(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
肌対向面及び非肌対向面を有する裏面シートと、前記裏面シートの前記非肌対向面に配置された粘着部とを備え、長手方向、幅方向及び厚さ方向を有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、平面視にて、少なくとも前記長手方向に伸長可能である伸長領域を有し、
前記裏面シートは、前記伸長領域と、前記厚さ方向に重複する位置に、非肌対向面側に突出した複数の突状部が、前記幅方向にそれぞれ延在し、前記長手方向に並設されている伸長構造領域を有し、
前記複数の突状部のそれぞれは、前記非肌対向面がフラットな底部と、前記長手方向において、前記底部の前記長手方向の両端に隣接して存在する壁部とからなり、
前記粘着部は、前記裏面シートの前記伸張構造領域における、少なくとも2つの前記底部の全面と、前記少なくとも2つの前記底部の間に存在する前記壁部の全面とに配置されている、ことを特徴とする前記吸収性物品。
前記伸長構造領域の前記非肌対向面側の表面積に対する前記底部の合計面積率は、20〜40%であり、前記長手方向における前記複数の突状部のピッチは、前記複数の突状部の深さの2.0倍〜5.0倍である、請求項1に記載の吸収性物品。
前記吸収性物品は、前記厚さ方向において、前記伸長構造領域と重複する位置に、前記粘着部及び前記粘着部が配置されていない非粘着部からなる粘着部配置領域をさらに備え、
前記粘着部配置領域における粘着力は、前記伸長領域を前記長手方向に20%伸長させるのに必要な力よりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
前記吸収性物品は、前記裏面シートの肌対向面側であって、前記厚さ方向において、前記伸長構造領域と重複する位置に、伸縮性シートをさらに有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[態様1]
肌対向面及び非肌対向面を有する裏面シートと、前記裏面シートの前記非肌対向面に配置された粘着部とを備え、長手方向、幅方向及び厚さ方向を有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、平面視にて、少なくとも前記長手方向に伸長可能である伸長領域を有し、
前記裏面シートは、前記伸長領域と、前記厚さ方向に重複する位置に、非肌対向面側に突出した複数の突状部が、前記幅方向にそれぞれ延在し、前記長手方向に並設されている伸長構造領域を有し、
前記複数の突状部のそれぞれは、前記非肌対向面がフラットな底部と、前記長手方向において、前記底部の前記長手方向の両端に隣接して存在する壁部とからなり、
前記粘着部は、少なくとも2つの前記底部と、前記少なくとも2つの前記底部の間に存在する前記壁部とに配置されている、ことを特徴とする前記吸収性物品。
【0013】
本態様に係る吸収性物品では、裏面シートの伸長構造領域が、所定の底部と、所定の壁部とを備える、複数の突状部を有し、そして粘着部が、少なくとも2つの突状部の底部と、それらの間の壁部とに配置されている。従って、着用者が吸収性物品を着用するに当たり、両脚の大腿部で保持したショーツに吸収性物品を置いた際に、吸収性物品が、フラットな底部に配置された粘着部によりショーツに十分に固定され、吸収性物品が、ショーツへの優れた仮固定性を有する。次いで、着用者が、ショーツを着用者の臀部に引き上げた際には、ショーツは少なくとも前後方向に伸びるのが一般的であるが、上記吸収性物品は、仮固定性に優れるため、ショーツの伸びに追従して伸びることができる。
吸収性物品がショーツの伸びに追従して伸びると、上記壁部とショーツとの距離が近づき、最終的には、吸収性物品が、上記壁部に配置された粘着部によりショーツに十分に固定され、吸収性物品がショーツへの優れた本固定性を有する。なお、上記吸収性物品は、仮固定性に優れ、ショーツの伸びに追従して伸びることができるので、粘着部がいかなる配置形態で配置されていても、裏面シートの任意の部位が隆起したままショーツに接合してしまう虞も少ない。
以上より、上記吸収性物品は、仮固定性及び本固定性に優れ、着用者が、吸収性物品の着用に当たり、ショーツの引き上げ後、吸収性物品の位置を修正する必要性が少ない。
【0014】
[態様2]
前記伸長構造領域の前記非肌対向面側の表面積に対する前記底部の合計面積率は、20〜40%であり、前記長手方向における前記複数の突状部のピッチは、前記複数の突状部の深さの2.0倍〜5.0倍である、態様1に記載の吸収性物品。
【0015】
本態様に係る吸収性物品では、伸長構造領域が、所定の底部の合計面積率と、所定の突状部のピッチとを有する。従って、上記吸収性物品が、伸長領域の伸長性と、仮固定性と、本固定性とに優れる。
【0016】
[態様3]
前記底部に配置されている前記粘着部の粘着面と、前記壁部に配置されている前記粘着部の粘着面とが、5〜30%及び70〜95%の面積比を有する、態様1又は2に記載の吸収性物品。
【0017】
本態様に係る吸収性物品において、粘着部が、所定の面積比で、底部と、壁部とに存在するので、上記吸収性物品が、仮固定性と、本固定性とに優れ、着用者が、吸収性物品の着用に当たり、ショーツの引き上げ後、吸収性物品の位置を修正する必要性が少ない。
【0018】
[態様4]
前記吸収性物品は、前記厚さ方向において、前記伸長構造領域と重複する位置に、前記粘着部及び前記粘着部が配置されていない非粘着部からなる粘着部配置領域をさらに備え、
前記粘着部配置領域における粘着力は、前記伸長領域を前記長手方向に20%伸長させるのに必要な力よりも大きい、態様1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0019】
本態様に係る吸収性物品は、前記粘着部配置領域における粘着力が、前記伸長領域を20%伸長させるのに必要な力よりも大きいことにより、ショーツが着用者の臀部の形状に応じて一定程度伸長しても(すなわち、20%以下の範囲で伸長しても)、当該吸収性物品における伸長領域は、ショーツから剥離せずにショーツの伸長に追従し易いので、着用者が、ショーツを臀部に引き上げた後に、吸収性物品の位置を修正する必要性が少ない。
【0020】
[態様5]
前記吸収性物品は、前記裏面シートの肌対向面側であって、前記厚さ方向において、前記伸長構造領域と重複する位置に、伸縮性シートをさらに有する、態様1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0021】
本態様に係る吸収性物品は、前記厚さ方向において、前記伸長構造領域と重複する位置に、伸縮性シートをさらに有することにより、着用者が当該吸収性物品を個包装から取り出し、展開してショーツに配置する前に、当該吸収性物品の個包装の折線を伸ばすために当該吸収性物品を前記長手方向に伸長させても、前記伸縮性シートの伸縮性により、当該吸収性物品の形状が伸長前の状態に戻り易いので、着用者が当該吸収性物品をショーツに取り付けて仮固定するときに、精度よく位置決めし易い。
【0022】
[態様6]
前記吸収性物品は、平面視にて、排泄口対応領域と、前記排泄口対応領域の後方側に位置する後方領域と、を有し、
前記伸長構造領域は、少なくとも前記後方領域に存在する、態様1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0023】
本態様に係る吸収性物品において、前記伸長構造領域が、少なくとも前記後方領域に存在することにより、着用者がショーツを臀部に引き上げるとき、吸収性物品の伸長性が最も要求される着用者の臀部付近に相当する部分がショーツから剥離せずにショーツの伸長に追従し易いので、当該吸収性物品は、ショーツから剥離せずにショーツの伸長に追従し易いので、着用者が、ショーツを臀部に引き上げた後に、吸収性物品の位置を修正する必要性が少ない。
【0024】
[態様7]
前記吸収性物品は、平面視にて、前記伸長領域よりも低い伸長率を有する又は非伸長である低伸長領域をさらに有し、
前記低伸長領域は、前記長手方向における前方の端縁を含む領域と、後方の端縁を含む領域とに少なくとも存在する、態様1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0025】
本態様に係る吸収性物品において、前記低伸長領域が、少なくとも前記吸収性物品の長手方向における前方の端縁を含む領域と、後方の端縁を含む領域とに存在することにより、着用者が手で掴み易い長手方向の両端部近傍において、吸収性物品が伸長し難くなっており、着用者が当該吸収性物品をショーツに取り付けて仮固定するときに、精度よく位置決めし易い。
【0026】
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、吸収性物品、吸収本体部、吸収体等)を、それらの厚さ方向の上方又は下方側から対象物を見ること」を「平面視」という。特に、対象物が吸収性物品の場合は、吸収性物品を展開した状態で表面シート側から厚さ方向に見ることを、単に「平面視」ということがあり、そして対象物が裏面シートである場合には、吸収性物品を展開した状態で裏面シートの非肌対向面側から厚さ方向に見ることを、単に「平面視」ということがある。
【0027】
本明細書において用いる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。
本明細書において、「長手方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの長い方向」を指し、「幅方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向(短手方向)」を指し、「厚さ方向」は「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指す。これらの長手方向、幅方向及び厚さ方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。
【0028】
また、本明細書では、「吸収性物品の長手方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に近位側となる一方側」を「吸収性物品の前方側」といい、「吸収性物品の長手方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に遠位側(すなわち、着用者の背部に対して相対的に近位側)となる他方側」を「吸収性物品の後方側」という。なお、本明細書において、吸収性物品の前方領域及び後方領域は、それぞれ吸収性物品の前方側の領域及び後方側の領域を指す。
【0029】
さらに、本明細書では、「縦長の対象物(例えば、吸収性物品、吸収本体部、吸収体等)の幅方向において、長手方向に延びる幅方向中央軸線C
Lに対して相対的に近位側」を「幅方向の内方側」といい、「前記縦長の対象物の幅方向において、前記幅方向中央軸線C
Lに対して相対的に遠位側」を「幅方向の外方側」という。
【0030】
さらに、本明細書では、特に断りのない限り、吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌対向面に対して相対的に近位側」を「肌対向面側」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌対向面に対して相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。なお、本明細書においては、吸収性物品を構成する各種部材(例えば、表面シート、吸収体、裏面シート、伸縮性シート等)の「肌対向面側の表面」及び「非肌対向面側の表面」を、それぞれ単に「肌対向面」及び「非肌対向面」という。
【0031】
さらに、本明細書では、着用者が吸収性物品を着用するに当たり、両脚の大腿部で保持したショーツに吸収性物品を置いた際に、吸収性物品がショーツに固定されている度合を「仮固定性」といい、着用者が、ショーツを着用者の臀部に引き上げた際に、吸収性物品がショーツに固定されている度合を「本固定性」という。
【0032】
[吸収性物品の基本構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1(吸収性物品)を展開した状態で表面シート側から厚さ方向に見た平面図であり、
図2は、生理用ナプキン1を展開した状態で裏面シート側から厚さ方向に見た平面図である。また、
図3は、生理用ナプキン1における、長手方向に延びる幅方向中央軸線C
Lに沿った長手方向断面の端面図である。なお、
図1〜
図3において、図面の上方側が吸収性物品の前方側に相当し、図面の下方側が吸収性物品の後方側に相当する。
【0033】
本実施形態に係る生理用ナプキン1は、
図1及び
図2に示すように、平面視にて、長手方向L及び幅方向Wを有する縦長の外形形状を有しており、具体的には、長手方向及び幅方向を有する縦長の吸収本体部2と、該吸収本体部2の長手方向における中央部分の前方側寄りの位置において幅方向の外方側へ延出する一対の略台形状のフラップ部3、3’とによって構成されている。
【0034】
吸収本体部2は、
図1〜
図3に示すように、厚さ方向Tにおいて、肌対向面側に位置する液透過性の表面シート21と、非肌対向面側に位置する液不透過性の裏面シート23と、これら各シートの間に位置するとともに幅方向Wに延びる複数のスリット部Sを有する吸収体22と、生理用ナプキン1の後方領域A
3において吸収体22と裏面シート23との間に位置し且つ少なくとも前記長手方向Lに伸縮性を有する伸縮性シート24と、裏面シート23の非肌対向面に配置された、幅方向Wに連続的又は断続的に延びる複数の粘着部9と、を備えており、着用者から排出された経血や尿等の液状排泄物を、厚さ方向Tに浸透させながら吸収体22にて吸収及び保持することができるように構成されている。
一方、一対のフラップ部3、3’は、
図1及び
図2に示すように、厚さ方向Tにおいて、吸収本体部2から幅方向Wの外方側に延出された表面シート21と、吸収本体部2から幅方向Wの外方側に延出された裏面シート23と、裏面シート23の非肌対向面に配置された長手方向Lに延びる着衣(下着)固定用の粘着部4、4’と、を備えている。
【0035】
なお、生理用ナプキン1は、着用する際に、吸収本体部2の非肌対向面を、粘着部9を介して着用者の下着の肌対向面に貼り付けた後、一対のフラップ部3、3’を、それぞれ下着の非肌対向面側に折り返しつつ粘着部4、4’を介して下着の非肌対向面に貼り付けることにより、下着に固定されるものである。したがって、一対のフラップ部3、3’の非肌対向面は、生理用ナプキン1の着用時には、着用者の肌対向面に対向する面となる。
ここで、生理用ナプキン1を着用者の下着に固定するための、吸収本体部2における粘着部9及び各フラップ部3、3’における粘着部4、4’に用いられる粘着剤は、それぞれ生理用ナプキン1を着用者の下着に固定し得るものであれば特に制限されず、例えば、スチレン系ポリマー等の任意の粘着剤を用いることができる。なお、上述の一対のフラップ部は、本発明においては必須の構成要素ではないため、本発明の吸収性物品は、当該一対のフラップ部を有していなくてもよい。
【0036】
本実施形態に係る生理用ナプキン1において、吸収本体部2は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の前方側に位置する長手方向Lの前方端縁部5と、生理用ナプキン1の後方側に位置する長手方向Lの後方端縁部6と、を備え、さらに、これらの端縁部5、6の間には、長手方向Lに沿って、生理用ナプキン1の前方側に位置する前方領域A
1と、生理用ナプキン1の後方側に位置する後方領域A
3と、これらの領域A
1、A
3の間に位置する排泄口対応領域A
2と、を有している。
なお、
図1において上述の各領域A
1〜A
3は、幅方向Wに延びる2本の仮想直線、すなわち、一対のフラップ部3、3’の各粘着部4、4’の長手方向Lにおける両端部7、8、7’、8’のうち長手方向Lの前方側に位置する一対の第1端部7、7’を含むようにして幅方向Wに延びる第1仮想直線L
1と、各粘着部4、4’の長手方向Lにおける両端部7、8、7’、8’のうち長手方向Lの後方側に位置する一対の第2端部8、8’を含むようにして幅方向Wに延びる第2仮想直線L
2と、によって各々区分されている。
【0037】
ここで、本明細書において、「排泄口対応領域」とは、吸収性物品の着用時に、着用者の排泄口に対向する或いは当接する領域を指し、吸収性物品の種類や用途(具体的には、尿や便、経血などの液状排泄物の種類、対象とする着用者の年齢や性別等)に応じて、吸収性物品の種類毎に適宜設定される領域である。なお、排泄口対応領域は、通常、吸収性物品の長手方向の略中央部或いは前方側寄りの位置(例えば、吸収性物品が吸収本体部及びフラップ部を有する場合は、平面視にて、吸収本体部における、フラップ部と長手方向において重複する前方側寄りの位置であり、吸収性物品が長手方向の略中央部において幅方向の内方側に括れた括れ部を有する吸収本体部からなる場合は、平面視にて、吸収本体部における前記括れ部に対応する位置であり、また、吸収性物品が長円状の吸収本体部から構成される場合は、吸収本体部の幅方向に延びる長手方向中央軸線を跨ぐ略中央部の位置である。)において、吸収性物品の長手方向全長の約1/3以上の長手方向長さと、吸収性物品の幅方向全長の約1/3以上の幅方向長さを有するように設定されるが、例えば、吸収性物品が夜用ナプキン等の場合は、排泄口対応領域の長手方向長さが、吸収性物品の長手方向全長の1/3未満となるように設定されることもある。
【0038】
そして、本実施形態に係る生理用ナプキン1は、
図1及び
図3に示すように、上述の後方領域A
3において表面シート21と裏面シート23との間に位置する、少なくとも長手方向Lに伸縮性を有する伸縮性シート24を備えており、吸収体22は、上述の排泄口対応領域A
2において、長手方向Lに延びる幅方向中央軸線C
Lを跨って延在する非伸縮領域NEL
2を含むとともに、後方領域A
3において、長手方向L及び幅方向Wに延在し且つ伸縮性シート24と厚さ方向Tに重なる伸縮領域EL
Aと、該伸縮領域EL
Aの後方に隣接し且つ吸収体22の幅方向全域に延在する後方非伸縮領域NEL
3と、を含むように構成されている。
【0039】
以下、本発明の吸収性物品を構成する各種部材について、上述の実施形態に係る生理用ナプキン1を用いて更に詳細に説明する。
【0040】
[表面シート]
本実施形態に係る生理用ナプキン1において表面シート21は、
図1及び
図3に示すように、生理用ナプキン1の前方領域A
1から後方領域A
3に亘る領域(具体的には、長手方向Lの前方端縁部5から後方端縁部6に亘る領域)において厚さ方向Tの肌対向面側に配置され、着用者の肌対向面に直に接触し得る液透過性シート部材によって構成されている。かかる液透過性シート部材は、吸収性物品の表面シートとして用い得る諸特性(例えば、液透過性や柔軟性、肌触り等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、セルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維等の親水性繊維を用いて形成された、スパンレース不織布やエアスルー不織布等の不織布などを用いることができる。中でも、本発明の吸収性物品に用いる表面シートは、少なくとも一方向(吸収性物品の長手方向Lに対応する方向)に伸縮性又は伸長性を有する液透過性シート部材を用いることが好ましい。表面シートとしてこのような液透過性シート部材を用いると、吸収性物品が着用者の動きに合わせてより一層変形し易くなる(すなわち、動的フィット性に優れるようになる)ため、吸収性物品の着用感を更に向上させることができる。
【0041】
ここで、本明細書において、「伸長」とは、JIS L 1913:2010の「6.3引張強さ及び伸び率」に記載の方法に従って対象物を相反する所定の2方向に5.0Nの力で引っ張ったときに、破断することなく、自然状態(すなわち、伸びる前の状態)の長さ(100%)に対して3%以上伸びること(すなわち、伸長後の長さが103%以上となるように伸びること)を意味し、「伸縮」とは、対象物を相反する所定の2方向に所定の力で引っ張って10%以上伸長(すなわち、伸長後の長さが110%以上となるように伸長)させた後、前記力を解除したときに7%以上収縮すること(すなわち、収縮後の長さが、自然状態(伸長させる前の状態)の対象物の長さ(100%)に対して100%以上103%以下となること)を意味する。
【0042】
上述の伸縮性を有する液透過性シート部材としては、少なくとも一方向に伸縮性を有するものであれば特に制限されず、例えば、親水化処理が施されたウレタン樹脂製スパンボンド不織布等の伸縮性不織布;少なくとも一方向に延伸されたウレタン樹脂製スパンボンド不織布とエアースルー不織布とがエンボス加工等によって一体化された、凹凸構造を有する積層不織布;ウレタン樹脂やエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等の弾性樹脂からなる、親水化処理が施された有孔フィルムなどを好適に用いることができる。また、上述の伸長性を有する液透過性シート部材としては、少なくとも一方向に伸長性を有するものであれば特に制限されず、例えば、一方向に伸長可能な凹凸構造を有する不織布などを好適に用いることができる。
【0043】
また、表面シートとして用い得る伸縮性又は伸長性を有する液透過性シート部材は、その全領域(平面視における全面)において上述の伸縮性又は伸長性を有していてもよいが、本発明においては、後方領域内における吸収体の伸縮領域と厚さ方向に重なる領域を少なくとも含む領域が上述の伸縮性又は伸長性を有していることが好ましく、更には、後方領域内における吸収体の伸縮領域と厚さ方向に重なる領域のみが上述の伸縮性又は伸長性を有していることがより好ましい。表面シートがこのような特定の領域のみに伸縮性又は伸長性を有していると、吸収性物品が、かかる特定の領域(特に、吸収体の伸縮領域と厚さ方向に重なる領域)においては、着用者の動きに合わせてより一層変形し易くなるため、当該領域が着用者の肌対向面に密着した状態をより確実に実現することができる一方、吸収性物品の排泄口対応領域においては、吸収性物品の後方領域に掛かる上述の捩じれる方向の力が伝播され難く、当該排泄口対応領域における吸収本体部の形状が更に維持され易くなるため、着用者から排出された液状排泄物をより安定的に吸収することができる。
【0044】
表面シートの寸法形状は、吸収体の肌対向面を被覆することができるものであれば特に制限されず、吸収性物品の着用対象者の大きさや性別、用途などに応じた任意の寸法形状を採用することができる。また、表面シートの坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、5g/m
2〜100g/m
2の範囲内の坪量を採用することができるが、液透過性や柔軟性などの点から20g/m
2〜50g/m
2の範囲内の坪量が好ましい。なお、坪量は、JIS L 1906の5.2に従って測定することができる。
【0045】
さらに、表面シートの厚みについても、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.001mm〜5.0mmの範囲内の厚みを採用することができるが、液透過性や柔軟性などの点から0.01mm〜3.0mmの範囲内の厚みが好ましく、さらに、0.1mm〜1.0mmの範囲内の厚みがより好ましい。
【0046】
なお、表面シート等のシート部材の厚みは、以下の測定法により得ることができる。
<シート部材の厚み測定法>
(1)測定対象のシート部材から、所定サイズ(例えば、30mm×30mm)のサンプルシートを切り出す。
(2)切り出したサンプルシートを、カトーテック(株)の自動化圧縮試験機「KES FB−3A」にセットして、当該試験機の測定端子によるサンプルシートへの圧力が49Paのときの厚み(mm)を測定し、この厚み(mm)をサンプルシートの厚みとする。
【0047】
[裏面シート]
本実施形態に係る生理用ナプキン1において裏面シート23は、
図1〜
図3に示すように、生理用ナプキン1の前方領域A
1から後方領域A
3に亘る領域(具体的には、長手方向Lの前方端縁部5から後方端縁部6に亘る領域)において厚さ方向Tの非肌対向面側に配置され、着用者から排出された経血や尿等の液状排泄物の漏洩を防ぐ液不透過性シート部材によって構成されている。かかる液不透過性シート部材は、吸収性物品の裏面シートとして用い得る諸特性(液不透過性や通気性、柔軟性等)を有し、且つ後述するように特定の賦形を施すことのできるものであり、例えば、通気性を有するポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルム、熱可塑性樹脂製シート等、公知の液不透過性シート部材を用いることができる。そのような液不透過性シート部材の中でも、本発明の吸収性物品に用いる裏面シートは、少なくとも一方向(吸収性物品の長手方向Lに対応する方向)に伸長性を有する液不透過性シート部材を用いることが好ましい。裏面シートとしてこのような伸長性を有する液不透過性シート部材を用いると、着用者が吸収性物品をショーツに配置して当該ショーツを臀部に引き上げたとき、ショーツの伸びに追従して吸収性物品も伸びやすくなり、吸収性物品の着用感を向上させることができる。
【0048】
本実施形態においては、裏面シート23は、液不透過性シート部材によって構成されており、
図2及び
図3に示すように、上述の後方領域A
3において長手方向Lに伸長可能な伸長構造領域Bを有する一方、上述の前方領域A
1及び排泄口対応領域A
2には、前記伸長構造領域Bを有さない。裏面シート23は、伸長構造領域Bにおいて、非肌対向面側に突出し、幅方向Wと平行に延在し、長手方向Lに並設されている複数本の突状部B
1を有する。また、複数の突状部B
1のそれぞれは、非肌対向面がフラットな底部B
2と、長手方向Lにおいて、底部B
2の長手方向Lの両端に隣接して存在する壁部B
3とにより構成されている。なお、本実施形態において、幅方向Wに延び、突状部B
1において、厚さ方向における深さが最も浅い部分を基部B
4と称することもある。
【0049】
なお、本明細書において、底部とは、裏面シートの伸長構造領域の突状部において、長手方向に所定の間隔を空けて幅方向に延在する2本の折曲線と、長手方向に延びる幅方向両端とで囲まれる領域をいう。ここで、前記折曲線は、ギア延伸処理等の物理的処理により形成されるものである。
また、
図3に示すように、それぞれの壁部B
3は、基部B
4から凸状に傾斜して底部B
2の長手方向Lの端部に連結されている。すなわち、底部は、突状部において、基部のどの部分よりも厚さ方向における深さが深いことが好ましい。突状部が、かかる形状を有することにより、着用者が吸収性物品をショーツに配置する際、底部の非肌対向面がショーツとの接触面積を確保し易い。
【0050】
より具体的には、底部B
2は、平面視にて生理用ナプキン1の幅方向Wに長辺を、長手方向Lに短辺を其々有する略矩形の形状を有している。
本明細書において、底部に関する「フラット」とは、完全なるフラットのみならず、実質的なフラットをも含む。実質的なフラットとは、裏面シートの伸長構造領域の、吸収性物品の長手方向の断面において、複数の突状部のそれぞれの底部が、以下の要件:当該底部の長手方向の両端を結ぶ仮想線の長さに対する、上記仮想線からの上記底部の構成線の距離のうち最大のものの比が、好ましくは0超且つ0.05未満、より好ましくは0超且つ0.03未満、そしてさらに好ましくは0超且つ0.01未満であることを満たすことを意味する。なお、前記吸収性物品の長手方向の断面において、複数の突状部のそれぞれの底部が、上記要件を満たすとは、吸収性物品の長手方向の異なる5か所の断面のそれぞれにおいて、上記要件を満たすことをいう。
【0051】
また、複数の突状部のそれぞれの底部の長手方向の両端を結ぶ長さは、好ましくは0.3mm以上10mm以下、より好ましくは0.5mm以上8mm以下である。底部がかかる形状を有することにより、着用者が吸収性物品をショーツに配置する際、底部の非肌対向面がショーツとの接触面積を確保し易い。また、本発明における底部は、着用者が吸収性物品をショーツに配置する際に、底部の非肌対向面がショーツとの接触面積を確保し易い限り、その形状は略矩形に制限されず、平面視にて台形の他、幅方向Wに延びる任意の曲線又は波線で区画される形状などの任意の形状を採用することができる。
【0052】
また、フラットな底部は、吸収性物品の平面方向(長手方向及び幅方向と平行な方向)と略平行であることが好ましい。より具体的には、任意のフラットな底部を含む面と、当該吸収性物品の平面方向に延在する面とがなす角度が、好ましくは0〜15度、より好ましくは0〜10度、さらに好ましくは0〜5度の範囲にある。フラットな底部がかかる構成を有することにより、着用者が吸収性物品をショーツに配置する際、底部の非肌対向面がショーツとの接触面積を確保し易い。
【0053】
一方、壁部B
3は、長手方向Lに沿った断面視にて、底部B
2の長手方向Lの両端部から、厚さ方向Tにおける深さを減じながら延在し、突状部B
1の壁部分を形成する。また、本発明において壁部の形状は制限されず、基部から凹状に傾斜して底部の長手方向の端部に連結されている形状や、1又は2以上の曲面とフラットな平面とで形成されていてもよい。
【0054】
本実施形態において、上述の突状部B
1は、
図3に示すように、裏面シート23の厚さ方向において肌対向面側に突出した構造を有し、上述の基部B
4は、裏面シート23の厚さ方向において非肌対向面側に窪んだ構造を有している。
【0055】
本実施形態において、伸長構造領域Bは、上述の後方領域A
3に存在していたが、本発明に係る吸収性物品においては、伸長構造領域の配置態様はこれに制限されず、伸長構造領域が上述の前方領域、排泄口対応領域、またはこの両方の領域に存在していてもよい。しかし、伸長構造領域が、少なくとも後方領域に存在することが好ましい。かかる構成により、着用者がショーツを臀部に引き上げてショーツを着用した際、吸収性物品の伸長性が最も要求される着用者の臀部付近に相当する部分がショーツに追従し易いので、吸収性物品の着用感を更に向上させることができる。さらに、伸長構造領域が、少なくとも後方領域に存在することにより、後述する粘着部の存在と相俟って、吸収性物品の伸長性が最も要求される着用者の臀部付近に相当する部分がショーツから剥離せずにショーツの伸びに追従し易いので、吸収性物品の位置を修正する必要性が少なくなる。
また、裏面シートがこのような伸長構造領域を有していると、吸収性物品の厚さ方向において柔軟性やクッション性等を付与することができるため、当該吸収性物品の着用感を更に向上させることができる。また、着用者に視認され易い裏面シートがこのような伸長構造領域を有していると、本発明の吸収性物品が伸長性やフィット性、柔軟性等に特に優れた製品であることを着用者に認識させ易いという利点もある。
【0056】
なお、上述の伸長構造領域において、突状部の深さ(すなわち、突状部の底部の非肌対向面を含む水平面と基部の肌対向面を含む水平面との間の距離)は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.1mm〜1.2mmの範囲内の深さを採用することができる。伸長性やクッション性、液の拡散性等の点から、突状部の深さは、0.2mm〜1.0mmの範囲が好ましく、0.4mm〜0.8mmの範囲がより好ましい。
【0057】
さらに、上述の複数の突状部のピッチ(すなわち、隣り合う2本の突状部の底部における、幅方向に延びる長手方向中心線同士の間隔(mm))についても、特に制限されず、例えば、0.5mm〜5.0mmの範囲内のピッチを採用することができるが、伸長性やクッション性、液の拡散性等の点から1.0mm〜4.0mmの範囲内のピッチが好ましく、2.0〜3.0mmの範囲内のピッチが更に好ましい。なお、この複数の突状部のピッチは、無加圧状態(すなわち、伸長構造領域が伸長していない状態)における裏面シートの平面写真に基づいて、隣り合う2本の突状部の底部における、幅方向に延びる長手方向中心線同士の間隔(mm)として測定することができる。
【0058】
また、上述の伸長構造領域における裏面シートの非肌対向面の表面積に対する、底部の非肌対向面の合計面積率は、好ましくは20〜40%、より好ましくは25〜35%である。なお、この伸長構造領域における裏面シートの非肌対向面の表面積及び底部の非肌対向面の合計面積は、無加圧状態における裏面シートの断面写真に基づいて、裏面シートの非肌対向面における伸長構造領域の輪郭線の長さと各底部の長さの合計とを取得し、これらに、平面視における当該伸長構造領域の幅の長さをそれぞれ乗じて、伸長構造領域の非肌対向面の表面積A
E及び底部の非肌対向面の合計面積A
Bとして得ることができる。さらに、伸長構造領域における裏面シートの非肌対向面の表面積に対する、底部の非肌対向面の合計面積率は、前記A
Bを前記A
Eで除して得た百分率として算出することができる。
また、長手方向における突状部のピッチは、好ましくは各々の突状部の深さの2.0倍〜5.0倍、より好ましくは3.0〜4.5倍、さらにより好ましくは3.8〜4.2倍である。伸長構造領域が、所定の底部の合計面積率と、所定の突状部のピッチを有することにより、伸長構造領域による前記吸収性物品の伸長性を確保し易いと共に、着用者が当該吸収性物品をショーツに配置した際、伸長構造領域における壁部とショーツとの距離がより短くなり、着用者がショーツを臀部に引き上げたとき、ショーツとの接触面積をより確保し易いので、伸長構造領域における後述の粘着部の存在と相俟って、着用者がショーツを臀部に引き上げてショーツを着用した際、吸収性物品がショーツからより一層剥離せずにショーツの伸びに追従し易いので、着用者が、吸収性物品の着用に当たり、ショーツの引き上げ後、吸収性物品の位置を修正する必要が少なくなる。
【0059】
本発明において、裏面シートの寸法形状は、着用者から排出された液状排泄物の漏洩を防止し得るものであれば特に制限されず、吸収性物品の着用対象者の大きさや性別、用途などに応じた任意の寸法形状を採用することができる。また、裏面シートの厚みについても、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.001mm〜5.0mmの範囲内の厚みを採用することができるが、液不透過性や柔軟性、通気性などの点から0.003mm〜3.0mmの範囲内の厚みが好ましく、更には、0.01mm〜1.0mmの範囲内の厚みがより好ましい。
【0060】
なお、本実施形態に係る生理用ナプキン1において、表面シート21と裏面シート23は、後述する吸収体22と該吸収体22に接合された伸縮性シート24との積層体を間に挟んだ状態で、各シートの外周端縁部がホットメルト型接着剤によって接合されている。かかる接合の手段は特に制限されず、上述の接着剤のほかに、例えば、ヒートシール法、超音波接合法等の任意の接合手段を採用することができるが、上述の伸縮性や伸長性を阻害し難いという点からスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−エチレン共重合体(SEBS)等のホットメルト型接着剤を用いることが好ましい。
【0061】
[粘着部]
本実施形態に係る生理用ナプキン1において、裏面シート23の非肌対向面に配置された、幅方向Wに連続的又は断続的に延びる複数の粘着部9は、
図2に示すように、長手方向Lに所定間隔を空けて複数本並ぶように(換言すれば、幅方向Wに延びる粘着部9と幅方向Wに延びる非粘着部10とが長手方向Lに沿って交互に並ぶように)ストライプ状に配置されており、長手方向Lに隣接する粘着部9同士の間に存在する非粘着部10とともに着衣(下着)固定用の粘着部配置領域11を構成するものである。かかる粘着部配置領域11は、着用者が生理用ナプキン1を着用する際に、吸収本体部2の非肌対向面を着用者の着衣(下着)の肌対向面に固定するものである。なお、上述の粘着部の配置形態は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、粘着部は、上述のストライプ状のほか、スパイラル状や間欠状、ドット状等の任意の形態で配置することができる。
【0062】
さらに、本発明において、粘着部は、裏面シートの伸長構造領域における少なくとも2つの底部と、前記少なくとも2つの底部の間に存在する壁部とに配置されている。かかる構成を有することにより、本発明に係る吸収性物品は、後述のメカニズムにより仮固定性及び本固定性に優れ、着用者が、吸収性物品の着用に当たり、ショーツの引き上げ後、吸収性物品の位置を修正する必要が少ない。
また、本発明において、上述の底部及び壁部における粘着部の配置形態は、裏面シートの伸長構造領域における少なくとも2つの底部の全面と、前記少なくとも2つの底部の間に存在する壁部の全面とに配置され、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、粘着部は、底部及び壁部のいずれにおいても、略全面に配置されていてもよいし、ストライプ状、スパイラル状や間欠状、ドット状等の任意の形態で一部の面に配置されるものがあってもよい。
【0063】
ここで、本発明に係る吸収性物品がショーツに接合するメカニズムを説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1における、裏面シート23の伸長構造領域とショーツとが接合する様子を模式的に示す図である。具体的には、
図4(a)は、裏面シート23の底部B
2が粘着部9を介してショーツに仮固定されている状態を示しており、
図4(b)は、ショーツが伸長し始めた状態を示しており、そして
図4(c)は、ショーツが更に伸長した着用状態を示している。
【0064】
本実施形態において、
図4(a)に示すように、着用者が生理用ナプキン1を着用するに当たり、両脚の大腿部で保持したショーツUに生理用ナプキン1を置いた際に、生理用ナプキン1が、フラットな底部B
2に配置された粘着部9によりショーツUに十分に固定され、生理用ナプキン1が、ショーツへの優れた仮固定性を有する。また、
図4(b)に示すように、次いで、着用者が、ショーツUを着用者の臀部に引き上げた際には、ショーツUは少なくとも前後方向に伸びるのが一般的であるが、上記生理用ナプキン1は、生理用ナプキン1が仮固定性に優れるため、ショーツUの伸びに追従して伸びることができる。さらに
図4(c)に示すように、生理用ナプキン1がショーツUの伸びに追従して伸びると、上記壁部B
3とショーツUとの距離が近づき、最終的には、生理用ナプキン1が、上記壁部B
3に配置された粘着部9によりショーツに十分に固定され、生理用ナプキン1がショーツUへの優れた本固定性を有する。かかるメカニズムにより、生理用ナプキン1は、仮固定性及び本固定性に優れ、着用者が、吸収性物品の着用に当たり、ショーツの引き上げ後、生理用ナプキン1の位置を修正する必要性が少ない。なお、本実施形態では、粘着部9が長手方向Lに所定間隔を空けて複数本並ぶように配置されているが、上記吸収性物品は、仮固定性に優れ、ショーツの伸びに追従して伸びることができるので、粘着部がいかなる配置形態で配置されていても、裏面シートの任意の部位が隆起したままショーツに接合してしまう虞も少ない。
【0065】
また、本発明において、底部に配置されている粘着部の粘着面と、壁部に配置されている粘着部の粘着面とは、好ましくは5〜30%及び70〜95%の面積比を有し、より好ましくは8〜25%及び75〜92%の面積比を有する。上記吸収性物品において、粘着部が、所定の面積比で、底部と、壁部とに存在すると、上記吸収性物品が、仮固定性と、本固定性とに優れ、着用者が、吸収性物品の着用に当たり、ショーツの引き上げ後、吸収性物品の位置を修正する必要性が少ない。なお、この底部に配置されている粘着部の粘着面の面積と、壁部に配置されている粘着部の粘着面の面積とは、測定圧3g/cm
2の加圧状態における裏面シートの平面写真に基づいて、底部に配置されている粘着部の粘着面の合計面積と、壁部に配置されている粘着部の粘着面の合計面積としてそれぞれ測定することができ、これらの比として算出することができる。
【0066】
[伸縮性シート]
本実施形態に係る生理用ナプキン1において、少なくとも長手方向Lに伸縮可能な伸縮性シート24は、
図1及び
図3に示すように、着用時に着用者の臀部に対応する領域となる後方領域A
3であって、厚さ方向Tにおいて、少なくとも伸長構造領域Bと重複する位置に、吸収体22と裏面シート23との間(すなわち、裏面シート23の肌対向面側)に配置されて、生理用ナプキン1の後方領域A
3(より具体的には、後方領域A
3内における、吸収体22の伸縮領域EL
Aに対応する領域)に伸縮性を付与する伸縮性シート部材である。なお、伸縮性シート24は、液不透過性であることが好ましく、上述のとおり、吸収体22の後方領域A
3における伸縮領域EL
Aと厚さ方向Tに重なる位置に配置され、当該伸縮領域EL
Aと厚さ方向Tに重ならない部分には配置されていない。液不透過性の伸縮性シート24がこのように配置されていると、着用者が当該生理用ナプキン1を個包装から取り出し、展開してショーツUに配置する前に、当該生理用ナプキン1の個包装の折線を伸ばすために当該生理用ナプキン1を前記長手方向Lに伸長させても、前記伸縮性シート24の伸縮性により、当該生理用ナプキン1の形状が伸長前の状態に戻り易いので、着用者が当該生理用ナプキン1をショーツUに取り付けて仮固定するときに、精度よく位置決めし易い。
【0067】
上述の伸縮性シートは、少なくとも一方向(吸収性物品の長手方向Lに対応する方向)に伸縮可能な伸縮性シート部材であれば特に制限されず、例えば、ウレタン樹脂やポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂から形成された伸縮性フィルム;ポリエステル系樹脂から形成された弾性フィルムなどを用いることができる。
【0068】
また、吸収性物品において、上述の伸縮性シートが配置される厚さ方向の位置も、表面シートと裏面シートの間であれば特に制限されず、上述の実施形態のように吸収体と裏面シートの間に配置されていても、表面シートと吸収体との間に配置されていてもよいが、吸収性物品の後方領域においても所定の吸収性能が得られるという点から、伸縮性シートは、上述の実施形態のように吸収体と裏面シートの間に配置されていることが好ましい。
【0069】
なお、本発明においては、上述の伸縮性シートは、吸収体の伸縮領域が伸縮可能に構成されていれば、必須の構成要素ではないため、本発明の吸収性物品は、当該伸縮性シートを備えていなくてもよい。
【0070】
[吸収体]
次に、本発明の吸収性物品に用い得る吸収体について説明する。
図6は、生理用ナプキン1に用いられる吸収体22の伸長していない状態(自然状態)の平面図であり、
図7は、吸収体22の伸長状態の平面図である。なお、
図7は、生理用ナプキン1の伸長状態を模式的に示す、長手方向Lに延びる幅方向中央軸線C
Lに沿った断面の端面図である。
【0071】
本実施形態に係る生理用ナプキン1において吸収体22は、
図3に示すように、厚さ方向Tにおいて表面シート21と裏面シート23との間に配置されて、表面シート21を透過してきた着用者の液状排泄物を吸収及び保持する機能を有する吸収性部材である。吸収体22は、
図4に示すように、平面視にて、長手方向Lにおける前方側及び後方側の各端縁がそれぞれ前方側及び後方側に円弧状に突出した縦長の外形形状を有し、
図1に示すように、生理用ナプキン1の長手方向Lに延びる幅方向中央軸線C
Lを含む中央領域において、上述の前方領域A
1から後方領域A
3に亘って延在するように配置されている。
なお、本発明において、吸収体は上述の態様のものに制限されず、吸収体は、例えば、長方形、長円形、砂時計形等の任意の外形形状を有していてもよく、また、吸収性物品の長手方向の前方寄り或いは後方寄りに偏って配置されていてもよい。
【0072】
そして、本実施形態において吸収体22は、
図1に示すように、平面視にて、上述の前方領域A
1及び排泄口対応領域A
2において、長手方向Lに延びる幅方向中央軸線C
Lを跨って延在する前方非伸縮領域NEL
1及び非伸縮領域NEL
2を有するとともに、上述の後方領域A
3において、長手方向L及び幅方向Wに延在し且つ後述の伸縮性シート24と厚さ方向Tに重なる伸縮領域EL
Aを有するように構成されている。
さらに、吸収体22は、平面視にて、上述の後方領域A
3内の伸縮領域EL
Aの後方に隣接し且つ吸収体22の幅方向全域に延在する後方非伸縮領域NEL
3を有している。吸収体22がこのような後方非伸縮領域NEL
3を有していると、生理用ナプキン1の後方領域A
3において吸収体22の強度を一定程度確保することができるため、着用者が生理用ナプキンをショーツに取り付けて仮固定する際に位置決めし易い。
【0073】
ここで、吸収体22における上述の各非伸縮領域(すなわち、前方領域A
1における前方非伸縮領域NEL
1、排泄口対応領域A
2における非伸縮領域NEL
1及び後方領域A
3における後方非伸縮領域NEL
3)及び伸縮領域EL
Aについて更に具体的に説明する。
【0074】
本実施形態において、吸収体22の各非伸縮領域NEL
1〜NEL
3は、後述する複数のスリット部等の伸縮手段が設けられておらず、実質的に伸縮性を有していない(すなわち、非伸縮性の)領域である。本実施形態において、かかる非伸縮領域は、上述のとおり、平面視にて、前方領域A
1及び排泄口対応領域A
2において、長手方向Lに延びる幅方向中央軸線C
Lを跨って延在する前方非伸縮領域NEL
1及び非伸縮領域NEL
2として設けられており、さらに、後方領域A
3内の伸縮領域EL
Aの更に後方側において、吸収体22の幅方向全域に(すなわち、
図6における吸収体22の幅方向Wにおける一方側の端縁e
1から他方側の端縁e
2まで)延在する後方非伸縮領域N
3として設けられている。なお、上述の前方非伸縮領域N
1及び非伸縮領域N
2は、吸収体22の幅方向中央部(すなわち、長手方向Lに延びる幅方向中央軸線C
Lを跨ぐ部分)において連続するように設けられている。
本発明の吸収性物品において、吸収体の非伸縮領域は、少なくとも排泄口対応領域及び後方領域内における伸縮領域の後方に隣接する領域に設けられていればその配置形態は特に制限されず、非伸縮領域は、前方領域には設けられていなくてもよいが、当該非伸縮領域は、上述の実施形態のように、前方領域から排泄口対応領域に跨って設けられていることが好ましい。吸収体の非伸縮領域が前方領域から排泄口対応領域に跨って設けられていると、吸収体の形状が維持され易い領域を更に広く確保することができるため、着用者の動作や下着の伸び等による影響が比較的少ない上述の前方領域及び排泄口対応領域において、着用者から排出された液状排泄物を長時間に亘ってより安定的に、より確実に吸収することができる。
【0075】
また、上述の実施形態に係る生理用ナプキン1において、吸収体22の伸縮領域EL
Aは、
図1、
図3及び
図4に示すように、伸縮性シート24と厚さ方向Tに重なる後方領域A
3内において、幅方向Wに延びる複数のスリット部Sを伸縮手段として有しており、かかる複数のスリット部Sが着用者から掛かる(或いは、下着の伸縮を介して掛かる)外力(なお、この外力は、伸長方向の外力及び収縮方向の外力を含む。)や伸縮性シート24から付与される収縮力によって開閉することで、上述の吸収体22の伸縮領域EL
Aが少なくとも長手方向Lに伸縮できるようになっている。
【0076】
ここで、本明細書において、「スリット部」は、吸収体を厚さ方向に貫通する切り目を意味し、該スリット部が延びる方向(すなわち、スリット部の長手方向)と、該方向と直交する方向(すなわち、スリット部の幅方向)を有する。
【0077】
本発明の吸収性物品において、吸収体は、上述の伸縮領域及び非伸縮領域(後方非伸縮領域を含む。)を有していること以外は、特に制限されず、当分野において公知の任意の吸収体を用いることができる。そのような吸収体としては、例えば、パルプ等の吸水性繊維及び/又は高吸収性ポリマーを含む吸収性材料を、少なくとも1枚のティッシュ等の液透過性被覆シートによって覆ったものなどが挙げられる。
【0078】
なお、吸収体の厚みは、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.1mm〜10mmの範囲内の厚みを採用することができるが、伸縮性や吸収性、柔軟性などの点から0.3mm〜3mmの範囲内の厚みが好ましい。
【0079】
[吸収性物品の伸長領域と非伸長領域]
上述したように、本実施形態に係る生理用ナプキン1は、伸縮性の表面シート21、吸収体22、伸縮性シート24と、伸長性の裏面シート23とを有し、吸収体22、伸縮性シート24、裏面シート23のそれぞれは、上述の前方領域A
1、排泄口対応領域A
2、及び後方領域A
3においてそれぞれ異なる伸縮性又は伸長性を有している。
上述のように、本実施形態において吸収体22は、
図1に示すように、平面視にて、上述の前方領域A
1及び排泄口対応領域A
2において、長手方向Lに延びる幅方向中央軸線C
Lを跨って延在する前方非伸縮領域NEL
1及び非伸縮領域NEL
2を有するとともに、上述の後方領域A
3において、長手方向L及び幅方向Wに延在し且つ上述の伸縮性シート24と厚さ方向Tに重なる伸縮領域EL
Aを有するように構成されている。さらに、吸収体22は、平面視にて、上述の後方領域A
3内の伸縮領域EL
Aの後方に隣接し且つ吸収体22の幅方向全域に延在する後方非伸縮領域NEL
3を有している。
また、上述のように、本実施形態において裏面シート23は、上述の後方領域A
3において長手方向Lに伸長可能な伸長構造領域Bを有する一方、上述の前方領域A
1及び排泄口対応領域A
2には、前記伸長構造領域Bを有さない。
【0080】
かかる各伸縮及び/又は伸長特性を有する構成部材を有する生理用ナプキン1は、物品全体としてみると、平面視にて、上述の生理用ナプキン1の前方側に位置する長手方向Lの前方端縁部5を含む領域を含む前方領域A
1及び排泄口対応領域A
2において長手方向Lに延びる前方低伸長領域NEX
1と、上述の後方領域A
3において、長手方向L及び幅方向Wに延在し且つ上述の伸縮性シート24と厚さ方向Tに重なる伸長領域EXと、上述の生理用ナプキン1の後方側に位置する長手方向Lの後方端縁部6を含む領域を含む後方領域A
3内の伸長領域EXの後方に隣接し且つ生理用ナプキン1の幅方向全域に延在する後方低伸長領域NEX
2とを有する。つまり、本実施形態における生理用ナプキン1は、厚さ方向Tにおいて、吸収体22の前方非伸縮領域NEL
1及び非伸縮領域NEL
2が存在する領域、伸縮領域EL
A、後方非伸縮領域NEL
3に重複する領域に、それぞれ前方低伸長領域NEX
1、伸長領域EX、後方低伸長領域NEX
2を有する。また、本実施形態における生理用ナプキン1は、厚さ方向Tにおいて、伸縮性シート24に重複する領域に、伸長領域EXを有する。
【0081】
なお、本明細書において、「低伸長領域」は、「伸長領域」に対して相対的に伸長率の低い領域を指し、この低伸長領域には、相対的に伸長率の低い伸長領域のほか、非伸長領域も含まれる。
【0082】
また、本実施形態において、生理用ナプキン1は、長手方向Lに延びる前方低伸長領域NEX
1と、後方低伸長領域NEX
2と、その間に位置する伸長領域EXとを有していたが、本発明に係る吸収性物品は、これに制限されず、例えば上述の前方領域の低伸長領域を伸長領域としてもよい。しかし本発明において、低伸長領域は、吸収性物品の前方側に位置する長手方向の前方の端縁を含む領域と、後方の端縁を含む領域とに存在することが好ましく、かかる構成により、着用者が手で掴み易い長手方向の両端部近傍において、吸収性物品が伸長し難くなっており、着用者が当該吸収性物品をショーツに取り付けて仮固定するときに、精度よく位置決めし易い。
【0083】
また、本発明において、上述の粘着部配置領域における粘着力は、前記伸長領域を20%伸長させるのに必要な力よりも大きいことが好ましい。粘着部配置領域における粘着力が、伸長領域を20%伸長させるのに必要な力よりも大きいと、ショーツが着用者の臀部の形状に応じて一定程度伸長しても(すなわち、20%以下の範囲で伸長しても)、吸収性物品における伸長領域もショーツから剥離せずにショーツの伸びに追従し易いので、仮固定後に着用者がショーツを臀部に引き上げてショーツを着用した際、吸収性物品における伸長領域がショーツからより一層剥離せずにショーツの伸びに追従し易いので、吸収性物品の位置を修正する必要性が少ない。
【0084】
ここで、伸長領域を20%伸長させるのに必要な力は、JIS L 1913:2010の「6.3引張強さ及び伸び率」に記載の方法に従って測定することができるが、試験片は、上記の吸収性物品における伸長領域から採取するものとし、つかみ間隔は、60mmとする。また、裏面シートの非肌対向面に配置された粘着部配置領域の粘着力は、以下の測定法に従って測定することができる。なお、
図8は、裏面シートの非肌対向面に配置された粘着部配置領域の粘着力を測定する方法を説明するための模式図である。
【0085】
<粘着力測定法>
(1)吸収性物品から表面シートや吸収体等を剥がし取り、粘着剤を有する裏面シートを取り出す。このとき、裏面シートの肌対向面(すなわち、吸収体側の表面)に付着している接着剤やティッシュ等は、エタノールを浸み込ませた綿棒等を用いて取り除く。
(2)吸収性物品から取り出した裏面シートを、粘着剤の配置された領域(すなわち、粘着部配置領域)よりも大きく且つ定速伸張試験機のチャックが把持する部分を確保できるサイズの長方形状に切り取り、
図8に示すような裏面シートサンプル23Sを得る。
(3)試験用被着生地(カナキン3号)を幅70mm、長さ80mmのサイズに切り取り、
図8に示すような試験用被着シート12を得る。なお、試験用被着シート12のサイズは、上述の裏面シートサンプル23Sのサイズに応じて適宜変更することができる。
(4)試験用被着シート12の上面に、粘着剤(粘着部9)を有する面が下方側となるように裏面シートサンプル23Sを配置した後、300gのローラーを一方向に1回かけて両者を貼り合わせることにより、積層体サンプル13を得る。なお、試験用被着シート12の上面に裏面シートサンプル23Sを配置する際は、
図8に示すように、裏面シートサンプル23Sの粘着剤の配置された領域(粘着部配置領域)が、すべて試験用被着シート12によって覆われるとともに、試験用被着シート12及び裏面シートサンプル23Sの各々の長手方向における一方の端部が、両者の重複部分からそれぞれ15mm以上、長手方向に延出するように、試験用被着シート12と裏面シートサンプル23Sとを長手方向にずらして配置する。また、貼り合わせる際の速度は、300mm/分とする。
(5)得られた試験用被着シート12と裏面シートサンプル23Sとの積層体サンプル13を、20℃、60%RHの恒温恒湿の雰囲気下で、30分間放置する。
(6)積層体サンプル13の長手方向の両端部(すなわち、試験用被着シート12と裏面シートサンプル23Sとの重複部分から長手方向の相反する二方向に延出する、試験用被着シート12及び裏面シートサンプル23Sの各々の長手方向における一方の端部)の各々を、定速伸張引張試験機のチャックにより把持した後、積層体サンプル13を、
図8に示すように、積層体サンプル13の長手方向における相反する二方向A、A’に引っ張って、上述の試験用被着シート12と裏面シートサンプル23Sとを剥離し、そのときの剥離強度(最大値cN)を測定する。なお、定速伸張引張試験機の引張試験条件は、チャック間距離を60mm、引張速度を500mm/分とする。
(7)上述の剥離強度の測定を5回実施し、その平均値を、裏面シートの非肌対向面に配置された粘着部配置領域の粘着力(cN)とする。
【0087】
以下、本実施形態に係る生理用ナプキン1の製造方法の一部を、
図9及び10を参照して説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1の製造装置の全体概略図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1の裏面シートの製造装置の模式図である。なお、以下に説明しない方法については、既知の方法を用いることができる。吸収性物品の製造方法は、連続吸収体形成工程と、表面シート貼り付け工程と、裏面シート貼り付け工程と、粘着部塗工工程と、後処理工程とを少なくとも備える。
【0088】
生理用ナプキン1の製造装置700は、生理用ナプキン1やそれを構成する資材などの搬送に関し、
図9に示すように、生理用ナプキン1やそれを構成する資材などの搬送方向(MD方向)、搬送方向に直交し搬送面に沿う横断方向(CD方向)及び搬送方向と横断方向とに直交する上下方向(TD方向)を有する。「搬送方向の上流側」、「搬送方向の下流側」を単に「上流側」、「下流側」とも称し、「上下方向の上側」、「上下方向の下側」を単に「上側」、「下側」とも称する。
【0089】
製造装置700は、生理用ナプキン1やそれを構成する部材(例示:吸収体、表面シート、裏面シート)の搬送を以下のように行う。生理用ナプキン1については、生理用ナプキン1の幅方向Wが搬送方向(MD方向)に沿い、長手方向Lが横断方向(CD方向)に沿うように搬送する。
【0090】
以下では、生理用ナプキン1又は生理用ナプキン1を構成する部材の搬送中では、搬送方向、横断方向、及び上下方向はそれぞれ幅方向W、長手方向L、及び厚さ方向Tと重なるので、幅方向W、長手方向L、及び厚さ方向Tとしてそれぞれ搬送方向、横断方向及び上下方向も用いることとする。
【0091】
図9に示すように、製造装置700は、周方向に連続的に連なった形状を有している吸収体(以下、連続吸収体という。)を形成して半製品P1を得るユニット700Aと、前記半製品P1に表面シート21を貼り付けて半製品P2を得るユニット700Bと、前記半製品P2に裏面シート23を貼り付けて半製品P3を得るユニット700Cと、前記半製品P3に粘着部9を塗工して半製品P4を得るユニット700Dと、前記半製品P4に各種後処理を施して生理用ナプキン1を得るユニット700Eとを備える。
【0092】
[連続吸収体形成工程]
図9に示すユニット700Aは、吸収体を連続的に形成する装置等であり、少なくとも積繊装置と、伸縮性シート供給装置と、押圧装置と(いずれも図示せず)、切断装置70と、搬送ロール73とを備えている。
【0093】
ユニット700Aは、積繊装置により吸収体の材料となるパルプと高吸収性ポリマー(SAP)とを成型して連続吸収体を形成し、さらに当該連続吸収体に、伸縮性シート供給装置及び押圧装置により、連続シート状の伸縮性シートを貼り合わせ、押圧して半製品P1を形成する。当該半製品P1は、互いに対面配置されたカッターロール71及びアンビルロール72を備えた切断装置70に供給される。カッターロール71及びアンビルロール72は、半製品P1が供給されると、半製品P1を、アンビルロール72の外周面に吸引しつつ搬送しながら、カッターロール71の切断刃により横断方向に切断して、吸収体22の形状に個々に分離された半製品P1を形成する。切断装置70は、個々に分離された半製品P1をアンビルロール72から搬送ロール73に受け渡す。
【0094】
[表面シート貼り付け工程]
図9に示すユニット700Bは、前記半製品P1に連続シート状の表面シートを貼り付けて半製品P2を得る装置等であり、少なくとも搬送ロール73と、搬送ベルト74と、ギア延伸装置(図示せず)とを備えている。
ユニット700Bは、ロールから巻き戻らされた連続シート状の表面シートをギア延伸により延伸し、当該ギア延伸後の連続シート状の表面シートを前記半製品P1に貼り付けて、半製品P2を形成する。当該半製品P2は、搬送ベルト74により搬送される。
【0095】
[裏面シート貼り付け工程]
図9に示すユニット700Cは、前記半製品P2に連続シート状の裏面シートを貼り付けて半製品P3を得る装置等であり、少なくともロール状に巻かれた加工対象の連続シート状の裏面シートを搬送方向MDに向けて巻き出す巻出装置75と、巻き出された連続シート状の裏面シートを延伸して壁部B
3及び底部B
2を形成する賦形装置76と、一対の搬送ロール77、78と、搬送ベルト79、80と、を備えている。
【0096】
図9に示すように、賦形装置76は、上下一対の延伸ロール81,82を備えている。上方の延伸ロール81は、ロール幅方向に一定の間隔で配置され、上方の延伸ロール81の外周面に沿って相互に平行に複数列設けられた第1の歯81aと、隣り合う第1の歯81a,81aの間に設けられた複数列の第1の凹溝81bとを備えている。一方、下方の延伸ロール82は、ロール幅方向に一定の間隔で配置され、下方の延伸ロール82の外周面に沿って相互に平行に複数列設けられた第2の歯82aと、隣り合う第2の歯82a,82aの間に設けられた複数列の第2の凹溝82bとを備えている。下方の延伸ロール82の第2の歯82aは、上方の延伸ロール81の第1の凹溝81bと噛み合うように設けられている。上方の延伸ロール81の第1の歯81aは、下方の延伸ロール82の第2の凹溝82bと噛み合うように設けられている。
【0097】
本実施形態において、上下一対の延伸ロール81、82における上方の延伸ロール81は、第1の歯81aの先端部分が丸みを帯びた形状を有する一方、第1の凹溝81bの凹溝部分がフラットである。また、下方の延伸ロール82は、第2の歯82aの先端部分がフラットである一方、第2の凹溝82bの凹溝部分が丸みを帯びた形状を有する。
【0098】
前記ユニット700Cを用い、半製品P3を得る場合、巻出装置75から巻き出された裏面シート23を、賦形装置76で延伸して賦形加工する賦形工程を行う。
【0099】
賦形工程は、裏面シート23を、賦形装置76において、噛み合いながら回転している上下一対の延伸ロール81,82の間に装入し、その連続シート状の裏面シートを、噛み合っている上方の延伸ロール81の第1の歯81a及び第1の凹溝81bと、下方の延伸ロール82の第2の歯82a及び第2の凹溝82bとの間で延伸して賦形する。このとき、上方の延伸ロール81は、第1の歯81aが連続シート状の裏面シートと接触している部分を下方の延伸ロール82の第2の凹溝82b内に押し込み、これにより壁部B
3が賦形される。一方、下方の延伸ロール82は、第2の歯82aが連続シート状の裏面シートと接触している部分を上方の延伸ロール81の第1の凹溝81b内に押し込み、これにより底部B
2が賦形される。
【0100】
このとき、底部B
2については、第2の歯82aの先端部分がフラットであるため、その連続シート状の裏面シートの当接部分がフラットになる。一方、基部B
4については、第1の歯81aの先端部分が丸みを帯びているため、その連続シート状の裏面シートの当接部分が湾曲した曲面になる。より具体的には、
図10に示すように、連続シート状の裏面シートの第1面側(すなわち、吸収性物品とした際に肌対向面側の面となる側)は、底部に対応する位置において、延伸されながら第2の歯82aの先端部分に沿って賦形される一方、当該裏面シートの第2面側(すなわち、吸収性物品とした際に非肌対向面側の面となる側)は、基部に対応する位置において、延伸されながら第1の歯81aに沿って賦形される。また、連続シート状の裏面シートの第2面側は、底部に対応する位置において、必ずしも第1の凹溝81bと接触しておらず、当該裏面シートの第1面側は、基部に対応する位置において、必ずしも第2の凹溝82bと接触していない。その結果、連続シート状の裏面シートにおける延伸ロールの外周面に垂直な断面は、延伸ロールの幅方向に沿って突状部に対応する形状が周期的に並んだ形態になる。なお、本発明に係る吸収性物品の裏面シートの賦形方法は、上述の方法に制限されず、上下各延伸ロールの歯及び凹溝の形状やピッチ、歯と凹溝とを繋ぐ壁面の形状等は、前記第2の歯の先端部分がフラット、且つ、前記第1の歯の先端部分が丸みを帯びた形状を有している限り、適宜変更可能である。例えば、前記壁面の形状を曲面形状としたり、1又は2以上の曲面とフラットな平面との組み合わせとしたりすることもできる。
【0101】
本発明において、横断方向(CD方向)における隣接する下方の延伸ロールの第2の歯同士のピッチは、好ましくは各々の当該第2の歯の高さの2.0倍〜5.0倍、より好ましくは3.0〜4.5倍、さらにより好ましくは3.8〜4.2倍である。横断方向(CD方向)における隣接する当該第2の歯同士のピッチを、特定の範囲とすることにより、着用者が本実施形態に係る方法により得られた当該吸収性物品をショーツに配置した際、伸長構造領域における壁部とショーツとの距離がより短くなり、着用者がショーツを臀部に引き上げたとき、ショーツとの接触面積をより確保し易いので、伸長構造領域における粘着部の存在と相俟って、着用者がショーツを臀部に引き上げてショーツを着用した際、吸収性物品がショーツからより一層剥離せずにショーツの伸びに追従し易いので、吸収性物品の位置を修正する必要が少なくなる。さらに、かかる方法により得られる連続シート状の裏面シートの伸長構造領域Bは、平面視にて壁部B
3の露出が大きく、後述の接着剤を塗工する工程において、壁部B
3にまで略均一且つ効率的に接着剤を塗工することができる。
【0102】
ただし、本実施形態では、一対の延伸ロール81,82の外周面のうち、連続シート状の裏面シートの後方側に存在する伸長構造領域Bに対応する領域のみに歯が形成され、連続シート状の裏面シートの前方側に対応する領域には歯が形成されていない。延伸ロール81,82とが同一の周速度で回転しつつ互いの歯を噛み合わせて、これら噛み合った歯の間に連続裏面シートを通すことにより、連続裏面シートを延伸して(ギア延伸処理)、伸長性の連続シートに成形する。それにより、延伸後の連続裏面シートにおける、連続シート状の裏面シートの伸長構造領域Bに対応する領域のみに伸長性が発現する。なお、前方側に対応する部分には伸長性は発現しない。
【0103】
なお、賦形工程の前に、加工対象の連続シート状の裏面シートを上下一対の加熱ロールで挟み込んで予熱を加える予熱工程を実施してもよい。加熱ロールの外周面の温度は例えば60〜120℃程度とする。また、賦形工程を実施するとき、賦形を行い易いように、延伸ロール81、82を60〜120℃に加熱しながら賦形することが好ましい。
【0104】
搬送ベルト79は、前記ユニット700Bから供給された半製品P2を一対の搬送ロール77、78の間に搬送する。接着装置83は、搬送ベルト79で搬送される半製品P2の上側の面に接着剤を塗布する。一対の搬送ロール77、78は、互いに対面配置されており、一方の面に接着剤を塗布された半製品P2上側の面に、賦形装置76から供給された連続裏面シートを押し付けて貼り付け、連続シート状の表面シート及び裏面シート付き吸収体本体部材、すなわち半製品P3を形成する。搬送ベルト80は半製品P3をユニット700Dへ搬送する。
【0105】
[粘着部塗工工程]
図9に示すユニット700Dは、前記半製品P3に粘着部9を塗工して半製品P4を得る装置等であり、少なくとも裏面粘着部形成装置84と、搬送ベルト85とを備えている。
図9に示すように、ロール86は、剥離シートになる連続シート状の連続剥離シートCTを有しており、下流側の裏面粘着部形成装置84などで連続剥離シートCTが巻き戻されることで、連続剥離シートCTを裏面粘着部形成装置84に供給する。接着装置87は、裏面粘着部形成装置84に供給される前の連続剥離シートCTの一方の面に、複数の粘着部9を形成するように接着剤を塗工する。裏面粘着部形成装置84は、互いに対面配置されたカッターロール88及びアンビルロール89と、アンビルロール89に更に対面配置された押圧ロール90とを備えている。裏面粘着部形成装置84は、カッターロール88及びアンビルロール89との間に接着剤を塗工された連続剥離シートCTを供給されると、連続剥離シートCTを、アンビルロール89の外周面に吸引しつつ搬送しながら、カッターロール88の切断刃によって切断して、それにより複数の粘着部を有する剥離シートを形成する。裏面粘着部形成装置84は、アンビルロール89と押圧ロール90との間に半製品P3を挟んで搬送方向に搬送しつつ、P3の上側、すなわち裏面シート上に剥離シートを押し付けて貼り付けて、剥離シート付きP3、すなわち半製品P4を形成する。この時、接着剤を塗工する際に連続シート状の裏面シートの下側には吸収体22が存在するので、押圧ロール90が連続シート状の裏面シートの伸長構造領域Bにおける突状部B
1に押し付けられても、吸収体22のクッション性により連続シート状の裏面シートの凹凸が吸収され、壁部B
3にまで略均一に接着剤が塗工される。
【0106】
なお、本発明における吸収性物品の製造方法における粘着部塗工工程は、壁部に接着剤が塗工される限り上述の態様の制限されず、例えばスプレー塗工等の他の態様であってもよい。
【0107】
[後処理工程]
搬送ベルト85は、半製品P4をフラップ形成装置、周囲封止装置、周囲切断装置(いずれも図示せず)等の各種後処理装置を含むユニット700Eに搬送し、生理用ナプキン1が得られる。
【0108】
なお、本発明の吸収性物品は、上述の実施形態や例示的記載に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや変更等が可能である。
また、本発明は、上述の実施形態の生理用ナプキンのほかに、例えば、パンティライナー、(軽)失禁パッド等の様々な吸収性物品に適用することができる。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。