(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂組成物(a)は、該樹脂組成物(a)に含まれる全樹脂に基づいて、35〜45質量%の(メタ)アクリル樹脂及び65〜55質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の方法。
熱可塑性樹脂(b)及び(c)はそれぞれ、ポリカーボネート樹脂、並びに各熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる全樹脂に基づいて0.005〜2.0質量%の紫外線吸収剤を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、中間層(A)と、該中間層(A)の両側にそれぞれ存在する熱可塑性樹脂層(B)及び(C)とを少なくとも有する樹脂積層体を製造する方法であり、該中間層(A)は樹脂組成物(a)から形成され、該熱可塑性樹脂層(B)及び(C)はそれぞれ熱可塑性樹脂(b)及び(c)から形成される。
【0009】
該樹脂組成物(a)は(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂とを含む。
【0010】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリルモノマーの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリルモノマーの共重合体、(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマー以外のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0011】
(メタ)アクリル樹脂は、樹脂積層体の硬度、耐候性、透明性を高めやすい観点から、メタクリル樹脂であることが好ましい。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステル(メタクリル酸アルキル)を主体とする単量体の重合体であり、例えば、メタクリル酸エステルの単独重合体(ポリアルキルメタクリレート)、2種以上のメタクリル酸エステルの共重合体、50質量%以上のメタクリル酸エステルと50質量%以下のメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体などが挙げられる。メタクリル酸エステルとメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体としては、樹脂積層体の光学特性、耐候性を向上させやすい観点から、単量体の総量に対し、70質量%以上のメタクリル酸エステルと30質量%以下の他の単量体との共重合体が好ましく、90質量%以上のメタクリル酸エステルと10質量%以下の他の単量体との共重合体がより好ましい。
【0012】
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸エステル、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する単官能単量体が挙げられる。
【0013】
単官能単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等のスチレン単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアン化アルケニル;アクリル酸;メタクリル酸;無水マレイン酸;N−置換マレイミドなどが挙げられる。
【0014】
(メタ)アクリル樹脂には、耐熱性の観点より、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド及びメチルマレイミド等のN−置換マレイミドが共重合されていてもよいし、分子鎖中(重合体中の主骨格中又は主鎖中ともいう)にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、若しくはグルタルイミド構造等が導入されていてもよい。
【0015】
(メタ)アクリル樹脂は、樹脂積層体の硬度、耐候性、透明性を高めやすい観点から、具体的には、
(a1)メタクリル酸メチルの単独重合体、及び/又は
(a2)共重合体を構成する全構造単位に基づいて50〜99.9質量%、好ましくは70.0〜99.8質量%、より好ましくは80.0〜99.7質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位、及び、0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%の式(1):
【化2】
[式中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
1が水素原子のときR
2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R
1がメチル基のときR
2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。]
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1つの構造単位を含む共重合体であることが好ましい。ここで、各構造単位の含有量は、得られた重合体を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、各単量体に対応するピーク面積を測定することにより算出できる。
【0016】
式(1)において、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
1が水素原子のときR
2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R
1がメチル基のときR
2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。炭素数2〜8のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。R
2は、耐熱性の観点から、炭素数2〜4のアルキル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
【0017】
樹脂組成物(a)に含まれる(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと記すことがある。)は100,000〜300,000である。Mwが上記の下限より低いと、高温高湿環境下に暴露したときの樹脂積層体の透明性が十分でなく、Mwが上記の上限より高いと、樹脂積層体を製造する際の成膜性が得られない。(メタ)アクリル樹脂のMwは、高温高湿環境下に暴露したときの樹脂積層体の透明性を高めやすい観点から、120,000以上であることが好ましく、150,000以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂のMwは、樹脂積層体を製造する際の成膜性の観点から、250,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0018】
(メタ)アクリル樹脂は、3.8kg荷重、230℃で測定して、通常0.1〜20g/10分、好ましくは0.2〜5g/10分、より好ましくは0.5〜3g/10分のメルトマスフローレイト(以下、MFRと記すことがある。)を有する。MFRは上記の上限以下であることが、得られる膜の強度を高めやすいため好ましく、上記の下限以上であることが、樹脂積層体の成膜性の観点から好ましい。MFRは、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定することができる。ポリ(メタクリル酸メチル)系の材料については、温度230℃、荷重3.80kg(37.3N)で測定することが、このJISに規定されている。
【0019】
(メタ)アクリル樹脂は、耐熱性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらにより好ましくは102℃以上のビカット軟化温度(以下、VSTと記すことがある。)を有する。VSTの上限は、特に限定されないが、通常150℃以下である。VSTは、JIS K 7206:1999に準拠し、これに記載のB50法で測定することができる。VSTは、単量体の種類やその割合を調整することにより、上記の範囲に調整することができる。
【0020】
(メタ)アクリル樹脂は、上記の単量体を、懸濁重合、バルク重合等の公知の方法により重合させることにより、調製することができる。その際、適当な連鎖移動剤を添加することにより、MFR、Mw、VSTなどを好ましい範囲に調整することができる。連鎖移動剤は、適宜の市販品を使用することができる。連鎖移動剤の添加量は、単量体の種類やその割合、求める特性等に応じて適宜決定すればよい。
【0021】
樹脂組成物(a)に含まれるフッ化ビニリデン樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体が挙げられる。フッ化ビニリデン樹脂は、得られる膜の透明性を高めやすい観点から、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル及びエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体とフッ化ビニリデンとの共重合体、及び/又は、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)であることが好ましく、ポリフッ化ビニリデンであることがより好ましい。
【0022】
樹脂組成物(a)に含まれるフッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000〜500,000、より好ましくは150,000〜450,000、さらにより好ましくは200,000〜450,000、特に好ましくは350,000〜450,000である。Mwが上記の下限以上であることが、本発明の樹脂積層体を高温高湿の環境下(例えば60℃、相対湿度90%)に暴露したときに、樹脂積層体の透明性を高めやすいため好ましい。また、Mwが上記の上限以下であることが、樹脂積層体の成膜性を高めやすいため好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0023】
フッ化ビニリデン樹脂は、3.8kg荷重、230℃で測定して、好ましくは0.1〜40g/10分、より好ましくは0.1〜35g/10分、さらにより好ましくは0.1〜30g/10分のメルトマスフローレイト(MFR)を有する。MFRは、より好ましくは0.2g/10分以上であり、さらにより好ましくは0.5g/10分以上である。また、MFRは、より好ましくは20g/10分以下であり、さらにより好ましくは5g/10分以下であり、特に好ましくは2g/10分以下である。MFRが上記の上限以下であることが、樹脂積層体を長期間使用したときの透明性の低下を抑制しやすいため好ましい。MFRが上記の下限以上であることが、樹脂積層体の成膜性を高めやすいため好ましい。MFRは、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定することができる。
【0024】
フッ化ビニリデン樹脂は、工業的には、懸獨重合法又は乳化重合法により製造される。懸濁重合法は、水を媒体とし、単量体を分散剤で媒体中に液滴として分散させ、単量体中に溶解した有機過酸化物を重合開始剤として重合させることにより実施され、100〜300μmの粒状の重合体が得られる。懸濁重合物は、乳化重合物と比較し製造工程が簡単で、粉体の取扱性に優れ、また乳化重合物のようにアルカリ金属を含む乳化剤や塩析剤を含まないため好ましい。
【0025】
フッ化ビニリデン樹脂は、市販品を使用してもよい。好ましい市販品の例としては、(株)クレハの「KFポリマー(登録商標)T#1300、T#1100、T#1000、T#850、W#850、W#1000、W#1100及びW#1300」、Solvay社製の「SOLEF(登録商標)6012、6010及び6008」が挙げられる。
【0026】
樹脂組成物(a)は、樹脂組成物(a)に含まれる全樹脂に基づいて、10〜90質量%の前記(メタ)アクリル樹脂及び90〜10質量%の前記フッ化ビニリデン樹脂とを含む。(メタ)アクリル樹脂の量が上記の下限より低い場合、十分な透明性が得られず、(メタ)アクリル樹脂の量が上記の上限より高い場合、十分な誘電率が得られない。フッ化ビニリデン樹脂の量が上記の下限より低い場合、十分な誘電率が得られず、フッ化ビニリデン樹脂の量が上記の上限より高い場合、耐久性が得られなかったり、十分な透明性が得られない。
【0027】
樹脂組成物(a)は、誘電率を高め、樹脂積層体の透明性を高めやすい観点から、該樹脂組成物(a)に含まれる全樹脂に基づいて、30〜60質量%の(メタ)アクリル樹脂及び70〜40質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことが好ましく、35〜45質量%の(メタ)アクリル樹脂及び65〜55質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことがより好ましく、37〜45質量%の(メタ)アクリル樹脂及び63〜55質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことがさらにより好ましく、38〜45質量%の(メタ)アクリル樹脂及び62〜55質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことが特に好ましく、38〜43質量%の(メタ)アクリル樹脂及び62〜57質量%のフッ化ビニリデン樹脂を含むことが極めて好ましい。
【0028】
樹脂組成物(a)は、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂とは異なる他の樹脂をさらに含んでもよい。他の樹脂を含有する場合、樹脂積層体の透明性を著しく損なわない限り、その種類は特に限定されない。樹脂積層体の硬度及び耐候性の観点から、他の樹脂の量は、該樹脂組成物(a)に含まれる全樹脂に基づいて、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらにより好ましい。他の樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。樹脂組成物(a)が他の樹脂をさらに含んでもよいが、透明性の観点からは、他の樹脂の量は1質量%以下であることが好ましく、樹脂組成物(a)に含まれる樹脂が(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂のみであることがより好ましい。
【0029】
樹脂組成物(a)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的に用いられる各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤、重合抑制剤、難燃助剤、補強剤、核剤、ブルーイング剤等の着色剤などが挙げられる。
【0030】
着色剤としては、アントラキノン骨格を有する化合物、フタロシアニン骨格を有する化合物などを挙げることができる。これらの中でも、アントラキノン骨格を有する化合物が、耐熱性の観点から好ましい。
【0031】
樹脂組成物(a)が着色剤をさらに含む場合、着色剤の含有量は、目的、着色剤の種類等に応じて適宜選択することができる。着色剤としてブルーイング剤を用いる場合、その含有量は、ブルーイング剤を含有する樹脂組成物(a)に含まれる全樹脂に基づいて、0.01〜10ppm程度とすることができる。この含有量は、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、さらにより好ましくは0.1ppm以上であり、また、好ましくは7ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらにより好ましくは4ppm以下、特に好ましくは3ppm以下である。ブルーイング剤は、公知のものを適宜使用することができ、例えば、それぞれ商品名でマクロレックス(登録商標)ブルーRR(バイエル社製)、マクロレックス(登録商標)ブルー3R(バイエル社製)、Sumiplast(登録商標) Viloet B(住化ケムテックス社製)及びポリシンスレン(登録商標)ブルーRLS(クラリアント社製)、Diaresin Violet D、Diaresin Blue G、Diaresin Blue N(以上、三菱化学株式会社製)が挙げられる。
【0032】
紫外線吸収剤としては、特に限定されず、従来公知の種々の紫外線吸収剤を使用してよい。例えば、200〜320nm又は320〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤が挙げられる。具体的には、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤として、これらの紫外線吸収剤の1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用してよい。200〜320nmに吸収極大を有する少なくとも1種の紫外線吸収剤と、320〜400nmに吸収極大を有する少なくとも1種の紫外線吸収剤とを併用することも、より効果的に紫外線によるダメージを防御できる観点から好ましい。紫外線吸収剤として市販品を使用してもよく、例えばケミプロ化成株式会社製の「Kemisorb102」(2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−N-オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)(吸光度0.1)、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA−F70」(2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン)(吸光度0.6)、「アデカスタブLA−31、LA−31RG、LA−31G」(2,2′−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)(吸光度0.2)、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA−46」(2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ)フェノール)(吸光度0.05)又はBASFジャパン株式会社製の「チヌビン1577」(2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)(吸光度0.1)などが挙げられる。例示した紫外線吸収剤の吸光度は、クロロホルムに濃度が10mg/Lとなるように、紫外線吸収剤を溶解し、HITACHI製分光光度計U−4100にて380nmにおける数値を測定した。
【0033】
樹脂組成物(a)が紫外線吸収剤をさらに含む場合、各層における紫外線吸収剤の含有量は、目的、紫外線吸収剤の種類等に応じて適宜選択してよい。例えば、紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物(a)に含まれる全樹脂に基づいて、0.005〜2.0質量%程度とすることができる。紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらにより好ましくは0.03質量%以上である。また、紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。紫外線吸収剤の含有量が上記の下限以上であることが、紫外線吸収効果を高めやすい観点から好ましく、上記の上限以下であることが、樹脂積層体の色目(例えば黄色度YI)の変化を防止しやすいため好ましい。例えば上記市販品である「アデカスタブLA−31、LA−31RG、LA−31G」を上記の量で使用することが好ましい。
【0034】
樹脂組成物(a)におけるアルカリ金属の含有量は、樹脂組成物(a)に含まれる全樹脂に基づいて、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。樹脂組成物(a)におけるアルカリ金属の含有量が上記の上限以下であることが、樹脂積層体を高温高湿環境下で長期間使用したときの透明性の低下を抑制しやすいため好ましい。樹脂組成物(a)におけるアルカリ金属の含有量の下限値は0であり、樹脂積層体の透明性の低下を抑制しやすい観点からは、実質的に含まれないことが極めて好ましい。ここで、樹脂組成物(a)に含まれる(メタ)アクリル樹脂及び/又はフッ化ビニリデン樹脂中には、製造工程で使用した微量の乳化剤等が残留する。そのため、残留する乳化剤に由来してナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属が、例えば0.05ppm以上、樹脂組成物(a)に含まれる。特に樹脂組成物(a)に含まれる(メタ)アクリル樹脂及び/又はフッ化ビニリデン樹脂が乳化重合により得たものである場合、樹脂中に残留する乳化剤の量が多くなり、樹脂組成物(a)におけるアルカリ金属の含有量も高くなる。樹脂積層体の透明性の低下を抑制しやすい観点からは、樹脂組成物(a)に含まれる(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂として、アルカリ金属の含有量が少ない樹脂を使用することが好ましい。
【0035】
樹脂中のアルカリ金属の含有量を上記範囲内にするためには、樹脂の重合の際にアルカリ金属を含む化合物の使用量を減らすか、重合後の洗浄工程を増やしてアルカリ金属を含む化合物を除去すればよい。アルカリ金属の含有量は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)により求めることができる。誘導結合プラズマ質量分析法としては、例えば、測定するサンプルペレットを、高温灰化融解法、高温灰化酸溶解法、Ca添加灰化酸溶解法、燃焼吸収法、低温灰化酸溶解法などの適宜の方法により、サンプルを灰化し、これを酸に溶解にさせ、この溶解液を定容して誘導結合プラズマ質量分析法でアルカリ金属の含有量を測定すればよい。
【0036】
樹脂組成物(a)は、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂とを、通常、混練することにより得られる。混練は、例えば、150〜350℃の温度にて、10〜1000/秒の剪断速度で溶融混練する工程を含む方法により実施できる。
【0037】
溶融混練を行う際の温度は、150℃以上であることが、樹脂を十分に溶融し、混合性を向上することができるため好ましく、350℃以下であることが、樹脂の熱分解を抑制しやすいため好ましい。さらに、溶融混練を行う際の剪断速度が10/秒以上であることが、樹脂の混合性を向上することができるため好ましく、1000/秒以下であることが、樹脂の分解を抑制しやすいため好ましい。
【0038】
樹脂や添加剤等がより均質(又は均一)に混合された樹脂組成物(a)を得るために、溶融混練は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃の温度で行われ、好ましくは20〜700/秒、より好ましくは30〜500/秒の剪断速度で行われる。
【0039】
溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機や混練機を用いることができる。具体的には、例えば、一軸混錬機、多軸混練機(例えば二軸混練機等)、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミルなどが挙げられる。また、剪断速度を上記範囲内で大きくする場合には、高剪断加工装置等を使用してもよい。
【0040】
樹脂組成物(a)が添加剤を含有する場合、添加剤は樹脂組成物(a)に含まれる樹脂にあらかじめ含まれていてもよく、樹脂の溶融混練の際に添加してもよく、樹脂を溶融混練後に添加してもよく、樹脂組成物(a)を用いて樹脂積層体を作製する際に添加してもよい。
【0041】
溶融混練して得られた樹脂組成物(a)は、そのまま中間層(A)を形成するための工程に供してもよく、ペレット状、リング状、フレーク状、ハニカム状等の固形状又はパウダー状等に成形した後、中間層(A)を形成するための工程に供してもよい。なお、固形状には、慣用の方法、例えば、押出造粒機等を用いて成形してよい。
【0042】
熱可塑性樹脂層(B)及び(C)を形成する熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、成形加工性を高めやすい観点から、各熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる全樹脂に基づいて、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上の熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の量の上限は、100質量%である。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)と中間層(A)との接着性を高めやすい観点から、(メタ)アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、同一の熱可塑性樹脂を含んでもよいし、互いに異なる熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、同一の熱可塑性樹脂を含むことが、樹脂積層体の透明性を高める観点や反りを抑制しやすい観点から好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂(b)及び(c)にそれぞれ含まれる樹脂は、樹脂積層体の耐熱性の観点から、好ましくは100〜160℃、より好ましくは102〜155℃、さらにより好ましくは102〜152℃であるビカット軟化温度を有する。ここで、上記のビカット軟化温度は、熱可塑性樹脂が1種の樹脂を含む場合は、その樹脂のビカット軟化温度であり、熱可塑性樹脂が2種以上の樹脂を含む場合は、複数の樹脂の混合物のビカット軟化温度である。熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる樹脂のビカット軟化温度は、JIS K 7206:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」に規定のB50法に準拠して測定される。ビカット軟化温度は、ヒートディストーションテスター(例えば、株式会社安田精機製作所製「148−6連型」)を用いて測定することができる。測定は、各原料を3mm厚にプレス成形した試験片を用いて行ってよい。
【0044】
熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、熱可塑性樹脂層の強度や弾性等を高める目的で、熱可塑性樹脂以外の他の樹脂(例えばフィラーや樹脂粒子などの熱硬化性樹脂)をさらに含んでもよい。この場合、他の樹脂の量は、それぞれの熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる全樹脂に基づいて、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下である。他の樹脂の量の下限は0質量%である。
【0045】
熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的に用いられる各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。各熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる添加剤や割合の範囲等は樹脂組成物(a)に含まれる添加剤やその割合の範囲と同様であってよく、好ましい添加剤や割合の範囲も同様であってよい。
【0046】
熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、成形加工性が良好であり、中間層(A)との密着性を高めやすい観点から、好ましくは(メタ)アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂を含む。
【0047】
熱可塑性樹脂(b)及び(c)が(メタ)アクリル樹脂を含む本発明の一態様について以下に説明する。この態様において、熱可塑性樹脂(b)及び(c)はそれぞれ1種以上の(メタ)アクリル樹脂を含む。熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の表面硬度の観点から、それぞれの熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる全樹脂に基づいて好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上の(メタ)アクリル樹脂を含む。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂としては、樹脂組成物(a)に含まれる(メタ)アクリル樹脂について記載した樹脂が挙げられる。樹脂組成物(a)について記載した好ましい(メタ)アクリル樹脂は、特記しない限り、熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる(メタ)アクリル樹脂としても同様に好ましい。熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる(メタ)アクリル樹脂と、樹脂組成物(a)に含まれる(メタ)アクリル樹脂とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、成形加工性が良好であり、力学強度を高めやすい観点から、好ましくは50,000〜300,000であり、より好ましくは70,000〜250,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0050】
この態様において、熱可塑性樹脂(b)及び(c)はさらに、1種以上の(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでもよい。(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂と相溶する熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体(例えば電気化学工業製「レジスファイ」)やメタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体(例えばアルケマ製「アルトグラスHT121」)、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点から、JIS K 7206:1999に準拠して測定して好ましくは115℃以上、より好ましくは117℃以上、さらにより好ましくは120℃以上のビカット軟化温度を有することが好ましい。なお、耐熱性及び表面硬度の観点から、熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、実質的にフッ化ビニリデン樹脂を含まないことが好ましい。
【0051】
この態様において、熱可塑性樹脂(b)及び(c)からそれぞれ形成される熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の鉛筆硬度は、耐傷つき性を高める観点から、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがさらにより好ましい。
【0052】
次に、熱可塑性樹脂(b)及び(c)がポリカーボネート樹脂を含む本発明の別の一態様について以下に説明する。この態様において、熱可塑性樹脂(b)及び(c)はそれぞれ1種以上のポリカーボネート樹脂を含む。熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、耐衝撃性の観点から、それぞれの熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる全樹脂に基づいて好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上のポリカーボネート樹脂を含む。
【0053】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又は、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体が挙げられ、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0054】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0055】
これらは単独又は2種以上を混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0056】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0057】
上記ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂として、イソソルバイトと芳香族ジオールから合成されるポリカーボネートが挙げられる。該ポリカーボネートの例として、三菱化学製「DURABIO(商標登録)」が挙げられる。
【0058】
ポリカーボネート樹脂として市販品を使用してもよく、例えば、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製「カリバー(登録商標)301-4、301-10、301-15、301-22、301-30、301-40、SD2221W、SD2201W、TR2201」などが挙げられる。
【0059】
この態様において、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐衝撃性及び成形加工性を高めやすい観点から、好ましくは20,000〜70,000であり、より好ましくは25,000〜60,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。
【0060】
この態様において、熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれるポリカーボネート樹脂は、温度300℃及び荷重1.2kgの条件で測定して、好ましくは3〜120cm
3/10分、より好ましくは3〜80cm
3/10分、さらにより好ましくは4〜40cm
3/10分、特に好ましくは10〜40cm
3/10分のメルトボリュームレイト(以下、MVRとも言う。)を有する。MVRが上記の下限より高いと、流動性が十分高く、溶融共押出成形などにおいて成形加工しやすく、外観不良が生じにくいため好ましい。MVRが上記の上限より低いと、熱可塑性樹脂層の強度等の機械特性を高めやすいため好ましい。MVRは、JIS K 7210に準拠し、1.2kgの荷重下、300℃の条件にて測定することができる。
【0061】
この態様において、熱可塑性樹脂(b)及び(c)は、さらに、1種以上のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでよい。ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂と相溶する熱可塑性樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましく、芳香環又はシクロオレフィンを構造中に有するメタクリル樹脂がさらにより好ましい。熱可塑性樹脂(b)及び(c)がポリカーボネート樹脂及び上記の(メタ)アクリル樹脂を含有することが、熱可塑性樹脂(b)及び(c)からそれぞれ形成される熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の表面硬度を、ポリカーボネート樹脂のみを含む場合と比較してより高くすることができるため好ましい。
【0062】
本発明の別の一態様において、熱可塑性樹脂(b)及び(c)がそれぞれ、ポリカーボネート樹脂並びに各熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる全樹脂に基づいて0.005〜2.0質量%の紫外線吸収剤を含むことが、熱可塑性樹脂層の耐光性の観点から好ましい。
【0063】
熱可塑性樹脂(b)及び(c)が、2種以上の樹脂や添加剤等の成分を含む場合、各熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる樹脂や添加剤等を混合又は混練、好ましくは溶融混練して熱可塑性樹脂組成物(b)及び(c)を得てもよい。熱可塑性樹脂組成物(b)及び(c)は、そのまま熱可塑性樹脂層(B)及び(C)を形成するための工程に供してもよく、例えばペレット状、リング状、フレーク状、ハニカム状等の固形状又はパウダー状等に成形した後、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)を形成するための工程に供してもよい。固形状には、慣用の方法、例えば、押出造粒機等を用いて成形することができる。また、溶融温度、溶融混練に用いる機器等は、樹脂組成物(a)の溶融混練について上記に記載した温度、機器等と同じであってもよく、好ましい温度、機器等も同じであってもよい。
【0064】
なお、樹脂組成物(a)に含まれる樹脂及び添加剤の割合は、樹脂組成物(a)に含まれる樹脂を基準として記載したが、樹脂組成物(a)から中間層(A)が形成されるため、換言すれば、上述した樹脂組成物(a)に含まれる樹脂及び添加剤、並びにそれらの割合は、中間層(A)に含まれる樹脂及び添加剤、並びにそれらの割合でもある。アルカリ金属の含有量についても同じことがいえ、上述した樹脂組成物(a)に含まれるアルカリ金属量は、中間層(A)に含まれるアルカリ金属量ともいえる。また、熱可塑性樹脂(b)及び(c)についても同様に、上述した熱可塑性樹脂(b)及び(c)に含まれる樹脂及び添加剤、並びにそれらの割合は、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)に含まれる樹脂及び添加剤、並びにそれらの割合でもある。
【0065】
本発明の製造方法は、溶融された前記樹脂組成物(a)、前記熱可塑性樹脂(b)及び(c)から少なくとも形成される溶融樹脂積層体をダイから吐出して冷却する工程を含み、該工程において、吐出温度から100℃までの平均冷却速度が2.5℃/秒以上であることを特徴とする。このような冷却速度であると、得られる樹脂積層体の白濁を有効に防止することができ、透明性に優れた樹脂積層体が得られる。平均冷却速度が2.5℃/秒未満であると、溶融樹脂積層体に含まれる結晶性樹脂のフッ化ビニリデン樹脂が、溶融樹脂積層体の冷却中に結晶化(又は析出)し、樹脂積層体に白濁をもたらすと推定される。一方、平均冷却速度が2.5℃/秒以上であると、フッ化ビニリデン樹脂の結晶化速度よりも冷却速度が大きくなり、フッ化ビニリデン樹脂の結晶化前に溶融樹脂積層体が冷却固化するため、透明性に優れた樹脂積層体が得られると推定される。
【0066】
ダイから吐出した溶融樹脂積層体の吐出温度は、溶融樹脂積層体に含まれる樹脂の種類に応じて適宜選択でき、好ましくは220〜300℃、より好ましくは220〜290℃、さらに好ましくは230〜280℃であってよい。吐出温度が上記の上限値以上であると溶融された樹脂の分解が起こりやすく、上記の下限値以下であると、成形加工性が低下する。なお、吐出温度はダイの吐出口(又は吐出直後)における溶融樹脂積層体の温度を示す。
【0067】
溶融樹脂積層体の吐出温度から100℃までの平均冷却速度は、2.5℃/秒以上であり、好ましくは3.0℃/秒以上、より好ましくは3.5℃/秒以上、さらに好ましくは4.0℃/秒以上であってよい。平均冷却速度が上記値以上であると、冷却中のフッ化ビニリデン樹脂の結晶化(又は析出)をより有効に抑制できると推定され、樹脂積層体の透明性をより向上させることができる。また、溶融樹脂積層体の吐出温度から100℃までの平均冷却速度は、好ましくは25℃/秒以下、より好ましくは20℃/秒以下、さらにより好ましくは17℃/秒以下、特に好ましくは15℃/秒以下であってよい。平均冷却速度が上記値以下であると、急激に冷却されて樹脂積層体に歪みが残り、反りが生じるのを抑制することができる。このため、前記平均冷却速度が、好ましくは2.5〜25℃/秒、より好ましくは3〜20℃/秒、さらにより好ましくは3.5〜17℃/秒、特に好ましくは4〜15℃/秒であると、透明性に優れ、かつ反りの少ない、好ましくは反りのない樹脂積層体を得ることができる。なお、上記に示す平均冷却速度(℃/秒)は、溶融樹脂積層体の吐出温度(℃)から100(℃)を差し引いた値を、前記吐出温度から100℃になるまでに要した時間(秒)で割った値である。また、吐出温度はダイの吐出口(又は吐出直後)に温度計(例えば非接触温度計)を設置して測定することができ、樹脂が吐出温度から100℃になるまでに要した時間は、冷却装置(例えば冷却ロール)において溶融樹脂積層体が100℃になる箇所を温度計(例えば非接触温度計)等により見つけ、ダイの吐出口からその箇所までに要した時間を測定することにより求めることができる。例えば、実施例の方法等が例示できる。
【0068】
本発明における樹脂積層体の製造方法の一実施態様を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の製造方法により得られる樹脂積層体の製造装置の一例を示す概略図である。この製造装置により、中間層(A)と該中間層(A)の両側にそれぞれ存在する熱可塑性樹脂層(B)及び熱可塑性樹脂層(C)とを有する樹脂積層体が得られる。
図1に示されるように、樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)、及び熱可塑性樹脂(c)をぞれぞれ押出機2、1、3中で溶融混練し、溶融混練した樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)、及び熱可塑性樹脂(c)を3種3層分配型フィードブロック4に供給して3層構成となるように分配した後、マルチマニホールド型ダイ5のダイリップから、溶融された樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)、及び熱可塑性樹脂(c)から形成された溶融樹脂積層体6を吐出する。次いで、吐出した溶融積層体6を、第1冷却ロール7と第2冷却ロール8との間に挟み込み、第2冷却ロール8に巻き掛けながら第2冷却ロール8と第3冷却ロール9との間に挟み込んだ後、第3冷却ロール9に巻き掛けて冷却し、樹脂積層体10を製造する。
【0069】
樹脂組成物(a)を溶融する押出機2のシリンダー温度(又は樹脂組成物(a)の溶融温度)は、樹脂組成物(a)を溶融させやすく、混練性を高めるという観点から、例えば
230〜280℃、好ましくは230〜270℃であってよく、押出機1及び3のシリンダー温度(又は熱可塑性樹脂(b)及び(c)の溶融温度)は、熱可塑性樹脂(b)及び(c)を溶融させやすいという観点から、例えば、230〜290℃、好ましくは230〜270℃であってよい。また、押出機2中の樹脂組成物(a)の剪断速度は、混練性を高めるという観点から、例えば、10〜1000/秒、好ましくは10〜500/秒、より好ましくは10〜300/秒であってよく、押出機1、3中の熱可塑性樹脂(b)及び(c)の剪断速度は、樹脂の混練性を高めるという観点から、例えば10〜1000/秒、好ましくは10〜500/秒、より好ましくは10〜300/秒であってよい。なお、剪断速度は、スクリュー形状、スクリューの長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D)、スクリュー回転数等の条件を変更することにより制御することができる。
【0070】
押出機は一軸押出機又は多軸押出機(例えば二軸押出機等)であってもよい。また、ダイのリップ間隔は、通常、ダイの幅方向に列設されているチョークバーボルトの開閉により調節することができ、樹脂積層体10の厚みが後述する範囲内となるように、適宜調整すればよく、樹脂積層体10の厚みに対して、好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.1〜5倍となるように調整することができる。ダイのリップ間隔は一端から他端にわたって均一にしてもよいが、幅方向にわたって分布を持たせてもよい。例えば、両端のリップ感覚を中央部のリップ間隔よりも狭くすると、ドローレゾナンス現象をより効果的に抑制することができる。
【0071】
樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)及び(c)を溶融する押出機1〜3には、適宜、樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)及び(c)中の比較的大きな異物等をろ過、除去する為のスクリーンメッシュ;比較的小さな異物、ゲル等をろ過、除去する為のポリマーフィルター;押し出す樹脂組成物及び熱可塑性樹脂量を安定定量化する為のギアポンプ等を設けてもよい。
【0072】
フィードブロック4及びマルチマニホールド型ダイ5の温度は、溶融樹脂積層体の吐出温度を調整し、続く冷却過程における平均冷却速度を最適化することで樹脂積層体の透明性を高めるという観点から、例えば230〜280℃、好ましくは230〜270℃、より好ましくは240〜270℃であってよい。
【0073】
ダイ(マルチマニホールド型ダイ5)から吐出した溶融樹脂積層体6の吐出温度は、例えば上記に例示した吐出温度とすることができる。
【0074】
マルチマニホールド型ダイ5から吐出した溶融樹脂積層体6は、冷却ロール1〜3を介して冷却されて固化し、樹脂積層体10が得られる。この際に、溶融樹脂積層体の吐出温度から100℃までの平均冷却速度は、例えば上記に例示した平均冷却速度とすることができる。
【0075】
冷却ロールにより溶融樹脂積層体を冷却すると、溶融樹脂積層体の平均冷却速度を制御しやすく、安定して透明性に優れた樹脂積層体を得ることができる。
第1冷却ロール7、第2冷却ロール8及び第3冷却ロール9(以下、まとめて冷却ロールという場合がある)は、例えば、金属ロール、弾性ロール(又は金属弾性ロール)等であってよい。これらのロールは単独又は二種以上組み合わせて使用でき、例えば、3つの冷却ロールのうち少なくとも1つが弾性ロールであってもよく、好ましくは第1冷却ロール7及び第3冷却ロール9を弾性ロールとし、第2冷却ロール8を金属ロールとする構成であってもよい。
【0076】
金属ロールとしては、高剛性であれば特に限定されず、例えば、ドリルドロール、スパイラルロール等が挙げられる。金属ロールの表面状態は、特に限定されず、例えば、鏡面であってもよく、模様や凹凸等があってもよい。
【0077】
弾性ロールは、例えば、略円柱状の回転自在に設けられた軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され、樹脂積層体に接触する円筒形の金属製薄膜と、これら軸ロール及び金属製薄膜の間に封入された流体(例えば、水、オイル等)とからなり、この流体により弾性ロールは弾性を示す。該軸ロールは、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等からなる。該金属製薄膜は、例えば、ステンレス鋼などからなり、その厚みは2〜5mm程度であるのが好ましい。該金属製薄膜は、屈曲性や可撓性等を有しているのが好ましく、溶接継ぎ部のないシームレス構造であるのが好ましい。このような金属製薄膜を備えた金属弾性ロールは、耐久性に優れると共に、金属製薄膜を鏡面化すれば通常の鏡面ロールと同様の取り扱いができ、金属製薄膜に模様や凹凸を付与すればその形状を転写できるロールになるので、使い勝手がよい。
【0078】
冷却ロールの表面の形状は、平滑状であってもよく、凹凸(例えば、冷却ロールの両端部の外周部に段差部)があってもよい。
【0079】
第1冷却ロールと第2冷却ロール間、及び第2冷却ロールと第3冷却ロール間の隙間(ロールギャップ)を調整することにより、溶融樹脂積層体に加わる圧力(又は線圧)を設定でき、該圧力(又は線圧)は所望とする樹脂積層体の厚みに応じて適宜調整できる。
【0080】
好ましい態様では、冷却ロールの少なくとも1つに前記弾性ロールを使用する。この態様では、冷却ロールに挟み込まれた樹脂積層体にかかる歪みの蓄積が抑制され、衝撃が加えられても割れが発生しにくく、表面硬度に優れた樹脂積層体を製造することができる。
【0081】
冷却ロールの大きさは、例えば、外径が200〜1000mm、好ましくは250〜700mmであってよい。また、冷却ロールの表面温度は、溶融樹脂積層体のガラス転移温度(Th)に対して、(Th−20℃)≦Tr≦(Th+20℃)、好ましくは(Th−15℃)≦Tr≦(Th+10℃)、より好ましくは(Th−10℃)≦Tr≦(Th+5℃)の範囲とすることが好ましい。表面温度(Tr)が下限値以上であると、溶融樹脂積層体が急激に冷却されて樹脂積層体に歪みが残り、反りが生じるのを抑制することができ、上限値以下であると、平均冷却速度が不十分となり、得られる樹脂積層体に白濁が生じて透明性が低下するのを抑制できる。なお、溶融樹脂積層体のガラス転移温度(Th)としては、溶融樹脂積層体に含まれる樹脂のうち、最も高い樹脂を基準とする。
【0082】
本発明の一実施態様において、樹脂組成物(a)が(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂を含み、熱可塑性樹脂(b)及び(c)がそれぞれ(メタ)アクリル樹脂を含む場合、冷却ロールの表面温度は、例えば30〜130℃、好ましくは60〜130℃、より好ましくは80〜130℃、さらに好ましくは80〜120℃であってよい。
【0083】
また、本発明の別の実施態様において、樹脂組成物(a)が(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂を含み、熱可塑性樹脂(b)及び(c)がそれぞれポリカーボネート樹脂を含む場合、冷却ロールの表面温度は、例えば30〜160℃、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは80〜140℃であってよい。なお、樹脂のガラス転移温度(Th)は、ASTM D−648に準拠して測定することができる。
【0084】
各冷却ロールの表面温度は同じであってもよいが、平均冷却速度を上記範囲に制御しやすいという観点から、ダイから離れた冷却ロールほど、表面温度を低くすることが好ましい。すなわち、第1冷却ロール、第2冷却ロール、第3冷却ロールの順に表面温度が低くなるのが好ましい。
【0085】
樹脂積層体は、第3冷却ロール9に巻き掛けられた後、引取りロール(図示せず)で引き取られて巻き取られる。この引取りロールの引取速度、ダイリップから溶融樹脂積層体が吐出される吐出速度、前記冷却ロールの表面温度等を調整することにより前記平均冷却速度を制御することができる。また、樹脂積層体の厚みも引取速度や吐出速度を調整することにより制御できる。引取りロールの引取速度は、好ましくは0.5〜10m/分、より好ましくは1〜9m/分、さらに好ましくは1.5〜8m/分であってよい。
【0086】
図1に本発明の一実施態様を説明したが、本発明はこの実施態様に限定されない。
図1に示す製造方法では、押出機1台につき樹脂組成物(a)及び熱可塑性樹脂(b)及び(c)をそれぞれ投入して溶融混練しているが、フィードブロック等を介して、溶融樹脂積層体を形成可能であれば押出機の数は限定されない。例えば、熱可塑性樹脂(b)及び(c)が同一である場合、1つの押出機内で熱可塑性樹脂(b)及び(c)を溶融混練し、次いでフィードブロック等を介して2つに分けて、溶融樹脂積層体を形成してもよい。
【0087】
また、
図1に示す態様では、フィードブロックとマルチマニホールド型ダイを使用したが、他の慣用のダイ、例えば、T型ダイ、デュアルスロットダイ等のダイを使用してもよい。これらのダイは樹脂積層体を形成可能であれば、単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。例えば、フィードブロックとT型ダイとを組み合わせて使用してもよく、マルチマニホールド型ダイを単独で使用してもよい。
【0088】
各層を積層する方式は、溶融した樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)及び(c)をフィードブロックで3層構造に分配し、T型ダイに流入させて成形するダイ前積層方式であってもよく、溶融した樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)及び(c)をマルチマニホールドダイにそれぞれ別々に流入させてダイリップ手前で3層構成に成形するダイ内積層方式であってもよい。
【0089】
冷却ロールの数は、特に限定されず、例えば1〜10、好ましくは2〜5であってよい。また、冷却ロールが複数である場合、冷却ロールの大きさ、冷却ロールの種類(例えば、弾性ロール、金属ロール等)は、各冷却ロールにおいて同一又は異なっていてもよい。また、冷却ロールの配置は、
図1に示すような横配列型配置であってもよく、縦配列型配置又は傾斜配列型配置であってもよい。
【0090】
冷却ロール通過後に、ヒーターを設置して、シートの平均冷却速度を調整しても良い。
【0091】
好ましい実施態様として冷却ロールによる冷却方法を説明したが、前記溶融樹脂積層体を上記冷却速度で冷却可能であれば、冷却ロールを用いる方法とは別の慣用の冷却方法、例えば、冷風、水冷等による冷却方法を用いてもよい。
【0092】
本発明により得られる樹脂積層体は、上記のように製造した積層体を切り出して、例えば幅500〜3000mm、長さ500〜3000mmの大きさを有する樹脂積層体の形態で流通される。
【0093】
<樹脂積層体>
本発明の製造方法により得られる樹脂積層体は、樹脂積層体の膜厚の平均値が100〜2000μmであり、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の膜厚の平均値がそれぞれ10〜200μmであることが、樹脂積層体の透明性を高める観点や反りを抑制する観点から好ましい。
【0094】
本発明により得られる樹脂積層体の膜厚の平均値は、樹脂積層体の剛性の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらにより好ましくは300μm以上である。また、透明性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらにより好ましくは1000μm以下である。樹脂積層体の膜厚は、デジタルマイクロメータにより測定される。上記測定を樹脂積層体の10点において行った平均値を膜厚の平均値とする。
【0095】
本発明により得られる樹脂積層体において、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の膜厚の平均値は、表面硬度を高めやすい観点から、それぞれ、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらにより好ましくは50μm以上である。また、誘電率の観点からは、それぞれ、好ましくは200μm以下、より好ましくは175μm以下、さらにより好ましくは150μm以下である。熱可塑性樹脂層の膜厚の平均値の測定方法は、上記に述べたとおりである。
【0096】
本発明により得られる樹脂積層体において、中間層(A)の膜厚の平均値は、誘電率の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらにより好ましくは300μm以上である。また、透明性の観点から、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1200μm以下、さらにより好ましくは1000μm以下である。中間層(A)の膜厚の平均値は、熱可塑性樹脂層の膜厚の平均値の測定と同様の方法で測定することができる。
【0097】
本発明により得られる樹脂積層体は、目視で観察した場合に透明であることが好ましい。具体的には、本発明により得られる樹脂積層体は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定して好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらにより好ましくは90%以上の全光線透過率(Tt)を有する。全光線透過率の上限は100%である。60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露後の樹脂積層体がなお、上記の範囲の全光線透過率を有することが好ましい。
【0098】
本発明により得られる樹脂積層体は、60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露後の樹脂積層体を用いて、JIS K7136:2000に準拠して測定して、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.8%以下、さらにより好ましくは1.5%以下のヘーズ(曇価)を有する。また、本発明により得られる樹脂積層体は、60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露後の樹脂積層体を用いて、JIS Z 8722:2009に従って測定して、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下、さらにより好ましくは1.3以下の黄色度(Yellow Index:YI値)を有する。上記のヘーズ及び黄色度を有する本発明により得られる樹脂積層体は、高温高湿等の環境下で使用しても透明性を維持し、反りが生じにくく、黄色化を抑制しやすいことから好ましい。
【0099】
本発明により得られる樹脂積層体は、タッチパネル等の表示装置において使用するに十分な機能を得る観点から、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上、さらにより好ましくは4.1以上の誘電率を有する。誘電率の上限値は特に限定されないが、通常20である。誘電率は、本発明の樹脂積層体の中間層(A)に含まれるフッ化ビニリデン樹脂の種類や量を調整したり、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの高誘電率化合物を添加するにより、上記の範囲に調整することができる。誘電率は、JIS K 6911:1995に準拠し、樹脂積層体を23℃で相対湿度50%の環境下に24時間静置し、この環境下で自動平衡ブリッジ法にて、3V、100kHzで測定した値である。測定には、市販の機器を使用してよく、例えば、アジレント・テクノロジー株式会社製の「precision LCR meter HP4284A」を使用してよい。
【0100】
本発明により得られる樹脂積層体は、熱可塑性樹脂層(B)/中間層(A)/熱可塑性樹脂層(C)がこの順に積層された構成を少なくとも有していればよく、中間層(A)、熱可塑性樹脂層(B)及び(C)の他に、さらに、少なくとも1つの機能層を有してよい。機能層は、熱可塑性樹脂層(B)及び/又は(C)の、中間層(A)とは反対側の表面に存在することが好ましい。機能層としては、例えばハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層及び指紋防止層などが挙げられる。これらの機能層は、粘着剤層を介して樹脂積層体に積層されていてもよいし、コーティングにより積層されたコーティング層であってもよい。機能層として、例えば特開2013−86273号公報に記載されているような硬化被膜を用いてもよい。機能層は、例えば、ハードコート層、防眩層、帯電防止層及び指紋防止層からなる群から選択される少なくとも1つの機能層の片面又は両面に、コート法、スパッタ法、真空蒸着法等により反射防止層がさらにコーティングされた層であってもよいし、上記少なくとも1つの機能層の片面又は両面に反射防止性のシートが貼合された層であってもよい。これらの機能層を含む樹脂積層体の場合にも、上述した成形法、溶融押出成形法、溶液流延製膜法、熱プレス法、射出成形法などにより各層別々に作製し、これらを例えば粘着剤や接着剤を介して貼合することで製造してもよく、共押出成形法により積層一体化させることにより製造してもよい。
【0101】
機能層の厚みは、各機能層の目的に応じて適宜選択してよいが、機能を発現しやすい観点から好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらにより好ましくは5μm以上であり、機能層の割れを防止しやすい観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらにより好ましくは70μm以下である。
【0102】
本発明により得られる樹脂積層体は、さまざまな表示装置において使用することができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。本発明により得られる樹脂積層体はこれら表示装置において、例えば前面板又は透明電極として、好適に使用される。
【0103】
本発明により得られる樹脂積層体をタッチパネル等における透明電極として使用する場合、樹脂積層体の少なくとも一方の表面に透明導電膜を形成させて透明導電シートを製造し、該透明導電シートから透明電極を製造することができる。
【0104】
本発明により得られる樹脂積層体の少なくとも一方の表面に透明導電膜を形成させる方法としては、樹脂積層体の表面に透明導電膜を直接形成させてもよいし、予め透明導電膜が形成されたプラスチックフィルムを本発明の樹脂積層体の表面に積層させてもよい。
【0105】
予め透明導電膜が形成されたプラスチックフィルムのフィルム基材としては、透明なフィルムであって透明導電膜を形成することができる基材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアミド、これらの混合物又は積層物等が挙げられる。また、透明導電膜を形成させる前に、表面硬さの改良、ニュートンリングの防止、帯電防止性の付与などを目的として、上記フィルムにコーティングを施しておいてもよい。
【0106】
予め透明導電膜が形成されたフィルムを本発明の樹脂積層体の表面に積層する方法は、気泡等がなく、均一で、透明なシートが得られる方法であればいかなる方法でもよい。常温、加熱、紫外線又は可視光線により硬化する接着剤を使用して積層する方法を用いてもよいし、透明な粘着テープにより貼り合わせてもよい。
【0107】
透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法等が知られており、必要とする膜厚に応じて、これらの方法を適宜用いることができる。
【0108】
スパッタリング法の場合、例えば、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、必要により、基板に直流、交流、高周波等のバイアスを印加してもよい。透明導電膜に使用する透明導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)が好適である。
【0109】
また、透明導電膜を形成する方法として、透明導電性被膜を形成することができる各種の導電性高分子を含むコーティング剤を本発明の樹脂積層体の表面に塗布し、熱又は紫外線等の電離放射線を照射することによりコーティングを硬化させる方法等も適用できる。導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が知られており、これらの導電性高分子を用いることができる。
【0110】
透明導電膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、透明導電性の金属酸化物を使用する場合、通常50〜2000Å、好ましくは70〜000Åである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。
【0111】
透明導電シートの厚さは特に限定されるものではなく、ディスプレイの製品仕様の求めに応じた最適の厚さを選択することができる。
【0112】
本発明により得られる樹脂積層体をディスプレイパネル面板として使用し、本発明の樹脂積層体から製造した透明導電シートをタッチスクリーン等の透明電極として使用し、タッチセンサーパネルを製造することができる。具体的には、本発明により得られる樹脂積層体をタッチスクリーン用ウインドウシートとして使用し、透明導電シートを抵抗膜方式や静電容量方式のタッチスクリーンの電極基板として使用することができる。このタッチスクリーンを液晶表示装置や有機EL表示装置等の前面に配置することでタッチスクリーン機能を有する外付型のタッチセンサーパネルが得られる。
【0113】
本発明により得られる樹脂積層体は、例えば上述の表示装置、すなわち、本発明のより得られる樹脂積層体を含む表示装置に使用することができ、また、本発明により得られる樹脂積層体及び偏光板が積層された樹脂積層体付き偏光板、ならびに、該樹脂積層体付き偏光板を含む表示装置に使用することもできる。本発明により得られる樹脂積層体付き偏光板において、樹脂積層体は、例えば接着剤及び粘着剤などの光学粘接着剤を介して偏光板に積層されている。接着剤又は粘着剤としては、適宜公知のものを使用すればよい。
【0114】
図2に、本発明により得られる樹脂積層体を含む液晶表示装置の好ましい一形態を断面模式図で示す。本発明により得られる樹脂積層体10は、光学粘着層12を介して、偏光板11に積層され、この積層体は、液晶セル13の視認側に配置され得る。液晶セル13の背面側には、通常、偏光板11が配置される。液晶表示装置14は、このような部材から構成される。なお、
図2は、液晶表示装置の一例であり、本発明の表示装置はこの構成に限られるものではない。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0116】
〔ビカット軟化温度〕
JIS K 7206:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」に規定のB50法に準拠して測定した。ビカット軟化温度は、ヒートディストーションテスター〔(株)安田精機製作所製の“148−6連型”〕で測定した。その際の試験片は、各原料を3mm厚にプレス成形して測定を行った。
【0117】
〔アルカリ金属の含有量〕
誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。
【0118】
〔MFR〕
JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定した。ポリ(メタクリル酸メチル)系の材料については、温度230℃、荷重3.80kg(37.3N)で測定することが、このJISに規定されている。
【0119】
〔全光線透過率及びヘーズ〕
JIS K 7361-1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に準拠したヘーズ透過率計(株式会社村上色彩技術研究所製「HR-100」)で測定した。
【0120】
〔YI値〕
日本電色工業株式会社製の「Spectrophotometer SQ2000」で測定した。
【0121】
〔反りの評価〕
シート状の樹脂積層体を100mm×56mmの大きさにカットして、反り評価用試料を調製した。反り評価は、該試料の4端部をキーエンス社製高精度CCDマイクロメーターにて観察し、生じた反りの高さを測定し、4端部の反りの高さの平均値を算出して行った。
【0122】
〔製造例1〕
メタクリル酸メチル97.7質量部及びアクリル酸メチル2.3質量部を混合し、連鎖移動剤(オクチルメルカプタン)0.05質量部及び離型剤(ステアリルアルコール)0.1質量部を加えて単量体混合液を得た。また、メタクリル酸メチル100質量部に重合開始剤〔1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン〕0.036質量部を加えて開始剤混合液を得た。単量体混合液と開始剤混合液との流量比が8.8:1になるように完全混合型重合反応器に連続供給し、平均滞留時間20分、温度175℃で平均重合率54%まで重合し、部分重合物を得た。得られた部分重合物を200℃に加熱してベント付き脱揮押出機へ導き、240℃で未反応の単量体をベントから脱揮すると共に、脱揮後の重合体は溶融状態で押出し、水冷後、裁断してペレット状のメタクリル樹脂(i)を得た。
【0123】
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、以下に示す条件で熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルに対応する各ピーク面積を測定した。その結果、メタクリル樹脂(i)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が97.0質量%であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位が3.0質量%であった。
【0124】
(熱分解条件)
試料調製:メタクリル樹脂組成物を精秤(目安2〜3mg)し、樋状にした金属セルの中央部に入れ、金属セルを畳んで両端を軽くペンチで押さえて封入した。
熱分解装置:CURIE POINT PYROLYZER JHP-22(日本分析工業(株)製)
金属セル:Pyrofoil F590(日本分析工業(株)製)
恒温槽の設定温度:200℃
保温パイプの設定温度:250℃
熱分解温度:590℃
熱分解時間:5秒
【0125】
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
ガスクロマトグラフィー分析装置:GC−14B((株)島津製作所製)
検出方法:FID
カラム:7G 3.2m×3.1mmφ((株)島津製作所製)
充填剤:FAL−M((株)島津製作所製)
キャリアーガス:Air/N2/H2=50/100/50(kPa)、80ml/分
カラムの昇温条件:100℃で15分保持後、10℃/分で150℃まで昇温し、150℃で14分保持
INJ温度:200℃
DET温度:200℃
【0126】
上記熱分解条件でメタクリル樹脂組成物を熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a1)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b1)を測定した。そして、これらピーク面積からピーク面積比A(=b1/a1)を求めた。一方、メタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の質量比がW
0(既知)であるメタクリル樹脂の標準品を上記熱分解条件で熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a
0)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b
0)を測定し、これらピーク面積からピーク面積比A
0(=b
0/a
0)を求めた。そして、前記ピーク面積比A
0と前記質量比W
0とから、ファクターf(=W
0/A
0)を求めた。
前記ピーク面積比Aに前記ファクターfを乗じることにより、前記メタクリル樹脂組成物に含まれる共重合体におけるメタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の質量比Wを求め、該質量比Wから、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の合計に対するメタクリル酸メチル単位の比率(質量%)と前記合計に対するアクリル酸エステル単位の比率(質量%)を算出した。
【0127】
〔製造例2〕
メタクリル酸メチルを98.9質量部、アクリル酸メチル1.1質量部、連鎖移動剤を0.16質量部に変更した以外は、製造例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂(ii)を得、構造単位の含有量を測定した。メタクリル樹脂(ii)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が97.5質量%であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位が2.5質量%であった。
【0128】
製造例1及び2で得たメタクリル樹脂(i)及び(ii)の物性を表1に示す。
【表1】
【0129】
〔製造例3〕
ブルーイング剤をマスターバッチ(MB)化するために、製造例1で得たメタクリル樹脂(i)99.99質量部と、着色剤0.01質量部とをドライブレンドし、40mmφ一軸押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)で、設定温度250〜260℃で溶融混合させ、着色されたマスターバッチペレット(MB(i))を得た。着色剤としては、ブルーイング剤(住化ケムテックス株式会社製の「Sumiplast(商標登録)Violet B」)を使用した。
【0130】
実施例及び比較例において、次に示す市販品をフッ化ビニリデン樹脂として使用した。樹脂の物性を表2に示す。
フッ化ビニリデン樹脂(i):懸濁重合により製造されたポリフッ化ビニリデン
フッ化ビニリデン樹脂(ii):乳化重合により製造されたポリフッ化ビニリデン
【表2】
【0131】
フッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPCで測定した。GPCの検量線の作成には、ポリスチレンを標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、各樹脂の重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをN−メチルピロリドン(NMP)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置には、東ソー(株)製のカラムである「TSKgel SuperHM-H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。
【0132】
〔実施例1〕
メタクリル樹脂(i)39質量部、フッ化ビニリデン樹脂(i)60質量部とMB(i)1質量部となるようにそれぞれのフィーダーから予備タンク(1)へ供給し、その予備タンク内ではフィードされた樹脂が混合され、予備タンク(2)へ送られた。そこからホッパーへ投入され、46mmΦの2軸造粒機にて真空条件下で、バレル温度230℃、回転数270rpmにて、十分に溶融混練し、溶融樹脂をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断して、中間層(A)を形成するための樹脂組成物(a)のペレットを得た。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)を形成するための熱可塑性樹脂(b)及び(c)としては、表1に示すメタクリル樹脂(ii)を使用した。これらの樹脂組成物(a)、熱可塑性樹脂(b)及び(c)から、
図3に示す製造装置を用いて樹脂積層体を製造した。具体的には、樹脂組成物(a)を65mmφ一軸押出機16〔東芝機械株式会社製〕で、熱可塑性樹脂(b)及び(c)を45mmφ一軸押出機15及び17〔日立造船株式会社製〕で、それぞれ溶融させた。次いで、これらを設定温度230〜270℃の3種3層分配型フィードブロック18に供給し3層構造になるように分配した後、マルチマニホールド型ダイス19〔日立造船株式会社製、2種3層分配〕から押し出して、フィルム状の溶融樹脂積層体20を得た。なお、本実施例において、B層とC層は同一組成の層である。そして、得られたフィルム状の溶融樹脂積層体20を、対向配置した第1冷却ロール21(直径350mm)と第2冷却ロール22(直径450mm)との間に挟み込み、次いで第2ロール22に巻き掛けながら第2ロール22と第3ロール23との間に挟み込んだ後、第3冷却ロール23(直径450mm)に巻き掛け、さらに冷却ロール24及び25に巻きかけながら成形・冷却し、3層構成の樹脂積層体26を得た。得られた樹脂積層体26は目視で観察したところ無色透明であった。また、冷却ロールの設定温度、ライン速度(引取速度)、並びに樹脂積層体26の総膜厚及び各層の厚みを表3に示した。
【0133】
〔実施例2、
実施例3、
及び実施例5
(参考例)、
並びに比較例1〕
表3に示す冷却ロールの設定温度及びライン速度を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、表3に示す総膜厚及び各層の厚みを有する樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体は目視で観察したところ無色透明であった。
【0134】
〔実施例4〕
フッ化ビニリデン樹脂(i)60質量部に代えて、フッ化ビニリデン樹脂(ii)60質量部を使用し、表3に示す冷却ロールの設定温度及びライン速度を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、表3に示す総膜厚及び各層の厚みを有する樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体は目視で観察したところ無色透明であった。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例及び比較例の樹脂積層体の製造時に非接触温度計を用いて、
図3に示す4か所の温度を測定し、その冷却速度を計算した。
・測定箇所1:ダイ19から吐出してすぐの樹脂温度
・測定箇所2:第2冷却ロール22下
・測定箇所3:第3冷却ロール23上
・測定箇所4:第4冷却ロール24下
実施例1〜5及び比較例1の温度測定結果を表4に示す。各測定箇所間のシートの移送時間を表5に示す。表4に示す温度及び表5に示す搬送時間から各測定箇所間の平均冷却速度を算出した結果を表6に示す。また、シート(溶融樹脂積層体)が100℃になる箇所を非接触温度計等により見つけ、シート(溶融樹脂積層体)が測定箇所1から100℃になる箇所までに要した時間を表5に示し、この間の平均冷却速度を表6に示した。
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
実施例1〜5及び比較例1の樹脂積層体において、中間層(A)におけるアルカリ金属(Na及びK)含有量は、実施例1〜3、5及び比較例1では0.3ppmであり、実施例4では100ppmであった。
【0141】
実施例1〜5及び比較例1の樹脂積層体の外観を目視で評価した。また、実施例1〜5及び比較例1の樹脂積層体を用いて、全光線透過率(Tt)、ヘーズ(Haze)及び反りの評価を行った。さらに、実施例1〜3及び5の樹脂積層体を60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露して、耐久試験後の樹脂積層体についても同様に全光線透過率、ヘーズの評価を行った。また、実施例1〜5の樹脂積層体の誘電率も測定した。得られた結果を表7に示す。
【0142】
【表7】
実施例1〜5の樹脂積層体は優れた透明性を有することが確認された。特に実施例1〜4の樹脂積層体は成形後、ほとんど反りがないことも確認された。