特許第6397297号(P6397297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397297形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法および形状測定装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397297
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法および形状測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/14 20060101AFI20180913BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G01B11/14 Z
   G01B11/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-203957(P2014-203957)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-75476(P2016-75476A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】和泉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】進藤 秀樹
【審査官】 池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−241109(JP,A)
【文献】 米国特許第6618496(US,B1)
【文献】 特開2012−047743(JP,A)
【文献】 実開平06−065807(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物表面にアプローチして被測定物を検出するポイントセンサと、被測定物と前記ポイントセンサとを三次元的に相対移動させる移動機構と、前記ポイントセンサの検出ポイントを所望の測定開始点に合わせるための位置合わせ手段と、を備えた形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法であって、
前記位置合わせ手段は、二以上のレーザー光源で構成され、前記二以上のレーザー光源からのレーザー光は、前記検出ポイントからさらに所定距離Dz分前記ポイントセンサから離間した位置である調整ポイントで交差するようになっており、
オフセット算出用のワークとして光電センサを用意し、
前記調整ポイントを光電センサ上に位置合わせし、
このときの移動機構の座標値(X2、Y2、Z2)と、光電センサ上の受光点の座標値(x2、y2、0)と、を取得し、
前記検出ポイントを前記光電センサ上に位置合わせし、
このときの移動機構の座標値(X1、Y1、Z1)と、光電センサ上の受光点の座標値(x1、y1、0)と、を取得し、
前記オフセット(ΔX、ΔY、Dz)を、
ΔX=(X2−X1)+(x2−x1)
ΔY=(Y2−Y1)+(y2−y1)
Dz=(Z2−Z1)
とする
ことを特徴とする形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法において、
前記光電センサの受光面積が最小を示したとき、前記調整ポイントまたは前記検出ポイントが前記光電センサ上に来たと判定する
ことを特徴とする形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法で求めたオフセットをコンピュータのメモリに記憶し、
前記調整ポイントを被測定物表面上の所望の測定開始点に位置合わせした後、
コンピュータ自動制御によって前記オフセットの分だけ前記ポイントセンサと被測定物とを相対移動させる
ことを特徴とする形状測定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状測定装置に関する。例えば、接触または非接触で被測定物表面を走査することで被測定物の形状、表面粗さ、真円度などを測定する形状測定装置に関する。より具体的には、形状測定装置の検出ポイントをユーザの意図する測定開始点に位置合わせできるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を検出するセンサとして、例えば、接触式のプローブやスタイラスがある。あるいは、光学式や静電容量式の非接触センサなども知られている(特許文献1、特許文献2)。本明細書では、これらのセンサをポイントセンサと称することにする。これらポイントセンサは、被測定物表面の法線方向に沿って被測定物表面にアプローチし、法線上における被測定物表面の位置(座標)を検出する。(もちろん、斜めからアプローチするのも不可能ではない。それ相応の補正機能を組み込んでおけば斜めからアプローチしてもよい。)ポイントセンサを被測定物表面に沿って走査すれば、走査線上における被測定物表面の形状、粗さ、うねりなどが詳細にわかる。これらセンサで被測定物表面を走査することで被測定物の形状、表面粗さ、真円度などを測定する形状測定装置が利用されている。
【0003】
形状測定装置で被測定物(ワーク)を測定するにあたっては、まず当然のことながら、ポイントセンサの検出ポイントを測定開始点にセッティングしなければならない。すなわち、ワークのどこを測定したいか決めたうえで、ポイントセンサの検出ポイントを測定したいところに位置合わせしなければならない。
【0004】
測定開始点への位置合わせ方法として、例えば次のような方法が既に提供されている(非特許文献1)。形状測定装置には、ポイントセンサに加えて画像センサが併設されているとする。まずはじめに画像センサでワーク全体を画像測定しておく。これでワーク画像が予備的に取得される。このワーク画像の中で詳細に測定を要する範囲を決め、ワーク画像中の座標値を用いて測定開始点と測定終了点とを指示する。すると、形状測定装置は指示された座標値にポイントセンサを移動させて測定を開始する。これで、ユーザの意図した通りの測定が実行され、ユーザは所望の測定結果を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4929161号
【特許文献2】特開2008−256679号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】出願人の製品カタログを掲載したウェブサイトhttp://www.mitutoyo.co.jp/support/service/catalog/11_gazo/14007.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、画像センサが併設された形状測定装置というのは当然のことながら価格が高い。
一般の形状測定装置にはポイントセンサしか付いていないのが普通なのであって、予備的に取得したワーク画像の座標値で測定開始点を指示するというのは無理である。
したがって、ユーザが目視と手の感覚を頼りに手動でポイントセンサを測定開始点に位置合わせするというのがやむを得ない唯一の方法となるが、これはそれほど簡単なことではない。
【0008】
一例としてクロマチックポイントセンサ(CPS)を考えてみる(特許文献1、2)。
(クロマチックポイントセンサ(CPS)は、共焦点(コンフォーカル)顕微鏡と言われることもある。)
CPSは、ワーキングディスタンスが極めて短く、例えば5mmから20mm程度である。
それに対して、鏡筒の径は50mm程度ある。
したがって、CPSの検出ポイントというのは鏡筒の外側から覗こうにも見えない。
また、CPSはワークに向けて光を発射するものであるが、光のスポット径は2μmから4μmと極めて微小であり、肉眼で目視することは難しい。
【0009】
接触式のポイントセンサであっても同じような問題がある。
例えば、スキッドタイプの接触式ポイントセンサが広く普及している。
スキッドタイプの接触式ポイントセンサにあっては、貫通孔を有するスキッドの中にスタイラスが配設されており、スキッドからスタイラスの先端だけが僅かに飛び出ている(例えば0.5mm程度飛び出している)。この場合も、スタイラスの先端がワークのどこに接触しているかは直接には見えず、意図した測定開始点に当たっているかどうかは究極的にはユーザの経験と勘が頼りとなる。
【0010】
何度かアプローチし直せば意図した通りの位置合わせができるかもしれないが、やはり時間は掛かる。
【0011】
本発明の目的は、容易にかつ迅速にポイントセンサの検出ポイントを測定開始点に位置合わせできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法は、
被測定物表面にアプローチして被測定物を検出するポイントセンサと、被測定物と前記ポイントセンサとを三次元的に相対移動させる移動機構と、前記ポイントセンサの検出ポイントを所望の測定開始点に合わせるための位置合わせ手段と、を備えた形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法であって、
前記位置合わせ手段は、二以上のレーザー光源で構成され、前記二以上のレーザー光源からのレーザー光は、前記検出ポイントからさらに所定距離Dz分前記ポイントセンサから離間した位置である調整ポイントで交差するようになっており、
オフセット算出用のワークとして光電センサを用意し、
前記調整ポイントを光電センサ上に位置合わせし、
このときの移動機構の座標値(X2、Y2、Z2)と、光電センサ上の受光点の座標値(x2、y2、0)と、を取得し、
前記検出ポイントを前記光電センサ上に位置合わせし、
このときの移動機構の座標値(X1、Y1、Z1)と、光電センサ上の受光点の座標値(x1、y1、0)と、を取得し、
前記オフセット(ΔX、ΔY、Dz)を、
ΔX=(X2−X1)+(x2−x1)
ΔY=(Y2−Y1)+(y2−y1)
Dz=(Z2−Z1)
とする
ことを特徴とする。
【0013】
本発明では、
前記光電センサの受光面積が最小を示したとき、前記調整ポイントまたは前記検出ポイントが前記光電センサ上に来たと判定する
ことが好ましい。
【0014】
形状測定装置の制御方法は、
前記形状測定装置の位置合わせオフセット算出方法で求めたオフセットをコンピュータのメモリに記憶し、
前記調整ポイントを被測定物表面上の所望の測定開始点に位置合わせした後、
コンピュータ自動制御によって前記オフセットの分だけ前記ポイントセンサと被測定物とを相対移動させる
ことを特徴とする。
【0015】
本発明の形状測定装置は、
被測定物表面にアプローチして被測定物を検出するポイントセンサと、
被測定物と前記ポイントセンサとを三次元的に相対移動させる移動機構と、
前記ポイントセンサの検出ポイントを所望の測定開始点に合わせるための位置合わせ手段と、を備え、
前記位置合わせ手段は、二以上のレーザー光源で構成されており、
前記二以上のレーザー光源からのレーザー光は、前記検出ポイントからさらに所定距離分前記ポイントセンサから離間した位置である調整ポイントで交差する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明では、
前記調整ポイントは、前記ポイントセンサの測定軸線に沿って前記検出ポイントから所定距離Dz離間した位置にある
ことが好ましい。
【0017】
本発明では、
前記所定距離Dzは、前記ポイントセンサの作動距離の20倍から100倍である
ことが好ましい。
【0018】
本発明では、
当該形状測定装置には、画像測定用のイメージセンサがない
ことが好ましい。
【0019】
本発明では、
前記ポイントセンサには、測定軸と直交する方向に張り出した鍔部が付設され、
前記二以上のレーザー光源は、前記鍔部に配設されている
ことが好ましい。
【0020】
本発明では、
前記ポイントセンサは、クロマチックポイントセンサである
ことが好ましい。
【0021】
本発明では、
前記二以上のレーザー光源からのレーザー光は、互いに異なる色またはパターンを有する
ことを特徴とする形状測定装置。
【0022】
本発明の形状測定方法は、
前記形状測定装置を用いた形状測定方法であって、
前記調整ポイントをワーク上の所望の測定開始点に位置合わせし、
前記所定距離だけ前記ポイントセンサを前記ワークに接近させ、
ワークの測定走査を開始させる
ことを特徴とする。
【0023】
本発明に係るポイントセンサの位置合わせ手段は、
被測定物表面にアプローチして被測定物を検出するポイントセンサの検出ポイントを所望の測定開始点に合わせるための位置合わせ手段であって、
前記位置合わせ手段は、前記ポイントセンサの周囲に配設された二以上のレーザー光源で構成され、
前記二以上のレーザー光源からのレーザー光は、前記検出ポイントからさらに所定距離分前記ポイントセンサから離間した位置である調整ポイントで交差する
ことを特徴とする
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る形状測定装置100を示す図。
図2】CPS200とワークWとの間に距離をとった状態を示す図。
図3】CPS200とワークWとの間に距離をとった状態を模式的に示す斜視図。
図4】ワーク上に調整ポイントがくるように調整した状態を示す図。
図5】調整ポイントPcと測定開始点Pmとが重なるように位置合わせした状態を示す図。
図6】結像スポットPsが測定開始点Pmにきた状態を示す図。
図7】レーザー光のパターンの組み合わせ例を示す図。
図8】高さ方向のオフセットDzを求める様子を示す図。
図9】高さ方向のオフセットDzを求める様子を示す図。
図10】横方向オフセットDtを求める様子を示す図。
図11】横方向オフセットDtを求める様子を示す図。
図12】変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る形状測定装置100を示す図である。
ここでは、ポイントセンサとしてCPS(クロマチックポイントセンサ)200を備えた形状測定装置100を例にして説明する。
CPS200は、Z軸スピンドル110の下端に設置されている。
Z軸スピンドル110は、Z軸コラム(不図示)に上下方向(Z方向)に昇降可能に設けられている。
これによりCPS200は上下方向(Z方向)に昇降可能となっている。
【0026】
被測定物としてのワークWは、移動ステージ120の上に載置されている。
ここではワークWをただの平板として描いているが、実際には、各種のパターンや溝などが加工形成されている。
その加工精度を検査するため、検査が必要な測定対象領域が決められている。
移動ステージ120はx方向およびy方向に移動できるようになっている。
これにより、ワークWとCPS200とは三次元的に相対移動可能となっている。
【0027】
Z軸コラム(不図示)、Z軸スピンドル110および移動ステージ120から移動機構が構成されているが、移動機構は、CPS200とワークWとを三次元的に相対移動させることができればよく、上記構成に限られない。
例えば、ステージの方を固定しておいてCPS200を三次元移動可能に支持してもよいし、その逆でもよい。
また、形状測定装置が真円度測定機であれば、移動ステージ120は回転テーブルに置き換えられる。
【0028】
図1は、CPS200がワークW表面を測定している状態を真横から見た状態を示している。
CPS200は、点光源(不図示)の像がワーク表面上でスポット結像するようにワークWに測定光LMを照射する。
図中では結像点を結像スポットPsとして表わす。
CPS200から結像スポットPsまでの作動距離(ワーキングディスタンス)WDは非常に短く、例えば5mmから20mm程度である。
【0029】
図1中において、CPS200の(対物レンズの)光軸Axを示している。
CPS200は、この光軸Ax上にあるワーク表面をポイント検出するわけなので、この光軸Axを測定軸とする。CPS200は、光がレンズを通過した時に、波長によって焦点距離が異なる軸上色収差を利用した変位センサである。測定光LMをワーク表面に照射し、その反射光を分光した時に、どの波長の強度が強いかをラインセンサ上の位置として検出することで、CPS200とワーク表面の距離を測定する。この時、測定光LMをワーク表面に照射している箇所は結像スポットPsであり、これが検出ポイントに相当する。
【0030】
本実施形態において、CPS200は、測定に用いる測定光LMの他に、位置合わせ用の調整光LAを発射できるようになっている。
CPS200の鏡筒210には径方向に張り出した鍔部220が設けられている。
この鍔部220内に二つレーザー光源231、232が配設されている。
二つのレーザー光源231、232は、CPS200の(対物レンズの)光軸Axを間に挟んで互いに反対側にある。
これらレーザー光源231、232からのレーザー光が位置合わせ用の調整光LAである。
そして、調整光LA同士の交点が光軸Axに沿って結像スポットPsから所定距離Dzだけ下った点Pcに位置するように各レーザー光源231、232の角度が調整されている。
このレーザー光(調整光)LAの交点Pcを調整ポイントPcと称することにする。
【0031】
Z軸スピンドル110(CPS200)を持ち上げてCPS200とワークWとの間をユーザが覗いた時に、ユーザが調整ポイントPcを無理なく目視できる程度に所定距離Dzをとっておきたい。
Z軸スピンドル110やCPS200の大きさ(径の大きさ)にもよるので一概には言えないが、例えば、作動距離WDが2mmから4mmであるのに対し、所定距離Dzは例えば50mm、100mm、さらに場合によっては200mmぐらいあってもよい。
比率でいうと、所定距離Dzは作動距離WDの20倍から25倍、場合によっては100倍ぐらいであってもよい。
【0032】
この二つのレーザー光源231、232により位置合わせ手段が構成されている。
【0033】
さて、このような位置合わせ手段の作用効果を説明する。
【0034】
図1のように測定光LMをワークW上にスポット結像させた状態ではユーザ自身は結像スポットPsを直接見ることはできない、という点は既に説明した。
さて、図2は、Z軸スピンドル110を上昇させて、CPS200とワークWとの間に距離をとった状態を示す図である。
これを斜視図として模式的に示すと図3のようになるであろう。
レーザー光源231、232からの調整光LA、LAは、結像スポットPsから光軸Axに沿って所定距離Dzだけ下った点Pcに交点を結ぶが、現状、CPS200とワークWとの距離が広すぎる。
そのため、レーザー光(調整光)LAは交点Pcを通り過ぎてそれぞれに別れ、ワークW上には二つの照射点Peが表れるだろう。
【0035】
ユーザは、Z軸スピンドル110を上昇あるいは下降させ、二つの照射点PeがワークW上で一つの調整ポイントPcとして交わるようにする。
この状態が図4である。
この調整ポイントPcは光軸Axに沿って結像スポットPsの直下に位置するわけである。
ワークW上の所望の測定開始点が図3中の点Pmであるとする。
ユーザは、移動ステージ120を移動させて、調整ポイントPcと測定開始点Pmとが重なるようにする。
この状態が図5である。
あとは、Z軸スピンドル110を所定距離Dzだけ下降させる。
すると、図6に示すように、測定光LMの結像スポットPsが所望の測定開始点Pmにくる。
この状態から測定走査を開始すれば、所望の範囲を測定できることになる。
【0036】
なお、位置合わせ用のレーザー光源は二つに限らない。
調整ポイントPcで交差するようになっていればレーザー光源は三つでも四つでもそれ以上でもよい。
【0037】
このような第1実施形態によれば次の効果を奏する。
(1)従来、測定光LM自体は目視が難しいし、CCDカメラなどのイメージセンサが無ければ測定光LMの結像スポットPsを正確に測定開始点Pmに合わせるというのは難しかった。
この点、本実施形態の形状測定装置100では、測定開始点Pmに狙い定めるために、測定光LMとは別に位置合わせ用の調整光LA、LAを用いる。
ワークWとCPS200との距離をとった状態(図3図4)でユーザはワークW上の調整ポイントPcを目視することができる。
この調整ポイントPcを所望の測定開始点Pmに合わせるという直感的に自然な操作で測定開始点Pmに狙い定めることができる。
【0038】
(2)本実施形態では、二以上のレーザー光(調整光)LA、LAが調整ポイントPcという一点で交差するようにしている。
調整ポイントPcが一点に定まっているのであるから、測定光LMの結像スポットPsとこの調整ポイントPcとの高さ方向のオフセットDzも定まった値となる。
したがって、調整ポイントPcを測定開始点Pmに合わせた後は、決まっているオフセットDz分だけCPS200を下降させれば、ワークW上に結像スポットPsがくる。
これにより、測定開始点Pmへの位置合わせの後、迅速に測定走査に移行することができる。
これに対し、例えば、CPS200の光軸Axと平行にレーザー光を一本発射しておき、この光を位置合わせに用いるという考え方もあるかもしれない。
位置合わせをした後、CPS200の機能として、光軸Axに沿って下降しながら結像スポットPsがワークW上に来る点を自動的に検出することは可能である。
しかし、これでは位置合わせから実際の測定に移行するまでに時間が掛かり過ぎる。
この点、本実施形態によれば測定効率を下げることなく測定開始点の位置合わせも正確になるという効果がある。
【0039】
(3)本実施形態の位置合わせ手段は、CPS200の鏡筒210の周囲にレーザー光源231、232を配置するものであり、CPS200の内部構造はもちろん形状測定装置100の構成に変更を加えるものではない。
したがって、既存の形状測定装置100に後付けすることも容易である。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の基本的構成は第1実施形態と同様であるが、位置合わせ用のレーザー光に色やパターンを付けることで交点(調整ポイントPc)を認識し易くした点に特徴を有する。
レーザー光(調整光)LA、LAの照射点Peは、ある大きさを持った円形あるいは楕円形となる。
二つの照射点Peが重なるようにCPS200の高さを調整する必要があるが、重なっているかどうかを判断するのはユーザの目視である。
したがって、個人差が発生することになる。
(重なる前も重なった後でもただの楕円形であるとピッタリ重なっているのか少しズレているのか分かりにくいであろう。)
重なりが甘い(正確さに欠ける)と光軸Axからズレた点を結像スポットPsの直下と認識してしまうことになる。
これでは、結像スポットPsが所望の測定開始点Pmからズレてしまうことになる。
【0041】
そこで、交点(調整ポイントPc)を認識し易くする変形例をいくつか紹介する。
(変形例1)
一方のレーザー光LAを赤色にし、他方のレーザー光LAを青色にする。
すると、交点(調整ポイントPc)では紫色が見えるはずである。
このように、調整光LAの色が互いに異なるようにしておけば、交点(調整ポイントPc)を認識しやすい。
【0042】
(変形例2)
位置合わせ用のレーザー光LA、LAにパターンを付けて、重なりを認識し易くする。
レーザー光LAにパターンを付けるには、パターンに対応するスリットを切ったプレートを利用してもよい。
あるいは、レーザー光源231、232自体あるいはマイクロミラーを微小駆動させてパターンを描くようにしてもよい。
パターンの例を図7に列挙する。
もちろん、パターンと色とが組み合わせられてもよい。
【0043】
なお、色を付けたりパターンを付けたりして右のレーザー光LAと左のレーザー光LAとが見た目に区別できるようになると操作性の上で副次的効果もある。
照射点PeがワークW上で重なっておらず二つに見えているときには、二つの照射点Pe、Peが重なるようにCPS200を上げるか下げるかしなければならない。
しかし、上げればいいのか下げればいいのかはすぐには分からない。
もちろん、取り敢えず上げるか下げるかどちらかをやってみれば正解はすぐに分かるが、試行錯誤に頼るのはやはり面倒である。
Z軸スピンドル110に手動用のハンドルが付いている場合はまだよいが、キーボードからコマンドを打ち込んでCPS200を上げ下げするとなるとかなり面倒であり心理的障壁が大きい。
この点、右のレーザー光LAによる照射点Peと左のレーザー光LAによる照射点Peとが区別できれば、CPS200を上げればいいのか下げればいいのかはすぐに分かる。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態の基本的構成は第1、第2実施形態と同じであるが、結像スポットPsと調整ポイントPcとのオフセット量を正確に求めておく点に特徴を有する。
前記のように、結像スポットPsから光軸Axに沿って所定距離Dzだけ下った位置に調整ポイントPcがくるようにレーザー光源231、232を配置した。
しかし、設計上の話と実機とでは組み立て誤差があるので理屈通りにいかない。
そこで、結像スポットPsと調整ポイントPcとのオフセット量を予め求めておき、ワークWの測定に当たってはこのオフセット量が自動的に補償されるようにしておくことが望ましい。
【0045】
(高さ方向のオフセットDzを求める)
図8に示すように、校正用ワークとしてCCDやCMOSといった光電センサ400を用意する。
まず、位置合わせ用のレーザー光(調整光)LA、LAの交点(調整ポイント)Pcが光電センサ400上にくるようにCPS200の高さを調整する。
ここで、光電センサ400による受光面積が最小になったときのZ軸スピンドル110の高さを検出するようにコンピュータ150にプログラムを組み込んでおく。
このようにして調整ポイントPcが光電センサ400上にきたときのZ軸スピンドル110の高さZ2を求める。
【0046】
次のステップとして、結像スポットPsが光電センサ400上にきたときのZ軸スピンドル110の高さZ1を求める。
先ほどと同じように、光電センサ400による受光面積が最小になったときのZ軸スピンドル110の高さZ1を検出する(図9参照)。
【0047】
(Z2−Z1)が高さ方向のオフセットDzである。
高さオフセットDzはコンピュータ150に記憶させておく。
そして、調整ポイントPcと測定開始点Pmとの位置合わせの後、自動的にこの高さオフセットDzだけZ軸スピンドル110を下げてから測定動作を開始するようにプログラムしておく。
【0048】
(横方向オフセットDtを求める)
オフセットには高さ方向だけでなく横方向のオフセットも考えられ、横方向のオフセットを求めるに当たっても前記と同様に光電センサ400を用いる。
図10に示すように、位置合わせ用のレーザー光(調整光)LA、LAの交点(調整ポイントPc)が光電センサ400上にくるようにCPS200の高さを調整する。このとき、光電センサ400のどの範囲の素子がどれ位の強度の光を受光しているかを検出し、受光範囲が最小になるようにCPS200の高さ位置を微調整する。そして、受光強度が最大になる点を調整ポイントPcの座標値とする。 ここでは、移動ステージ120の座標値が(X2、Y2)であり、光電センサ400上における調整ポイントPcの座標値が(x2、y2)であるとする。
【0049】
同じように、図11に示すように、結像スポットPsが光電センサ400上にくるようにCPS200の高さを調整する。すなわち、光電センサ400のどの範囲の素子がどれ位の強度の光を受光しているかを検出し、受光範囲が最小になるようにCPS200の高さ位置を微調整する。そして、受光強度が最大になる点を結像スポットPsの座標値とする。 ここでは、移動ステージ120の座標値が(X1、Y1)であり、光電センサ400上における調整ポイントPcの座標値が(x1、y1)であるとする。
(なお、移動ステージ120を移動させる必要はないのであるから、実質的には、(X2、Y2)=(X1、Y1)であるとしてもよい。)
【0050】
横方向オフセットDtを(ΔX、ΔY)で表わす。
すると、
ΔX=(X2−X1)+(x2−x1)
ΔY=(Y2−Y1)+(y2−y1)
と求められる。
横方向オフセットDtはコンピュータ150に記憶させておく。
そして、調整ポイントPcと測定開始点Pmとの位置合わせの後、自動的にこの横方向オフセットDtを補償するようにプログラムしておく。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
ポイントセンサとしては、CPSを例示したが、例えば、接触式のスタイラスであってもよい。
スキッド310に保護されたスタイラス320では、先端がワークWのどこに当接しているかは直接には見えない。
そこで、図12に示すように、スキッド310の周囲に位置合わせ用のレーザー光源231、232を配設し、調整ポイントPcを用いて測定開始点Pmの位置合わせができるようにするとよい。
なおこの場合、スキッド310の下端からスタイラスの先端までの距離が作動距離に相当すると解釈してもよい。
図12の場合、スタイラス320はワーク表面の凹凸に応じてZ方向に上下動し、このスタイラスの上下動からワーク表面の形状を検出できる。
したがって、スタイラスの可動方向(上下方向、Z方向)が測定軸に相当する。
また、スタイラスの先端でワークを検出するわけであるから、スタイラスの先端が検出ポイントに相当する。
なお、スキッドレスタイプ(スキッドが無いタイプ)のスタイラスにも位置合わせ手段が付いていると便利であることは勿論である。位置合わせ手段(レーザー光源231、232)を配設するスペースを確保しにくい場合などはその場その場の都合に合わせて適宜設計変更すればよい。横方向オフセットDtを補償するようにすれば調整ポイントPcと結像スポットPsとが同じ軸線上にある必要はなく、むしろ積極的に調整ポイントPcをスタイラスの測定軸線からずらすことも有り得る。
【0052】
上記第3実施形態では、オフセットを求めるに当たって光電センサ400を用いる場合を例示したが、高さ方向のオフセットを求めるだけであればCCDは不要である。
ただの平板を使っても高さ方向のオフセットを求めることはできる。
ただ、横方向のオフセットを求めるには光電センサを用いるのが効果的であるので、横方向オフセットDtを求めるときに同時に高さ方向のオフセットDzを求めてしまえばよい。つまり、(X2、Y2)を求めるときに同時にZ2も検出しておく。同様に(X1、Y1)を求めるときに同時にZ1も検出しておく。こうすれば、横方向オフセットDtと高さ方向オフセットDzとは同時に求められる。すなわち、調整ポイントPcを光電センサ上に位置合わせしたときに、移動機構の座標値(X2、Y2、Z2)と、光電センサ上の受光点の座標値(x2、y2、0)とを取得し、検出ポイントPmを光電センサ上に位置合わせしたときに、移動機構の座標値(X1、Y1、Z1)と、光電センサ上の受光点の座標値(x1、y1、0)とを取得すれば、オフセット(ΔX、ΔY、Dz)は、
ΔX=(X2−X1)+(x2−x1)
ΔY=(Y2−Y1)+(y2−y1)
Dz=(Z2−Z1)
で求められる。
【0053】
上記実施形態では、調整ポイントPcと結像スポットPsとは同じ光軸Ax上にあるとして説明した。
調整ポイントPcが結像スポットPsから光軸Axに沿った直下にあればユーザとしては直感的に分かりやすいという利点がある。
ただ、横方向オフセットDtを補償するようにすれば調整ポイントPcと結像スポットPsとが同じ軸線上にある必要はなく、むしろ積極的に調整ポイントPcを軸線(光軸Ax)からずらすことも有り得る。
位置合わせ手段(レーザー光源231、232)を配設するスペースを確保しにくい場合などはその場その場の都合に合わせて判断すればよい。
【0054】
位置合わせ用のレーザー光源231、232を配設するにあたっては、CPS200(ポイントセンサ)に鍔部を設けて、この鍔部にレーザー光源を埋設した。
これに限らず、例えば、Z軸スピンドル110の下端にレーザー光源を配設するようにしてもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0055】
100…形状測定装置、110…Z軸スピンドル、−…移動ステージ、150…コンピュータ、210…鏡筒、220…鍔部、231、232…レーザー光源、310…スキッド、320…スタイラス、400…光電センサ
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図10
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図12