【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1に記載のデバイスによって達成される。
【0015】
本発明の第1の実施形態によれば、注射デバイスは、投薬すべき量の液体を有するカートリッジを収容するハウジングと、用量設定中にハウジングに対して回転方向で拘束され、用量投薬中にハウジングに対する回転においてばね駆動される、好ましくはスリーブ状の駆動部材と、用量設定中および用量投薬中にハウジングに対して回転可能であり、用量投薬中に駆動部材に回転的に連結される、投薬すべき用量を設定するための用量ダイヤル部材とを含む。このデバイスは、駆動部材と用量ダイヤル部材との間に配置されたリミッタを有する、カートリッジ内に残留する液体の量を超過する用量の設定を防止するための最終用量保護機構をさらに含む。さらに、このデバイスは、設定用量をそれぞれ示す2つの異なるディスプレイ部材を含む。
【0016】
したがって、駆動部材が、たとえば第1のクラッチを介してなどハウジングに連結され、用量ダイヤル部材が、用量設定中および好ましくはさらに用量取消し中にも回転されることにより、リミッタは、駆動部材および用量ダイヤル部材に連結されて、これらの部材に対して移動される。他方では、たとえば第2のクラッチによってなど、用量ダイヤル部材と駆動部材との間の相対回転が用量投薬中に防止される場合には、リミッタは、駆動部材およびダイヤル部材に対してその位置を維持する。これにより、結果としてリミッタの位置は、設定された用量の合計量に、すなわちすべての設定されて投薬された用量と、実際に設定されたがまだ投薬されていない用量との合計に対応したものとなる。端部止め具が、所定のしきい値が達成されるや否やリミッタと用量ダイヤル部材または駆動部材の端部止め具との当接または相互作用を可能にする位置に設けられる。典型的には、これは、たとえば注射デバイスのカートリッジ内に残留する薬剤の量などの最大設定可能用量である。リミッタが、かかる端部止め具に当接すると、用量ダイヤル部材と駆動部材との間のさらなる相対回転は不可能となる。したがって、駆動機構および注射デバイスは、より高いもしくはさらなる用量の設定を防止するように、および/または用量投薬を防止するように阻止される。好ましい実施形態によれば、端部止め具におけるリミッタの当接により、注射デバイスのカートリッジ内の薬剤量を超過する用量の設定が防止されるが、実際に設定された用量の投薬は可能となる。この点に関して、リミッタは、回転止め具を含み、用量ダイヤル部材は、対応するカウンタ止め具を含み、これらは、カートリッジ内に残留する液体の量を超過する用量が設定された場合に当接する。
【0017】
上記で定義されるような駆動機構の一般的機能は、用量を設定すること、およびその後に設定用量を投薬することである。通常は、用量設定(用量ダイヤル設定)は、ユーザが好ましくはたとえばダイヤルグリップを介してなど用量ダイヤル部材を回転させるように、駆動機構の1つの要素を操作することを必要とする。用量投薬中に、用量ダイヤル部材は、たとえば回転するなど移動して元の位置に戻り、用量設定中に作動されない駆動部材は、用量投薬中に用量ダイヤル部材と共に移動される。駆動部材の運動は、たとえばらせん状経路に沿った、回転、変位、または運動の組合せである。駆動部材は、用量投薬中にカートリッジから薬剤を押し出すためにピストンロッドとして機能する親ねじに作用する。
【0018】
駆動機構のこの基本機能に加えて、いくつかの例では、あらかじめ設定された用量の取消し、すなわち用量の補正または選択解除を可能にすることが好ましい。好ましくは、ユーザは、用量設定中の回転と比べて逆方向にたとえばダイヤルグリップを介してなど用量ダイヤル部材を回転させなければならないだけである。好ましくは、駆動部材は、用量再設定中にも作動されない。
【0019】
機構の構成要素の回転を可能にするために、これらの構成要素が注射デバイスの駆動機構の共通長手方向軸を中心として主に同心状に配置されると好ましい。したがって、これらの構成要素は、管状またはスリーブ状の形状を有する。たとえば、リミッタ、駆動部材、および用量ダイヤルは、それぞれ管状要素であり、リミッタは用量ダイヤル部材を囲み、駆動部材はリミッタ(およびしたがって用量ダイヤル部材を)を囲む。一例として、リミッタは、ナットであるか、または半ナットすなわちリングセグメントとして設計される。好ましくは、最終用量保護機構は、リミッタとしてナット部材を含み、このナット部材は、たとえば駆動スリーブなどの駆動部材に対して回転方向で拘束され、用量ダイヤル部材と螺合状態にある。
【0020】
さらに、駆動機構の構成要素の総数を削減することが望ましいが、製造上の理由により1つまたはそれ以上の構成要素を個別の要素に分割することが有用な場合がある。たとえば、ハウジングは、外側本体およびインサートおよび/または外側本体に対して軸方向におよび/または回転方向で拘束された内側本体を含む。さらに、クラッチが、クラッチにより連結または連結解除されることとなる構成要素に直接的に突出部および/または凹部を設けることによって設計される。代替としては、別個のクラッチ要素が、連結または連結解除されなければならない2つの構成要素間に配置されて設けられる。
【0021】
本発明のデバイスは、カートリッジ内に残留する薬剤の量を超過する用量の設定を回避するための安全機能として設定用量を限定するだけでなく、2つの異なる方法で設定用量をさらに表示するという利点を有する。一般的には、たとえば電子(たとえばLCD)ディスプレイ、窓を通して視認可能であるかもしくはマーカにより強調された数字もしくは記号が外部に印刷されたスリーブまたはドラムなどの、様々なディスプレイが知られている。一方で、注射デバイスを使用する患者は、過剰投与または過少投与を回避するために設定用量を正確に知ることが必要となるが、他方で患者は、設定用量を識別することが困難な視覚障害をしばしば有する。2つの異なるディスプレイを設けることにより、設定用量をユーザに表示し、設定用量の規模または範囲の大まかな標示をさらに表示することが可能となる。本発明の好ましい実施形態によれば、デバイスは、ディスプレイ部材の1つとしての数字スリーブと、第2のディスプレイ部材としての摺動ゲージ要素とを含む。数字スリーブは、すべての用量単位または1つおきの単位を表示する一方で、ゲージ要素は、設定用量の規模または範囲を示すための記号またはカラーコードを含む。たとえば、ゲージ要素上の種々の色または種々のマーキングが、設定用量に応じて視認可能となる。さらに、ゲージ機能は、用量規模に関して他の主要な視覚的な目印がユーザに提供されない自動注射器においては特に有用である。
【0022】
好ましくは、ハウジングは、第1の穴または窓を有する。ディスプレイ部材は、ハウジング内に位置し、用量設定中および用量投薬中にハウジングに対して回転可能である用量インジケータと、ハウジングと用量インジケータとの間に配置される、およびハウジング内において軸方向に案内され、用量インジケータの回転により軸方向変位されるように用量インジケータと螺合状態にあるゲージ要素とを含む。用量インジケータの少なくとも一部が第1のおよび第2の穴または窓を通して視認可能となるようにハウジングの第1の穴または窓に対して位置決めされた、第2の穴または窓がゲージ要素に設けられる。
【0023】
用量インジケータが実際の設定用量を確実に表示する確実な方法は、用量インジケータに対して用量ダイヤル部材を恒久的に回転方向で拘束することである。したがって、用量設定中、用量補正中、および用量投薬中の用量ダイヤル部材の回転が、用量インジケータに伝達される。
【0024】
好ましくは、用量インジケータは、外側表面上にらせん状列で配置された一連の数字または記号を有する数字スリーブである。したがって、数字スリーブの回転により、種々の用量単位を表示することが可能となる。好ましくは、ゲージ要素は、第2の穴または窓の遠位側に位置する遠位部分と、第2の穴または窓の近位側に位置する近位部分とを有する。設定用量の規模の表示は、たとえば遠位部分および近位部分が種々の色、種々の記号またはマーキングなどの異なる外側表面を有することによってなど与えられる。
【0025】
設定用量を投薬するために、ピストンロッドが使用されて、遠位方向にカートリッジの栓等を押す。ピストンロッドは、たとえば駆動スリーブなどの駆動部材に連結され、用量設定中にハウジングに対して回転方向で拘束され、用量投薬中にハウジングの回転を可能にすると好ましい。ピストンロッドは、ピストンロッドの回転により結果としてハウジングに対するピストンロッドの軸方向運動が得られるようにハウジングに対して螺合状態にある親ねじである。したがって、たとえば駆動部材を介してなど用量設定中にピストンロッドの回転を防止することにより、用量設定中のピストンロッドの意図しない軸方向運動が防止される。
【0026】
注射デバイスは、駆動部材と用量ダイヤル部材との間に配置された、および用量設定中に駆動スリーブおよび用量ダイヤル部材の相対回転を可能にする、および用量投薬中に用量ダイヤル部材に対して駆動スリーブを回転方向で拘束するラチェットクラッチを含む。好ましくは、このクラッチは、ばねの力に対して用量ボタン、トリガ、または同様のものを押し、それにより用量設定位置にクラッチを付勢することによって作動される。
【0027】
最終用量機構および2つのディスプレイ部材の一般的なコンセプトは、ばね駆動デバイスに限定されないが、注射デバイスは、好ましくは駆動部材を駆動するためのばねを含む。一実施形態によれば、駆動スリーブは、用量投薬中にねじりばねに連結され、このねじりばねは、用量設定中には引っ張られる。この連結は、ばねが駆動部材に装着されないが、たとえば数字スリーブなどに装着される、間接連結であり、この数字スリーブは、駆動部材が用量ダイヤル部材に連結される場合には、用量投薬中に駆動部材を駆動するように用量ダイヤル部材を同伴する。
【0028】
好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、最大設定可能用量および最小設定可能用量を規定するリミッタ機構を含む。典型的には、最小設定可能用量は、リミッタが用量投薬の終了時にデバイスを停止させるようにゼロ(0Uのインスリン調合物)である。たとえば60、80、または120Uのインスリン調合物などの最大設定可能用量は、過剰投与を回避するために制限される。好ましくは、最小用量および最大用量の限度値は、ハードストップ機能により設定される。
【0029】
リミッタ機構は、最小用量(ゼロ)位置で当接する数字スリーブ上の第1の回転止め具およびハウジングまたはハウジングインサート上の第1のカウンタ止め具と、最大用量位置で当接する数字スリーブ上の第2の回転止め具およびハウジングまたはハウジングインサート上の第2のカウンタ止め具とを含む。数字スリーブが、用量設定中および用量投薬中にハウジングに対して回転することにより、これらの2つの構成要素は、高信頼性のおよび頑丈なリミッタ機構を形成するのに適したものとなる。好ましくは、これらのカウンタ止め具は共に、ハウジングに対して回転方向で拘束されるがハウジングに対して軸方向に変位可能であるインサートであるゲージ窓上に配置される。
【0030】
カートリッジは、駆動スリーブおよび用量ダイヤル部材が配置された第2の長手方向軸に対して平行であり離間された第1の長手方向軸上に配置される。好ましくは、2つの異なる表示部材は、第2の長手方向軸上に共に配置される。
【0031】
本発明のさらなる実施形態によれば、手持ち型注射デバイスは、ハウジング、ピストンロッド、ドライバ、用量設定手段、パワーリザーバ(たとえばばね)、およびリリースクラッチを含む。ピストンロッドは、第1の長手方向軸を画定し、ハウジング内に配置される。ドライバは、ピストンロッドに連結される。用量設定手段は、少なくとも用量設定中には第2の長手方向軸を中心として回転可能である。パワーリザーバは、用量投薬中にドライバを駆動する。リリースクラッチは、用量設定中にドライバの回転を防止し、用量投薬中にドライバの回転を可能にするように配置される。第1の長手方向軸は、第2の長手方向軸に対して平行であり、離間され、すなわちデバイスの構成要素部材が配置される2つの軸の間には、オフセットが存在する。
【0032】
構成要素部材のいくつかが、従来の同心状配置の代わりに他の構成要素に隣接して配置されることにより、デバイスの断面は、通常の円形ペン形状よりもやや細長になる。これにより、少なくとも一部のユーザにとってデバイスの取扱い性が改善される。さらに、デバイスは、より短くよりバルク性が低く作製され、これによりやはり取扱い性が改善される。ドライバを駆動するためにパワーリザーバを設けることにより、用量投薬中にユーザに必要とされる力が低下する。これは、手先の器用さに障害を有するユーザにとっては特に有用である。
【0033】
デバイスの取扱い性を改善するために、用量設定前後のデバイスの長さは、好ましくは同一である。換言すれば、構成要素が用量設定中にハウジングかららせん状に移動して出ることに起因するダイヤル延伸がない。好ましくは、用量設定手段およびドライバは、用量設定中および用量投薬中に長手方向軸の一方に沿って軸方向に変位することを防止されるように、ハウジング内に配置される。しかし、用量設定と用量投薬との間における構成要素の中の少なくともいくつかの軸方向運動が、デバイスの用量設定位置と用量投薬位置との間における切り替えのために可能である。
【0034】
本発明のさらなる実施形態によれば、手持ち型注射デバイスは、カートリッジを収容するハウジングと、投薬すべき所望の用量を設定するために第1の方向にたとえば回転可能であるなど動作可能である用量設定手段と、設定用量がカートリッジから注射されるようにピストンまたは栓と協働するように適用されたピストンロッドと、第1のおよび第2のクリッカ構成要素とを含む。第1のクリッカ構成要素は、ハウジングに対して回転方向で拘束されるが、第2のクリッカ構成要素は、用量投薬中にハウジングに対して回転可能である。設定用量の投薬の終了時にのみユーザに非可視的な、すなわち可聴および/または可触の第1のフィードバックを与えるために、クリッカ構成要素は、相互に接触するように適用される。第1のクリッカ構成要素と相互作用するクリッカアクティベータが、近位用量設定位置と遠位用量投薬位置との間でハウジングに対して軸方向に変位可能である場合には、第1のフィードバックは、デバイスが用量投薬モードにあり、クリッカアクティベータが遠位用量投薬位置に位置する場合にのみ生成される。しかし、デバイスが、用量設定モードに位置し、クリッカアクティベータが、近位用量設定位置に位置する場合には、2つのクリッカ構成要素は、相互に係合せず、したがって信号またはフィードバックが生成されるのを防止する。したがって、ゼロの最小用量からのダイヤル設定は、クリッカ構成の克服を必要としない。なぜならば、クリッカ構成要素同士の間に接触が生じないからである。一例として、数字スリーブ上のクリッカアームは、傾斜された好ましくは切頭状またはテーパ状の部分を有するクリックアクティベータロッドにより非緊張状態の用量設定位置から用量投薬位置へと径方向に外側に押されて、クリックアクティベータロッドが用量ボタンと共に遠位方向に移動される場合にクリッカアームに作用する。
【0035】
用量設定位置および用量投薬位置を有する第1のクリッカ構成要素のさらなる利点は、用量設定手段が、第1のおよび第2のクリッカ構成要素が相互に接触することなく、およびしたがってフィードバックを生成することを伴わずに、設定用量を取り消すために第1の方向とは逆である第2の方向にたとえば回転可能であるなど動作可能である点である。これは、ユーザの混乱を回避する。
【0036】
好ましくは、注射デバイスは、用量設定中および/または用量補正中(投与を伴わない設定用量の取消し)および/または用量投薬中に可聴および/または触覚フィードバックを生成する少なくとも1つのクリッカをさらに含む。一例は、用量設定中にはハウジングに対して回転方向で拘束される駆動部材の対応する歯の上に載置された歯を有する、用量設定中に回転するクラッチプレートか、または用量投薬中に回転し、軸方向変位可能なロッキングアームなどの、ハウジングに対して回転方向で拘束された構成要素のクリッカアームと相互作用するドライバである。これらのフィードバック信号間で差異化を行うために、設定用量の投薬の終了時にのみ生成される第1のフィードバック(用量投薬フィードバックの末端部)は、さらなるフィードバックとは異なる。たとえば、異なる音が生成される。
【0037】
薬物送達デバイスは、薬剤を収容するカートリッジを含む。さらに、可動栓が、カートリッジ内に設けられる。本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、アンチハウジングもしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0038】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0039】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0040】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0041】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0042】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0043】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0044】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0045】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各アンチハウジングの基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0046】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0047】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類によりアンチハウジングのアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0048】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0049】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各アンチハウジングは、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各アンチハウジングにつき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0050】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与のアンチハウジングの固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0051】
「アンチハウジングフラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全アンチハウジングと本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0052】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0053】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0054】
以下、本発明の非限定的な例示の実施形態が、添付の図面を参照として説明される。