特許第6395298号(P6395298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395298
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/06 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   B06B1/06 Z
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-177064(P2014-177064)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-49504(P2016-49504A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水内 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 遥
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−261738(JP,A)
【文献】 特開2002−142475(JP,A)
【文献】 特開2004−221966(JP,A)
【文献】 特開平06−121559(JP,A)
【文献】 特開昭63−162174(JP,A)
【文献】 特開平09−179367(JP,A)
【文献】 吉田修子,外1名,接触力とすべりを提示可能なウェアラブル操縦装置によるロボットの物体操作に関する研究 Object Manipulation by a Robot using a Wearable Operation Device that can Dislpay Contact Force and Slip,ロボティクス・メカトロニクス 講演会2013 講演論文集 Proceedings of the 2013 JSME Conference on Robotics and Mechatronics,日本,一般社団法人 日本機械学会,2013年 5月21日,pp.915-918
【文献】 伊東信之,外5名,オプティカルマウスセンサを用いた滑り状態の制御に基づく適応把持の実現 Realization of adaptive grasping based on a slip control using an optical mouse sensor,第26回日本ロボット学会学術講演会予稿集CD−ROM 2008年 The 26th Annual Conference of the Robotics Society of Japan,日本,(社)日本ロボット学会,2008年 9月 9日,pp.2653-2655
【文献】 櫻井遥,外1名,超音波振動子による滑り提示手法の提案,第32回日本ロボット学会学術講演会 2014年 The 32nd Annual Conference of the Robotics Society of Japan,日本,一般社団法人日本ロボット学会,2014年 9月 4日,pp.697-700
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体間の滑りをユーザに体感させる体感装置と、
物体を把持する把持装置と、
を備え、
前記把持装置は、
検出対象から受ける力を測定する力センサと、
前記検出対象の滑りを検出する、滑り検出器としての光学センサと、
を含み、
前記体感装置は、
予め定められた面上に配置された複数の圧電素子と、
前記複数の圧電素子を制御して、前記滑りに応じた進行波を生成する制御部と
を有し、
前記制御部は、前記光学センサが検出した、滑りを示す滑り信号に応じて、前記複数の圧電素子を制御し、
前記制御部は、前記力センサが検出した、触感を示す触感信号に基づいて、前記複数の圧電素子を制御し、
前記触感を提示する場合の振動周波数の変動範囲が、前記滑りを提示する場合の振動周波数の変動範囲よりも広い、
システム
【請求項2】
前記複数の圧電素子は、前記面上において2次元配置され、
前記面上における第1方向に沿って、3つ以上の前記圧電素子が配置され、
前記面上における、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って、3つ以上の前記圧電素子が配置される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記体感装置は、前記ユーザに滑りを体感させる滑り提示部を有し、
前記滑り提示部は、前記複数の圧電素子を含み、
前記滑り提示部は、前記ユーザの指に装着される、
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記滑りの方向の情報を含む前記滑り信号を受信し、前記滑りの方向に対応する方向に進む前記進行波を生成する
請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記滑り検出器が検出した前記滑りを示す滑り信号を受信し、前記滑り信号に応じて前記複数の圧電素子を制御して前記滑りに応じた進行波を生成する
請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記滑り信号により示される滑りの持続時間が予め定められた閾値より小さい場合に、前記持続時間を前記閾値以上の値に変換して前記進行波を生成する
請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記滑り信号に示される滑りの速度に応じて、前記複数の圧電素子を振動させる振動周波数を制御して、前記進行波の進行速度を制御する
請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記振動周波数と前記複数の圧電素子の共振周波数との差分が、前記滑り信号に示される滑りの速度に応じた値となるように、前記振動周波数を制御する
請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御部は、前記共振周波数より大きい周波数帯および小さい周波数帯のうち、前記共振周波数からの周波数差に応じた振動振幅ゲインの低下がより小さい周波数帯で、前記振動周波数を制御する
請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御部は、触感検出器が検出した物体の触感を示す触感信号を更に受信し、前記触感信号に更に基づいて前記複数の圧電素子を制御する
請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御部は、前記触感信号に基づいて前記複数の圧電素子を振動させる振動周波数を制御し、前記滑り信号に基づいて前記進行波の進行速度を制御する
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
それぞれの振動子は表面が正六角形であり、それぞれの表面がハニカム状に配置される
請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御部は、前記複数の圧電素子を制御する2相の制御信号の相間の位相差を90度にするか、または、−90度にするかによって前記進行波の方向を反転させるか否かを制御する
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記滑り検出器は、前記把持装置が前記物体を把持した状態における、前記物体と前記把持装置との間の滑りを検出する
請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ユーザからの操作を受け付け、前記ユーザからの操作に応じて前記把持装置を制御する操作装置を更に備える
請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体感装置およびシステムに関する。
【0002】
従来、ユーザの手に電気刺激を与えることにより、滑りを擬似的に提示していた(例えば、非特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[非特許文献]
[非特許文献1]電気刺激を用いた滑り感提示における方向性,第17回日本バーチャルリアリティ学大会論文集,第17回日本バーチャルリアリティ学会大会,9月 2012年。
[特許文献]
[特許文献1]特開2010−271242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、人体の皮膚の導電性は個々人により異なる。それゆえ、電気刺激による滑りの感じ方には個人差が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、物体間の滑りをユーザに体感させる体感装置であって、予め定められた面上に配置された複数の振動子と、ユーザに体感させるべき滑りに応じて複数の振動子を制御して滑りに応じた進行波を生成する制御部とを備える体感装置を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、物体間の滑りを検出する滑り検出器と、検出器が検出した滑りをユーザに体感させる第1の態様に記載の体感装置とを備えるシステムを提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】物体を把持するシステム100を示す図である。
図2】把持装置20の部分拡大図である。
図3】操作装置50をユーザ60の左手62に装着した様子を示す図である。
図4】体感装置40をユーザ60の右手64に装着した様子を示す図である。
図5】体感装置40の滑り提示部42の部分拡大図を示す図である。
図6】滑り提示部42、および、滑り提示部42を制御する制御部10の例を示す図である。
図7】他の例における体感装置40の滑り提示部42の部分拡大図を示す図である。
図8】滑り提示部42を制御する制御部10の他の例を示す図である。
図9】圧電素子44をマトリクス状に配置した例を示す図である。
図10】圧電素子44の周波数に対する振幅を示す図である。
図11】システム100を用いて、滑り速度に応じて圧電素子44の振動周波数を制御した様子を示す図である。
図12】把持装置20における手首部21および指部22の関節角度と滑り速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、物体を把持するシステム100を示す図である。システム100は、把持装置20、体感装置40および操作装置50を備える。
【0010】
体感装置40は、制御部10および滑り提示部42を有する。体感装置40は、滑り検出器23が検出した滑りを、滑り提示部42を通じてユーザ60に体感させる。滑り提示部42は、例えば超音波振動子を有する。ユーザ60は、例えば超音波振動子のステータに直に手を触れることにより、物体間に生じた滑りをステータに生成された進行波として体感することができる。
【0011】
滑り提示部42は、物体間の滑りだけではなく、物体に触れたときの触感をユーザ60に提示することができる。ユーザ60は、例えば超音波振動子のステータに直に手を触れることにより、物体に触れたときの触感をステータに生成される振動として体感することができる。なお、ユーザ60が滑り提示部42を通じて体感する滑りは、ユーザ60の手の指に限定されず、ユーザ60の手の甲または手の平であってもよく、または、ユーザ60の手以外における他の部位の皮膚であってもよい。
【0012】
ある利用形態において、ユーザ60は、例えばバーチャルリアリティ空間内においてバーチャルな手が物体に触れた場合の滑りおよび触感を、滑り提示部42を通じて体感することができる。なお、本明細書における物体は、現実空間の物体だけでなくバーチャルリアリティ空間における物体も含むとしてよい。また、他の利用形態においては、ユーザ60は、把持装置20が物体を把持する場合において、把持装置20と当該物体との間の滑りおよび触感を滑り提示部42を通じて体感することができる。
【0013】
本例の把持装置20は、手首部21および複数の指部22を有する。把持装置20は、手首部21および複数の指部22を用いて物体としての蓋35の二以上の点を把持する。なお、蓋35はいわゆるスクリューキャップであり、円筒状の容器30に対して回転して装着されている。本例では、把持装置20が蓋35を回転させるときの、把持装置20と蓋35との間の滑りを、ユーザ60に提示する場合を説明する。ただし、体感装置40がユーザ60に提示する滑りの態様は本例に限定されない。体感装置40は、物体間の多様な滑りをユーザ60に提示することができる。
【0014】
把持装置20の複数の指部22は、蓋35と接する面において物体間の滑りを検出する滑り検出器23を有する。本例の把持装置20は2つの指部22を有し、2つの指部22の各々が、滑り検出器23を有する。
【0015】
複数の指部22が蓋35を把持した状態で手首部21が回転することで、蓋35を回転させる。滑り検出器23は、把持装置20が蓋35を把持した状態における、蓋35と複数の指部22との間における滑りを検出する。滑り検出器23は、任意の方向における蓋35と指部22との間の滑りを検出することができる。
【0016】
滑り検出器23は、滑り検出器23が検出した滑りを示す滑り信号を、体感装置40の制御部10に出力する。滑り信号は、滑りの方向、滑り速度および滑り時間の情報を含む。なお、複数の指部22は、力センサおよび近接センサ等の他のセンサも有してよい。
【0017】
力センサは、検出した力を触感信号として、制御部10に出力する。触感信号は、検出した力の情報に加えて、物体の表面がつるつるした状態であるかまたはざらざらした状態であるか等の表面の状態を示す情報を含む。
【0018】
制御部10は、滑り提示部42を制御してユーザ60に対して提示したい触感を提示することができる。ある利用形態においては、体感装置40は、バーチャルリアリティ空間内においてバーチャルな手が物体に触れた場合の触感を、ユーザ60に提示してよい。また、他の利用形態においては、把持装置20が物体の画像を撮影してパターンマッチングを行うことにより、把持装置20は制御部10に触感信号を出力する。これにより体感装置40は、撮影した物体の材料を特定してよい。体感装置40が特定された材料の触感に対応する振動周波数で滑り提示部42を振動させることにより、ユーザ60は、物体を触った場合の触感を体感することができる。なお、把持装置20が十分に早い応答性(例えば、ヒトの触覚の高周波感覚器パチニ小体の最大周波数である300Hz程度)を有する力覚センサを備える場合には、当該力覚センサが十分に早いサンプリング周期(例えば、300Hzの振動を再現が可能な600Hz以上)で物体の振動を取得してよい。また、把持装置20は、取得した物体の振動を触感信号として体感装置40に出力してよい。体感装置40は、当該触感信号を解析することにより物体の振動周波数を算出してよい。体感装置40は、当該振動周波数で滑り提示部42を振動させることにより、ユーザ60に物体の触感を体感させてよい。
【0019】
一例であるが、制御部10は、つるつるとした触感をユーザ60に体感させる場合には、触感の平滑度が高くなるにつれて、より高い周波数で滑り提示部42を振動させる制御信号を出力してよい。このとき、振動の振幅は、平滑度が高くなるにつれて小さくしてよい。振動の振幅は、振動子を制御する信号の電圧等で制御することができる。つまり、より平滑な面を提示したい場合には、微細で高周波の振動をユーザ60に与えることで、触感を体感させることができる。これに対して、制御部10は、ざらざらとした触感をユーザ60に体感させる場合には、触感の平滑度が低くなるにつれて、より低い周波数で滑り提示部42を振動させる制御信号を出力してよい。このとき、振動子の振幅は、平滑度が低くなるにつれて大きくしてよい。
【0020】
制御部10は、滑り信号または触感信号に対応する制御信号を滑り提示部42に出力する。滑り提示部42は、滑り信号に応じた進行波を生成してユーザ60に提示する。当該進行波が進行する方向、進行速度および進行波をユーザ60に提示する時間は、滑り信号で示される滑りの方向、滑り速度および滑り時間に応じて制御する。
【0021】
例えば直線状に配置した振動子を用いた場合、振動子が生成する2つの定在波の位相を90度異ならせるか、−90度異ならせるかを制御することにより、進行波の進行方向を制御することができる。また、滑り提示部42が2次元に配置された複数の振動子を有する場合、任意の方向の進行波を生成することができる。
【0022】
また、振動子を振動させる振動周波数を制御することで、進行波の進行速度を制御することができる。制御部10は、滑り速度が相対的に大きい場合には、共振周波数との差が相対的に大きい振動周波数で、滑り提示部42の振動子を振動させる制御信号を出力してよい。これに対して、制御部10は、滑り速度が相対的に小さい場合には、共振周波数との差が相対的に小さい振動周波数で滑り提示部42の振動子を振動させる制御信号を出力してよい。なお、進行波の進行速度は、滑り検出器23が検出した滑り速度と同一でなくともよい。また、振動子を振動させる期間を制御することで、進行波をユーザ60に提示する期間を制御することができる。
【0023】
ユーザ60は、滑りおよび触感を体感した後、自身に身に着けた操作装置50を通じて把持装置20の動作を修正する。例えばユーザ60は、蓋35を開けようとしている場合に滑りを感じた場合には、蓋35を適切な力で把持できるように、把持装置20を操作することができる。操作装置50は、ユーザ60からの操作を受け付けて、制御部10を通じ、ユーザ60からの操作に応じて把持装置20を制御する。操作装置50は、例えば、ユーザ60の指および手首につけた操作装置50の位置を把持装置20の手首部21および指部22に反映させる。また、操作装置50は、操作装置50が検出したユーザ60の各指および手首が各方向に印加している押力、引っ張り力、回転力等を、把持装置20の手首部21および指部22に反映させる。指等が印加している力は、例えばユーザ60の指に一端が固定されたワイヤ等が引っ張られる力から検出することができる。
【0024】
なお、制御部10は、体感装置40と一体に設けられていなくともよい。例えば制御部10は、把持装置20に設けられていてよく、体感装置40および把持装置20とは独立したコンピュータであってもよい。また、制御部10の機能の一部が、把持装置20または独立したコンピュータに設けられてもよい。
【0025】
図2は把持装置20の部分拡大図である。指部22は、その内側面に滑り検出器23としての光学センサ24、力センサ26および近接センサ28を有する。本明細書において、指部22の内側面とは、蓋35を把持した状態において指部22と蓋35とが接する部分における指部22の面である。
【0026】
光学センサ24は、蓋35の位置を検出する。また、光学センサ24は、蓋35と、指部22との相対位置の変化により蓋35の滑りを検出する。光学センサ24は、コンピュータ等に仕様される光学マウスと同様に、蓋35の表面の模様等の相対位置変化に基づいて、蓋35の相対位置の変化を検出してよい。光学センサ24の焦点は、指部22の内側面の表面近傍に合わせられている。したがって、指部22が蓋35を把持している場合には、光学センサ24の焦点は蓋35に合う。これに対して、指部22が蓋35を把持していない場合には、光学センサ24の焦点は蓋35に合わない。よって、光学センサ24の焦点が蓋35に合っていない場合は、光学センサ24は蓋35の位置変化を検出しない。この場合、把持装置20は、滑り信号を生成しない。
【0027】
本例の光学センサ24は、Avago社製オプティカルセンサADNS−9500である。指部22と蓋35との間の滑り量は、解像度1630cpi(分解能15.68μm)で測定することができ、滑り速度は150ips(3.81m/s)まで測定することができる。
【0028】
力センサ26は、x軸、y軸およびz軸方向の力を検出する。力センサ26を用いることにより、指部22が三軸方向において蓋35から受ける力を測定することができる。近接センサ28は、非接触で蓋35等の検出対象を検出する。近接センサ28を用いることにより、指部22が蓋35に接触する前において蓋35の位置を検出することができる。
【0029】
図3は、操作装置50をユーザ60の左手62に装着した様子を示す図である。操作装置50は、複数の指操作部52および一つの手首操作部54を有する。操作装置50は、ユーザ60が複数の指操作部52および一つの手首操作部54の関節角度を調節することにより、操作信号を制御部10に出力する。
【0030】
例えば、ユーザ60の各指に装着された複数の指操作部52は、操作前の左手62の指の予め定められた関節角度と、操作後の左手62における指の関節角度とのずれを表す信号を操作信号として制御部10に出力する。また例えば、ユーザ60の手首に装着された手首操作部54は、操作前の左手62における手首の予め定められた関節角度と、操作後の左手62の手首の関節角度とのずれを表す信号を操作信号として制御部10に出力する。
【0031】
制御部10は、操作信号を受けて、把持装置20の手首部21の関節角度および指部22の関節角度を調整する。なお、関節角度のずれを検出する方法は上記に限定するものではなく、他の検出方法を適用してよい。
【0032】
さらに、操作装置50は、ユーザ60が指操作部52に接続されたワイヤの引っ張り力に抗して指操作部52を動かすことにより、力の情報を有する操作信号を制御部10に出力してよい。制御部10は、操作信号を受けて、指部22が蓋35に対して与える力を調整してよい。
【0033】
図4は、体感装置40をユーザ60の右手64に装着した様子を示す図である。体感装置40は、複数の滑り提示部42を有する。滑り提示部42は、光学センサ24が検出した滑りをユーザ60に提示する。本例では、滑り提示部42は、光学センサ24が検出した滑りを、超音波振動子のステータにおける進行波としてユーザ60に提示する。
【0034】
図4では、把持装置20の指部22が2つ存在することに対応して、滑り提示部42を親指および人差し指に装着する例を示す。しかしながら、滑り提示部42をいくつ設けるか、および、滑り提示部42をどの指に装着するかは、把持装置20の指部22に対応させて適宜定めてよい。なお、左手62に体感装置40を装着し、右手64に操作装置50を装着してもよい。また、体感装置40および操作装置50を一体化して、同一の手に装着してもよい。
【0035】
図5は、体感装置40の滑り提示部42の部分拡大図を示す図である。図中の第1方向と第2方向とは、同一平面において互いに垂直である方向を示す。第3方向は、第1方向及び第2方向の両方に垂直な方向である。滑り提示部42は、予め定められた面上に配置された複数の振動子としての複数の圧電素子44を有する。予め定められた面とは、滑り提示部42とユーザ60の指とが接する面である。なお、圧電素子44とユーザ60の指との間には、進行波が生成されるステータが配置されてよい。
【0036】
滑り提示部42は、予め定められた面上において2次元配置された複数の圧電素子44を有する。2次元配置とは、例えば、2つの圧電素子44を結ぶ直線上には存在しない圧電素子44が存在することを指す。つまり、少なくとも3つの圧電素子44の全てが同一直線状には無いことを意味する。
【0037】
圧電素子44は、圧電素子と当該圧電素子の厚み方向の両端に設けられた電極とを有する。ただし、図5において当該電極は図示していない。圧電素子44は、厚み方向の両端に設けられた電極間に電圧が生じると、厚み方向に伸びたり縮んだりする。なお、厚み方向とは第3方向と読み替えてよい。
【0038】
複数の圧電素子44のそれぞれは、表面が正六角形である。なお、圧電素子44の表面とは、圧電素子44の第3方向における両端のうちのいずれかの端部における面を指す。複数の圧電素子44のそれぞれの表面は、ハニカム状に配置される。これにより、2次元の全ての方向において、単位面積あたりに設ける圧電素子44の数を均一にすることができる。なお、圧電素子44をハニカム状に配置する例は一例に過ぎない。他の形態においては、圧電素子44を一つの方向に直線状に並べて配置したり、マトリクス状に配置したり、または、円環状に配置してもよい。
【0039】
制御部10は、把持装置20における指部22の滑りの方向に対応する方向に進む進行波を滑り提示部42に生成する。例えば制御部10は、ユーザ60の指に対して滑り提示部42が提示する進行波の速度が、指部22に対する蓋35の滑り速度と同一となるよう、進行波を生成する。さらに、制御部10は、ユーザ60の指に対して滑り提示部42が提示する滑り量(進行波の速度および時間の積)が、指部22に対する容器30の滑り量と同一となるよう、進行波の生成時間を調節する。
【0040】
滑り提示部42は、第1方向において最近接である複数の圧電素子44を振動させることにより、第1方向と平行である第1進行波を生成することができる。また、滑り提示部42は、第2方向において次近接である複数の圧電素子44を振動させることにより、第2方向と平行である第2進行波を生成することができる。
【0041】
図6は、滑り提示部42、および、滑り提示部42を制御する制御部10の例を示す図である。なお、滑り提示部42におけるI−Iは、図5のI−Iにおける断面であることを示す。ただし、制御部10の部分は断面図ではなく、平面的な模式図に過ぎない。滑り提示部42は、複数の圧電素子44と、複数の圧電素子44に接して設けられたステータ49とを有する。制御部10は、電源部13、電源部13からの出力を選択する選択部15、ならびに、電源部13および選択部15を制御するCPU18を有する。
【0042】
圧電素子44の各々は、第3方向の両端において、第1電極46および第2電極48に接続する。複数の第1電極46は互いに電気的に独立である。複数の第1電極46は、制御部10の選択部15を通じて、電源部13と接続する。第2電極48は複数の圧電素子44に共通して設けられる。当該第2電極は、接地電位を有する。
【0043】
ステータ49は、圧電素子44と皮膚の間の媒体である。つまり、ステータ49は、ユーザ60の肌が直に接する、滑り提示部42の一部分である。ステータ49は、各圧電素子44が第3方向において伸縮する変位を反映して、第3方向において伸縮する。通常の超音波振動子では、ステータ49に接触してロータが設置されるが、本発明において、ロータは用いない。これにより、ボールまたはロータを用いてユーザに滑りを提示する場合と比較して、物体間の実際の滑りにより近い滑りをユーザに提示することができ、かつ、装置を小型化することができる。
【0044】
ステータ49の材料は、本例ではアルミニウム等の金属である。しかし、材料は金属に限定されず、ゴムまたは他の弾性変形が可能な材料を用いてもよい。ゴムを用いることにより、ユーザ60がステータ49に触れた感触を柔らかくすることができ、金属を用いる場合とは異なった滑りおよび触感をユーザ60に提示することができる。
【0045】
電源部13は、各位相が(sinωt)の電源14−1、(cosωt)の電源14−2、(−sinωt)の電源14−3、および、(−cosωt)の電源14−4からなる4つの電源14を有する。電源14の周波数ωは、CPU18の周波数制御信号により制御される。4つの電源は、それぞれ選択部15に接続する。
【0046】
選択部15は、CPU18の選択信号に従って、電源14−1から電源14−4のいずれかを圧電素子44の第1電極46に電気的に接続する。なお、選択部15が電源14と第1電極とを電気的に接続しない場合には、勿論、圧電素子44は振動しない。図6の例では、選択部15は、電源14−1と圧電素子44−1の第1電極46とを接続する。
【0047】
選択部15は、電源14−1から電源14−4を周期的に圧電素子44の複数の第1電極46に接続させる。具体的には、選択部15−1から選択部15−4は、電源14−1から電源14−4と圧電素子44−1から圧電素子44−4の第1電極46とをこの順で接続する。ただし、選択部15−1は、電源14−1と圧電素子44−5の第1電極46とを接続する。したがって、圧電素子44−1から圧電素子44−5の第1電極46は、(sinωt)、(cosωt)、(−sinωt)、(−cosωt)および(sinωt)の順で電源14と接続する。
【0048】
制御部10のCPU18は、滑り信号に応じて複数の圧電素子44を制御して滑りに応じた進行波を生成する。具体的には、CPU18は、指部22が検出した滑り速度および滑り量を滑り信号として受け取り、進行波の速度および生成時間によってステータ49を通じて滑り速度および滑り量を再現する。
【0049】
CPU18は、滑り信号に基づいて進行波の進行速度を制御する。ステータ49に生成される進行波の速さは圧電素子44の第1電極46に与える電源14の周波数ωに比例する。よって、CPU18は滑り検出器23が検出した滑り速度に比例するように、電源14の周波数ωを制御する。
【0050】
CPU18は、選択信号を通じて、複数の圧電素子44の動作を制御する制御信号を生成する。制御信号は、少なくとも(sinωt)および(cosωt)の2相の制御信号を有する。CPU18は、当該2相の制御信号の相間の位相差を90度にするか、または、−90度にするかによって進行波の方向を反転させるか否かを制御する。
【0051】
例えば、圧電素子44−1から圧電素子44−4がこの順で(sinωt)、(cosωt)、(−sinωt)および(−cosωt)の各電源14と接続している場合、+90度ずつ位相差があるので、滑り提示部42は図面左向きの進行波を生成する。これに対して、圧電素子44−1から圧電素子44−4がこの順で(−cosωt)、(−sinωt)、(cosωt)および(sinωt)の各電源14と接続している場合、−90度ずつ位相差があるので、滑り提示部42は図面右向きの進行波を生成する。これにより、滑り提示部42は、第1方向と平行な方向において進行波を生成する。
【0052】
ユーザ60は、進行波に触れることにより、電気刺激によって滑りを提示する場合と比較して、より現実的に、より直感的に、かつ、より容易に滑りを体感することができる。また、電気刺激による滑り提示の場合と比較して、滑りの感じ方における個人差を小さくすることができる。さらに、ユーザ60は、把持装置20において物体の滑りを制御するべく、操作装置50を通じて把持装置20を制御することができる。例えば、ユーザ60は、体感装置40によって滑りを感じた場合に、操作装置50を通じて把持装置20を制御して、指部22と蓋35との滑りを止めるべく指部22をさらに強く蓋35に押し付けることができる。
【0053】
体感装置40が物体間の滑りをよりリアルにユーザ60に提示することは、物体間の滑りを止めることができるというメリットに加えて、物体間の滑りを積極的に利用して物体を移動させることができるというメリットも有する。それゆえ、ある利用形態においては、ある物体が把持装置20の指部22に対して重力方向にゆっくりと滑る場合に、当該物体が完全に指部22から離れて落下する前に、当該物体をある場所から他の場所へ移動させることもできる。
【0054】
なお、CPU18は、周波数制御信号により各電源14の周波数を調整する。また、CPU18は、触感検出器としての力センサ26が検出した蓋35の触感を示す触感信号を受信し、当該触感信号に基づいて複数の圧電素子44を制御する。例えば、CPU18は、触感信号に基づいて複数の圧電素子44を振動させる振動周波数を制御する。
【0055】
図7は、他の例における体感装置40の滑り提示部42の部分拡大図を示す図である。本例の体感装置40の制御部10は、図6の例とは異なる。本例の制御部10は滑り提示部42を制御して、滑り提示部42が第1進行波と第2進行波とを重ねあわせてベクトル合成することにより、2次元平面における任意の方向の進行波を生成することができるようにする。本例の制御部10は、第1方向または第1方向に対して±60度、±120度もしくは180度の方向において進行波を生成するよう、滑り提示部42を制御してよい。図7では、第1方向に対して+60度をなす斜め方向の進行波の例を示す。
【0056】
ユーザ60は任意の方向の進行波に触れた感覚により、把持装置20の指部22と容器30との間に発生する滑りを体感することができる。なお、図7において示した進行波が進む方向は例示に過ぎず、この他の方向において滑りを提示することも可能である。
【0057】
図8は、滑り提示部42を制御する制御部10の他の例を示す図である。本例においては、選択部15を設けず、かつ、各圧電素子44の第1電極46には各々独立した電源16が設けられる点で、図6の例とは異なる。
【0058】
CPU18は、周波数制御信号、位相制御信号および振幅制御信号を各電源16に入力する。これによりCPU18は、各電源16の周波数、位相および振幅を調整する。また、CPU18は、各電源16と複数の圧電素子44の第1電極46との間に設けられたスイッチのオン・オフを制御する。これによりCPU18は、各電源16と各第1電極46との電気的導通を制御する。
【0059】
本例では説明のために、第1方向をx方向とし、第2方向をy方向とする。そして、x方向においてx=xの位置における圧電素子44の第1電極46の電位u(x)をu(x)=Asin(ωt+φ)とする。また、y方向においてy=yの位置における圧電素子44の第1電極46の電位u(y)をu(y)=Asin(ωt+φ)とする。なお、φおよびφは、u(x)およびu(y)がそれぞれx方向およびy方向の進行波を示すように、圧電素子44の位置に応じて適宜定められる位相である。なお、圧電素子44の位置は、圧電素子44の中心の位置を指してよい。そして、それぞれの圧電素子44について、座標(x,y)における圧電素子44の第1電極46の電位u(x,y)をu(x,y)=u(x)+u(y)に制御する。これにより、x方向の進行波とy方向の進行波とは合成される。また、ωおよびωを制御することで、x方向の進行波およびy方向の進行波のそれぞれの進行速度を制御することができる。また、AおよびAを制御することで、x方向の進行波およびy方向の進行波のそれぞれの振幅を制御することができる。x方向の進行波およびy方向の進行波の振幅または進行速度の比率を制御することで、合成される進行波の進行方向を制御することができる。
【0060】
各電源16は、斜め方向の進行波をステータ49に生成するべく、各々の圧電素子44の第1電極46に印加する電位u(x,y)を調整する。これにより、制御部10は、滑り提示部42における2次元平面の任意の方向において、進行波を生成することができる。
【0061】
図9は、圧電素子44をマトリクス状に配置した例を示す図である。各圧電素子44の第1電極は、図8の例と同様に、個別の電源16に接続する。本例においても、第1方向をx方向とし、第2方向をy方向とする。そして、x方向においてn番目の位置における圧電素子44の第1電極46の電位u(x)を、u(x)=Asin(ωt+φ)とする。また、y方向においてm番目の位置における圧電素子44の第1電極46の電位u(y)を、u(y)=Asin(ωt+φ)とする。なお、φ、φおよび圧電素子44の位置は、図8の例と同様である。進行波の合成、進行速度の制御、進行波の振幅および進行波の進行方向の制御についても、図8の例と同様である。制御部10は、滑り提示部42における2次元平面の任意の方向において、進行波を生成することができる。
【0062】
図10は、圧電素子44の周波数に対する振幅を示す図である。横軸は、圧電素子44に与えられる電力の周波数ωを示す。当該周波数ωは、圧電素子44の振動周波数に対応する。縦軸は、圧電素子44の振幅を示す。圧電素子44は共振周波数において、最大の振幅を有する。共振周波数から離れるに従い、圧電素子44の振幅は小さくなる。
【0063】
制御部10は、共振周波数からの周波数差に応じた振動振幅ゲインの低下がより小さい周波数帯で、圧電素子44の振動周波数を制御してよい。つまり制御部10は、共振周波数より大きい周波数帯および小さい周波数帯のうち、共振周波数より大きい周波数帯を使用して、圧電素子44の周波数ωを制御してよい。これにより、滑り提示部42は、より効率的にユーザ60に対して進行波を提示することができる。
【0064】
図11は、システム100を用いて、滑り速度に応じて圧電素子44の振動周波数を制御した様子を示す図である。横軸は時間[s]であり、縦軸の左側は滑り速度[μm/s]であり、縦軸の右側は圧電素子44の振動周波数[kHz]である。なお、図10において、滑り方向は常に正である。つまり、図10は一方向にだけ回転させた結果を示す図である。
【0065】
体感装置40の制御部10は、滑り信号に示される滑りの速度に応じて、複数の圧電素子44を振動させる振動周波数を制御する。本例では、ユーザ60に提示するすべり速さを9段階に設定する。そして、当該9段階に対応させて、複数の圧電素子44の共振周波数である47[kHz]からのずれ量を、2.0[kHz]、2.4[kHz]、2.8[kHz]‥5.2[kHz]と9段階で設定する。つまり、圧電素子44の振動周波数と共振周波数との差分が、滑り信号に示される滑りの速度に応じた値となるように、振動周波数を制御する。これにより、制御部10は、滑り提示部42における進行波の進行速度を制御する。
【0066】
共振周波数である47[kHz]に最も近い49[kHz]のとき、滑り提示部42は最大の滑り速度をユーザ60に提示する。また、共振周波数である47[kHz]から最も遠い52.2[kHz]のとき、滑り提示部42は最小の滑り速度をユーザ60に提示する。但し、同じ振動周波数であっても、ユーザ60がステータ49を押す力の大小に依存して、進行波の速度は変化し得る。それゆえ、操作中において、ユーザ60はステータ49を一定の力で押し続けるとよい。
【0067】
なお、触感をユーザ60に提示する場合、制御部10は、共振周波数から一桁程度低い周波数から、一桁程度高い周波数にわたる範囲で、振動周波数を制御してよい。このように、触感を提示する場合の振動周波数の変動範囲は、滑りを提示する場合の振動周波数の変動範囲よりも広い。制御部10は、滑りと触感を同時に提示する場合、まず触感に応じた振動周波数を決定してよい。そして、当該振動周波数の近傍で、滑り速度の変化に応じて振動周波数を微小に変動させる。これにより、滑り速度の変動と、触感とをユーザ60に同時に提示することができる。なお、触感に対応する振動周波数では、圧電素子44の振動振幅が小さくなりすぎ、ユーザ60に滑りを体感させることが困難な場合、制御部10は、振動振幅の減衰を補償すべく圧電素子44を制御する信号の電力を大きくしてよい。制御部10には、図8に示したような圧電素子44の周波数に対する振幅の関係を示すデータが予め与えられてよい。制御部10は、当該データに基づいて制御信号の電力を制御してよい。
【0068】
また、制御部10は、滑り速度に応じて進行波の進行速度を制御すべく、ステータ49を圧電素子44に押圧する圧力を制御してもよい。ステータ49を圧電素子44に押しつける力を大きくするほど、進行波の進行速度を早くすることができる。滑りと触感を同時に提示する場合、制御部10は、振動周波数を触感に基づいて決定してよい。そして、当該振動周波数における進行波の速度が、ユーザ60に提示すべき進行速度になるように、ステータ49を圧電素子44に押圧する圧力を制御してもよい。なお制御部10は、ユーザ60に提示すべき同一の滑り速度に対して、触感を同時に提示する場合と、触感を同時に提示しない場合とで、圧電素子44の振動周波数を異ならせてよい。
【0069】
図12は、把持装置20における手首部21および指部22の関節角度と滑り速度との関係を示す図である。横軸は時間[s]であり、縦軸の左側は滑り速度[μm/s]であり、縦軸の右側は手首部21および指部22の関節角度[deg]である。
【0070】
本例のシステム100においては、ユーザ60と把持装置20とは16[ms]ごとに信号のやり取りをする。そして、滑り提示部42が滑りをユーザ60に提示する最小時間は、80[ms]とする。それゆえ、滑り提示部42が滑りをユーザ60に提示し続ける滑り持続時間は、80+16×N(N:自然数)[ms]となる。但し、滑り持続時間内においては、滑りをユーザ60に提示する進行波の速度は変化する。
【0071】
本例は、把持装置20における手首部21および指部22の関節角度を変えながら、容器30に対して蓋35を回転させた結果である。20[s]から35[s]の時間においては、滑り速度は正および負に大きく振れている。比較的に大きな滑り速度であれば、ユーザ60は滑り提示部42を通じて滑り速度および滑り長さを体感することが容易である。
【0072】
しかし、35[s]から50[s]の時間に存在するような微小時間の滑りは、たとえ、滑り提示部42が滑りを提示していたとしても、微小時間であるが故に、ユーザ60が当該滑りを体感することが困難である場合がある。そこで、本例においては、制御部10は、滑り信号により示される滑りの持続時間が予め定められた閾値より小さい場合に、滑りの持続時間を閾値以上の値に変換して進行波を生成する。当該予め定められた閾値は、例えば80[ms]である。
【0073】
制御部10が滑り速度はそのままにして、滑り時間を引き延ばす処理を行ってよい。これにより、体感が困難な微小時間であっても、把持装置20の指部22が蓋35に対する滑りを体感することができる。
【0074】
なお、滑り持続時間の閾値は、80[ms]に限定されず、人間が感知することが困難な時間として適宜定めてよい。また、変換後の滑り持続時間は、人間が検知できる程度の長さとして適宜定めてよい。なお、上述の持続時間の閾値判定および持続時間の引き伸ばし処理は、制御部10が行ってもよいし、滑り検出器23または別個のコンピュータが行ってもよい。
【0075】
以上説明した体感装置40によれば、滑りを模擬した進行波をユーザに接触させるので、電気刺激による滑りの模擬に比べてより現実に近く、且つ、個人差の少ない滑りを体感させることができる。なお、ローラ等をユーザに接触させて滑りを模擬する場合、ローラまたはローラの制御モータの慣性によって、滑りの持続時間を精度よく表現することができない。これに対して体感装置40によれば、進行波の持続時間は電気的に精度よく制御できるので、滑りの持続時間を精度よく制御することができる。
【0076】
また、特許文献1等には、物体間の滑りを検出する技術が開示されており、滑り情報をユーザに提示することの必要性が記載されている。しかし、どのような技術でユーザに滑りを提示するかについては何ら開示されていない。このため、現実に近く、且つ、個人差の小さい滑りを提示することはできない。
【0077】
ユーザ60に提示する滑り感に個人差が大きいと、ユーザ60は把持装置20等の非操作装置を適切に操作することが難しくなる。例えば、把持装置20に過大な力で物体を把持させてしまい、物体を破損する可能性が高まり、または、把持装置20に過小な力で物体を把持させてしまい、物体を落としてしまう可能性が高まる。また、ユーザ60が手術用の非操作装置を操作する場合には、装置をより精度よく操作しなければならず、上記の課題がより顕著になる。体感装置40は、より高精度の操作が要求される用途にも用いることができる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0079】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0080】
10 制御部、13 電源部、14 電源、15 選択部、16 電源、18 CPU
20 把持装置、21 手首部、22 指部、23 滑り検出器、24 光学センサ、26 力センサ、28 近接センサ
30 容器、35 蓋
40 体感装置、42 滑り提示部、44 圧電素子、46 第1電極、48 第2電極、49 ステータ
50 操作装置、52 指操作部、54 手首操作部
60 ユーザ、62 左手、64 右手
100 システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12