波パルスLT1の強度を監視することによって、改質状況を適切に把握することができる。
【0059】
電磁波検出部13を備えることによって、パルス光LP11の照射による膜の改質状況を監視することができる。このため、電磁波検出部13は、改質モニター装置と捉えることもできる。電磁波検出部13のほか、改質判定部25、PL光検出部14、分光器データ解析部24なども含めて、改質モニター装置としてもよい。
【0060】
本実施形態では、改質判定部25は、アニール処理中において、半導体基板9から発生する電磁波パルスLT1の強度に基づき、アニール処理が完了したか否かを判定する。この判定方法としては、アニール処理が完了したとされる電磁波パルスLT1の強度の閾値を予め定めておき、当該閾値と検出される電磁波パルスLT1の強度とを比較することが考えられる。
【0061】
また、改質判定部25は、前記PL検出部によって検出されるPL光PL1に基づいて、前記半導体基板の改質を判定する。より詳細には、改質判定部25は、アニール処理中に、分光器データ解析部24によって取得されたPL光PL1の強度または波長を監視し、該PL光PL1の強度または波長が、改質後のものに変化した場合に、アニール処理が完了したと判定することが考えられる。
【0062】
照射制御部26は、改質判定部25の判定結果に基づいて、半導体基板9に対するパルス光LP11の照射を制御する。具体的には、例えばパルス光LP11が照射している部分についてのアニール処理が完了したと改質判定部25によって判定された場合、その部分へのパルス光LP11の照射を停止させる。パルス光LP11の照射を停止させる態様としては、パルス光LP1またはパルス光LP11の光路上で遮光するなどして、光照射部12からの光の出射を停止させることが考えられる。また、半導体基板9を移動させることによって、パルス光LP11の照射位置を他の位置に変更したりすることも考えられる。このように、改質判定部25の判定結果に基づき、パルス光LP11の照射を停止させることによって、アニール処理を好適なタイミングで終えることができる。
【0063】
なお、照射制御部26は、パルス光LP11の照射を完全に停止させず、例えば、単位面積あたりの光量を増減させるように制御することも考えられる。具体的には、電磁波パルスLT1の強度が既定の閾値よりも強いまたは弱い場合、照射制御部26がパルス光LP11の単位面積あたりの光量を増加または低下させるように光照射部12を制御してもよい。
【0064】
また、照射制御部26は、PL光PL1の強度または波長に基づいて、パルス光LP11の照射を停止させたり、単位面積あたりの光量を増減させるように光照射部12を制御してもよい。
【0065】
照射領域特定部27は、改質するべき膜の領域を特定する。より具体的には、半導体基板9のアニール処理を行う場合、回路図から配線部であるアノード電極95の半導体基板9における位置を特定する。そして、そのアノード電極95の周囲の部分を、p型領域94を形成するためにパルス光LP11を照射する照射領域として特定する。照射制御部26は、照射領域特定部27によって特定された照射領域に対して、パルス光LP11の照射を行う。
【0066】
<1.2. 改質処理の説明>
図8は、第1実施形態に係る改質処理装置1による改質処理を説明するための流れ図である。なお、特に断らない限り、改質処理装置1の各動作は、制御部16の制御下で行われる。
【0067】
まず、半導体基板9を準備する工程が実行される(ステップS1)。この工程では、半導体基板9がステージ11上に搬送され、ステージ11に保持される。そして、適宜アライメントが行われる。
【0068】
半導体基板9の準備が完了すると、パルス光LP11を照射する照射領域が特定される(ステップS2)。詳細には、CADデータなどが示す回路図から、配線部の位置を特定することによって、p型領域94を形成する位置を特定する。この特定された位置が、照射領域とされる。
【0069】
照射領域の特定が完了すると、アニール処理が行われる(ステップS3)。詳細には、特定された照射領域がパルス光LP11の照射位置にくるように、半導体基板9が移動する。そして、パルス光LP11が照射されることによって、アニール処理が行われる。そして、このアニール処理が行われている最中、パルス光LP11の照射によって半導体基板9から発生する電磁波パルスLT1の検出、および、PL光PL1の検出が行われる。
【0070】
上述したように、パルス光LP11の照射は、照射制御部26の制御に基づいて行われる。具体的には、ある特定箇所についてのアニール処理が進行すると、電磁波パルスLT1の強度、および、PL光PL1の強度または波長プロファイルに基づき、改質判定部25が改質したか否か判定する。完了したと判定されると、照射制御部26は、パルス光LP11の照射位置を変更したり、光照射部12からの光の出射を停止したりすることによって、パルス光LP11の照射を停止させる。このようにして、アニール処理が行われる。
【0071】
アニール処理が完了すると、改質処理装置1は、半導体基板9を検査するために、パルス光LP11で走査する(ステップS4)。このステップS4において、走査する範囲は任意に定められるが、例えば、ステップS3においてアニール処理をパルス光LP11で、ステップS3においてアニール処理を行った領域について走査する。そして、発生する電磁波パルスLT1の強度情報を収集する。
【0072】
なお、電磁波パルス強度情報を収集する際、遅延ステージ131aを固定し、ある1つの検出タイミング(位相)の電磁波パルスLT1の強度を検出するようにしてもよい。また、複数の検出タイミングで電磁波パルスLT1の強度を検出するようにしてもよい。複数の検出タイミングで検出する場合、同一の領域を複数回走査することとし、各走査で検出タイミングを異ならせればよい。あるいは、領域を1回走査する際に、該領域内の各地点で、遅延ステージ131aを複数の既定位置に移動させて、パルス光LP11を照射することによって、複数検出タイミングでの電磁波パルスLT1を測定するようにしてもよい。
【0073】
ステップS4の走査が完了すると、改質処理装置1は、画像の生成および表示を行う(ステップS5)。具体的には、ステップS4において収集された電磁波強度データに基づき、画像生成部21が、電磁波強度分布画像を生成する。そして、該生成された画像が、モニター17に表示される。
【0074】
ステップS4およびステップS5のように、電磁波強度分布画像を生成、表示することによって、アニール処理後の半導体基板9の各種欠陥(不純物含有、クラック、電極形成不良など)を検査できる。なお、ステップS4,S5は、省略することも可能である。また、半導体基板9における、アニール処理を行った領域以外の領域を、ステップS4,S5において検査するようにしてもよい。
【0075】
また、アニール処理の前、最中、または後の適宜のタイミングで、電磁波パルスLT1の時間波形(
図6参照)の復元が行われてもよい。さらに、復元された時間波形をフーリエ変換することによって、電磁波パルスLT1の周波数分析が行われてもよい。
【0076】
以上のように、改質処理装置1においては、アニール処理を行いながら、電磁波パルスLT1が検出される。電磁波パルスLT1を検出することによって、光キャリアの生成、再結合、移動、または、伝導膜の電気伝導度の変化を定量的に計測できる。したがって、これらのパラメータを監視することによって、アニール処理による半導体基板9の改質状況を適切に監視することができる。
【0077】
また、改質処理装置1においては、アニール処理を行いながら、PL光PL1も検出する。PL光PL1は、励起した電子が正孔と再結合した際に発せられる光である。すなわち、PL光PL1を計測することによって、バンド間再結合またはバンド・トラップ準位間の再結合、トラップ準位間の再結合など、半導体基板9の特性を定量的に解析できる。したがって、アニール処理による半導体基板9の改質状況を適切に把握できる。
【0078】
以上のように、改質処理装置1によって、電磁波パルスLT1の強度、PL光PL1の強度または波長を監視できる。これによって、膜の改質状況を検査できるため、アニール処理を好適な条件で行うことができる。また、改質処理装置1では、非接触で改質状況を検査できるため、検査のために半導体基板9を外部に搬出しなくてもよい。したがって、半導体基板9が損傷するおそれが低減されるため、手軽に改質状況を検査できる。
【0079】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号またはアルファベットを追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0080】
図9は、第2実施形態に係る改質処理装置1Aを示す概略構成図である。改質処理装置1Aにおいては、パルス光LP11が、放物面鏡M1に形成された孔を通過して、半導体基板9の主面に対して垂直に入射する。これによって、p型領域94を形成するためのアニール処理が局所的に行われる。パルス光LP11の照射に応じて発生した電磁波パルスLT1であって、パルス光LP11が照射される主面側に出射した電磁波パルスLT1は、放物面鏡M1,M2によって集光され、検出器132にて検出される。また、パルス光LP11の照射に応じて発生したPL光PL1のうち、パルス光LP11の光軸と同軸となる方向に放射されるPL光PL1が、放物面鏡M1の孔を通過し、ハーフミラーM3を反射して、分光器141に入射し、光検出器143にて検出される。
【0081】
このような改質処理装置1Aよっても、第1実施形態に係る改質処理装置1と同様、アニール処理の際に、電磁波パルスLT1の強度、PL光PL1の強度または波長を取得できる。これによって、膜の改質状況を検査できるため、アニール処理を好適な条件で行うことができる。また、改質処理装置1Aでは、非接触で改質状況を検査できるため、半導体基板9を外部に搬出しなくてもよい。したがって、半導体基板9が損傷するおそれが低減されるため、手軽に改質状況を検査できる。
【0082】
<3. 第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係る改質処理装置1Bを示す概略構成図である。改質処理装置1Bにおいては、パルス光LP11が、半導体基板9の主面に対して垂直に入射する。これによって、p型領域94を形成するためのアニール処理が、局所的に行われる。パルス光LP11の照射に応じて発生した電磁波パルスLT1のうち、半導体基板9の裏面側に透過する電磁波パルスLT1が、放物面鏡M4,M5によって集光され、検出器132にて検出される。また、パルス光LP11の照射に応じて発生したPL光PL1のうち、パルス光LP11の光軸と同軸となる方向に放射されるPL光PL1が、ハーフミラーM3を反射し、分光器141に入射し、光検出器143によって検出される。
【0083】
このような改質処理装置1Bによっても、第1実施形態に係る改質処理装置1と同様、アニール処理の際に、電磁波パルスLT1の強度、PL光PL1の強度または波長を監視できる。これによって、膜の改質状況を検査できるため、アニール処理を好適な条件で行うことができる。また、改質処理装置1Bでは、非接触で改質状況を検査できるため、半導体基板9を外部に搬出しなくてもよい。したがって、半導体基板9が損傷するおそれが低減されるため、手軽に改質状況を検査できる。
【0084】
<4. 変形例>
改質処理装置1では、アニール処理を行うため、光照射部12が半導体基板9にパルス光LP11を照射する。しかしながら、光照射部12が他の種類の光を照射するようにしてもよい。
【0085】
例えば、光照射部12がフラッシュランプアニールを行うように構成されていてもよい。この場合、光照射部12が、半導体基板9に対して、フラッシュ閃光を照射するとともに、パルス光LP11を別途照射する。これによって、アニール処理を行いながら、電磁波パルスLT1およびPL光PL1を発生させることができる。
【0086】
また、パルスレーザ121の代わりに、発振周波数がわずかに相違する2つの連続光を出射する2つの光源を利用して、電磁波を発生させることも可能である(特開2013−170864号公報)。具体的には、2つの連続光を、光導波路である光ファイバなどで形成されたカプラによって重ね合わせることで、差周波に対応する光ビート信号を生成する。そして、この光ビート信号を、半導体基板9に照射することによって、その光ビート信号の周波数に応じた電磁波を放射させることができる。
【0087】
また、改質処理装置1が、ラマン散乱光を検出するための分光器および光検出器を備えていてもよい。ラマン散乱光は、半導体基板9の分子状態の様々な情報が含まれる。このため、アニール処理による改質状況を、ラマン散乱光を解析することによって検査することができる。
【0088】
本実施形態では、半導体基板9における膜を改質する処理として、半導体製造分野におけるアニール処理を説明した。しかしながら、膜を改質する処理は、アニール処理に限定されるものではなく、他の処理も含まれる。例えば、表面にアブレーションによる凹凸構造を形成する表面処理、アモルファスを結晶化する処理なども改質処理の一種である。
【0089】
また、改質処理装置1は、他の種類の半導体デバイスまたは半導体ウェハを半導体基板とすることも可能である。また、電極が形成されていない半導体基板を処理することもできる。
【0090】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。