【実施例】
【0025】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はここに示す実施例等によりなんら制限をうけるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
内径2.5cm、長さ60cmのカラムにH−モルデナイト(Si/Al原子比7.6 )を11cmの長さに充填した。用いた触媒は50mlである。このカラムに予め70重量%の硫酸溶液を満たし、40℃で約2時間触媒と接触させた。硫酸をカラムより流出させた後、次いで、88重量%の蟻酸水溶液を前記カラムの前段に設けた気化器を通して、130℃の蒸気として45g/hの速度で反応器上部に送り込んだ。反応は外部を加熱して130℃にて行った。この反応を8時間行い、その後、蟻酸水溶液の供給を止め、反応を停止した。反応停止時間は16時間とし、その間も触媒層の温度は130℃に保った。翌日、前日と同じ条件で反応を開始し、前日と同様8時間の反応を行った。この操作を2週間繰り返した。
【0027】
上記のように間欠的な反応を2週間続けた後、反応器下部より反応ガスを取り出して分析を行い、反応の転化率、選択率を決定した。蟻酸の転化率は未反応の蟻酸を定量することにより求め、一酸化炭素への選択率は生成する水素の量をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で定量することにより求めた。その結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化炭素への選択率99.99%以上で反応が進んでいた。
【0028】
得られた反応ガスを10%苛性ソーダ水溶液で洗浄して微量に含まれる二酸化炭素を除去し、さらに水で洗浄した。このガスをゼオライトに通して乾燥した。この結果99.99%以上の高純度の一酸化炭素が得られた。このガス中には不純物として水素が0.2ppm、メタンが0.4ppm含まれていた。また、2週間経過後の触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.02%の触媒由来の粉末を認めた。
【0029】
〔実施例2〕
実施例1と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて90分で60℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり47℃)。その後、触媒層の温度を60℃に保ち、翌日、所定の反応温度130℃まで90分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり47℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.02%の触媒由来の粉末を認めた。
【0030】
〔実施例3〕
実施例1と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり60℃)。その後、触媒層の温度を60℃に保ち、翌日、所定の反応温度130℃まで60分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり60℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.04%の触媒由来の粉末を認めた。
【0031】
〔実施例4〕
内径2.5cm、長さ60cmのカラムにH−モルデナイト(Si/Al原子比7.6 )を11cmの長さに充填した。用いた触媒は50mlである。このカラムに予め70重量%の硫酸溶液を満たし、40℃で約2時間触媒と接触させた。硫酸をカラムより流出させた後、次いで、88重量%の蟻酸水溶液を前記カラムの前段に設けた気化器を通して、140℃の蒸気として45g/hの速度で反応器上部に送り込んだ。反応は外部を加熱して140℃にて行った。この反応を8時間行い、その後、蟻酸水溶液の供給を止め、反応を停止した。反応停止時間は16時間とし、その間も触媒層の温度は140℃に保った。翌日、前日と同じ条件で反応を開始し、前日と同様8時間の反応を行った。この操作を2週間繰り返した。
【0032】
上記のように間欠的な反応を2週間続けた後、反応器下部より反応ガスを取り出して分析を行い、反応の転化率、選択率を決定した。蟻酸の転化率は未反応の蟻酸を定量することにより求め、一酸化炭素への選択率は生成する水素の量をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で定量することにより求めた。その結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化炭素への選択率99.99%以上で反応が進んでいた。
【0033】
得られた反応ガスを10%苛性ソーダ水溶液で洗浄して微量に含まれる二酸化炭素を除去し、さらに水で洗浄した。このガスをゼオライトに通して乾燥した。この結果99.99%以上の高純度の一酸化炭素が得られた。このガス中には不純物として水素が0.3ppm、メタンが0.4ppm含まれていた。また、2週間経過後の触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.03%の触媒由来の粉末を認めた。
【0034】
〔実施例5〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて90分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり47℃)。その後、触媒層の温度を70℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで90分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり47℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.03%の触媒由来の粉末を認めた。
【0035】
〔実施例6〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で80℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり60℃)。その後、触媒層の温度を80℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで60分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり60℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.05%の触媒由来の粉末を認めた。さらに、この操作を3ヶ月繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.01%の触媒由来の粉末を新たに認めた。
【0036】
〔実施例7〕
触媒のみH−ZSM−5に変更した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.02%の触媒由来の粉末を認めた。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて30分で60℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり140℃)。その後、触媒層の温度を60℃に保ち、翌日、所定の反応温度130℃まで30分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり140℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返すと、蟻酸の転化率が99.4%へと低下した。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で4%の触媒由来の粉末を認めた。
【0038】
〔比較例2〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり70℃)。その後、触媒層の温度を70℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで90分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり47℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返すと、蟻酸の転化率が99.4%へと低下した。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で2%の触媒由来の粉末を認めた。
【0039】
〔比較例3〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり70℃)。その後、触媒層の温度を70℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで60分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり70℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返すと、蟻酸の転化率が99.3%へと低下した。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で3%の触媒由来の粉末を認めた。
【0040】
上記の結果より、触媒に急激な温度変化を与えることは得策ではなく、触媒温度の変化速度を1時間あたり60℃以内に留めることにより、触媒の粉化は実用上問題にならない範囲に抑えられることが明らかとなった。
【0041】
蟻酸を予め鉱酸で修飾したゼオライト系触媒で分解して一酸化炭素を得るに際し、間欠運転を行う場合でも触媒の温度変化を1時間あたり60℃以内に管理することにより、触媒の熱的劣化を防止することに成功した。本発明の温度条件下で間欠運転を繰り返した場合、2週間の期間にわたって高転化率、高選択率を保持して反応を継続することができる。