特許第6395279号(P6395279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395279リチウム二次電池用電解質及びそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395279
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解質及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20180913BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20180913BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/485
   H01M4/58
   H01M4/48
   H01M4/38 Z
【請求項の数】15
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2013-231903(P2013-231903)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-96366(P2014-96366A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0126949
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】姜 潤錫
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲ミン▼植
(72)【発明者】
【氏名】文 ▲ジュン▼榮
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−195199(JP,A)
【文献】 特開2012−174437(JP,A)
【文献】 特開2005−293962(JP,A)
【文献】 特開2011−081194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567−10/0569、4/36、
4/48−4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
添加剤と、を含み、
前記添加剤が、下記化学式1で表示される第1化合物、及び下記化学式2で表示される第2化合物のうち少なくとも1種と、下記化学式10で表示されるホスフェートとを含んだリチウム二次電池用電解質:
【化1】
【化2】
【化7】
前記化学式1及び2で、
ないしX、及びYないしYは、互いに独立して、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)またはテルル(Te)であり、
ないしZは、互いに独立して、−O−、−S−、−Se−、−Te−、−C(=O)−、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=及び−N(R14)−のうちから選択され、
及びLは、互いに独立して、=C(R21)−C(R22)=、−C(R23)(R24)−、−C(R25)=C(R26)−、及び−C(=O)−のうちから選択され、
p及びqは、互いに独立して、1ないし5の整数であるが、pが2以上である場合、p個のLは、互いに同一であっても異なってもよく、qが2以上である場合、q個のLは、互いに同一であっても異なってもよく、
ないしRは、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基、−N(Q)(Q)、−P(=O)(Q)(Q)、−P(Q)(Q)(Q10)(Q11)、及び下記化学式3Bのうちから選択され、
【化3B】
11ないしR14、及びR21ないしR26は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基、−N(Q)(Q)、−P(=O)(Q)(Q)、及び−P(Q)(Q)(Q10)(Q11)のうちから選択され、
場合によって、R11ないしR14のうち少なくとも一つと、R21ないしR26のうち少なくとも一つは、互いに連結され、置換もしくは非置換の飽和環または不飽和環を形成することができ、
前記Q、Q及びQないしQ11は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基及び置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基のうちから選択され、
化学式2中の、C、C及びCは、各位置の炭素原子を互いに区分して表記したものであり、
前記化学式3Bで、
前記Qは、C〜C10アルキレン基であり、
は、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択され、
rは、1、2または3であり、sは、1ないし5の整数であるが、rが2以上である場合、r個のQは、互いに同一であっても異なってもよく、sが2以上である場合、s個のQは、互いに同一であっても異なってもよく、
前記化学式10で、X11ないしX13は、互いに独立して、Si、GeまたはSnであり、R31ないしR39は、互いに独立して、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基及びC〜C10アリール基のうちから選択され
ここで、
前記添加剤が、前記化学式1で表示される第1化合物を含む場合に、
は水素ではなく、R、R及びRが水素であるか、
及びRは水素ではなく、R及びRが水素であるか、
及びRは水素ではなく、R及びRが水素であるか、
ないしRが、いずれも水素ではなく、
前記添加剤が前記化学式2で表示される第2化合物を含む場合に、
(i)
前記−(L−及び−(L−は、互いに独立して、下記化学式4A、4B、および4Dないし4Fのうちから選択され、
【化4A】
【化4B】
【化4D】
【化4E】
【化4F】
前記化学式4A、4B、および4Dないし4Fで、
*は、ZまたはZとの結合サイトであり、
*’は、ZまたはZとの結合サイトであり、
21、R22、R23、R24、R23a、R23b、R23c、R24a、R24b、R24c、R25及びR26は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、及びC〜C10アルケニル基のうちから選択されるか、
または、
(ii)
ないしZのうち少なくとも一つは、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=及び−N(R14)−のうちから選択され、
及びLの少なくとも一つは、=C(R21)−C(R22)=、−C(R23)(R24)−、及び−C(R25)=C(R26)−のうちから選択され、
前記R11ないしR14のうち少なくとも一つと、前記R21ないしR26のうち少なくとも一つとが互いに連結され、飽和環または不飽和環を形成し、
前記A環が、下記化学式5Aで表示され、前記A環が、下記化学式5Bで表示され:
【化5A】
【化5B】
前記化学式5A及び5Bで、
、C、C、C、Z及びZについての説明は上記と同一であり、
23a、R24a及びQ12は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、及びC〜C10アルケニル基のうちから選択され、
tは、1ないし4の整数である。
【請求項2】
前記添加剤が、前記化学式1で表示される第1化合物を含み、
前記化学式1で、XないしXが、いずれもSまたはSeであり、
前記化学式1で、RないしRが、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、及びtert−デシル基のうちから選択されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項3】
ないしRが互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、及び下記化学式3Aから選択されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化3A】
前記化学式3Aで、
は、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択され、
sは、1ないし5の整数であるが、sが2以上である場合、s個のQは、互いに同一であっても異なってもよい。
【請求項4】
前記添加剤が前記化学式2で表示される第2化合物を含み、
前記化学式2で、YないしYが、いずれもSまたはSeであり、
前記化学式2で、ZないしZは、互いに独立して、−S−、−C(R11)(R12)−及び−C(R13)=のうちから選択され、
前記R11ないしR13は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルケニル基のうちから選択されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項5】
前記飽和環または不飽和環が、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環;並びに重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、及びC〜C10アルケニル基のうちから選択された少なくとも一つで置換されたベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環;のうちから選択されたことを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項6】
前記添加剤が、下記化合物2ないし13および15ないし17のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解質:
【化6A】
【化6B】
【請求項7】
前記添加剤の含量は、電解質総重量である100重量部に対して、0.005重量部ないし5重量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項8】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCFSO、Li(CFSOC、Li(CFSON、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiBPh、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiCl、LiI、リチウムビスオキサレートボレート、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項9】
前記非水性有機溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、非プロトン性溶媒、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項10】
正極活物質を有する正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間を充填する電解質と、を含み、
前記電解質は、請求項1ないしのうち、いずれか一項に記載の電解質であるリチウム二次電池。
【請求項11】
前記正極と前記電解質との間の皮膜をさらに含み、前記皮膜は、前記電解質内で、添加剤の一部または全部から由来することを特徴とする請求項10に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記正極活物質は、LiCoO、LiNi1−xCo(0≦x<1)、Li1−x(ここで、Mは、Mn及びFeのうち少なくとも一つを含み、0.03<x<0.1)、Li[NiCo1−2xMn]O(0<x<0.5)、Li[NiMn]O(0<x≦0.5)、Li1+x(Ni,Co,Mn)1−y(0<x≦1、0≦y<1,2≦z≦4)、LiM(ここで、Mは、Ti、V及びMnのうち少なくとも一つを含む)、LiMMn2−x(ここで、Mは、遷移金属)、LiFePO、LiMPO(ここで、Mは、Mn、Co及びNiのうち少なくとも一つを含む)、V、V、VO(B)、V13、V、V、Ag11、AgVO、LiV、δ−Mn(0<y≦1)、δ−NH10、Mn0.816、LiV、Cu(0<x≦1)、Cr13、M(XO(ここで、Mは、遷移金属であり、Xは、S、P、As、Mo及びWのうち少なくとも一つを含む)またはLi(PO(ここで、Mは、Fe、V及びTiのうち少なくとも一つを含む)を含むことを特徴とする請求項10または11に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記正極活物質は、Li1+x1−x(ここで、Mは、Ni、Co及びMnのうち少なくとも一つを含み、0.05≦x≦0.2)またはLiNi0.5Mn1.5を含むことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記負極活物質は、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物、Si、SiO(0<x<2)、Si−Y合金(ここで、前記Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせである)、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソ相ピッチ炭化物または焼成されたコークスを含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記正極と前記負極との間に、前記正極と前記負極とを電気的に絶縁する分離膜をさらに含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用電解質及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(LIB:lithium ion battery)は、単位重量当たり高いエネルギー密度及び設計容易性により、小型電子機器及び携帯用IT(information technology)機器を中心に発展してきた。最近では、電気自動車用電源、及び代替エネルギー開発で生産された電気を保存することができる電力保存用電源として、中大型のリチウムイオン電池が期待を集めている。
【0003】
リチウム二次電池は、正極(cathode)、負極(anode)、電解質(electrolyte)及び分離膜(separator)から構成される。放電時に負極では、リチウムイオンが放出されて酸化反応が起き、正極では、リチウムイオンが吸蔵されて還元反応が起こる。充電時には、正極で、リチウムイオンが放出されて酸化反応が起き、負極で、リチウムイオンが吸蔵されて還元反応が起こる。電解質は、電子に対する伝導性はなく、ただイオン伝導性のみを示し、正極と負極との間でリチウムイオンを伝達する役割を行う。
【0004】
電池で、電極内に吸蔵されるリチウムイオンは、電極に入った電子と、電荷中性(charge neutrality)をなし、電極内に電気エネルギーを保存する媒体になる。従って、電池に保存することができる電気エネルギーの量を決定するのは、電荷中性をなすために電極に吸蔵されるイオンの量である。リチウム二次電池の作動電圧やエネルギー密度などの基本性能は、正極及び負極を構成する材料によって決まるが、優秀な電池性能を得るために、電解質が、高いイオン伝導性、電気化学的安定性、熱的安定性などを備えることが要求される。
【0005】
電解質の構成成分として、リチウム塩と有機溶媒とが使用される。電解質は、負極との還元反応、及び正極との酸化反応を考慮し、それに相応する電位領域で、電気化学的に安定しなければならない。
【0006】
一方、リチウム二次電池の分野が、電気自動車及び電力保存の分野に拡張されながら、高電圧用電極活物質が使用されている。低い電位の負極活物質と、高い電位の正極活物質とを使用しながら、電解質の電位窓(potential window)が活物質の電位窓より狭くなり、電解質が正極/負極電極表面で、分解されやすい環境に露出されることになった。また、電気自動車用及び電力保存用のリチウム二次電池は、外部の高温環境に露出される余地が多く、瞬間的な充放電によって、電池の温度が上昇することがあるが、かような高温環境では、電池の寿命が短縮し、保存されているエネルギーの量が減少することがある。
【0007】
従って、かようなリチウム二次電池の使用に適する電解質組成物の開発が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、正極表面での電解質の酸化を防止することができ、優秀な寿命特性及び効率特性を提供することができるリチウム二次電池用電解質を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題はまた、前記電解質を採用することにより、優秀な寿命特性及び効率特性を有するリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、リチウム塩と、非水性有機溶媒と、添加剤と、を含み、前記添加剤が、下記化学式1で表示される第1化合物、及び下記化学式2で表示される第2化合物のうち少なくとも1種を含んだリチウム二次電池用電解質が提供される:
【0011】
【化1】
【化2】
【0012】
前記化学式1及び2で、
ないしX、及びYないしYは、互いに独立して、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)またはテルル(Te)であり、
ないしZは、互いに独立して、−O−、−S−、−Se−、−Te−、−C(=O)−、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=及び−N(R14)−のうちから選択され、
及びLは、互いに独立して、=C(R21)−C(R22)=、−C(R23)(R24)−、−C(R25)=C(R26)−及び−C(=O)−のうちから選択され、
p及びqは、互いに独立して、1ないし5の整数であるが、pが2以上である場合、p個のLは、互いに同一であっても異なってもよく、qが2以上である場合、q個のLは、互いに同一であっても異なってもよく、
ないしR、R11、R12、及びR21ないしR26は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やそれの炎、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基、−(Q−(Q、−N(Q)(Q)、−P(=O)(Q)(Q)及び−P(Q)(Q)(Q10)(Q11)のうちから選択され、
場合によって(optionally)、R11ないしR14のうち少なくとも一つと、R21ないしR27のうち少なくとも一つは、互いに連結されて置換もしくは非置換の飽和環または不飽和環を形成することができ、
前記Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、置換もしくは非置換のC〜C60アルキレン基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニレン基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニレン基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニレン基、置換もしくは非置換のC〜C60アリーレン基、及び置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリーレン基のうちから選択され、
前記QないしQ11は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基及び置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基のうちから選択され、
前記r及びsは、互いに独立して、1ないし5の整数であるが、rが2以上である場合、r個のQは、互いに同一であっても異なってもよく、sが2以上である場合、s個のQは、互いに同一であっても異なってもよく、
、C、C及びCは、各位置の炭素原子を互いに区分して表記したものである。
【0013】
一態様によると、前記添加剤が、前記化学式1で表示される第1化合物を含み、
前記化学式1で、XないしXが、いずれもSまたはSeであり、
前記化学式1で、RないしRが互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及び−(Q−(Qのうちから選択され、
前記Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、C〜C10アルキレン基、C〜C14アリーレン基及びC〜C14ヘテロアリーレン基のうちから選択され、
前記Qは、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択される。
【0014】
別の一態様によると、RないしRが互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、下記化学式3A及び3Bのうちから選択される:
【0015】
【化3A】
【0016】
【化3B】
【0017】
前記化学式3A及び3Bで、
前記Qは、C〜C10アルキレン基であり、
は、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択され、
rは、1、2または3である。
【0018】
別の一態様によると、前記添加剤が、前記化学式1で表示される第1化合物を含み、
前記化学式1で、Rは、水素ではなく、R、R及びRが水素であるか、
前記化学式1で、R及びRは、水素ではなく、R及びRは、水素であるか、
前記化学式1で、R及びRは、水素ではなく、R及びRは、水素であるか、
前記化学式1で、RないしRが、いずれも水素ではない。
【0019】
別の一態様によると、前記添加剤が前記化学式2で表示される第2化合物を含み、
前記化学式2で、YないしYが、いずれもSまたはSeであり、
前記化学式2で、ZないしZは、互いに独立して、−S−、−C(R11)(R12)−及び−C(R13)=のうちから選択され、
前記R11ないしR13は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルケニル基のうちから選択される。
【0020】
別の一態様によると、前記添加剤が前記化学式2で表示される第2化合物を含み、
前記−(L−及び−(L−は、互いに独立して、下記化学式4Aないし4Fのうちから選択される:
【0021】
【化4A】
【0022】
【化4B】
【0023】
【化4C】
【0024】
【化4D】
【0025】
【化4E】
【0026】
【化4F】
【0027】
前記化学式4Aないし4Fで、
*は、ZまたはZとの結合サイトであり、
*’は、ZまたはZとの結合サイトであり、
21、R22、R23、R24、R23a、R23b、R23c、R24a、R24b、R24c、R25及びR26は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、C〜C10アルケニル基及び−(Q−(Qのうちから選択され、
前記Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、C〜C10アルキレン基、C〜C14アリーレン基及びC〜C14ヘテロアリーレン基のうちから選択され、
前記Qは、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択される。
【0028】
別の一態様によると、前記添加剤が前記化学式2で表示される第2化合物を含み、
前記化学式2で、ZないしZのうち少なくとも一つは、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=及び−N(R14)−のうちから選択され、
前記化学式2で、L及びLで、少なくとも一つは、=C(R21)−C(R22)=、−C(R23)(R24)−、−C(R25)=C(R26)−及び−C(R27)−のうちから選択され、
場合によって、前記R11ないしR14のうち少なくとも一つと、前記R21ないしR26のうち少なくとも一つとが互いに連結され、飽和環または不飽和環を形成する。
【0029】
別の一態様によると、前記飽和環または不飽和環が、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環;並びに重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、C〜C10アルケニル基及び−(Q−(Q(ここで、前記Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、C〜C10アルキレン基、C〜C14アリーレン基及びC〜C14ヘテロアリーレン基のうちから選択され、前記Qは、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択され、r及びsは、互いに独立して1ないし5の整数)のうちから選択された少なくとも一つで置換されたベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環;のうちから選択される。
【0030】
別の一態様によると、前記A環が、下記化学式5Aで表示され、前記A環が、下記化学式5Bで表示される:
【0031】
【化5A】
【0032】
【化5B】
【0033】
前記化学式5A及び5Bで、
、C、C、C、Z及びZについての説明は、請求項1に記載のところと同一であり、
23a、R24a及びQ12は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、C〜C10アルケニル基及び−(Q−(Qのうちから選択され、
前記Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、C〜C10アルキレン基、C〜C14アリーレン基及びC〜C14ヘテロアリーレン基のうちから選択され、
前記Qは、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択され、
r及びsは、互いに独立して1ないし5の整数であり、
tは、1ないし4の整数である。
【0034】
別の一態様によると、前記添加剤が、下記化合物1ないし17のうち少なくとも一つを含む:
【0035】
【化6A】
【化6B】
【0036】
別の一態様によると、前記添加剤が下記化学式10で表示されるホスフェートをさらに含む:
【0037】
【化7】
【0038】
前記化学式10で、X11ないしX13は、互いに独立して、Si、GeまたはSnであり、R31ないしR39は、互いに独立して、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基及びC〜C10アリール基のうちから選択される。
【0039】
別の一態様によると、前記添加剤の含量は、電解質総重量である100重量部に対して、0.005重量部ないし5重量部である。
【0040】
別の一態様によると、前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCFSO、Li(CFSOC、Li(CFSON、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiBPh、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiCl、LiI、リチウムビスオキサレートボレート、またはそれらの組み合わせを含む。
【0041】
別の一態様によると、前記非水性有機溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、非プロトン性溶媒、またはそれらの組み合わせである。
【0042】
本発明は、
正極活物質を有する正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間を充填する本発明の電解質と、を含むリチウム二次電池にも関する。
【0043】
一態様によると、前記正極と前記電解質との間の皮膜をさらに含み、前記皮膜は、前記電解質内で、添加剤の一部または全部から由来する。
【0044】
別の一態様によると、前記正極活物質は、LiCoO、LiNi1−xCo(0≦x<1)、Li1−x(ここで、Mは、Mn及びFeのうち少なくとも一つを含み、0.03<x<0.1)、Li[NiCo1−2xMn]O2(0<x<0.5)、Li[NiMn]O2(0<x≦0.5)、Li1+x(Ni,Co,Mn)1−y(0<x≦1、0≦y<1,2≦z≦4)、LiM(ここで、Mは、Ti、V及びMnのうち少なくとも一つを含む)、LiMMn2−x(ここで、Mは、遷移金属)、LiFePO、LiMPO(ここで、Mは、Mn、Co及びNiのうち少なくとも一つを含む)、V、V、VO(B)、V13、V、V、Ag11、AgVO、LiV、δ−Mn(0<y≦1)、δ−NH10、Mn0.816、LiV、Cu(0<x≦1)、Cr13、M(XO(ここで、Mは、遷移金属であり、Xは、S、P、As、Mo及びWのうち少なくとも一つを含む)またはLi(PO(ここで、Mは、Fe、V及びTiのうち少なくとも一つを含む)を含む。
【0045】
別の一態様によると、前記正極活物質は、Li1+x1−x(ここで、Mは、Ni、Co及びMnのうち少なくとも一つを含み、0.05≦x≦0.2)またはLiNi0.5Mn1.5を含む。
【0046】
別の一態様によると、前記負極活物質は、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物、Si、SiO(0<x<2)、Si−Y合金(ここで、前記Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせである)、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソ相ピッチ炭化物または焼成されたコークスを含む。
【0047】
別の一態様によると、前記正極と前記負極との間に、前記正極と前記負極とを電気的に絶縁する分離膜をさらに含む。
【0048】
前記課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、正極活物質を有する正極、負極活物質を有する負極、及び正極と負極との間を充填する電解質を含むが、電解質が、前述のような電解質であるリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、前記電解質は、添加剤として、第1化合物及び/または第2化合物を含むので、前記電解質を採用したリチウム二次電池の正極表面には、前記第1化合物及び/または第2化合物から由来した皮膜が形成される。それにより、前記リチウム二次電池の作動中に、電解質の酸化及び分解が防止され、リチウム二次電池は、優秀な寿命特性及び高率特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】一実施形態によるリチウム二次電池の正極の表面に形成された皮膜を概略的に図示した断面図である。
図2】一実施例によるリチウム二次電池の分解斜視図である。
図3】比較例B及び実施例1の電池の放電容量グラフである。
図4】比較例A、比較例B、比較例C及び実施例1の電池の容量維持率グラフである。
図5】比較例B及び実施例1の電池の効率特性に係わる放電容量(mAxh/g)対サイクル数グラフである。
図6】実施例1の電池の300回充放電後(45℃)、正極表面に対する走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)観察写真である。
図7】比較例A及び実施例1の電池の300回充放電後、正極表面の物質に対するX線光電子スペクトル(XPS)データである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、それらは、例示として提示されるものであり、それらによって、本発明が制限されるものではなく、本発明は、後述する特許請求の範囲の範疇によって定義されるのみである。
【0052】
一実施形態よれば、リチウム塩、非水性有機溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用電解質であって、添加剤は、下記化学式1で表示される第1化合物、及び下記化学式2で表示される第2化合物のうち少なくとも1種を含む:
【0053】
【化8】
【化9】
【0054】
添加剤は、第1化合物を含むか、あるいは第2化合物を含むか、あるいは第1化合物及び第2化合物をいずれも含んでもよい。
【0055】
添加剤は、第1化合物を含んでもよい。
【0056】
化学式1で、XないしXは、互いに独立して、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)またはテルル(Te)でもある。
【0057】
例えば、化学式1で、XないしXがいずれもSまたはSeであってもよいが、それらに限定されるものではない。
【0058】
化学式1で、RないしRは、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基、−(Q−(Q、−N(Q)(Q)、−P(=O)(Q)(Q)及び−P(Q)(Q)(Q10)(Q11)のうちから選択されてもよい。ここで、Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、置換もしくは非置換のC〜C60アルキレン基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニレン基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニレン基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニレン基、置換もしくは非置換のC〜C60アリーレン基、及び置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリーレン基のうちから選択され、QないしQ11は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、
置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基及び置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基のうちから選択され、r及びsは、互いに独立して、1ないし5の整数であるが、rが2以上である場合、r個のQは、互いに同一であっても異なってもよく、sが2以上である場合、s個のQは、互いに同一であっても異なってもよい。
【0059】
例えば、化学式1で、RないしRは、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及び−(Q−(Qのうちから選択されてもよい。ここで、Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、C〜C10アルキレン基、C〜C14アリーレン基及びC〜C14ヘテロアリーレン基のうちから選択され、Qは、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択されてもよいが、それらに限定されるものではない。
【0060】
一実施形態によれば、化学式1で、RないしRは、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、下記化学式3A及び3Bのうちから選択されるが、それらに限定されるものではない:
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
化学式3A及び3Bで、Qは、C〜C10アルキレン基であり、Qは、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択され、rは、1、2または3である。
【0064】
化学式1で、Rは水素ではなく、R、R及びRは水素であるか、あるいは化学式1で、R及びRは水素ではなく、R及びRは水素であるか、あるいは化学式1で、R及びRは水素ではなく、R及びRは水素であるか、あるいは化学式1で、RないしRがいずれも水素ではない。
【0065】
一方、添加剤は、化学式2で表示される第2化合物を含んでもよい。
【0066】
化学式2で、YないしYは、互いに独立して、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)またはテルル(Te)であり、ZないしZは、互いに独立して、−O−、−S−、−Se−、−Te−、−C(=O)−、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=及び−N(R14)−のうちから選択され、L及びLは、互いに独立して、=C(R21)−C(R22)=、−C(R23)(R24)−、−C(R25)=C(R26)−及び−C(=O)−のうちから選択され、p及びqは、互いに独立して、1ないし5の整数であるが、pが2以上である場合、p個のLは、互いに同一であっても異なってもよく、qが2以上である場合、q個のLは、互いに同一であっても異なってもよく、R11並びにR12、及びR21ないしR26は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、置換もしくは非置換のC〜C60アルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルコキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C60アルキニル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC〜C10シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C10ヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、置換もしくは非置換のC〜C60アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基、−(Q−(Q、−N(Q)(Q)、−P(=O)(Q)(Q)及び−P(Q)(Q)(Q10)(Q11)のうちから選択され(ここで、QないしQ11、r及びsについての説明は、前述の通りである)、C、C、C及びCは、各位置の炭素原子を互いに区分して表記したものである。
【0067】
例えば、化学式2で、YないしYが、いずれもSまたはSeであり、化学式2で、ZないしZは、互いに独立して、−S−、−C(R11)(R12)−及び−C(R13)=のうちから選択され、R11ないしR13は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルケニル基のうちから選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0068】
化学式2で、−(L−及び−(L−は、互いに独立して、下記化学式4Aないし4Fのうちから選択される:
【0069】
【化12A】
【0070】
【化12B】
【0071】
【化12C】
【0072】
【化12D】
【0073】
【化12E】
【0074】
【化12F】
【0075】
化学式4Aないし4Fで、*は、ZまたはZとの結合サイトであり、*’は、ZまたはZとの結合サイトであり、
【0076】
21、R22、R23、R24、R23a、R23b、R23c、R24a、R24b、R24c、R25及びR26は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、C〜C10アルケニル基及び−(Q−(Qのうちから選択される。
【0077】
ここで、Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、C〜C10アルキレン基、C〜C14アリーレン基及びC〜C14ヘテロアリーレン基のうちから選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択されもする。
【0078】
23a、R23b及びR23cは、2以上のR23が互いに区分されるようにするためのものであり、それらの定義は、R23の定義と同一であり、R24a、R24b、R24cは、2以上のR24が互いに区分されるようにするためのものであり、それらの定義は、R24の定義と同一であるのである。
【0079】
一方、化学式2で、ZないしZのうち少なくとも一つは、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=及び−N(R14)−のうちから選択され、化学式2で、L及びLで、少なくとも一つは、=C(R21)−C(R22)=、−C(R23)(R24)−、−C(R25)=C(R26)−及び−C(R27)−のうちから選択され、R11ないしR14のうち少なくとも一つと、R21ないしR26のうち少なくとも一つとが互いに連結され、置換もしくは非置換の飽和環または不飽和環を形成することができる。
【0080】
飽和環または不飽和環が、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環;及び重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、C〜C10アルケニル基及び−(Q−(Q(ここで、Qは、−O−、−S−、−C(=O)−、C〜C10アルキレン基、C〜C14アリーレン基及びC〜C14ヘテロアリーレン基のうちから選択され、Qは、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、シアノ基、ニトロ基、アジド基、アミノ基、アミド基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、チオ基(−SH)、−C(=O)−H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基及びC〜C10アルコキシ基のうちから選択され、r及びsは、互いに独立的に1ないし5の整数)のうちから選択された少なくとも一つで置換されたベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環;のうちから選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0081】
例えば、化学式2で、A環は、下記化学式5Aで表示され、A環は、下記化学式5Bで表示されるが、それらに限定されるものではない:
【0082】
【化13A】
【0083】
【化13B】
【0084】
化学式5A及び5Bで、C、C、C、C、Z、Z、R23a及びR24aについての説明は、前述のものと同一であり、Q12についての説明は、R23aについての説明と同一であり、tは、1ないし4の整数である。
【0085】
添加剤は、下記化合物1ないし17のうち少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限定されるものではない:
【0086】
【化14A】
【化14B】
【0087】
添加剤は、前述のような第1化合物及び/または第2化合物以外に、下記化学式10で表示されるホスフェートをさらに含んでもよい:
【0088】
【化15】
【0089】
化学式10で、X11ないしX13は、互いに独立して、Si、GeまたはSnであり、R31ないしR39は、互いに独立して、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基及びC〜C10アリール基のうちから選択される。C〜C10アルキル基及びC〜C10アルケニル基は、直鎖型または分枝型でもある。
【0090】
化学式10で、X11ないしX13は、Siでもある。
【0091】
化学式10で、R31ないしR39は、C〜C10アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基)でもある。
【0092】
一実施形態によれば、ホスフェートは、化学式10で、X11ないしX13は、Siであり、R31ないしR39は、メチル基であるホスフェートでもあるが、それらに限定されるものではない。
【0093】
本明細書で、「置換もしくは非置換の」において、「置換」は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC〜C10のアルキル基(例:CF、CHF、CHF、CClなど)、C〜C10アルコキシ基、ヒドロキシ基(−OH)、ニトロ基(−NH)、アジド基(−N)、シアノ基(−CN)、アミド基(−NRR’、R及びR’は、互いに独立して、C〜C10アルキル基である)、アミド基(−C(=O)NRR’、R及びR’は、互いに独立して、C〜C10アルキル基である)、アミジノ基(−C(=NH)NRR’、R及びR’は、互いに独立して、C〜C10アルキル基である)、ヒドラジン基(−NHNRR’、R及びR’は、互いに独立して、C〜C10アルキル基である)、ヒドラゾン基(−CR=NHNR’R”、R、R’及びR”は、互いに独立して、C〜C10アルキル基である)、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、またはC〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基、C〜C10アルキニル基またはC〜C10ヘテロアルキル基で置換されたことを意味する。
【0094】
添加剤の含量は、電解質の総重量(100重量部)に対して、0.005重量部ないし5重量部、例えば0.05重量部ないし1重量部である。添加剤の含量範囲が前述の範囲を満足する場合、電極と電解質との間で、リチウムイオンの容易な皮膜が形成される。
【0095】
リチウム二次電池の電解質は、リチウムイオンの通路であるので、充放電時に、電解質が電極活物質と反応して酸化されたり還元されれば、リチウムイオンの移動が円滑ではなくなり、電池の充放電性能が低下する。
【0096】
第1化合物及び第2化合物の酸化電位は、電解質に含まれた非水性有機溶媒の酸化電位より低い。例えば、第1化合物及び第2化合物の酸化電位は、電解質に含まれた非水性有機溶媒の酸化電位より3V以上低い。それは、第1化合物及び第2化合物が、二重結合で連結された2以上の5員環を含むためである。従って、第1化合物及び/または第2化合物を含んだ電解質を採用したリチウム二次電池の作動時、第1化合物及び/または第2化合物は、非水性有機溶媒より速い速度で酸化及び/または分解され、リチウム二次電池の電極(例えば、正極)表面に、安定した皮膜を形成することができる。皮膜形成メカニズムは、明らかにはされてはいないが、第1化合物及び/または第2化合物の酸化による開環または重合反応によって、皮膜が形成されるものと見られる。正極表面に生成された皮膜は、電解質と正極活物質との直接的な接触を阻むことにより、電解質が正極の表面で酸化されることを防止することができ、従って、電池の充放電性能の低下を阻むことができる。このとき、形成される正極表面の皮膜を介して、リチウムイオンだけ通過し、電子は移動することができない。それにより、第1化合物及び/または第2化合物を含んだ電解質を採用したリチウム二次電池は、優秀な寿命特性及び効率特性を有することができる。
【0097】
非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を行うものであり、当分野で一般的に使用されるものであるならば、特別に制限されるものではない。例えば、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、非プロトン性溶媒、またはそれらの組み合わせであるものを使用することができる。
【0098】
さらに具体的には、カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)またはブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが使用される。
【0099】
エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルプロピオネート(MP)、エチルプロピオネート、n−プロピルプロピオネート、イソプロピルピオネート、γ−ブチロラクトン、4−デカノライド(decanolide)、5−デカノライド、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)またはカプロラクトン(caprolactone)などが使用される。
【0100】
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、プロピルブチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、1,2−ジメトキシエタン(DMF)、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフラン(THF)などが使用される。
【0101】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、エチルプロピルケトン及びシクロヘキサノンなどが使用される。
【0102】
また、アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用される。
【0103】
非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは、C〜C20鎖型構造,分枝型構造または環状構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシド(DMSO)などのアミド類;1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン類などが使用される。
【0104】
非水性有機溶媒は、単独で、または2種以上混合して使用することができ、2種以上混合して使用する場合の混合比は、目的とする電池の性能によって適切に調節することができ、それは、当該分野の当業者には周知である。
【0105】
カーボネート系溶媒の場合、誘電率(dielectric constant)や粘度(viscosity)などを考慮し、環状(cyclic)カーボネートと、線形(linear)カーボネートとを混合して使用することができる。その場合、環状カーボネートと線形カーボネートは、例えば1:1ないし1:9の体積比で混合して使用することができる。
【0106】
また、非水性有機溶媒は、カーボネート系溶媒に、芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含めることもできる。このとき、カーボネート系溶媒と、芳香族炭化水素系有機溶媒は、例えば、1:1ないし30:1の体積比で混合することができる。
【0107】
芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記構造式の芳香族炭化水素系化合物が使用される:
【0108】
【化16】
【0109】
上記構造式で、RないしRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C〜C10アルキル基、ハロアルキル基、またはそれらの組み合わせである。
【0110】
さらに具体的には、芳香族炭化水素系有機溶媒は、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−卜リクロロベンゼン、1,2,4−卜リクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,2,3−トリヨードベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、2,3−ジフルオロトルエン、2,4−ジフルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、2,6−ジフルオロトルエン、3,4−ジフルオロトルエン、3,5−ジフルオロトルエン、2,3,4−トリフルオロトルエン、2,3,5−トリフルオロトルエン、2,3,6−トリフルオロトルエン、3,4,5−トリフルオロトルエン、2,4,5−トリフルオロトルエン、2,4,6−トリフルオロトルエン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、3,5−ジクロロトルエン、2,3,4−トリフルオロトルエン、2,3,5−卜リクロロトルエン、2,3,6−卜リクロロトルエン、3,4,5−卜リクロロトルエン、2,4,5−卜リクロロトルエン、2,4,6−卜リクロロトルエン、2−ヨードトルエン、3−ヨードトルエン、4−ヨードトルエン、2,3−ジヨードトルエン、2,4−ジヨードトルエン、2,5−ジヨードトルエン、2,6−ジヨードトルエン、3,4−ジヨードトルエン、3,5−ジヨードトルエン、2,3,4−トリヨードトルエン、2,3,5−トリヨードトルエン、2,3,6−トリヨードトルエン、3,4,5−トリヨードトルエン、2,4,5−トリヨードトルエン、2,4,6−トリヨードトルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、またはそれらの組み合わせである。
【0111】
また、リチウム二次電池用電解質に含まれるリチウム塩は、有機溶媒に溶解され、電池内で、リチウムイオンの供給源として作用し、基本的なリチウム二次電池の作動を可能にする物質である。一実施形態によるリチウム二次電池用電解質のリチウム塩は、リチウム電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。例えば、リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCFSO、Li(CFSOC、Li(CFSON、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiBPh、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiCl、LiI、LIBOB(リチウムビスオキサレートボレート)、またはそれらの組み合わせであるものを使用することができる。かようなリチウム塩は、支持(supporting)電解塩として使用されもする。
【0112】
リチウム塩の濃度は、当分野で一般的に使用される範囲であり、その含量を特別に限定するものではないが、さらに具体的には、電解質内に、0.1ないし2.0Mの範囲で使用することができる。リチウム塩を前記濃度範囲で使用することによって、電解質濃度を適切に維持し、電解質の性能を改善させることができ、電解質の粘度を適切に維持させ、リチウムイオンの移動性を改善することができる。
【0113】
以下では、一実施形態による電解質を採用したリチウム二次電池について説明する。
【0114】
一実施形態による正極、負極及び電解質を含むリチウム二次電池であって、電解質は、リチウム塩、非水性有機溶媒及び添加剤を含み、添加剤は、化学式1で表示される第1化合物、及び化学式2で表示される第2化合物のうち少なくとも一つを含んだリチウム二次電池が提供される。ここで、化学式1、化学式2、非水性有機溶媒及びリチウム塩についての説明は、前述のところを参照する。
【0115】
正極と電解質との間には皮膜が形成されていてもよい。皮膜は、正極表面に、追加してコーティングなどの方法を介して形成された膜ではなく、電解質内で、添加剤の一部または全部から由来した膜である。
【0116】
従って、リチウム二次電池の電解質において、第1化合物及び/または第2化合物は、正極表面の皮膜形成に使用されるので、電解質内の第1化合物及び/または第2化合物の含量は、リチウム二次電池の作動後に減少する。
【0117】
例えば、リチウム二次電池の作動後、電解質内の第1化合物及び/または第2化合物の含量は、リチウム二次電池の作動前、電解質内の第1化合物及び/または第2化合物の含量より少ない。
【0118】
一実施形態によるリチウム二次電池は、電池の初期充電時、電解質に含まれた添加剤の一部または全部の酸化によって、正極表面に皮膜が形成される。それにより、リチウム二次電池は、4.3Vを超える高電圧で充電する場合にも、優秀な容量維持特性を有し、また優秀な寿命特性及び効率特性を有することができる。
【0119】
一実施形態によるリチウム二次電池の正極表面に形成された皮膜は、0.05nm厚ないし100nm厚を有することができ、例えば、0.1nmないし80nmであり、さらに具体的には、0.5nmないし50nmである。前記範囲の厚さを有することにより、リチウムイオンの伝達に不利な影響を及ぼさず、電解質の正極表面での酸化を効果的に防止することができる。
【0120】
図1は、一実施形態によるリチウム二次電池の正極表面に形成された皮膜を概略的に図示した断面図である。図1を参照すれば、正極集電体20上の正極活物質22の表面に、薄くて丈夫な皮膜26が形成され、リチウムイオン24が、正極から電解質28に効果的に伝達されるところを示している。
【0121】
図2は、一実施例によるリチウム二次電池の分解斜視図である。図2では、円筒状電池の構成を図示した図面を提示しているが、本発明のリチウム二次電池は、それに限定されるものではなく、角形やポーチ型が可能であるということは、言うまでもない。
【0122】
リチウム二次電池は、使用する分離膜と電解質との種類によって、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池及びリチウムポリマー電池に分類され、形態によって、円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などに分類され、サイズによって、バルクタイプと薄膜タイプとに分けることができる。本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、その形態が特別に制限されるものではなく、それら電池の構造と製造方法は、当分野に周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0123】
図2を参照して見て詳細に説明すれば、リチウム二次電池100は、円筒状であり、負極112;正極114;負極112と正極114との間に配置された分離膜;負極112、正極114及び分離膜113に含浸された電解質(図示せず);電池容器120;及び電池容器120を封入する封入部材140;を主な部分にして構成されている。かようなリチウム二次電池100は、負極112、正極114及び分離膜113を順に積層した後、スパイラル状に巻き取られた状態で、電池容器120に収納して構成される。
【0124】
負極112は、集電体及び集電体上に形成された負極活物質層を含み、負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0125】
集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはそれらの組み合わせであるものを使用することができる。
【0126】
負極活物質としては、当分野で一般的に使用されるものに特別に限定するものではないが、さらに具体的には、リチウム金属、リチウムと合金化可能な金属物質、遷移金属酸化物、リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質、またはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出可能な物質などを使用することができる。
【0127】
遷移金属酸化物の例としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などがあって、リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質の例としては、Si、SiO(0<x<2)、Si−Y合金(Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn−Y(Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などを挙げることができ、またそれらのうち少なくとも一つと、SiOとを混合して使用することもできる。元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせである。
【0128】
リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することができる物質としては、炭素物質として、リチウムイオン二次電池で、一般的に使用される炭素系負極活物質であればいかなるものでも使用することができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらを共に使用することができる。結晶質炭素の例としては、無定形、板状、フレーク(flake)状、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛を有することができ、非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソ相ピッチ炭化物または焼成されたコークスなどを挙げることができる。
【0129】
負極活物質層は、またバインダを含み、場合によって、導電材をさらに含んでもよい。
【0130】
バインダは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に望ましく付着させる役割を行い、その代表的な例として、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、酸化エチレンを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンラバー、アクリル化スチレン・ブタジエンラバー、エポキシ樹脂またはナイロンなどを使用することができるが、それらに限定されるものではない。
【0131】
導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさせず、電子伝導性材料であるならば、いかなるものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック(登録商標)、炭素ファイバ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属ファイバ;などを使用することができ、またポリフェニレン誘導体などの導電性材料を混合して使用することができる。
【0132】
正極114は、電流集電体、及び電流集電体に形成される正極活物質層を含む。
【0133】
電流集電体としては、Alを使用することができるが、それに限定されるものではない。
【0134】
正極活物質としては、当分野で一般的に使用されるものであり、特別に限定するものではないが、さらに具体的には、リチウムの可逆的な吸蔵及び放出が可能な化合物を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、またはそれらの組み合わせから選択される金属と、リチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができる。その具体的な例としては、LiCoO、LiNi1−xCo(0≦x<1)、Li1−x(Mは、MnまたはFe、0.03<x<0.1)、Li[NixCo1−2xMn]O(0<x<0.5)、Li[NiMn]O(0<x≦0.5)、Li1+x(Ni,Co,Mn)1−y(0<x≦1、0≦y<1,2≦z≦4)、LiM(Mは、Ti、V、Mn)、LiMMn2−x(Mは、遷移金属、0<x<1)、LiFePO、LiMPO(Mは、Mn、Co、Ni)、またはバナジウム酸化物とその誘導体とが使用され、具体的な例としては、V、V、VO(B)、V13、V、V、Ag11、AgVO、LiV、δ−Mn(0<y≦1)、δ−NH10、Mn0.816、LiV、Cu(0<x≦1)、Cr13などがある。それ以外に、M(XO(Mは、遷移金属、Xは、S、P、As、Mo、Wなど)、Li(PO(Mは、Fe、V、Tiなど)、LiMSiO(Mは、FeまたはMn)などの化合物が正極活物質として使用される。
代表的な正極活物質の例として、LiMn、LiNi、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMnO、LiFePO、Li1+x(Ni,Co,Mn)1−x(0.05≦x≦0.2)またはLiNi0.5Mn1.5などを挙げることができる。
【0135】
化合物表面に、コーティング層を有するものを正極活物質として使用することもでき、化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできる。該コーティング層は、コーティング元素の酸化物、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートなどのコーティング元素化合物を含んでもよい。それらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質でもある。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。コーティング層の形成工程は、化合物にかような元素を使用して、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング法、浸漬法など)でコーティングすることができるのであれば、いかなるコーティング方法を使用してもよく、これについては、当業者であるならば、周知の内容であるので、詳細な説明は省略する。
【0136】
正極活物質層はまた、バインダ及び導電材を含んでもよい。
【0137】
正極活物質の作動電位は、4.0Vないし5.5Vでもある。例えば、前記作動範囲で使用される正極活物質として、OLO正極活物質、5V級スピンネル構造の正極活物質を有することができる。
【0138】
バインダは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に好ましく付着させる役割を行い、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、酸化エチレンを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンラバー、アクリル化スチレン・ブタジエンラバー、エポキシ樹脂またはナイロンなどを使用することができるが、それらに限定されるものではない。
【0139】
導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさせず、電子伝導性材料であるならば、いなかるものでも使用可能である。その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック(登録商標)、炭素ファイバ;銅、ニッケル、アルミニウムまたは銀などの金属粉末または金属ファイバ;などを使用することができる。またポリフェニレン誘導体などの導電性材料を、1種または1種以上を混合して使用することができる。
【0140】
このとき、正極活物質、バインダ及び導電材の含量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルを使用することができる。例えば、正極活物質と、導電材及びバインダとの混合重量の重量比は、98:2ないし92:8、他の実施形態では、95:5ないし90:10であり、導電材及びバインダの混合比は、1:1.5ないし1:3であるが、それらに制限されるものではない。
【0141】
負極112と正極114は、活物質、導電材及びバインダを、溶媒内で混合して活物質組成物を製造し、該組成物を集電体に塗布して製造する。かような電極製造方法は、当該分野に周知の内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。溶媒としては、N−メチルピロリドンなどを使用することができるが、それに限定されるものではない。
【0142】
リチウム二次電池の種類によって、正極と負極との間に分離膜が存在する。かような分離膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、またはそれらの2層以上の多層膜が使用されもする。また、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層分離膜、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンまたはポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層分離膜のような混合多層膜が使用されもすることは、言うまでもない。
【0143】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載する実施例は、本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、本発明がそれらに制限されるものではない。
【0144】
また、ここに記載しない内容は、該技術分野で当業者であるならば、十分に技術的に類推することができるものでるので、その説明を省略する。
【実施例】
【0145】
(比較例A)
下記表1のような組成を有する電解質Aを製造した。
【0146】
次に、正極活物質であるLi1+x(Ni,Co,Mn)1−x(0.05≦x≦0.25)、N−メチルピロリドン(NMP)に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)バインダが5重量%溶解された溶液、及び導電材(デンカブラック(登録商標))を90:5:5の重量比で混合し、正極製造用スラリを製造した。正極製造用スラリを、厚さ15μmのアルミニウムホイルの上にコーティングした。それを90℃オーブンに入れ、約2時間一次乾燥させた後、120℃真空オーブンに入れ、約2時間二次乾燥させ、NMPを完全に蒸発させた後、圧延(rolling)及びパンチングし、直径1.5cm、厚み50〜60μmのコインセル用正極を得た。正極の容量は、約1.9mAh/cmであった。
【0147】
正極、グラファイト負極(ICG10H、三菱化学(株)製)、ポリエチレン分離膜(Celgard 3501、Celgard社製)及び電解質Aを利用して、2032規格のコインセルである電池を製造した。
【0148】
(比較例B)
電解質Aの代わりに、下記表1のような組成を有する電解質Bを使用したという点を除いては、比較例Aと同一の方法を利用して電池を製造した。
【0149】
(比較例C)
電解質Aの代わりに、下記表1のような組成を有する電解質Cを使用したという点を除いては、比較例Aと同一の方法を利用して電池を製造した。
【0150】
(実施例1)
電解質Aの代わりに、下記表1のような組成を有する電解質1を使用したという点を除いては、比較例Aと同一の方法を利用して電池を製造した。
【0151】
(実施例2)
電解質Aの代わりに、下記表1のような組成を有する電解質2を使用したという点を除いては、比較例Aと同一の方法を利用して電池を製造した。
【0152】
(実施例3)
電解質Aの代わりに、下記表1のような組成を有する電解質3を使用したという点を除いては、比較例Aと同一の方法を利用して電池を製造した。
【0153】
【表1】
【0154】
(評価例1:添加剤の酸化電位評価)
比較例B,C,及び実施例1ないし3で、添加剤として使用されたTMSPa、ビニレントリチオカーボネート、化合物1,15及び17に係わる酸化電位を、密度汎関数理論(DFT;B3LYP/6−311+G(d,p))に基づいた第一原理計算方法(ab-initio calculation;Gaussian 03)を利用して計算し、下記表2に示した。計算時に、次のような酸化反応を考慮した。
【0155】
M(solution)→M(solution)+e(gas)
【0156】
ここで、Mとeは、それぞれ添加剤分子及び添加剤電子を意味する。
【0157】
酸化電位に影響を及ぼす添加剤分子周辺の電解質環境を考慮するために、polarized continuum model(PCM)を使用した。
【0158】
【表2】
【0159】
一般的なカーボネート系非水性有機溶媒の酸化電位が、6.5ないし6.7Vである点を考慮すると、表2から、化合物1,15及び17は、非水性有機溶媒の酸化電位より3V以上低い酸化電位を有するということが分かる。それにより、化合物1,15及び17を含んだ電解質を採用した電池の作動時、化合物1,15及び17は、電解質に含まれた非水性有機溶媒より先に分解され、正極表面に効果的に皮膜を形成することができると予想される。
【0160】
(評価例2:寿命特性評価)
化成充放電(formation charge and discharge)
比較例AないしCと、実施例1ないし3とで製造された電池について、常温で化成充放電を2回行った。
【0161】
最初の化成段階では、電池について、0.1Cで4.65Vに達するまで定電流充電を実施し、その後0.05C電流に達するまで、定電圧充電を実施した。その後、0.1Cで2.5Vに逹するまで定電流放電を行った。2回目の化成段階は、最初の化成段階と同様に行った。
【0162】
前記で、1C充電とは、電池の容量(mAh)が1時間の充電によって到達されるように充電することを意味する。同様に、1C放電とは、電池の容量(mAh)が1時間の放電によっていずれも消耗するように放電することを意味する。
【0163】
標準充放電(standard charge and discharge)
化成充放電を経た比較例AないしC、及び実施例1ないし3で製造された電池について、0.5Cで4.55Vに充電した後、0.2Cで2.5Vに達するまで放電を行った。このときの充放電条件を標準充放電条件にし、このときの放電容量を標準容量にした。このように測定された標準容量は、3.2〜3.5mAhであった。
【0164】
サイクル容量維持率(capacity retention rate)(%)
次に、比較例AないしC、及び実施例1ないし3で製造された電池について、45℃の恒温チャンバで、1Cで4.55Vに充電した後、1Cで2.5Vに達するまで放電を実施した。このときの放電容量(最初のサイクルの放電容量)を測定した。そして、45℃のチャンバで、かような1C充電と1C放電とを反復しながら、各サイクルでの放電容量を測定した。総300回の充放電を行った。各サイクルで測定された放電容量から、サイクル容量維持率を計算した。各サイクルの容量維持率は、以下の数式1のように得られる。
【0165】
[数式1]
サイクル容量維持率(%)
=100×(n回目のサイクルでの放電容量/最初のサイクルでの放電容量)
【0166】
図3は、前記方法で得た放電容量を示したグラフであり、図4は、前記方法で得たサイクル容量維持率を示したグラフであり、表3は、300回充放電後の容量維持率値である。
【0167】
【表3】
【0168】
図3図4及び表3から、電解質1を採用した実施例1の電池が、電解質AないしCをそれぞれ採用した比較例AないしCの電池に比べ、優秀な寿命特性を有するということを確認することができる。
【0169】
(評価例4:高率特性評価)
比較例A及びB、並びに実施例1及び3で製造された電池に対して、定電流(0.1C)及び定電圧(1.0V、0.01C cut-off)条件で充電させた後、10分間休止(rest)し、定電流条件を、0.2C、0.33C、1C、2C及び5Cにそれぞれ変化させながら、2.5Vになるまで放電させることによって、各電池の効率放電特性(速度性能(rate capability))を評価し、その結果を図5及び表4に整理した。
【0170】
【表4】
【0171】
図5及び表4から、実施例1及び3の電池は、比較例A及びBの電池に比べ、優秀な効率特性を有するということを確認することができる。
【0172】
(評価例5:皮膜形成の確認)
評価例1で寿命特性評価が完了した実施例1の電池を、グローブボックス(glovebox)内で分解して正極を回収し、ジメチルカーボネートを利用して、正極に埋め込んだ電解質と塩とを拭き取った後で乾燥させ、正極表面を、走査電子顕微鏡を利用して観察し、その結果を図6に示した。
【0173】
図6によれば、正極活物質表面に、皮膜(例えば、「B」で表示された部分参照)が形成されていることを確認することができる。
【0174】
一方、評価例1で寿命特性評価が完了した比較例A及び実施例1の電池それぞれを、グローブボックス内で分解して正極を回収し、ジメチルカーボネートを利用して、正極に埋め込んだ電解質と塩とを拭き取って乾燥させた後、正極表面の物質をサンプリングし、真空条件下で、X線光電子分析(X−ray photoelectron spectroscopy)(Sigma Probe、Thermo、UK)を行い、その結果を図7に示した。
【0175】
図7によれば、実施例1の電池の正極表面から、サンプリングした物質のS 2p XPSスペクトルでは、ピークA(約162eVないし167eVのバインディングエネルギー範囲でのピーク)が観察されたが、比較例Aの電池の正極表面から、サンプリングした物質のS 2p XPSスペクトルでは、ピークAが観察されなかった。ピークAは、チオフェンのように、Sを含んだ環構造の存在を意味するものである。
【0176】
図6及び図7から、実施例1の電池の正極表面には、電解質1から由来した皮膜が形成され、皮膜は、電池を高温で作動させた後にも、分解されずに残留するということを確認することができる。
【0177】
実施例によるリチウム二次電池は、初期充放電時に、電解質の添加剤から電池の正極活物質の表面部分に皮膜が形成されることにより、電解質が正極活物質と直接接触することを阻むことができる。リチウムイオンは、皮膜を通過するが、電子は、皮膜を通過することができないので、高温下、高電圧下で、電解質が正極で電子を失って酸化されることを防止することができる。また、高温環境、高電圧環境で、添加剤が分解されることによって電解質が分解されることを防止することができる。従って、高電圧下及び高温下で、電解質の損失が防止されるので、リチウム二次電池の容量と効率とが高く維持され、長い寿命を有することができる。
【0178】
実施例によるリチウム二次電池の寿命改善及び高温保存改善は、電池が電気自動車に適用されるとき、極限環境で使用可能にさせ、高温に露出される危険性がある電力保存用途に適する。また、今後のさらに高電圧がかかる正極活物質、例えば、5V級スピンネル、高電圧ホスフェート正極活物質を含む電池に適用可能であると期待され、電気自動車用及び電力保存用電池のエネルギー密度改善に一翼を担うであろう。
【0179】
以上、本発明の望ましい実施例について説明したが、本発明は、それらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び添付した図面の範囲内で、さまざまに変形して実施することが可能であり、それも本発明の範囲に属するということは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明のリチウム二次電池用電解質及びそれを含むリチウム二次電池は、例えば、高電圧電源関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0181】
20 正極集電体
22 正極活物質
24 リチウムイオン
26 皮膜
28 電解質
100 リチウム二次電池
112 負極
113 分離膜
114 正極
120 電池容器
140 封入部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7