(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(1)で表される化合物を含む粒状核剤であって、
下記手順Aに従って測定される粒子径分布の広がりWAと、
下記手順Bに従って測定される粒子径分布の広がりWBが、
以下の式(I)を満たす、粒状核剤。
0.3≦WA/WB≦13.5 ・・式(I)
(手順A)
レーザー回折式粒子径測定装置を用い、30psiの分散圧の分散エアーを当該粒状核剤に噴出して、空気中に分散させた当該粒状核剤を測定対象として、その粒状核剤の粒子径分布を乾式測定する。
前記粒子径分布として、当該粒状核剤の体積平均粒子径MvA、個数平均粒子径MnAを得る。
WA=MvA/MnAに基づいて、上記粒子径分布の広がりWAを算出する。
(手順B)
上記手順Aの測定対象とした当該粒状核剤について、次のように加圧処理を行う。
加圧処理:アルミニウム箔製のトレイに当該粒状核剤を入れ、前記トレイ中の当該粒状核剤に60g/cm
2の荷重を加えた状態で、40℃、相対湿度80%の恒温オーブン内に、前記トレイを24時間静置する。
続いて、レーザー回折式粒子径測定装置を用い、分散エアーを当該粒状核剤に噴出せずに、空気中に分散させた加圧処理後の当該粒状核剤を測定対象として、その粒状核剤の粒子径分布を乾式測定する。
前記粒子径分布として、当該粒状核剤の体積平均粒子径MvB、個数平均粒子径MnBを得る。
WB=MvB/MnBに基づいて、上記粒子径分布の広がりWBを算出する。
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1〜R
4は各々独立して、水素原子、直鎖又は分岐を有する炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、R
5は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、M
1は水素原子又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、M
1は、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の粒状核剤について説明する。
上記粒状核剤は、芳香族リン酸エステル金属塩を含有するものである。当該芳香族リン酸エステル金属塩は、下記一般式(1)によって表される化合物が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記一般式(1)中、R
1〜R
4は各々独立して、水素原子、直鎖又は分岐を有する炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、R
5は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、M
1は水素原子又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、M
1は、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。
【0016】
上記一般式(1)中の、R
1、R
2、R
3及びR
4で表される、炭素原子数1〜9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基が挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)中、M
1で表されるアルカリ金属としては、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)中のM
1で表される第二族元素としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、これらの中でも、マグネシウム、カルシウムであるものが、核剤成分の核剤効果が顕著であるので好ましい。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、mが1である化合物が好ましい。また、R
1、R
2、R
3及びR
4が、メチル基、エチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基からなる群から選択される一種基を有する化合物が好ましい。また、R
5が水素原子またはメチル基である化合物が特に好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される化合物としては、下記の化学式(2)から化学式(13)のいずれかで表される化合物を一または二以上含むことが好ましい。この中でも、樹脂の物性向上の観点から、化学式(2)から化学式(6)のいずれかで表される化合物が好ましい。透明性向上の観点から、化学式(7)から化学式(13)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0022】
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、例えば、三塩化燐(またはオキシ塩化燐)と2,2’−アルキリデンフェノールとを反応させた後、必要に応じて加水分解して環状酸性リン酸エステルとする。次いで、環状酸性リン酸エステルと、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物とを反応させ、得られた反応物を、適宜精製(ろ過等)し、乾燥することにより、上記化合物(芳香族リン酸エステル金属塩)が得られる。また、従来公知の方法で芳香族リン酸エステル金属塩を合成し、上記化合物として使用してもよい。
また得られた化合物を、溶剤に溶解し、水酸化リチウム等の他の金属水酸化物と反応させ、またはアルミニウム・マグネシウム・第二族元素のいずれかの塩と反応させ、得られた反応物を精製、乾燥することにより、別の上記化合物が得られる。
【0023】
本実施形態の粒状核剤は、必要に応じて、得られた化合物を適切な粉砕手段で粉砕することにより得られる。粒状核剤において、所定メッシュサイズの篩いで篩い分けして粗大粒子を除外してもよい。また上記粒状核剤は、1種または2種以上の粉末状の化合物を含むことができる。例えば、粒子径分布が異なる2種以上の化合物や、分級された2種以上の化合物を適当な比率で組み合わせてブレンドし、上記粒状核剤を得てもよい。
【0024】
上記の粉砕手段としては、例えば、乳鉢、ボールミル、ロッドミル、チューブミル、コニカルミル、振動ボールミル、ハイスイングボールミル、ローラーミル、ピンミル、ハンマーミル、アトリションミル、ジェットミル、ジェットマイザー、マイクロナイザー、ナノマイザー、マジャックミル、マイクロアトマイザー、コロイドミル、プレミアコロイドミル、ミクロンミル、シャロッテコロイドミル、ロータリーカッター、乾式媒体撹拌ミル等が挙げられる。これらの粉砕機は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、粉砕する原料粉末の種類、粉砕時間等によって適宜選択される。
【0025】
本実施形態の粒状核剤は、上記一般式(1)で表される化合物のみで構成されていてもよく、本発明の目的を達成する範囲内で、他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、上記一般式(1)で表される化合物以外の他の芳香族リン酸エステル金属塩、脂肪酸金属塩、珪酸系無機添加剤成分、ハイドロタルサイト類等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記脂肪酸金属塩としては、例えば、下記一般式(14)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0028】
上記一般式(14)中、R
6は直鎖または分岐を有する炭素原子数9〜30の脂肪族基を表し、Mは金属原子を表し、nは1〜4の整数であって、Mの金属原子の価数と対応する整数を表す。
【0029】
上記一般式(14)において、R
6は直鎖または分岐を有する炭素原子数9〜30の脂肪族基としては、炭素原子数9〜30のアルキル基およびアルケニル基が挙げられ、これらはヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0030】
上記炭素原子数9〜30の脂肪族基としては、例えば、カプリン酸、2−エチルヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸、4−デセン酸、4−ドデセン酸、パルミトレイン酸、α−リノレン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、ステアリドン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の直鎖不飽和脂肪酸等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩は、R
6で表される脂肪族基が、炭素原子数10〜21であるものが好ましく、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸が好ましい。
【0031】
上記Mで表される金属原子としては、例えば、アルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、バリウムまたはハフニウム等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましく、特に、ナトリウムおよびリチウムが、結晶化温度が高くなるので好ましく用いられる。
【0032】
上記珪酸系無機添加剤成分としては、例えば、フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト等が挙げられ、中でも、粒子構造が層状構造であるもの、珪素含有量が15質量%以上のものが好ましい。これらの好ましい無機添加剤としては、セリサイト、カオリナイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライトが挙げられ、タルク、マイカがより好ましい。
【0033】
上記ハイドロタルサイト類としては、例えば、天然物でも合成品でもよく、表面処理の有無や結晶水の有無によらず用いることができる。例えば、下記一般式で表される塩基性炭酸塩が挙げられる。
M
xMg
yAl
zCO
3(OH)
xp+2y+3z−2・nH
2O
(上記一般式中、Mはアルカリ金属または亜鉛を表し、Xは0〜6の数を表し、yは0〜6の数を表し、zは0.1〜4の数を表し、pはMの価数を表し、nは0〜100の結晶水の数を表す)
【0034】
上記他の成分を含有する粒状核剤は、上記一般式(1)で表される化合物を含有する粒状核剤組成物であり、他の芳香族リン酸エステル金属塩、脂肪酸金属塩、珪酸系無機添加剤成分およびハイドロタルサイト類からなる群から選択される一種以上、好ましくは脂肪酸金属塩、タルク、マイカおよびハイドロタルサイト類からなる群から選択される一種以上を含有するように構成され得る。
このような粒状核剤のとしては、例えば、上記一般式(1)で表される化合物および他の成分の共存下、上記の粉砕手段を適切に組み合わせることにより粉砕処理することにより得られる。また、上述の粉砕手段、篩い分け、ブレンド方法などを用いることもできる。
【0035】
本実施形態の粒状核剤は、結晶性高分子等の熱可塑性樹脂の成形加工時に添加される造核剤・透明化剤として機能する。結晶性高分子において、結晶化温度、熱変性温度、曲げ弾性率、硬度、透明性などの向上(改質効果)を実現できる。また、成形サイクル性を高め、生産性を向上させることができる。
【0036】
本実施形態の粒状核剤は、下記手順Aに従って測定される粒子径分布の広がりWAと、下記手順Bに従って測定される粒子径分布の広がりWBが、以下の式(I)を満たすものである。
0.3≦WA/WB≦13.5 ・・式(I)
【0037】
(手順A)
レーザー回折式粒子径測定装置を用い、30psiの分散圧の分散エアーを当該粒状核剤に噴出して、空気中に分散させた当該粒状核剤を測定対象として、その粒状核剤の粒子径分布を乾式測定する。
前記粒子径分布として、当該粒状核剤の体積平均粒子径MvA、個数平均粒子径MnAを得る。
WA=MvA/MnAに基づいて、上記粒子径分布の広がりWAを算出する。
(手順B)
上記手順Aの測定対象とした当該粒状核剤について、次のように加圧処理を行う。
加圧処理:アルミニウム箔製のトレイに当該粒状核剤を入れ、前記トレイ中の当該粒状核剤に60g/cm
2の荷重を加えた状態で、40℃、相対湿度80%の恒温オーブン内に、前記トレイを24時間静置する。
続いて、レーザー回折式粒子径測定装置を用い、分散エアーを当該粒状核剤に噴出せずに、空気中に分散させた加圧処理後の当該粒状核剤を測定対象として、その粒状核剤の粒子径分布を乾式測定する。
前記粒子径分布として、当該粒状核剤の体積平均粒子径MvB、個数平均粒子径MnBを得る。
WB=MvB/MnBに基づいて、上記粒子径分布の広がりWBを算出する。
【0038】
本発明者の知見によれば、加重(圧力)、加温(温度)、加湿(湿度)を適切に選択した環境負荷を粒状核剤に対して所定時間付与することにより、製造直後から使用前までに所定期間が経過したときの、粒状核剤の粉体特性を評価できることが判明した。
【0039】
このような環境負荷は加速試験の条件として利用することができ、かかる加速試験によって、製造後、搬送や保管などで所定期間経過した後の粒状核剤の粉体特性がどのように変化するかの評価が可能になる。
【0040】
さらに検討した結果、環境負荷として上記加圧処理を用い、加圧処理前後の粒子径分布の広がりの変化度合い、すなわち、WA/WBを指針とすることにより、粒状核剤の粉体特性を適切に制御できることを見出した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、WA/WBを上記式(I)の数値範囲内とすることにより、環境負荷後における粉体の性状変化が抑制され、所定期間保管後における粉体特性の変化が抑制されるため、粒状核剤の粉体特性が改善されるとの知見を得た。
【0041】
また、本発明者の知見によれば、適切な分散圧を粒状核剤に付与する測定条件を採用することにより、製造直後の、微粉から粗粉までの幅広い粉体について、粒子径分布を安定的に測定できることが分かった。また、分散圧を粒状核剤に付与しない測定条件を採用することにより、環境負荷後、すなわち、上記加圧処理後の粉体について、凝集などの環境負荷の影響を受けた粒状核剤の粒子径分布を安定的に測定できることが分かった。
また、乾式条件を採用することにより、湿式条件と比べて、気泡など問題がないため、測定安定性を高めることができる。
【0042】
本実施形態において、上記WA/WBの下限値は、0.3以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上である。これにより、粉塵性やフィード安定性などの性状の経時変化を抑制できる。一方、上記WA/WBの上限値は、13.5以下、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.7以下である。これにより、粉塵性の経時変化を抑制できる。また、このような数値範囲内とすることにより、流動性の経時変化を抑制でき、結晶性高分子の透明性を高めることができる。
【0043】
また、本実施形態の粒状核剤は、以下の式(II)を満たすものを用いることができる。
3≦WA≦45 ・・式(II)
【0044】
上記式(II)中、WAの下限値は、特に限定されないが、例えば、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。これにより、粉体特性の経時変化を抑制できる。一方、上記WAの上限値は、例えば、45以下であり、より透明化性を高める観点から、好ましくは35以下、より好ましくは30以下である。また、上記WAを30以下とすることにより、粒状核剤を含有する樹脂組成物をフィルム化したとき、フィッシュアイの発生等を抑制できるため、成形品の製造安定性を高めることが可能である。
【0045】
上記体積平均粒子径MvAにおいて、下限値は、例えば2μm以上、好ましくは3μm、より好ましくは5μm以上としてもよく、一方の上限値は、例えば55μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下としてもよい。
また、上記個数平均粒子径MnAにおいて、下限値は、例えば0.5μm以上、好ましくは0.9μm、より好ましくは1.0μm以上としてもよく、一方の上限値は、例えば2.5μm以下、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下としてもよい。
【0046】
本実施形態では、たとえば粒状核剤中に含まれる各成分の種類や配合量、粒状核剤の調製方法等を適切に選択することにより、上記WA/WB、WAを制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、粉砕方法や粉砕時間等の粉砕条件、粗大粒子のカット等の分級条件、ブレンド条件などを適切に選択すること等が、上記WA/WB、WAを所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、上記の粒状核剤を熱可塑性樹脂中に含有してなるものである。
【0048】
上記粒状核剤を、上記熱可塑性樹脂に添加する方法は特に制限を受けず、一般に用いられる方法をそのまま適用することができる。例えば、熱可塑性樹脂の粉末物あるいはペレットと、上記粒状核剤の粉末物とをドライブレンドする方法を用いることができる。
【0049】
上記樹脂組成物は、各種形態で使用することができるが、たとえば、ペレット状、顆粒状、粉末状のいずれでもよい。取り扱い性の観点から、ペレット状が好ましい。
【0050】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、含ハロゲン樹脂等が挙げられる。この中でも、結晶性高分子を用いることが好ましい。
【0051】
さらに上記熱可塑性樹脂の例を挙げると、例えば、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルフォン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂およびこれらのブレンド物を用いることができる。
【0052】
また、上記熱可塑性樹脂は、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ナイロン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーであってもよく、併用してもよい。
【0053】
上記結晶性高分子としては、特に限定されないが、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ3−メチルペンテン、ポリ4−メチルペンテン、エチレン/プロピレンブロックまたはランダム共重合体などのα−オレフィン重合体等のポリオレフィン系高分子;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の熱可塑性直鎖ポリエステル系高分子;ポリフェニレンスルフィド等のポリスルフィド系高分子;ポリカプロラクトン等のポリ乳酸系高分子;ポリヘキサメチレンアジパミド等の直鎖ポリアミド系高分子;シンジオタクチックポリスチレン等の結晶性のポリスチレン系高分子等が挙げられる。
【0054】
この中でも、本発明の核剤の使用効果が顕著に奏されるポリオレフィン系高分子が好ましく、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン以外のα−オレフィン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、これらのプロピレン系重合体と他のα−オレフィン重合体との混合物等のポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0055】
上記結晶性高分子として、結晶性α―オレフィン重合体、とりわけポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体およびこれらのプロピレン重合体と他のα―オレフィン重合体との混合物などのポリプロピレン系樹脂を用いた場合に有用である。これらのポリプロピレン系樹脂は、その極限粘度、アイソメタクチックペンタッド分率、密度、分子量分布、メルトフローレート、剛性等に拘わらず使用することができ、例えば、特開昭63−37148号公報、同63−37152号公報、同63−90552号公報、同63−210152号公報、同63−213547号公報、同63−243150号公報、同63−243152号公報、同63−260943号公報、同63−260944号公報、同63−264650号公報、特開平1−178541号公報、同2−49047号公報、同2−102242号公報、同2−251548号公報、同2−279746号公報、特開平3−195751号公報などに記載されたようなポリプロピレン系樹脂も好適に使用することができる。
【0056】
上記粒状核剤の含有量は、熱可塑性樹脂(例えば、結晶性高分子)100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部であり、好ましくは0.005〜8重量部であり、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲内とすることができる。これにより、熱可塑性樹脂、とくに結晶性高分子の改質効果を十分に得ることができる。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、抗酸化剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、充填剤、有機錫化合物、可塑剤、エポキシ化合物、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、重金属不活性剤、ハイドロタルサイト類、有機カルボン酸、着色剤、珪酸系添加剤、加工助剤等の添加剤を含有させることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記抗酸化剤として、リン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、チオエーテル系抗酸化剤、ホスファイト系抗酸化剤等が挙げられる。
上記帯電防止剤として、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
上記難燃剤として、ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、ポリリン酸のメラミン塩化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物等が挙げられる。
上記滑剤として、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系、金属石けん系等が挙げられる。
上記珪酸系添加剤として、フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト等が挙げられる。
【0058】
上記樹脂組成物における添加剤の含有量は、結晶性高分子100重量部に対して、たとえば、0.001〜10重量部が好ましい。このような数値範囲とすることにより、添加剤の効果の向上が得られる。
【0059】
上記樹脂組成物は、射出成形品、繊維、フラットヤーン、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルム、シート、熱成形品、押出ブロー成形品、射出ブロー成形品、射出延伸ブロー成形品、異形押出成形品、回転成形品等の成形品に使用することができる。この中でも、成形品として、射出成形品、フィルム、シート、熱成形品が好ましい。
【0060】
本実施形態の成形品の製造方法は、各種の成形方法に基づいて、樹脂組成物を成形する工程を含み、これにより、上記の成形品を得ることができる。
成形方法としては、特に限定されるものではなく、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、回転成形、真空成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、スラッシュ成形法、ディップ成形法、発泡成形法等が挙げられる。
【0061】
上記樹脂組成物は、建築資材、農業用資材、自動車、列車、船、航空機など乗り物用部品、包装用資材、雑貨、玩具、家電製品、医療品など種々の用途に用いることができる。具体的には、バンパー、ダッシュボード、インスツルメントパネル、バッテリーケース、ラゲッジケース、ドアパネル、ドアトリム、フェンダーライナー等の自動車部品;冷蔵庫、洗濯機、掃除機等の家電製品用樹脂部品;食器、ボトルキャップ、バケツ、入浴用品等の家庭用品;コネクター等の接続用樹脂部品;玩具、収納容器、合成紙等の雑貨品;医療用パック、注射器、カテーテル、医療用チューブ、シリンジ製剤、輸液バッグ、試薬容器、飲み薬容器、飲み薬個包装等の医療用成形品;壁材、床材、窓枠、壁紙、窓等の建材;電線被覆材;ハウス、トンネル、フラットヤーンメッシュバッグ等の農業用資材;パレット、ペール缶、バックグラインドテープ、液晶プロテクト用テープ、パイプ、シーリング材用変性シリコーンポリマー等の工業用資材;ラップ、トレイ、カップ、フィルム、ボトル、キャップ、保存容器等の食品包装材、その他3Dプリンター材料、電池用セパレータ膜等が挙げられる。さらに各種の後処理を施される場合の用途、例えば、医療用途、食品包装用途などの放射線による滅菌を施される用途、あるいは塗装性などの表面特性の改善のために、成形後、低温プラズマ処理などが施される用途などに用いることができる。この中でも、自動車部品、家庭用品、食品包装材に用いることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0063】
<化合物の合成>
(化合物No.1の合成)
ヒドロキシ−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート486g(1モル)、水酸化ナトリウム40g(1モル)の水溶液およびメタノールを仕込み、室温で一時間撹拌した。減圧下に乾燥して421gの白色粉末の化合物No.1を得た。
【0064】
【化5】
【0065】
得られた化合物No.1を、粉砕処理なく、メッシュサイズ:57μmの篩で篩別して粒状核剤Aを得た。
【0066】
得られた化合物No.1に対して、ボールミルで30分間粉砕し、メッシュサイズ:57μmの篩で篩別して粒状核剤Bを得た。
【0067】
得られた化合物No.1に対して、ボールミルで4時間粉砕し、さらにジェットミルで粉砕して粒状核剤Cを得た。
【0068】
<粒状核剤の製造>
(試験例1)
上記の粒状核剤Aと、上記の粒状核剤Cとを質量比:8.5/1で混合し、粒状核剤Dを得た。
【0069】
(試験例2)
上記の粒状核剤Aと、上記の粒状核剤Cとを質量比:4/1で混合し、粒状核剤Eを得た。
【0070】
(試験例3)
上記の粒状核剤Aと、上記の粒状核剤Cとを質量比:1/1で混合し、粒状核剤Fを得た。
【0071】
(試験例4)
上記の粒状核剤Bと、上記の粒状核剤Cとを質量比:1/1で混合し、粒状核剤Gを得た。
【0072】
(試験例5)
上記の粒状核剤Aと、上記の粒状核剤Cとを質量比:9/1で混合し、粒状核剤Hを得た。
【0073】
(試験例6)
上記の粒状核剤Cをそのまま使用した。
【0074】
<粒度分布測定>
得られた各試験例の粒状核剤について、以下の手順A、手順Bに従って粒子径分布を測定した。粒子径の測定には、レーザー回折式粒子径測定装置として、Microtrac MT3000II(マイクロトラック・ベル社製)を用いた。
図1(a)(b)に、レーザー回折式粒子径測定装置100の測定原理の概要を示す。
【0075】
・手順A(加圧処理前の粒子径分布):
まず、得られた粒状核剤(試料)を、
図1(a)に示すサンプルホルダー130にセットし、測定部150内を吸引ノズル120に吸引させた。続いて、コンプレッサ140(分散機)から供給された圧縮空気を調整し、噴射ノズル142を介して分散エアー供給部110に噴射した。このとき、分散エアー供給部110を通過する粒状核剤に対して、下記の分散圧の条件で分散エアー144を噴出して、光源160から照射されたレーザービーム170を通過するように粒状核剤152(測定対象)を測定部150内の空気中に分散させた。その後、粒状核剤152は吸引ノズル120内に吸引させた。
測定部150内において、空気中に分散した粒状核剤152により散乱された光を、集光レンズ180を介して検出器190で測定した。その測定結果に基づいて、粒状核剤152の粒子径分布を得た(高分散型乾式測定)。
手順Aにおいて、分散圧(試料に噴出される分散エアー144のエアー圧)を30psi(2.1kgf/cm
2)に設定した。また、光源として、同一波長のレーザービーム170を2本使用し、分解能を高める条件を採用した。
得られた粒状核剤152の粒子径分布のうち、体積平均粒子径をMvA、個数平均粒子径をMnAとし、式:WA=MvA/MnAに基づいて、粒子径分布の広がりWAを算出した。結果を表1に示す。
【0076】
・手順B(加圧処理後の粒子径分布):
手順Aの測定対象とした粒状核剤に対して、
図2に示す手順に基づいて加圧処理を実施した。
まず、アルミニウム箔製のトレイ10(幅:50mm、奥行き:60mm、高さ:20mm)を準備し、トレイ10の内部に、13gの粒状核剤(試料20)を充填した。試料20上に鉛製のおもり30(質量:1.8kg、接地面積:30cm
2)を配置し、60g/cm
2の荷重を試料20に付与した状態で、40℃、相対湿度80%の恒温オーブン内に、トレイ10を24時間静置した(加圧処理)。
【0077】
続いて、トレイ10から取り出した加圧処理後の試料20を、
図1(b)に示すサンプルホルダー130にセットし、測定部150内を吸引ノズル120に吸引させた。続いて、吸引ノズル120の吸引圧(負圧)によって、分散エアー供給部110から飛散した粒状核剤154(測定対象)を、光源160から照射されたレーザービーム170を通過するように空気中に分散させた。このとき、続いて、コンプレッサ140(分散機)から圧縮空気を供給しなかった。その後、粒状核剤154は吸引ノズル120内に回収された。
測定部150内において、空気中に分散した粒状核剤154により散乱された光を、集光レンズ180を介して検出器190で測定した。その測定結果に基づいて、粒状核剤154の粒子径分布を得た(非分散型乾式測定)。
手順Bにおいて、コンプレッサ140(分散機)を使用せず、分散圧(試料に噴出される分散エアー144のエアー圧)を0psiに設定した。また、光源として、同一波長のレーザービーム170を2本使用し、分解能を高める条件を採用した。吸引ノズル120の吸引圧は、手順Aと同一とした。
得られた粒状核剤154の粒子径分布のうち、体積平均粒子径をMvB、個数平均粒子径をMnBとし、式:WB=MvB/MnBに基づいて、粒子径分布の広がりWBを算出した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
上記の粒子径分布の結果を踏まえ、「WA/WB」に基づいて、得られた試験例1〜4の粒状核剤D〜Gを、実施例1〜4の粒状核剤として使用し、得られた試験例5、6の粒状核剤H、Cを、比較例1、2の粒状核剤として使用した。
各実施例および各比較例の粒状核剤について、下記の評価項目に基づいて評価を実施した。
【0080】
(圧縮度測定)
粉体特性評価装置(セイシン企業社製、マルチテスター MT−02)を用いて、得られた粒状核剤のゆるめかさ密度(g/cm
3)、固めかさ密度(g/cm
3)を用いて測定した。得られた結果から、圧縮度(%)=[(「固めかさ密度」−「ゆるめかさ密度」)/「固めかさ密度」]×100に基づいて、圧縮度(%)を算出した。
【0081】
(分散度)
粉体特性評価装置(セイシン企業社製、マルチテスター MT−02)を用いて、得られた粒状核剤の分散度(%)を測定した。
【0082】
(排出時間)
粉体特性評価装置(セイシン企業社製、マルチテスター MT−02)を用いて、得られた粒状核剤を、粉体特性評価装置のフィーダーに10g充填し、フィーダー振動幅0.3mmの条件で振動させたときの排出時間(s)を計測した。
【0083】
上記の圧縮度、分散度、排出速度において、測定対象である粒状核剤として、下記の手順aに従って準備したサンプルa、下記の手順bに従って準備したサンプルbを使用した。圧縮度、分散度、排出速度については、手順aで準備した3つのサンプルaで測定し、3つの平均値を測定値とした。手順bで準備したサンプルbについても同様とした。
(手順a)
作製された直後の粒状核剤を測定対象(サンプルa)とした。ただし、圧縮度を測定する場合、710μmの試験ふるいを通した粒状核剤を測定対象(サンプルa)とした。
(手順b)
手順aの測定対象とした粒状核剤について、上記手順Bに記載の加圧処理と同様の加圧処理したものを測定対象(サンプルb)とした。
【0084】
<流動特性>
測定された圧縮度から上記手順aと手順bとの間での圧縮度変化率=|(サンプルbの圧縮度−サンプルaの圧縮度)/サンプルaの圧縮度|×100(%)を算出し、得られた加圧処理前後の圧縮度変化率を下記評価基準に基づいて評価した。結果を表3に示す。
<粉塵特性>
測定された分散度から上記手順aと手順bとの間での分散度変化率=|(サンプルbの分散度−サンプルaの分散度)/サンプルaの分散度|×100(%)を算出し、得られた加圧処理前後の分散度変化率を下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示す。
【0085】
<フィード安定性>
測定されたサンプルaの排出時間a(s)、サンプルbの排出時間b(s)のそれぞれについて、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示す。
【0086】
上記の圧縮度変化率、分散度変化率、および排出時間について、下記の評価基準に基づいて評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
・圧縮度変化率
◎:変化率が小さく、流動性の性状変化が少なかった。
○:変化率が比較的大きいが、流動性の性状変化が実用上問題ない範囲であった。
×:変化率が大きく、流動性の性状変化が大きかった。
・分散度変化率
◎:変化率が小さく、粉塵性の性状変化が少なかった。
○:変化率が比較的大きいが、粉塵性の性状変化が実用上問題ない範囲であった。
×:変化率が大きく、粉塵性の性状変化が大きかった。
・排出時間
◎:排出時間aおよび排出時間bが小さく、フィード安定性が良好であった。
○:排出時間aは小さく、排出時間bが比較的大きいが、運転停止は生じないため、フィード安定性は実用上問題ない範囲であった。
×:排出時間aまたは排出時間bの測定中、所定時間経過後に運転停止が生じたため、フィード安定性が低下した。
【0088】
【表2】
【0089】
表2中、「>30」は30秒以降排出がなく、運転が停止したことを表す。
【0090】
【表3】
【0091】
<透明化性>
ポリプロピレンの100重量部に、得られた各実施例の粒状核剤の0.1重量部を混合した組成物をヘンシェルミキサーで1分間混合し、230℃、150rpmの条件で押出加工してペレットを製造した。これを200℃で射出成形して得た厚さ1mmの試験片について、JIS K7136に準じてHaze(ヘイズ値:%)を測定した。
【0092】
実施例1〜4の粒状核剤は、比較例1と比べて、粉塵特性に優れており、比較例2と比べて、粉塵特性およびフィード安定性に優れることから、粉体性状変化が抑制された良好な粉体特性を示すことが分かった。したがって、包装後に長期保管された後でも、粉体特性の変化が抑制された粒状核剤を実現できる。
また、実施例1〜4の粒状核剤は、流動特性に優れており、実用上問題ない範囲でヘイズ値が小さく、結晶性高分子の透明性を向上できることから、核剤・透明化剤として好適に利用できることが分かった。
【解決手段】本発明の粒状核剤は、所定の式で表される芳香族リン酸エステル金属塩を含む粒状核剤であって、加圧処理前の粒子径分布の広がりWAと、加圧処理後の粒子径分布の広がりWBが、式:0.3≦WA/WB≦13.5以下を満たすものである。