特許第6395701号(P6395701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6395701変換蛍光体および負の熱膨張係数を有する材料を含有する複合セラミック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395701
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】変換蛍光体および負の熱膨張係数を有する材料を含有する複合セラミック
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/00 20060101AFI20180913BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20180913BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20180913BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20180913BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20180913BHJP
【FI】
   C09K11/00 C
   C04B35/44
   C09K11/08 G
   C09K11/80CPP
   H01L33/50
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-502122(P2015-502122)
(86)(22)【出願日】2013年3月2日
(65)【公表番号】特表2015-514144(P2015-514144A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2013000609
(87)【国際公開番号】WO2013143645
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月1日
【審判番号】不服2017-9584(P2017-9584/J1)
【審判請求日】2017年6月30日
(31)【優先権主張番号】12002303.1
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ユェステル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】プレ−ヴァ,ユリアン
【合議体】
【審判長】 川端 修
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−220299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換蛍光体およびさらなる材料を含む複合セラミックであって、
前記さらなる材料が負の熱膨張係数を有すること、
前記さらなる材料が無機酸化物で被覆されていること、および
前記さらなる材料が、Al12およびYAlW12、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されること
を特徴とする、前記複合セラミック。
【請求項2】
変換蛍光体がCe含有、Eu含有および/またはMn含有材料である、請求項1に記載の複合セラミック。
【請求項3】
変換蛍光体がCe含有、Eu含有および/またはMn含有材料であり、該Ce含有、Eu含有および/またはMn含有材料において該Ce、Euおよび/またはMnを置き換える格子サイトにおける原子の合計数に基づき、0.1〜5原子%のCe、Euおよび/またはMnを含む、請求項1または2に記載の複合セラミック。
【請求項4】
変換蛍光体がCe含有材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合セラミック。
【請求項5】
変換蛍光体がCe含有ガーネットである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合セラミック。
【請求項6】
Ce含有ガーネットが式E(TO:Ceを有し、式中EはY、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luまたはそれらの混合物からなる群から選択され、ならびにGおよびTはそれぞれ、互いに独立してAl、Sc、Gaまたはそれらの混合物からなる群から選択されるか、あるいはGおよびTは一緒になって組合せMg/Siまたは組み合わせMg/Geを表し、ここでMgおよびSiあるいはMgおよびGeはそれぞれ同じモル比で存在する、請求項4または5に記載の複合セラミック。
【請求項7】
さらなる材料の負の熱膨張係数の絶対値が、20℃〜200℃の範囲の温度変化の場合において1×10−6〜12×10−6−1の範囲である、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合セラミック。
【請求項8】
無機酸化物が酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合セラミック。
【請求項9】
以下のステップ:
a) 変換蛍光体を提供すること;
b) 無機酸化物で被覆された負の熱膨張係数を有する材料を提供すること、ここで、前記負の熱膨張係数を有する材料は、Al12およびYAlW12、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される;
c) ステップa)およびb)で提供された2つの成分を混合し、混合物を得ること;および
d) 前記混合物を焼結すること
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合セラミックの、製造方法。
【請求項10】
焼結が、負の熱膨張係数を有する材料の融点の2/3〜5/6の範囲の温度で実行されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合セラミックまたは請求項9もしくは10の方法により製造された複合セラミックの、発光変換材料としての使用。
【請求項12】
発光変換材料が光源において用いられる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合セラミックまたは請求項9もしくは10の方法により製造された複合セラミックならびに一次光源を含む光源。
【請求項14】
請求項13に記載の少なくとも1つの光源を含む、照明ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合セラミックに、およびその製造方法に関する。さらに、本発明はまた、本発明によるセラミックの発光変換材料としての、好ましくは白色光源における使用に、ならびに光源、照明ユニットおよびディスプレイデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、青色スペクトル領域内のまたはUV領域内の光で励起されるとき可視光の放射を呈するさまざまな化合物を開示する。これらのいわゆる変換蛍光体は光源において、粉体の形態においてかまたはセラミックとしてのいずれかで用いられる。最もよく知られた変換蛍光体は、YAG:Ce(セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネット)またはLuAg;Ce(セリウムドープルテニウムアルミニウムガーネット)であり、これらは青色光による励起の際の黄色スペクトル領域内放射のために、白色光源を可能なものとする。
【0003】
変換蛍光体が粉体の形態で用いられる場合、それらは光源から発せられた光の高度な後方散乱、いわゆる「パッケージゲイン」(光源における可能なパッキング密度)を有し、それゆえ効率は低減する。変換蛍光体を含む粉体における散乱係数は粒子径に依存するため、ナノ粒子を合成することによって所望でない散乱効果を低減させるという試みがなされている。しかし、ナノ粒子の形態のレアアースでドープされた変換蛍光体を使用することにより、小さな粒径による強力な表面欠陥および強力な凝集のため乏しい発光特性が時に生じる。粉体の形態で用いられるある変換蛍光体、例えばYAG:CeまたはLuAG:Ceなどは、低い散乱効果のために良好な効率を呈するが、ここでの光量子収量はしかしながら、未だに改善できるものである。
【0004】
セラミックの形態の変換蛍光体は、例えば、高エネルギー照射、例えばX線またはγ線などの可視光への変換に好適である。このタイプのシンチレーターセラミックは通常はレアアースでドープされ、例えば、LuSiO:CeまたはGdS:Ce,Prからなる。しかし、さまざまなセリウムドープセラミックもまた光源、例えばLED(光放射デバイス(light emitting devices))における変換蛍光体として用いることができ(WO2007/107915)、一定の光分布を達成する。セラミックを使用することにより、粉体の場合におけるよりもより高度な光量子収率を生じさせることができるが、青色光から黄色光への変換の効率は通常は、大量のエネルギーが熱として失われるため、未だに非常に低い。
【0005】
先行技術は、LEDにおける使用のための、特には、レアアースで、ドープされた、YAGセラミックを開示する(WO2008/012712)。特に、さまざまなドープレアアースガーネット化合物(US2010/0277673A1)からの発光がまたLCD(液晶ディスプレイ(liquid crystal displays))におけるバックライトとして利用されている。高度な光量子収率および高い効率を呈する固体状態の光源のための変換体としての発光セラミックを見出すという試みがなされている。ほとんどの変換蛍光体、例えばYAG:Ceなどは低い熱伝導性を有するので、熱としてのエネルギー損失は容易には消散しない。この熱応力はセラミックにおける欠損およびクラックを生じ、熱伝導性をなおさらに低下させ、散乱能は応じて大いに増加する。発光変換材料としてこのタイプのセラミックを含む光源は、作動時間の経過において効率がかなり低下する。
【0006】
高度な光量子収率および高度な効率に加えて、また、光源の長寿命を促進する変換蛍光体に対する要求が存在する。
【0007】
それゆえ本発明の目的は、高度な効率および高度な光量子収率を有し、かつ長寿命を有する光源の生産を可能とする、光源のための光変換材料を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
驚くべきことに、変換蛍光体ならびに負の熱膨張係数を有するさらなる材料を含む複合セラミックが、全てのこれらの利点を提供するということを見出した。
【0009】
「複合セラミック」における用語「複合」は、その微細構造が少なくとも2つの粒子タイプを有するという状況を考慮することを意図する。第1の粒子タイプは変換蛍光体により形成され、他の粒子タイプは該さらなる材料により形成される。ここでさらなる材料は、負の熱膨張係数を有することにより、変換蛍光体材料の熱膨張を相殺することを意図される。
【0010】
本願において、用語「変換蛍光体」は、電磁スペクトルのある波長領域における、好ましくは青色またはUV領域における、特には青色スペクトル領域における放射を吸収し、電磁スペクトルのもう1つの波長領域における可視光を発する材料を意味するものとする。
【0011】
本願における用語「発光変換材料」は、少なくとも1つの変換蛍光体および任意にさらなる材料、好ましくは負の熱膨張係数を有する材料を含む材料を意味するものとすることを意図される。
【0012】
変換蛍光体は好ましくは、Ce含有、Eu含有および/またはMn含有材料である。該Ce含有、Eu含有および/またはMn含有材料は好ましくは、そこにおける格子サイトのいくつかがCe3+、Eu2+、Eu3+および/またはMn2+またはMn4+イオンで特に好ましくは占有されている、無機セラミック材料である。
【0013】
該Ce含有、Eu含有および/またはMn含有材料におけるCe、Euおよび/またはMnの含有量は好ましくは、該Ce含有、Eu含有および/またはMn含有材料において該Ce、Euおよび/またはMnを置き換える格子サイトにおける原子の合計数に基づき、つまり例えばYAGにおけるYに基づき、0.01〜5原子%の範囲、好ましくは0.01〜5原子%、より好ましくは0.,05〜3原子%の範囲である。
【0014】
本発明によっては好ましいCe含有、Eu含有および/またはMn含有材料は、発光ダイオードにおける変換蛍光体としてのその好適性に関し当業者に自体公知であるものである。これらのものは、特には、ケイ酸塩、例えばオルトケイ酸塩、オキシオルトケイ酸塩、二ケイ酸塩、シアロン、シリコオキシ窒化物、シリコ窒化物、アルミン酸塩、ガーネット、ならびにさらなる三元および四元酸化物および窒化物である。
【0015】
該Ce含有、Eu含有および/またはMn含有材料がCe含有、Eu含有および/またはMn含有ガーネットであることが特に好ましい。本発明によっては、ガーネットは好ましくは、式
(TO
式中
Eは、8酸素アニオンで囲まれた2価のまたは3価のカチオンであり;
Gは、6酸素アニオンで囲まれた2価の、3価のまたは4価のカチオン、好ましくは3価のカチオンであり;および
Tは、4酸素アニオンで囲まれた3価のまたは4価のカチオンである、
で表される化学組成を有する造岩鉱物を意味するものとする。
【0016】
本発明によっては、該ガーネットは好ましくは、Ce含有ガーネットである。本発明によっては、これは好ましくはいくつかのカチオンEがCe3+イオンで置き換えられたガーネットを意味するものとする。単純化のため、Ce含有ガーネットは本願においてE(TO:Ceに略される。
【0017】
(TO:CeにおけるEは好ましくは、Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luまたはそれらの混合物からなる群から選択される。E(TO:CeにおけるGは好ましくは、互いに独立して、Al、Sc、Gaまたはそれらの混合物からなる群から選択される。代替的に、GおよびTまた、組合せMg/SiまたはMg/Geあるいはそれらの混合物を表してもよく、ここでMgおよび4価の元素SiまたはGeはそのとき同じモル比で存在する。
【0018】
「熱膨張係数」は、温度で変化するその大きさにおける変化に関する物質の挙動を記載する特性量を意味するものとする。この原因となる効果は、熱膨張である。熱膨張は用いられる物質に依存し、つまり物質固有の材料係数である。その測定単位はK−1である。それが正であるならば、物質は温度上昇とともに膨張する。それが負数であるならば、物質の大きさは温度上昇とともに低減する。多くの物質の場合において、熱膨張は全ての温度範囲にわたって一様に生じないので、熱膨張係数はまた温度依存性でもあり、それゆえある基準温度またはある温度範囲に対して見積もられる。
【0019】
熱膨張係数は本発明の目的に対して、以下のように決定される:熱膨張係数αはセラミックの微細構造に大いに依存するので、化合物に対するα値は膨張計を用いて実験的に決定しなければならない。プッシュロッド式膨張計を用いて、熱作用下の複合セラミックの長さの変化をDIN51045基準に従って測定する。複合セラミックに存在し、本発明に従って負の熱膨張係数を有するさらなる材料の熱膨張係数もまた、それに応じて決定する。
【0020】
本発明において、さらなる材料の負の熱膨張係数は、20℃〜200℃の範囲における温度変化の場合、好ましくは1×10−6〜12×10−6−1の範囲、特に好ましくは3×10−6〜10×10−6の範囲である。
【0021】
負の熱膨張係数を有する本発明による複合材料におけるさらなる材料は、好ましくはタングステン酸塩またはモリブデン酸塩あるいはそれらの混合酸化物である。さらなる材料は、特に好ましくは、Al12、Y12、YAlW12、ZrW、AlMo12、YMo12、YAlMo12、ZrMo、AlWMo12、YWMo12、YAlWMo12、ZrWMoO、AlMoW12、YMoW12、YAlMoW12またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
負の熱膨張係数を有する材料が被覆されるのが、ここでまた好ましい。好適な被覆は、例えば、無機酸化物、例えば酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素である。
【0023】
変換蛍光体のさらなる材料に対するモル比は、好ましくは1:0.5〜10:1、好ましくは1:1〜5:1の範囲である。正確なモル比は、特に、変換蛍光体のおよびさらなる材料の熱膨張係数が互いに相対してどのように挙動するかということに依存する。変換蛍光体は一般的には正の熱膨張係数を有し、それゆえ温度上昇すると拡張する。この膨張を補うために、用いられるさらなる材料は負の熱膨張係数を有する材料である。さらなる材料の膨張係数は、変換蛍光体の膨張係数が正である程度にまで負であるべきである。この理想的な場合において、2つの材料は0.9:1〜1:0.9のモル比で用いられるべきである。2つの成分のモル比は互いに対して、変換蛍光体の正の膨張係数がさらなる材料の負の膨張係数の絶対値よりも大きくなる程度に構成させるべきである。換言すると、複合セラミックにおける2つの成分のモル比は、それらの熱膨張係数の絶対値の比率に対し近似的に正比例しているべきである。
【0024】
本発明はまた、複合セラミックの、好ましくは本発明による複合セラミックの製造方法であって、以下のステップを含む該方法に関する:
a) 変換蛍光体を提供すること;
b) 負の熱膨張係数を有する材料を提供すること;
c) ステップa)およびb)で提供された2つの成分を混合し、混合物を得ること;および
d) 混合物を焼結すること。
【0025】
本発明によっては、ステップa)において提供される変換蛍光体は、本発明による複合セラミックに関するのと同様にして正確に規定され得る。ここで変換蛍光体は好ましくは、粉体形態で提供される。ここで変換蛍光体粉体の平均粒径は、好ましくは0.1〜1μmの範囲である。
【0026】
ステップb)において提供される負の熱膨張係数を有する材料は、本明細書において、複合セラミックに関連して規定されるさらなる材料と全く同様にして規定され得る。それは同様にして粉体形態で用いられ、その平均粒径は好ましくは1〜10μmの範囲である。
【0027】
本発明による方法のステップc)において、ステップa)およびb)において提供される材料が互いに混合される。粉体は乾燥状態で、または溶媒の添加による懸濁液の形態で互いに混合することができる。好適な溶媒は慣用の溶媒、例えばエタノールまたはイソプロパノールである。ステップc)における混合は好ましくは、ボールミル中で実行する。混合を粉体の平均粒径が0.1〜1μmの範囲となるまで継続するのが好ましい。凝集を形成しないようにするため、特定の添加剤をここで用いるのが有用である。酸化物粉体に関し、いわゆる高分子電解物、例えばDarvan(Vanderbilt)、Dolapix(Zschimer & Schwertz)、KD1(Uniqema)の使用が通常なされる。
【0028】
混合後、得られた粉体混合物をさらに加工することができる。粉体混合物は好ましくは、薄い円板の形態での2ステップで、一軸的かつ平行に圧縮され、ここで圧縮圧は100〜300MPaの範囲である。
【0029】
本発明によっては、ステップd)における焼結は、好適な温度において実行される。ステップa)における変換蛍光体が被覆なしで提供されるなら、焼結は負の熱膨張係数を有する材料の融点よりも下の温度で実行される。焼結温度が負の熱膨張係数を有する材料の融点の2/3〜5/6であるなら、良好な結果が達成されることが見い出された。変換蛍光体が加工条件下で安定な不活性化被覆を実行するなら、本発明のこの変形における焼結はまた、融解温度の範囲内またはそれらのわずかに上で実行することができる。焼結は好ましくは、800〜1600℃の範囲の、好ましくは1000〜1600℃の範囲の温度で実行される。焼結は好ましくは、焼結オーブン内で実行される。焼結は好ましくは、保護ガス雰囲気(NまたはAr)下で、代替的に還元性雰囲気、例えばフォーミングガスなどのもとで実行される。
【0030】
本発明は加えて、複合セラミック、好ましくは本発明による複合セラミックの代替の製造方法であって、以下のステップを含む該方法に関する:
a’) 変換蛍光体をアルミニウムの酸化物で被覆すること;
b’) ステップa’)で得られた被覆変換蛍光体をW含有またはMo含有成分と混合して、混合物を得ること;および
c’) ステップb’)で得られた混合物を1000〜1600℃の範囲の、好ましくは1400〜1600℃の範囲の温度で焼結すること。
【0031】
ステップa’)で提供される変換蛍光体は、本発明によっては、本発明による複合セラミックに関してと全く同様にして規定されるべきである。変換蛍光体はここにおいて好ましくは、粉体形態で提供される。変換蛍光体粉体の平均粒径は、好ましくは1〜10μmの範囲である。
【0032】
用いられるアルミニウムの酸化物は、W含有またはMo含有化合物とのステップc’)における焼結に際し負の熱膨張係数を有する材料を形成することができる任意の酸化物のアルミニウム化合物であることができる。用いられるアルミニウムの酸化物は、好ましくはAl、特に好ましくはγ改質物としてである。
【0033】
W含有またはMo含有成分は、アルミニウムの酸化物と焼結により反応し、負の熱膨張係数を有する材料を得ることができる無機化合物を意味するものとする。用いられるW含有またはMo含有成分は、好ましくはWOまたはMoOである。負の熱膨張係数を有する材料は、本明細書において、複合セラミックに対して規定されるさらなる材料と全く同じようにして規定され得る。
【0034】
代替の方法により、ステップc’)において、変換蛍光体の粒子が負の熱膨張係数を有する材料により包囲される複合セラミックを得る。
【0035】
本発明はさらに、本発明による複合セラミックの、または発光変換材料として本発明による方法により製造された複合セラミックの使用に関する。複合セラミックにおける変換蛍光体の存在により、複合セラミックはまた、1つの励起波長の光/照射をもう1つの波長への光へと変換することができる特性を有する。それゆえ発光変換材料は好ましくは、光源において用いられる。光源がLED(発光ダイオード(light-emitting diode))であるかまたは含むことが特に好ましい。光源が白色光を発することがさらに好ましい。
【0036】
それゆえ本発明はさらにまた、本発明による部材セラミックまたは本発明による方法により製造された複合セラミックを含む光源に関する。光源は、一次光源からの光が変換蛍光体により変換される任意のタイプのものであることができる。しかし、光源がLEDであるかまたは含むことが好ましい。
【0037】
本発明によるLEDの場合において、「蛍光体変換LED(phosphor-converted LED)」に対する用語pc−LEDがまた慣用である。
【0038】
一次光源は、半導体チップ、ZnO、TCO(透明導電性酸化物(transparent conducting oxide))、ZnSeまたはSiCに基づく発光アレンジメント、有機発光層に基づくアレンジメント(OLED)あるいはプラズマまたは放電源、好ましくは半導体チップであることができる。このタイプの可能な形態の光源は、当業者に公知である。
【0039】
一次光源が半導体チップであるなら、好ましくは発光性インジウムアルミニウムガリウム窒化物(InAlGaN)であり、特には式InGaAlN、式中0≦i、0≦j、0≦k、およびi+j+k=1、で表されるものである。
【0040】
光源において用いられる複合セラミックは好ましくは、均質な薄くかつ非孔質なプレートレットの形態で、チップの形態の一次光源の表面へと直接的に適用される。これは変換蛍光体の励起および発光の位置依存性変化が生じないという利点を有し、それを備える光源が均質でかつ色が一定である光円錐を発し、高度な光出力を有するものとさせる。セラミック発光変換成形体の形態の複合セラミックは、必要であるならば、例えば水ガラス溶液を用いて、チップ基板上に固定することができる。
【0041】
好ましい態様において、セラミック発光変換成形体の形態の複合セラミックは、半導体チップの反対の側に構造化した(例えばピラミッド状)表面を有する。できるだけ多くの光がこのようにして、セラミック発光変換成形体から結合放出(coupled out)することができる。セラミック発光変換モジュール上の構造化した表面は好ましくは、例えば静水圧プレスの場合、構造化したプレス板を有する圧縮モールドにより、およびこのようにして構造を表面へとエンボス化することにより作り出される。可能な限り薄いセラミック発光変換成形体またはプレートレットが作り出されるべきであるなら、構造化表面が好ましい。圧縮条件は当業者に公知である(J. Kriegsmann, Technische keramische Werkstoffe [Industrial Ceramic Materials], Chapter 4, Deutscher Wirtschaftsdienst, 1998を参照されたい)。
【0042】
本発明はさらに、特にディスプレイデバイスのバックライトのための、照明ユニットであって、少なくとも1つの本発明による光源を含む、該照明ユニットに関する。この種の照明ユニットは主に、バックライト型ディスプレイデバイス、特に液晶ディスプレデバイス(LCディスプレイ)において用いられる。それゆえ本発明はまた、このタイプのディスプレイデバイスに関する。
【0043】
本発明による照明ユニットの同様に好ましい態様において、発光変換材料(複合セラミック)と一次光源(特に半導体チップ)との間の光結合は好ましくは、光伝導性アレンジメントにより生じる。このようにして、一次光源は中心位置に取り付けられ、かつ発光変換材料が光伝導性デバイス、例えば光ファイバーなどにより光学的に結合されることが可能である。このようにして、単に光スクリーンを形成するように配置され得る、1つまたは2つ以上の異なる変換蛍光体ならびに、一次光源へと結合する、光導波路からなる、照明の要望に応えたランプを達成することが可能である。
【0044】
このようにして、電気設備に好ましい場所に強力な一次光源を配置することおよび、光導波路へと結合する、発光変換材料を含むランプをさらなる電気ケーブル化をすることなく、単に光導波路を取り付けることにより任意の所望の位置に設置することが可能である。この概念はまた、「遠隔概念」または「遠隔蛍光体概念」とも称される。記載されるセラミック蛍光体は、光励起に用いられる光源が本発明によるセラミック成形体からの距離にあるように、ランプに取り付けることができる。
【0045】
以下の例および図は、本発明を説明することを意図する。しかし、これらはいかようにも限定的であると考えられるべきではない。調製物において用いられることができる全ての化合物または成分は、公知であるか、または商業的に利用可能であるかのいずれかであるか、あるいは公知の方法により製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は比較材料ならびに例3aで製造された複合セラミックの発光スペクトルを示すグラフである。
図2図2は比較材料ならびに例3bで製造された複合セラミックの発光スペクトルを示すグラフである。
【0047】
図1図1は、比較材料YAG:Ceならびに、例3aで製造された、YAl12:CeおよびAl12(3:1)からなる複合セラミックの発光スペクトルを示す。スペクトルは、Xe中圧ランプ(Osram)を励起源として用いる、Edinburgh Instruments FL900蛍光分光計で記録した。
【0048】
図2図2は、比較材料YAG:Ceならびに、例3bで製造された、YAl12:CeおよびYAlW12(3:1)からなる複合セラミックの発光スペクトルを示す。スペクトルは、Xe中圧ランプ(Osram)を励起源として用いる、Edinburgh Instruments FL900蛍光分光計で記録した。
【0049】
実施例:
例1:Y(Al1−aSia/2Mga/212:CeおよびAl12からなる複合セラミックの製造
複合セラミックのための粉体成分、つまりアルミン酸イットリウムおよびタングステン酸アルミニウムを別々に製造する。用いられる出発材料は、金属硝酸塩、アルミン酸イットリウムに対してはY(NO、Al(NO、Ce(NOおよびタングステン酸アルミニウムに対してはアンモニア中のAl(NOならびにWOであり、これらをそれぞれの場合において混合して均質な溶液を得る。溶液中の金属カチオンは錯化剤(例えばトリスアミン)の添加により安定化され、そして蒸散され、固形残渣を得る。乾燥残渣のさらなる加熱により、発火およびスポンジ様前駆体構造を生じる。前駆体を800〜1000℃の温度でか焼し、軟質な凝集体の形態の化合物Y3−xCeAl12およびAl12へと変換する。Al12粉体を湿式化学法によりAlで被覆するところ、ここで被覆プロセスは混合反応器中で触媒としてアンモニアを添加したアルコール媒体中のアルミニウムイソプロピラートの加水分解により達成される。
【0050】
後続のステップにおいて、2種の粉体を混合するところ、ここで第2の成分の容量比率は10〜60容量%の範囲であり、最終セラミックの膨張計測定を考慮して決定する。
【0051】
粉体混合物を一軸的および平行的に2つのステップで薄い円盤状にプレスするところ、ここでプレス圧は100〜300MPaの範囲である。後続の焼結は空気中の多段階プロセスで達成されるところ、ここで温度は1000℃〜1600℃の範囲である。焼結セラミックをダイヤモンド懸濁液を用いてすりつぶし、ピコレーザーにより励起源として適合する寸法へとカットする。
【0052】
例2:Y(Al1−aSia/2Mga/212:CeおよびYAlW12(3:1)からなる複合セラミックの製造
複合セラミックのための粉体成分、つまりマグネシウムドープおよびシリコンドープアルミン酸イットリウムならびにタングステン酸イットリウムアルミニウムを、セラミック法により別々に製造する。微細粉体の形態の金属酸化物を混合し、か焼し、800℃〜1200℃の範囲の温度で合成する。YAlW12粉体を湿式化学法によりAlで被覆するところ、ここで被覆プロセスは混合反応器中で触媒としてアンモニアを添加したアルコール媒体中のアルミニウムイソプロピラーの加水分解により達成される。Y(Al1−aSia/2Mga/212:Ce粉体は微細にすりつぶし、Al被覆YAlW12粉体と混合する。混合物を2段階一軸性および平行プレスにより薄い円盤の形態に成形するところ、ここでプレス圧は100〜300MPaの範囲である。後続の焼結は空気中で多段階プロセスとして達成されるところ、ここで温度は1000℃〜1600℃の範囲である。焼結セラミックはダイヤモンド懸濁液を用いてすりつぶし、ピコレーザーにより励起源として適合する寸法へとカットする。
【0053】
例3:YAG:Ceおよびタングステン酸塩(例3a:Al12;例3b:AlYW12)からの複合セラミックの製造の具体的な実験手順
ステップ1. YAG:Ce粉体を自己燃焼法により製造したところ、ここで金属の硝酸塩水溶液をトリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS:M=121.14g/mol)とともに混合し、乾燥させ、そして点火した。黒色前駆体を1000℃でか焼し、その過程において微細粒子状無色粉体へと変換した。
【0054】
8.4594g(0.02524mol)のYを10mlのHNOに溶解させ、水とともに約250mlにまでとした。そして46.8913g(0.08421mol)のAl(NO9HOおよび0.03256g(0.00005mol)のCe(NO9HOを添加し、溶解させた。TRISを添加して均質な溶液とし、HOとともに約500mlとした。加温後、HOを蒸発させ、残渣に点火した。前駆体を12h乾燥室中で乾燥させ、乳鉢中ですりつぶし、そしてオーブン中で1h、1000℃でか焼した。
【0055】
ステップ2. Al12粉体をセラミック法により製造するところ、ここで微細粒子酸化物AlおよびWOを混合して2ステップ、まず1000℃の温度でそして1100℃で処置した(中間体を乳鉢中ですりつぶしながら)。
【0056】
1.019g(0.01mol)のAl(ナノ)を6.955g(0.003mol)のWOとともにエタノールとともにすりつぶす(めのう乳鉢)。懸濁液を乾燥させ、乳鉢中でホモジナイズして、そして1000℃で12h焼結し、乳鉢中ですりつぶし、空気中で12h、1100℃でか焼した。
【0057】
ステップ3. AlYW12粉体をセラミック法により酸化物Al、WOおよびYから製造するところ、ここで全ての酸化物粉体は乳鉢中でともにすりぶつし、2ステップ、空気中の100℃(6h)および1100℃(12h)の温度で処置した。
【0058】
0.5098g(0.005mol)のAl(ナノスケール)を6.955g(0.003mol)のWOおよび1.129g(0.005mol)のYとともにエタノール中ですりつぶした。懸濁液を乾燥させ、乳鉢中でホモジナイズし、そして1000℃で12hか焼し、乳鉢中ですりつぶし、空気中で12h、1100℃でか焼した。
【0059】
ステップ4. YAG:Ceおよび上述の金属タングステン酸塩の1つを含む複合セラミックを、Al12粉体およびAlYW12粉体の混合物を用いて製造した。この目的のために、Y2.997Ce0.003Al12粉体(90〜99重量%)およびそれぞれの場合においてタングステン酸塩の1つ(1〜10重量%)をエタノール中ですりつぶし(めのう乳鉢中)、乾燥させ、数滴のプレス補助ポリビニルアルコールで湿らせ(めのう乳鉢中)、そして一軸性(約100MPa)および平行的(約300MPa)にプレスし、タブレット(厚約2.5mm、径約12mm)を得、空気中で乾燥させ、最後に2ステップ、まず1000℃12hそして1100℃2hで焼結した。セラミック成形体を得る。
【0060】
比較例A: 負の熱膨張係数を有する金属を含まない複合セラミックの製造
比較のために、複合金属をYAG:CeおよびAlから製造するところ、ここでYAG:Ceは自己燃焼法により製造する。用いられる第2の成分はAlナノパウダー(Degussa)である。粉体混合後(好ましくは1:1容量比率で)、セラミックディスクを上の例のものと同様の方法で製造する。
【0061】
比較例B:
第2の比較材料として、非ドープYAGとともにYAG:Ceを含むセラミックを製造する。YAG:Ce粉体は共沈法により製造されるところ、ここで、用いられる出発材料は金属硝酸塩Y(NO、Al(NO、Ce(NOであり、用いられる沈殿剤はNHHCOである。製造された沈殿物を800℃でのか焼および1000℃での焼結によりYAG:Ceへと変換する。激しくすりつぶしたのち、YAG:Ceは微細粒子状で、同様にして製造されたYAGとの混合に好適なものとなる。混合物を2ステップ、一軸性および平行プレスにより薄いディスクの形態へと成形するところ、ここでプレス圧は100〜300MPaの範囲である。後続の焼結は多段階ステップで空気中で達成されるところ、温度は1000〜1600℃の範囲である。焼結したセラミックをダイヤモンド懸濁液を用いてすりつぶし、ピコレーザーにより励起源に適合する寸法へとカットする。
【0062】
例4:例3aおよび3bならびに比較例AおよびBの複合セラミックでのLEDの製造
例4a:遠隔蛍光体アレンジメント
5mmの径および0.1mmの厚さを有し、本発明による複合セラミックからなるプレートレットを、環状空洞が密封されるように、液体シリコーンOE6550(Dow Corning)で充満させたSMD LED(チップピーク波長450nm、作動電流強さ350mA、空洞開口径5.5mm)に配置する。そしてコンポーネントをオーブン中に150℃で1h格納するところ、その間にシリコーンは固くなり、LEDおよびセラミックプレートレットへと強く結合する。
【0063】
例4b:チップレベル変換アレンジメント
1×1mmの四角寸法および0.1mmの厚を有するセラミック蛍光体プレートレットを、1滴のシリコーンOE6550(Dow Corning)を用いて、SMDフリップチップLED(チップピーク波長450nm、作動電流強さ350mA)にフィットするように直接配置する。150℃で1hの時間にわたってシリコーンを固まらせたのちに、LEDの残りの空洞にシリコーンOE6550(Dow Corning)を注ぎ、シリコーンを固めるために、全体のコンポーネントを150℃で1h格納する。
【0064】
例5:発光強度
図1および2において、本発明による例3aおよび3bの複合セラミックが、比較例AおよびBからのYAG:Ceセラミックと比較して低い強度を呈するところ、YAG:Ce蛍光体は複合セラミックにおける希釈形態であるため、これは予想されるべきことである。スペクトルはEdinburgh Instruments FL900蛍光分光計で記録されたところ、ここで用いられた励起源は、Xe中圧ランプ(Osram)であった。
【0065】
例6:寿命
例1、2および3による本発明のよる複合セラミックの利点は、発光ダイオードにおける長期使用を参照して実証することができる。本発明による材料は、先行技術からのセラミックと比較して、使用に際し低減されたクラッキングを呈する。それゆえ、効率はあまり迅速には低減せず、セラミックは良好な効率を有しながら、より長期で使用することができる。
図1
図2