特許第6397184号(P6397184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397184起泡性および泡保持性のある液状飲食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397184
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】起泡性および泡保持性のある液状飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20180913BHJP
【FI】
   A23L27/00 B
   A23L27/00 D
   A23L27/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-254418(P2013-254418)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112031(P2015-112031A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100120905
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 伸子
(72)【発明者】
【氏名】鮒 彩
(72)【発明者】
【氏名】松尾 里紗
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−000073(JP,A)
【文献】 特開2013−135659(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/027648(WO,A1)
【文献】 特開2002−191301(JP,A)
【文献】 特開2012−223186(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/078335(WO,A1)
【文献】 特開2000−014325(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0317531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸含有液状飲食品に、(A)大豆多糖類と、(B)ゼラチンまたはコラーゲンペプチドと、(C)小麦グルテン分解物、トウモロコシ由来タンパク質分解物、または豚肉由来タンパク質分解物から選ばれるタンパク質分解物とを配合した液状飲食品組成物であって、該液状飲食品組成物中の成分(A)の含有量が0.1〜5.0(w/w%)であり、成分(A)と成分(B)との含有量の質量比[(A)/(B)]が0.08〜16.0であり、成分(A)と成分(C)との含有量の質量比[(A)/(C)]が0.04〜40.0であることを特徴とする、液状飲食品組成物。
【請求項2】
脂質の含量が、液状飲食品組成物に対し、0.5(w/w%)以下である、請求項に記載の液状飲食品組成物。
【請求項3】
有機酸含有液状飲食品がぽん酢、調味酢、つゆ、たれ、ドレッシング、または有機酸含有飲料である、請求項1または2に記載の液状飲食品組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の液状飲食品組成物を起泡させた泡状飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性および泡保持性のある液状飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
泡は、口当たりや食感をまろやかでソフトにする効果や、視覚的な楽しさが得られるため、ビールなどの発泡飲料、ホイップクリームやムース、ドレッシング等の調味料など多種多様な飲食品に利用されている。
【0003】
飲食品に起泡性を付与し、また起泡後の泡保持性を向上させるために、これまで様々な起泡剤や泡保持剤が検討されており、卵白、コラーゲン、ゼラチン、カゼイン、グルテンなどのタンパク質またはその加水分解物、増粘多糖類(大豆多糖類、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、アラビアガム、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム等)、界面活性剤(大豆サポニンやキラヤサポニンなどの植物抽出サポニン、グリセロール・プロピレングリコール・ソルビタン・ショ糖などの脂肪酸エステル等)などがその代表例である。
【0004】
上記の起泡剤や泡保持剤は、通常は飲食品の種類や目的に応じて複数の成分を組み合わせて用いられている。例えば、液体調味料に、ゼラチンなどの起泡剤とキラヤ抽出物とを配合した起泡性調味料(特許文献1)、サポニンと大豆多糖類またはガム類との組み合わせを含有する飲料用起泡剤及び/又は泡安定剤(特許文献2)、乳原料に、起泡素材と水溶性カラギナンを配合した泡状食品(特許文献3)などが報告されている。
【0005】
しかしながら、従来の起泡性飲食品はいずれも起泡性および泡保持性の両面から十分に満足できるものはなく、用いる起泡剤や泡保持剤によっては苦味やえぐ味を感じることもある。また、泡状にして食材の上にかけて使用する起泡性調味料の場合、例えば揚げ物のように油分の多い食材であると、泡が油と混ざって泡が消滅し、食材の上に泡が付着した状態を長く維持できない。また、飲食品はその種類によって含まれる原料や原料由来成分が異なり、それらの違いによって起泡性および泡保持性が影響されることもある。さらに、起泡性飲食品の泡形成および泡保持性能は、製造直後から時間の経過により低下するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−223186号公報
【特許文献2】特開2007−181427号公報
【特許文献3】特開2002−191301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、起泡性および泡保持性ともに優れ、油との接触においても泡が消滅せず、しかも起泡性および泡保持性が長期間保存後も低下しない液状飲食品組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、有機酸含有液状食品に、大豆多糖類と、ゼラチン、コラーゲンペプチド、またはガム類とを特定量配合することによって、油との接触においても安定に泡を保持でき、しかも長期間保存後も起泡性および泡保持性が低下しないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)有機酸含有液状飲食品に、(A)大豆多糖類と、(B)ゼラチン、コラーゲンペプチド、またはガム類とを配合した液状飲食品組成物であって、該液状飲食品組成物中の成分(A)の含有量が0.1〜5.0(w/w%)であり、成分(A)と成分(B)との含有量の質量比[(A)/(B)]が0.08〜16.0であることを特徴とする、液状飲食品組成物。
(2)ガム類が、アラビアガム、キサンタンガム、またはガティガムである、(1)に記載の液状飲食品組成物。
(3)さらに(C)タンパク質分解物を配合した(1)または(2)に記載の液状飲食品組成物。
(4)脂質の含量が、液状飲食品組成物に対し、0.5(w/w%)以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の液状飲食品組成物。
(5)有機酸含有液状飲食品がぽん酢、調味酢、つゆ、たれ、ドレッシング、または有機酸含有飲料である、(1)〜(4)のいずれかに記載の液状飲食品組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の液状飲食品組成物を起泡させた泡状飲食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液状飲食品組成物は、耐油性のある強い泡を形成することができ、しかも苦味やえぐ味を感じることなく風味も良好である。よって、本発明の液状飲食品組成物を起泡させ、揚げ物などの油を含む食材に用いても、泡が液状化して食材に浸透しないので、カラッとした食感と泡の食感が時間がたっても維持される。また、本発明の液状飲食品組成物の起泡性と泡保持性は長期間保存した場合であっても低下することがない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液状飲食品組成物は、有機酸含有液状飲食品に、(A)大豆多糖類と、(B)ゼラチン、コラーゲンペプチドまたはガム類とを配合したものである。
【0012】
本発明において使用する有機酸含有液状飲食品は、有機酸を含有している限り特に限定はされないが、例えば、ぽん酢、調味酢、つゆ(天つゆ、麺つゆ、鍋つゆ)、たれ、ドレッシング、有機酸含有飲料、ウスターソース等のソース類、フルーツソース、ジャムなどが挙げられ、さらにホイップクリーム、ムース、パン用スプレッド、菓子等のフィリング、デザート・ヨーグルト・アイスクリーム・ババロア・プリン等のトッピングやデコレーションなどの用途に使用できる液状物などが挙げられる。ここで、有機酸としては、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、フマール酸などが挙げられる。また、酢酸は、通常食酢の形態で含まれ、食酢としては、醸造酢、米酢、黒酢、玄米酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢などの穀物酢や、リンゴ酢、ブドウ酢、レモン酢、カボス酢や梅酢などの果実酢が挙げられる。本発明の液状飲食品組成物中の有機酸濃度は、有機酸含有液状飲食品の種類により限定はされないが、0.001〜15(w/w%)が好ましい。
【0013】
(A)の大豆多糖類は、起泡剤として配合する。本発明において、大豆多糖類とは、大豆に由来する水溶性の多糖類をいい、大豆食物繊維または水溶性大豆ヘミセルロース等と称されるものが包含される。大豆多糖類は、通常、大豆から分離大豆タンパク質を製造する過程で生成する不溶性食物繊維から、抽出・精製され、必要に応じて殺菌して調製することができる。大豆多糖類は、例えば、「ソヤファイブ―S−LN(不二製油株式会社製)」、「ソヤファイブ−S−DN(不二製油株式会社製)」、「SM−700(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」、「SM−900(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」、「SM−1200(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」などの市販品を用いることができ、これらを混合して用いてもよい。
【0014】
(B)のゼラチン、コラーゲンペプチドまたはガム類は泡保持剤として配合する。ゼラチンは、牛、豚、魚などの動物の皮膚、骨、腱などの結合組織の主成分であるコラーゲンを熱変性し、可溶化したものであり、ゼラチン化は、コラーゲン原料を酸またはアルカリで前処理した後、加熱抽出することによって行う。また、コラーゲンペプチドは、コラーゲンまたはゼラチンを酵素処理等によってさらに低分子化したものでオリゴペプチドの混合物である。ゼラチン、コラーゲンペプチドの原料となるコラーゲンは、牛、豚などの哺乳動物由来、鶏などの鳥類由来、または鮫などの魚類由来のいずれでもよく、限定はされない。
【0015】
ガム類としては、増粘多糖類として食品に利用されているガム類であれば特に限定はされないが、例えば、アラビアガム、キサンタンガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カラヤガム、ジェランガムなどが挙げられ、アラビアガム、キサンタンガム、ガティガムが好ましい。また、これらのガム類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0016】
また、上記の泡保持剤として配合する、ゼラチン、コラーゲンペプチド、ガム類は、いずれか1種であっても2種以上を組み合わせてもよい。また、これらはいずれも食品原料または食品添加物とし入手可能な市販品を用いればよい。
【0017】
本発明の液状飲食品組成物中の成分(A)の含有量は0.1〜5.0(w/w%)、好ましくは0.1〜2.0(w/w%)、より好ましくは0.4〜2.0(w/w%)である。また、同組成物中の成分(A)と成分(B)との含有量の質量比[(A)/(B)]は0.08〜16.0、好ましくは0.16〜16.0、より好ましくは0.8〜16.0、最も好ましくは0.8〜8.0である。成分(A)の含有量と、成分(A)の含有量と成分(B)との含有量の質量比[(A)/(B)]が上記の範囲内であると、泡が良好に形成されるともに、形成された泡が長く保持される。成分(B)の含有量は0.05〜10.0(w/w%)、好ましくは0.05〜5.0(w/w%)、より好ましくは0.1〜5.0、最も好ましくは0.1〜1.0(w/w%)である。
【0018】
本発明の液状飲食品組成物には、起泡性と泡保持性を長期間の保存後にも維持するために、保存性向上剤として(C)タンパク質分解物を配合してもよい。タンパク質分解物のタンパク質は植物由来であっても動物由来であってもよい。例えば、植物由来のタンパク質分解物としては、トウモロコシ、小麦、大麦、大豆、米、菜種などからタンパク質を多く含む画分を原料とし、これを酸、アルカリまたは酵素によって加水分解したものが挙げられる。また、動物由来のタンパク質分解物としては、牛肉、豚肉、鶏肉からタンパク質を多く含む画分を原料とし、これを酸、アルカリまたは酵素によって加水分解したものが挙げられる。好ましい例として、小麦グルテン分解物、トウモロコシ由来タンパク質分解物、豚肉由来タンパク質分解物を挙げることができ、分解物は酵素分解物が好ましい。本発明の液状飲食品組成物に(C)タンパク質分解物を配合する場合、成分(A)と成分(C)との含有量の質量比[(A)/(C)]は0.04〜40.0、好ましくは0.08〜40.0、より好ましくは0.08〜8.0である。成分(A)の含有量と成分(C)との含有量の質量比[(A)/(C)]が上記の範囲内であると、上記の起泡性と泡保持性が長期間、例えば6ヶ月〜1年の保存後も良好に維持される。成分(C)の含有量は0.02〜20.0(w/w%)、好ましくは0.02〜10.0(w/w%)、より好ましくは0.1〜10.0(w/w%)である。
【0019】
本発明の液状飲食品組成物は、その起泡性や泡保持性、飲食品の風味を損なわない範囲で目的とする泡状飲食品の種類に応じた調味成分を配合する。調味成分としては、例えば、糖類(グルコース、フラクトース、スクロース、マルトース、水飴、異性化液糖、スクラロースなどの高甘味度甘味料など)、風味原料(鰹だし、昆布だし、昆布エキス、畜肉エキス、家禽エキス、魚介エキス、果汁など)、食塩、酸味料(クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸など)、旨味調味料(醤油、酵母エキスなど)、アミノ酸系調味料(グリシン、アラニン、グルタミン酸ナトリウムなど)、核酸系調味料(イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなど)、有機酸系調味料(コハク酸ナトリウムなど)などの呈味原料、柑橘果汁(ゆず、すだち、かぼす、だいだい、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツなど)、スパイス類やハーブ類等の香辛料が挙げられる。また、本発明の液状飲食品組成物には、食品に許容されているpH調整剤、酸化防止剤、着色料、香料等などの食品添加物も必要に応じて配合してもよい。
【0020】
本発明の液状飲食品組成物は、脂質の含量が、該組成物に対し、0.5(w/w%)以下であり、脂質をまったく含まなくてもよい。
【0021】
本発明の液状飲食品組成物は、良好な起泡性と泡保持性を発揮する上で、粘度は1〜100mPa・sであり、好ましくは1〜50mPa・sであり、より好ましくは1〜20mPa・sである。また、pHは、1.5〜7、好ましくは2〜6である。
【0022】
本発明の液状飲食品組成物は、起泡性および泡保持性を有する。起泡性とは、攪拌や空気の混和によって泡を形成させる作用をいい、泡保持性とは、形成された泡の形状を保つ作用、特には油と接触しても泡が消滅することなく保持できる作用をいう。
【0023】
本発明の液状飲食品組成物は、有機酸含有液状飲食品に、上記の成分(A)、成分(B)、必要により成分(C)を配合して製造するが、製造方法は、当該有機酸含有液状飲食品の通常の製造方法に従えばよい。例えば、有機酸含有液状飲食品の原料、成分(A)、成分(B)、成分(C)のうち、紛体原料を水に攪拌混合した後、次いで液体原料を添加し、混合機で混合しながら紛体原料を溶解させ、その後滅菌処理をして冷却する。
【0024】
本発明の液状飲食品組成物を起泡化させることにより、泡状飲食品が得られる。起泡化させる方法としては、例えば、ホモジナイザー、ホイップクリーム用起泡装置、ハンドミキサー、泡ポンプなどが使用できるが、液状飲食品組成物を充填し、泡で吐出させることができるノンエアゾール型泡吐出容器(ノンガスフォーマー容器)が好ましい。ノンエアゾール型泡吐出容器とは、一定量の液状飲食品組成物を一定量の空気と混合して発泡させ、シート状多孔体(メッシュ)を通して均一できめ細かい泡を吐出する種類の容器であって、例えば、軟質容器の胴部を手指で押圧することにより泡を吐出するスクイズ容器や、ポンプ機構を備えたキャップの頭を手指で押圧することにより泡を吐出するフォーマーポンプが挙げられる。
【0025】
本発明の液状飲食品組成物は、サラダ、揚げ物、焼き物(ステーキ、焼き魚)、豆腐、納豆、麺類、惣菜、鍋もの、菓子類やパン類などに使用することができる。具体的には、これら食材の上に載せたり、泡が消えないように軽く絡めたり、和えたりして使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0027】
(実施例1−1、比較例1−1〜1−7)起泡剤の種類の検討
(1)試験品の調製
下記表1に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、ぽん酢の試験品を調製した。
【0028】
(2)評価試験
(1)で調製した試験品を市販のノンエアゾール型泡吐出容器(ポンプフォーマー)に入れ、容器から押し出して泡状ぽん酢を作成し、起泡性を評価した。また、泡状ぽん酢を皿及び市販のハム上に載せ、15分間放置し、泡保持性と油に対する泡保持性を評価した。また、風味(香りの特徴)の評価は、調製直後の試験品について習熟した官能検査員によって行った。各試験項目の評価基準は以下のとおりである。
【0029】
<起泡性>5段階評価
5:きめ細かい気泡が形成され角が立つ。
4:きめ細かい気泡が形成され角はないが立体的な泡である。
3:泡は形成されるが、立体的ではない。
2:泡が形成されるがすぐに消えてしまう。
1:泡が形成されず液状である。
【0030】
<泡保持性>4段階評価
5:泡状ぽん酢を皿にのせた後、15分経過しても、きめ細かい気泡が形成され角が立っている。
4:泡状ぽん酢を皿にのせた後、15分経過しても、きめ細かい気泡が形成され角は立たないが立体的な泡が保持されている。
3:泡状ぽん酢を皿にのせた後、15分経過しても、立体的ではないが泡が保持されている:
2:泡状ぽん酢を皿にのせた後、15分経過後、泡が保持されず、液状となる。
【0031】
<油に対する泡保持性>4段階評価
5:泡状ぽん酢を市販のハムにのせた後、15分経過しても、きめ細かい気泡が形成され角が立っている。
4:泡状ぽん酢を市販のハムにのせた後、15分経過しても、きめ細かい気泡が形成され角は立たないが立体的な泡が保持されている。
3:泡状ぽん酢を市販のハムにのせた後、15分経過しても、立体的ではないが泡が保持されている。
2:泡状ぽん酢を市販のハムにのせた後、15分経過後、泡が保持されず、液状である。
【0032】
<風味>
○:良好な風味を有する。
△:苦味やえぐ味が感じられる。
【0033】
<総合評価>
◎:起泡性、泡保持性の平均が4.5以上、泡保持性(油)が4、香味が○
○:起泡性、泡保持性の平均が4以上、泡保持性(油)が4または3、香味が○
△:起泡性、泡保持性の平均が4以上、泡保持性(油)が3または香味が△
×:起泡性、泡保持性の平均が4未満、泡保持性(油)が2
【0034】
(3)結果
以上の評価結果を表1に合わせて示す。表中、泡保持性(油)は、油に対する泡保持性を意味する。また、粘度は、B型粘度計を用いて、20℃、回転数30rpmで20秒間測定した値である(以降の実施例および比較例も同じ)。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すとおり、大豆多糖類とゼラチンを配合した試験品は、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味のいずれの評価も良好であった(実施例1−1)。これに対し、大豆多糖類とゼラチンを配合しない試験品(比較例1−1)、大豆多糖類またはゼラチンのいずれかを配合しない試験品(比較例1−2、比較例1−3)は起泡性が十分でなかったり、起泡しても泡保持性、特に油に対する泡保持性に劣っていた。また、ゼラチンとの組み合わせについて、大豆多糖類以外の他の起泡性成分(コラーゲンペプチド、キサンタンガム、キラヤサポニン、グリセリン)では、起泡性が十分でなかったり、起泡しても泡保持性、特に油に対する泡保持性に劣っていたり、苦みやえぐみが感じられた(比較例1−4〜1−7)。
【0037】
(実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−2)大豆多糖類の配合量の検討
下記表2に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、ぽん酢の試験品を調製した。
得られた試験品について、前述と同じ試験方法および評価基準にて、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味を評価した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すとおり、大豆多糖類の配合量が、全量に対して0.1〜5.0(w/w%)の範囲で、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味のいずれの評価も良好であった(実施例2−1〜2−5)。
【0040】
(実施例3−1〜3−5)他の泡保持剤の検討
下記表3に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、ぽん酢の試験品を調製した。
得られた試験品について、前述と同じ試験方法および評価基準にて、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味を評価した。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3に示すとおり、大豆多糖類との組み合わせについて、ゼラチンに代えて他の泡保持成分(アラビアガム、ガティガム、コラーゲンペプチド、キサンタンガム)を使用しても、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味のいずれの評価も良好であった(実施例3−1〜3−5)。
【0043】
(実施例4−1〜4−5、比較例4−1〜4−2)大豆多糖類とゼラチンの配合比の検討
下記表4に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、ぽん酢の試験品を調製した。
得られた試験品について、前述と同じ試験方法および評価基準にて、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味を評価した。結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
表4に示すとおり、大豆多糖類とゼラチンとの含有量の質量比[(A)/(B)]は0.08〜16.0の範囲では、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味のいずれの評価も良好であった(実施例4−1〜4−5)。
【0046】
(実施例5−1〜5−7)保存性向上剤の検討
下記表5に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、ぽん酢の試験品を調製した。
得られた試験品について、前述と同じ試験方法および評価基準にて、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味を評価した。また、保存性は、試験品を60℃で8日間静置した後、同様にして泡保持性を皿に載せて評価した。結果を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
表5に示すとおり、大豆多糖類とゼラチンに加えて、小麦グルテン分解物(大日本明治製糖株式会社製)、トウモロコシ由来タンパク質分解物(大日本明治製糖株式会社製)、または豚肉由来タンパク質分解物(大日本明治製糖株式会社製)を配合すると、起泡性および泡保持性は非常に良好であるのに加え、保存性も認められた(実施例5−1〜5−7)。
【0049】
(実施例6)有機酸含有飲料の製造
下記表6に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、有機酸含有飲料の試験品を調製した。
得られた試験品について、前述と同じ試験方法および評価基準にて、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、保存性、風味を評価した。結果を表6に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
表6に示すとおり、大豆多糖類とゼラチンを配合すると起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味のいずれの評価も良好であった(実施例6−2〜6−3)。また、大豆多糖類とゼラチンに加えて小麦グルテン分解物(大日本明治製糖株式会社製)も配合すると、油に対する泡保持性や保存性も向上した(実施例6−1)。これに対し、大豆多糖類とゼラチンを配合しない試験品、大豆多糖類またはゼラチンのいずれかを配合しない試験品は起泡性が十分でなかったり、起泡しても泡保持性、特に油に対する泡保持性に劣っていた(比較例6−1〜6−3)。
【0052】
(実施例7)つゆの製造
下記表7に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、つゆの試験品を調製した。
得られた試験品について、前述と同じ試験方法および評価基準にて、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、保存性、風味を評価した。結果を表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
表7に示すとおり、大豆多糖類とゼラチンを配合した試験品は、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味のいずれの評価も良好であった(実施例7−2〜7−3)。大豆多糖類とゼラチンに加えて小麦グルテン分解物(大日本明治製糖株式会社製)も配合すると、保存性も向上した(実施例7−1)。これに対し、食酢を配合しない試験品(比較例7−1)、大豆多糖類とゼラチンを配合しない試験品(比較例7−4)、大豆多糖類またはゼラチンのいずれかを配合しない試験品(比較例7−2、7−3)は起泡性が十分でなかったり、また起泡しても泡保持性、特に油に対する泡保持性に劣っていた。
【0055】
(実施例8)調味酢
下記表8に示す配合量(単位はすべてg)で各原料を水に混合溶解し、調味酢の試験品を調製した。
得られた試験品について、前述と同じ試験方法および評価基準にて、起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、保存性、風味を評価した。結果を表8に示す。
【0056】
【表8】
【0057】
表8に示すとおり、大豆多糖類とゼラチンを配合すると起泡性、泡保持性、油に対する泡保持性、風味のいずれの評価も良好であり(実施例8−2)、大豆多糖類とゼラチンに加えて小麦グルテン分解物(大日本明治製糖株式会社製)も配合すると、保存性も向上した(実施例8−1)。これに対し、大豆多糖類とゼラチンを配合しない試験品、大豆多糖類またはゼラチンのいずれかを配合しない試験品は起泡性が十分でなかったり、また起泡しても泡保持性、特に油に対する泡保持性に劣っていた(比較例8−1〜8−3)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
調味料などの飲食品の製造分野において利用できる。