(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の電極が配列された第1の回路部材と、前記第1の電極よりも厚みの小さい第2の電極が配列された第2の回路部材とを、導電粒子が接着剤層中に分散されてなる異方導電性フィルムを介して接続する接続構造体の製造方法であって、
前記導電粒子は、前記異方導電性フィルムの一面側に偏在していると共に、前記一面側から前記導電粒子の平均粒径の200%以内に存在しており、
前記一面側が前記第1の回路部材側を向くように前記異方導電性フィルムを前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との間に配置して熱圧着を行うことを特徴とする接続構造体の製造方法。
前記異方導電性フィルムは、前記導電粒子を含有する接着剤層からなる導電性接着剤層と、前記導電粒子を含有しない接着剤層からなる絶縁性接着剤層とを有していることを特徴とする請求項1記載の接続構造体の製造方法。
前記異方導電性フィルムは、前記導電性接着剤層の厚みが前記導電粒子の平均粒径の0.6倍以上1.0倍未満であり、かつ前記導電粒子の70%以上が隣接する他の導電粒子と離間した状態となっていることを特徴とする請求項2又は3記載の接続構造体の製造方法。
第1の電極が配列された第1の回路部材と、前記第1の電極よりも厚みの小さい第2の電極が配列された第2の回路部材とが、導電粒子を含有する異方導電性フィルムの硬化物によって接続された接続構造体であって、
前記異方導電性フィルムの硬化物において、前記第1の電極間の中央領域に位置する前記導電粒子の90%以上が、前記第1の回路部材の実装面から前記導電粒子の平均粒径の200%以下となる範囲及び前記第1の電極の厚みの半分に相当する範囲のいずれか大きい範囲に位置していることを特徴とする接続構造体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る接続構造体の製造方法及び接続構造体の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。同図に示すように、接続構造体1は、互いに対向する第1の回路部材2及び第2の回路部材3と、これらの回路部材2,3を接続する異方導電性フィルムの硬化物4とを備えて構成されている。
【0020】
第1の回路部材2は、例えばテープキャリアパッケージ(TCP)、プリント配線板、半導体シリコンチップ等である。第1の回路部材2は、本体部5の実装面5a側に複数のバンプ電極(第1の電極)6を有している。バンプ電極6は、
図2に示すように、例えば平面視で細長い長方形状をなしており、隣接する列間で互いに位置が異なるように千鳥状に配列されている。
【0021】
また、隣接するバンプ電極6,6間の間隔は、例えば5μm以上20μm未満となっており、バンプ電極6の厚みは、例えば3μm以上18μm未満となっている。バンプ電極6の形成材料には、例えばAu等が用いられ、異方導電性フィルムの硬化物4に含まれる導電粒子Pよりも変形し易くなっている。なお、実装面5aにおいて、バンプ電極6が形成されていない部分には、絶縁層が形成されていてもよい。なお、
図2では、バンプ電極6が2列に配列されているが、配列数は3列以上であってもよい。
【0022】
第2の回路部材3は、例えば液晶ディスプレイに用いられるITO、IZO、又は金属等で回路が形成されたガラス基板又はプラスチック基板、フレキシブルプリント基板(FPC)、セラミック配線板などである。第2の回路部材3は、
図1に示すように、本体部7の実装面7a側にバンプ電極6に対応する複数の回路電極(第2の電極)8を有している。回路電極8は、バンプ電極6と同様に例えば平面視で細長い長方形状をなしており、隣接する列間で互いに位置が異なるように千鳥状に配列されている。
【0023】
また、隣接する回路電極8,8間の間隔は、例えば5μm以上20μm未満となっており、回路電極8の厚みは、バンプ電極6に比べて十分に小さく、例えば100nm程度となっている。回路電極8の表面は、例えば金、銀、銅、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、インジウム錫酸化物(ITO)、及びインジウム亜鉛酸化物(IZO)から選ばれる1種或いは2種以上の材料で構成されている。なお、実装面7aにおいても、回路電極8が形成されていない部分に絶縁層が形成されていてもよい。
【0024】
異方導電性フィルムの硬化物4は、後述の異方導電性フィルム11(
図4参照)を用いて形成された層であり、導電性接着剤層13を硬化してなる第1の領域9と、絶縁性接着剤層14を硬化してなる第2の領域10とを有している。本実施形態では、第1の領域9が第1の回路部材2側に位置し、第2の領域10が第2の回路部材3側に位置している。なお、本実施形態では、説明の便宜上、導電粒子Pを含有する層を導電性接着剤層と称し、導電粒子Pを含有しない層を絶縁性接着剤層と称するが、両層を構成している接着剤成分自体は非導電性である。
【0025】
導電粒子Pは、
図3に示すように、バンプ電極6と回路電極8との間、及び隣接するバンプ電極6,6間に存在している。バンプ電極6と回路電極8との間では、導電粒子Pが圧着によって僅かに扁平に変形した状態でバンプ電極6と回路電極8との間に介在している。これにより、バンプ電極6と回路電極8との間の電気的な接続が実現されている。
【0026】
一方、隣接するバンプ電極6,6間では、バンプ電極6と回路電極8との電気的な接続に寄与しない導電粒子Pが第1の回路部材2側に偏在している。隣接するバンプ電極6,6間では、導電粒子Pが互いに離間した状態となっており、隣接するバンプ電極6,6間及び隣接する回路電極8,8間の電気的な絶縁が実現されている。圧着の際、異方導電性フィルム11の接着剤成分の流動によってバンプ電極6の近傍に位置する導電粒子Pが第2の回路部材3側に移動してしまうことがあるが、隣接するバンプ電極6,6間の中央領域に位置する導電粒子Pの90%以上は、第1の回路部材2の実装面5aから導電粒子Pの平均粒径の200%以下となる範囲、好ましくは150%以下となる範囲、より好ましくは130%以下となる範囲に位置している。
【0027】
なお、隣接するバンプ電極6,6間の中央領域とは、少なくとも導電粒子Pがバンプ電極6に接していない領域を指す。この中央領域は、隣接するバンプ電極6,6のそれぞれの側面から、導電粒子の平均粒径の130%以内の領域を除外した範囲で定義することができる。
[異方導電性フィルムの構成]
【0028】
図4は、
図1に示した接続構造体の製造に用いられる異方導電性フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。同図に示すように、異方導電性フィルム11は、剥離フィルム12と、導電粒子Pを含有しない接着剤層からなる絶縁性接着剤層14と、導電粒子Pを含有する接着剤層からなる導電性接着剤層13とがこの順で積層されて構成されている。導電粒子Pは、異方導電性フィルム11の一面側に偏在した状態で分散している。
【0029】
剥離フィルム12は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等によって形成されている。剥離フィルム12には、任意の充填剤を含有させてもよい。また、剥離フィルム12の表面には、離型処理やプラズマ処理等が施されていてもよい。
【0030】
導電性接着剤層13及び絶縁性接着剤層14を形成する接着剤層は、例えば硬化剤、モノマー、及びフィルム形成材を含有している。エポキシ樹脂モノマーを用いる場合は、硬化剤として、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化すると、可使時間が延長されるため、好適である。一方、アクリルモノマーを用いる場合は、硬化剤として、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものが挙げられる。
【0031】
エポキシモノマーを用いた場合の硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。硬化剤は、高反応性の点から、エポキシ樹脂組成物とのゲルタイムが所定の温度で10秒以内であることが好ましく、保存安定性の点から、40℃で10日間恒温槽に保管後にエポキシ樹脂組成物とのゲルタイムに変化がないスルホニウム塩であることが好ましい。
【0032】
アクリルモノマーを用いた場合の硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上かつ半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物がより好ましい。これらの硬化剤は、単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
【0033】
エポキシモノマー及びアクリルモノマーのいずれを用いた場合においても、接続時間を10秒以下とした場合、十分な反応率を得るために、硬化剤の配合量は、後述のモノマーと後述のフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.1質量部〜40質量部とすることが好ましく、1質量部〜35質量部とすることがより好ましい。硬化剤の配合量を0.1質量部以上とすることで、十分な反応率を得ることができ、良好な接着強度と低い接続抵抗とを実現し易くなる。一方、硬化剤の配合量を40質量部以下とすることで、良好な接着剤の流動性、接着剤の保存安定性、及び良好な接続抵抗を実現し易くなる。
【0034】
また、モノマーとしては、エポキシ樹脂モノマーを用いる場合は、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやビスフェノールF、ビスフェノールAD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やグリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などを用いることができる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
アクリルモノマーを用いる場合は、ラジカル重合性化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であることが好ましい。かかるラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート、マレイミド化合物、スチレン誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー又はオリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して使用してもよい。
【0036】
フィルム形成材は、上記の硬化剤及びモノマーを含む液状の組成物の取り扱いを容易とするものである。フィルム形成材としては、熱可塑性樹脂が好適に用いられ、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。更に、これらのポリマー中には、シロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらの樹脂は、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。上記の樹脂の中でも、接着強度、相溶性、耐熱性、及び機械強度の観点から、フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0037】
熱可塑性樹脂の分子量が大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また、異方導電性フィルムとしての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。熱可塑性樹脂の分子量は、重量平均分子量で5000〜150000であることが好ましく、10000〜80000であることが特に好ましい。重量平均分子量を5000以上とすることで良好なフィルム形成性が得られやすく、150000以下とすることで他の成分との良好な相溶性が得られやすい。
【0038】
なお、本発明において、重量平均分子量とは、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC−8020
検出器:東ソー株式会社製 RI−8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm2)
流量:1.00mL/min
【0039】
また、フィルム形成材の含有量は、モノマー、及びフィルム形成材の総量を基準として5重量%〜80重量%であることが好ましく、15重量%〜70重量%であることがより好ましい。5重量%以上とすることで良好なフィルム形成性が得られやすく、また、80重量%以下とすることで硬化性組成物が良好な流動性を示す傾向にある。
【0040】
また、導電性接着剤層13及び絶縁性接着剤層14を形成する接着剤層は、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。充填剤を含有する場合、接続信頼性の向上が更に期待できる。
【0041】
導電粒子Pとしては、例えば金、銀、ニッケル、銅、ハンダ等の金属粒子、或いはカーボン粒子などが挙げられる。導電粒子Pの保存安定性を得るため、導電粒子Pの表層は、銅などの遷移金属類ではなく、金、銀のような白金属の貴金属類とすることが好ましく、これらの中でも金がより好ましい。また、ニッケルの表面をAu等の貴金属類で被覆してもよい。更に、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を上記金属等の導電物質で被覆したものを用いてもよく、この場合にもニッケル層を設けて多層構造とすることも可能である。
【0042】
また、導電粒子Pとして、非導電性のプラスチック等を導電物質で被覆したものや熱溶融金属粒子を使用した場合、加熱加圧によって導電粒子Pが容易に変形するため、接続時の電極との接触面積が増加し、回路部材側の厚みばらつきを吸収して接続信頼性を向上できる。また、導電粒子Pの表面に突起を設けることにより接続抵抗を低下させることもできる。
【0043】
導電粒子Pの平均粒径は、2.5μm以上6.0μm以下であることが好ましい。導電粒子Pの平均粒径を2.5μm以上とすることで、剥離フィルム12への塗工精度が維持され、導電粒子Pを導電性接着剤層13に良好に分散させ易くなる。導電粒子Pの平均粒径を6.0μm以下とすることで、接続構造体1の隣接する回路電極8,8間での絶縁性を維持し易くなる。導電粒子Pの良好な分散性を得るためには、導電粒子Pの平均粒径は、2.7μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることが更に好ましい。一方、接続構造体1の隣接する回路電極8,8間での絶縁性の確保の観点から、導電粒子Pの平均粒径は、5.5μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。
【0044】
導電粒子Pの平均粒径は、任意の導電粒子300個について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、それらの平均値を取ることにより得られる。なお、導電粒子Pが突起を有する場合や、球形ではない場合、導電粒子Pの粒径は、SEMの画像における導電粒子に外接する円の直径とする。
【0045】
導電粒子Pの配合量は、導電粒子P以外の成分100体積部に対して1体積部〜100体積部とすることが好ましい。導電粒子Pが過剰に存在することによる隣接する回路電極8,8の短絡を防止する観点から、導電粒子Pの配合量は、10体積部〜50体積部とすることがより好ましい。更に、導電粒子の平均粒径が2.5μm以上6.0μm以下の範囲において、導電粒子の粒子密度が5000個/mm
2以上50000個/mm
2以下であることが好ましい。この場合、導電粒子Pの分散性と隣接する回路電極8,8間での絶縁性とをより好適に両立できる。
【0046】
導電粒子Pの平均粒径と導電性接着剤層13の厚みとの関係について、導電性接着剤層13の厚みは、導電粒子Pの平均粒径の0.6倍以上1.0倍未満であることが好ましい。導電性接着剤層13の厚みが導電粒子Pの平均粒径に対して0.6倍未満となる場合は,導電粒子Pの粒子密度が低下し、バンプ電極6と回路電極8との間の接続不良が生じるおそれがある。また、導電性接着剤層13の厚みが導電粒子Pの平均粒径に対して1.0倍以上となる場合は、隣接する導電粒子P,P同士が凝集し、隣接する回路電極8,8間での短絡が生じるおそれがある。より良好な分散性を得るためには、導電性接着剤層13の厚みは、導電粒子Pの平均粒径に対して0.7倍以上0.9倍以下にすることが好ましい。また、導電性接着剤層13の厚みは、1.5μm以上10μm未満であることが好ましい。また、導電粒子Pの70%以上が隣接する他の導電粒子Pと離間した状態となっていることが好ましい。
【0047】
このような関係を満たす結果、導電粒子Pの一部は、絶縁性接着剤層14側に突出した状態となっており、隣り合う導電粒子P,Pの離間部分には、絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13との境界Sが位置している。また、導電粒子Pは、導電性接着剤層13における絶縁性接着剤層14の反対面(すなわち剥離フィルム12側の面)には露出しておらず、反対面は平坦面となっていることが好ましい。導電粒子Pと導電性接着剤層13の表面との間に存在する導電性接着剤層13の厚みは、0μmよりも大きく1μm以下となっていることが好ましい。
【0048】
絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13との境界Sは、異方導電性フィルム11の断面観察により確認することが可能である。絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13への配合物の組成の違いから、集束イオンビーム(FIB)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などの加工・観察装置における観察像の違いにより、絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13の境界Sを判断することも可能である。
【0049】
絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13とが互いに相溶し難い場合は、境界Sは界面として確認することが可能である。絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13の組成が類似しており、後述する積層工程において界面が消失する場合は、絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13が混合された境界層として観察されることがある。
【0050】
一方、絶縁性接着剤層14の厚みは、適宜設定可能である。導電性接着剤層13及び絶縁性接着剤層14の厚みの合計は、例えば5μm〜30μmとなっている。また、通常、導電性接着剤層13及び絶縁性接着剤層14の厚みの合計と、接続構造体1における第1の回路部材2の実装面5aから第2の回路部材3の実装面7aまでの距離との差は、0μm〜10μmであることが好ましい。回路部材2,3間を異方導電性フィルムの硬化物4で充填する観点からは、上記の差を0.5μm〜8.0μmとすることが好ましく、1.0μm〜5.0μmとすることがより好ましい。
【0051】
差を0μmより大きくすることで、第1の回路部材2と第2の回路部材3との間を異方導電性フィルムの硬化物4で充填しやすく、剥離や耐湿試験後の接続信頼性の低下を抑制しやすい。一方、差を10μm以下にすることで、第1の回路部材2及び第2の回路部材3の圧着時に、樹脂の排除性を維持し、バンプ電極6と回路電極8との間の電気的接続を得やすい。
【0052】
異方導電性フィルム11を構成する絶縁性接着剤層14と導電性接着剤層13の厚み、異方導電性フィルム11中の導電粒子Pが存在している位置については、例えば収束イオンビーム(FIB)を用いて異方導電性フィルム11の断面を切削し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察及び測定することが可能である。具体的には、異方導電性フィルム11の剥離フィルム12側を導電性のカーボンテープを用いて、試料加工・観察用の冶具に固定する。その後、導電性接着剤層13側から白金スパッタ処理を実施し、導電性接着剤層13上に20nmの白金膜を形成する。次に、収束イオンビーム(FIB)を用いて異方導電性フィルム11の導電性接着剤層13側から加工を実施し、加工断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。
[接続構造体の製造方法]
【0053】
図5は、
図1に示した接続構造体1の製造工程を示す模式断面図である。接続構造体1の形成にあたっては、例えば、異方導電性フィルム11から剥離フィルム12を剥離し、絶縁性接着剤層14側が実装面7aと対向するようにして異方導電性フィルム11を第2の回路部材3上にラミネートする。次に、
図6に示すように、バンプ電極6と回路電極8とが対向するように、異方導電性フィルム11がラミネートされた第2の回路部材3上に第1の回路部材2を配置する。そして、異方導電性フィルム11を加熱しながら第1の回路部材2と第2の回路部材3とを厚み方向に加圧する。
【0054】
これにより、異方導電性フィルム11の接着剤成分が流動し、バンプ電極6と回路電極8との距離が縮まって導電粒子Pが噛合した状態で、導電性接着剤層13及び絶縁性接着剤層14が硬化する。導電性接着剤層13及び絶縁性接着剤層14の硬化により、バンプ電極6と回路電極8とが電気的に接続され、かつ隣接するバンプ電極6,6同士及び隣接する回路電極8,8同士が電気的に絶縁された状態で異方導電性フィルムの硬化物4が形成され、
図1に示した接続構造体1が得られる。得られた接続構造体1では、異方導電性フィルムの硬化物4によってバンプ電極6と回路電極8との間の距離の経時的変化が十分に防止されると共に、電気的特性の長期信頼性も確保できる。
【0055】
なお、異方導電性フィルム11の加熱温度は、硬化剤において重合活性種が発生し、重合モノマーの重合が開始される温度である。この加熱温度は、例えば80℃〜200℃であり、好ましくは100℃〜180℃である。また、加熱時間は、例えば0.1秒〜30秒、好ましくは1秒〜20秒である。加熱温度を80℃以上とすることで硬化速度を得易くなり、200℃以下とすることで望まない副反応の抑制が容易となる。また、加熱時間が0.1秒以上とすることで硬化反応を十分に進行させ易くなり、30秒以下とすることで硬化物の生産性を維持しつつ、更に望まない副反応の抑制も容易となる。
【0056】
接続構造体1を構成する第1の回路部材2、第2の回路部材3、並びに異方導電性フィルムの硬化物4中の導電粒子Pの存在している位置については、例えば接続構造体1をエポキシ樹脂とジエチレントリアミンに代表されるアミン系硬化剤を用いて注形した後、接続構造体1の実装面7aに対して垂直に研磨することで接続構造の断面を作製し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することで確認できる。
[異方導電性フィルムの製造方法]
【0057】
導電性接着剤層13は、例えば、フィルム塗布工程と、これに続く磁場印加工程とによって作製することが可能である。これらの工程では、導電粒子Pが分散された接着剤ペーストを離型フィルムに塗布し、ペーストが乾燥する前に離型フィルムの厚さ方向に磁場を印加する。磁場の印加により隣接する導電粒子Pを分散することで、導電性接着剤層13が得られる。磁場の印加は、導電粒子Pの分散性を高めるために行っているが、必ずしも実施しなくてもよい。
【0058】
導電性接着剤層13の形成の後、
図7に示すように、別途作製した絶縁性接着剤層14に導電性接着剤層13をラミネートする。これにより、
図4に示した異方導電性フィルム11が得られる。なお、導電性接着剤層13のラミネートには、例えばホットロールラミネータを用いることができる。また、ラミネートに限られず、導電性接着剤層13の材料となる接着剤ペーストを絶縁性接着剤層14上に塗布・乾燥してもよい。このようにして異方導電性フィルム11の一面側に導電粒子Pを偏在させることができる。
【0059】
また、導電粒子Pを含有する固定用樹脂を剥離フィルム上に塗布した後、剥離フィルムを面内方向に伸張させて導電粒子Pを離間させるようにしてもよい。この方法では、固定用樹脂に導電粒子Pを単層に充填し、固定用樹脂の凝集を起こさせながら延伸を行い、凝集力と延伸力のバランスを取ることによって導電粒子Pを固定用樹脂で連結できる。固定用樹脂として架橋ポリマーを用いる場合は、未架橋の状態で延伸し、その後に熱や光を用いて架橋することが好ましい。固定用樹脂で連結された導電粒子Pを絶縁性接着剤中に埋め込む方法としては、剥離可能な基材上に形成された絶縁性接着剤上に固定用樹脂で連結された導電粒子Pを重ね、熱ロールやラミネーターを用いて絶縁性接着剤中に埋め込む方法が挙げられる。当該方法は、例えば国際公開公報WO2005/054388に記載される。このようにしても異方導電性フィルム11の一面側に導電粒子Pを偏在させることができる。
【0060】
導電粒子Pの分散状態の形成は、上記方法に限られるものではない。例えばインクジェット方式により、導電粒子Pを含有するインクを吐出ノズルから絶縁性接着剤上に吐出し、絶縁性接着剤中に導電粒子Pを均一に分散させることで導電性接着剤層13を作製することも可能である。このようにしても異方導電性フィルム11の一面側に導電粒子Pを偏在させることができる。
[作用効果]
【0061】
この接続構造体の製造方法では、導電粒子Pが一面側に偏在した異方導電性フィルム11を用い、導電粒子Pが偏在した面が第1の回路部材2側を向くように配置して第1の回路部材2と第2の回路部材3とを熱圧着する。バンプ電極6と回路電極8とを異方導電性フィルム11を用いて接続する際、例えば
図8に示すように、バンプ電極6が回路電極8に対して実装面5a,7aの面内方向に位置ずれしてしまう場合がある。バンプ電極6と回路電極8との位置ずれが生じた場合、
図8に示すように、回路電極8と、本来接続されるべきバンプ電極6に隣接する別のバンプ電極6との距離Aがバンプ電極6のピッチよりも小さくなる。このため、導電粒子Pが第2の回路部材3側に偏在していると、本来電気的な接続に寄与しない導電粒子Pによって、回路電極8と、本来接続されるべきバンプ電極6に隣接する別のバンプ電極6とが電気的に接続され、回路がショートしてしまうことが考えられる。
【0062】
これに対し、この接続構造体の製造方法で得られた接続構造体1では、例えば
図9に示すように、バンプ電極6と回路電極8との電気的な接続に寄与しない導電粒子Pは、回路電極8よりも厚みのある隣接するバンプ電極6,6間において第1の回路部材2側に偏在した状態となっている。そして、得られる接続構造体1では、異方導電性フィルムの硬化物4において、隣接するバンプ電極6,6間の中央領域に位置する導電粒子Pの80%以上がバンプ電極6の厚みの半分の位置Lよりも第1の回路部材2側に位置している。したがって、バンプ電極6が回路電極8に対して位置ずれしたとしても、回路電極8と隣接する別のバンプ電極6とが導電粒子Pによって電気的に接続されることを防止でき、回路のショートを抑止できる。
[実施例]
【0063】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
(フェノキシ樹脂aの合成)
【0064】
4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジフェノール45g(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)、及び3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50g(三菱化学株式会社製:YX−4000H)を、ジムロート冷却管、塩化カルシウム管、及び攪拌モーターに接続されたテフロン攪拌棒を装着した3000mLの3つ口フラスコ中でN−メチルピロリドン1000mLに溶解して反応液とした。これに炭酸カリウム21gを加え、マントルヒーターで110℃に加熱しながら攪拌した。3時間攪拌後、1000mLのメタノールが入ったビーカーに反応液を滴下し、生成した沈殿物を吸引ろ過することによってろ取した。ろ取した沈殿物を更に300mLのメタノールで3回洗浄して、フェノキシ樹脂aを75g得た。
【0065】
その後、フェノキシ樹脂aの分子量を東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフGP8020を用いて測定した(測定条件は前述)。その結果、ポリスチレン換算でMn=15769、Mw=38045、Mw/Mn=2.413であった。
(異方導電性フィルムAの作製)
【0066】
導電性接着剤層用の接着剤ペーストの形成にあたって、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:jER828)を固形分で50質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを固形分で5質量部、フィルム形成材としてフェノキシ樹脂aを固形分で50質量部、をそれぞれ配合した。また、導電粒子として、ポリスチレンを核とする粒子の表面に厚み0.2μmのニッケル層を設け、平均粒径3.3μm、比重2.5の導電粒子を作製し、この導電粒子を50質量部で上記配合物に配合した。そして、この接着剤ペーストを厚み50μmのPETフィルムにコーターを用いて塗布し、乾燥させることにより、厚みが8.0μmの導電性接着剤層を得た。
【0067】
次に、絶縁性接着剤層用の接着剤ペーストの形成にあたって、エポキシ化合物としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:jER807)を固形分で45質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを固形分で5質量部、フィルム形成材としてビスフェノールA・ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製:YP−70)を固形分で55質量部、をそれぞれ配合した。そして、この接着剤ペーストを厚み50μmのPETフィルムにコーターを用いて塗布し、乾燥させることにより、厚みが12μmの絶縁性接着剤層を得た。その後、導電性接着剤層と絶縁性接着剤層とを40℃に加熱してホットロールラミネータで貼り合わせ、異方導電性フィルムAを得た。
(異方導電性フィルムBの作製)
【0068】
導電性接着剤層用の接着剤ペーストの形成にあたって、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:jER828)を固形分で50質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを固形分で5質量部、フィルム形成材としてフェノキシ樹脂aを固形分で50質量部、をそれぞれ配合した。また、導電粒子として、ポリスチレンを核とする粒子の表面に厚み0.2μmのニッケル層を設け、平均粒径3.3μm、比重2.5の導電粒子を作製し、この導電粒子を80質量部で上記配合物に配合した。そして、この接着剤ペーストを厚み50μmのPETフィルムにコーターを用いて塗布し、乾燥させることにより、厚みが2.6μmの導電性接着剤層を得た。
【0069】
次に、絶縁性接着剤層用の接着剤ペーストの形成にあたって、エポキシ化合物としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:jER807)を固形分で45質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを固形分で5質量部、フィルム形成材としてビスフェノールA・ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製:YP−70)を固形分で55質量部、をそれぞれ配合した。そして、この接着剤ペーストを厚み50μmのPETフィルムにコーターを用いて塗布し、乾燥させることにより、厚みが17μmの絶縁性接着剤層を得た。その後、導電性接着剤層と絶縁性接着剤層とを40℃に加熱してホットロールラミネータで貼り合わせ、異方導電性フィルムBを得た。
(異方導電性フィルムCの作製)
【0070】
導電性接着剤層用の接着剤ペーストの形成にあたって、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:jER828)を固形分で50質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを固形分で5質量部、フィルム形成材としてフェノキシ樹脂aを固形分で50質量部、をそれぞれ配合した。また、導電粒子として、ポリスチレンを核とする粒子の表面に厚み0.2μmのニッケル層を設け、平均粒径3.3μm、比重2.5の導電粒子を作製し、この導電粒子を80質量部で上記配合物に配合した。そして、この接着剤ペーストを厚み50μmのPETフィルムにコーターを用いて塗布し、乾燥と共に磁場印加を行うことにより、厚みが2.6μmの導電性接着剤層を得た。
【0071】
次に、絶縁性接着剤層用の接着剤ペーストの形成にあたって、エポキシ化合物としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:jER807)を固形分で45質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを固形分で5質量部、フィルム形成材としてビスフェノールA・ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製:YP−70)を固形分で55質量部、をそれぞれ配合した。そして、この接着剤ペーストを厚み50μmのPETフィルムにコーターを用いて塗布し、乾燥させることにより、厚みが17μmの絶縁性接着剤層を得た。その後、導電性接着剤層と絶縁性接着剤層とを40℃に加熱してホットロールラミネータで貼り合わせ、異方導電性フィルムCを得た。
(異方導電性フィルム中の導電粒子の密度算出)
【0072】
異方導電性フィルムA〜Cについて、25000μm
2当たりの導電粒子数を20か所で実測し、その平均値を1mm
2に換算した。その結果、異方導電性フィルムA中の導電粒子の密度は、50000個/mm
2であった。一方、異方導電性フィルムB及びC中の導電粒子の密度は、26000個/mm
2であった。
(導電粒子の単分散率の評価)
【0073】
異方導電性フィルムA〜Cについて、導電粒子の単分散率(導電粒子が隣接する他の導電粒子と離間した状態(単分散状態)で存在している比率)を評価した。単分散率は、単分散率(%)=(2500μm
2中の単分散状態の導電粒子数/2500μm
2中の導電粒子数)×100、を用いて求められる。導電粒子の実測には、金属顕微鏡を用いた。その結果、異方導電性フィルムAでは、単分散状態で存在する導電粒子と凝集している導電粒子との判別が困難であり、単分散率を評価できなかった。また、異方導電性フィルムBでは、単分散率が36%にとどまったのに対し、異方導電性フィルムCでは、単分散率が87%であった。
(実施例1)
【0074】
第1の回路部材として、バンプ電極を配列したICチップ(外形2mm×20mm、厚み0.3mm、バンプ電極の大きさ100μm×28μm、バンプ電極間スペース10μm、バンプ電極厚み15μm)を準備した。また、第2の回路部材として、ガラス基板(コーニング社製:#1737、38mm×28mm、厚み0.3mm)の表面にITOの配線パターン(パターン幅31μm、電極間スペース7μm)を形成したものを準備した。
【0075】
ICチップとガラス基板との接続には、セラミックヒータからなるステージ(150mm×150mm)及びツール(3mm×20mm)から構成される熱圧着装置を用いた。そして、異方導電性フィルムB(2.5mm×25mm)から剥離フィルムを剥離し、80℃・0.98MPa(10kgf/cm
2)の条件で2秒間加熱及び加圧して絶縁性接着剤層側の面をガラス基板に貼り付けた。
【0076】
次に、ICチップのバンプ電極とガラス基板の回路電極との位置合わせを行った後、異方導電性フィルムBの実測最高到達温度170℃、及びバンプ電極での面積換算圧力70MPaの条件で5秒間加熱及び加圧して導電性接着剤層側の面をICチップに貼り付け、実施例1に係る接続構造体を得た(
図11参照)。接続構造体のサンプル数は合計で10種類とし、各サンプルにおいて、ガラス基板側の回路電極と、本来接続されるべきICチップのバンプ電極に隣接するバンプ電極との距離(
図8及び
図9に示した距離Aに相当)を3.0μm〜8.5μmの範囲で0.5μm刻みで変化させた。
(実施例2)
【0077】
異方導電性フィルムCを使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る接続構造体を得た。
(比較例1)
【0078】
第1の回路部材として、バンプ電極を配列したICチップ(外形2mm×20mm、厚み0.3mm、バンプ電極の大きさ100μm×28μm、バンプ電極間スペース10μm、バンプ電極厚み15μm)を準備した。また、第2の回路部材として、ガラス基板(コーニング社製:#1737、38mm×28mm、厚み0.3mm)の表面にITOの配線パターン(パターン幅31μm、電極間スペース7μm)を形成したものを準備した。
【0079】
ICチップとガラス基板との接続には、セラミックヒータからなるステージ(150mm×150mm)及びツール(3mm×20mm)から構成される熱圧着装置を用いた。そして、異方導電性フィルムB(2.5mm×25mm)から剥離フィルムを剥離し、80℃・0.98MPa(10kgf/cm
2)の条件で2秒間加熱及び加圧して導電性接着剤層側の面をガラス基板に貼り付けた。
【0080】
次に、ICチップのバンプ電極とガラス基板の回路電極との位置合わせを行った後、異方導電性フィルムBの実測最高到達温度170℃、及びバンプ電極での面積換算圧力70MPaの条件で5秒間加熱及び加圧して絶縁性接着剤層側の面をICチップに貼り付け、比較例1に係る接続構造体を得た(
図12参照)。接続構造体のサンプル数は、実施例と同様に合計で10種類とし、各サンプルにおいて、ガラス基板側の回路電極と隣接するICチップのバンプ電極との距離を3.0μm〜8.5μmの範囲で0.5μm刻みで変化させた。
(比較例2)
【0081】
異方導電性フィルムCを使用したこと以外は比較例1と同様にして、比較例2に係る接続構造体を得た。
(比較例3)
【0082】
異方導電性フィルムAを使用したこと以外は比較例1と同様にして、比較例3に係る接続構造体を得た。
(比較例4)
【0083】
異方導電性フィルムAを使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4に係る接続構造体を得た(
図13参照)。
(接続構造体の抵抗特性の評価)
【0084】
実施例1,2及び比較例1〜4の接続構造体において、バンプ電極と回路電極との間の接続抵抗、及び回路電極と隣接するバンプ電極との間の絶縁抵抗をそれぞれ評価した。接続抵抗の評価は、マルチメータ(ETAC社製:MLR21)による四端子測定法を用いて実施した。また、絶縁抵抗の評価では、実施例1,2及び比較例1〜4の接続構造体に50Vの電圧を30秒間印加し、計100か所のバンプ電極−回路電極間の絶縁抵抗を一括で測定した。絶縁抵抗については、ガラス基板側の回路電極と隣接するICチップのバンプ電極との距離の刻み幅ごとに3つのサンプルを測定し、3つのサンプル全ての絶縁抵抗が1.0×10
9Ωより大きかった場合をA判定、1つのサンプルでも絶縁抵抗が1.0×10
9Ω未満となった場合をB判定、3つのサンプル全ての絶縁抵抗が1.0×10
9Ω未満となった場合をC判定とした。
(接続構造体の電極間に存在する導電粒子数の評価)
【0085】
実施例1,2及び比較例1〜4の接続構造体において、接続構造体の断面を金属顕微鏡によって観察し、ICチップの電極間に存在する導電粒子から任意の50個を選び、ICチップの表面から導電粒子の平均粒径の200%(6.6μm)以下となる範囲に存在する導電粒子の割合を算出した。
【0086】
図10は、評価試験結果を示す図である。同図に示すように、バンプ電極と回路電極との間の接続抵抗に関しては、実施例1,2及び比較例1〜4のいずれについても0.5Ω以下の良好な値が得られた。回路電極と隣接するバンプ電極との間の絶縁抵抗に関しては、実施例1では、位置ずれによって回路電極と隣接するバンプ電極との距離が4.0μmまで隣接した場合でも良好な絶縁抵抗が維持され、実施例2では、位置ずれによって回路電極と隣接するバンプ電極との距離が3.5μmまで近接した場合でも良好な絶縁抵抗が維持された。また、実施例1,2では、ICチップの電極間の中央領域に存在する導電粒子のうちの96%がICチップの表面から導電粒子の平均粒径の200%以内となる範囲に存在していた。
【0087】
これに対し、比較例1では、位置ずれによって回路電極と隣接するバンプ電極との距離が5.0μmまで近接した場合に絶縁抵抗が悪化し、比較例2では、位置ずれによって回路電極と隣接するバンプ電極との距離が6.0μmまで近接した場合に絶縁抵抗が悪化した。一方、比較例3,4では、導電粒子が偏在している位置がガラス基板側及びICチップ側のいずれの場合であっても、回路電極と隣接するバンプ電極との距離が4.5μmまで近接した場合に絶縁抵抗が悪化した。また、比較例1〜3では、ICチップの電極間に存在する導電粒子は、ICチップの表面から導電粒子の平均粒径の200%以内となる範囲に存在しておらず、比較例4では、ICチップの電極間に存在する導電粒子のうちの64%がICチップの表面から導電粒子の平均粒径の200%以内となる範囲に存在していた。以上の結果から、本発明のように導電粒子を第1の回路部材側に偏在させ、導電粒子を第1の回路部材の実装面から導電粒子の平均粒径の200%以下となる範囲に位置させることが、電極の位置ずれに対する回路のショート防止に有効であることが確認された。