(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
様々な種類の複数の細胞が含まれる試料から特定の細胞のみを検出することは、非常に幅広い分野にわたって必要とされている。特に医学、薬学に関連するバイオテクノロジーの研究開発及び臨床現場においては、多数の細胞中において、特定の細胞(例えば、特定の物質を有する又は産出する細胞、あるいは病原菌に感染した細胞や癌細胞等)の有無を検出することは、実験の進行や病気の診断のために非常に重要である。
【0003】
しかしながら、特に特定の細胞の存在割合が低い場合、多くの細胞が存在する試料中から当該特定の細胞を検出することは困難である。
【0004】
例えば、感染症の一つとして、マラリア原虫が赤血球細胞に感染することにより生じるマラリア原虫感染症があるが、該感染症の検出・診断方法としては次のものが例示される。
【0005】
例えば、血液細胞をスライドガラスに塗抹、乾燥し、ギムザ染色した後に顕微鏡下でマラリア原虫による感染の有無・程度を観察する方法がある。該方法は染色操作を行うだけで顕微鏡による観察が可能であり、簡便という利点を有する。しかしながら、該方法による検出・診断には時間と高度な観察技術を必要とし、さらに検出感度は非常に低い。例えば、該方法の所要時間は40分と長く、全血液細胞のうち少なくとも0.01%程度の細胞が感染している場合にかろうじて検出できる程度であり、検出感度(検出限界)は高くない。
【0006】
別の例としては、イムノクロマトグラフィー法を利用してマラリア原虫による感染の有無・程度を検査・診断する方法がある。該方法も広く知られており、検査が簡便に実施できるように検査キットも販売されている。このため、このような検査キットを使用した場合には、さらに簡単な操作で感染の有無・程度を観察できる。イムノクロマトグラフィー法の所要時間は20分程度と短時間ではあるが、その検出感度は顕微鏡下での観察と同程度であり高くない。また、イムノクロマトグラフィー法は擬陽性も出やすいことから前述の顕微鏡下での観察との併用が常である。
【0007】
別の方法としては、PCR法を利用してマラリア原虫による感染の有無・程度を検査・診断する方法がある。該方法は、前述の顕微鏡下での観察等とは異なり比較的高い検出感度を有する。しかしながら、PCR法では結果を得るまでに5時間程度を要し、また操作が煩雑で高度な技術を要する。また、試料の状態やプライマーによっては反応条件設定が難しく検出できない場合もある。従ってPCR法単独では感染診断には向いていない。
【0008】
このように、例えばマラリア原虫感染症において、従来の検出・診断方法には検出までに長時間を要する、高度な技術を要する、検出感度が低い等の欠点がある。このため、迅速、簡便かつ検出感度が高い新しい感染症の検出方法が求められている。
【0009】
一方、これまでに種々のマイクロアレイチップが報告されており、細胞の検出等に応用されている。例えば、特許文献1には、マイクロチャンバーを集積化し、ヒーター等と連結し、ハイスループットに生体試料の生化学反応等を行うシステムが報告されている。しかしながら、該システムは細胞レベルで検出できるほど感度が高いとはいえず、膨大な数の細胞中に混在する少数の標的細胞を高感度に検出することは困難である。
【0010】
また、特許文献2には、ポリマーを基板上にパターニングして、これに何らかの物質を固定させ、固定された該物質に細胞を作用させることにより、該物質の細胞に対する作用を観察する技術が報告されている。しかしながら、該技術においては各パターンに一定数の細胞を固定化することは困難であり、また膨大な数の細胞中に混在する少数の標的細胞を高感度に検出することは困難である。
【0011】
また、特許文献3には、1つのリンパ球が格納されるように設計されたマイクロウェルを多数集積化したアレイチップが報告されている。しかしながら、該マイクロウェルには一細胞しか導入できないため、アレイチップ上に集積化されたマイクロウェル数以上の細胞をスクリーニングすることは困難である。従って、当該アレイチップにおいても、膨大な数(100〜1000万個)の細胞中に混在する少数の標的細胞を高感度に検出することは困難である。またさらに、当該アレイチップのマイクロウェルでは、導入された細胞をさらに培養やPCRすることは極めて困難であると考えられる。
【0012】
このように、従来のマイクロアレイチップを用いる方法であっても、膨大な数の細胞中に混在する少数の標的細胞(特定の細胞)を高感度に検出することは困難である。
このことから、例えば前述のマラリア原虫感染症をはじめとする種々の感染症に感染した細胞、また、これ以外の種々の標的細胞(特定の細胞)を迅速、簡便かつ高感度に検出可能な新しい検出手段が求められている。また、ベッドサイド等でも容易に使用可能な新しい検出手段が求められている。
【0013】
このような検出手段の好適な例として、本発明者らは既に、マイクロチャンバーの大きさ(特に縦横の比率)やチップ表面の水接触角が特定の範囲の値を有するマイクロチップを報告している(特許文献4)。当該チップによれば、膨大な数の細胞中に混在する少数の標的細胞(特定の細胞)を高感度に検出することができる。具体的には、当該チップ上へ多数の細胞を含むサンプルを展開して細胞を各マイクロチャンバーに格納し、過剰な細胞をマイクロアレイチップから除去(洗浄)することにより、各マイクロチャンバー内にほぼ均一に単層として細胞を格納することができる。特定の大きさのマイクロチャンバーや特定の水接触角を有することにより、測定サンプルを適用した際に各マイクロチャンバー内に単層として細胞を格納されなかった場合にも、洗浄することによって各マイクロチャンバー内にほぼ均一に単層として細胞を格納することができるのである。このために種々の利点を得ることができる。例えば、(i)マイクロチャンバー内で細胞が重なり、検出標的である特定の細胞が他の細胞の下に位置することになって、検出が困難になるなどの問題が起きにくい、(ii)顕微鏡で観察する際に焦点を容易に合わせることができるし、共焦点レーザー顕微鏡による観察においても、バックグラウンドを抑制でき、高感度での観察が可能となる、(iii)単層に格納された細胞上に別の種類の細胞をのせて、それぞれの細胞の相互作用を簡便かつ効率よく検討することができる、などといった利点を得ることができる。
【0014】
しかし、裏を返せば、当該チップを用いる場合には、検出のために用いるサンプル(例えば血液)をチップに適用した後に、細胞をマイクロアレイチップから除去(洗浄)する必要があるケースが多く存在するということであり、このためにサンプルに含まれる多くの細胞を無駄にしてしまうという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の検出方法について説明する。
【0024】
本発明の検出方法では、1つのマイクロアレイチップに、多数の細胞を保持させ、この中から検出標的となる特定の細胞を検出する。例えば100万個程度という多数の細胞であっても1つのマイクロアレイチップに保持させることができ、そしてこのうち標的とする特定の細胞が一つしか存在しない場合であっても、この特定の細胞を検出することができる。この場合、本発明の検出方法によれば細胞が試料中に0.0001%しか存在していなくとも、特定の細胞を検出することが可能であるといえる。
【0025】
本発明の検出方法において、検出標的となる特定の細胞、及びこれを含む多数の細胞(すなわち、細胞群)は、本発明の効果が奏されるものであれば特に限定されない。
【0026】
例えば、特定の遺伝子を発現している細胞や、核酸、タンパク質、脂質、糖等の生体物質が通常より過剰である、又は不足している細胞を、特定の細胞として種々の細胞群から検出することができる。このような特定の細胞は自然界に存在する細胞であってもよいし、人為的処理が施された細胞であってもよい。当該自然界に存在する細胞としては、特に限定されないが、例えば病原細胞、病変細胞、病原菌又は病原生物に感染された細胞、突然変異した細胞、特定の性質を有する未知の細胞等が挙げられる。また、当該人為的処理は特に限定されないが、例えば物理的処理(例:電磁波照射)、化学的処理(例:薬剤処理)、遺伝子工学的処理(例:遺伝子組み換え処理)等を挙げることができる。
【0027】
また、このような人為的処理のうち、細胞に与える影響が既知である処理を細胞群に施し、当該影響が表れない細胞又は当該影響がより強く表れる細胞を特定の細胞として検出することもできる。例えば、薬剤処理へ耐性又は高感受性を示す細胞を特定の細胞として検出することができる。
【0028】
また、当該細胞群も本発明の効果が奏される限り特に限定はされない。単細胞生物の群はもちろん、多細胞生物由来の細胞の群であってもよい。多細胞生物由来の細胞としては、例えば生物の正常組織又は病態組織から得られた細胞、及びこれらの細胞に由来する培養細胞等が挙げられる。また、これらの細胞を得る生物も本発明の効果が奏される限り特に限定されない。例えば動物由来細胞又は植物由来細胞であってよく、より具体的には例えば脊椎動物(特に哺乳類及び鳥類)由来細胞、昆虫由来細胞、植物培養細胞等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、同一の細胞の群であっても、複数種の細胞が混在する群であってもよい。
【0029】
本発明の検出方法を用いて特定の細胞を検出する、より具体的な例としては、例えば、マラリア原虫感染症患者の血液細胞中から、マラリア原虫感染赤血球を検出する例が挙げられる。マラリア原虫感染症であれば、100万個程度という多数の血液細胞中感染した血液細胞が一つしか存在しない場合であっても、この感染した血液細胞を検出することができる。
【0030】
また、例えば、血中に存在する癌細胞を探索、検出するにあたっても好ましく用いることができる。特に、癌が転移する際に、癌細胞が血液やリンパ液の流れに乗って循環し、離れた臓器にまで転移することが知られている。このように血液中に循環している癌細胞は血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell:CTC)と呼ばれ、転移性の癌症例において治療効果の判定や予後予測因子として有用性が認められており、CTCを検出できることは極めて有用である。
【0031】
また、例えば、妊娠女性の血中に存在する胎児由来の有核赤血球の検出に好ましく用いることができる。胎児由来の有核赤血球は、出生前診断に有用であり、特に母体にほとんど負担をかけることなく出生前診断を可能とする点で有用である。
あるいはまた、例えば、癌細胞群中に存在する癌幹細胞を探索するにあたっても、好ましく用いることができる。例えば、体液(血液やリンパ液等が例示される)中に存在する癌細胞中に存在する癌幹細胞や、腫瘍を各細胞へと解離させた後にそれらの細胞中に存在する癌幹細胞を探索するために用いることができる。
【0032】
さらに、例えば、人為的処理された細胞の群のなかから、当該処理により特定の性質を有するようになった細胞を選択することができる。
【0033】
また、特に強く当該特定の性質を有する細胞を選択することもできる。より具体的には、例えば、遺伝子組み換え処理により特定の物質を生産するよう形質転換させた複数の細胞の中から、特に効率よく当該物質を生産する細胞を検出することもできる。あるいは、例えば、電磁波照射処理若しくは薬剤処理により特定の機能を失った細胞を検出することができる。また、これらの処理に対し耐性又は高感受性を有する細胞を検出することができる。
【0034】
また、本発明の検出方法は、研究室のみならず、例えば臨床現場等においても好適に用いることができる。
【0035】
また、本発明の検出方法では、複数の細胞(細胞群)をマイクロアレイチップが備える各マイクロチャンバーに格納(保持)させた後、この格納された細胞中、検出標的である特定の細胞を特異的に検出し得る標識を施すことができる。また、複数の細胞(細胞群)を含む試料において、検出標的とする特定の細胞をあらかじめ標識しておくことも可能である。特定の細胞を予め標識しておく方が、標識効率が均一になりやすいため、好ましい。このような標識の方法としては特に限定されず、検出標的である特定の細胞の性質に応じて適宜選択することができる。検出の簡便性及び毒性等を考慮すると、特に蛍光標識が好適である。そして、該標識の有無(例えば蛍光標識の有無)に基づき当該特定の細胞を検出することができ、さらに、検出される標識の数(例えば蛍光標識の数)に基づけば、試料中の細胞のうち特定の細胞がどの程度存在しているのかについて定量的な分析を行うこともできる。またさらに、該標識の強度(例えば蛍光標識の蛍光強度)に基づき、検出した特定の細胞が有する性質の強度を分析することもできる。具体的には例えば、標的とする特定の細胞が感染症病原体に感染された血液細胞である場合は、当該定量的データや個々の細胞の標識の強さ(例えば蛍光標識の場合は蛍光強度)に着目することにより、感染症の重傷度やステージを分析することもできる。
【0036】
また、本発明の検出方法によれば、マイクロアレイチップに備えられたマイクロチャンバー内に細胞が格納される。このため、本願の検出方法においては、検出時、標的とする特定の細胞がマイクロアレイチップのどの部分に存在しているのかが分かり易い。このことから、検出後、当該特定の細胞の回収やPCR法による更なる分析等を容易に行うことができる。
【0037】
また、本発明の検出方法においては、マイクロアレイチップに備えられた各マイクロチャンバー内に細胞を均一かつ効率よく格納させることが可能である。すなわち、本願の検出方法においては、マイクロアレイチップに備えられた各マイクロチャンバーが同じ形状である場合には、ほぼ同数の細胞を格納させることができる。
【0038】
本発明の検出方法を適用できる、複数の細胞を含む試料は、本発明の効果を奏することができるものであれば特に限定されず、検出標的となる特定の細胞が存在する細胞群を含む可能性のある試料であればよい。このような細胞群及び検出標的となる特定の細胞としては、例えば以下に挙げるものが好ましい。
【0039】
本発明の検出方法により、特に感染症における感染血液細胞を好ましく検出することができる。感染症としては、マラリア原虫類に代表される原虫感染症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に代表されるウイルス感染症、結核菌に代表される細菌感染症等が例示される。
【0040】
これらの感染症のうち、例えばマラリア原虫類による感染症では、マラリア原虫類が赤血球に感染する。この場合、本発明の検出方法における検出対象である特定の細胞はマラリア原虫類に感染した血液細胞、すなわちマラリア原虫類に感染した赤血球である。マラリア原虫類は、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫及び卵形マラリア原虫の4種類が例示される。
【0041】
また、例えばHIV感染症では、HIVがある種のリンパ球(T細胞)に感染する。この場合、本発明の検出方法における検出対象である特定の細胞は、HIVに感染した血液細胞、すなわちHIVに感染したある種のリンパ球(T細胞)である。HIVには、HIV−1、HIV−2の2種類が例示される。
【0042】
また、例えば結核では、結核菌がある種の白血球細胞(単球)に感染する。この場合、本発明の検出方法における検出対象である特定の細胞は、結核菌に感染した血液細胞、すなわち結核菌に感染したある種の白血球細胞(単球)である。
【0043】
本発明の検出方法は、このほかの感染症における感染血液細胞も検出の対象とすることができる。
【0044】
また、血液細胞としては血液に含まれる細胞であれば限定されない。血液細胞として赤血球、血小板、白血球(リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球)が例示される。例えば、これら血液細胞を複数含む試料を、本発明の検出方法へ供する、複数の細胞を含む試料として用いることができる。例えば、複数の血液細胞を含む血液や体液を当該試料として用いることができる。
【0045】
本発明の検出方法により、培養細胞中の特定の細胞を検出することもできる。培養細胞は本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、哺乳類又は昆虫由来の細胞株(例えばHEK293細胞、Hela細胞、3T3細胞、COS−7細胞、CHO細胞、Jurkat細胞、Sf9細胞等)や酵母が好ましく例示できる。
【0046】
本発明の検出方法は標的とする特定の細胞が試料中に極微量しか存在していなくとも(例えば試料の細胞中の存在割合が0.001〜0.00001%であっても)、該特定の細胞を十分に検出することが可能であるため、検出標的となる特定の細胞の存在割合が非常に小さい試料を用いるときに特に有利である。このような例としては、例えば、血液中に循環している癌細胞は血中循環腫瘍細胞(CTC)を挙げることができる。また例えば、妊娠女性の血中に存在する胎児由来の有核赤血球を挙げることができる。また例えば癌細胞群中に存在する癌幹細胞を挙げることができる。癌幹細胞は、自己複製能と増殖能を有し、悪性腫瘍(癌)にごくわずか存在しており、幹細胞と同様のマーカー(例えばCD34、CD133、CD117、Sca-1等)を発現していると言われており、本発明の検出方法によれば、好ましく検出することができると考えられる。
【0047】
またあるいは、特定の遺伝子やタンパク質を発現している細胞も、本発明の検出方法の検出対象になりえる。
【0048】
本発明の検出方法においては、特定のマイクロアレイチップが用いられる。本発明は、当該特定のマイクロアレイチップも包含する。
【0049】
当該チップは、複数のマイクロチャンバーを備えており、該マイクロチャンバー1つあたりに複数の細胞を単層に格納可能であり、表面の水接触角が10°以下であり、該マイクロチャンバーの(内径:深さ)の比が(1:0.35〜1)であり、以下の(i)(ii)の条件のいずれか一方又は両方を満たす、マイクロアレイチップである。
(i)最外部に存在するマイクロチャンバーの開口部の中心を直線でつないで囲った領域の面積を100%とし、その領域におけるマイクロチャンバー開口部以外の部分が占める面積比率を間隙率としたとき、間隙率が0%より大きく45%以下である。
(ii)マイクロチャンバーとマイクロチャンバーとの間隔が、35μm以下である。
以下、さらに詳細に説明する。
【0050】
マイクロアレイチップの基板は限定されず、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状オレフィンコポリマー(COC)等のポリマー、シリコン等の金属、ガラス、石英ガラス、またポリマーとガラスや金属等を張り合わせたような複数の素材を組み合わせたもの(例えばPDMSとガラス)等が例示される。好ましくは、ポリスチレン、PMMA、ガラス、シリコン等である。
【0051】
マイクロアレイチップの大きさは限定されず、検出標的である特定の細胞を検出・測定する装置に応じて適宜選択される。
【0052】
該マイクロアレイチップにはマイクロチャンバーが形成されている。マイクロチャンバーは基板に直接加工を施すことにより作製してもよく、マイクロ貫通孔もしくはマイクロチャンバーが形成されたフィルムをこれらの基板に貼り付けることにより作製してもよい。好ましくは、マイクロチャンバーはこれらの基板に直接加工を施すことにより作製される。この場合、マイクロチャンバーは半導体研究分野における微細加工技術であるリソグラフィー法(光リソグラフィー、電子線リソグラフィー等)によって作製することはもちろんのこと、マイクロドリル等を用いて穴をあける掘削加工技術、レーザー加工等あらゆる微小穴をあける技術によって作製することができる。例えば、LIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセス等が例示される。
【0053】
該マイクロアレイチップの表面は親水性であり、具体的には表面の水接触角が10°以下である。当該親水性を達成するため、必要に応じて表面処理を施すことができる。表面処理方法は限定されず、プラズマ処理、コロナ放電処理等が例示される。好ましくは、プラズマ処理であり、酸素プラズマ処理等が例示される。例えば、マイクロアレイチップの基板が疎水性の材料(ポリスチレン、PMMA等のポリマー)である場合には、酸素プラズマ処理等の親水化処理を行うことが好ましい。また、マイクロアレイチップの基板が親水性の材料(シリコンやガラス等)であって水接触各が10°以下である場合には、このような処理をしなくともよい。
【0054】
マイクロアレイチップの表面の水接触角は、より好ましくは8°以下、さらに好ましくは5°以下である。なお、“マイクロアレイチップの表面”とはマイクロチャンバーの内部の表面も含む意味である。
【0055】
このため、前述のマイクロアレイチップの基板表面の水接触角が前述する範囲にあるものであれば更に処理を施さなくてもよく、前述する好適な範囲にないものは、当該好適な範囲になるよう、その表面が処理されればよい。当業者であれば、細胞の接着の程度等を検討しつつ、最適な水接触角となるようマイクロアレイチップに表面処理を施すことができる。例えばマイクロアレイチップの基板としてポリマー素材のものを使用する場合には、その表面に酸素プラズマ処理等を行うことにより水接触角を調整すればよい。
【0056】
なお、水接触角は次のように測定される。水接触角は公知の方法であるθ/2法を用いて測定される。θ/2法とは液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を求める方法である。例えば、マイクロアレイチップの表面において水接触角を求める場合、蒸留水を該表面の異なる複数の場所に滴下し、それぞれ滴下した液滴の接触角を求める。これにより得られる値を水接触角ということができる。例えば、上記方法に従い、接触角計(協和界面科学株式会社製)を用いて、蒸留水1〜2μlをマイクロアレイチップ基板の異なる複数の地点(5点以上)に滴下して水接触角を測定することができる。
【0057】
マイクロチャンバーの形状は特に限定されない。マイクロチャンバーの形状としては円筒形、逆半球形、逆円錐形、逆角錐形(逆三角錐形、逆四角錐形、逆五角錐形、逆六角錐形、七角以上の逆多角錐形)、直方体等、さらにこれらの形状の二つ以上を組み合わせた形状が例示される。前記円筒形や直方体の場合はマイクロチャンバーの底部は通常平坦であるが、曲面、凸面、凹面とすることもできる。また、前記逆円錐形や逆角錐形の場合は底面がマイクロチャンバーの開口となるが、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状(マイクロチャンバーの底部は平坦な形状)も例示できる。さらに、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状の場合は、前述と同様に、マイクロチャンバーの底部を曲面等とすることもできる。マイクロチャンバーの形状は好ましくは円筒形、逆半球形、逆円錐形、逆角錐形であり、より好ましくは円筒形、逆半球形であり、最も好ましくは円筒形である。また、マイクロチャンバーは、一枚のマイクロアレイチップにおいて、好ましくは一種類の形状からなる。
【0058】
本発明のチップの一形態においては、マイクロチャンバーの開口部の面積と開口部以外の面積の比率が重要となる。具体的には、マイクロアレイチップの最外部に存在するマイクロチャンバーの開口部の中心を直線でつないで囲った領域の面積を100%とし、その領域におけるマイクロチャンバー開口部以外の部分が占める面積比率を間隙率としたとき、前記マイクロアレイチップの間隙率は0%より大きく45%以下である。
【0059】
開口部の中心とは、本発明では開口部の図形の重心である。例えば、開口部が円や正多角形である場合には、重心は中心と重なる。開口部は、円又は正多角形(正三角形、正四角形、正六角形など)が好ましく、特に正六角形が好ましい。
【0060】
マイクロアレイチップの最外部に存在するマイクロチャンバーの開口部の中心を直線でつなぐ、とは、次の条件(1)(2)を満たすように多数の開口部の中心を直線でつなぐことをいう。
(1):直線でつながれる中心の数が最小になるようにする。
(2):直線でつないで囲った領域内に、全ての開口部の中心が含まれるようにする。
例えば、
図1aに記載の10個の開口部があった場合には、
図1bのように各開口部を直線でつなぐ。
図1cのようにつないだ場合には、全ての中心が囲まれた領域に存在するものの、条件(1)を満たしておらず、また、
図1dのようにつないだ場合には、条件(1)も(2)も満たしていない。
【0061】
また例えば、開口部が格子状に整列している場合には、囲まれた領域は長方形になる場合がある。例えば、
図2aに、開口部が円であって格子状に整列している場合の例を示す。また、
図2bに、開口部が正六角形であって格子状に整列している場合の例を示す。これらの例においては、いずれも、赤枠(長方形)で囲まれた部分の面積を100%とした場合の、塗りつぶされた部分の面積比率(%)が間隙率である。なお、制限されるわけではないが、開口部は、格子状に整列していることが好ましい。
【0062】
本発明のマイクロアレイチップにおいて、間隙率は、前述の通り0%より大きく45%以下であり、約1〜42.5%が好ましく、約2〜40%がより好ましく、約3〜35%がさらに好ましく、約5〜30%がよりさらに好ましい。なお、下限については、チップ製造の簡便さの観点から考えれば、約10%以上が好ましく、約15%以上がより好ましく、約20%以上がさらに好ましい。
【0063】
一枚のマイクロアレイチップにできるだけ多数の細胞を保持できることが好ましい。マイクロアレイチップに細胞が保持されるとは、マイクロアレイチップに備えられたマイクロチャンバーに細胞が格納されることであり、従ってマイクロチャンバーの数が多いほど、マイクロアレイチップは多くの細胞を保持できる。
【0064】
特に限定されるわけではないが、一枚のマイクロアレイチップに1万個以上の細胞を保持できるようにすることが好ましい。また、10万個以上がより好ましく、100万個以上がさらに好ましく、1000万個以上がよりさらに好ましい。
【0065】
例えば、100万個に1個の割合で存在し得る標的細胞を検出する場合、一枚のマイクロアレイチップに100万個以上の細胞を保持できるようにすることが好ましい。より好ましくは200万〜1000万個、さらに好ましくは300万〜1000万個の細胞を担持できるようにする。この場合、一枚のマイクロアレイチップに1万個以上のマイクロチャンバーを設けることが特に好ましい。
【0066】
また、各マイクロチャンバーに10個以上の細胞を格納できるようにすることが好ましく、より好ましくは50〜500個、さらに好ましくは50〜300個の細胞を格納できるようにする。
【0067】
例えば、一枚のマイクロアレイチップに10万個のマイクロチャンバーを設け、各マイクロチャンバーに約10個ずつ細胞を格納させた場合には、マイクロアレイチップ一枚あたり約100万個の細胞が保持されていることとなる。
【0068】
マイクロチャンバーの寸法は、各マイクロチャンバーに同数程度の細胞を格納されるように決定される。各マイクロチャンバーの寸法は同一であることがさらに好ましい。なお、マイクロチャンバーの開口部が円形である場合には、「内径」とはマイクロアレイチップ表面におけるマイクロチャンバーの開口部の直径を意味する。マイクロチャンバーの開口部が正多角形である場合には、「内径」とは当該正多角形の一つの角と中心とを通る当該正多角形内の線分の長さを意味する。マイクロチャンバーの開口部がこれら以外である場合には、「内径」とはマイクロチャンバーの開口部の内部において設置できる最長の線分の長さを意味する。また、「深さ」とは、マイクロチャンバーの開口部と、マイクロチャンバーの最も深い場所の距離を意味する(
図3)。
【0069】
本発明のマイクロアレイチップが備えるマイクロチャンバーの(内径:深さ)の比は(1:0.35〜1)である。特に、(内径:深さ)の比が(1:0.35〜1)であることが好ましく、(1:0.35〜0.85)であることがより好ましく、(1:0.4〜0.85)であることがさらに好ましく、(1:0.45〜0.8)であることがよりさらに好ましい。
【0070】
また、マイクロチャンバーの内径は好ましくは20〜500μm、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは20〜300μm、よりさらに好ましくは30〜250μm、特に好ましくは30〜200μmである。また、その深さは、内径の値にもよるが、好ましくは20〜200μm、より好ましくは20〜100μm、さらに好ましくは20〜80μm、よりさらに好ましくは20〜70μm、特に好ましくは30〜70μmである。
【0071】
なお、上述の(内径:深さ)の比により、内径の値が決まれば、マイクロチャンバーの深さの好ましい値を決めることができる。ただし、マイクロチャンバーは細胞を格納するため、20μm以上の深さを有することが好ましい。すなわち、マイクロチャンバーは、内径及び深さが上述の比の関係を有し、内径が上述の値を有し、かつ深さが20μm以上であるものが特に好ましい。
【0072】
上記の水接触角及びマイクロチャンバーの(内径:深さ)の比を具備することにより、本発明のマイクロアレイチップは、そのマイクロチャンバーの底に細胞を均一に一層(単層)として保持させることができる。すなわち、各マイクロチャンバーの底辺に、ほとんど重複することなく細胞を保持することができる。このため、マイクロチャンバー内で細胞が重なり、検出標的である特定の細胞が他の細胞の下に位置することになって、検出が困難になるなどの問題が起きにくい。また、単層であることにより、顕微鏡で観察する際に焦点を容易に合わせることができる。共焦点レーザー顕微鏡による観察においても、バックグラウンドを抑制でき、高感度での観察が可能となる。
【0073】
このようなマイクロチャンバーであれば、細胞をより均一かつ効率よく、単層として、マイクロチャンバー内に格納させることができる。
【0074】
マイクロチャンバーの数も特に限定されない。前述のように、マイクロアレイチップに保持される細胞数が多ければ多いほど、感染した血液細胞を高感度に検出することができる。特に制限されないが、マイクロチャンバーの数は、一枚のマイクロアレイチップあたり1000個以上、より好ましくは2,000〜50,000個、さらに好ましくは2,000〜20,000個である。上述のように、例えば10万個設けることもできる。さらには、〜100万個、〜1000万個、あるいは〜1億個程度設けてもよい。
【0075】
マイクロアレイチップは、当該分野で従来公知の方法により適宜作製される。例えば、マイクロアレイチップの作製は、リソグラフィーとエッチングという手法を用いてチップの鋳型を作製し、その鋳型からチップを成型する方法が例示される。本発明においては、当該方法により前述のマイクロアレイチップを作製した。具体的には、マイクロアレイチップの基板としてポリマー(プラスチック)素材のチップを使用し、電子線リソグラフィー法の中でも、X線リソグラフィーと、電鋳(メッキ)、形成の技術を用いて作製するLIGAプロセスに従い、前述のマイクロアレイチップを作製することができる。
【0076】
本発明の検出方法は、複数の細胞を含む試料から、該試料に含まれる特定の細胞を検出するための検出方法であって、前記マイクロアレイチップに、試料中の細胞を保持させる工程、及び、該マイクロアレイチップに保持された細胞において特定の細胞の有無を検出する工程、を少なくとも含有する。
【0077】
マイクロアレイチップへの細胞の保持は、細胞をマイクロアレイチップに接触させ、細胞をマイクロアレイチップ上に展開し、細胞を各マイクロチャンバーに格納したのち、必要に応じて過剰な細胞をマイクロアレイチップから除去(洗浄)する手順を経ることにより可能となる。
【0078】
ここで、細胞のマイクロアレイチップへの接触は、細胞をマイクロアレイチップに接触させられる限り、その方法は限定されない。例えば、培養細胞や生体から採取した細胞そのものをマイクロアレイチップに接触させることにより行ってもよく、これらを緩衝液や培養液等の溶液と混合させ、得られた混合液をマイクロアレイチップに接触させることによりおこなってもよい。
【0079】
例えば、血液細胞のマイクロアレイチップへの接触は、採取した血液そのものをマイクロアレイチップに接触(添加、滴下等)させることにより行ってもよく、採取した血液を緩衝液や培養液等の溶液と混合させ、得られた混合液をマイクロアレイチップに接触させることにより行ってもよい。また、血液細胞のマイクロアレイチップへの接触は、採取した血液から血液細胞を分取し、これを緩衝液や培養液等の溶液と混合させた後に、該混合液をマイクロアレイチップに接触させることにより行ってもよい。
【0080】
また、培養細胞(例えば哺乳類細胞)のマイクロアレイチップへの接触は、培養した細胞を培地ごとマイクロアレイチップに接触(添加、滴下等)させることにより行ってもよく、培養細胞をふくむ培地を緩衝液や培養液等の溶液と混合させ、得られた混合液をマイクロアレイチップに接触させることにより行ってもよい。また、培養細胞を培地から回収し、これを緩衝液や培養液等の溶液と混合させた後に、該混合液をマイクロアレイチップに接触させることにより行ってもよい。
【0081】
また、細胞のマイクロアレイチップ上への展開も、細胞をマイクロアレイチップ上に展開できる限り、その方法は限定されない。複数の細胞(細胞群)そのものをマイクロアレイチップに接触させることにより細胞をマイクロアレイチップ上に展開させてもよく、接触させた後さらに展開液を用いて展開させてもよい。展開液としては、緩衝液、培養液、界面活性剤等が例示される。
【0082】
例えば、マイクロアレイチップ上への展開させる細胞が血液細胞の場合、前述のように血液細胞をマイクロアレイチップに接触させることにより血液細胞をマイクロアレイチップ上に展開させてもよく、また接触させた血液細胞を、さらに展開液を用いて展開させてもよい。また例えば、展開させる細胞が培養細胞の場合であっても、血液細胞と同様にしてマイクロアレイチップ上に展開させることができる。少なくともこのような手順を経ることにより、細胞(例えば血液細胞や培養細胞)を各マイクロチャンバーに格納することができる。
【0083】
マイクロアレイチップ上に細胞を展開する際の細胞の濃度は、細胞種にもよるが、例えば1×10
10〜1×10
4(cells/ml)が例示できる。下述するように、細胞を展開後、過剰な細胞の除去を行うことで、各マイクロチャンバー内にほぼ均一に単層として細胞を格納することができる。また、用いる細胞種やマイクロアレイチップに応じて適宜展開させる細胞濃度を調整してもよい。
【0084】
過剰な細胞のマイクロアレイチップからの除去(洗浄)も、マイクロアレイチップから(すなわちマイクロチャンバー内及びマイクロチャンバー外から)過剰な細胞を除去できる限り、その方法は限定されない。
【0085】
例えば、ピペットマン等を用いて、マイクロアレイチップを軽く傾けて緩衝液、培養液、界面活性剤、酵素等の洗浄液を流すことにより過剰な細胞を除去してよい。また、マイクロチャンバー以外の部分に吸着した余分な細胞を除去、洗浄する際には、セルスクレイパー等の器具を使用しても良い。
【0086】
ただし、洗浄を行うことにより余分な細胞が除去されるということは、サンプル中の細胞が無駄になっているということである。従って、細胞を無駄にしないという観点からは、洗浄はできる限り行わないようにすることが好ましい。洗浄回数を減らす又は行わないようにするためには、サンプル中の細胞濃度を調整することが好ましい。例えば、1×10
6〜1×10
8cells/ml程度が好ましく、1×10
7〜1×10
8cells/ml程度がより好ましい。細胞が赤血球や培養細胞(例えば哺乳類由来細胞)である場合、特に好ましく当該細胞濃度を適用することができる。
【0087】
またさらに、本発明のチップのさらに好ましい一形態においては、マイクロチャンバーとマイクロチャンバーとの間隔が、次のような条件であることが好ましい。
すなわち、マイクロチャンバーとマイクロチャンバーとの間隔は、出来るだけ等間隔であることが好ましい。また、用いる細胞種や、マイクロチャンバーの内径及び深さ等にもよるが、当該間隔は35μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0088】
なお、マイクロチャンバーとマイクロチャンバーとの間隔とは、各マイクロチャンバーの開口部の中心と中心を結ぶ直線の長さ(中心間距離)から、当該直線とマイクロチャンバーの開口部とが重複する部分を除いた長さをいう。例えば、チャンバー開口部が正六角形であり、内径が100μm、中心間距離が200μmであると、そのマイクロチャンバー間の間隔は、200−(50/2×3
1/2)≒156.7μm程度になる。また例えば、チャンバー開口部が円形であり、内径が100μm、中心間距離が200μmであると、そのマイクロチャンバー間の間隔は、200−(50+50)=100μmになる。
【0089】
上述した、マイクロアレイチップの表面の水接触角条件(10°以下)、及びマイクロチャンバーの(内径:深さ)の比の条件(1:0.35〜1)、と当該マイクロチャンバーとマイクロチャンバーとの間隔の条件を組み合わせることにより、洗浄を行う必要性をより小さくすることができる。
【0090】
すなわち、本発明は、複数のマイクロチャンバーを備えており、該マイクロチャンバー1つあたりに複数の細胞を単層に格納可能であり、表面の水接触角が10°以下であり、該マイクロチャンバーの(内径:深さ)の比が(1:0.35〜1)であり、マイクロチャンバーとマイクロチャンバーとの間隔が等間隔(好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下)である、マイクロアレイチップをも包含する。
【0091】
より好ましくは、さらに上記特定の間隙率及び/又は好適なサンプル中の細胞濃度をも組み合わせることにより、洗浄を行う必要性がより小さくなり、特に好ましくは洗浄を行わなくともよくなる(すなわち、各マイクロチャンバー内にほぼ均一に単層として細胞を格納することができる)ため、細胞を効率よく利用することができる。また、その他上述したマイクロアレイチップの条件をさらに組み合わせて好ましいマイクロアレイチップとすることもできる。
【0092】
なお、マイクロチャンバーの形状にもよるが、通常、マイクロチャンバーとマイクロチャンバーとの間隔が等間隔であって35μm以下である場合には、上記特定の間隙率も満たすと考えられる。
【0093】
検出標的である特定の細胞の有無を検出するにあたっては、当該特定の細胞を検出できる限り、その方法は限定されない。
【0094】
例えば、検出標的である特定の細胞が形態変化を起こす細胞である場合は、顕微鏡観察により細胞の形態を観察することにより、検出することができる。また、当該特定の細胞に特異的に結合する物質が存在する場合、当該物質を用いて結合の有無を検出することで検出することができる。このような物質としては、例えば抗体やアプタマー等を挙げることができるが、これらに限定されない。またあるいは、当該特定の細胞に特異的に反応する物質が存在する場合、当該物質を用いて反応の有無を検出することで検出することもできる。
【0095】
このような結合や反応の有無を検出する方法も特に限定されないが、蛍光を用いるのが好適である。例えば、特定の細胞に特異的に結合する物質に蛍光標識を施してから用いれば、試料中の特定の細胞のみを標識することができる。よって、蛍光の有無により該特定の細胞の有無を容易に検出できる。
【0096】
特に、マイクロアレイチップに試料を接触させる前に、該試料中の特定の細胞のみが標識されるよう蛍光標識を施し、細胞がマイクロチャンバー内に保持された後に当該蛍光標識を検出して特定の細胞の有無を検出することができる。また、細胞がマイクロチャンバー内に保持された後、特定の細胞のみを蛍光標識してもよい。
【0097】
例えば、血液細胞中から病原性微生物が感染した血液細胞を検出する場合、マイクロアレイチップに血液細胞を接触させる前に、感染した血液細胞中の病原性微生物の核を蛍光染色し、蛍光顕微鏡やアレイスキャナー等の装置を用いて、該蛍光に基づき感染した血液細胞を検出できる。あるいは、マイクロアレイチップに形成されたマイクロチャンバーに血液細胞を格納した後に、血液細胞中の病原性微生物の核を蛍光染色し、同様に感染した血液細胞を検出してもよい。例えばベッドサイド等において感染した血液細胞を検出しようとする場合には、マイクロアレイチップに血液細胞を接触、展開させる前に感染した血液細胞中の病原性微生物の核等を蛍光染色させたほうが、接触、展開後の処理が簡便になるため、一層簡単に感染した血液細胞を検出することができる。また、例えば、血液細胞中の病原性微生物の核に限定されず、例えば蛍光標識された抗体を用いることによって特定タンパク質(特定アミノ酸配列)を標的としたり、蛍光標識されたプローブを用いることによって特定の遺伝子配列を標的としてもよい。
【0098】
また、例えば、培養細胞中特定のマーカーを発現した細胞を検出したい場合は、当該マーカーに特異的であって蛍光標識された抗体を予め培養細胞に作用させておき、マイクロチャンバー内に保持された後、蛍光顕微鏡やアレイスキャナー等の装置を用いて該蛍光に基づき当該特定の細胞を検出できる。あるいは、マイクロアレイチップに形成されたマイクロチャンバーに培養細胞を格納した後に、培養細胞中の特定のマーカーを発現した細胞を蛍光標識された抗体を用いて標識し、該蛍光に基づき当該細胞を検出してもよい。
【0099】
具体的に一例を説明すると、まず、感染赤血球細胞を含む赤血球細胞懸濁液において、原虫等の感染微生物の核が染まるように蛍光染色して感染赤血球細胞を標識し、場合によっては赤血球細胞も蛍光物質等で標識を行う。この標識された感染赤血球細胞を含む赤血球細胞懸濁液をマイクロアレイチップ上に展開し、必要に応じて過剰な血液細胞を除去・洗浄した後、蛍光顕微鏡やマイクロアレイスキャナー等によって、蛍光検出を行う。これにより、蛍光強度や標識された細胞の数等を調べることによって、感染症の有無はもちろん、程度及び種類等についても解析することができる。
【0100】
このような本発明の検出方法では、例えば
図3のように、マイクロアレイチップ上に縦50個、横200個になるようにマイクロチャンバーを配置させ、各マイクロチャンバーに100個ずつ血液細胞を格納させることもできる。そして、1つのマイクロチャンバーあたり1つの感染した血液細胞が検出された場合には、その感染率は1%と判断することができる。
【0101】
また、本発明の検出方法では、例えばマイクロアレイチップに合計100万個の血液細胞を保持させ、そのうち1つの血液細胞が感染した場合であっても、この感染した血液細胞を検出することができる。この場合、本発明の検出方法によれば感染した血液細胞が試料中に0.0001%しか存在していなくとも、検出することが可能であるといえる。
【0102】
本発明の検出用キットは、複数の細胞を含む試料から特定の細胞を検出するためのキットであって、上記のマイクロアレイチップを含有することを特徴とする。
本発明の検出用キットに含有されるマイクロアレイチップ以外のものとしては限定されないが、以下のものが例示される。
【0103】
本発明の検出用キットにはさらに、マイクロアレイチップに細胞を接触させる際に使用され得る緩衝液、培養液等が含有されていてもよい。
【0104】
本発明の検出用キットにはさらに、マイクロアレイチップに細胞を展開させる際に使用され得る緩衝液、培養液、界面活性剤等が含有されていてもよい。
【0105】
本発明の検出用キットにはさらに、マイクロアレイチップから過剰な細胞を除去(洗浄)する際に使用され得る緩衝液、培養液、界面活性剤、酵素等の洗浄液等が含有されていてもよい。
【0106】
本発明の検出用キットにはさらに、マイクロアレイチップに細胞を接触、展開、さらにマイクロアレイチップから細胞を除去等させる際に使用され得るピペットマン等が含有されていてもよい。
【0107】
本発明の検出用キットにはさらに、マイクロチャンバー以外の部分に吸着した余分な細胞を除去、洗浄する際に使用され得るセルスクレイパー等の器具が含有されていてもよい。
【0108】
本発明の検出用キットにはさらに、検出標的である特定の細胞を検出するための装置が含有されていてもよい。装置としては、蛍光顕微鏡、マイクロアレイスキャナー等が例示される。
【0109】
また、例えば検出標的である特定の細胞が最終的に蛍光染色されることにより検出される場合、本発明の検出用キットには、該特定の細胞を染色するための蛍光染色剤(例えば蛍光色素、蛍光標識済み抗体等)が含有されていてもよい。
【0110】
本発明の検出用キットにはさらに、該検出用キットの使用マニュアルが含有されていてもよい。
【0111】
このような本発明の検出用キットを使用することにより、検出標的である特定の細胞が試料中に存在する割合が低くても(例えば0.0001%しか存在していなくとも)、迅速かつ簡便に当該特定の細胞を検出することが可能である。
【0112】
また、本発明のマイクロアレイチップは、下述するように薬剤候補物質のスクリーニングにも好ましく用いることができる。各マイクロチャンバーにほぼ同数の細胞が格納されるため各マイクロチャンバー内の細胞の状態が均一となり、異なる薬剤候補物質を各マイクロチャンバーへと添加した際、それぞれの薬剤候補物質がどのような影響を細胞へ与えるのかを比較評価しやすいからである。
【0113】
本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法により、種々の薬剤候補物質が細胞に与える影響を簡便かつ迅速に測定し、所望の活性を示す物質を効率よく選択することができる。
【0114】
本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法には、複数のマイクロチャンバーを備え、該マイクロチャンバー内には細胞が保持されているマイクロアレイチップを用いる。
【0115】
本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法では、まず、前記細胞が保持されたマイクロチャンバーに薬剤候補物質を添加する。マイクロアレイチップが備える全てのマイクロチャンバーに同一の薬剤候補物質を添加してもよいし、マイクロチャンバーによって添加する薬剤候補物質を変えてもよい。また、いくらかのマイクロチャンバーには薬剤候補物質を加えず、これらのマイクロチャンバーに保持された細胞をコントロールとして用いるのが好ましい。
【0116】
薬剤候補物質を添加した後、該薬剤候補物質がマイクロチャンバー内に保持される細胞に与える影響を測定する。当該影響の測定の方法は、用いる薬剤候補物質、用いる細胞、及び所望の活性に応じて適宜設定すればよい。
【0117】
例えば、抗ガン剤として作用する物質をスクリーニングしたい場合は、マイクロチャンバー内に癌細胞を保持し、薬剤候補物質を添加して、当該癌細胞がどの程度の割合及び時間で死滅するかを測定すればよい。
【0118】
そして、当該測定結果に基づいて、実験に供した薬剤候補物質の中から所望の活性を示す物質を選択すればよい。例えば、上記の抗ガン剤として作用する物質をスクリーニングする例であれば、癌細胞が高効率で死滅する作用を示した物質を選択すればよい。
【0119】
このようにすることで、多数の薬剤候補物質を簡便かつ迅速にスクリーニングすることができる。
【0120】
また、本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法に用いられるマイクロアレイチップは、上述の本発明のマイクロアレイチップであることが好ましい。本発明のマイクロアレイチップであれば、細胞をより均一かつ効率よく、単層として、マイクロチャンバーに格納させることができる。
【0121】
また、本発明のマイクロアレイチップによれば、細胞をマイクロチャンバー内で少なくとも数日以上培養することができる。このため、本発明のマイクロアレイチップを用いて本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法を実施すれば、薬剤候補物質を添加した後細胞を数日以上培養して維持した後、当該物質が細胞に与える影響を測定することができる。
【0122】
またさらに、本発明のマイクロアレイチップでは、各マイクロチャンバーにほぼ同数の細胞が保持されるため、各マイクロチャンバー内の細胞の状態を均一とすることができる。よって、本発明のマイクロアレイチップを用いて本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法を実施すれば、異なる薬剤候補物質を各マイクロチャンバーへと添加した際、それぞれの薬剤候補物質がどのような影響を細胞へ与えるのかを比較評価しやすい。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を挙げて本発明について説明するが、本発明は該実施例に限定されない。
【0124】
実施例1
<マイクロアレイチップ>
次のマイクロアレイチップを使用した。
マイクロアレイチップの基板:ポリスチレン
マイクロアレイチップの表面処理:酸素プラズマ処理
マイクロチャンバーの形成:LIGAプロセス
マイクロチャンバーの形状:正六角柱形
マイクロチャンバーの寸法:内径100μm、深さ50μm
マイクロチャンバー同士の距離:チャンバーの開口部(正六角形)の中心間距離200μm(等間隔で配置されている)
マイクロアレイチップの表面の水接触角:10°
該マイクロアレイチップを
図5に示す。
【0125】
当該マイクロアレイチップは次のようにして製造した。
LIGAプロセスによって作製されたスターライト工業株式会社製のマイクロアレイチップを使用した。具体的には、該マイクロアレイチップは、X線リソグラフィー法によって、PMMA基板にパターニングし、エッチングによってPMMAの鋳型を作り、そこで電鋳(メッキ)を行い、作製されたニッケルの金型にポリスチレンを流し込んで成型されたものである。
【0126】
該マイクロアレイチップの表面を、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置(サムコ株式会社製)によって200Wの出力、20秒程度の処理時間で酸素プラズマ処理を行うことにより、チップ基板表面を親水化した。
【0127】
このように親水化したマイクロアレイチップ表面の水接触角は次のようにθ/2法により測定した。具体的には、得られたマイクロアレイチップの表面の異なる複数の地点(5点以上)に蒸留水1〜2μlを滴下して、接触角計(協和界面科学株式会社製)を用いて、室温にて水接触角を測定した。得られた値の平均値を求めることにより、水接触角を決定した。
【0128】
また、マイクロアレイチップ上に細胞懸濁液が展開しやすいように、マイクロチャンバー内に空気が入らないようにするため、親水化したマイクロアレイチップに対して事前に超音波処理を行った。超音波処理は、一般的に用いられる超音波洗浄装置を用いて、培地(RPMI1640)を入れたビーカーに表面処理を行ったマイクロアレイチップを浸して、約5分間処理を行った。
【0129】
<赤血球の検出手順>
次のようにして赤血球を検出した。
まず、ヒトから採血、遠心分離(4℃、1500g、30min)することにより得た赤血球を培地(RPMI1640)で懸濁することにより、ヒト由来の赤血球細胞懸濁液(懸濁液中の赤血球濃度1×10
8cells/ml)を得た。得られた赤血球細胞懸濁液200μlを、マイクロピペットを用いてマイクロアレイチップ上に添加することにより、マイクロアレイチップに赤血球を接触、展開させ、さらにマイクロピペットにより培養液(RPMI1640)1mlで洗浄を行った後、顕微鏡下で赤血球が格納されているマイクロチャンバーを測定した。結果を
図6に示す。
図6から、マイクロチャンバーの底に細胞(赤血球)を均一に一層(単層)として保持させ得ることが確認できた。
【0130】
実施例2
<水接触角の検討>
水接触角と細胞の展開効率について、以下のようにして比較した。ただし、当該検討で用いたマイクロアレイチップは、前記マイクロアレイチップにおいて、以下のように変更を加えて製造したものを使用した。
マイクロチャンバーの形状:円筒形
マイクロチャンバーの寸法:内径100μm、深さ100μm
【0131】
また、酸素プラズマ処理条件を変更することより、水接触角の異なる3種のマイクロアレイチップ(水接触角80°、25°、10°)を作製した。具体的には、以下の条件下で酸素プラズマ処理を実施した。
水接触角80°のマイクロアレイチップ:RIE装置(サムコ株式会社製)を用いて、出力200W、3秒の処理時間で表面処理を行った。
水接触角25°のマイクロアレイチップ:RIE装置を用いて、出力200W、5秒の処理時間で表面処理を行った。
水接触角10°のマイクロアレイチップ:RIE装置を用いて、出力200W、20秒の処理時間で表面処理を行った。
【0132】
上記と同様にして赤血球を用いて細胞の展開効率を検討した。結果を
図7に示す。ここで、細胞の展開効率とは、マイクロアレイチップに備えられた全マイクロチャンバー数に対する、細胞が格納されたマイクロチャンバー数の割合を意味する。
【0133】
前述のようにして得られたマイクロアレイチップにおいては、水接触角が80°の場合は、マイクロチャンバーに殆ど細胞が入らなかった。これに対して、水接触角を25°にした場合には、40%程度のマイクロチャンバーに細胞を格納することができた。また、水接触角を10°にした場合には、90%以上のマイクロチャンバーに細胞を格納することができた。
【0134】
なお、水接触角を5°とした場合にも、良好(90%以上)にマイクロチャンバーに細胞を格納することができた。
【0135】
実施例3
<各マイクロチャンバーによる赤血球細胞の保持能力の検討>
マイクロアレイチップが備えるマイクロチャンバーの内径及び深さを変えたとき、マイクロチャンバー内に格納される細胞に違いが見られるかを検討した。
<マイクロアレイチップの製造>
下記の内径及び深さの円筒形マイクロチャンバーを備えるマイクロアレイチップを3種(マイクロアレイチップA〜C)製造した。
【0136】
マイクロアレイチップA〜Cは、内径及び深さ、各マイクロチャンバー間の距離、並びに格納細胞数以外の条件は、各マイクロチャンバー間の距離を除いて全て実施例1で製造したマイクロアレイチップと同じであり、実施例1に記載の方法と同様にして製造した。なお、各マイクロチャンバー間の距離は、以下の通りである。
【0137】
上記と同様にして、赤血球細胞懸濁液200μlをマイクロアレイチップ上に添加することにより、マイクロアレイチップに赤血球を接触、展開させ、洗浄して、顕微鏡下で赤血球が格納されているマイクロチャンバーを検出した。
【0138】
結果を
図8に示す。
図8に示されるように、マイクロアレイチップA及びCでは、顕微鏡下、各マイクロチャンバーに重なり無く格納されることが検出できた。また、顕微鏡下、細胞数を数え、各マイクロチャンバーにほぼ同数の細胞が格納されていることが検出できた。よって、各マイクロチャンバーの底に均一に、赤血球が単層に保持されていることがわかった。一方、マイクロチップBでは、マイクロチャンバーによっては、底面のうち赤血球が接着していない部分が多く見られた。これは、マイクロアレイチップを洗浄した際に、マイクロチャンバーの底に接着していた赤血球までも洗浄により洗い流されてしまったためと考えられた。このことから、内径が500μm程度の大きさのマイクロチャンバーでは、深さが150μm以下の場合、細胞を均一に単層にチャンバー内に保持するのが困難であると考えられた。また、マイクロアレイチップA及びCでは各マイクロチャンバーの底に均一に、赤血球が単層に保持されていることから、マイクロチャンバーの(内径:深さ)の比は(1:0.35〜1)程度が好ましいと考えられた。
【0139】
実施例4
上記実施例1で用いたマイクロアレイチップを用いて、白血球を検出した。
【0140】
具体的には、次のようにして行った。培養シャーレからトリプシンなどを用いて回収したヒト培養系白血球(CCRF-CEM)をPBSまたは培地で1.0x10
7celllls/ml以上に調整し、マイクロアレイチップ上にピペット等を用いて展開した。15分程度静置した後、 PBSまたは培地を用いて、ピペットなどでチップ上を洗浄し、顕微鏡等でマイクロチャンバーを観察した。結果を
図9に示す。
図9から、マイクロチャンバーの底に細胞(白血球)を均一に一層(単層)として保持させ得ることが確認できた。
【0141】
なお、当該チップには白血球も適用可能であることから、全血中の白血球画分に含まれるガン細胞の検出も可能であると考えられた。また、このことから、特に血中循環癌細胞(CTC)の検出も可能であると考えられた。
【0142】
実施例5
上記実施例1で製造したマイクロアレイチップと同様の製造方法にて、チャンバーの開口部(正六角形)の中心間距離を200μmとするかわりに、マイクロチャンバー間の間隔を30μm又は40μm(いずれも等間隔)としたマイクロアレイチップを製造した。なお、これらのマイクロアレイチップの他の構成は、実施例1で製造したマイクロアレイチップと同じとした。なお、これらのチップの間隙率を算出したところ、マイクロチャンバー間の間隔を30μmとしたマイクロアレイチップは約40%、マイクロチャンバー間の間隔を40μmとしたマイクロアレイチップは約50%であった。
【0143】
そして、これらのマイクロアレイチップを用い、測定に用いた赤血球細胞懸濁液中の赤血球濃度は5×10
7cells/mlとした点、及び洗浄を行わなかった点、以外は、実施例1で行った赤血球検出の手順と同様にして、赤血球を検出した。また、これらのマイクロアレイチップを用い、洗浄を行わなかった点以外は、実施例4で行った白血球検出の手順と同様にして、白血球を検出した。赤血球検出結果を
図10に、白血球検出結果を
図11に、それぞれ示す。
【0144】
図10及び
図11から、洗浄を行わない場合には、マイクロチャンバー間の間隔が30μmのマイクロアレイチップの方が、当該間隔が40μmのマイクロアレイチップに比べて、より均一に単層として細胞をマイクロチャンバー内に格納することができることがわかった。また、洗浄を行わない場合には、マイクロチャンバー間の間隔が30μm程度以下である方が、より均一に単層として細胞をマイクロチャンバー内に格納することができると考えられた。