【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 シグマテクノロジー有限会社ウェブサイトのプリントアウト 株式会社P.D.C.Aウェブサイトのプリントアウト
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業「微細構造解析プラットフォーム」に係る委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
Microstructures and Structural Properties of Sol-Gel Silica Foams,Journal Physical Chemistry B,米国,American Chemical Society,2005年10月11日,Vol. 109,pp. 22799-22807,doi:10.1021/jp053089+
【文献】
Supercritical and Near-critical Carbon Dioxide Assisted Low-Temperature Bubble Drying,Industrial & Engineering Chemistry Research,米国,American Chemical Society,2000年 4月12日,Vol. 39,pp. 4831-4836,doi: 10.1021/ie000190m
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体に含まれ、10μm未満の粒子径を有する超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を得るための測定方法であって、前記液体を非晶質の固相状態にし、前記非晶質の固相状態にある液体に含まれる超微細バブルを透過型電子顕微鏡を用いて観察することを特徴とする超微細バブルの測定方法。
マイクログリッド又はマイクロメッシュに保持された前記液体を、冷媒によって急速凍結して非晶質の固相状態にすることを特徴とする請求項1に記載の超微細バブルの測定方法。
前記非晶質の固相状態にした液体を透過型電子顕微鏡を用いて観察するときの透過型電子顕微鏡のエネルギーが10〜300キロエレクトロンボルト(keV)の範囲に含まれる何れかであり、観察のときに用いる電子線の数が1〜105電子/Å2の範囲に含まれる何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の超微細バブルの測定方法。
請求項1乃至4の何れかに記載の超微細バブルの測定方法は、さらに、前記透過型電子顕微鏡を用いて観察された画像を画像処理することによって前記マイクロ・ナノバブルの粒径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を取得することを特徴とする超微細バブルの測定方法。
液体に含まれ、10μm以下の粒子径を有する微小バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を得るための測定装置であって、前記液体を非晶質の固相状態にする手段と、前記非晶質の固相状態にある液体に含まれる超微細バブルを透過型電子顕微鏡を用いて直接観察する手段とを有する超微細バブルの測定装置。
前記液体を非晶質の固相状態にする手段が、前記液体をマイクログリッド又はマイクロメッシュに保持した後、冷媒によって急速凍結して非晶質の固相状態にする手段であることを特徴とする請求項7に記載の超微細バブルの測定方法。
請求項7乃至10の何れかに記載の超微細バブルの測定装置は、さらに、前記透過型電子顕微鏡を用いて観察された画像を画像処理する手段を有し、該画像処理手段によって前記マイクロ・ナノバブルの粒径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を取得することを特徴とする超微細バブルの測定装置。
前記画像処理する手段が、電子線トモグラフィー法によって前記マイクロ・ナノバブルの3次元再構成を行う機能を有することを特徴とする請求項11に記載の超微細バブルの測定装置。
【背景技術】
【0002】
マイクロ・ナノバブルは、非特許文献1に記載されているように、(a)気泡系が小さいこと、(b)上昇速度が遅いこと、(c)摩擦抵抗を低減すること、(d))気泡内圧力が高いこと、(e)気液界面が大きいこと、(f)ガスの溶解量が大きいこと、(g)溶解、収縮を伴うことと、及び(h)気泡表面が負に帯電していること、等の様々な特徴を有するため、これらの特徴を利用した食品、化粧品、薬品、半導体洗浄、植物育成等の幅広い分野への応用が期待されている。マイクロ・ナノバブルは、粒子径が小さくなるほど浮力が粘性力に比べて非常に小さくなるため、上面に浮上しないで液体中に超微細バブルのままで長期間存在できること、また、バブルの球径が非常に小さくなり、ナノバブルを含む液体は目視では確認できず無色透明になることが知られている。
【0003】
前記のような特徴を有するマイクロ・ナノバブルを発生するには、液を流動化させることにより気体を同伴させる方法と、液は静止した状態で気体を吹き込む方法とに大別される。具体的には、前記非特許文献1に記載されているように、旋回液流式、スタティックミキサー式、ベンチェリー式、加圧溶解式、細孔式などによる各種のマイクロ・ナノバブル発生方法が提案されている。それ以外にも、例えば、特許文献1には、高圧送液により気液混合液を加圧し、水撃法で効率的に、且つ、大量のマイクロ・ナノバブルを生成する方法及びその装置が提案されている。
【0004】
マイクロ・ナノバブルの粒子径・個数を測定する方法としては、例えば、デジタルマイクロスコープ、CCDカメラ等の撮像デバイスを用いる可視化法が簡便な測定法として知られているが、測定可能な気泡径は1μm程度である。また、可視化法は数μm程度の気泡径を測定する場合は測定誤差がやや大きくなるという問題がある。したがって、10μm未満の小さい気泡径の測定方法の確立が強く求められていたが、最近になってナノバブル計測が可能となってきた。
【0005】
ナノバブル計測法としては、例えば、ミー散乱光を利用する光散乱法、レーザ回折・散乱法、液中のバブル粒子のブラウン運動を観測するナノ粒子トラッキング解析法、細孔電気抵抗法(コール・カウンター法)、動的光散乱法、MEMS(Micro Electro−Mechanical Systems)の梁を利用する共振式質量測定法等が提案されている。これらの方法以外にも、特許文献2にはゼータ電位測定によるナノバブルの粒子径を求める方法が提案されている。また、特許文献3には、スピントラップ剤を用いて電子スポン共鳴法(ESR)によるナノバブルの存在を確認する方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マイクロ・ナノバブルは、現在のところ安定的に生成できる粒子径が100nm程度であるが、今後、その粒子径以下の微細バブルの発生方法及びその発生装置の開発が進められている。100nm以下のナノバブル、さらにはピコバブルは、従来にない新しい機能及び作用が考えられ、様々な応用展開が期待できるためである。この動きを加速するには、それら超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報をより簡便に、且つ高精度で得ることができ、しかも、超微細バブルを直接観測することによってそれらの情報をイメージ的にとらえることができる測定方法及びその装置の確立が強く求められている。
【0009】
ナノオーダー以下のバブルを含む液は透明となるため、上記で述べたようなナノバブル測定方法によって測定が行われている。しかしながら、上記のナノバブル測定方法は、可視化法とは異なり、目視で観測した情報から粒子径を解析して測定できる方法ではない。ナノ粒子トラッキング解析法は液中のバブル粒子のブラウン運動による散乱光を光学的に観測するもので、あくまでバブル粒子の動的な動きを解析して粒子径を測定するものであり、個々のバブル粒子を静的に観測できる方法ではない。それ以外のミー散乱光を利用する光散乱法、レーザ回折・散乱法、細孔電気抵抗法(コール・カウンター法)、動的光散乱法、MEMSの梁を利用する共振式質量測定法、ゼータ電位測定法及び電子スポン共鳴法(ESR)も間接的にバブル粒子径及びその分布を測定しているにすぎない。今後、ナノオーダー以下の微細バブルの応用展開を進めていくには、これらの微細バブルが液中でどのような粒子径で、且つ、どのように分布しているかを直観的にイメージできるバブル測定方法が不可欠である。
【0010】
さらに、上記のナノバブル測定方法では、MEMSの梁を利用する共振式質量測定法を除いて、液中に含まれるナノ粒子が気泡によるバブルであるのか、或いは液中に混入した不純物であるのかを区別して測定することができない。MEMSの梁を利用する共振式質量測定法は、粒子が流体チャンネルを通るときに変化するカンチレバーの共振周波数において、気泡と不純物等の内実粒子との共振周波数に違いによってナノ粒子が気泡であるか否かを判別できる測定方法である。しかしながら、前記共振式質量測定法は、高精度の測定結果を得るために高度の熟練と知識が求められる。加えて、液中に分布するナノバブル粒子及びその分布を直接的に観測できる方法ではない。
【0011】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、水等の液体に含まれる超微細バブル、具体的には10μm未満の直径を有する超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を、簡便に、且つ高精度で得ることができ、しかも、超微細バブルを直接観測することによってそれらの情報をイメージ的にとらえることができる超微細バブルの測定方法及びその測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、10μm未満の粒子径を有する超微細バブルが含まれる液体を非晶質の固相状態にし、前記非晶質の固相状態にある液体に含まれる超微細バブルを透過型電子顕微鏡を用いて直接観察することによって、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0013】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、液体に含まれ、10μm未満の粒子径を有する超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を得るための測定方法であって、前記液体を非晶質の固相状態にし、前記非晶質の固相状態にある液体に含まれる超微細バブルを透過型電子顕微鏡を用いて観察することを特徴とする超微細バブルの測定方法を提供する。
[2]本発明は、マイクログリッド又はマイクロメッシュに保持された前記液体を、冷媒によって急速凍結して非晶質の固相状態にすることを特徴とする前記[1]に記載の超微細バブルの測定方法を提供する。
[3]本発明は、前記非晶質の固相状態にした液体を透過型電子顕微鏡を用いて観察するときの透過型電子顕微鏡のエネルギーが10〜300キロエレクトロンボルト(keV)の範囲に含まれる何れかであり、観察のときに用いる電子線の数が1〜10
5電子/Å
2の範囲に含まれる何れかであることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の超微細バブルの測定方法を提供する。
[4]本発明は、前記観察に用いる電子線の数が10〜200電子/Å
2の範囲に含まれる何れかであることを特徴とする前記[3]に記載の超微細バブルの測定方法を提供する。
[5]本発明は、前記[1]乃至[4]の何れかに記載の超微細バブルの測定方法が、さらに、前記透過型電子顕微鏡を用いて観察された画像を画像処理することによって前記マイクロ・ナノバブルの粒径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を取得することを特徴とする超微細バブルの測定方法を提供する。
[6]本発明は、前記画像処理が、電子線トモグラフィー法による解析機能を有することを特徴とする前記[5]に記載の超微細バブルの測定方法を提供する。
[7]本発明は、液体に含まれ、10μm以下の粒子径を有する微小バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を得るための測定装置であって、前記液体を非晶質の固相状態にする手段と、前記非晶質の固相状態にある液体に含まれる超微細バブル透過型電子顕微鏡を用いて直接観察する手段とを有する超微細バブルの測定装置を提供する。
[8]本発明は、前記液体を非晶質の固相状態にする手段が、前記液体をマイクログリッド又はマイクロメッシュに保持した後、冷媒によって急速凍結して非晶質の固相状態にする手段であることを特徴とする前記[7]に記載の超微細バブルの測定方法を提供する。
[9]本発明は、前記透過型電子顕微鏡において、エネルギーが10〜300キロエレクトロンボルト(keV)の範囲に含まれる何れかであり、観察のときに用いる電子線の数が1〜10
5電子/
Å2の範囲に含まれる何れかであることを特徴とする前記[7]又は[8]に記載の超微細バブルの測定装置を提供する。
[10]本発明は、前記透過型電子顕微鏡において、観察のときに用いる電子線の数が10〜200電子/
Å2の範囲に含まれる何れかであることを特徴とする前記[9]に記載の超微細バブルの測定装置を提供する。
[11]本発明は、前記[7]乃至[10]の何れかに記載の超微細バブルの測定装置が、さらに、前記透過型電子顕微鏡を用いて観察された画像を画像処理する手段を有し、該画像処理手段によって前記マイクロ・ナノバブルの粒径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を取得することを特徴とする超微細バブルの測定装置を提供する。
[12]本発明は、前記画像処理する手段が、電子線トモグラフィー法によって前記マイクロ・ナノバブルの3次元再構成を行う機能を有することを特徴とする前記[11]に記載の超微細バブルの測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明による超微細バブルの測定方法及び測定装置は、液中に含まれる超微細バブル及びその分布状態を透過電子顕微鏡で直接的に画像として観測し、解析するものであり、従来のナノバブル測定方法と比べて、超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を、簡便に、且つ高精度で得ることができる。また、超微細バブルを画像として直接観測できることから、液中に含まれるナノ粒子が気泡によるバブルであるのか、或いは液中に混入した不純物であるのかを容易に判別することができる。それによって超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態に関する情報をイメージ的に把握することができるため、マイクロ・ナノ・ピコバブルの発生方法及びその発生装置の開発を加速させるとともに、それら超微細バブルを様々な応用に適用するときの必須のツールとして使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による超微細ナノバブルの測定方法は、透過型電子顕微鏡の急速凍結法の一種であり、ウイルスや単離した蛋白質等の懸濁試料を急速凍結し、そのまま固定や染色等を観察するための方法として使用される氷包埋法を利用するものである。しかしながら、水等の液体中に含まれ、10μm未満の粒子径を有する超微細バブルが前記氷包埋法によって観察できることは、従来の技術常識では全く想到し得なかったことであり、そのような報告例はこれまで皆無であった。
【0017】
1〜500μmのマイクロバブルを含んだ水を容器内で凍結させることにより、気体含有率の高い氷を提供する方法は特開2007−225127号公報等にも開示されているが、この文献は水中に含まれるマイクロバブルの測定方法に関するものではない。まして、この文献から1μm未満の超微細バブルの測定方法を想到することは不可能である。さらに、10μm未満の粒子径を有する超微細バブルは液体が固相状態に転移するときに消滅や変形が起こり、前記氷包埋法では、超微細バブルの大きさと形状をそのまま反映させることはできないという固定概念があった。加えて、透過型電子顕微鏡による観察では、固相状態の液体が電子線エネルギーの吸収による昇華を起こしやすく、超微細バブル粒子の径及び分布を、高精度で、且つ、再現性良く観察することは困難である等の懸念があった。本発明は、それらの固定概念及び技術課題を十分に考慮し、試料作製及び透過型電子顕微鏡による測定条件を詳細に検討した結果、非晶質の固相状態にある液体に含まれる超微細バブルを高精度で、且つ、再現性良く直接的に観察できる方法を見出すことによってなされたものである。
【0018】
本発明は、液体に含まれるバブルが粒子径10μm未満の超微細バブルであるときに、特に大きな効果を奏する。バブル粒子径が10μm以上である場合は、デジタルマイクロスコープ、CCDカメラ等の撮像デバイスを用いる従来の可視化法でバブルの直接的な観察が可能であり、本発明を適用する必要性は低い。しかしながら、10μm未満で1μm以上のマイクロバブルは、前記可視化法では測定限界域に近いため、測定誤差が生じやすい。まして、1μm未満のナノバブルにおいては、それらバブルが含まれる液が透明となるため前記可視化法は適用できない。他方、上記で述べた光散乱法やレーザ回折・散乱法等の従来のナノバブル測定方法はバブル粒子径や粒度分布の測定が可能であるものの、ナノバブルの直接的な観察が困難であるという問題がある。本発明はこれらの技術課題を解決できるものであり、透過型電子顕微鏡の分解能がÅ(0.1nm)オーダーであることを鑑みれば、マイクロバブルやナノバブルだけではなく、サブナノバブル又はピコバブルの超微細バブルをも直接的に観察できる有効な測定方法である。ここで、本発明において、「超微細バブル」とは液体に含まれるバブル粒子径が10μm未満の超微細バブルのことを意味する。
【0019】
本発明の測定方法は、固相状態にある液体に含まれる超微細バブルを測定するものであることから、液相状態のものとは粒子径が異なることが考えられる。しかしながら、液体として例えば水を考えたとき、液相から固相への密度の変化(10%未満)はわずかである。また、水中に含まれる超微細バブルは液相から固相へ相転移するとき、急速凍結を行うと、形状の変形はほとんど見られない。したがって、固相状態の液中に存在する超微細バブルの粒子径は、液相状態のものとは差がわずかであり、実質的に液体に含まれる超微細バブルの性状及び特性を反映している。また、液体に含まれる超微細バブルの正確な粒子径を求める場合は、マイクロバブルについて本発明で測定した粒子径を前記可視化法で測定したものと対比することによって、両者の換算式から正確な値を得ることができる。その方法以外にも、レーザ回折・散乱法等の従来のナノバブル測定方法との対比によって、正確な粒子径を把握する方法を採用してもよい。
【0020】
本発明による測定方法は測定対象物が主に水であるが、必ずしも水に限定されない。急速凍結によって非晶質の固相状態を形成する液体であれば、アルコール等の親水性液体又はオイルやガソリン等の親油性液体を測定対象物とすることができ、複数の成分を含む均一の混合溶液であってもよい。粒子径が10μm未満の超微細バブルが含まれる液体は、今後、水以外にも新たな機能性を付与することができると考えられており、本発明の測定方法は水以外の液体にも基本的に適用できる技術である。
【0021】
本発明による測定は、超微細バブルが含まれる液体を作製した後、通常、次の3つの工程に従って行うことによって行う。
(1)非晶質の固相状態にある液体中に超微細バブルの包埋
(2)透過電子顕微鏡による超微細バブルの観察
(3)観察画像から画像処理による超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報の取得
【0022】
図1に、前記(1)〜(3)の工程に対応した装置構成を概略で示す。前記(1)〜(3)の工程の中で、本発明の基本となる工程は(1)及び(2)である。工程(3)は超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を所得するための解析及び演算のための手段であり、必要に応じて、解析及び演算した結果を表示するための表示装置と接続されている。次に、本発明の測定対象液体を水に絞って、工程(1)〜(3)について以下に説明する。
【0023】
(1)非晶質の固相状態にある液体中に超微細バブルの包埋
図1において、超微細バブル水作製装置1から作製された超微細バブルが含まれる水を使って、急速凍結手段の一つである試料急速凍結装置2により液体状態の水を急速凍結し、非晶質の固相状態に変える。ここで、水中に含まれる超微細バブルの含有量が多い場合は、測定の分解能と精度を上げるため、水で希釈される。水による希釈は、最初からおおよその希釈倍率を決めてから行ってもよい。また、超微細バブルの測定を行った後に観察される画像に基づいて、希釈が必要と判断したときに希釈倍率を決めてもよい。この操作は、最適な測定条件が得られるまでトライアンドエラーで繰りかえすこともできる。本発明における希釈倍率は、数倍から数百倍の間で行うのが実用的である。
【0024】
図2は、試料急速凍結装置2を用いて実施する急速凍結工程の一例を示す図である。本工程においては、
図2の(a)に示すように、まず超微細バブルが含まれる水21にマイクログリッド又はマイクロメッシュ22を浸漬し、水21をマイクログリッド又はマイクロメッシュ22が有する貫通孔23の内部に保持した状態で取り出す。その後の工程でマイクログリッド又はマイクロメッシュ22に保持された水の急速凍結を行う。急速凍結によって得られる非晶質(アモルファス)状態の氷は、後の工程で行う透過型電子顕微鏡測定のために1μm以下、好ましくは数百nm程度の厚さを有する超薄膜にする必要があり、前記氷をマイクログリッド又はマイクロメッシュ22によって細分化して支持することによって破損や亀裂発生を防止するためである。また、バルク水を凍結観測する場合、熱伝導の影響から広い面積を均一で非晶質状態にすることが難しく、バルク水は凍結後、一部が結晶性を有する氷になりやすい。結晶性を有する氷は電子エネルギーの大きな吸収による水の突沸等が起こりやすく、透過型電子顕微鏡による測定が困難になるという問題が起きる。凍結条件をより急速にすることによって広い面積の水を凍結させることも考えられるが、現状の試料急速凍結方法では限界がある。この問題は、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22を使用し、それらの内部に存在する貫通孔内に水21を細分化して保持した状態で凍結することによって解決することができる。さらに、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22は多くの貫通孔23を有するため、後工程で行う透過型電子顕微鏡測定において最も観測しやすい最適な場所を選ぶことができ、より高精度の測定が可能になるという利点も有する。
【0025】
本工程において使用するマイクログリッド又はマイクロメッシュ22の貫通孔23は、円形、楕円形、矩形又は多角形の何れかの形状を有し、貫通孔の径又は辺の長さが1μm以下であることが好ましい。後の工程で行う透過型電子顕微鏡測定では視野面積が数百nmであれば微細ナノバブルの観測が十分に可能であるため、本発明においては貫通孔23の大きさが数百nmであるマイクログリッド又はマイクロメッシュを使用するのが実用的である。また、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22は、あらかじめグロー放電装置に用いてアリルアミン等による浸水化処理を行ってもよい。
【0026】
次いで、急速凍結は、超微細バブルが含まれる水を貫通孔に保持したマイクログリッド又はマイクロメッシュ22を冷媒中に浸漬するか、若しくはマイクログリッド又はマイクロメッシュ22に冷媒を注ぐことによって行う。冷媒を用いることによって、10
3K(ケルビン)/s(秒)以上の冷却速度を得ることができる。冷却速度は、液体の水を凍結したときに無定形の固相状態の氷に均一に転換できるように速くする必要があり、好ましくは10
4K/s以上、特に好ましくは10
6K/sを実現できるような急速凍結システムを構築する必要がある。そのために使用する冷媒としては、例えば、液体メタン、液体エタン、液体窒素、液体ヘリウム等が挙げられる。これらの冷媒は、単独で、又は複数を併用して使用することができる。それらの中で、冷媒能力、管理のし易さ、及び冷媒コストの観点から、液体エタン及び液体窒素のどちらか単独又は両者を組合せて使用するのが実用的である。
【0027】
本発明においては、例えば、
図2の(b)に示すように、液体窒素24で満たされた容器25の内部に設置した容器26に超微細バブルが含まれる水を貫通孔に保持したマイクログリッド又はマイクロメッシュ22を入れた後、気体状のエタン27を徐々に注入し、液体窒素24の冷却作用によって液体エタン28に変える。その後、
図2の(c)に示すように、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22に保持された超微細バブルが含まれる水21は、液体エタン28によって無定形の固相状態に転移する。マイクログリッド又はマイクロメッシュ22を含む液体エタン28は、後の工程で行う透過型電子顕微鏡測定において真空下で揮発除去することができるため、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22の測定試料だけを液体窒素等によって低温にした状態で、透過型電子顕微鏡によって観察することができる。このように、
図2の(b)及び(c)に示す方法は、透過型電子顕微鏡測定を行うための段取り工程が簡便になるという利点を有する。
【0028】
本発明においては、
図2の(b)及び(c)に示す方法の他にも、気体状のエタン27に代えて、液体窒素24で満たした容器25の内部に設置した容器26に液体メタン28を直接注入してもよい。また、液体エタン28を充填した容器26の中に、後から超微細バブルが含まれる水を貫通孔に保持したマイクログリッド又はマイクロメッシュ22を投入する方法を採用してもよい。
【0029】
本発明で使用する試料急速凍結装置2としては、例えば、市販のVitrobot Mark IV(FEI社製)を使用することができるが、上記で述べた機能と作用を有するものであればこの装置に限定されない。
【0030】
(2)透過電子顕微鏡による超微細バブルの観察
前記(1)の工程によって超微細バブルが含まれる水を非結晶の固相状態で貫通孔に保持したマイクログリッド又はマイクロメッシュ22は、
図1に示す透過電子顕微鏡3の内部に設けた低温試料ステージ4に設置する。測定試料において実際に測定観察する部分は、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22の貫通孔23に存在する非結晶の固相状態で存在する水である。このとき、測定試料の温度は、測定感度を向上させるため、150K(ケルビン)以下、好ましくは100k以下、より好ましくは80K以下のできるだけ低い温度に保持することが好ましい。
【0031】
本工程において使用する透過電子顕微鏡3は、試料急速凍結装置2から自動的に試料が含まれる容器を移動できる機能を有することが好ましい。例えば、
図2の(b)に示すように、容器26内の液体エタン28の中に浸漬されたマイクログリッド又はマイクロメッシュ22を、容器26ごと低温試料ステージ4の内部に自動的に移動した後、真空ポンプ等を用いて真空雰囲気にする。この操作によって液体エタンが揮発するため、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22の測定試料だけを低温試料ステージ4に設置することができる。このとき、低温試料ステージ4は液体窒素等の冷媒によって低温が維持されている。本発明においては、液体窒素が充填されている容器25に容器26を入れた状態で両者を一緒に低温試料ステージ4の内部に自動的に移動し、測定試料だけを取出して測定を行ってもよい。
【0032】
本工程においては、前記非晶質の固相状態にある液体に含まれる超微細バブルの粒子径がナノレベル又はピコレベルと非常に小さいため、観察画像が低温において0.1nm程度の高分解能を有することが求められる。それを実現のための重要な因子は、次の3点である。
【0033】
(i)測定試料だけを低温に保持しても、低温試料ステージ4の内部の温度変動の影響によって測定試料の揺れが起きる現象が見られる。そのため、本発明においては、測定試料だけでなく、その周りも冷却することが好ましく、
図1に示す低温試料ステージ4の全体を冷却する。
【0034】
(ii)透過型電子顕微鏡は、使用する電子エネルギーが測定試料に吸収されないようにする必要がある。仮に、透過型電子顕微鏡の電子エネルギーが小さいと、測定試料に含まれる固相状態の水に吸収されるエネルギーが大きくなり、氷の昇華という問題が発生する。そのため、透過型電子顕微鏡の電子エネルギーが測定試料を簡単に透過するように、比較的大きな電子エネルギーを有する透過型電子顕微鏡を使用する。具体的には、過型電子顕微鏡のエネルギーは10〜300キロエレクトロンボルト(keV)の範囲が好ましく、より好ましくは50〜300keVの範囲である。過型電子顕微鏡のエネルギーが10keV未満では、鮮明で高解像度の画像を観察することができない。また、そのエネルギーは300keVを超えても透過型電子顕微鏡によって観察される画像の鮮明さ及び解像度に対してはほとんど影響ないが、装置そのものが大きくなり装置コストが高くなるだけで、操作性や調整の点でも煩雑な作業が増えるため好ましくない。
【0035】
本発明で使用する透過型電子顕微鏡3としては、例えば、市販のクライオ透過型電子顕微鏡Tiran Krios(FEI社製)を使用することができるが、上記で述べた機能と作用を有するものであればこの透過型電子顕微鏡に限定されない。
【0036】
(iii)本発明の透過型電子顕微鏡は、測定試料そのものの温度上昇を抑制するため測定試料に大きなエネルギーを与えないようにして画像観察を行うことが必要である。そのため、観察に用いる電子線は、Low dose技術によってその数が1〜10
5電子/Å
2の範囲に含まれる何れかになるようにするのが好ましい。より好ましくは10〜200電子/Å
2の範囲である。電子線の数が1電子/Å未満の場合は、感度が小さくなりすぎるため鮮明で高解像度の画像観察を行うことができない。また、電子線の数が10
5電子/Å
2を超えると、測定試料の温度が急激に上昇し、氷の昇華が起きるという問題が発生する。本発明においては、電子線の数を10〜200電子/Å
2の範囲に規定することによって、鮮明で、且つ高解像度の画像を安定して得ることができる。このように、本発明においては観察に使用する電子線の数が少なくなる方向で規定するため、使用するカメラは従来のカメラと比べて、より高感度であることが必要である。この条件を満たすカメラとしては、例えば、電子直接検出カメラ等が挙げられる。
【0037】
(3)観察画像から画像処理による超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報の取得
前記(2)の工程によって観察された画像は、
図1に示す画像処理手段5によって、非結晶の固相状態にある水に含まれる超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を取得する。画像処理としては、例えば、代表的な二値化処理法等の公知の方法で行うことができる。後述する実施例で示すように、本発明によって観察される透過型電子顕微鏡の画像は超微細バブルが濃度の濃い粒子として点在して現れるため、画像を白と黒だけの情報にして二値化処理することができる。
【0038】
また、二値化処理は、処理装置の性能向上に伴い、濃度諧調をそのまま保持して処理することが可能である。本発明による透過型電子顕微鏡による観察においては、仮に水に含まれる超微細バブルが不純物等の内実の微粒子に起因するものであれば、気泡バブルとは異なる濃度諧調で現れる。また、透過型電子顕微鏡は、粒子として観察される濃度の濃い部分をエネルギー分散型X線分光法(EDX)等によって元素分析を行うことができる機能を有する。これらの方法によって液中に含まれる超微細粒子が気泡によるバブルであるのか、或いは液中に混入した不純物であるのかを観察画像から容易に判別することができ、内実の微粒子に起因する部分を観察画像の処理対象から除くことによって高精度の測定が可能になる。
【0039】
超微細バブルが含まれる水は、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22の貫通孔において非結晶の固相状態で氷として観察されるが、前記貫通孔の深さ方向に重なって存在する場合は、観察画像から超微細バブルの粒子径、個数及び粒度分布を求めることが難しくなり、画像処理結果に誤差が生じることがある。水中に含まれる超微細バブルの含有量が多い場合は、前記したように、超微細バブルが全く含まれない水で希釈し、マイクログリッド又はマイクロメッシュ22の貫通孔の深さ方向に超微細部バブルに起因する微粒子画像ができるだけ重ならないように濃度を調整することによって、この問題を解決することも可能である。しかしながら、本発明においては、より簡便な測定方法を確立するとともに、測定精度の一層の向上を図るため、画像処理において電子線トモグラフィー法による解析を行うことが好ましい。
【0040】
電子線トモグラフィーとは、電子線顕微鏡を用いた3次元再構成法の一つで、同一視野を様々な方向からの投影された電子顕微鏡像をコンピュータの中で3次元に細構築し、コンピュータを使って断層像(トモグラム)を作成する方法であり、一般的に使用されている公知の画像解析法である。例えば、前記透過型電子顕微鏡において、電子ビームの角度を所望の角度で変えることができる装置を用い、測定試料に対して角度を変えながら各方位で観察した画像を処理することにより、超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態についてより高精度の情報を所得することができる。特に、前記電子ビームを移動する角度を決め、その角度範囲を、例えば1〜10°の間隔で細分化し、各角度に応じて撮影した画像を処理することによって、医療分野における断層撮影と同じように、超微細バブルの分布状態を立体的に把握することが可能となる。
【0041】
図1に示す画像処理手段5によって得られる超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報は、必要に応じて、画像処理手段5に接続されるデイスプレイ等の表示装置6によって表示する。
【0042】
以上のように、本発明は超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態に関する情報をイメージ的に把握する上で有効な測定方法及び測定装置であるが、さらにレーザ回折・散乱法等の従来のナノバブル測定方法と組み合わせることにより、液体に含まれる超微細バブルの性状及び特性に関し、より正確で、精緻な情報を得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下において、本発明に基づく実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
前記特許文献1に開示された方法に従ってナノバブル水作製装置ΣPM-5(ベローズポンプ式) (シグマテクノロジー有限会社製)により空気ナノバブル水を作製し、純水によって100倍に希釈して測定用試料として用いた。また、参考用試料としてナノバブル作製前の純水を用いた。ナノバブル作製前の純水は、ナノバブルを含まない水に相当する。
【0045】
試料急速凍結装置Vitrobot Mark IV (FEI社製)により作製直後の前記空気ナノバブル水を急速凍結してナノバブルをアモルファス氷中に包埋した試料を作製し、観察用試料とした。試料厚さは200nmである。一方、ナノバブルを含まない水(純水)についても同じ試料急速凍結装置により急速凍結して参考用試料とした。試料厚さは200nmである。300keVの電子エネルギーを有するクライオ透過型電子顕微鏡Titan Krios (FEI社製)を用いて、試料温度約80Kにおいてアモルファス氷中に包埋されたナノバブルを直接観察した。観察に用いる電子線は、Low dose技術によって20 電子/Å
2程度であり、撮影中の試料温度の上昇はほとんどなかった。
【0046】
図3に、空気ナノバブルを含む純水を凍結したアモルファス氷及び純水(ナノバブルを含まない水)を凍結したアモルファス氷について電子顕微鏡像の写真を示す。また、空気ナノバブル水については、電子顕微鏡写真の下にバブルの粒度分布(サイズ分散を示すヒストグラム)を示す。
【0047】
図3の左側に示す電子顕微鏡像の写真は、ΣPM−5によって作製後、ただちに観察された空気ナノバブルであり、写真中に観察される円形のコントラストがナノバブルである。画像処理の結果、平均粒径は7nmである。ヒストグラムの測定に用いたアモルファス氷の体積は3.2×10
-14 cc(400 nm×400 nm×200 nm厚さ)であり、その中にバブルは約260個含まれている。100倍に希釈したナノバブル水を観察していることから、このナノバブル水の空気ナノバブルの濃度は、8.1×10
17個/cc(ml)(81京個/cc(ml))であると評価される。それに対して、
図3の右側に示す電子顕微鏡像の写真はアモルファス氷でありコントラストの変化はなく、バブルが含まれない水であることが確認できる。このように、本発明による測定方法及び測定装置によって、水に含まれるナノバブルの存在を直接的に画像として確認することができるだけでなく、ナノバブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態に関する情報を取得することができる。
【0048】
<実施例2>
前記特許文献1に開示された方法に従ってナノバブル水作製装置ΣPM-10(カスケードポンプ式) (シグマテクノロジー有限会社製)により空気ナノバブル水を作製した後、1か月程度時間を経た空気ナノバブルを純水によって100倍に希釈したものを測定試料として用いた。試料厚さは200nmである。この試料を実施例1と同じ試料急速凍結装置で急速凍結させた後、実施例1と同じクライオ透過型電子顕微によって試料温度約80Kにおいてアモルファス氷中に包埋されたナノバブルを直接観察した。観察に用いる電子線は、Low dose技術によって20 電子/Å
2程度であり、撮影中の試料温度の上昇はほとんどなかった。
【0049】
この試料を用いて観察した電子顕微鏡像の写真を
図4に示す。
図4に示す画像は、ナノバブル水を作製後、1ヶ月程度時間を経た空気ナノバブルを観察したものであり、バブルの合体により粗大化しており、アモルファス氷試料の膜表面に接触して、アモルファス氷がポーラス化した部分を含む様なコントラストを示している。そのため、サイズ、サイズ分散については正確な測定ができなかった。このように、空気ナノバブル水は長期間放置するとナノバブルの消滅又はその肥大化が起こることが、観察画像によって直接確認できる。
【0050】
<実施例3>
前記特許文献1に開示された方法に従ってナノバブル水作製装置ΣPM-5 (べローズポンプ式) (シグマテクノロジー有限会社製)によりオゾンナノバブル水を作製した後、半月程度時間を経たオゾンナノバブルを純水によって100倍に希釈したものを測定試料として用いた。試料厚さは200nmである。この試料を実施例1と同じ試料急速凍結装置で急速凍結させた後、実施例1と同じクライオ透過型電子顕微によって試料温度約80Kにおいてアモルファス氷中に包埋されたナノバブルを直接観察した。観察に用いる電子線は、Low dose技術によって20電子/Å
2程度であり、撮影中の試料温度の上昇はほとんどなかった。
【0051】
この試料を用いて観察した電子顕微鏡像の写真及びその写真の下にバブルの粒度分布(サイズ分散を示すヒストグラム)を
図5に示す。
図5に示す画像は、ΣPM−5によって作製後、半月程度経たオゾンナノバブルを観察したものである。平均粒径は18nmであり、
図3に示す空気ナノバブルと比べてやや大きく、合体したことによりサイズの粗大化も起こっていると考えられる。ヒストグラムの測定に用いたアモルファス氷の体積は3.2×10
-14 cc(400 nm×400 nm×200 nm厚さ)であり、その中にバブルは約21個含まれている。100倍に希釈したナノバブル水を観察していることから、このナノバブル水のオゾンナノバブルの濃度は、8.6×10
16個/cc(ml)(約9京個/cc(ml))であると評価される。
【0052】
前記実施例1及び3に示す試料は、それぞれ空気ナノバブル水及びオゾンナノバブル水に含まれるナノバブルを観察したものであるが、透過型顕微鏡による観察画像は
図3及び
図5から分解能に優れることが分かる。したがって、本発明の測定方法は、ナノオーダーだけでなく、より微細のサブナノオーダー又はピコオーダーのバブルが含まれる液体についても、その粒子径、個数、粒度分布及び形態に関する情報を取得できることが考えられる。
【0053】
以上のように、本発明による超微細バブルの測定方法は、従来のナノバブル測定方法と比べて、超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態の少なくとも何れかの情報を、簡便に、且つ高精度で得ることができる。また、微細バブルを画像として直接観測できることから、液中に含まれるナノ粒子が気泡によるバブルであるのか、或いは液中に混入した不純物であるのかを容易に判別することができる。それによって超微細バブルの粒子径、個数、粒度分布及び形態に関する情報をイメージ的に把握することができる。本発明の測定方法及び測定装置は、10μm未満の粒子径を有する超微細バブルであれば、幅広いババル粒子径を含む液体について測定を行うことができる。さらに、従来の測定方法では得られない貴重な情報を取得できることから、その有用性は極めて広い。