特許第6397579号(P6397579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397579塩化ビニルービニルアセテート共重合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397579
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】塩化ビニルービニルアセテート共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/06 20060101AFI20180913BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C08F214/06
   C08F2/18
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-537464(P2017-537464)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公表番号】特表2018-502205(P2018-502205A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】KR2016010134
(87)【国際公開番号】WO2017047987
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2017年7月14日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0129709
(32)【優先日】2015年9月14日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0114396
(32)【優先日】2016年9月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、チャン−ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、カン−チン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョン−ミン
(72)【発明者】
【氏名】ユク、キョン−ソク
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−304921(JP,A)
【文献】 特開2002−293813(JP,A)
【文献】 特開平06−234827(JP,A)
【文献】 特開2007−308526(JP,A)
【文献】 米国特許第03091597(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/00−214/28
C08F 218/00−218/18
C08F 2/00− 2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度1200から1300の範囲であり、かつ多分散指数(PDI)が2.1から2.4であり、
4重量%から7重量%のビニルアセテート由来単位を含む塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体。
【請求項2】
前記共重合体は、多分散指数(PDI)が2.1超過2.3未満である請求項1に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体。
【請求項3】
前記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が160,000g/molから165,000g/molである請求項1または2に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体。
【請求項4】
前記共重合体は、5重量%から6重量%のビニルアセテート由来単位を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体。
【請求項5】
1)塩化ビニル単量体の全量100重量%中の50重量%から80重量%の塩化ビニル単量体と、前記塩化ビニル単量体の全量100重量部に対してビニルアセテート5.5重量部から10重量部とを混合して均質化したあと、重合反応を開始する工程;
2)重合反応の開始後、塩化ビニル単量体20重量%から50重量%を投入して重合反応に参加させる工程を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記工程2)の塩化ビニル単量体は、全体反応時間の1/3以上の時点に20重量%から50重量%を一括投入される請求項5に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記工程2)の塩化ビニル単量体は、全体反応時間の1/3以上の時点より20重量%から50重量%を時間当りに3重量%から17重量%の投入速度で連続して投入される請求項5または6に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記工程1)の塩化ビニル単量体と工程2)の塩化ビニル単量体は、4:1から1:1の重量比である請求項5〜7のいずれか一項に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記重合反応は、30℃から70℃の温度範囲下で行われる請求項5〜8のいずれか一項に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記重合反応は、乳化剤及び重合開始剤の存在下に行われる請求項5〜9のいずれか一項に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記乳化剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸、アルファ−オレフィンスルホネート、ラウリルエトキシ化硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム及びラウリルエーテル硫酸ナトリウムからなる群より選択される1つ以上である請求項10に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記重合開始剤は、油溶性重合開始剤である請求項10または11に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項13】
前記重合開始剤は、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、3級ブチルヒドロペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド及びジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネートからなる群より選択される1つ以上である請求項10〜12のいずれか一項に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【請求項14】
前記製造方法は、前記工程2)以後に洗浄、凝集及び乾燥する工程のうち1以上の工程をさらに含む請求項5〜13のいずれか一項に記載の塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2015年9月14日付韓国特許出願第10-2015-0129709号及び2016年9月6日付韓国特許出願第10-2016-0114396号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、低温加工時にも優れた引張強度を発現することができる塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
塩化ビニル系樹脂は、生活及び産業用素材として全世界的に最も広く用いられる汎用樹脂であって、塩化ビニル単量体を単独で重合して製造することができると共に、多様な単量体と共重合して製造することができるものとして知られている。このような塩化ビニル系樹脂は、長い間多様な用途に幅広く用いられてきており、現在物理的性質を改善するための多くの試みが行われている。
【0004】
塩化ビニル単量体と多様な単量体を共重合して製造した塩化ビニル系共重合体は、加工後の高分子の熱可塑性や流動性を向上させ、溶解性を改善させるという効果がある。一般に、塩化ビニル系共重合体は、所望の最終製品の加工に求められる加工条件の難しさを減少させるための手段として用いられてきた。
【0005】
このような塩化ビニル系共重合体のうち、塩化ビニル単量体とビニルアセテート単量体を共重合して製造した塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、現在まで最も重要な商品として知られている。塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の用途は、塩化ビニル重合体(PVC)の用途と殆ど一致するが、ビニルアセテートが塩化ビニルに比べて価格がほぼ二倍程度高いので、価格によって用途が決まる場合が多い。
【0006】
しかし、共重合されたビニルアセテートの含量が微量であっても、加工温度の範囲が拡がって加工時の流れ及び光沢、接着性、機械的強度などが変わるので、前記特性を考慮して多様な用途への適用が考慮されている。
【0007】
このような塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、ビニル床の材料、家具に用いられるビニルと繊維の積層物、壁紙、住宅の室内装飾用壁紙、カーテン、底マット及びシーラント(sealant)や自動車のアンダーボディーコーティング材などの非常に多様な用途に用いられている。
【0008】
一方、シーラント(sealant)や自動車のアンダーボディーコーティング材の場合は、生産性と環境への優しさのイシューにより、既存の加工温度に比べ低い加工温度で加工して製品を生産している。しかし、低い加工温度で加工された製品は、比較的に高い加工温度で加工された製品に比べて相対的に引張強度が低下するという欠点がある。
【0009】
したがって、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を産業、特にシーラントや自動車のアンダーボディーコーティング材分野の産業に容易に適用するためには、低い加工温度の条件下で加工しても優れた引張強度の特性を表すことができる塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであって、低温加工時にも優れた引張強度を発現することができる塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の提供を目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、重合度1200から1300の範囲で多分散指数(PDI)が2.1から2.4であり、4重量%から7重量%のビニルアセテート由来単位を含む塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、塩化ビニル単量体の全量100重量%中の50重量%から80重量%の塩化ビニル単量体と、前記塩化ビニル単量体の全量100重量部に対してビニルアセテート5.5重量部から10重量部とを混合して均質化したあと、重合反応を開始する工程(工程1);及び重合反応の開始後、塩化ビニル単量体20重量%から50重量%を投入して重合反応に参加させる工程(工程2)を含む前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、特定の含量範囲のビニルアセテート由来単位、及び重合度1200から1300の範囲で特定範囲の多分散指数、例えば、2.1から2.4の多分散指数を有することにより、低温加工時にも優れた引張強度を発現することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の製造方法は、塩化ビニル単量体を重合反応の開始前に一括的に全量を投入せず、重合に用いられる塩化ビニル単量体の全量中の一部を重合反応の開始前にビニルアセテート単量体と共に投入して重合反応を開始したあと、残りの一部を特定の時点、例えば、合計反応時間の1/3時点以上の時点に一括投入または連続投入して重合反応に参加させることにより、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を容易に形成させると共に前述した範囲の多分散指数を有するようにすることができる。
【0016】
併せて、本発明に係る塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を含むプラスチゾルを低温加工して製造された加工品は優れた引張強度を有することができる。
【0017】
したがって、本発明に係る塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体及びその製造方法は、これを要する産業、特に自動車産業やポリ塩化ビニル樹脂産業に有効に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に対する理解を助けるため本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0020】
本発明は、低温加工時にも優れた引張強度の特性を発現することができる塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を提供する。
【0021】
塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、加工時の流れ及び光沢などの特性に優れて物理的特性が良好なので、住宅室内用壁紙、カーテン、底マットだけでなく、自動車産業においてシーラント(sealant)や自動車のアンダーボディーコーティング材などの非常に多様な分野に用いられている。一般に、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、着色剤、熱安定剤などの各種の添加剤を混合して加工組成物を製造し、押出工程、カレンダー工程、射出工程、ペースト加工など、目的に応じて相違する加工工程を介し、前述したところのような多様な分野の製品に製造されて用いられている。
【0022】
一例として、シーラント(sealant)や自動車のアンダーボディーコーティング材の場合は、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体プラスチゾルを利用し、ディッピング、スプレーイング、コーティングなどの工程を介し製品を製造するペースト加工によって製造されており、前記加工は160℃から180℃以上の温度条件下で行われている。一方、最近は自動車産業の生産性と環境に対する関心が高まるにつれ、加工容易性を高めて生産性を向上させるとともに、一層環境に優しく製品を製造する方案が施行されている。この一例として、相対的に低い加工温度の条件下で加工して製品を製造しており、加工温度を漸次さらに低める方案が検討されている。しかし、低い加工温度で加工する場合、製品の引張強度が減少する問題があり、加工温度を低めるほど引張強度の減少幅はさらに大きく表れている。よって、変化する産業環境(例えば、生産性及び環境問題)に塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を容易に適用するためには、低温加工時にも優れた引張強度を有する製品を得ることができる塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の開発が必要な実情である。
【0023】
よって、本発明は、低温加工時にも優れた引張強度特性を発現することができる塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を提供する。
【0024】
本発明の一実施形態に係る前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、重合度が1200から1300の範囲で多分散指数(PDI)が2.1から2.4であり、4重量%から7重量%のビニルアセテート由来単位を含むことを特徴とする。
【0025】
具体的には、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、重合度が1200から1300の範囲で多分散指数(PDI)が2.1超過2.3未満のものであってよく、5重量%から6重量%のビニルアセテート由来単位を含むものであってよい。
【0026】
もし、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体が、ビニルアセテート由来単位を前記4重量%から7重量%の含量を外れて含む場合は、これを低温加工して製造された加工品の低温引張強度が著しく低下する問題が発生し得る。ここで、低温引張強度は後述する通りである。
【0027】
本発明における用語『由来単位』は、ある物質によって発生した構造または成分であるか、前記ある物質自体を表すものであってよい。例えば、前記ビニルアセテート由来単位は、ビニルアセテートから起因した構造または成分であるか、ビニルアセテート自体の構造を表すものであってよい。
【0028】
さらに、本発明の一実施形態に係る前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、重量平均分子量(Mw)が160,000g/molから165,000g/molであることを特徴とする。
【0029】
本発明における用語『重合度(degree of polymerization)』は、重合体を構成する繰り返された単位(単位体または単量体)の数を表すものである。
【0030】
本発明における用語『多分散指数(polydispersity index)』は重合体の分子量分布を表したものであって、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を表す値である。
【0031】
前記重合度はJIS K6720-2に基づいて測定した値であり、前記多分散指数は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定したあと、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割って求めた値である。このとき、前記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、前記塩化ビニル-ビニルアセテート0.02gをテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)20mlに入れ、24時間の間撹拌して完全に溶解させてから、GPC(gel permeation chromatography)機器(Waters 2414、Waters社)を使って測定したあと、標準試料(S-1.3、S-2.8、S-6.8、S-20、S-51、S-126、S-282、S-791、S-1640及びS-258、Showa Denko k.k.)を使って検量線を描いてから換算して表したものである。
【0032】
本発明の一実施形態に係る前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、前述したところのように、重合度が1200から1300の範囲で2.1から2.4の多分散指数を有し、ビニルアセテート由来単位を特定の割合で含むことにより、低温加工時にも優れた引張強度を発現することができる。よって、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体プラスチゾルを利用し、低温加工して製造された加工品の低温引張強度が優れることができる。
【0033】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、引張強度が10MPaから14MPaであってよく、伸び率(%)が600%から1,100%であってよく、透明度(%)が80%から92%であってよい。
【0034】
このとき、前記引張強度、伸び率及び透明度は、それぞれ前記共重合体を130℃で30分間熱処理して幅6.25mm及び厚さ1.5mmの試験片に調製したあと、前記試験片を利用して測定したものである。
【0035】
具体的に、前記試験片は、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体100gに可塑剤(ジオクチルフタレート)60g及び安定剤(SONGSTABTM BZ-119、ソンウォン産業)2gを混合して製造されたプラスチゾルをガラス板の上に2mmの厚さで塗布したあと、130℃温度のオーブンで30分間放置して製造されたものであり、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して低温加工して製造された加工品を表すものであってよい。ここで、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を除いた残りの物質、例えば、可塑剤及び安定剤は、加工容易性のための添加剤として用いられたものなので、前記試験片の引張強度、伸び率及び透明度は、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体自体から発現される特性のものであってよい。
【0036】
さらに、前記引張強度及び伸び率は、前記試験片を利用し、ASTM D638に準じて引張強度測定器(モデル名:2010. Zwick社)を利用して測定した値であり、前記透明度は、前記試験片を利用してHaze-gard plus(BYK社)で測定したものである。
【0037】
さらに、本発明は、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体の製造方法を提供する。
【0038】
本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、塩化ビニル単量体の全量100重量%のうち50重量%から80重量%の塩化ビニル単量体と、前記塩化ビニル単量体の全量100重量部に対してビニルアセテート単量体5.5重量部から10重量部を混合して均質化したあと、重合反応を開始する工程(工程1);及び重合反応の開始後、塩化ビニル単量体20重量%から50重量%を投入して重合反応に参加させる工程(工程2)を含むことを特徴とする。
【0039】
前記重合は乳化重合であってよく、具体的には微細乳化重合であってよい。
【0040】
前記工程1は、塩化ビニル単量体の一部とビニルアセテート単量体を利用して重合反応を開始する工程であって、重合に用いられる塩化ビニル単量体の全量100重量%のうち50重量%から80重量%の塩化ビニル単量体と、前記塩化ビニル単量体の全量100重量部を基準に5.5重量部から10重量部のビニルアセテート単量体を混合して均質化したあと、重合反応を開始して行うものであってよい。このとき、重合反応は30℃から70℃の温度範囲下で行うものであってよい。
【0041】
具体的に、前記工程1は、乳化剤が充填された反応器に、重合開始剤及び塩化ビニル単量体とビニルアセテート単量体を前述した含量で投入し、混合して均質化したあと、重合反応を開始することによって行うことができる。
【0042】
前記乳化剤が充填された反応器は、乳化剤を含む混合溶液が入っている反応器を表すものであってよく、前記混合溶液は、乳化剤以外に重合水及び乳化補助剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0043】
前記乳化剤は特に制限されるものではないが、重合に用いられる塩化ビニル単量体の全量100重量部を基準に0.1重量部から5重量部で用いられてよい。さらに、前記乳化剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸、アルファ-オレフィンスルホネート、ラウリルエトキシ化硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム及びラウリルエーテル硫酸ナトリウムからなる群より選択される1種以上のものであってよく、これに制限されるものではない。
【0044】
前記乳化補助剤は特に制限されるものではないが、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチン酸アルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類、またはラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸を用いることができる。
【0045】
さらに、前記混合溶液は必要に応じて反応抑制剤をさらに含むことができ、前記反応抑制剤はヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノメチルエーテルヒドロキノン、4次ブチルカテコール、ジフェニルアミン、トリイソプロパノールアミン及びトリエタノールアミンの中から1種以上のものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0046】
前記重合開始剤は特に制限されるものではないが、重合に用いられる塩化ビニル単量体の全量100重量部を基準に0.01重量部から2重量部で用いられてよい。さらに、前記重合開始剤は油溶性重合開始剤であってよく、具体的には、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、3級ブチルヒドロペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド及びジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネートからなる群より選択される1種以上のものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
前記均質化は特に制限されるものではないが、例えば、40℃以下の温度、具体的には5℃から15℃の温度条件下で、全体圧800psiから1400psiを前段と後段にそれぞれ1:9から9:1の割合で分配されるように高圧均質機を運転し、1時間から3時間の間行うものであってよい。
【0048】
前記工程2は、残りの塩化ビニル単量体を投入し、重合反応に参加させて塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を製造するための工程であって、重合に用いられる塩化ビニル単量体の全量100重量%のうち、残りの20重量%から50重量%の塩化ビニル単量体を前記工程1の反応器に投入し、重合反応に参加させることによって行うことができる。このとき、重合反応の開始前に投入された塩化ビニル単量体と重合反応の開始後に投入される塩化ビニル単量体とは、4:1から1:1の重量比を有するものであってよい。
【0049】
前記工程2で投入される塩化ビニル単量体、即ち、重合反応の開始後に投入される塩化ビニル単量体20重量%から50重量%は、ある一時点で一括的に投入するか、幾多の時点に分けて分割して投入するか、もしくは、ある一時点から重合完了の前まで一定時間の間均一な量で連続して投入するものであってよい。
【0050】
具体的に、前記重合反応の開始後に投入される塩化ビニル単量体は、全体反応時間の1/3以上の時点に20重量%から50重量%を一括投入するものであるか、もしくは、全体反応時間の1/3以上の時点から20重量%から50重量%を毎時間3重量%から17重量%の投入速度で連続して投入するものであってよい。さらに具体的には、1/2以上の時点に前述した量を一括投入するか、連続して投入するものであってよい。
【0051】
このとき、前記全体反応時間は、反応器の内部温度が重合温度に到達して重合反応が開始された時点から重合を終了させる時点(例えば、反応器の内部圧力が3.5kg/cm2まで減少した時点)までの時間を表すものである。
【0052】
本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、塩化ビニル単量体の一部を投入して重合反応を開始し、重合反応の開始後に残りの塩化ビニル単量体を特定の時点に一括投入または連続投入することにより、反応系内に塩化ビニル単量体とビニルアセテート単量体の割合を適宜維持させることで、目的とする組成比を有する塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を容易に製造することができる。
【0053】
具体的に、塩化ビニル単量体はビニルアセテート単量体より反応性に優れるため、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を容易に製造するためには、重合反応の初期と重合反応中の反応器内の塩化ビニル単量体とビニルアセテート単量体の割合を一定に維持させることが必要である。もし塩化ビニル単量体の全量をビニルアセテート単量体とともに重合開始前に一括投入して重合反応を行う場合は、重合反応の後期(例えば、終結時点)に未反応単量体中のビニルアセテート単量体の割合が高くなることがあり、不均一化反応が高くなり得る。よって、結果的に製造された塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体内のビニルアセテート由来単位の含量が低くなるか、前記共重合体の多分散指数が目的とする範囲から外れて大きくなる問題が発生し得る。
【0054】
さらに、本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、前記工程2以後に洗浄、凝集及び乾燥する工程のうち1以上の工程をさらに含むものであってよい。
【0055】
併せて、本発明は、前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を含むプラスチゾル、及び前記プラスチゾルを利用して製造された加工品を提供する。
【0056】
具体的に、前記プラスチゾルは、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体100重量部及び可塑剤40重量部から120重量部を含むものであってよく、必要に応じて分散希釈剤、熱安定剤、粘度低下剤及び発泡剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0057】
本発明における用語『プラスチゾル(plastisol)』は、加熱によって成形、鋳型或いは連続フィルム状に加工することができるように樹脂と可塑剤を混合した混合物を表すものであって、例えば、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体と可塑剤を混合したペースト状を表すものであってよい。
【0058】
本発明における用語『可塑剤(plasticizer)』は、熱可塑性樹脂に添加して熱可塑性を増大させることにより、前記樹脂の高温での成形加工性を向上させる役割を担う有機添加剤物質を表すものであってよい。
【0059】
前記可塑剤及び添加剤は、特に制限されることなく当業界に通常のものを用いることができる。
【0060】
さらに、前記加工品は、プラスチゾルを利用してペースト加工して製造されたペースト加工品であってよい。前記加工品は、本発明の一実施形態に係る前記塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を含むプラスチゾルを利用して製造されることにより、前述したところのように優れた引張強度特性を表すことができる。
【0061】
以下、実施例及び実験例によって本発明をさらに詳しく説明する。しかし、下記実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであって、これらだけに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
撹拌機が取り付けられた内部容積が1m3である反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4kgと脂肪酸アルコール10kgを脱イオン水400kgに混合して製造した混合物を投入し、ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート(75%)180g、塩化ビニル単量体300kg及びビニルアセテート単量体30kgを添加し、強く撹拌して混合したあと、均質機の全体圧1400psiを前段と後段にそれぞれ1:1の割合で分配されるように運転して均質化を実施した。その後、1m3の容積を有する反応器に移し、反応器の内部温度を45℃に昇温させて重合反応を開始した。重合反応の開始後7時間になった時点(全体反応時間の50%時点)に塩化ビニル単量体100kgを反応器に一括投入して重合反応に参加させた。以後、反応器の内部圧力が3.5kg/cm2まで減少すれば、重合反応を終結して未反応単量体を回収して除去し、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスを得た。前記ラテックスを噴霧乾燥して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。前記ラテックスは、pH 3.07、全体固形分含量(TSC)が44.03wt%及び平均粒径が1.089μmであった。
【0063】
前記ラテックスの平均粒径は、DC24000 UHR(CPS Instruments、Inc.)を利用して24000rpmで重量平均粒径を測定した。
【0064】
[実施例2]
塩化ビニル単量体100kgを、重合反応の開始後7時間になった時点ではなく9時間になった時点(全体反応時間の約65%の時点)に投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.43、全体固形分含量(TSC)が44.6wt%及び平均粒径が1.054μmであった。
【0065】
[実施例3]
塩化ビニル単量体100kgを、重合反応の開始後7時間になった時点ではなく11時間になった時点(全体反応時間の約80%の時点)に投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.45、全体固形分含量(TSC)が44.18wt%及び平均粒径が1.051μmであった。
【0066】
[実施例4]
ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート(75%)を160gで用い、重合反応開始前の塩化ビニル単量体を300kgに代えて200kgで投入し、重合反応の開始後11時間になった時点(全体反応時間の約80%の時点)に200kgを投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.39、全体固形分含量(TSC)が44.23wt%及び平均粒径が1.043μmであった。
【0067】
[実施例5]
撹拌機が取り付けられた内部容積が1m3である反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4kgと脂肪酸アルコール10kgを脱イオン水400kgに混合して製造した混合物を投入し、ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート(75%)180g、塩化ビニル単量体300kg及びビニルアセテート単量体30kgを添加し、強く撹拌して混合したあと、均質機の全体圧1400psiを前段と後段にそれぞれ1:1の割合で分配されるように運転して均質化を実施した。その後、1m3の容積を有する反応器に移し、反応器の内部温度を45℃に昇温させて重合反応を開始した。重合反応の開始後7時間になった時点(全体反応時間の50%時点)から塩化ビニル単量体100kgを7時間の間均一に連続投入(約15kg/hr投入)して重合反応に参加させた。以後、反応器の内部圧力が3.5kg/cm2まで減少すれば、重合反応を終結して未反応単量体を回収して除去し、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスを得た。得られたラテックスを噴霧乾燥して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.26、全体固形分含量(TSC)が44.52wt%及び平均粒径が1.024μmであった。
【0068】
[実施例6]
塩化ビニル単量体100kgを、重合反応の開始後11時間になった時点(全体反応時間の約80%の時点)から3時間の間均一に連続投入(約33kg/hr投入)したことを除き、前記実施例5と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.39、全体固形分含量(TSC)が44.22wt%及び平均粒径が1.017μmであった。
【0069】
[実施例7]
重合反応の開始前に塩化ビニル単量体を300kgに代えて200kgで投入し、塩化ビニル単量体100kgを、重合反応の開始後11時間になった時点(全体反応時間の約80%の時点)から3時間の間均一に連続投入(約67kg/hr投入)したことを除き、前記実施例5と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.43、全体固形分含量(TSC)が44.33wt%及び平均粒径が0.995μmであった。
【0070】
[実施例8]
ビニルアセテート単量体を30kgに代えて23kgで用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.41、全体固形分含量(TSC)が44.17wt%及び平均粒径が1.105μmであった。
【0071】
[実施例9]
ビニルアセテート単量体を30kgに代えて40kgで用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.19、全体固形分含量(TSC)が44.04wt%及び平均粒径が1.074μmであった。
【0072】
[実施例10]
重合反応の開始前に塩化ビニル単量体を300kgに代えて320kgで投入し、重合反応の開始後7時間になった時点(全体反応時間の約50%の時点)に80kgを投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.4、全体固形分含量(TSC)が44.32wt%及び平均粒径が1.0μmであった。
【0073】
[比較例1]
撹拌機が取り付けられた内部容積が1m3である反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4kgと脂肪酸アルコール10kgを脱イオン水400kgに混合して製造した混合物を投入し、ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート(75%)180g、塩化ビニル単量体400kg及びビニルアセテート単量体30kgを添加し、強く撹拌して混合したあと、均質機の全体圧1400psiを前段と後段にそれぞれ1:1の割合で分配されるように運転して均質化を実施した。その後、1m3の容積を有する反応器に移し、反応器の内部温度を45℃に昇温させて重合反応を開始した。以後、反応器の内部圧力が3.5kg/cm2まで減少すれば、重合反応を終結して未反応単量体を回収して除去し、塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスを得た。得られたラテックスを噴霧乾燥して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.12、全体固形分含量(TSC)が44.84wt%及び平均粒径が1.017μmであった。
【0074】
[比較例2]
塩化ビニル単量体を430kgで用い、ビニルアセテート単量体を用いていないことを除き、前記比較例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル重合体ラテックスは、pH 3.21、全体固形分含量(TSC)が44.50wt%及び平均粒径が1.091μmであった。
【0075】
[比較例3]
ビニルアセテート単量体を25kgで用いたことを除き、前記比較例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.41、全体固形分含量(TSC)が44.59wt%及び平均粒径が1.059μmであった。
【0076】
[比較例4]
ビニルアセテート単量体を20kgで用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.35、全体固形分含量(TSC)が44.37wt%及び平均粒径が1.072μmであった。
【0077】
[比較例5]
ビニルアセテート単量体を42kgで用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.35、全体固形分含量(TSC)が44.01wt%及び平均粒径が1.098μmであった。
【0078】
[比較例6]
ビニルアセテート単量体を60kgで用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.32、全体固形分含量(TSC)が43.87wt%及び平均粒径が1.078μmであった。
【0079】
[比較例7]
重合反応の開始前に塩化ビニル単量体を300kgに代えて335kgで投入し、重合反応の開始後7時間になった時点(全体反応時間の約50%の時点)に65kgを投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して粉体状の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を収得した。ここで、噴霧乾燥前の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、pH 3.36、全体固形分含量(TSC)が44.21wt%及び平均粒径が1.094μmであった。
【0080】
[比較例8]
重合反応の開始前に塩化ビニル単量体を300kgに代えて135kgで投入し、重合反応の開始後7時間になった時点(全体反応時間の約50%の時点)に265kgを投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法を介して重合反応を実施したが、過度な凝集現象の発生で共重合体の形成がなされなかった。
【0081】
<実験例1>
実施例1から実施例10及び比較例1、比較例3から比較例8で製造された各塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体、及び比較例2で製造された塩化ビニル重合体の物性を比較して分析した。結果を下記表1に示した。
1)ビニルアセテートの含量(wt%)
1mlバイアルに前記各共重合体5mgとTHF-d8 0.5mlを入れ、12時間の間撹拌して各サンプルを製造したあと、Agilent 500MHz NMRを利用して定量分析を実施し、各共重合体内のビニルアセテートの含量は前記定量分析の結果を利用して下記数式(1)で求めた。
【0082】
【数1】
【0083】
前記数式(1)において、Sはメタンプロトン(methane protons)ピークの積分値であり、Mは分子量を表し、VAcはビニルアセテートであり、VCMは塩化ビニルモノマーを表すものである。
【0084】
2)重合度の測定
重合度はJIS K6720-2に基づいて測定した。
【0085】
3)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び多分散指数(PDI)
前記多分散指数は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定したあと、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割って求めた。前記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、前記各塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体または塩化ビニル重合体0.02gをテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran) 20mlに入れ、24時間の間撹拌して完全に溶解させてから、GPC(gel permeation chromatography)機器(Waters 2414、Waters社)を使って測定したあと、標準試料(S-1.3、S-2.8、S-6.8、S-20、S-51、S-126、S-282、S-791、S-1640及びS-258、Showa Denko k.k.)を使って検量線を描いてから換算して得た。
【0086】
【表1】
【0087】
前記表1に示したところのように、本発明の一実施形態に係る実施例1から実施例10の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、ビニルアセテート由来単位含量及び多分散指数が目的とする範囲を表したが、比較例1から比較例7の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体または塩化ビニル重合体は、多分散指数が目的とする範囲の最大値である2.4より高い数値を表し、比較例8の場合は、ラテックス凝集現象によって共重合体を十分に形成できなかったので測定が不可能であった。
【0088】
ここで、比較例1及び比較例3の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、塩化ビニル単量体を重合開始前に全量を一括投入したことを除いては実施例1と同様の条件下で製造したものであり、比較例4から比較例6の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、ビニルアセテートの含量が本発明で提示する範囲を外れたことを除いては実施例1と同様の条件下で製造したものであり、比較例7及び比較例8の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、塩化ビニル単量体の分割投入の割合が本発明で提示する範囲を外れたことを除いては実施例1と同様の条件下で製造したものである。
【0089】
前記結果は、本発明で目的とする多分散指数を有する塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を得るためには、ビニルアセテートの含量だけでなく、塩化ビニル単量体の投入方法、投入時点に応じた割合、即ち、重合の間に重合に参加している単量体の間の割合が重要であり得ることを意味するものである。
【0090】
<実験例2>
実施例1から実施例10及び比較例1、比較例3から比較例8で製造された各塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体、及び比較例2で製造された塩化ビニル重合体を利用して製造された加工品の加工特性及び引張強度特性を比較して分析するため、低温加工前のプラスチゾルの粘度、低温加工時の引張強度、引張伸び率及び透明度を分析した。結果を下記表2に示した。
【0091】
先ず、各共重合体または重合体100gにジオクチルフタレート60g、安定剤(SONGSTAB BZ-119、ソンウォン産業)2gを入れ、撹拌機で10分間撹拌して各プラスチゾルを製造した。製造されたプラスチゾルをガラス板の上に塗布し、フィルムアプリケーター(film applicator)を利用して2mm厚さで広げたあと、ガラス板を130℃温度のオーブン(Mathis Oven CH-8156)で30分間放置して各シートを製造した。前記各シートを長いダンベル形状(Dogbone、幅6.25mm、厚さ1.5 mm)の試験片に製造し、ASTM D638に基づいて、引張強度測定器(モデル名:2010、Zwick社)を利用してクロスヘッドスピード(cross head speed)500mm/minで引っ張ったあと、前記各試験片が切断される地点の引張強度及び伸び率(%)を測定した。
【0092】
低温加工前に製造された各プラスチゾルの一部を、25℃、相対湿度50%条件の恒温槽で1時間の間熟成させたあと、Brookfield粘度計LVタイプを使ってスピンドルLV-3(#63)で6rpmで粘度を測定した。
【0093】
各シートの透明性は、Haze-gard plus(BYK社)を利用して測定した。
【0094】
【表2】
【0095】
前記表2に示されているところのように、本発明の一実施形態に係る実施例1から実施例10の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品が、比較例1、比較例3から比較例7の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体及び比較例2の塩化ビニル重合体を利用して製造された加工品に比べて全般的に優れた透明度を表すとともに、大幅に上昇した引張強度及び伸び率を表した。
【0096】
具体的に、ビニルアセテート由来単位を本発明で提示する含量に範囲で含んでいるが、多分散指数が本発明で提示する範囲を外れた比較例1、比較例3及び比較例7の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品は、実施例1から実施例10の塩化ビニル-バニルアセテイト共重合体を利用して製造された加工品に比べて透明性が最大85%の水準まで減少し、低温引張強度が最大65%の水準まで低下した。
【0097】
さらに、ビニルアセテート由来単位を含まない比較例2の塩化ビニル重合体を利用して製造された加工品の場合は、実施例1から実施例10の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体に比べて透明度が82.3%から92%水準、引張強度が45%から62%水準、そして伸び率が49%から79%水準まで大幅に低下した。
【0098】
併せて、ビニルアセテート由来単位を4重量%から7重量%の範囲を外れるように含む比較例4から比較例6の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品の場合も、実施例8及び実施例9の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品と比べた結果、比較例4の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品は、実施例8の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品に比べて伸び率が減少して透明度が4%程度低下し、引張強度が19%と大幅に減少した。さらに、比較例5及び比較例6の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品は、実施例9の塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体を利用して製造された加工品に比べてそれぞれ伸び率と透明度は類似の水準を表したが、低温引張強度が85%水準及び72%水準まで大幅に低下し、粘度が急激に増加した。
【0099】
前記結果は、多分散指数及びビニルアセテート由来単位の含量が加工特性(透明性)の改善に影響を与えるとともに、優れた低温引張強度特性の発現に重要な役割を担うものであることを表すのである。よって、本発明の一実施形態に係る塩化ビニル-ビニルアセテート共重合体は、特定の含量範囲でビニルアセテート由来単位を含むとともに調節された多分散指数を有することにより、加工特性に優れるだけでなく、著しく改善された低温引張強度特性を表すことができる。