【実施例】
【0052】
以下に、実施例を提示することにより、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、油脂の各トリアシルグリセロール含量、融点、X線回折測定、及び各温度におけるチョコレート生地の粘度の測定は、以下の方法により実施した。
【0053】
(トリアシルグリセロール含量)
各トリアシルグリセロール含量を、ガスクロマトグラフィー法により測定した。また、トリアシルグリセロールの対称性を、銀イオンカラムクロマトグラフィー法により測定した。
(融点の測定)
油脂の融点を基準油脂分析法2.2.4.2−1996に従って測定した。
(X線回折測定)
油脂のX線回折測定は、X線回折装置UltimaIV(株式会社リガク社製)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96〜30.0°、および測定速度2°/分の条件で測定した。
(チョコレート生地の粘度)
チョコレート生地の粘度を、BH型粘度計(東機産業社製)を使用し、No.6のローターを4rpmで回転させ、3回転後の読み取り数値に装置係数(2500)を乗じて求めた。
【0054】
[SOS含有油脂Aの調製]
既知の方法に従って、ハイオレイックヒマワリ油40質量部と、ステアリン酸エチルエステル60質量部とを混合し、得られた混合物に、1,3位選択性リパーゼ製剤を添加した。このリパーゼ製剤含有混合物中で、エステル交換反応を行った。反応生成物から、ろ過処理によりリパーゼ製剤を除去した。ろ過処理後の反応生成物を用いて薄膜蒸留を実施することにより、反応物から脂肪酸エチルを除去した。蒸留後に得られた蒸留残渣から、乾式分別により高融点部を除去した。得られた低融点部から、さらにアセトン分別により2段目の低融点部を除去することにより、中融点部を得た。得られた中融点部から常法によりアセトンを除去した。次いで、この中融点部を脱色処理および脱臭処理することにより、SOS含有油脂Aを得た。得られた油脂のSOS含量は、67.3質量%であった。
[XU2+U3含有油脂Aの調製]
既知の方法に従って、パーム油65質量部と菜種油35質量部との混合油中で、1,3位選択性リパーゼ製剤を用いてエステル交換反応を行った。得られた反応生成物から、リパーゼ製剤を除去することによりエステル交換油を得た。得られたエステル交換油を脱色処理および脱臭処理することにより、XU2+U3含有油脂Aを得た。得られた油脂のXU2含量は41.0質量%、U3含量は20.7質量%であった。
【0055】
[3鎖長β型SOS結晶(シーディング剤)の調製−1]
以下の方法に従って、3鎖長β型SOS結晶を含む油脂を、シーディング剤A及びシーディング剤aとして調製した。得られたシーディング剤のX線回折測定結果、及び、3鎖長β型SOS結晶含量を表1にまとめた。
(シーディング剤A)
25質量部の SOS含有油脂Aと、75質量部のXU2+U3含有油脂Aとを混合した。得られた混合油を加温することにより、60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、この混合油に、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度16℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して15体積%であった。次いで、24時間、混合油の温度を30.5℃に維持することにより、ペースト状のシーディング剤Aを得た。
(シーディング剤a)
25質量部のSOS含有油脂Aと、75質量部のXU2+U3含有油脂Aとを混合した。得られた混合油を加温することにより、60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、この混合油に、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度16℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して15体積%であった。次いで、24時間、油脂混合物の温度を27℃に維持することにより、ペースト状のシーディング剤aを得た。
なお、25質量部のSOS含有油脂Aと、75質量部のXU2+U3含有油脂Aとを混合して得られる混合油の融点は、30.6℃であった。
【0056】
【表1】
【0057】
[チョコレート生地へのシーディング評価−1]
表2の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が35℃である融液状チョコレート生地A(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Aに、シーディング剤Aを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.168質量%)添加した。また、同様に調製された別の融液状チョコレート生地Aにシーディング剤aを油脂に対して10.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して1.68質量%)添加した。引き続き、これら生地Aを攪拌しながら、35℃にて保持した。シーディング剤を添加してから、60分後にチョコレート生地Aの一部を採取した。採取された生地Aでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、これら型に充填された生地Aを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化することにより、評価用試料を作製した(実施例1、比較例1)。また、シーディング剤を添加する代わりに、50℃に加温した融液状チョコレート生地Aを、通常のテンパリング機(小型テンパリング機(Pavioni社製、Minitemper)を使用して、30℃まで冷却し、次いで、1分間30℃に保持した後、32℃で3分間保持した。このようにして生地Aを冷却固化することにより、対照としての評価用試料を作製した(参考例1)。さらに、シーディング剤の添加もテンパリング操作も行わず、35℃の融液状チョコレート生地Aをそのまま冷却固化することにより、評価用試料を作製した(比較例2)。
【0058】
上記で作製した比較例1、2、実施例1、及び参考例1のチョコレートにつき、以下の評価基準に従って、品質評価を行った。また、比較例1、2、及び実施例1では、チョコレート生地の採取時に、35℃にて生地粘度の測定を行った。これら評価結果を表3に示す。
(型抜け評価)
10℃での冷却固化後15分後の離型率(型から抜くことができたチョコレートの割合)
◎ 非常に良好 (離型率90%以上)
○ 良好 (離型率70%以上90%未満)
△ 一部剥がれない部分有り(離型率0%を超え70%未満)
× 不可 (離型率0%)
(固化表面の状態評価)
10℃での冷却固化後15分後に型抜けしたチョコレートの外観
◎ 非常に良好 (ブルームの発生が無く、優れた光沢を持つ)
○ 良好 (ブルームの発生は無いが、一部光沢に乏しい)
△ 不良 (ブルームの発生は無いが、光沢に乏しい)
× 不可 (ブルームが発生)
(ブルーム耐性評価)
型抜けしたチョコレートを20℃で1週間保管した。引き続き、同チョコレートを32℃にて12時間保管し、次いで20℃にて12時間保管する操作を1サイクルとして、この操作を繰り返した。各サイクルが経過する毎に、保管したチョコレートにおけるブルームの発生の有無を目視により観察した。チョコレートにブルームが最初に認められるまでに経過したサイクル数を参照して、そのチョコレートのブルーム耐性を以下の基準に基づき評価した。
◎ 非常に良好 (6サイクル以上)
○ 良好 (4〜5サイクル)
△ 不良 (2〜3サイクル)
× 不可 (0〜1サイクル)
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
*;シーディング後の保持時間(単位:分)
−;評価不能
+;比較例2の生地粘度を1としたときの倍数
【0061】
表3の結果より、高温(35℃)でのシーディングにおいて、本発明の油脂であるシーディング剤Aは、従来のシーディング剤aの10倍程度のシーディング効果を発揮することが分る。
【0062】
[SOS含有油脂Bの調製]
既知の方法に従って、40質量部のハイオレイックヒマワリ油と、60質量部のステアリン酸エチルエステルとを混合し、得られた混合物に、1,3位選択性リパーゼ製剤を添加した。このリパーゼ製剤含有混合物中で、エステル交換反応を行った。反応生成物から、ろ過処理によりリパーゼ製剤を除去した。ろ過処理後の反応生成物を用いて薄膜蒸留を実施することにより、反応物から脂肪酸エチルを除去した。蒸留後に得られた蒸留残渣から、乾式分別により高融点部を除去した。得られた低融点部から、さらにアセトン分別により2段目の低融点部を除去することにより、中融点部を得た。得られた中融点部から常法によりアセトンを除去した。次いで、この中融点部を脱色処理および脱臭処理することにより、SOS含有油脂Bを得た。得られた油脂のSOS含量は、74.8質量%であった。
[XU2+U3含有油脂Bの調製]
パームオレイン(沃素価65、XU2含量56.3質量%、U3含量7.8質量%)を、XU2+U3含有油脂Bとして用いた。
[XU2+U3含有油脂Cの調製]
ハイオレイックヒマワリ油(XU2含量21.5質量%、U3含量77.5質量%)を、XU2+U3含有油脂Cとして用いた。
【0063】
[3鎖長β型SOS結晶(シーディング剤)の調製−2]
以下の方法に従って、3鎖長β型SOS結晶を含む油脂を、シーディング剤B及びシーディング剤bとして調製した。得られたシーディング剤のX線回折測定結果、及び、3鎖長β型SOS結晶含量を表4にまとめた。
(シーディング剤B)
50質量部のSOS含有油脂Bと、45質量部のXU2+U3含有油脂Bと、5質量部のXU2+U3含有油脂Cとを混合した。得られた混合油を加温することにより、60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度25℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して35体積%であった。次いで、24時間、混合油の温度を34℃に維持することにより、可塑性状のシーディング剤Bを得た。
(シーディング剤b)
50質量部のSOS含有油脂Bと、45質量部のXU2+U3含有油脂Bと、5質量部のXU2+U3含有油脂Cとを混合した。60℃で混合油に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、この混合油に、オンレーターにて窒素ガスを吹き込みながら、急冷結晶化(最終冷却温度25℃)を実施した。このときの窒素吹き込み量は、混合油に対して35体積%であった。次いで、24時間、油脂混合物の温度を30℃に維持することにより、可塑性状のシーディング剤bを得た。
なお、50質量部のSOS含有油脂Bと、45質量部のXU2+U3含有油脂Bと、5質量部のXU2+U3含有油脂Cとを混合して得られる混合油の融点は、31.5℃であった。
【0064】
【表4】
【0065】
[チョコレート生地へのシーディング評価−2]
表2の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が36℃である融液状チョコレート生地A(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Aに、シーディング剤Bを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.374質量%)添加した。また、同様に調製された別の融液状チョコレート生地Aにシーディング剤bを油脂に対して5.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して1.87質量%)添加した。引き続き、これら生地Aを攪拌しながら、36℃にて保持した。シーディング剤を添加してから60分後にチョコレート生地Aの一部を採取した。採取された生地Aでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、これら型に充填された生地Aを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化することにより、評価用試料を作製した(実施例2、比較例3)。また、シーディング剤の添加もテンパリング操作も行わず、36℃の融液状チョコレート生地Aをそのまま冷却固化することにより評価用試料を作製した(比較例4)。
【0066】
上記で作製した比較例3、4、及び実施例2のチョコレートにつき、[チョコレート生地へのシーディング評価−1]と同様の評価基準に従って、品質評価を行った。また、チョコレート生地の採取時に、36℃にて生地粘度の測定を行った。これら評価結果を表5に示す。なお、表5中、「*」はシーディング後の保持時間(単位:分)を示し、「−」は評価不能であったことを示し、さらに「+」は比較例4の生地粘度を1としたときの倍数を示す。
【0067】
【表5】
*;シーディング後の保持時間(単位:分)
−;評価不能
+;比較例4の生地粘度を1としたときの倍数
【0068】
表5の結果より、高温(36℃)でのシーディングにおいて、本発明の油脂であるシーディング剤Bは、従来のシーディング剤bの5倍程度のシーディング効果を発揮することが分る。
【0069】
[チョコレート生地へのシーディング評価−3]
表2の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が30℃である融液状チョコレート生地A(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Aにシーディング剤bを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.374質量%)添加した。引き続き、この生地Aを攪拌しながら、30℃にて保持した。シーディング剤の添加前、および、シーディング剤の添加後10分、20分、30分、40分、50分の各時点においてチョコレート生地Aの一部を試料として採取した。採取した試料の各時点における粘度を測定した(比較例5〜10)。結果を表6に示す。なお、表6中、「*」はシーディング後の保持時間(単位:分)を示し、「−」は評価不能であったことを示し、さらに「+」は比較例5の生地粘度を1としたときの倍数を示す。
【0070】
また、上記比較例5〜10のチョコレート生地の粘度変化(表6)を、上記[チョコレート生地へのシーディング評価−2]における実施例2のチョコレート生地の粘度変化(生地温度36℃、保持時間0分および60分)とともに、
図1に示した。
【0071】
図1によれば、従来のシーディング剤bを含む比較例5〜10のチョコレート生地をそのシーディング温度(30℃)にて保持しているあいだに、その生地粘度が著しく上昇していることが分かる。このことから、このチョコレート生地のシーディング処理後の取り扱いが困難となることが予想される。一方、本発明のシーディング剤Bを含む実施例2のチョコレート生地をそのシーディング温度(36℃)にて60分保持した後も、その生地粘度の著しい上昇は見られない。このことから、本発明のシーディング剤Bを含むチョコレート生地は、シーディング処理後も容易に取り扱えることが期待される。
【0072】
【表6】
【0073】
表6の結果より、通常のシーディング温度(30℃)では、シーディング効果に劣るシーディング剤bを使用したにもかかわらず、粘度が速やかに上昇することが分る。
【0074】
[BOB含有油脂の調製]
既知の方法に従って、40質量部のハイオレイックヒマワリ油と、60質量部のベヘン酸エチルエステルとを混合し、得られた混合物に、1,3位選択性リパーゼ製剤を添加した。このリパーゼ製剤含有混合物中で、エステル交換反応を行った。反応生成物から、ろ過処理によりリパーゼ製剤を除去した。ろ過処理後の反応生成物を用いて薄膜蒸留を実施することにより、反応物から脂肪酸エチルを除去した。蒸留後に得られた蒸留残渣から、乾式分別により高融点部を除去した。得られた低融点部から、さらにアセトン分別により2段目の低融点部を除去することにより、中融点部を得た。得られた中融点部から常法によりアセトンを除去した。次いで、この中融点部を脱色脱臭処理することにより、BOB含有油脂を得た。得られた油脂のBOB含量は、65.0質量%であった。
【0075】
[3鎖長β型BOB結晶(シーディング剤)の調製]
以下の方法に従って、3鎖長β型BOB結晶を含む油脂を、シーディング剤Cとして調製した。得られたシーディング剤CのX線回折測定結果、及び、3鎖長β型BOB結晶含量を表7にまとめた。
(シーディング剤C)
BOB含有油脂を加温することにより、同油脂に含まれる油脂結晶を完全に融解させた。その後、BOB含有油脂を20℃まで冷却することにより油脂を結晶化させた。その後、BOB含有油脂の温度を30℃にて12時間、次いで、50℃にて12時間に保持する操作を1調温サイクルとして、この操作を14調温サイクル実施した。その後、結晶化させたBOB含有油脂を−20℃で粉砕した。その後、粉砕された結晶化油脂を、篩にかけることにより、平均粒径が100μmの粒子を含む粉末状のシーディング剤Cを得た。得られたシーディング剤Cの結晶型をX線回折により確認した。その結果、シーディング剤Cに含まれる結晶は、3鎖長(70〜75Åに対応する回折ピーク)であり、β型(4.5〜4.7Åに対応する、非常に強い回折ピーク)であることが確認できた。
【0076】
【表7】
【0077】
[チョコレート生地へのシーディング評価−3]
表8の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行うことにより、生地温度が38℃である融液状チョコレート生地B(生地の油脂含量35質量%)を調製した。該融液状チョコレート生地Bに、シーディング剤Bを油脂に対して1.0質量%(3鎖長β型SOS結晶として、融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.374質量%)添加した。引き続き、この生地Bを攪拌しながら、38℃にて保持した。シーディング剤を添加してから60分後にチョコレート生地Bの一部を採取した。採取された生地Bでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、この型に充填された生地Bを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化した(実施例3)。また、同様に、生地温度が38℃である融液状チョコレート生地Bにシーディング剤Cを対油1.0質量%(3鎖長β型BOB結晶として、融液状チョコレート生地に含まれる油脂に対して0.65質量%)添加した。引き続き、生地Bを攪拌しながら、38℃にて保持した。シーディング剤を添加してから60分後にチョコレート生地Bの一部を採取した。採取された生地Bでポリカーボネート製の型を充填した。次いで、この型に充填された生地Bを、冷蔵庫内で10℃にて冷却固化することにより、評価用試料を作製した(比較例5)。また、シーディング剤の添加もテンパリング操作も行わず、38℃の融液状チョコレート生地Bをそのまま冷却固化することにより、評価用試料を作製した(比較例6)。
【0078】
上記で作製した比較例5、6、及び実施例3のチョコレートにつき、[チョコレート生地へのシーディング評価−1]と同様の評価基準に従って、品質評価を行った。また、チョコレート生地の採取時に、38℃にて生地粘度の測定を行った。結果を表9に示す。なお、表9中、「*」はシーディング後の保持時間(単位:分)を示し、「−」は評価不能であったことを示し、「+」は比較例6の生地粘度を1としたときの倍数を示す。
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
*;シーディング後の保持時間(単位:分)
−;評価不能
+;比較例6の生地粘度を1としたときの倍数
【0081】
表9の結果より、高温(38℃)でのシーディングにおいて、比較例5で用いられた、シーディング剤Cとしての3鎖長β型BOB結晶は、同温度で60分保持後にシーディング効果を示さなかった。一方、実施例3で用いられた、本発明の油脂であるシーディング剤Bは安定したシーディング効果を発揮した。
【0082】
また、本発明に係る油脂は、以下の第1〜3の油脂であってもよい。
【0083】
上記第1の油脂は、油脂中のSOS含量が10〜80質量%であって、X線回折の測定により、3.95〜4.05Åの面間隔に対応する回折ピークA、3.80〜3.95Åの面間隔に対応する回折ピークB、3.70〜3.80Åの面間隔に対応する回折ピークC及び3.60〜3.70Åの面間隔に対応する回折ピークDを有し、上記回折ピークCの回折強度が上記回折ピークDの回折強度に対して0.35以下である、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂である。(ただし、SOSは1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセロールを表す)
【0084】
上記第2の油脂は、上記3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂が、XU2とU3とを合計で10〜70質量%含有する、上記第1の3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂である。(ただし、Xは炭素数が16以上の飽和脂肪酸、Uは炭素数18以上の不飽和脂肪酸、XU2はXが1つとUが2つ結合したトリアシルグリセロール、U3はUが3つ結合したトリアシルグリセロールを表す)
【0085】
上記第3の油脂は、上記3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂が、SOSを40質量%以上含有する油脂と、XU2とU3とを合計で40質量%以上含有する油脂とを含む、上記第1または第2の3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂である。
【0086】
また、本発明に係る油脂の製造方法は、以下の第1〜第4工程を含む、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂の製造方法であってもよい。
第1工程:SOSを10〜80質量%含有する油脂を調製する工程。
第2工程:第1工程による油脂の油脂結晶を完全に融解する工程。
第3工程:第2工程による油脂を、35℃以下に冷却して油脂結晶を析出させる工程。
第4工程:第1工程による油脂の融点を基準として−2〜+4℃の温度に、第3の工程による油脂を保持する工程。
【0087】
また、本発明に係るシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法は、以下の第1〜2のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法であってもよい。
【0088】
上記第1のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法は、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加する工程を含む、シーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法である。
【0089】
上記第2のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法は、上記シーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する工程を含む、上記第1のシーディング済み融液状チョコレート生地の製造方法である。
【0090】
また、本発明に係るチョコレートの製造方法は、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加したシーディング済み融液状チョコレート生地を冷却固化する、チョコレートの製造方法であってもよい。
【0091】
また、本発明に係るシーディング済み融液状チョコレート生地の粘度上昇抑制方法は、融液状態にあるチョコレート生地に、3鎖長β型SOS結晶を含有する油脂を添加したシーディング済み融液状チョコレート生地を、32〜40℃の温度で10分以上保持する、シーディング済み融液状チョコレート生地の粘度上昇抑制方法であってもよい。