(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記(A)〜(C)成分
(A)下記一般式(3)、(4)、(5)及び(6)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランから選ばれる少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物、
A−Rf−QZ(W)
α’ (3)
Rf−(QZ(W)
α)
2 (4)
A−Rf−Q−(Y)
β’B (5)
Rf−(Q−(Y)
βB)
2 (6)
〔式中、Rfは−(CF
2)
d−O−(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q(CF
2CF
2CF
2O)
r(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
s(CF(CF
3)CF
2O)
t−(CF
2)
d−であり、dは独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+t=10〜200の整数であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF
3基、−CF
2H基もしくは−CFH
2基である1価のフッ素含有基であり、Qは単結合、又はフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、Zは単結合、ジオルガノシリレン基、−JC=〔Jはアルキル基、ヒドロキシル基もしくはK
3SiO−(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される3価の基、−LSi=(Lはアルキル基)で示される3価の基、−C≡で示される4価の基、−Si≡で示される4価の基、及び2〜8価のシロキサン残基から選ばれる基であり、Wは下記一般式(7a)〜(7d)
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3であり、fは1〜10の整数であり、Dは単結合又は炭素数1〜20のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、mは2〜6の整数であり、Meはメチル基である。)
から選ばれる加水分解性基を有する基であり、
但し、一般式(4)において、Zが単結合の場合には、Wは式(7b),(7c)及び(7d)から選ばれる加水分解性基を有する基である。αは1〜7の整数であり、α’はWが式(7a)、(7c)、(7d)の場合2〜7の整数、Wが式(7b)の場合1〜7の整数である。Yは下記式(9)又は(10)
【化5】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3であり、Dは単結合又は炭素数1〜20のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、D’は炭素数1〜10のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、R
1は炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、eは1又は2である。)
で示される加水分解性基を有する2価の基であり、βは1〜10の整数であり、β’は2〜10の整数であり、Bは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲン原子である。〕
(B)前記(A)成分を均一に溶解することができる溶剤、
(C)下記一般式
R
2(4-k)−Si−X
k
(式中、R
2は水素原子又は炭素数1〜6の非置換もしくはハロゲン原子置換1価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、kは2〜4の整数である。)
で表される分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物
を含有するコーティング剤において、(A)成分の含有量がコーティング剤全体に対して0.01〜50質量%であり、かつ(C)成分の含有量がコーティング剤全体に対して0.01〜5質量%であることを特徴とする含フッ素コーティング剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、使用前の溶液状態での保存安定性が向上すると共に、基材上に均一な塗工膜を安定して形成することができる含フッ素コーティング剤及び該コーティング剤で表面処理された物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)前記(A)成分を均一に溶解することができる溶剤と、(C)分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物とを含有するコーティング剤において、(A)成分の含有量をコーティング剤全体に対して0.01〜50質量%とし、かつ(C)成分の含有量をコーティング剤全体に対して0.01〜5質量%とすることにより、使用前の溶液状態での保存安定性が向上すると共に、基材上に均一な塗工膜を安定して形成することができる含フッ素コーティング剤となり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記の含フッ素コーティング剤及び該コーティング剤で処理された物品を提供する。
〔1〕
下記(A)〜(C)成分
(A)下記一般式(3)、(4)、(5)及び(6)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランから選ばれる少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物、
A−Rf−QZ(W)
α’ (3)
Rf−(QZ(W)
α)
2 (4)
A−Rf−Q−(Y)
β’B (5)
Rf−(Q−(Y)
βB)
2 (6)
〔式中、Rfは−(CF
2)
d−O−(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q(CF
2CF
2CF
2O)
r(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
s(CF(CF
3)CF
2O)
t−(CF
2)
d−であり、dは独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+t=10〜200の整数であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF
3基、−CF
2H基もしくは−CFH
2基である1価のフッ素含有基であり、Qは単結合、又はフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、Zは単結合、ジオルガノシリレン基、−JC=〔Jはアルキル基、ヒドロキシル基もしくはK
3SiO−(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される3価の基、−LSi=(Lはアルキル基)で示される3価の基、−C≡で示される4価の基、−Si≡で示される4価の基、及び2〜8価のシロキサン残基から選ばれる基であり、Wは下記一般式(7a)〜(7d)
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3であり、fは1〜10の整数であり、Dは単結合又は炭素数1〜20のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、mは2〜6の整数であり、Meはメチル基である。)
から選ばれる加水分解性基を有する基であり、
但し、一般式(4)において、Zが単結合の場合には、Wは式(7b),(7c)及び(7d)から選ばれる加水分解性基を有する基である。αは1〜7の整数であり、α’はWが式(7a)、(7c)、(7d)の場合2〜7の整数、Wが式(7b)の場合1〜7の整数である。Yは下記式(9)又は(10)
【化5】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3であり、Dは単結合又は炭素数1〜20のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、D’は炭素数1〜10のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、R
1は炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、eは1又は2である。)
で示される加水分解性基を有する2価の基であり、βは1〜10の整数であり、β’は2〜10の整数であり、Bは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲン原子である。〕
(B)前記(A)成分を均一に溶解することができる溶剤、
(C)下記一般式
R
2(4-k)−Si−X
k
(式中、R
2は水素原子又は炭素数1〜6の非置換もしくはハロゲン原子置換1価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、kは2〜4の整数である。)
で表される分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物
を含有するコーティング剤において、(A)成分の含有量がコーティング剤全体に対して0.01〜50質量%であり、かつ(C)成分の含有量がコーティング剤全体に対して0.01〜5質量%であることを特徴とする含フッ素コーティング剤。
〔2〕
Xが、メトキシ基又はエトキシ基であることを特徴とする〔1〕記載の含フッ素コーティング剤。
〔3〕
Qが単結合又は下記式で示される2価の基から選ばれるものである〔1〕又は〔2〕記載の含フッ素コーティング剤。
【化6】
【化7】
【化8】
(式中、bは2〜4の整数であり、cは1〜4の整数であり、jは1〜50の整数であり、Meはメチル基である。)
〔4〕
Zが単結合又は下記式で示される基から選ばれるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤。
【化9】
【化10】
【化11】
(式中、hは2〜4の整数であり、Meはメチル基である。)
〔5〕
(C)成分の一般式:R2(4-k)−Si−Xkにおいて、R2が非置換の1価炭化水素基である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤。
〔
6〕
更に、下記一般式(11)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(D)を含有することを特徴とする〔1〕〜〔
5〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤。
【化12】
(式中、Rfは−(CF
2)
d−O−(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q(CF
2CF
2CF
2O)
r(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
s(CF(CF
3)CF
2O)
t−(CF
2)
d−であり、dは独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+t=10〜200の整数であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF
3基、−CF
2H基もしくは−CFH
2基である1価のフッ素含有基である。)
〔
7〕
(B)成分の溶剤が、含フッ素溶剤である〔1〕〜〔
6〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤。
〔
8〕
〔1〕〜〔
7〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤で処理された物品。
〔
9〕
〔1〕〜〔
7〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤で処理されたタッチパネル。
〔
10〕
〔1〕〜〔
7〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤で処理された反射防止処理物品。
〔
11〕
〔1〕〜〔
7〕のいずれかに記載の含フッ素コーティング剤で処理されたガラス、強化ガラス、サファイヤガラス、石英ガラス又はSiO
2処理基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含フッ素コーティング剤は、フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含有する溶液中に、分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物を添加配合すると、溶液中に水分が存在した場合、低分子量のシラン化合物が優先的に水分と反応する。これによって、主成分ポリマー末端の加水分解を抑制することができるため、保存安定性が向上すると共に、塗工時のトラブルを防止し、基材上に均一な塗工膜を安定して形成することができる。ゆえに、各種物品の透明性や質感を損なうことなく、優れた防汚性能を付与することができ、薬品等の侵入から基材を守り、長期に防汚性能を保つことができる。また、該塗工膜は耐摩耗性に優れるものである。本発明の含フッ素コーティング剤は、特にスプレー塗工で使用される希薄溶液での保存安定性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の含フッ素コーティング剤は、(A)フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)前記(A)成分を均一に溶解することができる溶剤と、(C)分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物とを含有するコーティング剤において、(A)成分の含有量がコーティング剤全体に対して0.01〜50質量%であり、かつ(C)成分の含有量がコーティング剤全体に対して0.01〜5質量%であることを特徴とするものである。
【0014】
(A)成分のフルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シランとしては、(A)成分のフルオロポリエーテル基が、下記一般式(1)
−C
gF
2gO− (1)
(式中、gは単位毎に独立に1〜6の整数である。)
で表される繰り返し単位を10〜200個、好ましくは20〜100個含み、かつ少なくとも1つの末端、好ましくは1つの末端に下記一般式(2)
【化14】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3である。)
で示される加水分解性シリル基を少なくとも1つ有するものが好適に用いられる。
更に、(A)成分は、上記式(2)で示される加水分解性シリル基を少なくとも1個、好ましくは1〜12個有するものであり、更にXで示される加水分解性基を複数、好ましくは2〜36個、より好ましくは2〜18個有するものであることが望ましい。
【0015】
フルオロポリエーテル基である上記一般式(1)で示される繰り返し単位としては、例えば、下記の単位等が挙げられる。なお、フルオロポリエーテル基は、これらの繰り返し単位の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよく、それぞれの繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
−CF
2O−
−CF
2CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2O−
−CF(CF
3)CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O−
−C(CF
3)
2O−
【0016】
上記式(2)において、Rは炭素数1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、又はフェニル基である。
Xは加水分解性基であり、加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリクロロエトキシ基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基等の炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基等の炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0017】
(A)成分のフルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シランとしては、下記一般式(3)、(4)、(5)及び(6)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランから選ばれる少なくとも1種が更に好適である。
A−Rf−QZ(W)
α (3)
Rf−(QZ(W)
α)
2 (4)
A−Rf−Q−(Y)
βB (5)
Rf−(Q−(Y)
βB)
2 (6)
〔式中、Rfは−(CF
2)
d−O−(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q(CF
2CF
2CF
2O)
r(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
s(CF(CF
3)CF
2O)
t−(CF
2)
d−であり、dは独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+t=10〜200の整数であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF
3基、−CF
2H基もしくは−CFH
2基である1価のフッ素含有基であり、Qは単結合、又はフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、Zは単結合、ジオルガノシリレン基、−JC=〔Jはアルキル基、ヒドロキシル基もしくはK
3SiO−(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される3価の基、−LSi=(Lはアルキル基)で示される3価の基、−C≡で示される4価の基、−Si≡で示される4価の基、及び2〜8価のシロキサン残基から選ばれる基であり、Wは下記一般式(7a)〜(7d)
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
(式中、R、X、aは上記の通りであり、fは1〜10の整数であり、Dは単結合又は炭素数1〜20のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、mは2〜6の整数であり、Meはメチル基である。)
で表される加水分解性基を有する基であり、αは1〜7の整数である。Yは加水分解性基を有する2価の基であり、βは1〜10の整数であり、Bは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲン原子である。〕
【0018】
上記式(3)〜(6)において、Rfは−(CF
2)
d−O−(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q(CF
2CF
2CF
2O)
r(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
s(CF(CF
3)CF
2O)
t−(CF
2)
d−である。
ここで、dは独立に0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、更に好ましくは1又は2であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数、好ましくはpは5〜100の整数、qは5〜100の整数、rは0〜100の整数、sは0〜50の整数、tは0〜100の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10〜200の整数、好ましくは20〜100の整数であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。
【0019】
Rfとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化19】
(式中、d’は上記dと同じであり、p’、q’、r’、s’、t’はそれぞれ1以上の整数であり、その上限は上記p、q、r、s、tの上限と同じである。)
【0020】
上記式(3)、(5)において、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF
3基、−CF
2H基もしくは−CFH
2基である1価のフッ素含有基であり、1価のフッ素含有基として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
−CF
3
−CF
2CF
3
−CF
2CF
2CF
3
−CF
2H
−CFH
2
【0021】
上記式(3)〜(6)において、Qは単結合、又はフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、Rf基と末端基との連結基である。Qとして、好ましくは、アミド結合、エーテル結合、エステル結合又はジメチルシリレン基等のジオルガノシリレン基からなる群より選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数2〜12の2価の有機基、好ましくは前記構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数2〜12の2価の炭化水素基である。
【0022】
ここで、非置換又は置換の炭素数2〜12の2価の炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)であってよく、更に、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換したものなどが挙げられ、中でも非置換又は置換の炭素数2〜4のアルキル基、フェニル基が好ましい。
このようなQとしては、例えば、下記の基が挙げられる。
【0024】
【化21】
【化22】
(式中、bは2〜4の整数であり、cは1〜4の整数であり、jは1〜50の整数であり、Meはメチル基である。)
【0025】
上記各式(3)、(4)において、Zは単結合、好ましくは炭素数1〜3のジアルキルシリレン基等のジオルガノシリレン基、−JC=〔Jは好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシル基もしくはK
3SiO−(Kは独立に水素原子、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基等のアリール基又は好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される3価の基、−LSi=(Lは好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)で示される3価の基、−C≡で示される4価の基、−Si≡で示される4価の基、及び2〜8価、好ましくは2〜4価のシロキサン残基から選ばれる基であり、シロキサン結合を含む場合には、ケイ素原子数2〜13個、好ましくはケイ素原子数2〜5個の鎖状又は環状オルガノポリシロキサン残基であることが好ましい。また、2つのケイ素原子がアルキレン基で結合されたシルアルキレン構造、即ちSi−(CH
2)
n−Si、を含んでよい(前記式においてnは2〜6の整数)。
該オルガノポリシロキサン残基は、炭素数1〜8、より好ましくは1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基又はフェニル基を有するものがよい。また、シルアルキレン結合におけるアルキレン基は、炭素数2〜6、好ましくは2〜4のものがよい。
【0026】
このようなZとしては、下記に示すものが挙げられる。
【化23】
【0030】
【化27】
(式中、hは2〜4の整数、Meはメチル基である。)
【0031】
上記式(3)、(4)において、Wは下記一般式(7a)〜(7d)で表される加水分解性基を有する基である。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
(式中、R、X、aは上記と同じであり、fは1〜10、好ましくは2〜8の整数であり、Dは単結合又は炭素数1〜20のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、mは2〜6、好ましくは2〜4の整数であり、Meはメチル基である。)
【0032】
ここで、R、X、aは上記と同じであり、上記と同様のものを例示することができる。
Dは単結合、又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜8のフッ素置換されていてもよい2価の有機基、好ましくは2価炭化水素基であり、2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたもの等が挙げられる。Dとしては、エチレン基、プロピレン基、フェニレン基が好ましい。
【0033】
Wとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化32】
(式中、fは上記と同じである。)
【0034】
上記式(3)、(4)において、αは1〜7の整数、好ましくは1〜3の整数である。
【0035】
上記式(5)、(6)において、Yは加水分解性基を有する2価の基であり、好ましくは下記一般式(8)、(9)又は(10)で表される基である。
【化33】
(式中、R、X、a、Dは上記と同じであり、D’は炭素数1〜10のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、R
1は炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、eは1又は2である。)
【0036】
ここで、R、X、a、Dは上記と同じであり、上記と同様のものを例示することができる。
D’は炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8のフッ素置換されていてもよい2価の有機基、好ましくは2価炭化水素基であり、2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたもの等が挙げられる。D’としてはエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0037】
また、R
1は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0038】
Yとして、具体的には、下記の基が挙げられる。
【化34】
【0039】
【化35】
(式中、Xは上記と同じであり、Meはメチル基である。)
【0040】
上記式(5)、(6)において、βは1〜10の整数、好ましくは1〜4の整数である。
また、上記式(5)、(6)において、Bは水素原子、炭素数1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、又はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。
【0041】
上記式(3)、(4)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランとして、連結基Qを
【化36】
とし、Z基を
【化37】
とし、加水分解性基を含むW基を
【化38】
として表されるものを下記に例示する。これらQ、Z、Wの組み合わせは、これらに限られたものではなく、単純にQ、Z、Wを変更することで、数通りのフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランが得られる。いずれのフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランでも本発明の効果は発揮できる。
【0046】
また、上記Q、Z、W以外のものを使用し、これらを組み合わせた上記式(3)、(4)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランとしては、更に下記の構造のものが挙げられる。
【化43】
【0047】
【化44】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【化45】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【化46】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【化47】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒23)
【0048】
【化48】
(Rfa=−CF
2O−(C
2F
4O)
q1(CF
2O)
p1−CF
2−、q1/p1=0.9、p1+q1≒45、f=3)
【0049】
【化49】
(q1/p1=1.1、p1+q1≒45)
【0050】
【化50】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【0051】
【化51】
(Rfb:−CF
2O−(C
2F
4O)
q1(CF
2O)
p1−CF
2−、q1/p1=1.1、p1+q1≒50、R=−CH
2CH
2−、−CH(CH
3)−)
【0052】
【化52】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【0053】
上記式(5)、(6)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランとして、下記構造のものが挙げられる。
【化53】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【0054】
【化54】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【0055】
【化55】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【0056】
【化56】
(q1/p1=0.9、p1+q1≒45)
【0057】
【化57】
(q1/p1=1.0、p1+q1≒40)
【0058】
本発明の含フッ素コーティング剤には、(A)成分として、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シランの末端加水分解性基を、予め公知の方法により部分的に加水分解し、縮合させて得られる部分加水分解縮合物を含んでいてもよい。
【0059】
なお、(A)成分の重量平均分子量は、1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとフルオロポリエーテル基の撥水撥油性や低動摩擦性を発揮できない場合があり、大きすぎると基板との密着性が悪くなる場合がある。なお、本発明において、重量平均分子量は、AK−225(旭硝子社製)を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の標準ポリスチレン換算値として測定できる(以下、同じ)。
【0060】
(B)成分の溶剤は、(A)成分を均一に溶解するものであれば、特に限定されない。このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(m−キシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド、1,3−トリフルオロメチルベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、部分フッ素変性溶剤(1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)等の溶剤を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された含フッ素溶剤が望ましく、特にはエチルパーフルオロブチルエーテル、デカフルオロペンタン及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンがより好ましい。上記溶剤は1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0061】
溶剤に溶解させる(A)成分の最適濃度は、コーティング処理の方法により異なるが、含フッ素コーティング剤中(A)成分の含有量が0.01〜50質量%の範囲となる量であり、特に0.03〜25質量%の範囲となる量であることが好ましい。(A)成分の濃度が低すぎるとコーティング処理後に十分な防汚性や撥水撥油性が得られず、高すぎるとコーティング膜が不均一となり、透明性が低下したり、表面のべたつきが発生したりする。
【0062】
(C)成分は、分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物である。(C)成分は(A)成分に比べて分子量が小さく、組成物中(溶液中)を移動しやすいため、組成物中に水分が存在すると優先的に反応する確率が高い。仮に、混入した水分子によって、(A)成分の加水分解性基が加水分解してシラノール基になったとしても、(C)成分が(A)成分のシラノール基と速やかに反応することで、(A)成分の2量化を防ぐことができる。
【0063】
(C)成分のシラン化合物は、分子量250以下であり、好ましくは100〜250であり、より好ましくは120〜220である。分子量が250を超えると加水分解性が低くなり、十分な保存性を発揮できなかったり、余分な炭化水素基が存在すると、本来の防汚性能が損なわれたりする。
【0064】
(C)成分は、下記一般式で表されるシラン化合物であることが好ましい。
R
2(4-k)−Si−X
k
(式中、R
2は水素原子又は炭素数1〜6の非置換もしくはハロゲン原子置換1価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、kは2〜4の整数である。)
【0065】
上記式中、R
2は水素原子又は炭素数1〜6、特に炭素数1〜4の非置換もしくはハロゲン原子置換1価炭化水素基であり、1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換されたもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R
2としては、メチル基、エチル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基が好ましい。
Xは加水分解性基であり、上述したXと同様のものを例示することができる。中でもメトキシ基、エトキシ基、プロペノキシ基、アセトキシ基が好適である。
kは2〜4の整数、好ましくは3又は4である。
【0066】
(C)成分の例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシランなどが挙げられる。加水分解性に優れる方が、保存安定性効果が高くなることを考慮すると、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシランが好ましい。
【0067】
(C)成分の含有量は、コーティング剤全体に対して0.01〜5質量%であり、好ましくは0.05〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜2質量%である。(C)成分の含有量が少なすぎると溶液状態での十分な保存安定性効果が得られず、多すぎると塗工ムラなどの外観不良が発生しやすくなる。
【0068】
本発明の含フッ素コーティング剤は、更に(D)成分として、下記一般式(11)
【化58】
(式中、Rf及びAは前記と同じである。)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(以下、無官能性ポリマーと称することもある)を含有してもよい。
【0069】
上記式(11)において、Rf及びAは上記で例示したRf及びAと同様のものを例示することができ、Rfは上述した(A)成分中のRfと同一でも異なっていてもよく、Rfとしては、
【化59】
(式中、p2は5〜200、好ましくは10〜100の整数、q2は5〜200、好ましくは10〜100の整数、r2は10〜200、好ましくは20〜100の整数、t2は5〜200、好ましくは10〜100の整数、t3は10〜200、好ましくは20〜100の整数で、t2+p2は10〜200、好ましくは20〜100の整数、q2+p2は10〜200、好ましくは20〜100の整数である。)
が好ましく、またAとしては、
−F
−CF
3
−CF
2CF
3
−CF
2CF
2CF
3
が好ましい。
【0070】
式(11)で表される無官能性ポリマーとしては、下記のものが挙げられる。
【化60】
(式中、p2、q2、r2、t2、t3は上記と同じである。)
【0071】
(D)成分のフルオロポリエーテル基含有ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜50,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜10,000であり、更には(A)成分の重量平均分子量の0.5〜1.5倍の範囲の重量平均分子量であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると(A)成分の優れた滑り性を損なう場合があり、大きすぎるとコーティング膜の透明性が低下する場合がある。
【0072】
なお、(D)成分の無官能性ポリマーは、市販品を使用することができ、例えば、FOMBLIN、DEMNUM、KRYTOXという商標名で販売されているため、容易に手に入れることができる。このようなポリマーとしては、例えば、下記構造のものが挙げられる。
【0073】
FOMBLIN Y(Solvay Solexis社製商品名、FOMBLIN Y25(重量平均分子量:3,200)、FOMBLIN Y45(重量平均分子量:4,100))
【化61】
(式中、t2、p2は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0074】
FOMBLIN Z(Solvay Solexis社製商品名、FOMBLIN Z03(重量平均分子量:4,000)、FOMBLIN Z15(重量平均分子量:8,000)、FOMBLIN Z25(重量平均分子量:9,500))
【化62】
(式中、q2、p2は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0075】
DEMNUM(ダイキン工業社製商品名、DEMNUM S20(重量平均分子量:2,700)、DEMNUM S65(重量平均分子量:4,500)、DEMNUM S100(重量平均分子量:5,600))
【化63】
(式中、r2は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0076】
KRYTOX(DuPont社製商品名、KRYTOX 143AB(重量平均分子量:3,500)、KRYTOX 143AX(重量平均分子量:4,700)、KRYTOX 143AC(重量平均分子量:5,500)、KRYTOX 143AD(重量平均分子量:7,000))
【化64】
(式中、t3は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0077】
(D)成分を配合する場合の使用量は特に限定されないが、(A)成分の質量に対して0〜50質量%の範囲が好ましく、多すぎると、密着性の問題が生じる場合がある。なお、配合する場合の下限は、(D)成分の効果を有効に発揮させる点から5質量%以上とすることが好ましい。
【0078】
また、本発明の含フッ素コーティング剤には、必要に応じて、本発明を損なわない範囲で他の添加剤を配合することができる。具体的には、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫等)、有機チタン化合物(テトラn−ブチルチタネート等)、有機酸(フッ素系カルボン酸、酢酸、メタンスルホン酸等)、無機酸(塩酸、硫酸等)などが挙げられる。これらの中では、特にフッ素系カルボン酸、酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫が望ましい。加水分解縮合触媒の添加量は触媒量であるが、通常、上記(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部、特に0.1〜1質量部である。
【0079】
本発明の含フッ素コーティング剤は、使用前の溶液状態での保存中におけるポリマー末端の加水分解を抑制し得ることから、保存安定性が向上すると共に、塗工時のトラブルを防止し、基材上に均一な塗工膜を安定して形成することができる。
【0080】
本発明の含フッ素コーティング剤は、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法で基材に施与することができる。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、例えば、スプレー法、インクジェット法、ディッピング法、刷毛塗り、真空蒸着法で施与した場合は、室温(20℃)〜200℃、特に50〜150℃の範囲が望ましい。硬化湿度としては、加湿下で行うことが反応を促進する上で望ましい。また、硬化皮膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1〜100nm、特に3〜30nmである。
なお、密着性が悪い場合には、プライマー層としてSiO
2層を設けるか、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、アルカリ処理することによって密着性を向上させることができる。
【0081】
本発明の含フッ素コーティング剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の含フッ素コーティング剤は、これら基材に撥水撥油性、耐薬品性、離型性、低動摩擦性、防汚性を付与することができる。特に、各種物品の透明性や質感を損なうことなく、優れた防汚性能を付与することができ、薬品等の侵入から基材を守り、長期に防汚性能を保つことができる。本発明の含フッ素コーティング剤で処理される物品としては、光学物品、フィルム、ガラス、石英基板、反射防止膜のようなものが挙げられ、特にはタッチパネル、反射防止処理物品、強化ガラスに用いられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例
、参考例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0083】
フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シランとして、下記の化合物1〜4を準備した。
化合物1
【化65】
(重量平均分子量:4,600)
【0084】
化合物2
【化66】
(Rfa:−CF
2O−(C
2F
4O)
q1(CF
2O)
p1−CF
2−、q1/p1=0.9、p1+q1≒45、f=3)
(重量平均分子量:5,500)
【0085】
化合物3
【化67】
(Rfb:−CF
2O−(C
2F
4O)
q1(CF
2O)
p1−CF
2−、q1/p1=1.1、p1+q1≒50、f=3)
(重量平均分子量:4,800)
【0086】
化合物4
【化68】
(Rfb:−CF
2O−(C
2F
4O)
q1(CF
2O)
p1−CF
2−、q1/p1=1.1、p1+q1≒40、R:−CH
2CH
2−又は−CH(CH
3)−、−CH
2CH
2−/−CH(CH
3)−≒0.65/0.35)
(重量平均分子量:4,000)
【0087】
フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シランを溶解させる溶剤として、下記のものを用意した。
溶剤A:Novec7200(エチルパーフルオロブチルエーテル、3M社製)
溶剤B:Solkane365mfc(1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、ソルベイ社製)
溶剤C:アサヒクリンAC−2000(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、旭硝子社製)
【0088】
上記の溶剤中の水分量をAQUACOUNTER AQ−2100(カールフィッシャー型微量水分測定装置;平沼産業社製)で測定したところ、表1の結果であった。
【0089】
【表1】
【0090】
分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物として下記の化合物2種を用意した。
シランα:ビニルトリメトキシシラン(分子量148)
シランβ:テトラエトキシシラン(分子量208)
また、分子量250を超える加水分解性基を有するシラン化合物として下記化合物を用意した。
シランγ:n−デシルトリメトキシシラン(分子量262)
【0091】
コーティング剤の調製
処理剤A〜G:
表2に示す組み合わせで、フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン0.1質量部、分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物0.2質量部、溶剤99.7質量部になるようにコーティング剤100質量部を調製し、100mLの褐色瓶に入れて密栓した。
処理剤H、I:
表2に示す組み合わせで、フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン0.1質量部、溶剤99.9質量部になるようにコーティング剤100質量部を調製し、100mLの褐色瓶に入れて密栓した。
処理剤J:
表2に示す組み合わせで、フルオロポリエーテル基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン0.1質量部、分子量250を超える加水分解性基を有するシラン化合物0.2質量部、溶剤99.7質量部になるようにコーティング剤100質量部を調製し、100mLの褐色瓶に入れて密栓した。
これらの処理剤A〜Jを50℃のオーブンに72時間入れた後、各種試験を実施した。
【0092】
【表2】
【0093】
[実施例1〜
6、参考例1、比較例1〜3]
保存性の確認
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、前記コーティング剤である処理剤A〜Jについて測定を行い、2量化以上の高分子量体の生成割合を算出した。測定条件は下記の通りである。結果を表3に示す。
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL−M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.1質量%の溶液)
【0094】
【表3】
【0095】
[実施例
7〜
12、参考例2、比較例4〜6]
硬化皮膜の形成並びに透明性、耐摩耗性の評価
ガラス(コーニング社製 GorillaII)上に、前記で調製したコーティング剤である処理剤A〜Jをスプレー塗工装置(NST−51;ティーアンドケイ社製)で塗工し、80℃、湿度80%の雰囲気下で1時間硬化させて硬化皮膜(膜厚:約15nm)を形成させ、試験体を作製した。
この試験体のヘーズ(透明性)測定、及び耐摩耗性試験を下記に示す条件により行った。結果を表4に示す。
【0096】
[ヘーズ測定条件]
上記にて作製した試験体のヘーズをJIS K 7136に従い、下記装置にて測定した。
装置名:NDH−5000(日本電色社製)
【0097】
[耐摩耗性試験条件]
下記条件で10,000回の摩耗試験を行い、摩耗試験後の表面において水に対する接触角が100°以上であることを合格として評価した。
装置名:往復摩耗試験機 TRIBOGEAR 30S(新東科学社製)
摩耗材:ベンコット(旭化成社製)
移動距離(片道):30mm
移動速度:1,600mm/分
荷重:1kg/cm
2
接触角計装置名:Drop Master(協和界面科学社製)
【0098】
【表4】
【0099】
上記の結果より、分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物を添加していない処理剤H、Iは、保存中に加水分解により2量化以上の高分子量化したポリマーの割合が大きくなった(比較例1、2)。分子量が250を超える加水分解性基を有するシラン化合物を添加した処理剤Jは、高分子量化したポリマーの生成が抑制されるものの、実施例に比べると大きい値であった(比較例3)。また、これら処理剤H、I、Jを使用してガラス表面に皮膜を形成させると、表面の均一性に劣り、ヘーズ値の上昇が見られると共に、摩耗耐久性も低下した(比較例4〜6)。
一方、分子量250以下の加水分解性基を有するシラン化合物を添加した処理剤
B〜Gは、保存中にポリマーの高分子量化が発生しにくく(実施例1〜
6)、塗工後の皮膜の均一性がよく、透明性及び摩耗耐久性に優れる(実施例
7〜
12)結果であった。