特許第6395673号(P6395673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395673
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20180913BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01L21/30 569C
   H01L21/304 643C
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 643Z
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-140593(P2015-140593)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-22317(P2017-22317A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】徳永 容一
(72)【発明者】
【氏名】張 健
(72)【発明者】
【氏名】水野 剛資
(72)【発明者】
【氏名】天野 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優樹
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−005668(JP,A)
【文献】 特開2014−130935(JP,A)
【文献】 特開2002−319561(JP,A)
【文献】 特開2014−123713(JP,A)
【文献】 特開平07−066116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/027、
21/304、
G03F 7/20−7/24、
9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させる回転プレートと、
前記基板の裏面に対して処理液を供給する処理液供給部と、
平坦面を有して前記基板の周縁部を取り囲むように前記回転プレートに連結されるリング部材と、
前記リング部材の上方に配置されるカバー部材と、
前記リング部材の平坦面に面する前記カバー部材の下面に前記リング部材の周方向に沿って複数設けられ、前記リング部材の平坦面に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給部と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
一連の基板処理を制御する制御部
を備え、
前記制御部は、
前記回転プレートを第1の回転数で回転させることにより前記リング部材の平坦面に前記洗浄液の液流を生じさせる第1洗浄処理を実行するよう制御し、
前記制御部はさらに、
前記回転プレートを回転させながら前記洗浄液供給部から供給される前記洗浄液の流量、流速および前記回転プレートの回転数のうちの少なくともいずれかを制御することにより、前記リング部材の平坦面と前記カバー部材の下面との間を液密状態にする液密洗浄処理を実行するよう制御すること
を特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記回転プレートを前記第1の回転数よりも大きい第2の回転数で回転させることにより前記洗浄液を飛散させて前記カバー部材の下面へ衝突させる第2洗浄処理を実行するよう制御すること
を特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記回転プレートを前記第2の回転数よりも大きい第3の回転数で回転させることにより前記カバー部材の下面の奥側へ前記洗浄液を到達させる第3洗浄処理を実行するよう制御すること
を特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1洗浄処理、前記第2洗浄処理、前記第3洗浄処理の順序で連続的に洗浄処理を実行するよう制御すること
を特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1洗浄処理、前記第2洗浄処理、前記第3洗浄処理のうち少なくとも1つの洗浄処理を実行した後、前記液密洗浄処理を実行するよう制御すること
を特徴とする請求項4または5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を回転させる回転プレートと、
前記基板の裏面に対して処理液を供給する処理液供給部と、
平坦面を有して前記基板の周縁部を取り囲むように前記回転プレートに連結されるリング部材と、
前記リング部材の上方に配置されるカバー部材と、
前記リング部材の平坦面に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
一連の基板処理を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記回転プレートを第1の回転数で回転させることにより前記リング部材の平坦面に前記洗浄液の液流を生じさせる第1洗浄処理を実行するよう制御し、
前記制御部はさらに、
前記洗浄液供給部から供給される前記洗浄液の流量、流速および前記回転プレートの回転数のうちの少なくともいずれかを制御することにより、前記リング部材の平坦面と前記カバー部材の下面との間を液密状態にする液密洗浄処理を実行するよう制御すること
を特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記洗浄液供給部の前記リング部材に対する角度を変更させる変更機構
をさらに備え、
前記制御部は、
前記変更機構を用いて前記角度を変更させつつ、前記洗浄液供給部から前記リング部材に対して前記洗浄液を供給すること
を特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記洗浄液供給部は、不活性ガスを供給可能に設けられ、
前記制御部は、
前記洗浄液供給部に前記洗浄液を供給させた後、前記洗浄液供給部に前記不活性ガスを供給させること
を特徴とする請求項7または8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記洗浄液供給部は、略等間隔で少なくとも30個設けられること
を特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記回転プレート側に設けられ、該回転プレート側から前記洗浄液を前記洗浄液供給部と並行して供給する第2の洗浄液供給部
を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハやガラス基板といった基板に対し、所定の処理液を供給して洗浄処理等の基板処理を行う基板処理装置が知られている。
【0003】
基板処理装置には、たとえば、回転可能に設けられて基板を下方より支持する支持部と、支持部に支持された基板の下面に処理液を供給する処理液供給部とを備え、基板を回転させつつ処理液を供給して、基板の下面を処理するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる基板処理装置の支持部は、基板の周縁外方に基板の周縁部を全周に亘り囲繞する囲い部材に連結され、一体に回転可能に設けられている。
【0005】
ここで、囲い部材は、液受けであり、基板処理に使用された処理液を排液のために導く機能を有する。
【0006】
ところで、基板処理装置では、使用される処理液による処理液雰囲気や、処理液の飛散等によって、基板の周囲の領域が汚染されてしまう場合がある。こうした汚染を防ぐため、基板の周囲の領域を洗浄する技術が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−243627号公報
【特許文献2】特開2002−319561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術には、基板の周縁外方の領域を効率的に洗浄するという点で更なる改善の余地がある。具体的には、上述した基板処理装置を用いた場合、使用される処理液によっては、たとえば囲い部材の表面や回収カップの内側に、中和反応による塩を生じて付着させてしまう場合があった。
【0009】
この点、たとえば特許文献2に開示の技術は、基板上方で基板と対向する上部遮蔽機構を洗浄するものであるため、囲い部材の表面や回収カップの内側といった基板の周縁外方の領域を洗浄するのに用いることはできない。
【0010】
実施形態の一態様は、基板の周縁外方の領域を効率的に洗浄することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の一態様に係る基板処理装置は、回転プレートと、処理液供給部と、リング部材と、カバー部材と、洗浄液供給部とを備える。回転プレートは、基板を回転させる。処理液供給部は、基板の裏面に対して処理液を供給する。リング部材は、平坦面を有して基板の周縁部を取り囲むように回転プレートに連結される。カバー部材は、リング部材の上方に配置される。洗浄液供給部は、リング部材の平坦面に面するカバー部材の下面にリング部材の周方向に沿って複数設けられ、リング部材の平坦面に向けて洗浄液を供給する。
【発明の効果】
【0012】
実施形態の一態様によれば、基板の周縁外方の領域を効率的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、処理ユニットの構成を示す概略断面図である。
図3図3は、比較例となる回収カップ内の構成を示す略断面図である。
図4A図4Aは、実施形態に係る回収カップ内の構成を示す略断面図である。
図4B図4Bは、回収カップの天板の下面模式図である。
図5A図5Aは、実施形態に係る回収カップ内の洗浄手法の説明図(その1)である。
図5B図5Bは、実施形態に係る回収カップ内の洗浄手法の説明図(その2)である。
図5C図5Cは、実施形態に係る回収カップ内の洗浄手法の説明図(その3)である。
図5D図5Dは、実施形態に係る回収カップ内の洗浄手法の説明図(その4)である。
図6A図6Aは、変形例に係る洗浄液供給部の構成を示す図(その1)である。
図6B図6Bは、変形例に係る洗浄液供給部の構成を示す図(その2)である。
図6C図6Cは、変形例に係る洗浄液供給部の構成を示す図(その3)である。
図7図7は、洗浄液供給部が不活性ガスを供給可能な場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
また、以下では、説明の便宜上、複数個で構成される構成要素については、複数個のうちの一部にのみ符号を付し、かかる一部以外のその他については符号の付与を省略する場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0017】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0018】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウェハ(以下ウェハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0019】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0020】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0021】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
【0022】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して所定の基板処理を行う。
【0023】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0024】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0025】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0026】
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0027】
次に、処理ユニット16の概略構成について図2を参照して説明する。図2は、処理ユニット16の構成を示す概略断面図である。
【0028】
図2に示すように、処理ユニット16は、回収カップ50と、回転プレート60と、回転リング70と、回転駆動部80と、基板昇降機構90と、処理液供給部100と、トッププレート110と、昇降機構120と、不活性ガス供給部130とを備える。
【0029】
なお、回収カップ50、回転プレート60および回転リング70は、図示略のチャンバに収容される。チャンバの天井部には、図示略のFFU(Fan Filter Unit)が設けられる。FFUは、チャンバ内にダウンフローを形成する。
【0030】
回転プレート60は、ベースプレート61および回転軸62を有する。ベースプレート61は、水平に設けられ、中央に円形の凹部61aを有する。
【0031】
回転軸62は、ベースプレート61から下方に向かって延在するように設けられており、中心に貫通孔62aが設けられた円筒状の形状を有する。また、回転軸62は、ベアリング63によって回転可能に軸支されている。
【0032】
回転リング70は、ベースプレート61に支持されたウェハWの周縁外方に配置され、ウェハWの主面方向に平行な平坦面70bを有してウェハWの周縁部を全周にわたり取り囲むように設けられている。また、回転リング70は、ベースプレート61にたとえば締結部材71を用いて連結されており、回転プレート60と一体になって回転可能に設けられている。
【0033】
また、回転リング70は、支持ピン70aを有する。支持ピン70aは、回転リング70の内周側下端からウェハWの周縁内方へ向けて突出させ、かつ、回転リング70の周方向に沿って略等間隔で、複数個設けられている。かかる複数個の支持ピン70aへウェハWの周縁部が載置されることによって、支持ピン70aは、ウェハWをベースプレート61から浮かせた状態で下方から支持する。
【0034】
なお、回転リング70は、液受け部として機能し、後述する処理液供給部100によってウェハWの裏面側へ供給され、ウェハWの処理に使用された処理液を、排液のために排液カップ51へと導く。
【0035】
また、回転リング70は、ウェハWの裏面側へ供給され、回転するウェハWから外周側へ飛散する処理液が、跳ね返されて再びウェハWに戻ったり、ウェハWの上面側へ回り込んだりするのを防止する役割も果たす。
【0036】
回転駆動部80は、プーリ81と、駆動ベルト82と、モータ83とを備える。プーリ81は、回転軸62の下方側における周縁外方に配置されている。駆動ベルト82は、プーリ81に巻きかけられている。
【0037】
モータ83は、出力軸が駆動ベルト82に連結されており、駆動ベルト82に回転駆動力を伝達することによって、プーリ81を介して回転軸62を回転させる。かかる回転軸62の回転によって、回転プレート60および回転リング70が一体となって回転する。
【0038】
基板昇降機構90は、ベースプレート61の凹部61aおよび回転軸62の貫通孔62a内に昇降可能に設けられており、リフトピンプレート91およびリフト軸92を有する。リフトピンプレート91は、その周縁に複数、たとえば5本のリフトピン91aを有している。
【0039】
リフト軸92は、リフトピンプレート91から下方に延在している。リフトピンプレート91およびリフト軸92の中心には、処理液供給管100aが設けられている。また、リフト軸92にはシリンダ機構92aが接続されており、リフト軸92を昇降させる。これにより、ウェハWを昇降させて、ウェハWの回転プレート60へのローディングおよびアンローディングが行われる。
【0040】
処理液供給部100は、処理液供給管100aを有する。前述したように、処理液供給管100aは、リフトピンプレート91およびリフト軸92の内部空間に沿って延在するように設けられている。
【0041】
そして、処理液供給管100aが、処理液配管群100bの各配管から供給された処理液をウェハWの裏面側まで導くことにより、処理液供給部100は、ウェハWの裏面側へ処理液を供給する。なお、処理液供給管100aは、リフトピンプレート91の上面に形成された処理液供給口91bと連通している。
【0042】
なお、処理液配管群100bからは、ウェハWの裏面を洗浄する純水(DIW)等の洗浄液を供給することが可能である。かかる場合、処理液供給部100は、洗浄液供給部(「第2の洗浄液供給部」の一例に相当)として機能する。
【0043】
回収カップ50は、排液カップ51と、排液管52、排気カップ53及び排気管54を備える。また、回収カップ50は、上部に開口55が設けられている。かかる開口55を内周とする回収カップ50の天板は、回転リング70を覆うように配置される。回収カップ50は、主に回転プレート60および回転リング70に取り囲まれた空間から排出される気体および液体を回収する役割を果たす。
【0044】
排液カップ51は、回転リング70によって導かれた処理液を受ける。排液管52は、排液カップ51の底部に接続されており、排液カップ51によって受けられた処理液を、図示略の排液配管群のいずれかの配管を介して排出する。
【0045】
排気カップ53は、排液カップ51の外方または下方において、排液カップ51と連通するように設けられている。図2では、排気カップ53が排液カップ51の周縁内方および下方において、排液カップ51と連通するように設けられている例を示している。
【0046】
排気管54は、排気カップ53の底部に接続されており、排気カップ53内の窒素ガス等の気体を、図示略の排気配管群のいずれかの配管を介して排気する。
【0047】
トッププレート110は、昇降可能であって、下降した状態で回収カップ50の上面に設けられた開口55を塞ぐように設けられている。また、トッププレート110は、回収カップ50の上面に設けられた開口55を塞ぐときに、支持ピン70aに支持されているウェハWを上方から覆うように設けられている。
【0048】
なお、支持ピン70aに支持されているウェハWの周縁部と対向するトッププレート110の周縁部は、ウェハWへ向けて下方に突出させて設けられており、ウェハWの周縁部との間に隙間D1を形成する。隙間D1は、支持ピン70aに支持されているウェハWの中心部とトッププレート110との間の距離よりも小さい。
【0049】
昇降機構120は、アーム121と、昇降駆動部122とを備える。昇降駆動部122は、回収カップ50の外方に設けられており、上下に移動できるようになっている。アーム121は、トッププレート110と昇降駆動部122とを接続するように設けられている。すなわち、昇降機構120は、昇降駆動部122により、アーム121を介してトッププレート110を昇降させる。
【0050】
不活性ガス供給部130は、不活性ガス供給管131および不活性ガス供給源132を備える。不活性ガス供給部130は、ウェハWの上面側に窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガスを供給する。
【0051】
不活性ガス供給管131は、トッププレート110およびアーム121の内部に延在するように設けられ、一端が不活性ガスを供給する不活性ガス供給源132に連結される。また、他端が、トッププレート110の中心部に形成された不活性ガス供給口110aと連通している。
【0052】
なお、図2に示すように、アーム121はトッププレート110の上面の略中心で接続させることが好ましい。これにより、不活性ガス供給口110aがトッププレート110の下面の中心部に形成されることになるため、不活性ガスをトッププレート110の中心から下方に供給することができ、ウェハWへ供給される不活性ガスの流量を周方向に沿って均一にすることができる。
【0053】
以下、本実施形態に係る基板処理システム1の回収カップ50内における洗浄手法について順次具体的に説明するが、それに先立ってまず、比較例となる回収カップ50’内の構成について図3を用いて説明しておく。なお、以下では、図2に破線の矩形で示した要部M1の構成を示す略断面図を主に用いて説明を進める。
【0054】
図3は、比較例となる回収カップ50’内の構成を示す略断面図である。なお、図3以降に図示されるウェハWは薬液処理を行うためのウェハではなく、回収カップ50内における洗浄を実行する際に用いられるダミーウェハである。
【0055】
処理液供給部100からウェハWの裏面側へ供給された処理液はウェハWの表面側まで回りこみ、微量ではあるが回転リング70の方向へと飛散することがある。また同様に、処理液の雰囲気も微量ではあるが回転リング70側へと流れていく。
【0056】
このため、破線の矩形P1に示す平坦面70bの表面は、処理液の付着と結晶化等により、異物fを生じるおそれがあった。また、回収カップ50’の天板の下面50bには、処理液に含まれる酸やアルカリの中和反応等によりたとえば塩sを生じ、付着させてしまうおそれがあった。窪み50aは、回転リング70の外周部全周に沿って形成されており、下方から上昇してくる処理液をウェハWの上面側へ回り込ませないように逃がす機能を有する。ここにも同様に塩sを生じ、付着させてしまうおそれがあった。
【0057】
図3に示すように、比較例となる回収カップ50’では、前述の処理液供給部100が洗浄液供給部として機能しても、回転リング70の平坦面70b、および、これに面する回収カップ50’の天板の下面50bの間は、洗浄液が到達しにくかった。
【0058】
そこで、本実施形態に係る基板処理システム1では、回転リング70の平坦面70bと回収カップ50の下面50bとの間に洗浄液を供給する洗浄液供給部56を備えることとした。
【0059】
その具体的な構成を図4Aおよび図4Bに示す。図4Aは、実施形態に係る回収カップ50内の構成を示す略断面図である。また、図4Bは、回収カップ50の天板の下面模式図である。
【0060】
図4Aに示すように、実施形態に係る基板処理システム1は、回収カップ50に、回転リング70の平坦面70bと回収カップ50の下面50bとの間に洗浄液を供給する洗浄液供給部56を備える。
【0061】
洗浄液供給部56は、ノズル56aと、洗浄液供給管56bと、バルブ56cと、洗浄液供給源56dとを備える。
【0062】
ノズル56aは、回転リング70の平坦面70bに面する回収カップ50の下面50bに吐出口が露出するように設けられ、洗浄液供給源56d、バルブ56cおよび洗浄液供給管56bを介して供給される洗浄液を平坦面70bへ向けて吐出する。洗浄液は、たとえば常温のDIWである。
【0063】
また、図4Bに示すように、ノズル56aは、回収カップ50の下面50bに、回転リング70の周方向に沿って略等間隔で複数個設けられる。なお、その個数は、一例として30〜40個程度が好適である。
【0064】
一連の基板処理を制御する上述の制御部18は、洗浄液が流量および流速を揃えてこれら複数のノズル56aから同期して供給されるように、たとえばバルブ56cを制御する。
【0065】
これにより、異物fや塩s等が生じやすかった平坦面70bと下面50bとの間へ満遍なく洗浄液を供給し、かかる平坦面70bと下面50bとの間を効率的に洗浄することができる。
【0066】
本実施形態に係る回収カップ50内における洗浄手法についてさらに具体的に説明する。図5A図5Dは、実施形態に係る回収カップ50内の洗浄手法の説明図(その1)〜(その4)である。
【0067】
図5Aに示すように、制御部18は、回転リング70の平坦面70bと回収カップ50の下面50bとの間が液密状態となるように、たとえば洗浄液の流量や流速、回転プレート60の回転数等を制御する。以降、図5Aに示す洗浄処理を液密洗浄処理と記載する。
【0068】
なお、図5A図5Dでは、主に平坦面70bと下面50bとの間に供給される洗浄液の動きについて図示ならびに説明するが、洗浄液供給部として機能する処理液供給部100により、洗浄液供給部56と並行に洗浄液が供給され、回転プレート60、回転リング70の裏側、回収カップ50の側面壁が洗浄されていてもよい。こちらについては図示を省略する。
【0069】
たとえば、図5Bに示すように、制御部18は、平坦面70bへ洗浄液の液膜を生じさせ、主に平坦面70b側を洗浄する場合には、平坦面70bへ液膜が生じる流量となるように予め規定された開度でバルブ56cを制御し、洗浄液をノズル56aから供給させる(図中の矢印501参照)。
【0070】
また、このとき制御部18は、あわせて回転駆動部80を制御し、回転プレート60を第1の回転数で回転させる。第1の回転数は、予め規定された、たとえば少なくとも平坦面70bへ洗浄液の液膜が生じるように遠心力で洗浄液を広がらせることができる回転数である。
【0071】
これにより、回転リング70の平坦面70bと回収カップ50の下面50bとの間の、主に平坦面70b側を洗浄することができる。以降、図5Bに示す洗浄処理を第1洗浄処理と記載する。
【0072】
また、図5Cに示すように、制御部18は、平坦面70b側だけでなく下面50b側も洗浄する場合には、たとえば洗浄液の流速を上げる制御を行い、洗浄液を平坦面70bから跳ね上げて下面50bへ衝突させ、平坦面70bと下面50bとの間をスプラッシュ状態にする(図中の矢印502参照)。なお、このとき洗浄液の流量を上げる制御を組み合わせてもよい。
【0073】
これにより、回転リング70の平坦面70b側とあわせて回収カップ50の下面50b側を効率的に洗浄することができる。また、これに加え、制御部18は、回転駆動部80を制御し、回転プレート60を第2の回転数で回転させることができる。
【0074】
第2の回転数は、予め規定された、第1の回転数よりも大きい回転数であり、かつ、遠心力で洗浄液を飛散させて洗浄液を下面50bへ衝突させることができる回転数である。
【0075】
かかる回転駆動部80の制御を、洗浄液の流速または流量の制御に組み合わせることにより、平坦面70bと下面50bとの間のスプラッシュ状態を回転リング70の外周側へ広げることができる。以降、図5Cに示す洗浄処理を第2洗浄処理と記載する。
【0076】
図5Dに示すように、回収カップ50の下面50bの奥側に形成されている窪み50aを洗浄する場合には、たとえば制御部18は、回転駆動部80を制御し、回転プレート60を第2の回転数よりもさらに大きい回転数である第3の回転数で回転させる。
【0077】
第3の回転数は、遠心力で洗浄液を飛散させて洗浄液を窪み50aへ到達させることができる回転数である。これにより、洗浄液が窪み50aへ到達するので(図中の矢印503参照)、回収カップ50の下面50bの奥側の窪み50aについても確実に洗浄し、窪み50aへ塩s等が付着するのを防ぐことができる。以降、図5Dに示す洗浄処理を第3洗浄処理と記載する。
【0078】
このように、制御部18は、洗浄液の流速および流量の少なくともいずれかを制御することによって、平坦面70bと下面50bとの間における洗浄液の状態(たとえば、液膜状態やスプラッシュ状態等)を制御する。
【0079】
また、制御部18は、あわせて回転駆動部80を制御し、回転プレート60の回転数を制御することによって、平坦面70bと下面50bとの間における洗浄液の洗浄部位を制御する。
【0080】
したがって、たとえば平坦面70bの汚染の酷い特定部位を丹念に洗浄したい場合には、回転プレート60の回転数を落として狭い範囲に洗浄液を集中して供給するようにしてもよい。すなわち、制御部18は、目的に応じて、液密洗浄処理、第1〜第3洗浄処理の間で洗浄処理を切り替えることができる。
【0081】
また、これら複数の洗浄処理を連続的に行うこともできる。例えば、第1、第2、第3洗浄処理の順序で行うことで、中心から周辺方向へと順に洗浄が完了するので洗浄残りが生じることを防ぐことができる。
【0082】
また、第1〜第3洗浄処理を行うことで粗く洗浄を行った後で、液密洗浄処理により綿密に洗浄を行うことにより、汚染が酷いときにおいても洗浄残りが生じずかつ迅速に洗浄を完了させることができる。これら2つの例に限らず、目的に合わせて適宜、洗浄処理の組み合わせを変更してもよい。
【0083】
ところで、これまでは、平坦面70bと下面50bとの間における洗浄を制御するにあたり、回転プレート60の回転数を制御する場合について説明したが、かかる例に限られない。また、これまでは、ノズル56aが回転リング70の周方向に沿って回収カップ50の下面50bに設けられているものとしたが、回転リング70の径方向沿いに設けられていてもよい。
【0084】
次に、これら変形例について説明する。図6A図6Cは、変形例に係る洗浄液供給部56の構成を示す図(その1)〜(その3)である。
【0085】
まず、図6Aに示すように、たとえば洗浄液供給部56が、ノズル56aを移動させる移動機構56eを備えたうえで、制御部18が、かかる移動機構56eを用いてノズル56aを移動させつつ、ノズル56aから回転リング70へ向けて洗浄液を供給するようにしてもよい(図中の矢印601参照)。
【0086】
すなわち、ノズル56aを言わば回転リング70の平坦面70bに沿ってスキャンさせることによって、満遍なく回転リング70へ洗浄液を供給し、効率的に平坦面70bと下面50bとの間を洗浄することが可能となる。また、移動機構56eによりノズル56aを移動させることによって、容易に平坦面70bと下面50bとの間における洗浄を制御することができる。
【0087】
また、図6Bに示すように、たとえば洗浄液供給部56が、ノズル56aの回転リング70に対する角度を変更させる変更機構56fを備えたうえで、制御部18が、変更機構56fを用いてノズル56aの角度を変更させつつ、ノズル56aから回転リング70へ向けて洗浄液を供給するようにしてもよい(図中の矢印602参照)。
【0088】
これにより、やはり満遍なく回転リング70へ洗浄液を供給することが可能となり、効率的に平坦面70bと下面50bとの間を洗浄することができる。また、変更機構56fによりノズル56aの角度を変更させることによって、容易に平坦面70bと下面50bとの間における洗浄を制御することができる。
【0089】
また、図6Cに示すように、たとえば洗浄液供給部56のノズル56aの吐出口は、回転リング70の径方向に沿って複数個設けられていてもよい。なお、これら径方向沿いのノズル56aは、図6Cに示すように共通のバルブ56cから分岐して設けられ、制御部18の制御によって一括に同期して洗浄液を供給してもよいが、個別のバルブ56cに接続されて個別に洗浄液を供給するようにしてもよい。
【0090】
これにより、窪み50aのある奥側へも容易に洗浄液を到達させられるだけでなく、個別に洗浄液を供給すれば、容易に平坦面70bと下面50bとの間における洗浄を制御することができる。
【0091】
ところで、これまで説明した洗浄手法により洗浄された平坦面70bと下面50bとの間は、制御部18が洗浄液供給部56による洗浄液の供給を止め、回転プレート60を乾燥用に規定された回転数で回転させることで、残った洗浄液を振り切られ、乾燥される。
【0092】
ここで、かかる乾燥処理を効率的にするため、洗浄液供給部56は、ノズル56aからさらに窒素ガス(N2)等の不活性ガスを供給可能に設けられてもよい。この点について図7を用いて説明する。図7は、洗浄液供給部56が不活性ガスを供給可能な場合の説明図である。
【0093】
図7に示すように、たとえば洗浄液供給部56は、洗浄液供給源56dおよびバルブ56cを介した洗浄液供給ラインに接続されるとともに、不活性ガス供給源56hおよびバルブ56gを介した不活性ガス供給ラインに接続されていてもよい。
【0094】
かかる場合、まず図7の上段に示すように、制御部18は、洗浄液供給ラインを介し、洗浄液供給部56にDIW等の洗浄液を回転リング70へ向けて供給させ、ウェハWの周縁外方の洗浄処理を行わせる。
【0095】
つづいて、制御部18は、図7の下段に示すように、不活性ガス供給ラインを介し、洗浄液供給部56にN2等の不活性ガスを回転リング70へ向けて供給させ、ウェハWの周縁外方の乾燥処理を行わせる。
【0096】
これにより、ウェハWの周縁外方、すなわち平坦面70bと下面50bとの間の洗浄および乾燥を効率的に行うことができる。また、乾燥を促進することによって洗浄液の液滴を残さないので、液滴に起因する処理の品質低下を防ぎ、品質の高い基板処理を実行するのに資することができる。
【0097】
上述してきたように、本実施形態に係る基板処理システム1(「基板処理装置」の一例に相当)は、回転プレート60と、処理液供給部100と、回転リング70(「リング部材」の一例に相当)と、回収カップ50(「カバー部材」の一例に相当)と、洗浄液供給部56とを備える。
【0098】
回転プレート60は、ウェハW(「基板」の一例に相当)を回転させる。処理液供給部100は、ウェハWの裏面に対して処理液を供給する。回転リング70は、平坦面を有してウェハWの周縁部を取り囲むように回転プレート60に連結される。
【0099】
回収カップ50は、回転リング70の上方に配置される。洗浄液供給部56は、回転リング70の平坦面に向けて洗浄液を供給する。
【0100】
したがって、本実施形態に係る基板処理システム1によれば、回転リング70の平坦面70bと回収カップ50の天板の下面50bとの間(「基板の周縁外方の領域」の一例に相当)を効率的に洗浄することができる。
【0101】
なお、上述した実施形態では、ウェハWが、回転リング70の内周側下端からウェハWの周縁内方へ向けて突出させて設けられた支持ピン70aによって下方から支持される場合を例に挙げたが、支持ピンはベースプレート61から上方へ向けて設けられ、ウェハWを下方から支持してもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、洗浄液供給部として機能する場合の処理液供給部100と、洗浄液供給部56のそれぞれの供給源が別体である場合を例に挙げたが、別体でなく共通であってもよい。同様に、不活性ガス供給源132と、不活性ガス供給源56hとが、別体でなく共通であってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、図7に示したように、洗浄液と不活性ガスとが、共通のノズル56aから供給される場合を例に挙げたが、これらは別体のノズル56aからそれぞれ供給されてもよい。
【0104】
また、上述した実施形態では、洗浄液が主にDIW、不活性ガスが主にN2であるものとしたが、それぞれ洗浄液および不活性ガスを限定するものではない。これらは、たとえば回収カップ50や回転リング70の素材に応じて、それぞれ相応しい洗浄性能が得られる洗浄液および不活性ガスに置換することが可能である。
【0105】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 基板処理システム
2 搬入出ステーション
3 処理ステーション
4 制御装置
16 処理ユニット
50 回収カップ
50a 窪み
50b 下面
56 洗浄液供給部
60 回転プレート
70 回転リング
70b 平坦面
100 処理液供給部
W ウェハ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7