特許第6397058号(P6397058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397058洗浄性に優れたアクリル系エマルジョン粘着剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397058
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】洗浄性に優れたアクリル系エマルジョン粘着剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20180913BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180913BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20180913BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20180913BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J133/06
   C09J7/30
   C08F265/06
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-572824(P2016-572824)
(86)(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公表番号】特表2017-530203(P2017-530203A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】KR2015007436
(87)【国際公開番号】WO2016027993
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年9月22日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0106885
(32)【優先日】2014年8月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・スプ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スンジョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】コン・ジュ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】クムヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウォン・ハ
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/104055(WO,A1)
【文献】 特開2010−007045(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/058199(WO,A1)
【文献】 特開2011−153198(JP,A)
【文献】 特表2005−533888(JP,A)
【文献】 特開2011−173965(JP,A)
【文献】 特開平08−319467(JP,A)
【文献】 特開2008−231377(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073840(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/090426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08F 265/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系単量体混合物の全重量を基準として、1〜10重量%のアクリル系単量体混合物が無乳化重合されたシード(seed)、及び90〜99重量%のアクリル系単量体混合物が乳化重合されたアクリル系エマルジョン樹脂を含んでおり、前記シードは、アクリル系エマルジョン樹脂によって包まれていることを特徴とする、アクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項2】
前記シードは、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として1〜5重量%のアクリル系単量体混合物が無乳化重合されたことを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項3】
前記アクリル系単量体混合物は、i)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、ii)アリルエステル、ビニルエステル、不飽和アセテート及び不飽和ニトリルからなる群から選択される1種以上の単量体、iii)不飽和カルボン酸及び水酸基含有不飽和単量体からなる群から選択される1種以上の単量体、及びiv)架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項4】
前記アクリル系単量体混合物は、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として、i)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体60〜90重量%、ii)アリルエステル、ビニルエステル、不飽和アセテート及び不飽和ニトリルからなる群から選択される1種以上の単量体5〜35重量%、iii)不飽和カルボン酸及び水酸基含有不飽和単量体からなる群から選択される1種以上の単量体0.5〜5重量%、及びiv)架橋剤0.1〜3重量%を含むことを特徴とする、請求項3に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項5】
前記i)の単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項6】
前記i)の単量体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体の全重量を基準として、2−エチルヘキシルアクリレート60〜80重量%及びブチルアクリレート20〜40重量%の混合物からなることを特徴とする、請求項5に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項7】
前記ii)の単量体は、酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項8】
前記iii)の単量体は、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項9】
前記iv)の架橋剤は、5〜15個のアルキレンオキシド基を含み、アクリレート基又はビニル基を有する化合物であることを特徴とする、請求項3に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項10】
前記架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート及びポリプロピレングリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項9に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項11】
前記シードの粒子サイズは100〜300nmであることを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項12】
前記アクリル系エマルジョン粘着剤の粒子サイズは300〜800nmであることを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項13】
前記アクリル系エマルジョン粘着剤の95%以上の粒子は、平均粒子サイズの±10%の粒子分布を有することを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項14】
前記アクリル系エマルジョン粘着剤の粒子は、変動係数が0.01〜0.1であることを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤。
【請求項15】
請求項1に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法であって、
(A)i)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体60〜90重量%、ii)アリルエステル、ビニルエステル、不飽和アセテート及び不飽和ニトリルからなる群から選択される1種以上の単量体5〜35重量%、iii)不飽和カルボン酸及び水酸基含有不飽和単量体からなる群から選択される1種以上の単量体0.5〜5重量%、及びiv)架橋剤0.1〜3重量%を混合してアクリル系単量体混合物を製造する過程と、
(B)前記アクリル系単量体混合物の全重量を基準として1〜10重量%のアクリル系単量体混合物を反応器に投入し、開始剤を添加して無乳化重合させることによってシードを製造する過程と、
(C)別途に、前記アクリル系単量体混合物の全重量を基準として90〜99重量%のアクリル系単量体混合物を含むプレエマルジョン溶液を製造する過程と、
(D)前記シードが製造された反応器に前記プレエマルジョン溶液及び開始剤を添加した後、乳化重合してアクリル系エマルジョン粘着剤を製造する過程と
を含むことを特徴とする、アクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法。
【請求項16】
前記開始剤は、アンモニウム又はアルカリ金属の過硫酸塩、過酸化水素、ペルオキシド、及びヒドロペルオキシドからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項15に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法。
【請求項17】
前記シードの粒子サイズは100〜300nmであることを特徴とする、請求項15に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法。
【請求項18】
前記プレエマルジョン溶液は、水、電解質及び界面活性剤をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載のアクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法。
【請求項19】
請求項1乃至14のいずれかに記載のアクリル系エマルジョン粘着剤を粘着用フィルム又はシート上に適用して粘着剤層を形成する、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄性に優れたアクリル系エマルジョン粘着剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤(Pressure−Sensitive Adhesive、PSA)は、小さな圧力で被着剤に接着する性質を有する半固体状態の物質であって、接着剤とは異なる粘弾性的な物質で、初期粘着力、粘着力、凝集力の基本的な性質を有しており、製品の商標、広告はもちろん印刷、化学、医薬品、家電製品、自動車、文具などのほとんどの産業分野で使用されている。
【0003】
前記粘着剤は、製造時に用いられる単量体によってアクリル系、ゴム系、シリコン系、EVA系などに分類することができ、形態によって溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型などに分類することができる。
【0004】
過去、粘着テープと粘着ラベルなどに使用されていた粘着剤のほとんどは、ゴム系粘着剤又は溶剤型粘着剤であったが、環境に優しい粘着剤に対する需要が増加するに伴い、無溶剤型粘着剤に関する関心と技術開発が進み、現在は、無溶剤型粘着剤の開発及び生産量が大きく増加しており、今後も持続的に増加する趨勢である。このような無溶剤型粘着剤は、代表的に水系エマルジョン重合法によって重合される。
【0005】
水系エマルジョン粘着剤は、粘着剤の粘度と分散体ポリマーの分子量とが無関係であるので、溶剤系ポリマーに比べて高分子量を有するポリマーを用いることができ、固形分の濃度範囲を広範囲に得ることができ、耐老化性が小さく、低粘度、低固形分領域での粘着性が良好であり、他のポリマーとの相溶性が良いという利点を有している。
【0006】
しかし、水を溶剤として用いるため、乾燥速度が遅く、疎水性の粘着面、非多孔質の被着剤に対する粘着性が低く、硬化剤の選択範囲が狭く、初期粘着力が低下するという問題を有するだけでなく、乳化剤及び分散剤を含んでいるため耐水性が低いなど、油性粘着剤ほどの物性に至ることができないなどの問題を有している。
【0007】
一方、アクリル系エマルジョン粘着剤の樹脂を製造する重合方法は、溶液型と乳化重合型とに分けられる。
【0008】
そのうち溶液型は、重合の反応条件の調節が容易であり、均一な重合体を効率よく製造できるという利点を有しているが、溶媒を使用するため、重合体の分子量は他の重合法に比べて低く、また、重合速度も遅く、溶媒による連鎖移動が不可避であるため、可能な限り連鎖移動の誘発が少ない溶媒を使用しなければならないなどの制限が多い。
【0009】
一方、乳化重合型は、水に対する親和力が大きいため経済的であり、後処理工程が不要であり、数時間内に反応が終結し、転化率もほぼ100%に近いため、アクリル系エマルジョン粘着剤は、主に溶液型の代わりに乳化重合型を通じて製造されている。
【0010】
しかし、前記乳化重合型によって合成された水系エマルジョン粘着剤は、粒子のサイズが非常に大きいか又は小さい場合に安定性が不足するため、凝集物を多く発生させて物性の低下をもたらすなどの問題がある。
【0011】
また、最近は、不足している資源の再利用及び環境に配慮した製品に対する要求が高まっているところ、このような前記水系エマルジョン粘着剤、アクリル系エマルジョン粘着剤を使用して粘着用フィルム又はシートを作製し、使用した後、前記被着剤を再利用するためには、フィルム又はシートを被着剤から除去する追加工程が必ず必要であるが、現在、前記除去にかなりの時間がかかるだけでなく、初めから被着剤自体の再利用が不可能であるという問題がある。したがって、前記フィルム又はシートを被着剤から完全に除去し、これによる所要時間を低減するために、洗浄性もまた、粘着性ほどの優れた効果に対する要求が高い。
【0012】
しかし、前記乳化重合型によって合成された一般的な水系エマルジョン粘着剤は、粒子のサイズが小さいか、または粒子の分布が非常に広いため、洗浄が難しく、結論的に、全体的な洗浄性の低下をもたらすなどの問題を引き起こす。
【0013】
したがって、優れた粘着物性を示すと共に、洗浄性に優れたアクリル系エマルジョン粘着剤の技術に対する必要性が高い実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0015】
本出願の発明者らは、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、アクリル系単量体混合物が無乳化重合されたシード(seed)を先に製造し、これと共にアクリル系単量体混合物を混合、乳化重合させてアクリル系エマルジョン粘着剤を製造する場合、アクリル系エマルジョン粘着剤の最終粒子が適当な大きさを有し、均一であるため、優れた粘着物性を有すると共に、水で洗浄が容易であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明に係るアクリル系エマルジョン粘着剤は、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として、1〜10重量%のアクリル系単量体混合物が無乳化重合されたシード(seed)、及び90〜99重量%のアクリル系単量体混合物が乳化重合されたアクリル系エマルジョン樹脂を含んでおり、前記シードは、アクリル系エマルジョン樹脂によって包まれていることを特徴とする。
【0017】
本明細書で使用された用語、“単量体混合物”は、アクリル系単量体をベースとして、以下で説明する単量体が共に混合された状態で投入されて製造されてもよく、前記単量体が順次投入されて製造されてもよいなどの多様性を含む。
【0018】
前記“無乳化重合”は、界面活性剤を使用せず、親水性開始剤で水相で重合するものであって、懸濁重合と呼ぶこともできる。
【0019】
前記単量体混合物は、一部が前記シードを製造するために使用され、残りの単量体は、以降、シード上に形成されるアクリル系エマルジョン樹脂を製造するのに使用される。このとき、前記シードを製造するためには、前記で言及したように、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として1〜10重量%のアクリル系単量体混合物が使用されてもよく、詳細には、1〜5重量%のアクリル系単量体混合物が使用されてもよい。
【0020】
前記範囲を外れ、1重量%未満のアクリル系単量体混合物のみを使用してシードを無乳化重合する場合、シードを別途に製造することによる所望の効果を得ることができないため、最終粒子が過度に大きくなってしまい、安定性が不足するため、凝集物が多く発生するという問題があり、10重量%を超えて使用する場合には、シードの製造時に安定性が悪くなり、凝集物が多く発生すると同時に、最終粒子のサイズがむしろ小さくなるため、洗浄性が低下するという問題がある。
【0021】
このようにアクリル系単量体混合物が無乳化重合されたシードは、その粒子サイズが、詳細には100〜300nmであってもよく、より詳細には150〜200nmであってもよい。
【0022】
前記範囲を外れ、シードの粒子が100nm未満である場合、シードを製造することによる効果を得ることができないため、その最終粒子が過度に小さいか、または粒子の分布が広くなるという問題があり、300nmを超える場合には、安定性に問題があるため、凝集物が多く発生する問題があるため、好ましくない。
【0023】
本出願の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、前記のような条件を満足するように製造されたアクリル系エマルジョン粘着剤は、その粒子のサイズ及び分布が、所望の水準の粘着性及び洗浄性を同時に有することができるように適宜調節され得ることを確認した。
【0024】
具体的に、このように製造されたアクリル系エマルジョン粘着剤の粒子サイズは、詳細には、300〜800nmであってもよく、より詳細には、400〜600nmであってもよい。前記アクリル系エマルジョン粘着剤の粒子分布は、前記アクリル系エマルジョン粘着剤の95%以上の粒子が平均粒子サイズの±10%の粒子分布を有することができ、より詳細には、95%以上の粒子が平均粒子サイズの±5%の粒子分布を有することができる。
【0025】
また、粒子分布に対して、他の要素として、前記アクリル系エマルジョン粘着剤の粒子は、変動係数が0.01〜0.1であってもよい。ここで、前記変動係数は、標準偏差を平均粒径(D50)で割った値を意味する。
【0026】
前記範囲を外れ、アクリル系エマルジョン粘着剤の粒子サイズが300nm未満であるか、又は粒子の分布が過度に広い場合には、洗浄性が低下し、粒子サイズが800nmを超える場合には、最終粒子の安定性が不足して凝集物が多く発生する問題があるため、好ましくない。
【0027】
一方、前記シードに含まれるアクリル系単量体混合物の重量%及びシードの粒子サイズに応じて最終物質の物性が変わることと同様に、このような前記アクリル系単量体混合物に含まれる単量体の種類及び含量もまた基本的に粘着剤の物性を左右するところ、前記のように、シードを含むアクリル系エマルジョン粘着剤でも同様に、既存のアクリル系粘着剤の利点が最大限効果的に発揮され得るように、これを調節することが重要である。したがって、以下、本発明に係るアクリル系単量体混合物について詳細に説明する。
【0028】
前記アクリル系単量体混合物は、具体的に、i)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、ii)アリルエステル、ビニルエステル、不飽和アセテート及び不飽和ニトリルからなる群から選択される1種以上の単量体、iii)不飽和カルボン酸及び水酸基含有不飽和単量体からなる群から選択される1種以上の単量体、及びiv)架橋剤を含むことができる。
【0029】
より具体的に、前記アクリル系単量体混合物は、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として、i)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体60〜90重量%、ii)アリルエステル、ビニルエステル、不飽和アセテート及び不飽和ニトリルからなる群から選択される1種以上の単量体5〜35重量%、iii)不飽和カルボン酸及び水酸基含有不飽和単量体からなる群から選択される1種以上の単量体0.5〜5重量%、及びiv)架橋剤0.1〜3重量%を含むことができる。
【0030】
一具体例において、前記i)の単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であってもよく、詳細には、(メタ)アクリル酸エステル単量体の全重量を基準として、2−エチルヘキシルアクリレート60〜80重量%及びブチルアクリレート20〜40重量%の混合物であってもよい。
【0031】
前記i)の単量体は、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として60〜90重量%含まれてもよく、60重量%未満含まれる場合には、初期粘着力を確保することができず、90重量%を超えて含まれる場合には、使用後、除去時に被着物に対する粘着剤の転写が大きく発生し、洗浄性が低下するため、好ましくない。
【0032】
また、前記i)のアルキル基の炭素数は、詳細には、1〜14個であってもよく、より詳細には、2〜14個であってもよく、1個未満である場合には、粘着剤の凝集力が低下し、14個を超える場合には、柔軟になりすぎて粘着物性が低下するため、好ましくない。
【0033】
一具体例において、前記ii)の単量体は、酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選択される1つ以上であってもよく、詳細には、酢酸ビニル、ブタン酸ビニルまたはアクリロニトリルであってもよい。
【0034】
前記ii)の単量体は、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として5〜35重量%含まれてもよく、詳細には7〜25重量%含まれてもよく、5重量%未満含まれる場合には、粘着剤が柔軟になりすぎて十分な粘着物性を確保することができず、35重量%を超えて含まれる場合には、硬くなりすぎて著しい粘着力の低下が発生するため、好ましくない。
【0035】
一具体例において、前記iii)の単量体は、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0036】
前記iii)の単量体は、アクリル系単量体混合物の全重量を基準として0.5〜5重量%含まれてもよく、0.5重量%未満含まれる場合には、粘着剤が柔軟になりすぎて十分な粘着物性を確保することができず、5重量%を超えて含まれる場合には、硬くなりすぎて著しい粘着力の低下が発生するため、好ましくない。
【0037】
前記iv)の架橋剤は、凝集力を補強するために添加されるものであって、一具体例において、アルキレンオキシド基を5〜15個含み、アクリレート基又はビニル基を有する化合物であってもよく、詳細には、アルキレンオキシド基を6〜12個含み、アクリレート基又はビニル基を有する化合物であってもよく、前記範囲内で、常温及び老化粘着性、安定性がいずれも優れるという効果がある。
【0038】
参考に、前記アルキレンオキシド基の個数は、使用された架橋剤内に含まれたアルキレンオキシド基の平均数を意味し、架橋剤内にアルキレンオキシド基が5個未満である場合、製造される粘着剤が必要以上に硬くなって初期粘着力が低下し、アルキレンオキシド基が15個を超える場合には、必要以上に柔軟になって粘着物性が低下するため、好ましくない。
【0039】
一具体例において、前記架橋剤は、有機架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチルプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、ビニルトリメトキシシラン及びジビニルベンゼンなどと、無機架橋剤であるアルミニウムアセチルアセトネート、酢酸亜鉛、炭酸ジルコニウムなどからなる群から選択された1種以上であってもよく、詳細には、ポリエチレングリコールジアクリレート及びポリプロピレングリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0040】
本発明はまた、前記アクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法を開示する。
【0041】
前記アクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法は、
【0042】
(A)i)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体60〜90重量%、ii)アリルエステル、ビニルエステル、不飽和アセテート及び不飽和ニトリルからなる群から選択される1種以上の単量体5〜35重量%、iii)不飽和カルボン酸及び水酸基含有不飽和単量体からなる群から選択される1種以上の単量体0.5〜5重量%、及びiv)架橋剤0.1〜3重量%を混合してアクリル系単量体混合物を製造する過程;
【0043】
(B)前記アクリル系単量体混合物の全重量を基準として1〜10重量%のアクリル系単量体混合物を反応器に投入し、開始剤を添加して無乳化重合させることによってシードを製造する過程;
【0044】
(C)別途に、前記アクリル系単量体混合物の全重量を基準として90〜99重量%のアクリル系単量体混合物を含むプレエマルジョン溶液を製造する過程;及び
【0045】
(D)前記シードが製造された反応器に前記プレエマルジョン溶液及び開始剤を添加した後、乳化重合してアクリル系エマルジョン粘着剤を製造する過程;
【0046】
を含む。
【0047】
本明細書で使用された用語、“プレエマルジョン溶液”は、アクリル系単量体混合物以外に、水、電解質及び界面活性剤などをさらに含むことができる。
【0048】
前記シードをベースとした乳化重合によるアクリル系エマルジョン粘着剤の製造方法をより具体的に説明すると、
【0049】
詳細には、水を反応器に投入し、80℃に昇温させて酸素を除去する第1過程;これとは別途に、i)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体60〜90重量%、ii)アリルエステル、ビニルエステル、不飽和アセテート及び不飽和ニトリルからなる群から選択される1種以上の単量体5〜35重量%、iii)不飽和カルボン酸及び水酸基含有不飽和単量体からなる群から選択される1種以上の単量体0.5〜5重量%、及び架橋剤0.1〜3重量%を配合した単量体混合物を製造する第2過程;前記単量体混合物の全重量を基準として1〜10重量%のアクリル系単量体混合物を反応器に投入し、攪拌した後、開始剤を投入してシードを製造する第3過程;これとは別途に、前記単量体混合物の全重量を基準として90〜99重量%のアクリル系単量体混合物に水、電解質及び界面活性剤を投入してプレエマルジョン溶液を製造する第4過程;前記第3過程のシードが製造された反応器に第4過程のプレエマルジョン溶液及び開始剤を連続投入し、80℃に昇温後、常温に冷却させてアクリル系エマルジョン粘着剤を製造する第5過程;及び前記アクリル系エマルジョン粘着剤のpHを6〜9に調節する第6過程;で構成されてもよい。
【0050】
ここで、第3過程のように、別途の界面活性剤を使用せずに重合する過程を無乳化重合といい、第4過程及び第5過程のように、界面活性剤を溶液に含ませて重合する過程を乳化重合という。
【0051】
すなわち、本発明に係るアクリル系エマルジョン粘着剤の前記シードは、界面活性剤を使用しない無乳化重合、すなわち、懸濁重合によって製造され、このようなシードをベースとして、アクリル系エマルジョン粘着剤が乳化重合によって製造され得る。
【0052】
このように製造された前記シードの粒子サイズは、上述したように、100〜300nmであってもよい。
【0053】
一方、一具体例において、前記開始剤は、水溶性開始剤であって、アンモニウム又はアルカリ金属の過硫酸塩、過酸化水素、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドなどの水溶性重合開始剤であってもよく、低温下で乳化重合反応を行うために、還元剤1種以上と共に使用することもできる。前記還元剤は、ナトリウムバイサルファイト、ナトリウムメタバイサルファイト、ナトリウムハイドロサルファイト、ナトリウムチオサルフェート、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸などであってもよい。
【0054】
前記無乳化重合反応の温度は、詳細には50〜100℃であってもよく、より詳細には70〜90℃であってもよく、前記乳化重合反応の温度は、詳細には0〜100℃であってもよく、より詳細には40〜90℃であってもよい。前記重合反応の温度は、前記開始剤の単独使用、又は前記開始剤と前記還元剤のうち1種以上を混合して使用する方法などで調節することができる。
【0055】
前記重合反応に使用される電解質は、pHを調節し、重合されるアクリル系エマルジョン粘着剤に安定性を付与するもので、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムなどからなる群から選択される1種以上であってもよく、詳細には炭酸ナトリウムであってもよく、前記乳化重合に使用されるアクリル系単量体混合物100重量部を基準として0.1〜2重量部含まれてもよく、詳細には0.3〜1重量部含まれてもよい。
【0056】
前記界面活性剤は、前記乳化重合時に生成された粒子のサイズ調節及び粒子の安定性などのために用いられ、親水性基と親油性基で構成されており、アニオン、カチオン及び非イオン界面活性剤などに分けられる。主にアニオン及び非イオン界面活性剤を用い、機械的安定性及び化学的安定性などを補完するために互いに混ぜて使用することもある。
【0057】
前記アニオン界面活性剤は、ナトリウムアルキルジフェニルオキシドジスルホネート、ナトリウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート、ナトリウムジアルキルスルホサクシネートなどであってもよく、前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレンオキシドアルキルアリールエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルアミン、ポリエチレンオキシドアルキルエステルなどであってもよく、これらは、単独或いは2種以上混合して使用することができ、アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤を混合して使用する場合よりも効果的である。
【0058】
前記アクリル系エマルジョン粘着剤は、アルカリ性物質で酸度(pH)を調整することができ、アクリル系エマルジョン樹脂のpHは、詳細には6〜9であってもよく、より詳細には7〜8であってもよく、前記アルカリ性物質は、1価金属又は2価金属の水酸化物、塩化物、炭酸塩などの無機物、アンモニアまたは有機アミンなどであってもよい。
【0059】
さらに、本発明に係るアクリル系エマルジョン粘着剤は、シリコン離型紙の表面にコーティングするときに発生するアクリル系エマルジョン粘着剤の収縮現象を防止するために、増粘剤及び湿潤剤(wetting agent)をさらに含むことができる。
【0060】
前記増粘剤は、CMC(Carboxyl Methyl Cellulose)、アクリルゾル、ポリビニルアルコール、スターチ、アルジネート、デキストリンなどであってもよく、詳細には、ポリビニルアルコールであってもよい。
【0061】
前記湿潤剤(wetting agent)は、親水性の粘着剤を疎水性に変化させて、疎水性のシリコーン離型紙の表面に粘着剤が良好に密着するようにするもので、通常、界面活性剤混合物であり、グリコール又はアルコールがさらに含まれてもよい。
【0062】
本発明はまた、アクリル系エマルジョン粘着剤を粘着用フィルム又はシート上に適用して粘着剤層を形成する粘着シートを提供する。
【0063】
前記粘着シートは、製品の商標、広告はもちろん、印刷、化学、医薬品、家電製品、自動車、文具用ラベルなどに使用される粘着用フィルムやシートであってもよく、前記粘着剤層は、厚さが10〜100μm、詳細には20〜30μmであってもよく、コーティング性に優れ、十分な粘着物性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施例を参照して説明するが、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらのみに限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
【0066】
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えた3L容量のガラス反応器に、水300gを入れ、攪拌しながら、反応器の内部を窒素で置換した後、窒素雰囲気下で80℃に昇温させ、これを60分間維持した。
【0067】
別途に、ビーカーにブチルアクリレート250g、2−エチルヘキシルアクリレート538g、メチルメタクリレート100g、酢酸ビニル100g、アクリル酸10g、ポリエチレングリコール400ジアクリレート1g、及びn−ドデシルメルカプタン1gを投入した後、30分間混合して単量体混合物1000gを製造した。
【0068】
前記単量体混合物のうち50gを前記反応器に投入し、10分間攪拌した後、反応器に10重量%過硫酸アンモニウム10gを投入して、シードの製造のための反応を行った。反応が終了した後、1時間の間、同じ温度で攪拌させた。
【0069】
別途に、前記単量体混合物950gに26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート19.2g、45重量%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート10.4g、炭酸ナトリウム2g、ナトリウムメチルアリルスルホネート2g及び水220gからなる溶液を投入し、攪拌機で攪拌して、白濁のプレエマルジョンを製造した。
【0070】
前記シードが製造されたガラス反応器に、前記プレエマルジョンと10重量%過硫酸アンモニウム水溶液150gを4時間の間均等に連続投入し、その後、10重量%過硫酸アンモニウム水溶液10gをさらに投入した後、80℃に維持し、この温度を1時間維持させた後、常温に冷却して、アクリル系エマルジョン粘着剤を製造した。
【0071】
前記アクリル系エマルジョン粘着剤に10重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを7〜8に調節した。
【0072】
<実施例2>
【0073】
前記実施例1のシードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち10gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0074】
<実施例3>
【0075】
前記実施例1のシードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち30gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0076】
<実施例4>
【0077】
前記実施例1のシードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち70gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0078】
<実施例5>
【0079】
前記実施例1のシードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち100gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0080】
<実施例6>
【0081】
前記実施例1において、別途に、ビーカーにブチルアクリレート250g、2−エチルヘキシルアクリレート488g、メチルメタクリレート150g、酢酸ビニル100g、アクリル酸10g、ポリエチレングリコール400ジアクリレート1g、及びn−ドデシルメルカプタン1gを投入した後、30分間混合して単量体混合物1000gを製造した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0082】
<実施例7>
【0083】
前記実施例1において、別途に、ビーカーにブチルアクリレート250g、2−エチルヘキシルアクリレート488g、メチルメタクリレート100g、酢酸ビニル150g、アクリル酸10g、ポリエチレングリコール400ジアクリレート1g、及びn−ドデシルメルカプタン1gを投入した後、30分間混合して単量体混合物1000gを製造した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0084】
<比較例1>
【0085】
前記実施例1において、初期に3L容量のガラス反応器に水300gと26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート3.8gを入れ、その後、別途に白濁のプレエマルジョンの製造時には、単量体混合物に26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート15.4gを投入する以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0086】
<比較例2>
【0087】
前記実施例1において、シードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち9gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0088】
<比較例3>
【0089】
前記実施例1において、シードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち105gを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0090】
<比較例4>
【0091】
前記実施例1において、初期に3L容量のガラス反応器に水300gと26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート3.8gを入れ、シードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち10gを使用し、その後、別途に白濁のプレエマルジョンの製造時には、単量体混合物に26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート15.4gを投入する以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0092】
<比較例5>
【0093】
前記実施例1において、初期に3L容量のガラス反応器に水300gと26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート0.38gを入れ、シードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち10gを使用し、その後、別途に白濁のプレエマルジョンの製造時には、単量体混合物に26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート18.82gを投入する以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0094】
<比較例6>
【0095】
前記実施例1において、初期に3L容量のガラス反応器に水300gと26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート3.8gを入れ、シードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち100gを使用し、その後、別途に白濁のプレエマルジョンの製造時には、単量体混合物に26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート15.4gを投入する以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0096】
<比較例7>
【0097】
前記実施例1において、初期に3L容量のガラス反応器に水300gと26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート3.8gを入れ、シードの製造のために、単量体混合物の全体1000gのうち5gを使用し、その後、別途に白濁のプレエマルジョンの製造時には、単量体混合物に26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート15.4gを投入する以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0098】
<比較例8>
【0099】
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えた3L容量のガラス反応器に、水300gを入れ、攪拌しながら、反応器の内部を窒素で置換した後、窒素雰囲気下で80℃に昇温させ、これを60分間維持した。
【0100】
別途に、ビーカーにブチルアクリレート250g、2−エチルヘキシルアクリレート538g、メチルメタクリレート100g、酢酸ビニル100g、アクリル酸10g、ポリエチレングリコール400ジアクリレート1g、及びn−ドデシルメルカプタン1gを投入した後、30分間混合した単量体混合物1000gに、26重量%ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート19.2g、45重量%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート10.4g、炭酸ナトリウム2g、ナトリウムメチルアリルスルホネート2g及び水220gからなる溶液を投入し、攪拌機で攪拌して、白濁のプレエマルジョンを製造した。
【0101】
前記ガラス反応器に前記プレエマルジョンと10重量%過硫酸アンモニウム水溶液150gを4時間の間均等に連続投入し、その後、10重量%過硫酸アンモニウム水溶液10gをさらに投入した後、80℃に維持し、この温度を1時間維持させた後、常温に冷却して、アクリル系エマルジョン粘着剤を製造した。
【0102】
前記アクリル系エマルジョン粘着剤に10重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを7〜8に調節した。
【0103】
<実験例1>
【0104】
前記実施例1〜7及び比較例1〜8から製造された粘着剤の平均粒子サイズ及び粒子分布度を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
*シード含量:混合単量体の全重量に対するシードの製造時に含まれる混合単量体の重量%
【0107】
*初期界面活性剤:混合単量体100重量部に対する初期反応器に含まれる界面活性剤の量
【0108】
*粒子分布度:アクリル系エマルジョン粘着剤の95%以上の粒子が平均粒子サイズの±x%以内の分布を有する場合、前記x値
【0109】
<実験例2>
【0110】
粘着剤がコーティングされた紙ラベルの製造
【0111】
前記実施例1〜7及び比較例1〜8から製造されたアクリル系エマルジョン粘着剤を、シリコンがコーティングされた離型紙上に塗布し、120℃のオーブンで1分間乾燥して、粘着層が20μmの厚さを有するようにした。これを、ポリエチレンテレフタレートフィルムとラミネートしてフィルムラベルを作り、1インチx100mmの大きさに裁断してフィルムラベル試片を製造した。
【0112】
前記実施例1〜7及び比較例1〜8から製造されたアクリル系エマルジョン粘着剤の粘着特性を、下記の方法で試験し、その結果を下記表2に示す。
【0113】
*凝集物含量の測定:製造されたエマルジョンアクリル系粘着剤100gを、工程規格による網目サイズ74μmの標準ふるい(mesh)にかけ、ふるいの上に残った凝集物を蒸留水で洗い、流れ落ちる水が透明になった後、110℃以下の温度で乾燥する。乾燥された残量を乾燥前の重量と比較して、前記の数式で乾燥前後の重量に代入して含量を百分率に換算する。
【0114】
*初期粘着力試験:試験法FINAT TEST METHOD NO.9に準拠して、アクリル系エマルジョン粘着剤のフィルムラベル試片を環状に作って、ガラスの表面に圧力を加えずに貼り付け、5秒後、TA Texture Analyzer機器を使用して300mm/minの速度で剥離しながら測定した。(単位:N/in)
【0115】
*剥離力試験:試験法FINAT TEST METHOD NO.2に準拠して、アクリル系エマルジョン粘着剤のフィルムラベル試片を2kgのローラーを300mm/minの速度で2回往復させてガラス板上に付着させ、20分間常温で熟成させた後、TA Texture Analyzer機器を使用して300mm/minの速度で90度剥離しながら測定した。(単位:N/in)
【0116】
*凝集力試験:試験法FINAT TEST METHOD NO.8に準拠して、アクリル系エマルジョン粘着剤のフィルムラベル試片を、ステンレススチールの表面(SUS 304)に付着面が1x1インチになるように付着した後、500gの錘で押圧した状態で70℃のオーブンで30分間保管した後、錘を除去し、室温で30分間冷却させる。その後、シートの先端に1kgの錘をぶら下げ、錘が落ちる時間を測定する。
【0117】
*洗浄力試験:アクリル系エマルジョン粘着剤のフィルムラベル試片をガラス板上に付着した後、2kgのローラーで300mm/minの速度で2回往復して圧着する。1時間後、water bathに試片全体が水に浸るように1日間浸した後、取り出し、表面の水分を軽く拭き取り、直ちに、これを前記剥離力試験法によって物性を測定した。(単位:N/in)剥離力が低いほど、洗浄性に優れるものと判断する。
【0118】
【表2】
【0119】
前記表1及び表2を参照すると、実施例1〜7のアクリル系エマルジョン粘着剤の粒子は、そのサイズが過度に大きくも小さくもなく、粒子分布度が10%以内に小さく均一であるところ、重合時に安定性が良好であるため、凝集物の発生が少なく、全体的な物性が良好であり、洗浄性に優れる一方、比較例1〜8のアクリル系エマルジョン粘着剤は、粒子のサイズが過度に大きかったり小さく、または粒子の分布が過度に広いため、一部の物性が低下することがわかる。
【0120】
具体的に、比較例1及び6のアクリル系エマルジョン粘着剤は、シードの製造時に界面活性剤を使用することによって、最終粒子のサイズが小さく、粒子の分布が広いため、洗浄性が非常に低下した。比較例2及び3のアクリル系エマルジョン粘着剤は、シードの製造に使用される単量体混合物の含量比が請求含量を外れる場合であって、含量がその範囲を外れて過度に少ない場合には、最終粒子のサイズが大きいため、安定性が不足することによって凝集物が非常に多く発生し、過度に多い場合には、シードの製造時に安定性が悪いため、凝集物が多く発生すると同時に、最終粒子のサイズもまた小さいため、洗浄性が低下することを確認した。
【0121】
また、比較例4、5及び7のアクリル系エマルジョン粘着剤は、シードの製造時に界面活性剤を使用することによって、最終粒子のサイズは適当であるが、粒子の分布が広いため洗浄性が低下しており、比較例8のアクリル系エマルジョン粘着剤は、シードを使用せずにアクリル系エマルジョン粘着剤を製造することによって、粒子の分布が非常に広いため、洗浄性が完全に低下することを確認した。
【0122】
本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上で説明したように、本発明によれば、一定量のアクリル系単量体混合物が無乳化重合されたシード(seed)に残りのアクリル系単量体混合物を混合、乳化重合させてアクリル系エマルジョン粘着剤を製造することによって、アクリル系エマルジョン粘着剤の最終粒子を適当なサイズで均一に製造できるので、優れた粘着物性を発現すると同時に、洗浄時に水の吸水率を高め、容易に除去可能にする効果がある。