特許第6398208号(P6398208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398208
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】離型フィルム用ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20180920BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20180920BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20180920BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
   B32B27/36
   B32B27/20 Z
   C08L67/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-18135(P2014-18135)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145077(P2015-145077A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(72)【発明者】
【氏名】赤津 一之
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀和
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−237451(JP,A)
【文献】 特開2002−207119(JP,A)
【文献】 特開2009−235231(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0108687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両外層に粒径の異なる不活性粒子および架橋高分子粒子を含有し、当該不活性粒子の含有量が、フィルムの外層それぞれに対して0.05〜2.0重量%であり、当該架橋高分子粒子の含有量が外層それぞれに対して0.05〜0.5重量%であり、少なくとも3層以上の積層構造を有するポリエステルフィルムであり、かつ、当該不活性粒子の平均粒径が、0.4〜2.0μm、当該架橋高分子粒子の平均粒径が、0.2〜1.0μmであり、当該フィルムの両面の最大断面粗さ(St)を平均粗さ(Sa)で除した値(St/Sa)が65〜90の範囲にあり、
当該不活性粒子が、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタンから選ばれる少なくとも1種であり、
当該架橋高分子粒子が、分子中にただ一個の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(A)と、架橋剤として分子中に2個以上の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(B)との共重合体であることを特徴とする離型フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の離型フィルム用ポリエステルフィルムに、さらに離型層を有する離型ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム用ポリエステルフィルムに関し、特に液晶表示用途等の偏光板用の離型フィルムに好適に使用される二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種の用途において使用されている。その一つの用途として、液晶ディスプレイ(LCD)の偏光板用の離型ポリエステルフィルムとして使用されることもある。
【0003】
近年、携帯電話やパーソナルコンピューターの急速な普及に伴い、従来型のディスプレイであるCRTに比べ、薄型軽量化、低消費電力、高画質化が可能である液晶ディスプレイの需要が著しく伸びつつあり、LCDの大画面化についてもその技術の成長は著しい。
【0004】
LCDの大画面化の一例として、最近では、30インチ以上の大型TV用途にLCDが使用されている。このようなLCD自体の需要の増加、LCDの大画面化に伴いLCDの使用部材である偏光板の使用面積も増加することとなり、偏光板用の離型ポリエステルフィルムもその生産性を高め供給量を増やし、コストを下げることが求められている。
【0005】
偏光板離型フィルムの生産性を上げるべく加工ラインの速度アップ等を実施した場合、従来の設計のポリエステルフィルムを適用すると、フィルムのすべり性、巻き特性、帯電性などの点で技術的課題があることがわかってきた。これらの課題があるために離型フィルムの生産性があげられないとともに、従来の設計のポリエステルフィルムを適用して無理に生産性をあげようとした場合は歩留まり低下などを伴い、結果的にはむしろ生産性を落としてしまうような問題が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−12254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、その解決課題は、例えば、偏光板製造用の離型フィルムの基材として用いた際に、高速で離型層を塗設しても巻き特性、帯電性、すべり性が十分であり、高品質の偏光板製造用離型フィルムを生産することができる光学用途向けに好適な二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の粒子を配合し、かつ特定の構成を有するポリエステルフィルムにより、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、両外層に粒径の異なる少なくとも2種の粒子を含有する、少なくとも3層以上の積層構造を有するポリエステルフィルムであり、当該フィルムの両面の最大断面粗さ(St)を平均粗さ(Sa)で除した値(St/Sa)が65〜90の範囲にあることを特徴とする偏光板離型用ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偏光板製造用の離型フィルムの基材として用いた際に、高速で離型加工しても巻き特性、帯電性、すべり性が十分であり、高品質の偏光板製造用離型フィルムを生産することができる光学用途向け二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸とから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、コハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0012】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6―ナフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。本発明のフィルムとしては、優れた強度や寸法安定性の観点から二軸延伸フィルムが好ましく用いられる。
【0013】
本発明におけるポリエステルフィルムの両外層に小粒子として添加する好適な粒子のひとつとして架橋高分子粒子が挙げられる。その平均粒径は、通常0.2〜1.0μmであり、好ましくは0.3〜0.7μmである。平均粒径が0.2μm未満である場合は、ポリエステルフィルムとした場合の平均粗さ(Sa)を十分高い値まで到達させることができず、本発明の範囲のフィルムを設計することができないことがある。逆に、1.0μmを超える場合は、ポリエステルフィルムとした場合の平均粗さ(Sa)を十分低い値とすることができなくなり、最大断面粗さ(St)を平均粗さ(Sa)の関係を本発明の範囲内に制御することが困難となることがある。
【0014】
これら小粒子の好ましい含有量は粒子含有している外層に対して通常0.05〜0.5重量%である。架橋剤高分子粒子Aの含有量が0.05重量%未満だと、表面突起の形成が十分でないため、易滑性が低下し、傷が入りやすくなったり、また、フィルム巻き取り時に静電気が発生し異物等の巻き込みが発生しやすくなったりして、フィルム品質が低下することがある。また、小粒子の含有量が0.5重量%より多くなると、表面粗面化によりフィルムの透明性が低くなり、目視検査性の点で劣る傾向がある。
【0015】
架橋高分子粒子は通常次のようにして得ることができる。すなわち、分子中にただ一個の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(A)と、架橋剤として分子中に2個以上の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(B)とを共重合させて得られるものである。共重合体の一成分である化合物(A)の例としては、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、およびこれらのメチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステル、またはグリシジルエステル、無水マレイン酸およびそのアルキル誘導体、ビニルグリシジルエーテル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンおよびその置換体等を挙げることができる。また化合物(B)の例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールアクリレート等を挙げることができる。
【0016】
これらの共重合体の典型的な例としては、メタクリル酸とジビニルベンゼン、スチレンとジビニルベンゼン、メタクリル酸とエチレングリコールジメタクリレートの共重合体を挙げることができるが、本発明においては、化合物(A)および(B)を複数用いて架橋高分子粒子を得ても構わない。
【0017】
本発明で使用することのできる架橋高分子粒子は、粒度分布(r)が2.0〜5.0、平均粒径(d)が0.2〜1.0μmのものが好ましく、かかる粒度分布(r)および平均粒径(d)を有する粒子を得るためには、懸濁重合あるいは乳化重合により直接得たものを配合してもよいが、特に懸濁重合の場合に簡単に得ることのできる数十μm〜数百μmの大きさの架橋高分子を粉砕、分級することで得ることが好ましい。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムの両外層に大粒子として添加する好適な粒子のひとつとして不活性粒子が挙げられる。不活性粒子はその平均粒径が好ましくは0.4〜2.0μm、より好ましくは0.5〜1.5μm、さらに好ましくは0.6〜1.0μmの範囲にある。また不活性粒子の添加量は、好ましくはフィルムの外層に対して0.05〜2.0重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0019】
不活性粒子の平均粒径が0.5μmより小さいと、粒子に起因するフィルム表面の突起の発現が十分でないため、傷の発生や巻き特性への改善効果が認められないことがある。また、平均粒径が2.0μmよりも大きいと、フィルム表面に発現する突起が大きくなり、輝点欠点のように見えてしまうことがある。
【0020】
不活性粒子の添加量が0.05重量%未満の場合、粒子に起因するフィルム表面の突起の数が十分でなく、傷の発生や巻ずれ等の巻き特性の改善効果が認められないことがある。また、添加量が1.0重量%を超えるとフィルム表面に発現する突起が大きくなり、輝点欠点のように見えてしまうことがある。
【0021】
本発明において特に好適に用いることのできる不活性粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられるが、フィルム化したときの透明性や取扱い性の観点からシリカが好ましく用いられる。
【0022】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に限定はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの両面の最大断面粗さ(St)を平均粗さ(Sa)で除した値(St/Sa)が65から90の範囲であること必須の条件とし、好ましくは70から80の範囲である。St/Saが90よりも大きい場合は、フィルム表面の微細な荒れ性が不足することにより、ポリエステルフィルム巻出し時に静電気が発生したり、離型層を塗設置後の製品で巻き上げた製品でブロッキングが発生したりする懸念がある。St/Saが65よりも小さい場合は、フィルム表面が微細に荒れすぎていることに起因しフィルム表面で光の乱反射が発生し、離型層を塗設置後の製品での検査性が劣る。また十分な高さの突起がフィルム表面に十分存在していないことに起因し製品巻き取り時に巻ずれが発生しやすくなる。
【0024】
なお、本発明においては、粒子の表面が各種表面処理剤、例えばシランカップリング剤やチタンカップリング剤等で処理されていたとしてもその効果は十分発揮される。
【0025】
以下、本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の構成を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0026】
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0027】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その要求特性に応じて必要な特性、例えば帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、必要に応じて縦延伸終了後、横延伸のテンター入口前にコートをしてテンター内で乾燥するいわゆるインラインコートを行ってもよい。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
【0029】
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等を混合することができる。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムに離型層を設置する場合、離型層を構成する材料は離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とした場合に離型性が良好な点で良い。硬化型シリコーン樹脂の種類としては溶剤付加型・溶剤縮合型・溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
【0032】
(1)平均粒径
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則にもとづく沈降法によって粒子の大きさを測定した。
【0033】
(2)フィルム表面の算術平均粗さ(Sa)、最大断面粗さ(St)測定
試料フィルムの測定面を試料フィルムの測定面を、直接位相検出干渉法、いわゆるマイケルソンの干渉を利用した2光束干渉法を用いた、非接触表面計測システム「マイクロマップ社製Micromap512)」により算術平均粗さ(Sa)、最大断面粗さ(St)を計測した。なお、測定波長は530nmとし、対物レンズは20倍を用いて、20°視野計測し、算術平均粗さ(Sa)、最大断面粗さ(St)ともそれぞれ計12点計測した計測値の内、その最大値と最小値を除く計10点の平均値を採用した。
【0034】
(3)巻き特性(巻ずれ)
4000mm幅のマスターロールから幅1300mm、巻長さ8000mの製品を採取した際の巻ずれ品の発生比率(巻ズレ本数/全製品本数)から、巻き特性を下記基準に従い判定した。
〇:0〜10%
×:10%以上
【0035】
(4)帯電量
前述の手法で幅1300mm、巻長さ8000mの製品を巻き取ったあと、フィルムを外周2周分巻きほぐし、その際に発生するフィルム内面側静電気の帯電性をデジタル静電電位測定器(KSD-1000, 春日電機製)で測定した。
【0036】
(5)ブロッキング性
ポリエステルフィルム上に硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部よりなる離型剤を塗工量が0.1g/mmになるように塗布して170℃で10秒間の乾燥を行い離型フィルムとした。得られた離型フィルムを離型層塗設面とプレーン面が面するように10セット用意し、40℃、80%RHの環境下、熱プレス機で10kg/cm2の条件で48時間プレスした。熱プレス後に真ん中のフィルム1セットを取り出し、以下の基準でそのブロッキング性を評価した。
○:片側のフィルムを持ち上げるだけで対となっているフィルムが剥がれる
△:片側のフィルムを持ち上げた際、対となっているフィルムも付随して付いてくるが、これらを剥がす際、音を立てることなく剥がすことができる
×:片側のフィルムを持ち上げた際、対となっているフィルムも付随して付いてきて、これらを剥がす際、ぱりぱりと音を立てる
【0037】
(6)目視検査性
(5)に記載の内容に準じてポリエステルフィルムに離型層を塗設後、蛍光灯反射下で目視にて観察し、目視検査性を下記基準に従い評価した。
<反射光下での目視検査性 判定基準>
(検査性良好) ○>△>× (検査性不良)
【0038】
実施例1:
(架橋高分子微粉体の製造)
メタクリル酸メチル100部、ジビニルベンゼン25部、エチルビニルベンゼン22部、過酸化ベンゾイル1部およびトルエン100部の均一溶液を水700部に分散させた。
次に窒素雰囲気下で8時間撹拌しながら80℃に加熱し、重合を行なった。
得られたエステル基を有する架橋高分子粒状体の平均粒径は約0.1mmであった。該粒状体を脱塩水で水洗し、500部のトルエンで3回抽出して少量の未反応モノマーおよび線状ポリマーを除去した。次に該高分子粒状体をアトライターで2時間、さらに五十嵐機械(株)製サンドグラインダーで5時間粉砕することにより平均粒径が0.6μmの架橋高分子微粉体を得た。次いでスーパーデカンターで大粒子を除去した後、さらに2400メッシュフィルターを用いて粒度分布(r)が3.1、平均粒径が0.5μmの架橋高分子微粉体を得た。
【0039】
(ポリエステルチップAの製造法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従いチップ化して、ポリエステルAを得た。
【0040】
(ポリエステルチップBの製造法)
上記ポリエステルAを製造する際、平均粒径0.5μmの上記方法で得た架橋高分子微紛体6000ppm添加し、ポリエステルBを得た。
【0041】
(ポリエステルチップCの製造法)
上記ポリエステルAを製造する際、平均粒径0.8μmの炭酸カルシウムを20000ppm添加し、ポリエステルCを得た。
【0042】
(ポリエステルフィルムの製造)
上記ポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCを65%、20%、15%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステルA100%の原料をB層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、2種3層(ABA)で、厚み構成比がA:B:A=3:32:3になるように共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度125℃で縦方向に2.8倍延伸した後、テンターに導き、予熱工程を経て横方向に100℃で4.2倍延伸し、210℃で10秒間の熱処理を行った後、180℃で幅方向に7%の弛緩を加え、幅4000mm、厚さ38μmのポリエステルフィルムを得た。
【0043】
実施例2:
A層の原料配合をポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCをそれぞれ55%、30%、15%の割合とした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となった。
【0044】
実施例3:
A層の原料配合をポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCをそれぞれ45%、40%、15%の割合とした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となった。
【0045】
実施例4:
A層の原料配合をポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCをそれぞれ35%、50%、15%の割合とした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となった。
【0046】
実施例5:
A層の原料配合をポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCをそれぞれ45%、30%、25%の割合とした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となった。
【0047】
比較例1:
A層の原料配合をポリエステルA、ポリエステルCをそれぞれ85%、15%の割合とした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となった。
【0048】
比較例2:
A層の原料配合をポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCをそれぞれ75%、10%、15%の割合とした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となった。
【0049】
比較例3:
A層の原料配合をポリエステルA、ポリエステルBをそれぞれ15%、85%の割合とした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となった。
【0050】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のフィルムは、例えば、偏光板製造用の離型フィルムの基材として好適に利用することができる。