(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397690
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】X線透過検査装置及び異物検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20180913BHJP
G01N 23/083 20180101ALI20180913BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20180913BHJP
G21K 1/02 20060101ALI20180913BHJP
G01T 1/20 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/083
G01N23/18
G21K1/02 C
!G01T1/20
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-163349(P2014-163349)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-38350(P2016-38350A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】的場 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】竹田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】張 開鋒
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−178242(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/126892(WO,A1)
【文献】
特表平10−508947(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0163552(US,A1)
【文献】
特開2007−93314(JP,A)
【文献】
佐藤 英一ら,「新X線源創生の試みとポリキャピラリーを用いた平行ビーム撮影」,日本写真学会誌,2002年12月25日,Vol.65, No.7,pp.473-479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
G01N 23/083
G01N 23/18
G21K 1/02
G01T 1/20
CiNii
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対してX線を照射するX線源と、
前記X線源からのX線を照射中に前記試料を特定の方向に連続して移動させる試料移動機構と、
前記試料に対して前記X線源と反対側に設置され前記試料を透過した前記X線を検出するTDIセンサと、
前記X線源と前記試料との間に配され前記X線源から放射状に照射されたX線を前記試料の厚み方向と平行な平行X線に変換するポリキャピラリとを備え、
前記ポリキャピラリが、中空ガラス管であるキャピラリの束で構成され、前記X線の入射側では各前記キャピラリの入射端が前記X線源に向けて配されており、前記X線の出射側では各前記キャピラリの出射端が全て同一方向かつ前記試料の厚み方向に向いて配されていることを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線透過検査装置において、
各前記キャピラリの出射端が,前記試料の表面に直交する方向に向いて配されていることを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線透過検査装置において、
前記ポリキャピラリと前記試料との間に配され前記平行X線のうち中央部のX線だけを開口部から通過させるX線照射領域制限部材を備えていることを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のX線透過検査装置において、
前記ポリキャピラリと前記試料との間に配され前記平行X線のうち中央部のX線の強度を低下させるフィルタを備えていることを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のX線透過検査装置において、
前記試料が、帯状の試料であることを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項6】
X線透過検査装置による異物検出方法であって、
前記X線透過検査装置が、試料に対してX線を照射するX線源と、
前記X線源からのX線を照射中に前記試料を特定の方向に連続して移動させる試料移動機構と、
前記試料に対して前記X線源と反対側に設置され前記試料を透過した前記X線を検出するTDIセンサと、
前記X線源と前記試料との間に配されたポリキャピラリとを備え、
前記ポリキャピラリにより、前記X線源から放射状に照射されたX線を前記試料の厚み方向と平行な平行X線に変換する工程と、
前記試料移動機構により、前記平行X線を照射中に前記試料を特定の方向に連続して移動させる工程と、を有し、
前記ポリキャピラリが、中空ガラス管であるキャピラリの束で構成され、前記X線の入射側では各前記キャピラリの入射端が前記X線源に向けて配されており、前記X線の出射側では各前記キャピラリの出射端が全て同一方向かつ前記試料の厚み方向に向いて配されていることを特徴とする異物検出方法。
【請求項7】
請求項6に記載の異物検出方法において、
各前記キャピラリの出射端が、前記試料の表面に直交する方向に向いて配されていることを特徴とする異物検出方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の異物検出方法において、
前記X線透過検査装置が、前記ポリキャピラリと前記試料との間に配され前記平行X線のうち中央部のX線だけを開口部から通過させるX線照射領域制限部材を備え、
前記X線照射領域制限部材により、前記平行X線の照射領域を制限する工程と、を更に有していることを特徴とする異物検出方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の異物検出方法において、
前記試料が、帯状の試料であることを特徴とする異物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の金属異物等を検出可能なX線透過検査装置及び当該装置を用いた異物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、試料中の金属異物や厚みむら等を検出するために、試料にX線を照射して取得したX線透過像により検査を行うX線透過検査が用いられている。このX線透過検査に用いる装置では、帯状の試料に対してインラインで検査する際、通常、一方向に流れている製品(試料)を挟みながら、X線を発生させるX線発生器とX線を検出するラインセンサとが対向して設置されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、複数台のX線発生器と、複数台のX線検出器と、X線発生器から照射されるX線が他の領域のX線検出器に照射されないために設けられた複数台の絞り装置又は遮蔽板を有したX線異物検出装置が記載されている。このX線異物検出装置では、帯状の試料に対してインラインで検査する際、ある面を一方に流れている製品をX線発生器との間に挟みながらX線を検出するX線検出器としてラインセンサが設置されている。このように従来のX線透過検査装置では、X線発生器とX線に感度のあるラインセンサとを対向させて、試料を一方向に移動させながらその移動スピードとラインセンサの出力とを同期させ、二次元のX線透過像に構成し、異物検査等を行っている。
【0004】
なお、上記ラインセンサでは感度が不足するため、近年は二次元のCCDを利用したTDI(Time Delay Integration)動作による撮像が行われている。すなわち、試料の透過像がCCD面に投影された像のスピードとCCDの垂直転送スピードとを同期させることにより、CCDの垂直段数倍で感度を稼ぐことが可能になり、検査スピードの高速化を実現している。このようなCCDを利用したTDI動作は、X線透過検査装置の分野で採用が広がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−61479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来のX線透過による異物検出装置では、検査対象の試料の厚みが比較的薄い場合は問題が生じないが、数mmを超えるような厚さの試料の場合は、次のような問題が生じる。すなわち、
図6に示すように、比較的厚い試料S内に上面側(X線源2側)に異物Aが存在し、異物Aの直下であり下面側(TDIセンサ4側)に異物Bが存在していた場合、異物Aにスピードを合わせると異物Bのスピードに合わず、CCD(TDIセンサ4)で垂直蓄積したX線透過像がぼやけてしまうという不都合があった。
詳述すれば、X線源2からのX線は放射状に出射されており、X線源2との距離がLAである異物AのTDIセンサ4上の移動スピードは、「Vs×L/LA」となるが、X線源2との距離がLBである異物BのTDIセンサ4上での移動スピードは「Vs×L/LB」となる。つまり、異物Aと異物BとのTDIセンサ4上での移動スピードが異なるため、どちらか一方に合わせると他方がぼやけてしまう問題があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、厚みのある試料であっても、速度非同期による透過像のボケを発生させること無く異物を検出して感度アップを実現することができるX線透過検査装置及び異物検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るX線透過検査装置は、試料に対してX線を照射するX線源と、前記X線源からのX線を照射中に前記試料を特定の方向に連続して移動させる試料移動機構と、前記試料に対して前記X線源と反対側に設置され前記試料を透過した前記X線を検出するTDIセンサと、前記X線源と前記試料との間に配され前記X線源から放射状に照射されたX線を前記試料の厚み方向と平行な平行X線に変換するポリキャピラリとを備えていることを特徴とする。
【0009】
このX線透過検査装置では、X線源と試料との間に配されX線源から放射状に照射されたX線を試料の厚み方向と平行な平行X線に変換するポリキャピラリを備えているので、試料に照射されるX線がポリキャピラリによって平行X線とされることで、異物の厚さ方向位置に関わらずTDIセンサ上での透過像の移動スピードが一定となり、どの位置の異物もぼけることなく、良好なX線透過像を構成することが可能になる。
【0010】
第2の発明に係るX線透過検査装置は、第1の発明において、前記ポリキャピラリと前記試料との間に配され前記平行X線のうち中央部のX線だけを開口部から通過させるX線照射領域制限部材を備えていることを特徴とする。
すなわち、第一に、このX線透過検査装置では、ポリキャピラリと試料との間に配され平行X線のうち中央部のX線だけを開口部から通過させるX線照射領域制限部材を備えているので、平行X線のうち中心部と周縁部に出射されるX線のエネルギー分布に対して強度が大きく低下する周縁部のX線をアパーチャ等のX線照射領域制限部材で遮断することができ、感度ムラを抑制することができる。
第二に、TDIセンサへのX線の照射において、照射形状が円状である場合にその外周部がセンサの内側にあると、進行方向のセンサの列ではX線が照射されるセル(センサ素子)と照射されないセルとが存在して、つまり照射ムラが生じて検出強度の積算において誤差が生じるところ、それを防止することができる。
【0011】
第3の発明に係るX線透過検査装置は、第1又は第2の発明において、前記ポリキャピラリと前記試料との間に配され前記平行X線のうち中央部のX線の強度を低下させるフィルタを備えていることを特徴とする。
すなわち、このX線透過検査装置では、ポリキャピラリと試料との間に配され平行X線のうち中央部のX線の強度を低下させるフィルタを備えているので、平行X線の中央部がその周辺部よりもX線のエネルギー強度が大きい場合に、中央部のX線強度を低下させることで、中央部とその周辺部との感度を均一化することができる。
【0012】
第4の発明に係る異物検査方法は、X線透過検査装置による異物検出方法であって、前記X線透過検査装置が、試料に対してX線を照射するX線源と、前記X線源からのX線を照射中に前記試料を特定の方向に連続して移動させる試料移動機構と、前記試料に対して前記X線源と反対側に設置され前記試料を透過した前記X線を検出するTDIセンサと、前記X線源と前記試料との間に配されたポリキャピラリとを備え、前記ポリキャピラリにより、前記X線源から放射状に照射されたX線を前記試料の厚み方向と平行な平行X線に変換する工程と、前記試料移動機構により、前記平行X線を照射中に前記試料を特定の方向に連続して移動させる工程と、を有していることを特徴とする。
すなわち、この異物検出方法では、本発明のX線透過検査装置を用いて、ポリキャピラリにより、X線源から放射状に照射されたX線を試料の厚み方向と平行な平行X線に変換し、試料移動機構により、平行X線を照射中に試料を特定の方向に連続して移動させるので、異物の厚さ方向位置に関わらずTDIセンサ上での透過像の移動スピードが一定となり、どの位置の異物もぼけることなく、良好なX線透過像を構成することが可能になる。
【0013】
第5の発明に係る異物検査方法は、第4の発明において、前記X線透過検査装置が、前記ポリキャピラリと前記試料との間に配され前記平行X線のうち中央部のX線だけを開口部から通過させるX線照射領域制限部材を備え、前記X線照射領域制限部材により、前記平行X線の照射領域を制限する工程と、を更に有していることを特徴とする。
すなわち、この異物検出方法では、X線照射領域制限部材により、平行X線の照射領域を制限するので、平行X線のうち中心部と周縁部に出射されるX線のエネルギー分布に対して強度が大きく低下する周縁部のX線を遮断することができる。また、TDIセンサに照射した平行X線の外周部のうち試料の進行方向と平行に配置したTDIセンサのセル(センサ素子)間の照射ムラが低減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るX線透過検査装置及び異物検出方法によれば、X線源と試料との間に配されX線源から放射状に照射されたX線を試料の厚み方向と平行な平行X線に変換するポリキャピラリを備えているので、異物の厚さ方向位置に関わらず、どの位置の異物もぼけることなく、良好なX線透過像を構成することが可能になる。したがって、厚みのある試料であっても、速度非同期による透過像のボケを発生させること無く異物を検出して感度アップを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るX線透過検査装置及び異物検出方法の第1実施形態を示す概略的な全体構成図である。
【
図2】本発明に係るX線透過検査装置及び異物検出方法の第2実施形態を示す概略的な全体構成図である。
【
図3】第2実施形態において、X線照射領域とTDIセンサの検出領域との関係を示す説明図である。
【
図4】第2実施形態において、X線照射領域とTDIセンサの検出領域とアパーチャとの関係を示す説明図である。
【
図5】本発明に係るX線透過検査装置及び異物検出方法の第3実施形態を示す概略的な全体構成図である。
【
図6】本発明に係るX線透過検査装置及び異物検出方法の従来例を示す概略的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るX線透過検査装置及び異物検出方法の第1実施形態を、
図1を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態のX線透過検査装置1は、
図1に示すように、試料Sに対してX線を照射するX線源2と、試料Sを移動可能な試料移動機構3と、試料Sに対してX線源2と反対側に設置され試料Sを透過したX線Xを検出するTDIセンサ4と、X線源2と試料Sとの間に配されX線源2から放射状に照射されたX線Xを試料Sの厚み方向と平行な平行X線X1に変換するポリキャピラリ5とを備えている。
また、このX線透過検査装置1は、TDIセンサ4を制御し受光した平行X線X1に対応した異物を検出する制御部Cを備えている。
【0018】
上記試料Sは、例えば帯状に形成されたLiイオンバッテリー用の材料や医薬品系に用いられる材料である。
上記X線源2は、X線を照射可能なX線管球であって、管球内のフィラメント(陰極)から発生した熱電子がフィラメント(陰極)とターゲット(陽極)との間に印加された電圧により加速されターゲットのW(タングステン)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)などに衝突して発生したX線Xをベリリウム箔などの窓から出射するものである。
【0019】
上記TDI(Time Delay Integration)センサ4は、試料Sの移動方向に対して垂直な方向と平行な方向とのそれぞれに複数のセル(センサ素子)を配置したものであって、検出面4aに配された蛍光体4bと、蛍光体4b下に複数の光ファイバを二次元的に縦横に複数列並べて配したFOP(ファイバオプティクスプレート)4cと、FOP4cの下に配されたSi受光素子4dとを備え、ラインセンサを複数列並べたような構成を有している。例えば、試料Sの送り方向に200〜1000段の単位ラインセンサが並んでTDIセンサ4が構成されている。
このTDIセンサ4では、CsI(ヨウ化セシウム)、GOS(ガドリニウムオキシ硫化物)又はYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)等の蛍光体4bが用いられている。
【0020】
上記制御部Cは、X線源2、試料移動機構3及びTDIセンサ4等に接続され、これらを制御するCPU等で構成されたコンピュータである。
この制御部Cは、TDIセンサ4の電荷転送の方向及び速度を、試料Sの移動方向及び速度に合わせると共に、受光面4aの検出領域においてTDIセンサ4が受光したX線Xの輝度値を積算する機能を有している。
【0021】
すなわち、制御部Cは、試料Sの速度V
sに対してTDIセンサ4の検出領域における電荷転送の速度(送りスピード)V
TDIと駆動方向の向きとを同じに設定し、試料Sの流れとTDIセンサ4の積算処理とを同期させて制御している。
なお、図中の矢印Y1は、試料Sの移動方向であり、矢印Y2は、TDIセンサ4のTDI駆動向きである。
【0022】
上記試料駆動機構3は、TDIセンサ4に対して、例えば試料Sの延在方向に相対的に移動可能なモータ等である。上記試料移動機構3は、例えば帯状の試料Sをロール・to・ロール方式で延在方向に移動させる少なくとも一対のローラ(図示略)等を備えている。
【0023】
上記ポリキャピラリ5は、例えば、内径10μm程の中空ガラス管(キャピラリ)の束で構成され、入射されたX線Xを内壁を全反射で伝播させ、各キャピラリの出射口を同一方向に指向させることでX線Xを集光して平行X線X1に変換する素子である。すなわち、このポリキャピラリ5では、X線Xの入射側では各キャピラリの入射端がX線源2に向けて配されており、X線Xの出射側では各キャピラリの出射端が全て同一方向(試料Sの表面に直交する方向)に向いて配されている。
【0024】
このように本実施形態のX線透過検査装置1及びこれを用いた異物検出方法では、X線源2と試料Sとの間に配されX線源2から放射状に照射されたX線Xを試料Sの厚み方向と平行な平行X線X1に変換するポリキャピラリ5を備えているので、試料Sに照射されるX線Xがポリキャピラリ5によって平行X線X1とされることで、異物の厚さ方向位置に関わらずTDIセンサ4上での透過像の移動スピードが一定となり、どの位置の異物もぼけることなく、良好なX線透過像を構成することが可能になる。
【0025】
次に、本発明に係るX線透過検査装置及び異物検出方法の第2及び第3実施形態について、
図2から
図5を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0026】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、ポリキャピラリ5から出射された平行X線X1がそのまま試料Sに照射されているのに対し、第2実施形態のX線透過検査装置21は、
図2に示すように、ポリキャピラリ5と試料Sとの間に配され平行X線X1のうち中央部のX線だけを開口部22aから通過させるX線照射領域制限部材としてアパーチャ22を備えている点である。
【0027】
上記アパーチャ22は、平行X線X1のX線照射領域X2とTDIセンサ4の検出領域4eとの大きさに応じて開口部22aが設定されている。なお、本実施形態の開口部22aは、試料Sの移動方向に対して直交する方向に長い矩形状に形成されている。したがって、TDIセンサ4の検出領域4eは、開口部22aの形状に対応して、試料Sの移動方向及び速度に合わせた電荷転送の方向(駆動方向)及び速度に応じて移動される矩形状の領域である。
【0028】
例えば、
図3の(a)に示すように、TDIセンサ4の検出領域4eが平行X線X1のX線照射領域X2よりも狭い面積であって、
図4の(a)に示すように、X線照射領域X2がアパーチャ22の開口部22aよりも広い場合、アパーチャ22の開口部22aを、検出領域4eに対して同一かわずかに小さい面積とする。このように設定することで、不要な箇所への平行X線X1の照射を防止でき、散乱線等の影響による測定上の誤差要因を排除することができ、より高精度な測定が可能になる。
【0029】
また、
図3の(b)に示すように、TDIセンサ4の検出領域4eが平行X線X1のX線照射領域X2よりも広い面積であって、
図4の(b)に示すように、アパーチャ22の開口部22aがX線照射領域X2よりも狭く検出領域4e内に収まる場合、X線照射領域X2の周縁部に含まれる高エネルギーX線のハローによってX線の照射ムラが生じるTDIセンサ4のセルを、アパーチャ22の遮蔽部で覆うようにする。このように設定することで、TDIセンサ4の検出領域4eにおいて、異物の通過における感度ムラを無くすことができる。
【0030】
このように第2実施形態のX線透過検査装置21及びこれを用いた異物検出方法では、ポリキャピラリ5と試料Sとの間に配され平行X線X1のうち中央部のX線だけを開口部22aから通過させるアパーチャ22を備えているので、平行X線X1のうち中心部と周縁部に出射されるX線のエネルギー分布に対して強度が大きく低下する周縁部のX線をアパーチャ22で遮断することができ、感度ムラを抑制することができる。
また、TDIセンサ4へのX線の照射において、照射形状が円状である場合にその外周部がセンサの内側にあると、進行方向のセンサの列ではX線が照射されるセルと照射されないセルとが存在して、検出強度の積算において誤差が生じるところ、それを防止することができる。
【0031】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、ポリキャピラリ5と試料Sとの間にアパーチャ22だけが配されているのに対し、第3実施形態のX線透過検査装置31では、
図5に示すように、ポリキャピラリ5と試料Sとの間に配され平行X線X1のうち中央部のX線の強度を低下させるフィルタ33をさらに備えている点である。
上記フィルタ33は、アパーチャ22上に設置され平行X線X1の照射断面における中央部に対応する位置に配されている。このフィルタ33は、例えばX線管球のターゲットに使用される材料(W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)等)やこの材料に原子番号の近い材料の薄膜が採用可能である。
【0032】
このように第3実施形態のX線透過検査装置31では、ポリキャピラリ5と試料Sとの間に配され平行X線X1のうち中央部のX線の強度を低下させるフィルタ33を備えているので、平行X線X1の中央部がその周辺部よりもX線のエネルギー強度が大きい場合に、中央部のX線強度を低下させることで、中央部とその周辺部との感度を均一化することができる。
【0033】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
例えば、上記各実施形態では、円光源であるX線源からのX線を断面円形状の平行X線に変換するポリキャピラリを使用したが、X線源が四角光源である場合、X線源からのX線を断面矩形状の平行X線に変更するポリキャピラリを使用しても構わない。
また、TDIセンサの駆動方向においてポリキャピラリの本数を同じにして、TDIセンサの検出領域上の試料において照射される平行X線の強度を均一にしても良い。
また、上記実施形態においては、X線照射領域制限部材としてアパーチャを使用したが、同様の目的を満たすものであって検査において支障がなければよく、例えばスリットなど、アパーチャ以外のものでもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,21,31…X線透過検査装置、2…X線源、3…試料移動機構、4…TDIセンサ、5…ポリキャピラリ、22…アパーチャ(X線照射領域制限部材)、22a…アパーチャの開口部、33…フィルタ、S…試料、X…X線、X1…平行X線