特許第6396246号(P6396246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6396246
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】一酸化炭素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20180913BHJP
   B01J 29/18 20060101ALI20180913BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C01B32/40
   B01J29/18 M
   B01J29/40 M
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-67021(P2015-67021)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185891(P2016-185891A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】畑 啓之
(72)【発明者】
【氏名】田井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】横野 孝爾
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−7413(JP,A)
【文献】 特開2000−34115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/40
B01J 29/18
B01J 29/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蟻酸を加熱分解して一酸化炭素を製造する方法において、予め鉱酸で修飾したゼオライト系触媒を用いて110〜150℃の反応温度で蟻酸の加熱分解反応を間欠的に行い、かつ反応実施時および反応停止時を通して触媒の温度変化速度が1時間あたり60℃以内である、一酸化炭素の製造方法。
【請求項2】
前記反応停止時の触媒温度が前記反応実施時の触媒温度より0〜60℃低い温度範囲にある、請求項1に記載の一酸化炭素の製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライト系触媒が鉱酸により修飾されたH−モルデナイト又はH−ZSM−5である、請求項1または2に記載の一酸化炭素の製造方法。
【請求項4】
前記鉱酸が硫酸である、請求項1ないし3のいずれかに記載の一酸化炭素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一酸化炭素の製造方法に関する。さらに詳しくは、集積回路等の半導体製造分野で用いられる99.99%以上の純度を有する高純度一酸化炭素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度一酸化炭素の製造方法としては天然ガスを水蒸気改質して高濃度の一酸化炭素を発生させ、それらをさらに分離精製する方法、又は蟻酸を硫酸あるいは固体触媒を用いて分解、脱水し精製する方法等が知られている。精製工程を考慮すると蟻酸分解法の方が一酸化炭素を高い選択率で得られるために有利であるが、硫酸を用いて脱水反応を行った場合、反応で生成した水が硫酸濃度を下げるので、反応速度を維持するには多量の硫酸が必要となり、また硫酸を含む廃水の処理の面からも工業的には好ましい方法とはいえない。
【0003】
一方、固定触媒を用いて蟻酸を分解する方法は、前記の問題点は生じないものの、一酸化炭素の生成反応以外に水素と二酸化炭素を生成する副反応が起こる。すなわち、蟻酸の分解反応としては、生成物として一酸化炭素と水を与える反応(主反応)と、二酸化炭素と水素を与える反応(副反応)が知られている。高純度一酸化炭素を得る目的のためには、主反応のみが選択的に進むことが望まれる。この主反応のみを選択的に進行させる手段としては、例えば、特許文献1に開示されている。この方法によると、鉱酸で修飾したゼオライトを触媒とすると、反応温度110〜150℃で選択率よく主反応が進み、高純度の一酸化炭素を得ることができる。
【0004】
しかしながら、本反応に用いる鉱酸修飾ゼオライトは、反応を一定温度で行う場合には長時間安定であるが、触媒温度が変化する場合には触媒に物理的な破壊、すなわち粉化、が起こり、その結果触媒寿命が短くなる。この粉化は、たとえば反応器を昼間運転・夜間休止の条件とすると、その昼夜の温度差により触媒が急激に粉化していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3856872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、予め鉱酸で修飾したゼオライト系触媒を用いて蟻酸の加熱分解反応による一酸化炭素の製造方法において、間欠運転を行う場合でも触媒の熱的劣化を防止するのに適した製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、上記の粉化の原因を追求した結果、鉱酸修飾ゼオライトが加熱下に熱的に弱いわけではなく、鉱酸修飾ゼオライトは未修飾のゼオライトに比べて熱的な変化により壊れやすくなることが判明した。すなわち、本蟻酸分解触媒は触媒層温度の昇降により粉化が進み、触媒寿命が短くなる。
【0008】
そこで、本発明者らはこの問題を解決すべく鋭意検討した結果、触媒層を一定温度下に置いた場合、あるいは温度変化があってもその温度変化速度がある範囲よりも小さな場合には触媒が受けるダメージが低減できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、蟻酸を加熱分解して一酸化炭素を製造する方法において、予め鉱酸で修飾したゼオライト系触媒を用いて110〜150℃の反応温度で蟻酸の加熱分解反応を間欠的に行い、かつ反応実施時および反応停止時を通して触媒の温度変化速度が1時間あたり60℃以内である、一酸化炭素の製造方法である。
【0010】
好ましくは、前記反応停止時の触媒温度が前記反応実施時の触媒温度より0〜60℃低い温度範囲にある。
【0011】
好ましくは、前記ゼオライト系触媒が鉱酸により修飾されたH−モルデナイト又はH−ZSM−5である。
【0012】
好ましくは、前記鉱酸が硫酸である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0014】
本発明において用いられるゼオライト系触媒としてはH−モルデナイト、H−ZSM−5、クリノプチロライト等を挙げることができ、なかでもH−モルデナイトおよびH−ZSM−5は耐酸性に優れているので本発明の目的に適した触媒である。これらのゼオライト系触媒は、市販品をそのまま使用することができる。本発明で用いるH−モルデナイト触媒としては、Si/Al原子比が約5〜約30であれば特に限定されず、天然モルデナイト、合成モルデナイトのいずれもが使用可能である。例えば、Si/Al原子比は天然物で約5、合成品で約5〜約30程度であり、いずれの比率でも触媒として用いることができる。Si/Al原子比が約5より小さいと、触媒活性が低下する傾向が生ずるため好ましくなく、約30より大きいと触媒調製が繁雑となり経済的に不利となる傾向がある。
【0015】
H−モルデナイトは通常モルデナイトを1規定程度の塩酸で処理して得られる。H−モルデナイト自体も蟻酸の分解活性を有しているがその活性が十分に発揮されるには200℃以上の高温が必要である。本発明では、H−モルデナイトを高濃度の鉱酸で修飾することにより、比較的低い温度でも反応速度と反応の選択率の両面において十分な成績が得られ、水素やメタンの生成も抑えられるという本発明の効果が達成される。
【0016】
本発明で用いることのできる鉱酸としては、硫酸、塩酸、燐酸等を挙げることができ、なかでも価格と廃水処理の容易さの点から硫酸を好適に用いることができる。鉱酸の濃度は特に限定されるものではないが、通常30〜98重量%、好ましくは50〜80重量%で処理すればよい。鉱酸の濃度が30重量%より低いと一酸化炭素の生成活性が低くなり本発明の目的の達成が困難となる。
【0017】
本発明において、ゼオライト系触媒を予め鉱酸で修飾する方法としては、例えば、ゼオライト系触媒をその使用に先立って30〜98重量%の硫酸ないし硫酸水溶液中に20〜50℃で0.5〜24時間浸漬する方法、又はゼオライト系触媒を充填したカラムに30〜98重量%の硫酸水溶液を満たし、20〜50℃で0.5〜24時間放置した後硫酸水溶液を流出させる方法等が挙げられる。鉱酸として塩酸又は燐酸を使用する場合は、上記の硫酸の代わりに10〜37重量%の塩酸又は30〜98重量%の燐酸を使用することができる。
【0018】
本発明において用いられる蟻酸は市販品(例えば、広栄株式会社製)をそのまま使用することができる。使用時の蟻酸の濃度は特に限定されるものではないが、40〜100重量%の蟻酸ないし蟻酸水溶液を用いると効率的に反応を行うことができる。濃度が40重量%未満となると、蟻酸以外の残りの部分は水であるため、加熱に多量のエネルギーを要するので得策ではない。
【0019】
本発明における反応は気化した蟻酸を前記のように予め鉱酸で修飾した触媒と接触させ、加熱分解することにより行う。反応器としては反応釜や触媒を充填した塔が用いられる。触媒と蟻酸を反応釜に仕込み、加熱することにより一酸化炭素を発生させてもよいが、反応効率を考慮すると触媒を充填した塔に蟻酸の蒸気を通気する方が好ましい。この場合、1塔式の反応器に蟻酸を通してもよいし、多管式の反応器を用いてもよい。特に、多管式の反応器ではガス通の片流れが防止でき、さらに加熱のための伝熱面積を確保できるので好ましい。
【0020】
本触媒を用いる反応は比較的低温で進み、反応温度は通常、110〜150℃、好ましくは120〜150℃である。反応温度が110℃未満になると反応が進み難くなり、転化率が低くなるので好ましくなく、150℃を越えると副反応が生じ、一酸化炭素中の水素及びメタン濃度が高くなる傾向が現れるので好ましくない。
【0021】
本発明で用いる反応器の材質としては、蟻酸および一酸化炭素で腐食を受けず、かつ、反応に影響を及ぼさないものが求められるが、その要件を満たすものとして炭素等の非金属材料を好適に用いることができる。また、110〜150℃の比較的低温で反応が進行するため、グラスライニングによる機器の使用が可能である。
【0022】
本反応の一例として、H−モルデナイトを硫酸処理した修飾ゼオライト触媒を用いて140℃の温度で反応を行うと、1ヶ月間の連続運転でも触媒は粉化することなく、触媒活性を保った。一方、同温度で昼間8時間運転し、その後、触媒層の温度を1時間で70℃まで低下(温度変化速度は1時間あたり70℃)させ、その後、反応器は翌朝までそのままの状態とし、次の朝、再度触媒槽の温度を1時間かけて室温付近から140℃まで約1.5時間かけて昇温(温度変化速度は1時間あたり47℃)させた後、反応を開始するという操作を2週間続けると触媒に粉化が見られた。
【0023】
また、この知見の応用として、運転休止時においても、触媒層の温度を反応時の温度と同じままにしても、触媒は粉化することなくその活性を保った。
【0024】
本反応で得られた一酸化炭素中には不純物として水および極微量の水素、二酸化炭素およびメタンが含まれている。本発明の方法に従った触媒層の温度管理をすることにより微量不純物の生成量に変化は認められなかった。このガスにさらに精製工程を加えて高純度の一酸化炭素を得る方法としては、公知の方法の組み合わせを用いることが可能である。その一例として、薄い苛性ソーダで洗浄して、微量に残存する未反応の蟻酸と二酸化炭素を取り除いた後、乾燥して水を取り除き、高純度の一酸化炭素を得る方法が挙げられる。このようにして得られる一酸化炭素の純度は99.99%以上であり、半導体製造分野のみならず種々の用途に利用可能である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はここに示す実施例等によりなんら制限をうけるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
内径2.5cm、長さ60cmのカラムにH−モルデナイト(Si/Al原子比7.6 )を11cmの長さに充填した。用いた触媒は50mlである。このカラムに予め70重量%の硫酸溶液を満たし、40℃で約2時間触媒と接触させた。硫酸をカラムより流出させた後、次いで、88重量%の蟻酸水溶液を前記カラムの前段に設けた気化器を通して、130℃の蒸気として45g/hの速度で反応器上部に送り込んだ。反応は外部を加熱して130℃にて行った。この反応を8時間行い、その後、蟻酸水溶液の供給を止め、反応を停止した。反応停止時間は16時間とし、その間も触媒層の温度は130℃に保った。翌日、前日と同じ条件で反応を開始し、前日と同様8時間の反応を行った。この操作を2週間繰り返した。
【0027】
上記のように間欠的な反応を2週間続けた後、反応器下部より反応ガスを取り出して分析を行い、反応の転化率、選択率を決定した。蟻酸の転化率は未反応の蟻酸を定量することにより求め、一酸化炭素への選択率は生成する水素の量をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で定量することにより求めた。その結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化炭素への選択率99.99%以上で反応が進んでいた。
【0028】
得られた反応ガスを10%苛性ソーダ水溶液で洗浄して微量に含まれる二酸化炭素を除去し、さらに水で洗浄した。このガスをゼオライトに通して乾燥した。この結果99.99%以上の高純度の一酸化炭素が得られた。このガス中には不純物として水素が0.2ppm、メタンが0.4ppm含まれていた。また、2週間経過後の触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.02%の触媒由来の粉末を認めた。
【0029】
〔実施例2〕
実施例1と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて90分で60℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり47℃)。その後、触媒層の温度を60℃に保ち、翌日、所定の反応温度130℃まで90分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり47℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.02%の触媒由来の粉末を認めた。
【0030】
〔実施例3〕
実施例1と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり60℃)。その後、触媒層の温度を60℃に保ち、翌日、所定の反応温度130℃まで60分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり60℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.04%の触媒由来の粉末を認めた。
【0031】
〔実施例4〕
内径2.5cm、長さ60cmのカラムにH−モルデナイト(Si/Al原子比7.6 )を11cmの長さに充填した。用いた触媒は50mlである。このカラムに予め70重量%の硫酸溶液を満たし、40℃で約2時間触媒と接触させた。硫酸をカラムより流出させた後、次いで、88重量%の蟻酸水溶液を前記カラムの前段に設けた気化器を通して、140℃の蒸気として45g/hの速度で反応器上部に送り込んだ。反応は外部を加熱して140℃にて行った。この反応を8時間行い、その後、蟻酸水溶液の供給を止め、反応を停止した。反応停止時間は16時間とし、その間も触媒層の温度は140℃に保った。翌日、前日と同じ条件で反応を開始し、前日と同様8時間の反応を行った。この操作を2週間繰り返した。
【0032】
上記のように間欠的な反応を2週間続けた後、反応器下部より反応ガスを取り出して分析を行い、反応の転化率、選択率を決定した。蟻酸の転化率は未反応の蟻酸を定量することにより求め、一酸化炭素への選択率は生成する水素の量をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で定量することにより求めた。その結果、蟻酸の転化率99.9%、一酸化炭素への選択率99.99%以上で反応が進んでいた。
【0033】
得られた反応ガスを10%苛性ソーダ水溶液で洗浄して微量に含まれる二酸化炭素を除去し、さらに水で洗浄した。このガスをゼオライトに通して乾燥した。この結果99.99%以上の高純度の一酸化炭素が得られた。このガス中には不純物として水素が0.3ppm、メタンが0.4ppm含まれていた。また、2週間経過後の触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.03%の触媒由来の粉末を認めた。
【0034】
〔実施例5〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて90分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり47℃)。その後、触媒層の温度を70℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで90分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり47℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.03%の触媒由来の粉末を認めた。
【0035】
〔実施例6〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で80℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり60℃)。その後、触媒層の温度を80℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで60分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり60℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.05%の触媒由来の粉末を認めた。さらに、この操作を3ヶ月繰り返したが、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.01%の触媒由来の粉末を新たに認めた。
【0036】
〔実施例7〕
触媒のみH−ZSM−5に変更した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、反応の転化率と選択率に変化は認められなかった。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で0.02%の触媒由来の粉末を認めた。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて30分で60℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり140℃)。その後、触媒層の温度を60℃に保ち、翌日、所定の反応温度130℃まで30分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり140℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返すと、蟻酸の転化率が99.4%へと低下した。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で4%の触媒由来の粉末を認めた。
【0038】
〔比較例2〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり70℃)。その後、触媒層の温度を70℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで90分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり47℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返すと、蟻酸の転化率が99.4%へと低下した。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で2%の触媒由来の粉末を認めた。
【0039】
〔比較例3〕
実施例4と同じ条件での反応を8時間行い、その後、触媒層は水冷にて60分で70℃まで冷却した(温度変化速度は1時間あたり70℃)。その後、触媒層の温度を70℃に保ち、翌日、所定の反応温度140℃まで60分で昇温し(温度変化速度は1時間あたり70℃)、反応を開始した。反応を停止し、その後触媒層の冷却・一定温度維持・昇温を経て反応を再開するまでの時間(反応停止時間)は、16時間であった。この操作を2週間繰り返すと、蟻酸の転化率が99.3%へと低下した。触媒を取り出して20メッシュの篩で篩うと、篩い下に重量で3%の触媒由来の粉末を認めた。
【0040】
上記の結果より、触媒に急激な温度変化を与えることは得策ではなく、触媒温度の変化速度を1時間あたり60℃以内に留めることにより、触媒の粉化は実用上問題にならない範囲に抑えられることが明らかとなった。
【0041】
蟻酸を予め鉱酸で修飾したゼオライト系触媒で分解して一酸化炭素を得るに際し、間欠運転を行う場合でも触媒の温度変化を1時間あたり60℃以内に管理することにより、触媒の熱的劣化を防止することに成功した。本発明の温度条件下で間欠運転を繰り返した場合、2週間の期間にわたって高転化率、高選択率を保持して反応を継続することができる。