(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接着フィルム中の(A)ビスマレイミド樹脂の含有量が1〜50質量%であり、前記(B)ラジカル開始剤の含有量が0.1〜5質量%であり、前記(C)メタクリル基または、/及び、アクリル基を有するシランカップリング剤の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1記載の接着フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
((A)ビスマレイミド樹脂)
本明細書において、「ビスマレイミド」または「BMI」とは、2つのマレイミド部分が連結されているポリイミド化合物を意味する。即ち、下記一般式(1)に示す一般構造を有するポリイミド化合物である。
一般式(1)
【0014】
Qは、置換または非置換の、脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、シロキサン部位または、それらの組合せである。
【0015】
さらに、Qは、炭素数5〜8の脂環式炭化水素が、少なくとも4つの炭素数4〜12のアルキル基で置換された構造を有することが好ましい。このような構造は、長いアームのアルキル長鎖を有するため、応力緩和効果に優れる。また脂環族および脂肪族より形成されているため、耐湿性に優れる。
【0016】
中でも、たとえば下記一般式(2)で示すような、シクロヘキサンベースのコアとコアに取り付けられた4つの長いアームを含む構造(以下明細書中「C
36」とする)が好ましい。
【0019】
本発明にかかるビスマレイミド樹脂としては、下記一般式(3)のようなものが挙げられる。
【0021】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0022】
その他の構造としては、例えばUS2010/0113643、US 2013/0299747に記載のマレイミド樹脂で本願規定の構造を有する樹脂が挙げられる。ただし、上記に限定されるものではない。
(A)ビスマレイミド樹脂の含有量としては、接着フィルム中の1〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
((B)ラジカル重合開始剤)
ラジカル開始剤としては、熱によりラジカル重合を開始させることが可能な化合物であればよく、特に制限されず、従来用いられているものを適宜用いることができる。例えば、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2,6−ルチジン、トリエチルアミン、m−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ジクミルパーオキサイドや2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン等の過酸化物、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサンなどが挙げられる。
【0024】
本発明を実施する際に使用するために企図される好ましいラジカル開始剤は、1時間半減期温度が140℃以上、より好ましくは170℃以上であり、さらに好ましくは200℃以上である。また、ラジカル開始剤の1時間半減期温度は250℃以下が好ましい。
【0025】
(B)ラジカル重合開始剤の含有量としては、0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。ラジカル開始剤の含有量が0.1質量%以上であれば重合反応が十分に進行し、5質量%以下であれば未反応の残留成分によるピックアップ成功率等の特性低下を十分抑制することができる。
【0026】
((C)カップリング剤)
本発明において、カップリング剤は接着フィルムと被着体との接合を容易にする。原理的には、熱硬化性樹脂として配合する(A)ビスマレイミド樹脂、および(B)ラジカル開始剤に対して、(C)カップリング剤が化学的に反応し、接着フィルムのシリコンウエハに対する低温での粘着力性が著しく損なわれない範囲で緩やかに架橋することによって、ダイシングテープとの剥離強度(ピール強度)が低下することで、接着フィルム付きシリコンチップが容易にピックアップできるようになる。
尚、その効果は、メタクリル基または、/及び、アクリル基(以下、「(メタ)アクリル基」とする)を有するカップリング剤によってのみ発現するものであるが、接着フィルムのシリコンウエハに対する低温での粘着力性が著しく損なわれない範囲で緩やかに架橋することが望ましいことから、(メタ)アクリル基を有するカップリング剤が好ましい。
【0027】
具体的には、本発明のその他の成分と相溶するものが使用できる。またラジカル硬化反応に関与するものを使用してもよい。例えば、メルカプトシラン系、アクリル系、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びビニルトリメトキシシランが挙げられる。シリケートエステル、金属アクリレート塩(たとえば、アルミニウム(メタ)アクリレート)、チタネート(たとえば、チタニウム(メタ)アクリロキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキシド)、または共重合可能な基とキレーティングリガンドを含む化合物(たとえば、ホスフィン、メルカプタン、アセトアセテートおよびその他同種のもの)があげられる。
【0028】
いくつかの実施態様では、カップリング剤は共重合可能な官能基(たとえば、ビニル基、アクリレート基、メタアクリレート基および同種のもの)と、シリケートエステル官能基の両者を有する。カップリング剤のシリケートエステル部分は被着体や後述のフィラーが金属であるとき、その表面に存在する金属水酸化物と縮合することができる。一方、共重合可能な官能基は本発明の接着フィルムの他の反応可能な成分と共重合することができる。
【0029】
(メタ)アクリル基を有するカップリング剤は、0.1質量%〜5質量%の範囲で添加することができ、0.1〜1質量%添加することがより好ましい。(メタ)アクリル基を有するカップリング剤の含有量が0.1質量%以上であれば架橋反応が十分に進行し、5質量%以下であれば未反応の残留成分によるピックアップ成功率等の特性変化を十分抑制することができる。
【0030】
(高分子成分)
本発明において、フィルム状に形成しやすくするために、高分子成分を包含してもよい。
また、高分子成分は応力緩和性にさらに寄与することもできる。高分子成分は、取り扱いが容易であり、硬化性樹脂との適合性を有するものであればよい。好適な高分子成分の例としては、疎水性でありトルエンに可溶である熱可塑性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂との適合性を有する場合、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂の両方は同じ溶媒に可溶である場合が考えられ、このような溶媒としては芳香族溶媒が例えば挙げられる。有用な溶媒の例としてはトルエン及びキシレンが挙げられる。
【0031】
疎水性であってトルエンに可溶である熱可塑性樹脂としては例えば、スチレンとブタジエンブロックコポリマー、スチレンイソプレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンイソプレンの混合物のブロックコポリマーである。本発明に有用なスチレンとブタジエンのブロックコポリマーはジブロックコポリマーであってもよく、互いに共有結合したスチレンポリマーのセグメントとブタジエンポリマーのセグメントを有する。本発明に有用なスチレンとブタジエンのブロックコポリマーはトリブロックコポリマーであってもよく、スチレンポリマーの2つのセグメントとブタジエンポリマーの1つのセグメントを有し、スチレンポリマーの各セグメントはブタジエンポリマーのセグメントと共有結合している。
【0032】
本発明に有用である追加のスチレンとブタジエンのブロックコポリマーは、ブタジエンセグメントが水素添加されている、スチレンとブタジエンのブロックコポリマーであってもよい。また、スチレンポリマーのセグメントと、ブタジエンポリマーのセグメントと、メタクリレートエステルポリマーのセグメントとを有するトリブロックコポリマーでもよい。スチレンブロックコポリマー以外では、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミドなどのポリイミド前駆体、ポリTHF、カルボキシ末端ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリプロピレングリコールも好ましい。さらに、フェノキシ、アクリルゴム、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル/ポリビニルエステル、ポリオレフィン、ポリシアノアクリレートなどの高分子成分で、硬化性樹脂との適合性を有するものであれば適宜使用することができる。また、反応性の2重結合を備えるポリマーセグメントが含まれる熱可塑性樹脂は、ラジカルで活性化された硬化プロセスの間に硬化性樹脂と反応することができる。
【0033】
高分子成分の質量平均分子量が10,000以上であるとフィルム形成の容易性に優れる。また質量平均分子量が1,000,000以下であると、耐湿性、またフィルムを被着体に貼合するときの流動性に優れ、200,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(標準ポリスチレンによる換算)。特定の実施形態では、高分子成分の配合比率は、フィルム中の樹脂成分の全質量に基づいて5質量%以上であるとフィルム形成の容易性に優れる。また50質量%以下であると、耐湿性、またフィルムを被着体に貼合するときの流動性に優れ、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0034】
((A)以外の任意の硬化性成分)
本発明において、ビスマレイミド樹脂以外の硬化性成分を含有してもよい。硬化性成分としては、特に限定されない。例えば、分子内にアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物、酸変性(メタ)アクリレート、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、またはウレタンオリゴマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。
【0035】
1つの実施態様では、イソシアヌレート環を有する化合物を用いることができる。別の実施態様では、テトラヒドロフラン構造を有する化合物を用いることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。特定の実施形態では、硬化性樹脂以外の硬化性成分の配合比率は、フィルム中の樹脂成分の全質量に基づいて2質量%以上であるとフィルムを被着体に貼合するときの流動性や硬化性を向上させられる点で優れる。またフィルムの応力緩和性の観点から50質量%以下が好ましい。
【0036】
(フィラー)
本発明においてフィラーを含有してもよい。フィラーを入れることで、フィラーに応じた機能を接着フィルムに付与することができる。一方、フィラーを入れない場合はフィルムの応力緩和性と流動性が高い点で優れる。フィラーは有機フィラー、無機フィラーまたは金属フィラーがある。有機フィラーはフィルムに靭性を付与できる点で好ましく、例えば、アクリル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ナイロン、シリコーン等のフィラーが挙げられる。無機フィラーまたは金属フィラーは、取扱い性向上、熱伝導性向上、導電性付与、溶融粘度の調整及びチキソトロピック性付与などを向上させることができる。金属フィラーとしては、特に制限はなく、例えば金、銀、銅、アルミニウム、鉄、インジウム、錫等及びそれらの合金などが使用できる。無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられ、フィラーの形状についても特に制限はない。これらのフィラーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
溶融粘度の調整や耐熱性の付与の目的から、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウムなどが好ましく、汎用性からシリカがより好ましい。接着フィルムを薄くでき、また高い割合でフィラーを含有することができるという点で、シリカは球状シリカであることが好ましい。
【0038】
(フラックス)
フィラーが導電性を有する場合には、接着フィルムがフラックスを含有していることが好ましい。フラックスは導電性のフィラーの表面酸化膜を除去するために役立つ。フラックスとしては、硬化性樹脂やその他の硬化性樹脂の硬化反応を阻害しない化合物であれば特に制限なく使用することができる。たとえば、多価アルコール、カルボン酸、無機酸、アルカノールアミン類、フェノール類、ロジン、塩化物化合物及びその塩、ハロゲン化化合物およびその塩などが挙げられる。フラックスは1種のみを用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
特定の実施形態では、フラックスは、カルボン酸と第三級アミンの塩または混合物を含んで構成され、潜在性を有することができる。他の実施形態では、フラックスが接着フィルムの熱処理の終了時に不活性にされていることでき、その場合フラックスの官能基と硬化性樹脂が反応して組み込まれることで、不活性化される。
【0039】
(その他任意成分)
別の実施態様において、例えば可塑剤、油、安定化剤、酸化防止剤、腐食防止剤、インヒビター、キレート剤、顔料、染料、高分子添加物、消泡剤、防腐剤、増粘剤、レオロジー調整剤、保湿剤、粘着性付与剤、分散剤および水などの1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0040】
(接着フィルムの製造方法)
本発明の接着フィルムは、(A)ビスマレイミド樹脂、(B)ラジカル開始剤、(C)メタクリル基または、/及び、アクリル基を有するカップリング剤を、溶媒(例えば、キシレン、シクロペンタノン等)に溶解・均一分散させることで得た接着剤組成物ワニスを、カバーフィルム上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させることで製造できる。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。カバーフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙などが使用可能である。
【0041】
接着フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜300μmであり、被着体同士の層間を接着する場合には5〜60μmが好ましく、応力緩和性が求められる場合には60〜200μmが好ましい。
【0042】
また、上記の接着フィルムは、ダイシングテープ上に積層する形で組合せることで、ダイシングテープ付き接着フィルムとして好適に用いることができる。ダイシングテープとは主にシリコンウエハ上に形成された集積回路やパッケージなどを、ダイシングブレードによりウエハを切削して切り出し、個片化する工程に用いられるテープのことである。
【0043】
接着フィルムがラジカル硬化性であるので、ウェハ貼り付け部分にあらかじめ放射線照射した放射線化型の粘着剤層、または感圧型の粘着剤層を有するダイシングテープと組合わせることができる。
【0044】
図1は、本発明の一実施形態に係るダイシングテープ付き接着フィルムの断面模式図である。
【0045】
図1には、ダイシングテープ11上に接着フィルム105が積層されたダイシングテープ付き接着フィルム10の構造が示されている。ダイシングテープ11は基材101上に粘着剤層103を積層して構成されており、接着フィルム105はその粘着剤層103上に設けられている。
図2に示すダイシングテープ付き接着フィルム12のように、ワーク貼り付け部分にのみ接着フィルム3’を形成した構成であってもよい。
【0046】
前記基材1は、ダイシングテープ付き接着フィルム10の強度母体となるものであり、紫外線透過性を有するもの、エキスパンドしたときに拡張性を有するものが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、前記樹脂の架橋体、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0047】
基材101の表面は、密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0048】
基材101は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、異種の層を積層したものを用いることもできる。
【0049】
基材101の厚さは、特に制限されないが、一般的には50〜200μm程度である。
【0050】
粘着剤層103の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性接着剤を用いることができる。
【0051】
粘着剤層103の形成に用いる粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤を用いることもできる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。
【0052】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0053】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分としてはウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて適宜決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100質量部に対して、例えば5〜500質量部、好ましくは40〜150質量部程度である。
【0054】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動したり、接着フィルム3に移行することがないため好ましい。
【0055】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0056】
粘着剤層103の厚さは、特に限定されないが、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0057】
図1は、このようなダイシングテープ付き接着フィルムを用いた半導体装置の構成、製造方法を簡潔に例示するものである。
【0058】
具体的には、ダイシングフィルム付き接着フィルム10における接着フィルム105の半導体ウェハ貼り付け部分上に、半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(貼り付け工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。
【0059】
<半導体パッケージの製造方法>
図面を参照しながら本発明における半導体パッケージ製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図3〜
図9は、本発明の半導体パッケージ製造方法の各工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【0060】
本発明の半導体パッケージ製造方法においては、先ず、第1の工程として、
図2に示すように、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウエハ1の裏面に、前記本発明の接着フィルムを熱圧着して接着剤層2を設け、次いで、ウエハ1とダイシングテープ3とを接着剤層2を介して設ける。この際、接着剤層2とダイシングテープ3が一体化となった製品を一度に熱圧着してもよい。ウエハ1としては、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウエハを適宜用いることができ、例えば、シリコンウエハ、SiCウエハ、GaSウエハが挙げられる。接着剤層2としては、前記本発明の接着フィルムを1層で単独で用いても2層以上を積層して用いてもよい。このような接着剤層2をウエハ1の裏面に設ける方法としては、前記接着フィルムをウエハ1の裏面に積層させることが可能な方法を適宜採用することができ、ウエハ1の裏面に前記接着フィルムを貼り合せた後、2層以上を積層する場合には所望の厚さとなるまで順次接着フィルムを積層させる方法や、接着フィルムを予め目的の厚さに積層した後にウエハ1の裏面に貼り合せる方法等を挙げることができる。また、このような接着剤層2をウエハ1の裏面に設ける際に用いる装置としては特に制限されず、例えば、ロールラミネーター、マニュアルラミネーターのような公知の装置を適宜用いることができる。
【0061】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第2の工程として、
図3に示すように、半導体チップ4と接着剤層2とを同時にダイシングすることにより半導体チップ4と接着剤層2とを備える接着剤層付き半導体チップ5を得る。ダイシングテープ3としては特に制限されず、適宜公知のダイシングテープを用いることができる。さらに、ダイシングに用いる装置も特に制限されず、適宜公知のダイシング装置を用いることができる。
なお、ウエハ1を細かく切ったものをチップ4と呼び分けることとする。
【0062】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第3の工程として、
図4に示すように、ダイシングテープ3から接着剤層2をピックアップし、接着剤層付き半導体チップ5と配線基板6とを接着剤層2を介して熱圧着せしめ、配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する。配線基板6としては、表面に半導体回路が形成された基板を適宜用いることができ、例えば、プリント回路基板(PCB)、各種リードフレーム、及び、基板表面に抵抗素子やコンデンサー等の電子部品が搭載された基板が挙げられる。
本発明においては、成分(A)および成分(B)に対して、成分(C)が化学的に反応し、接着剤層2のウエハ1に対する粘着性が著しく損なわれない範囲で緩やかに架橋することによって、接着剤層2とダイシングテープ3との間の剥離強度が低下することで、DAF残り(ピックアップ後、ウエハ1から剥離した接着層2がダイシングテープ3の上に残留する現象)が発生することなく、接着剤層付き半導体チップ4が容易にピックアップできるようになる。
【0063】
このような配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する方法としては特に制限されず、接着剤層2を利用して接着剤層付き半導体チップ5を配線基板6又は配線基板6の表面上に搭載された電子部品に接着させることが可能な従来の方法を適宜採用することができる。このような実装方法としては、上部からの加熱機能を有するフリップチップボンダーを用いた実装技術を用いる方法、下部からのみの加熱機能を有するダイボンダーを用いる方法、ラミネーターを用いる方法等の従来公知の加熱、加圧方法を挙げることができる。
このように、本発明のフィルム状接着剤からなる接着剤層2を介して接着剤層付き半導体チップ5を配線基板6上に実装することで、電子部品により生じる配線基板5上の凹凸に前記フィルム状接着剤を追従させることができるため、ウエハ1と配線基板6とを密着させて固定することが可能となる。
【0064】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第4の工程として、前記接着フィルムを熱硬化せしめる。前記熱硬化の温度としては、前記接着フィルムの熱硬化開始温度以上であれば特に制限がなく、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、100〜180℃であることが好ましく、より高温にて硬化した方が短時間で硬化可能であるという観点から、140〜180℃であることがより好ましい。温度が熱硬化開始温度未満であると、熱硬化が十分に進まず、接着剤層2の強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬化過程中にフィルム状接着剤中の添加剤等が揮発して発泡しやすくなる傾向にある。また、前記硬化処理の時間としては、例えば、10〜120分間であることが好ましい。
【0065】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、
図5に示すように、配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とをボンディングワイヤー7を介して接続することが好ましい。このような接続方法としては特に制限されず、従来公知の方法、例えば、ワイヤーボンディング方式、TAB(Tape Automated Bonding)方式等を適宜採用することができる。
【0066】
また、搭載された半導体チップ4表面に、別の半導体チップ4を熱圧着、熱硬化し、再度ワイヤーボンディング方式により配線基板と接続することにより、複数個積層することもできる。例えば、
図6に示すように半導体チップをずらして積層する方法、もしくは
図7に示すように2層目の接着剤層2を厚くすることで、ボンディングワイヤー7を埋め込みながら積層する方法等がある。
【0067】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、
図8に示すように、封止樹脂8により配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とを封止することが好ましく、このようにして半導体パッケージ9を得ることができる。封止樹脂8としては特に制限されず、半導体パッケージの製造に用いることができる適宜公知の封止樹脂を用いることができる。また、封止樹脂8による封止方法としても特に制限されず、適宜公知の方法を採用することが可能である。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例,比較例]
表2に示す各成分に対して、適量の溶媒を配合したワニスを50μm厚のPETフィルムからなるカバーテープに塗布し、乾燥して厚さ50μmのフィルム状接着剤組成物を形成した後、ダイシングテープと貼りあわせてダイシングテープ付き接着フィルムを調製した。
なお、各性能の評価方法は以下の通りである。
【0070】
(ダイシングテープと接着フィルムの間の剥離強度測定)
各サンプルにおけるダイシングテープと接着フィルムの間の剥離強度をJIS−Z0237に基づき測定した。標準状態(温度23℃、相対湿度50%)において、
図9に示すスライド板201に固定用両面テープ103を介して接着フィルム105を貼合し、ダイシングテープ11の先端部を上部チャック203で固定した後、剥離角度90°、剥離速度50mm/minで引き剥がし、ダイシングテープと接着フィルムの間との剥離強度を求めた。
【0071】
(ピックアップ成功率とウエハラミネート可能最低温度)
7.5×7.5mmにダイシングされた接着フィルム付きシリコンチップを、ダイボンディング装置(日立ハイテック社製、商品名DB−800)を用いて、突き上げピン数:5本、突き上げ高さ:300μm、突き上げ後保持時間:300msec にて100回ピックアップを行い、ピックアップ成功率を算出した。また、ウエハラミネート可能最低温度は、まず、マニュアルウエハマウンター(テクノビジョン社製、商品名FM−114)を用いて、予め所定温度に加熱されたミラーウエハ(8インチ×730μm厚)の表面に、20×100mmにカットした接着フィルムを、ローラー圧力0.3MPa、ローラー速度10mm/secでラミネートした。冷却後、室温にて接着フィルム表面のカバーフィルムを剥離し、気泡が入らないように注意しながら接着フィルムと同サイズの粘着テープ(寺岡製作所社製、商品名スプライジングテープNo.642)を貼合し、粘着テープを剥離させた際に、接着フィルムがミラーウエハの表面から剥離しなくなる温度をウエハラミネート可能最低温度として求めた。尚、温度はラミネート時のミラーウエハ表面の実測温度であり、これを10℃毎に変更して、接着フィルムがミラーウエハの表面から剥離しなくなる最低温度を求めた。それらの結果を表1の基準で判定した。
【0072】
【表1】
【0073】
また、使用した各成分および、ダイシングテープの詳細は以下の通りである。
(1)絶縁性粒子:
球状シリカ(デンカ社製 商品名FB−3SDX 平均粒径3μm)
(2)導電性粒子:
球状銅粉(Ormet社製 商品名F2020 平均粒径3μm)と球状半田粉(三井金属鉱業社製 商品名ST−3 平均粒径3μm)の混合物
(3)ビスマレイミド樹脂:
下記化4を満たす構造(n=1〜20)、ゲル状。
【0074】
【化9】
【0075】
(4)ラジカル開始剤
ジメチルジフェニルブタノン(日本油脂製 商品名ノフマーBC−90 10時間半減温度210℃)
(5)カップリング剤:
メタクリロキシシラン(信越シリコーン社製 商品名KBM−503 化学名3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
アクリロキシシラン(信越シリコーン社製 商品名KBM−5103 化学名3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
エポキシシラン(信越シリコーン社製 商品名KBM−403 化学名3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
アミノシラン(信越シリコーン社製 商品名KBM−573 化学名n−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)
【0076】
(6)ダイシングテープ:
以下の方法によって製造されたダイシングテープ。
<粘着フィルムの製造方法>
(粘着剤層組成物)
アクリル酸2−エチルヘキシル77質量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート23質量部を重合させ、重量平均分子量80万のアクリル共重合体に硬化剤としてポリイソシアネート3重量部を加えて混合し、粘着剤層組成物とした。
(ダイシングテープ)
作製した粘着剤層組成物を乾燥膜厚が10μmとなるように離型フィルムをなすPETフィルムに塗布し、120℃で3分間乾燥した。このPETフィルムに塗工した粘着剤層組成物を、支持基材である厚さ100μmのポリプロピレン−エラストマー(PP:HSBR=80:20のエラストマー)樹脂フィルム上に転写させることでDCテープを作製した。
なお、ポリプロピレン(PP)は、日本ポリケム株式会社製のノバテックFG4(商品名)を用い、水添スチレンブタジエン(HSBR)はJSR株式会社製のダイナロン1320P(商品名)を用いた。また、PETフィルムはシリコーン離型処理されたPETフィルム
(帝人:ビューレックスS−314(商品名)、厚み25μm)を用いた。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例1〜4において、高いピックアップ成功率を示した。特に、実施例2はアクリロシキシラン系カップリング剤の適量添加により化学的な反応が適度に進行したことで、シリコンウエハへの低温貼合性を著しく損なくことなく優れたピックアップ性を示した。
また、接着フィルムの機能発現のために充填剤含有率を大幅に高めた実施例4においても、アクリロシキシラン系カップリング剤の適量添加により、実施例2と同様の顕著な効果が確認された。