(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398003
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ジエン系ゴムラテックスの製造方法、及びこれを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 36/04 20060101AFI20180913BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20180913BHJP
C08F 279/04 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
C08F36/04
C08F2/24 Z
C08F279/04
【請求項の数】24
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-521097(P2017-521097)
(86)(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公表番号】特表2017-538799(P2017-538799A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】KR2015014285
(87)【国際公開番号】WO2016105171
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0187763
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0186080
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、チン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン−ミン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ス−チョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユ−ピン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン−ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソン−ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ソク、チェ−ミン
【審査官】
三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0038611(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0065019(KR,A)
【文献】
特表2005−509702(JP,A)
【文献】
特開昭54−133588(JP,A)
【文献】
特公昭49−005732(JP,B1)
【文献】
特開平06−049147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体60重量部から75重量部、第1乳化剤1重量部から3重量部、電解質0.2重量部から3重量部及び分子量調節剤0.1重量部から0.5重量部を反応器に投入して重合する1段階;
前記重合反応の重合転換率が30%から40%の時点に、共役ジエン系単量体10重量部から20重量部、及び第2乳化剤0.1重量部から1.0重量部を一括投入して重合する2段階;
前記重合反応の重合転換率が60%から70%の時点に、共役ジエン系単量体15重量部を一括または連続投入して重合する3段階;及び
前記重合反応の重合転換率が92%以上の時点で重合抑制剤を投入して重合を終了させる4段階;を含むジエン系ゴムラテックスの製造方法において、
前記重合反応の重合転換率が0から50%の時点に、架橋剤0.05重量部から0.3重量部をさらに投入する段階;及び
前記重合反応の重合転換率が50%から85%の時点に、臨界ミセル濃度(CMC)150mg/L以下の第4乳化剤0.01重量部から0.5重量部をさらに投入する段階
を含むことを特徴とするジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記第1乳化剤、および第2乳化剤は、それぞれ独立してアリルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルサルフェート、スルホネート化されたアルキルエステル、脂肪酸石鹸、ロジン酸アルカリ塩、ソジウムラウリルスルホネート、オレイン酸ポタシウム、ソジウムアルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソジウムドデシルアリルスルホサクシネート、C16-18アルケニルコハク酸ジ−ポタシウム塩、ソジウムアクリルアミドステアレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート及びポリオキシエチレンアルキルエーテルエステルアンモニウム塩からなる群より選択される単一物または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項3】
前記第4乳化剤は、CMC 10mg/L以下の乳化剤またはCMC 10mg/Lから150mg/Lの乳化剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記CMC 10mg/L以下の乳化剤は、前記重合反応の重合転換率60%から85%の時点に0.01重量部から0.3重量部をさらに投入することを特徴とする請求項3に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記CMC 10mg/L以下の乳化剤は、C16-18アルケニルコハク酸ジ−ポタシウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムサルフェートであることを特徴とする請求項3または4に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項6】
前記CMC 10mg/Lから150mg/Lの乳化剤は、前記重合反応の重合転換率50%から85%の時点に、0.05重量部から0.5重量部をさらに投入することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項7】
前記CMC 10mg/Lから150mg/Lの乳化剤は、脂肪酸石鹸またはオレイン酸ポタシウムであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項8】
前記第1乳化剤、第2乳化剤及び第4乳化剤は、全て同一の化合物であるか、または異なる化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項9】
前記3段階は、第3乳化剤0重量部から1重量部をさらに一括または連続投入して重合するものである請求項1〜8のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項10】
前記第3乳化剤は、それぞれ独立してアリルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルサルフェート、スルホネート化されたアルキルエステル、脂肪酸石鹸、ロジン酸アルカリ塩、ソジウムラウリルスルホネート、オレイン酸ポタシウム、ソジウムアルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソジウムドデシルアリルスルホサクシネート、C16-18アルケニルコハク酸ジ−ポタシウム塩、ソジウムアクリルアミドステアレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート及びポリオキシエチレンアルキルエーテルエステルアンモニウム塩からなる群より選択される単一物または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項9に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項11】
前記第1乳化剤、第2乳化剤、第3乳化剤及び第4乳化剤は、全て同一の化合物であるか、または異なる化合物であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項12】
前記共役ジエン系単量体は、共役ジエン系単量体単一物、または前記共役ジエン系単量体を主成分として含む単量体混合物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項13】
前記単量体混合物は、前記共役ジエン系単量体55重量%から99.7重量%;
芳香族ビニル系単量体0.1重量%から40重量%;及び
ビニルシアン系単量体0.1重量%から40重量%を含むことを特徴とする請求項12に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項14】
前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン及びp−メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項13に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項15】
前記ビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項13または14に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項16】
前記共役ジエン系単量体は、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレン(piperylene)からなる群より選択される単一物または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項17】
前記1段階は、65℃から70℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項18】
前記2段階は、72℃から75℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項19】
前記3段階は、80℃から85℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項20】
前記架橋剤は、(アルキレングリコール)nジアクリレートまたは(アルキレングリコール)nトリアクリレート(このとき、nは3から15の間の整数である)を含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項21】
前記架橋剤は、(エチレングリコール)8ジアクリレート、(エチレングリコール)12ジアクリレート、(プロピレングリコール)8ジアクリレート及び(プロピレングリコール)12ジアクリレートからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項22】
前記ジエン系ゴムラテックスは、平均粒径が2,600Åから5,000Åである大口径のジエン系ゴムラテックス、及び平均粒径が20nmから70nmである小口径のジエン系ゴムラテックスを含み、前記大口径のジエン系ゴムラテックス:小口径のジエン系ゴムラテックスの混合比は、98重量%から99.9重量%:0.01重量%から2重量%のジエン系ゴムラテックスであることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項23】
前記ジエン系ゴムラテックスは、ゲル含量が70%から84%であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項24】
前記ジエン系ゴムラテックスの膨潤指数は、11から25であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2014年12月24日付韓国特許出願第10−2014−0187763号及び2015年12月24日付韓国特許出願第10−2015−0186080号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、大口径のジエン系ゴムラテックスの製造方法とこれを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体に関し、大口径のゴムラテックスの製造時に架橋剤と臨界ミセル濃度(critical micelle concentration, CMC)が150mg/L以下の乳化剤の含量及び投入時点を調節することにより、衝撃強度が向上した大口径のジエン系ゴムラテックスを製造する方法と、これから製造された大口径のジエン系ゴムラテックス及びこれを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、熱可塑性樹脂は、耐衝撃性、機械的強度、成形性、光沢度などの物性が比較的に良好であるため、電気、電子部品、事務用機器、自動車部品などに広く用いられている。
【0004】
前記熱可塑性樹脂として代表的であるABS(Acrylonitrile−Butadiene−Styrene,ABS)樹脂は衝撃補強剤であって、優れたゴム特性を有するポリブタジエンに代表される共役ジエン系ゴムラテックスを主成分として含んでいる。
【0005】
前記共役ジエン系ゴムラテックスは、乳化重合により製造され得る。前記乳化重合は、優先的に要求される品質水準による処方の修正が容易であるとともに、粉体の形態で生産された製品を用いて、押圧過程を経て多様なマトリックス樹脂(PSAN、PC、PBT、PVCなど)及び添加剤(難燃剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、抗菌剤など)と混練し、多様な製品群を製造することができる長所がある。
【0006】
一方、前記共役ジエン系ゴムラテックスの粒径は、前記乳化重合反応時間と密接な関連がある。例えば、現在、粒径が大きい大口径のゴムラテックスを製造するためには、30時間以上の乳化重合反応を実施しなければならない。したがって、従来の大口径のゴムラテックスの製造方法は、生産性が低いという短所がある。
【0007】
このような問題点を改善するために、重合開始前に少量の乳化剤とシアン化ビニル単量体などの添加剤を投入するか、または前記乳化剤を連続投入する方法などが提案された。しかし、反応時間短縮の効果は不十分であるとの問題がある。もし、反応速度を増加させるために重合反応温度を高める場合、むしろゴムラテックスの粒径が小さくなり、反応凝固物が多くなるだけでなく、反応熱過多による反応圧上昇により量産工程時に安全性が低くなるとのまた他の問題が引き起こされる。
【0008】
さらに、熱可塑性樹脂の製造時に、従来の方法により製造された大口径のゴムラテックスと小口径のゴムラテックスを混合する場合、比較的高い低温衝撃強度と同時に比較的高い表面光沢性を有する熱可塑性樹脂を製造することはできるが、大口径のゴムラテックスと小口径のゴムラテックスをそれぞれ別途製造した後、混合する過程を含むため、工程時間が長く、工程過程が複雑であり、費用が増加するという短所がある。
【0009】
よって、短い反応時間に粒径の大きさが制御されたジエン系ゴムラテックスの製造方法の開発が至急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであって、架橋剤と臨界ミセル濃度(critical micelle concentration, CMC)が150mg/L以下の乳化剤の含量及び投入時点を調節することにより、大口径のゴムラテックス及び小口径のゴムラテックスの含量比が制御されたジエン系ゴムラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、前記方法から製造されたジエン系ゴムラテックスを提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、前記ジエン系ゴムラテックスを含むことにより、衝撃強度、光沢度及び低温衝撃強度が向上したアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体、及びこれを含む熱可塑性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明の一実施形態では、
共役ジエン系単量体60重量部から75重量部、第1乳化剤1重量部から3重量部、重合開始剤0.2重量部から0.4重量部、電解質0.2重量部から3重量部、分子量調節剤0.1重量部から0.5重量部及びイオン交換水65重量部から100重量部を反応器に投入して重合する1段階;
前記重合反応の重合転換率が30%から40%の時点に共役ジエン系単量体10重量部から20重量部、及び第2乳化剤0.1重量部から1.0重量部を一括投入して重合する2段階;
前記重合反応の重合転換率が60%から70%の時点に残量の共役ジエン系単量体と、選択的に第3乳化剤0重量部から1重量部を一括または連続投入して重合する3段階;及び
前記重合反応の重合転換率が92%以上の時点で重合抑制剤を投入して重合を終了させる4段階;を含むジエン系ゴムラテックスの製造方法において、
前記1段階及び2段階を経て進められる重合反応の重合転換率が0から50%の時点に架橋剤0.05重量部から0.3重量部をさらに投入する段階を含むことを特徴とするジエン系ゴムラテックスの製造方法を提供する。
【0014】
また、前記方法は、1段階及び2段階を経て進められる重合反応の重合転換率が50%から85%の時点に臨界ミセル濃度(CMC)が150mg/L以下の第4乳化剤0.01重量部から0.5重量部をさらに投入する段階を含むことができる。
【0015】
このとき、前記架橋剤は、アクリレート系架橋剤を含むことができ、
前記第4乳化剤は、CMC 10mg/L以下の乳化剤またはCMC 10mg/Lから150mg/Lの乳化剤を含むことができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態では、
前記製造方法から製造されたジエン系ゴムラテックスであって、
前記ジエン系ゴムラテックスは、平均粒径が2,600Åから5,000Åである大口径のジエン系ゴムラテックス、及び平均粒径が20から70nmである小口径のジエン系ゴムラテックスを含み、前記大口径のゴムラテックス:小口径のゴムラテックスの混合比は、98重量%から99.9重量%:0.01重量%から2重量%であるジエン系ゴムラテックスを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記ジエン系ゴムラテックスを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るジエン系ゴムラテックスの製造方法は、重合転換率が0から50%の時点に架橋剤を投入し、重合転換率50%から85%の時点に臨界ミセル濃度(critical micelle concentration, CMC)が150mg/L以下の乳化剤をさらに投入する重合反応を行うことにより、大口径のゴムラテックスと小口径のゴムラテックスを同時に含むジエン系ゴムラテックスを製造することができる。
【0020】
また、これを含むことにより、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体、及び熱可塑性樹脂の表面光沢及び低温衝撃強度を確保することができる。
【0021】
したがって、本発明に係るジエン系ゴムラテックスの製造方法、及びこれから製造されたジエン系ゴムラテックスを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体及び熱可塑性樹脂は、これを必要とする産業、特に衝撃補強剤産業に容易に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0024】
本発明の一実施形態では、
共役ジエン系単量体60重量部から75重量部、第1乳化剤1重量部から3重量部、重合開始剤0.2重量部から0.4重量部、電解質0.2重量部から3重量部、分子量調節剤0.1重量部から0.5重量部、及びイオン交換水65重量部から100重量部を反応器に投入して重合する1段階;
前記重合反応の重合転換率が30%から40%の時点に共役ジエン系単量体10重量部から20重量部、及び第2乳化剤0.1重量部から1.0重量部を一括投入して重合する2段階;
前記重合反応の重合転換率が60%から70%の時点に残量の共役ジエン系単量体と、選択的に第3乳化剤0重量部から1重量部を一括または連続投入して重合する3段階;及び
前記重合反応の重合転換率が92%以上の時点で重合抑制剤を投入して重合を終了させる4段階;を含むジエン系ゴムラテックスの製造方法において、
前記1段階及び2段階を経て進められる重合反応の重合転換率が0から50%の時点に架橋剤0.05重量部から0.3重量部をさらに投入する段階を含むジエン系ゴムラテックスの製造方法を提供する。
【0025】
また、前記方法は、1段階及び2段階を経て進められる重合反応の重合転換率が50%から85%の時点に臨界ミセル濃度(CMC)が150mg/L以下の第4乳化剤0.01重量部から0.5重量部をさらに投入する段階を含むジエン系ゴムラテックスの製造方法を提供する。
【0026】
前記重合1段階は、共役ジエン系単量体と第1乳化剤及び分子量調節剤などを混合して重合を開始するために、共役ジエン系単量体60重量部から75重量部、乳化剤1重量部から3重量部、重合開始剤0.2重量部から0.4重量部、電解質0.2重量部から3重量部、分子量調節剤0.1重量部から0.5重量部、及びイオン交換水65重量部から100重量部を反応器に投入する段階である。
【0027】
本発明で前記共役ジエン系単量体は、共役ジエン系単量体の単一物を含むか、または前記共役ジエン系単量体を主成分として含む単量体混合物を含むことができる。
【0028】
このとき、前記単量体混合物は、共役ジエン系単量体55重量%から99.7重量%;芳香族ビニル系単量体0.1重量%から40重量%;及びビニルシアン系単量体0.1重量%から40重量%を含むものであり得る。
【0029】
前記共役ジエン系単量体は、特に限定するものではないが、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレン(piperylene)からなる群より選択される1種以上のものであってよい。具体的に、1,3−ブタジエンであってよい。
【0030】
前記芳香族ビニル系単量体は、特に限定するものではないが、例えばスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、及びp−メチルスチレンからなる群より選択される1種以上のものであってよい。具体的には、スチレンであってよい。
【0031】
前記ビニルシアン系単量体は、特に限定するものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群より選択される1種以上のものであってよい。具体的には、アクリロニトリルであってよい。
【0032】
前記重合開始剤は、特に限定せず、当業界に公知の通常のものを用いることができ、例えば、過硫酸塩のような水溶性重合開始剤、ペルオキシ化合物のような脂溶性重合開始剤または酸化−還元系触媒などを用いることができる。
【0033】
前記過硫酸塩は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどであってよく、前記脂溶性重合開始剤はクメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、3級ブチルヒドロペルオキシド、パラメタンヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどであってよい。また、前記酸化−還元系触媒は、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ソジウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどであってよい。
【0034】
前記電解質は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムなどであり得る。
【0035】
前記分子量調節剤は、特に限定されるものではないが、例えば、a−メチルスチレンダイマー、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンのようなメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドのような硫黄含有化合物であり得る。好ましくは、t−ドデシルメルカプタンであり得る。
【0036】
また、前記重合2段階は、1次重合の重合転換率が30%から40%の時点に共役ジエン系単量体10重量部から20重量部、及び第2乳化剤0.1重量部から1.0重量部を一括投入する段階である。
【0037】
前記重合3段階は、1次重合の重合転換率が60から70%の時点に共役ジエン系単量体の残量と、選択的に第3乳化剤0重量部から1重量部を一括または連続投入する段階である。
【0038】
このとき、前記第1から第3乳化剤は、それぞれ独立してアリルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルサルフェート、スルホネート化されたアルキルエステル、脂肪酸石鹸、ロジン酸アルカリ塩、ソジウムラウリルスルホネート、オレイン酸ポタシウム、ソジウムアルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(polyoxyethylene alkylphenyl ether)、ソジウムドデシルアリルスルホサクシネート、C
16-18アルケニルコハク酸ジ−ポタシウム塩(Alkenyl C
16-18 Succinic acid,Di−potassium salt)、ソジウムアクリルアミドステアレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルエステルアンモニウム塩などを単独または混用して用いることができ、特に限定するものではない。
【0039】
本発明に係る前記製造方法は、前述したように共役ジエン系単量体を重合転換率の時点によって3段階(一括投入及び連続投入)に分けて投入することにより、適正の粒径大きさを有するジエン系ゴムラテックスを容易に形成することができる。
【0040】
前記本発明に係る前記重合1から3段階は、それぞれ異なる温度範囲で実施することができる。
【0041】
具体的に、前記1段階は65℃から70℃の温度範囲で実施することができ、前記2段階は72℃から75℃の温度範囲で実施することができ、前記3段階は80℃から85℃の温度範囲で実施することができる。すなわち、本発明は重合が進められるほど、重合温度を徐々に上昇させながら重合を実施することができる。
【0042】
特に、前記本発明の方法は、1次重合反応の重合転換率が0%から50%の時点に架橋剤0.05から0.3重量部をさらに投入する段階を含むことができる。
【0043】
このとき、前記架橋剤は、その代表的な例として(アルキレングリコール)
nジアクリレートまたは(アルキレングリコール)
nトリアクリレートを挙げることができる(このとき、nは3から15の間の整数である)。このとき、前記nが15を超過する場合、衝撃強度は向上するが、ゴムラテックスの安定性が低下する短所がある。また、前記架橋剤の含量が0.05重量部未満の場合、衝撃強度の上昇効果が僅かであるか、殆ど発生せず、0.3重量部を超過する場合には、ゴムラテックスの安定性が低下するという短所が生じる。
【0044】
具体的に、前記架橋剤は、(エチレングリコール)
8ジアクリレート、(エチレングリコール)
12ジアクリレート、(プロピレングリコール)
8ジアクリレートまたは(プロピレングリコール)
12ジアクリレートを挙げることができる。
【0045】
特に、本発明では、重合反応の初期に前記アクリレート系架橋剤を投入して反応することにより、重合速度が増加する効果を得ることができる。
【0046】
また、前記本発明の方法は、前記1段階及び2段階を経て進められる重合反応の重合転換率が50%から85%の時点に臨界ミセル濃度(critical micelle concentration, CMC)が150mg/L以下の第4乳化剤0.01重量部から0.5重量部をさらに投入する段階を含むことができる。
【0047】
具体的に、前記第4乳化剤は、CMC 10mg/L以下の乳化剤またはCMC10から150mg/Lの乳化剤を含むことができる。
【0048】
より具体的に、前記CMC 10mg/L以下の乳化剤を含む場合、前記1段階及び2段階を経て進められる重合反応の重合転換率60から85%の時点に、前記CMC 10mg/L以下の乳化剤0.01重量部から0.3重量部を投入することができる。このとき、前記CMC 10mg/L以下の乳化剤は、その代表的な例としてC
16-18アルケニルコハク酸ジ−ポタシウム塩、ポリ−オキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート(poly−oxyethylene alkylphenyl ether ammonium salt)などを挙げることができる。
【0049】
また、前記第4乳化剤として、CMC10から150mg/Lの乳化剤を含む場合、前記1段階及び2段階を経て進められる重合反応の重合転換率50から85%の時点に前記CMCが10から150mg/Lの乳化剤0.05重量部から0.5重量部を投入することができる。このとき、前記CMC10から150mg/Lの乳化剤は、その代表的な例として、脂肪酸石鹸またはオレイン酸ポタシウムなどを挙げることができ、この中でオレイン酸ポタシウムを挙げることができる。
【0050】
前記第1乳化剤から第4乳化剤は、全て同一であってもよく、またはそれぞれ独立して異なっていてもよい。例えば、前記第1乳化剤及び第4乳化剤が、全てオレイン酸ポタシウムを含む場合、反応初期に投入された第1乳化剤であるオレイン酸ポタシウムは、初期ミセル(micelle)または粒子を形成するために電解液とともに投入されるものであって、反応中に投入され、初期成長するゴム粒子と別に小口径のゴムラテックス粒子を生成させる第4乳化剤とその役割が異なる。
【0051】
すなわち、本発明の方法は、重合反応中に第4乳化剤を投入し、大口径のゴムラテックスと同時に小口径のゴムラテックスが生成されるようにすることにより、既存に比べての衝撃強度において同等あるいはそれ以上を維持しながら、高い表面光沢度と低い低温衝撃強度の減少幅を確保することができる熱可塑性樹脂を製造することができる。
【0052】
一方、前記第4乳化剤は、略0.01重量部から0.5重量部を投入することができるが、全体の重合反応を行う間、前記第4乳化剤の含量が0.5重量部を超過する場合、低温衝撃強度の減少幅と高い光沢度を確保することができるが、小口径の生成比率が高くなるので、平均粒径サイズが減少しながら既存に比べての衝撃強度が減少するなど、物性の低下をもたらし、重合過程中に粘度の増加をもたらすため、反応の安定性を低下させる短所がある。また、投入含量が0.01重量部未満であれば、生成される小口径の比率が僅かになるか、既存粒径の安定化に用いられ、効果の発現が困難であるとの短所がある。
【0053】
さらに、第4乳化剤を投入する際に投入時点の転換率が低い場合、例えば、重合転換率50%以下で第4乳化剤を投入する場合、小口径のゴムラテックスの生成率が増加して高い光沢度及び低い低温衝撃強度の減少幅を期待し難い。また、第4乳化剤を投入する際に投入時点の転換率が高い場合、例えば、重合転換率80%以上で第4乳化剤を投入する場合、反応に参加しない単量体含量が低いので、乳化剤が少なく投入されることと類似の傾向を示す短所がある。
【0054】
一方、第4乳化剤としてCMCが高い、例えば150mg/L以上の乳化剤を含む場合、大口径のゴムラテックスと小口径のゴムラテックスを同時に製造されることが容易でない。
【0055】
前記重合終了段階は、ジエン系ゴムラテックスを収得するために、重合転換率が92%以上の時点で重合を終了させる段階である。
【0056】
前記重合終了は、重合抑制剤を用いて行うことであってよく、前記重合抑制剤は当業界に公知の通常のものを用いることができる。
【0057】
また、本発明は、前記製造方法から製造されたジエン系ゴムラテックスを提供する。
【0058】
このとき、本発明の一実施形態による前記ジエン系ゴムラテックスは、平均粒径が2,600Åから5,000Åである大口径のジエン系ゴムラテックス、及び平均粒径が20nmから70nmである小口径のジエン系ゴムラテックスを含み、前記大口径のゴムラテックス:小口径のゴムラテックスの混合比は98重量%から99.9重量%:0.01重量%から2重量%であるジエン系ゴムラテックスを提供する。
【0059】
ここで、前記Åは、電磁気放射線(electromagnetic radiation)の波長を表現するのに用いる長さの単位を示すものであって、1Åは0.1nmと同様である。
【0060】
また、前記ジエン系ゴムラテックスは、ゲル含量が70%から84%のものであってよく、膨潤指数が11から25のものであってよい。
【0061】
このとき、前記ゲル含量は、重合体内の架橋結合程度、すなわち重合体の架橋度を示すものであって、ゲル含量数値が大きいほど、重合体の架橋度が高いといえる。
【0062】
前記膨潤指数は、重合体が溶媒によって膨潤する程度を示すものであって、重合体の架橋度が高いほど、膨潤指数は低いといえる。
【0063】
前述したように、本発明の方法は1段階及び2段階を経て進められる重合転換率が0から50%の時点に架橋剤0.05から0.3重量部をさらに投入し、CMCが150mg/L以下の乳化剤を重合反応の重合転換率50%から85%の時点に略0.01重量部から0.5重量部を投入することにより、熱可塑性樹脂で物性の変化をもたらし得る。すなわち、大口径のゴムラテックスと小口径のゴムラテックスを同時に製造することができ、重合転換率は高めながらゲル含量の増加及び膨潤指数の減少を抑制することができる。よって、結果として既存の衝撃強度を維持しながら、低温衝撃強度及び表面光沢が向上した熱可塑性樹脂を製造することができる。一方、ゴムラテックス状は、TEM分析写真もしくは粒径測定装備で僅かに小口径のラテックスが観察され得るが、平均粒径などにおいては別段の差をみせない。
【0064】
さらに、本発明は、前記ジエン系ゴムラテックスを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を提供する。
【0065】
本発明の一実施形態によるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体は、
前記ジエン系ゴムラテックス40重量%から70重量%、
芳香族ビニル化合物20重量%から50重量%、及び
ビニルシアン化合物10重量%から40重量%を含むことを特徴とする。
【0066】
具体的に、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体は、25%から35%のグラフト率、及び0.01%から0.1%の生成凝固物含量を有することができ、より具体的に33%のグラフト率及び0.05%の生成凝固物含量を有することができる。
【0067】
一方、本発明に係る前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体は特に限定されず、当業界に公知の通常の方法により製造することができ、例えば、ジエン系ゴムラテックスに芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及び乳化剤などの添加剤を投入して乳化重合した後、凝集及び洗浄して製造するものであり得る。このとき、各構成成分は反応器に一括添加する方法、連続添加する方法、または一部を1次で添加し、重合開始後に分割投入する方法を介して反応に参加させることができる。
【0068】
また、乳化重合を容易に行わせるために、必要に応じてキレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調整剤、老化防止剤、酸素捕捉剤(oxygen scavenger)のような添加剤をさらに用いることができ、前記乳化重合は通常10℃から90℃の温度範囲で行われてよいが、好ましくは25℃から75℃の温度範囲であり得る。
【0069】
また、前記凝集は、乳化重合以後に形成されたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス組成物を凝集してアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス凝固物を形成するためのことであって、当業界に公知の通常の方法により行うことができ、例えば、前記組成物に塩水溶液または酸水溶液を処理し、塩凝集または酸凝集して行うことができる。
【0070】
前記洗浄は、前記塩凝集または酸凝集を介して形成されたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス凝固物から不純物(残留乳化剤、凝集剤など)を除去してアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を収得するためのことであって、前記凝固物を無機塩水溶液に添加して洗浄した後、乾燥して行うことができる。
【0071】
このとき、前記洗浄及び乾燥は特に限定せず、当業界で通常の方法によって行うことができる。
【0072】
以下、実施例及び実験例によって本発明をさらに詳しく説明する。しかし、下記実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであって、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
実施例1
1)ジエン系ゴムラテックスの製造
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)にイオン交換水65重量部、1,3−ブタジエン70重量部、第1乳化剤であるロジン酸カリウム塩1.5重量部、オレイン酸ポタシウム塩0.8重量部、電解質である炭酸カリウム(K
2CO
3)0.8重量部、分子量調節剤として3級ドデシルメルカプタン(TDDM)0.3重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)0.3重量部を一括投与し、70℃で重合転換率30%まで反応させた後(1段階)、1,3−ブタジエン20重量部を一括投与し、第2乳化剤としてロジン酸カリウム塩0.3重量部を投入した後、75℃で重合転換率60%まで反応させた(2段階)。このとき、下記表1に示すように、重合反応初期に架橋剤((プロピレングリコール)
8ジアクリレート)0.1重量部を投入し、重合転換率60%の時点に第4乳化剤として35mg/Lのオレイン酸ポタシウム0.35重量部をさらに投入して反応に参加させ、残りの1,3−ブタジエン15重量部を一括投与し、82℃まで昇温させて反応させた(3次段階)。重合反応の重合転換率が95%以上の時点で重合抑制剤を投入して重合を終了し、ジエン系ゴムラテックスを収得した。
【0074】
2)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の製造
窒素置換された重合反応器に前記1)で製造されたジエン系ゴムラテックス65重量部及びイオン交換水100重量部を投入し、別途の混合装置で混合されたアクリロニトリル10重量部、スチレン25重量部、イオン交換水20重量部、t−ブチルヒドロペルオキシド0.1重量部、ロジン酸カリウム1.0重量部及び3級ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合溶液とデキストロース0.054重量部、ピロリン酸ナトリウム0.004重量部及び硫酸第一鉄0.002重量部を共に前記重合反応器に70℃で3時間の間連続投入した。連続投入が終わった後、デキストロース0.05重量部、ピロリン酸ナトリウム0.03重量部、硫酸第一鉄0.001重量部、t−ブチルヒドロペルオキシド0.005重量部を一括して前記重合反応器に投入し、温度を80℃まで1時間に亘って昇温した後、反応を終結した。形成されたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体ラテックスを硫酸水溶液で凝固させて洗浄し乾燥して、粉末状態のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を収得した。
【0075】
3)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系熱可塑性樹脂
前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体の粉末26重量%とスチレンアクリロニトリル系樹脂(LG SAN 92 HR))74重量%を混合した後、これを押圧機を用いてペレット化した後、射出成形機を用いてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系熱可塑性樹脂の試片を得た。
【0076】
実施例2
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、架橋剤として((プロピレングリコール)
8ジアクリレート)0.2重量部を投入し、第4乳化剤として35mg/Lのオレイン酸ポタシウムを重合転換率58%の時点に投入することを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0077】
実施例3
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、架橋剤として(プロピレングリコール)
12ジアクリレートを投入し、第4乳化剤として35mg/Lのオレイン酸ポタシウムを重合転換率62%の時点に投入することを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0078】
実施例4
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、架橋剤である(プロピレングリコール)
12ジアクリレートを重合転換率20%の時点に投入し、第4乳化剤として35mg/Lのオレイン酸ポタシウムを重合転換率58%の時点に投入することを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0079】
実施例5
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、第4乳化剤としてCMC 4.8mg/LのC
16-18アルケニルコハク酸ジ−ポタシウム塩(Latemul ASK)0.05重量部を投入することを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0080】
比較例1
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、架橋剤及び第4乳化剤をさらに投入しないことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0081】
比較例2
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、第4乳化剤として35mg/Lのオレイン酸ポタシウム0.35重量部を重合転換率62%の時点にさらに投入したことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0082】
比較例3
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、架橋剤である(プロピレングリコール)
12ジアクリレート0.5重量部を反応初期に投入し、第4乳化剤としてオレイン酸ポタシウム0.35重量部を重合転換率59%の時点にさらに投入したことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0083】
比較例4
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、架橋剤として(プロピレングリコール)
12ジアクリレート0.2重量部を重合転換率60%の時点に投入し、第4乳化剤としてオレイン酸ポタシウム0.35重量部を重合転換率59%の時点にさらに投入することを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0084】
比較例5
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、第4乳化剤として35mg/Lのオレイン酸ポタシウム0.75重量部を投入することを除いては、前記実施例3と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0085】
比較例6
ジエン系ゴムラテックスの製造時に、第4乳化剤の投入時点を重合転換率45%の時点に投入することを除いては、前記実施例3と同じ方法を介してジエン系ゴムラテックスを製造した。また、これを含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及び熱可塑性樹脂の試片を収得した。
【0086】
実験例
前記実施例1から4及び比較例1から4で製造したそれぞれの試片の低温衝撃強度及び光沢度のような物性を測定し、結果を下記表1に示した。
【0087】
1)転換率(%):前記実施例1から4及び比較例1から4で製造した各ジエン系ゴムラテックスの転換率を測定した。
【0088】
2)衝撃強度:各試片を1/4インチの厚さで製造し、ASTM D256に基づいて測定した。
【0089】
3)低温衝撃強度:前記圧射出を経た試片を零下20℃の低温チャンバに2時間ほど放置後、ASTM D256に基づいて測定した。
【0090】
4)光沢度:ASTM D−528に基づいてグロスメーター(Gloss meter)で45度角度で光沢度を測定した。このとき、光沢度値が大きいほど、光沢が優れることを意味する。
【0091】
【表1】
【0092】
前記表1に示すように、本発明の方法によれば、重合転換率0%から20%の時点に架橋剤を投入し、重合転換率50%から80%の時点に第4乳化剤を投入した実施例1から5の熱可塑性樹脂の試片の場合、架橋剤及び第4乳化剤を投入していない比較例1の熱可塑性樹脂の試片に比べて、重合安定性、衝撃強度、光沢度及び低温衝撃強度のいずれも向上したことが分かる。
【0093】
一方、架橋剤を含まず、第4乳化剤を重合転換率62%の時点に入れた比較例2の熱可塑性樹脂の試片の場合、実施例1から5の熱可塑性樹脂の試片に比べて光沢度及び低温衝撃強度は向上したが、衝撃強度が低いことを確認した。また、架橋剤が過量投入された比較例3の熱可塑性樹脂の試片の場合、実施例1の熱可塑性樹脂の試片に比べて衝撃強度は高い反面、光沢度及び低温衝撃強度は低かった。また、架橋剤の投入時点が遅れた比較例4の熱可塑性樹脂の試片の場合、小口径粒子が確認されておらず、実施例1から5の熱可塑性樹脂の試片に比べて衝撃強度、光沢度及び低温衝撃強度が全て低いことを確認した。
【0094】
また、第4乳化剤の投入含量が0.75重量部で高い比較例5の熱可塑性樹脂の試片の場合、実施例1から5の熱可塑性樹脂の試片に比べて反応時間が短く光沢度は高い反面、衝撃強度及び低温衝撃強度は低いことを確認した。特に、比較例5の熱可塑性樹脂の試片に含まれた大口径のジエン系ゴムラテックス:小口径のジエン系ゴムラテックスの含量比が96%:4%であって、大口径のジエン系ゴムラテックス含量比が低いことが分かる。
【0095】
また、第4乳化剤の投入時点が45%で低い比較例6の熱可塑性樹脂の試片の場合、実施例1から5の熱可塑性樹脂の試片に比べて衝撃強度及び低温衝撃強度が確実に低くなることが分かる。