特許第6395645号(P6395645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395645
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】超電導ケーブルの終端部構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/68 20060101AFI20180913BHJP
   H01B 12/02 20060101ALI20180913BHJP
   H01L 39/04 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01R4/68ZAA
   H01B12/02
   H01L39/04
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-51010(P2015-51010)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-171025(P2016-171025A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】八木 正史
(72)【発明者】
【氏名】福島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】高木 智洋
(72)【発明者】
【氏名】滕 軍
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2012/102340(JP,A1)
【文献】 特開2006−34087(JP,A)
【文献】 特開2013−143823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/68
H01B 12/02
H01L 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導ケーブルの端部に接続された略円柱状の電流導出部材と、
導電プレートが離間して積層され、板面と前記電流導出部材の外周面とが対面して配置された積層プレートと、
前記電流導出部材の周囲に配置された電流引出部と、
前記導電プレート同士を接続すると共に、前記電流導出部材側の前記導電プレートと該電流導出部材を接続する第1接続部材と、
前記電流引出部側の前記導電プレートと該電流引出部を接続する第2接続部材と、
を有する超電導ケーブルの終端部構造。
【請求項2】
前記第1接続部材は、前記導電プレートの面方向が電流路となるように該導電プレート同士を接続している、請求項1に記載の超電導ケーブルの終端部構造。
【請求項3】
前記導電プレートは、一方の面に対面する前記導電プレートとの接続位置と、他方の面に対面する前記導電プレートとの接続位置とが異なるように前記第1接続部材で接続されている、請求項1に記載の超電導ケーブルの終端部構造。
【請求項4】
隣り合う前記導電プレートの間には絶縁断熱部材が積層されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造。
【請求項5】
前記積層プレートは、前記導電プレートを脱着可能に積層して構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造。
【請求項6】
前記導電プレートは、同心円上に配置される円弧プレートであり、円柱状とされた前記電流導出部材の外周部を取り囲むように配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造。
【請求項7】
前記第2接続部材は、可撓性の端子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの終端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超電導ケーブルの端部に接続された電流リードと接続される導電フランジにスリットを形成することで、電流パス(電流経路)を長くとる超電導ケーブルの終端部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8755853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された超電導ケーブルの終端部構造では、肉厚な金属製の導電フランジにスリットを形成するため、スリットの加工に手間と時間を要する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、簡易な構造で熱侵入を低減できる超電導ケーブルの終端部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の超電導ケーブルの終端部構造は、超電導ケーブルの端部に接続された略円柱状の電流導出部材と、導電プレートが離間して積層され、板面と前記電流導出部材の外周面とが対面して配置された積層プレートと、前記電流導出部材の周囲に配置された電流引出部と、前記導電プレート同士を接続すると共に、前記電流導出部材側の前記導電プレートと該電流導出部材を接続する第1接続部材と、前記電流引出部側の前記導電プレートと該電流引出部を接続する第2接続部材と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の超電導ケーブルの終端部構造では、板面が電流導出部材の外周面と対面して配置された積層プレートを介して電流導出部材と電流引出部が電気的に接続されている。
積層プレートは、導電プレートを離間して積層することで構成されている。そして、第1接続部材が導電プレート同士を接続すると共に、電流導出部材側の導電プレートと電流導出部材を接続している。また、第2接続部材が、電流引出部側の導電プレートと電流引出部を接続している。
このように、電流導出部材と電流引出部との間に複数の導電プレートで構成される積層プレートを配置することで、電流導出部材から電流引出部までの電流経路が長くなると共に熱伝達経路が長くなり、電流導出部材から電流引出部に掛けて温度勾配を作り出すことができる。これにより、通常、外部に配置されている電流引出部から電流導出部材を介して低温状態の超電導ケーブルへの熱侵入を低減できる。
また、上記超電導ケーブルの終端部構造では、例えば、肉厚な金属部材にスリットを加工して電流経路と熱伝達経路を長くする構成と比べて、積層プレート、第1接続部材及び第2接続部材を用いる簡易な構造で超電導ケーブルへの熱侵入を低減できる。
【0008】
なお、上記超電導ケーブルの終端部構造では、電流導出部材から引き出される電流容量が増えても、導電プレートの板厚や長さを変えることで、積層プレートの抵抗を適切な値とすることができる。
【0009】
請求項2に記載の超電導ケーブルの終端部構造は、請求項1に記載の超電導ケーブルの終端部構造において、前記第1接続部材は、前記導電プレートの面方向が電流路となるように該導電プレート同士を接続している。
【0010】
請求項2に記載の超電導ケーブルの終端部構造では、第1接続部材が導電プレートの面方向が電流路となるように導電プレート同士を接続していることから、電流経路と熱伝達経路がさらに長くなるため、電流導出部材を介して低温状態の超電導ケーブルへの熱侵入をさらに低減できる。
【0011】
請求項3に記載の超電導ケーブルの終端部構造は、請求項1に記載の超電導ケーブルの終端部構造において、前記導電プレートは、一方の面に対面する前記導電プレートとの接続位置と、他方の面に対面する前記導電プレートとの接続位置とが異なるように前記第1接続部材で接続されている。
【0012】
請求項3に記載の超電導ケーブルの終端部構造では、導電プレートが第1接続部材によって、一方の面に対面する導電プレートとの接続位置と、他方の面に対面する導電プレートとの接続位置とが異なるように接続されている。このように、接続位置が異なることで、電流経路と熱伝達経路がさらに長くなるため、電流導出部材を介して低温状態の超電導ケーブルへの熱侵入をさらに低減できる。
【0013】
請求項4に記載の超電導ケーブルの終端部構造は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造において、隣り合う前記導電プレートの間には絶縁断熱部材が積層されている。
【0014】
請求項4に記載の超電導ケーブルの終端部構造では、隣り合う導電プレートの間に絶縁断熱部材を積層している、すなわち、絶縁断熱部材を間において導電プレートを積層することで積層プレートが構成されている。このため、隣り合う導電プレート間の熱伝達を抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載の超電導ケーブルの終端部構造は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造において、前記積層プレートは、前記導電プレートを脱着可能に積層して構成されている。
【0016】
請求項5に記載の超電導ケーブルの終端部構造では、導電プレートを離間させた状態で脱着可能に積層して積層プレートを構成している。このため、必要に応じて積層プレートを構成する導電プレートの枚数を変えることができる。なお、積層プレートを構成する導電プレートの枚数を変えることで、積層プレートの抵抗を適切な値とすることができ、さらに、熱伝達経路も長くすることができる。
【0017】
請求項6に記載の超電導ケーブルの終端部構造は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造において、前記導電プレートは、同心円上に配置される円弧プレートであり、円柱状とされた前記電流導出部材の外周部を取り囲むように配置されている。
【0018】
請求項6に記載の超電導ケーブルの終端部構造では、電流導出部材と電流引出部の間に形成されたスペースに積層プレートをコンパクトに収めることができる。
【0019】
請求項7に記載の超電導ケーブルの終端部構造は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの終端部構造において、前記第2接続部材は、可撓性の端子である。
【0020】
請求項7に記載の超電導ケーブルの終端部構造では、温度変化によって、積層プレートと電流引出部が熱膨張又は熱収縮しても、電気的な接続を維持できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明は、簡易な構造で熱侵入を低減できる超電導ケーブルの終端部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る超電導ケーブルの終端部構造の縦断面図である。
図2図1の矢印2で指し示す部分の拡大図である。
図3図2の3−3線断面図である。
図4図3の矢印4で指し示す部分の拡大断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る超電導ケーブルの終端部構造の横断面図(図3に対応する断面図)である。
図6】本発明の第3実施形態に係る超電導ケーブルの終端部構造の横断面図(図3に対応する断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る超電導ケーブルの終端部構造20を図1図4を用いて説明する。
【0024】
図1に示されるように、第1実施形態の超電導ケーブルの終端部構造20(以下、単に「終端部構造20」と称する。)は、超電導ケーブル21の端部に接続された電流導出部材の一例としての電流リード24と、導電プレート26(図3及び図4参照)が絶縁断熱部材の一例としての絶縁部材28(図3及び図4参照)を間において積層され、板面30Aが電流リード24の外周面と対面して配置された積層プレート30と、電流リード24の周囲に配置された電流引出部の一例としての導電フランジ32と、導電プレート26の面方向が電流路となるように導電プレート26同士を接続すると共に、電流リード24側の導電プレート26と電流リード24を接続する第1接続部材の一例としてのねじ部材34(図3及び図4参照)と、導電フランジ32側の導電プレート26と導電フランジ32を接続する第2接続部材の一例としての可撓端子36と、を有する。
【0025】
本実施形態で用いる超電導ケーブル21は、断熱管23内に一心のケーブルコア22を収納した単心型の超電導ケーブルである。
【0026】
ケーブルコア22としては、公知の超電導ケーブルで用いられるケーブルコアと同様のものを用いることができるが、本実施形態では、一例としてフォーマに超電導導体層、電気絶縁層、超電導シールド層、常電導シールド層及び保護層等を順次巻き付けて構成されたケーブルコアを用いている。
【0027】
断熱管23としては、公知の超電導ケーブルで用いられる断熱管と同様のものを用いることができるが、本実施形態では、一例として内管23A及び外管23Bを備える二重管を用いている。内管23Aは、ステンレス製のコルゲート管であり、内部にケーブルコア22が収容されるとともに液体冷媒(本実施形態では、液体窒素)が充填される。また、外管23Bは、ステンレス製のコルゲート管であり、内管23Aとの間に隙間をあけた状態で内管23Aの外周を覆っている。内管23Aと外管23Bとの間には、図示しない断熱材が配設されている。この断熱材としては、例えば、アルミを蒸着したPETフィルムと不織布の積層体(いわゆるスーパーインシュレーション)を用いることができる。また、内管23Aと外管23Bとの間は、断熱材が配設された状態で真空状態に保持されている。なお、外管23Bの外周はポリ塩化ビニルなどの防食層で被覆されている。
【0028】
図1に示されるように、超電導ケーブル21の終端部は、低温容器38内に収容され、可動接続端子40を介して電流リード24に電気的に接続されている。
【0029】
低温容器38としては、ステンレス製の二重構造の容器を用いている。この低温容器38は、容器内側を構成する冷媒槽38Aと、容器外側を構成する真空槽38Bとを備えている。真空槽38Bには、断熱管23の外管23Bが接合(例えば、溶接)されている。一方、冷媒槽38Aには、断熱管23の内管23Aが接合(例えば、溶接)されている。そして、中空とされた冷媒槽38Aと真空槽38Bとの間の領域と、断熱管23の内管23Aと外管23Bとの間の領域とがそれぞれ真空吸引されて真空断熱層を形成している。また、冷媒槽38Aの内部領域と断熱管23の内管23Aの内部領域とが連通し、これらの領域には、液体冷媒(本実施形態では、液体窒素)が充填されている。
【0030】
また、低温容器38には、上部に円筒状の開口部38Cが形成されている。この開口部38Cには、円筒状の碍子管42が接続されている。また、碍子管42の上端部には、円筒状の碍子管44が間に板状の導電フランジ32を挟んで接続されている。この碍子管44の上部は、閉塞板45によって閉塞されている。
【0031】
導電フランジ32は、図3に示されるように、金属材料(例えば、アルミや銅)で形成された円環状部材であり、上述のように碍子管42の上端部と碍子管44の下端部とで挟まれ、かつ図示しないねじ部材によって碍子管42の上端部と碍子管44の下端部とともに締結固定されている。また、導電フランジ32には、外周部から径方向外側へ突出した端子接続部33が形成されている。この端子接続部33には、変電所などの実系統側の図示しない端子がねじ止めされる。
【0032】
電流リード24は、金属材料(例えば、アルミや銅)で形成された略円柱状の部材であり、下端部が低温容器38内に収容されるとともに可動接続端子40に接続され、上端部が碍子管44内に収容されている。また、電流リード24は、中心軸が碍子管42及び碍子管44の中心軸と略一致するように、碍子管42及び碍子管44の内部に配設されている。なお、本実施形態では、一例として直径80mmの電流リードを用いている。また、ここでいう略円柱状とは、正円柱状、楕円柱状、内部に穴が形成された円柱状(例えば、円筒状)などを含む。
【0033】
電流リード24の下端部側には、電流リード24の外周部を取り囲むように絶縁部材の一例としての絶縁ブロック体46が取り付けられている。この絶縁ブロック体46は、円筒状とされ、下端部が低温容器38の開口部38Cの奥側に形成された径方向内側に張り出す円環状の台座部48によって支持されると共に台座部48に固定されている。
【0034】
碍子管42,44のそれぞれの内部領域には、液体窒素(LN)と窒素ガス(GN)があり、液体窒素は開口部38Cに至るまでに窒素ガスとなる。このため、碍子管42の上部及び碍子管44は常温部に相当する。
【0035】
積層プレート30は、図2及び図3に示されるように、電流リード24の上端部側に板面30Aが電流リード24の外周面と対面するように配置されている。具体的には、積層プレート30は、電流リード24の上端部側の外周部を取り囲むように配置されている。この積層プレート30は、板状の絶縁部材28を間において導電プレート26を積層して形成されている。
【0036】
導電プレート26は、金属材料(例えば、アルミ、銅)を円弧状に形成した円弧プレートである。なお、本実施形態では、5枚の導電プレート26を積層して積層プレート30を形成している。これらの導電プレート26は、板厚及び長さ(電流リード24の軸方向に沿った長さ)がいずれも同じものとされているが、本発明はこの構成に限定されない。以下では、5枚の導電プレート26を電流リード24に近い順に26A,26B,26C,26D,26Eと適宜称する。
【0037】
図3及び図4に示されるように、ねじ部材34は、導電プレート26の面方向が電流路となるように隣り合う導電プレート26同士を機械的かつ電気的に接続している。具体的には、導電プレート26Aと導電プレート26Bの一方の端部同士を間に板状の導電部材50を挟んだ状態でねじ部材34を用いて機械的かつ電気的に接続している。同様に、導電プレート26Bと導電プレート26Cの他方の端部同士を間に導電部材50を挟んだ状態でねじ部材34を用いて機械的かつ電気的に接続し、導電プレート26Cと導電プレート26Dの一方の端部同士を間に導電部材50を挟んだ状態でねじ部材34を用いて機械的かつ電気的に接続し、導電プレート26Dと導電プレート26Eの他方の端部同士を間に導電部材50を挟んだ状態でねじ部材34を用いて機械的かつ電気的に接続している。
言い換えると、導電プレート26(一例として導電プレート26B)は、一方の面に対面する導電プレート26(一例として導電プレート26A)との接続位置と、他方の面に対面する導電プレート26(一例として導電プレート26C)との接続位置とが異なるようにねじ部材34で接続されている。
【0038】
また、導電プレート26Aの面方向が電流路となるように導電プレート26Aの他端部と電流リード24を間に導電部材50を挟んだ状態でねじ部材34を用いて機械的かつ電気的に接続している。
【0039】
なお、絶縁部材28は、導電部材50が配置される側と反対側の導電プレート26の端部同士の間に配設されている。また、導電部材50は、絶縁部材28と同じ板厚とされ、導電プレート26の積層間隔を一定の状態に保持している。さらに導電部材50は、隣り合う導電プレート26同士をねじ部材34とともに電気的に接続している。このため、導電部材50と導電プレート26との接触面積を変えることで電流リード24から導電フランジ32までの抵抗(R)を変えることができる。また、導電部材50と電流リード24との接触面積を変えることでも同様に抵抗(R)を変えることができる。
なお、本実施形態では、ねじ部材34が導電部材50を板厚方向に貫通し、その先端部が絶縁部材28に捩じ込まれている。
【0040】
可撓端子36は、可撓性の端子であり、導電プレート26Eと導電フランジ32を電気的に接続している。具体的には、可撓端子36は、一方の端部が導電プレート26にねじ部材52を用いて接続され、他方の端部が導電フランジ32の内周部にねじ部材53を用いて接続されている。また、本実施形態では、12本の可撓端子36によって導電プレート26Eと導電フランジ32が電気的に接続されている。なお、本発明は上記構成に限定されない。可撓端子36は12本より多くても、少なくてもよいし、一部又は全部の可撓端子の断面積が異なっていてもよい。可撓端子36の本数や断面積を異ならせることで、電流リード24から導電フランジ32までの抵抗(R)を変化させることができる。
【0041】
ここで、本実施形態の電流リード24から導電フランジ32までの電流経路(電流パス)について説明する。
図3に示されるように、まず、電流リード24からの電流は、導電部材50及びねじ部材34を通って導電プレート26Aの他端部に流れる。この電流は、導電プレート26Aの他端部から一端部に向かって導電プレート26Aの面方向に沿って流れる(図3では反時計回りに電流が流れる)。次に、電流は、導電プレート26Aの一端部から導電プレート26Bの一端部へ導電部材50及びねじ部材34を通って流れ、その後、導電プレート26Bの面方向に沿って流れる(図3では時計回りに電流が流れる。)。同様に、電流は、導電プレート26Bの他端部から導電プレート26Cの他端部へ導電部材50及びねじ部材34を通って流れ、その後、導電プレート26Cの面方向に沿って流れ(図3では反時計回りに電流が流れる。)、導電プレート26Cの一端部から導電プレート26Dの一端部へ導電部材50及びねじ部材34を通って流れ、その後、導電プレート26Dの面方向に沿って流れ(図3では時計回りに電流が流れる。)、導電プレート26Dの他端部から導電プレート26Eの他端部へ導電部材50及びねじ部材34を通って流れる。
【0042】
そして、導電プレート26Eに流れた電流は、可撓端子36を通って導電フランジ32に流れる。導電フランジ32に流れた電流は、端子接続部33に取り付けられる端子を通って実系統側に流れることが可能となる。
【0043】
次に、本実施形態の終端部構造20の作用並びに効果を説明する。
終端部構造20では、積層プレート30を介して電流リード24と導電フランジ32が電気的に接続されている。この積層プレート30は、絶縁部材28を間において5枚の導電プレート26を積層することで構成されており、ねじ部材34及び導電部材50によって導電プレート26の面方向が電流路となるように導電プレート26同士が接続されると共に、電流リード24側の導電プレート26(導電プレート26A)と電流リード24が接続されている。また、可撓端子36によって導電フランジ32側の導電プレート26(導電プレート26E)と導電フランジ32が接続されている。
このように、導電プレート26の面方向を電流路とすることで、電流経路が長くなると共に熱伝達経路が長くなり、電流リード24から導電フランジ32に掛けて温度勾配を作り出すことができる。これにより、外部に配置されている導電フランジ32から電流リード24を介して低温状態の超電導ケーブル21への熱侵入を低減できる。
【0044】
また、終端部構造20では、例えば、肉厚な金属部材にスリットを加工して電流経路と熱伝達経路を長くする構成と比べて、積層プレート30、ねじ部材34及び可撓端子36を用いる簡易な構造で超電導ケーブル21への熱侵入を低減できる。
【0045】
さらに、終端部構造20では、例えば、電流リードそれ自体を長くして温度勾配を作り出す構成と比べて、積層プレート30を電流リード24の外周面と対面して配置するので、電流リード24を過剰に長くする必要がない。これにより、終端部構造20の大型化を抑制でき、低温容器38の設置が不安定とならない。また、コストの上昇も抑制できる。
【0046】
なお、終端部構造20では、電流リード24から引き出される電流容量が増えても、導電プレート26の板厚や長さを変えることで、積層プレート30の抵抗(R)を適切な値とすることができる。
【0047】
終端部構造20では、絶縁部材28を間において導電プレート26を積層して積層プレート30を構成しているため、隣り合う導電プレート26間の熱伝達を抑制することができる。
【0048】
また、終端部構造20では、導電プレート26を円弧プレートとすることで、電流リード24と導電フランジ32の間に形成されたスペースに積層プレート30をコンパクトに収めることができる。
【0049】
さらに、終端部構造20では、可撓性の可撓端子36を用いることから、温度変化によって積層プレート30と導電フランジ32が熱膨張又は熱収縮しても、積層プレート30と導電フランジ32との間の電気的な接続を維持できる。
またさらに、終端部構造20は、可撓端子36の本数を変化させることで、抵抗(R)を変えられるため、仕様に応じて抵抗(R)を適切な値とすることができる。なお、可撓端子36の本数を変化させられるように、導電プレート26Eに可撓端子36の接続に用いるねじ穴をあらかじめ複数設けておき、導電フランジ32に可撓端子36の接続に用いるねじ穴をあらかじめ複数設けておくことが望ましい。
【0050】
またさらに、終端部構造20では、ねじ部材34によって隣り合う導電プレート26同士を電気的かつ機械的に接続している。このため、このため、必要に応じて積層プレート30を構成する導電プレート26の枚数を変えることができる。なお、積層プレート30を構成する導電プレート26の枚数を変えることで、積層プレート30の抵抗を適切な値とすることができ、さらに、熱伝達経路も長くすることができる。
【0051】
本実施形態の終端部構造20では、5枚の導電プレート26の板厚と長さをいずれも同じものとしているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、電流リード24側の導電プレート26よりも導電フランジ32側の導電プレート26の板厚を厚くした場合には、電流リード24から導電フランジ32までの抵抗(R)を適切な値にしやすくなるという効果が得られる。また、電流リード24側の導電プレート26よりも導電フランジ32側の導電プレート26の長さを長くした場合には、板厚を厚くした場合と同様に、電流リード24から導電フランジ32までの抵抗(R)を適切な値にしやすくなるという効果が得られる。なお、上記構成については、後述する第2実施形態及び第3実施形態に適用してもよい。
【0052】
さらに、本実施形態の終端部構造20では、隣り合う導電プレート26の片側の端部同士をねじ部材34及び導電部材50によって電気的に接続しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、一部の絶縁部材28を導電部材50に変える構成としてもよい。このように、一部の絶縁部材28を導電部材50に変えた場合には、電流経路が変わり、その結果、抵抗(R)だけでなく、インダクタンス(L)も変えることができる。なお、上記構成については、後述する第2実施形態及び第3実施形態に適用してもよい。
【0053】
また、本実施形態の終端部構造20では、ねじ部材34によって隣り合う導電プレート26同士を電気的かつ機械的に接続しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、絶縁部品で導電プレート26同士を機械的に接続し、端子などの導電部品で導電プレート26同士を電気的に接続してもよい。なお、上記構成については、後述する第2実施形態及び第3実施形態に適用してもよい。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る超電導ケーブルの終端部構造60(以下、単に「終端部構造60」と称する。)について図5に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を適宜省略する。
【0055】
図5に示されるように、本実施形態の終端部構造60は、積層プレート62の構成を除き、第1実施形態と同様の構成である。
【0056】
積層プレート62は、電流リード24の上端部側に板面62Aが電流リード24の外周面と対面するように電流リード24を挟んで両側にそれぞれ配置されている。具体的には、両側の積層プレート62は、電流リード24の上端部側の外周部を取り囲むように配置されている。この積層プレート62は、板状の絶縁部材28を間において導電プレート64を積層して形成されている。
【0057】
導電プレート64は、金属材料(例えば、アルミ、銅)を円弧状に形成した円弧プレートである。なお、本実施形態では、5枚の導電プレート64を積層して積層プレート62を形成している。以下では、5枚の導電プレート64を電流リード24に近い順に64A,64B,64C,64D,64Eと適宜称する。また、絶縁部材28と導電部材50の配置及びねじ部材34による導電プレート64同士の機械的かつ電気的な接続などについては、第1実施形態の積層プレート30と同様である。
【0058】
次に、本実施形態の終端部構造60の作用並びに効果について説明する。なお、第1実施形態に係る終端部構造60と同様の構成で得られる作用並びに効果については説明を省略する。
【0059】
終端部構造60では、電流リード24を挟んで両側に積層プレート62をそれぞれ配置する構成としていることから、片側の積層プレート62を構成する導電プレート64の板厚や長さを変えることで抵抗(R)を適切にすることができる。また、電流リード24を挟んで両側に積層プレート62を配置する構成のため、例えば、第1実施形態の積層プレート30のように内部に電流リード24の上端部を挿入させることで電流リード24の周囲に配置する構成のものと比べて、積層プレートの取り付け作業(機械的な接続作業)が簡易になる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る超電導ケーブルの終端部構造70(以下、単に「終端部構造70」と称する。)について図6に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を適宜省略する。
【0061】
図6に示されるように、本実施形態の終端部構造70では、積層プレート72の構成を除き、第1実施形態と同様の構成を用いている。
【0062】
積層プレート72は、電流リード24の上端部側に板面72Aが電流リード24の外周面と対面するように電流リード24の外周に複数(本実施形態では4つ)配置されている。具体的には、複数の積層プレート72は、電流リード24の上端部側の外周部を取り囲むように配置されている。この積層プレート72は、板状の絶縁部材28を間において導電プレート74を積層して形成されている。
【0063】
導電プレート74は、金属材料(例えば、アルミ、銅)を平板状に形成したプレートである。なお、本実施形態では、4枚の導電プレート74を積層して積層プレート72を形成している。以下では、4枚の導電プレート74を電流リード24に近い順に74A,74B,74C,74Dと適宜称する。また、絶縁部材28と導電部材50の配置及びねじ部材34による導電プレート74同士の機械的かつ電気的な接続などについては、第1実施形態の積層プレート30と同様である。なお、本実施形態では、導電プレート74Aの一部を段付きとなるように折り曲げている。
【0064】
次に、本実施形態の終端部構造70の作用並びに効果について説明する。なお、第1実施形態に係る終端部構造70と同様の構成で得られる作用並びに効果については説明を省略する。
【0065】
終端部構造70では、複数の平板状の導電プレート74を積層して積層プレート72を形成するため、例えば、第1実施形態の積層プレート30のように円弧状に導電プレート26を形成するものと比べて、導電プレートの加工が簡易であり、コストの上昇を抑制できる。また、終端部構造70では、第2実施形態の終端部構造60と同様に、一部の積層プレート72を構成する導電プレート74の板厚や長さを変えることで抵抗(R)を適切にすることができかつ、積層プレート72の取り付け作業(機械的な接続作業)が簡易になる。
【0066】
第1実施形態では、超電導ケーブル21から一つの電流リード24で電流を引き出す構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、超電導ケーブル21から複数の電流リード24で電流を引き出す構成としてもよい。この場合には、各電流リード24に接続される積層プレート30の抵抗(R)を異ならせたり、可撓端子36の本数を変えたりすることで、各電流リード24に流れる電流を均一に近づけたり、偏らせたりすることができる。なお、上記構成については、第2実施形態及び第3実施形態に適用してもよい。
【0067】
また、第1実施形態では、絶縁部材28を間において複数枚の導電プレート26を積層することで積層プレート30を構成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、複数枚の導電プレート26を互いに離間させた状態、すなわち、隣り合う導電プレート26間に空気層を配置した状態で積層して積層プレート30を構成してもよい。なお、上記構成については、第2実施形態及び第3実施形態に適用してもよい。
【0068】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
20,60,70 終端部構造
21 超電導ケーブル
24 電流リード(電流導出部材)
26,64,74 導電プレート
28 絶縁部材(絶縁断熱部材)
30,62,72 積層プレート
30A,62A,72A 板面
32 導電フランジ(電流引出部)
34 ねじ部材(第1接続部材)
36 可撓端子(第2接続部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6