特許第6398738号(P6398738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398738セメント系材料用空気連行剤、当該空気連行剤を含むセメント系材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398738
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】セメント系材料用空気連行剤、当該空気連行剤を含むセメント系材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/52 20060101AFI20180920BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20180920BHJP
   C04B 103/30 20060101ALN20180920BHJP
   C04B 103/52 20060101ALN20180920BHJP
【FI】
   C04B7/52
   C04B24/02
   C04B103:30
   C04B103:52
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-6892(P2015-6892)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-132583(P2016-132583A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−504427(JP,A)
【文献】 特開2002−68797(JP,A)
【文献】 社団法人日本コンクリート工学協会,「コンクリート便覧」,日本,技報堂出版,1996年 2月15日,第2版,第80〜83ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00−32/02
C04B40/00−40/06
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカ100質量部に対して、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルを0.01〜0.05質量部添加してセメントクリンカを粉砕し、次いで、前記粉砕物に、骨材及び水を添加して混練することにより調製されることを特徴とする、セメント系材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系材料用空気連行剤、当該空気連行剤を含むセメント系材料及びその製造方法に関し、特に安定な空気量を連行する機能と高い粉砕効率とを併せ持ったセメント系材料用空気連行剤、当該空気連行剤を含むセメント系材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、硬化後のモルタルまたはコンクリートの耐凍害性を確保し、凍結融解に対する抵抗性を向上させるために、モルタルまたはコンクリート等のセメント系材料中に微細空気泡を連行する必要があり、このため空気連行剤がセメント系材料中に含有されている。
【0003】
従来より、空気連行剤として、界面活性剤のうち起泡作用を利用したAE剤と称される界面活性剤が多く用いられている。一般に、セメント組成物中に含まれる水が凍結すると体積が増加して膨張圧を発生しうるが、このような空気連行剤により形成された連行空気泡が気泡が存在すると、凍結していない自由水を介してこの圧力を逃がすことができ、コンクリートの膨張圧によるひび割れ等の破壊を防止することができる。
【0004】
かかる空気連行剤としては、樹脂酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼン硫酸エステル等の界面活性剤を主成分とするAE剤が一般的に使用されており、例えば、特開2002−68797号公報(特許文献1)には、(A)ヒドロキシ脂肪酸の多価アルコールエステルにアルキレンオキサイドを付加した化合物と(B)炭素数8〜24の脂肪酸塩とを含有し、(A)と(B)との比率(重量)が(A)/(B)=1/99〜99/1であることを特徴とする空気連行剤が記載されている。
また特開2013−133261号公報(特許文献2)には、平均分子量200〜500のポリプロピレングリコール(A成分)、ロジン酸(B成分)、一般式(I)で示されるHLB値が8以下の化合物(C成分)、及び水を含有し、A成分とB成分とを重量比で、A成分:B成分=99.995〜99.500:0.005〜0.500、C成分をA成分とB成分の合計重量の0.005〜0.500重量%、水をA成分、B成分、C成分、水の合計重量中5〜50重量%の割合で含有し、且つ25℃において透明液状である、空気連行剤が開示されている。
【0005】
一方、セメント原料やセメントクリンカ粉砕時には、例えばジエチレングリコール等のグリコール類や、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類などの粉砕助剤を添加することにより、粉砕効率を向上させて、粉砕設備の消費電力を削減することが実施されている。
【0006】
かかる粉砕助剤としては、特開2010−116294号公報(特許文献3)に、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含んでなる粉砕助剤が開示されており、更に特開2011−173836号公報(特許文献4)には、メタノールとグリセリンとを原料として、銅含有触媒存在下、水素を0.1〜20MPaの圧力で導入し200〜280℃で反応させる工程を有する、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール及び1,2−ブタンジオールの合計量が75重量%以上含む粉砕助剤が記載されている。
【0007】
また国際公開WO2008/038732号公報(特許文献5)には、グリコール、グリコールエーテル、ポリグリコール、ポリグリコールエーテル等の、車両より回収されたグリコール系ブレーキフルードや、かかるブレーキフルードにジエチレングリコールを混合した混合物を粉砕助剤に使用することが開示されている。
【0008】
しかし、これらの上記従来のAE剤である空気連行剤は粉砕助剤効果を有さず、一方、従来の粉砕助剤は空気連行作用を有さなかった。また、特許文献5に記載のグリコール類は、粉砕助剤として用いられることが記載されているのみで、空気連行性に関する技術思想は一切開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−68797号公報
【特許文献2】特開2013−133261号公報
【特許文献3】特開2010−116294号公報
【特許文献4】特開2011−173836号公報
【特許文献5】WO2008/038732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決し、良好な空気連行性をセメント系材料に付与することができる新規なセメント系材料用空気連行剤を提供することにある。更に、本発明は、良好な空気連行性をセメント系材料に付与することができるとともに、セメントクリンカ等の粉砕効率をも向上させることができる、セメント系材料用空気連行剤を提供することである。
また、本発明の他の目的は、いわゆるAE剤を使用せずに本発明の空気連行剤を用いることで、AE剤と粉砕助剤の2種類の混和剤を用いることなく、良好な空気連行性を備えるとともに強度にも優れ、且つ、粉砕効率を向上させて得られたセメント系材料及びその製造方法を提供することである。
なお、セメント系材料とは、セメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル、コンクリートを含む概念である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、グリコール類の中でも特定のグリコールが、セメント系材料に、良好な空気連行性を付与するとともに、粉砕助剤としても機能してセメントクリンカの粉砕効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、セメント系材料用空気連行剤の発明は、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルであることを特徴とする、セメント系材料用空気連行剤である。
【0012】
メント系材料の発明は、セメントと上記セメント系材料用空気連行剤とを含み、セメント100質量部に対して、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルが0.01〜0.05質量部含有されることを特徴とする、セメント系材料である。
【0013】
請求項記載のセメント系材料の製造方法は、セメントクリンカ100質量部に対して、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルを0.01〜0.05質量部添加してセメントクリンカを粉砕し、次いで、前記粉砕物に、骨材及び水を添加して混練することにより調製されることを特徴とする、セメント系材料の製造方法である。
【0014】
別のセメント系材料の製造方法は、セメントクリンカを粉砕してセメント粉砕物を製造し、次いで、前記粉砕物に、骨材及び、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルが前記セメント粉砕物100質量部に対して0.01〜0.05質量部となるような量で予め添加配合されている水を添加して混練することにより調製されることを特徴とする、セメント系材用の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセメント系材料用空気連行剤は、良好な空気連行性をセメント系材料に付与することができるとともに、セメントクリンカ等の粉砕効率をも向上させることを可能とする。
また本発明のセメント系材料は、前記本発明の空気連行剤を含むため、いわゆるAE剤を使用する必要がなく、良好な空気連行性を備えるとともに強度にも優れ、且つ、粉砕効率を向上させて、粉砕設備等のセメント製造設備の消費電力を削減することができる。
したがって、本発明のセメント系材料は、道路や建築物等のコンクリート構造体の凍結融解抵抗性を向上させることができ、寒冷時においてもコンクリート構造体のひび割れを有効に防止することが可能となる。
【0016】
更に本発明のセメント系材料の製造方法は、良好な空気連行性をセメント系材料に効率的にもたらすことができるとともに、粉砕効率を向上させたセメント系材料を有効に製造することができる。
したがって、例えば、セメントクリンカ粉砕時の省エネルギー化を図れることができ、セメント製造設備の寿命を長期化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のセメント系材料用空気連行剤の発明は、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルを主成分として含んでなるものである。
ここで、主成分としては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルが、例えばフルードブレーキフルードオイル由来のトリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルである場合には、意図せず若干の他の成分を含みうる可能性を否定するものではない趣旨である。
好ましくは、本発明のセメント系材料用空気連行剤は、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルからなるものである。
【0018】
トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルは、車両用ブレーキフルードの成分でもあるため、フルードブレーキフルードオイル由来のトリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルを使用することもでき、この場合には、自動車等の車検時や解体時に取り出される使用済みの廃材料を利用できることとなり、資源の有効利用を図ることができるという効果も有する。
【0019】
かかる本発明のセメント系材料用空気連行剤は、セメント系材料、例えばコンクリートやモルタルに空気連行性を付与するものであり、セメント系材料中に5容量%前後の優れた空気量を含有させることができる。これにより、得られるコンクリートの強度を低下させることなく、凍結融解に対する抵抗性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、本発明のセメント系材料用空気連行剤は、セメントクリンカを所定の粒度にまで粉砕する際に添加されることにより、上記空気連行作用に加えて、従来の粉砕助剤とほぼ同様の作用を発揮することができ、セメントクリンカの粉砕効率を高めることができる。
更に、本発明のセメント系材料用空気連行剤は、セメントクリンカの粉砕時以外にも、例えばセメント原料の粉砕時、セメントクリンカと石膏等とを混合したセメント製品の粉砕時等の、セメント系材料を製造する過程における任意の粉砕工程に添加配合して利用することができる。
【0021】
したがって、従来は、空気連行性を有するセメント系材料を製造する際には、粉砕助剤とは別に空気連行剤を含有する必要があったが、本発明の新規な空気連行剤は、両方の作用を呈するため、製造過程の手間を省くとともに経済的にも有利なものである。
【0022】
上記本発明のセメント系材料用空気連行剤は、セメントと混合されて、空気連行性を有するセメント系材料、例えばいわゆるAEコンクリートを製造することができる。
詳細には、本発明のセメント系材料は、セメント、本発明の空気連行剤、骨材、水及び、必要に応じて配合した添加剤を均一に混練して調製することができる。
混練には、通常のコンクリートの混練に用いられるミキサー、例えば、オムニタイプミキサー、パンタイプミキサー、2軸ミキサー等を用いることができる。混練方法は、特に限定されないが、一般的には、材料を一括してミキサーに投入して、混練すればよい。また、モルタルを先練りし、これを粗骨材にまぶす方法によって混練物としてもよい。
【0023】
また、各材料を施工時に混合して用いてもよいし、予め、その一部あるいは全部を混合しておいても差し支えないが、好ましくは、セメントと他の粉体を予め混合して混合粉体を調製した後に、該混合粉体を水や骨材等と混練することが、均一に容易に混練することができるため望ましい。
【0024】
具体的には、例えば、セメントクリンカ100質量部に対して、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルを0.01〜0.05質量部、好ましくは、0.015〜0.04質量部添加してセメントクリンカを粉砕し、次いで、前記粉砕物に、骨材及び水を添加して混練することにより、前記セメントクリンカの粉砕効率を高め、得られるセメント系材料に優れた空気連行性を付与し、また高強度を維持する、セメント系材料を製造することができる。
【0025】
また他の具体例としてのセメント系材料の製造方法としては、セメントクリンカを粉砕してセメント粉砕物を製造し、次いで、前記粉砕物に、骨材及び、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールブチルエーテルが前記セメント粉砕物100質量部に対して0.01〜0.05質量部、好ましくは、0.015〜0.04質量部となるような量で予め添加配合されている水を添加して混練する方法が例示できる。
上記のように、本発明の空気連行剤を予め混練水と混合しておくことにより、得られるセメント系材料中に均一に空気連行剤を配合することが可能となる。
かかる方法によっても、得られるセメント系材料に優れた空気連行性を付与し、また高強度を維持する、セメント系材料を製造することが可能となる。
【0026】
本発明に用いるセメントとしては、任意の公知のセメントを適用することができ、セメントの種類は特に限定されず、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、シリカセメント及びフライアッシュセメントの各種混合セメントや、白色ポルトランドセメント及びアルミナセメント、超速硬セメント等、市場で入手できる種々のセメントを例示することができ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
また、本発明で使用するセメントには、長期強度の向上、乾燥収縮の緩和のため、ポゾラン活性を有する材料である高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、石灰石粉末、石英粉末、二水石膏、半水石膏、I型及びII型及びIII型無水石膏等の混和材を、単独でもしくは併用して、適量配合することも可能である。
また、粉体中に占めるセメントの割合は、60質量%程度以上とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明のセメント系材料であるモルタルやコンクリートには、細骨材や粗骨材の骨材が含有されるが、これらの粗骨材や細骨材の種類は、特に限定されるものではない。
必要に応じて含有される細骨材としては、特に限定はなく、山砂、川砂、陸砂、砕砂、海砂、珪砂3〜7号等の比較的粒径の細かい細骨材、または珪石粉、石灰石粉等の微粉末等の公知の細骨材やこれらの混合物を使用できる。また、本発明では、細骨材としては、土木建築学会で規定される、5mmふるいを85重量%以上通過するものを用いることもできる。
【0028】
また、粗骨材としては、特に限定はなく、一般的に用いられる任意の粗骨材を用いることができ、例えば、川砂利、陸砂利、砕石等を用いることができる。粗骨材は、通常、最大粒径5mm〜30mmの、例えば4号〜7号砕石を用いることができる。
その配合割合は特に限定されず、使用する用途に応じて決定することができる。
【0029】
また、本発明のセメント系材料には、各種添加剤を必要に応じて、配合することができる。
各種添加剤としては、コンクリートを調製する際に添加される公知の添加剤であれば、用途に応じて添加することができ、例えば、凝結遅延剤、硬化促進剤、消泡剤、防錆剤、防凍剤、着色剤、減水剤、高性能減水剤等の各種の混和剤や、耐久性を向上させるための炭素繊維や鋼繊維などの補強材を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能であるが、AE剤のような従来の空気連行剤は使用しない。
【0030】
このように製造したセメント系材料は、強度の低下を招くことなく5容量%の空気量を含ませることができ、優れた空気連行作用を奏することができる。
【実施例】
【0031】
本発明を具体的な実施例、比較例及び試験例により詳述するが、これらに限定されるものではない。
(使用材料)
以下の材料を用いて、下記実施例及び比較例を実施した。
・普通ポルトランドセメントクリンカ:(住友大阪セメント株式会社製)
・二水石膏(天然)
・粗骨材(G):砕石(兵庫県西島産:密度2.56、粗粒率2.72)
・細骨材(S):川砂(滋賀県野洲川産:密度2.63、粗粒率6.62)
・水(W):上水道(大阪市水道局)
・混和剤(AD):ポゾリスNo.70(BASFジャパン株式会社製:AE減水剤)
・トリエチレングリコールモノエチルエーテル:ブレーキフルードオイル由来
・トリエチレングリコールブチルエーテル:ブレーキフルードオイル由来
・ジエチレングリコール(粉剤助剤):試薬(関東化学)
・トリエタノールアミン(粉剤助剤):試薬(関東化学)
・マイティAE−02(花王株式会社製:AE剤 アニオン系界面活性剤)
・マスターエア(BASFジャパン株式会社製:AE剤 アルキルエーテル系陰イオン界面活性剤)
・直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:試薬、和光純薬工業株式会社製:陰イオン界面活性剤)
【0032】
(1)空気連行性
(実施例1〜2、比較例1〜5)
普通ポルトランドセメントクリンカをジョークラッシャー及びブラウンミルで粉砕した普通ポルトランドセメントと、天然二水石膏とを、SOの含有量が2.0質量%となるように混合した。
該混合物に、それぞれトリエチレングリコールモノエチルエーテル(実施例1)、トリエチレングリコールブチルエーテル(実施例2)、ジエチレングリコール(比較例1)、トリエタノールアミン(比較例2)、アニオン系界面活性剤のマイティAE−02(比較例3)、アルキルエーテル系陰イオン界面活性剤のマスターエア(比較例4)の各化合物を、前記混合物100質量部に対して0.03質量部となるように添加した。
なお、比較例5は、前記混合物に何も添加しないこと以外は、実施例1と同様に粉砕した。
得られた混合物をボールミルで粉砕して粉末度3300cm/gの各普通ポルトランドセメントを調製した(試製普通ポルトランドセメント)。
調製した各試製普通ポルトランドセメント(C)を用いて、下記表1に示す配合割合で、細骨材、粗骨材、混和剤及び水を配合して、実施例1〜2及び比較例1〜5の各コンクリートを調製した。
【0033】
(実施例3〜4)
普通ポルトランドセメントクリンカをジョークラッシャー及びブラウンミルで粉砕した普通ポルトランドセメントと、天然二水石膏とを、SOの含有量が2.0質量%となるように混合した。得られた混合物をボールミルで粉砕して粉末度3300cm/gの普通ポルトランドセメントを調製した。
調製した普通ポルトランドセメント(C)に、下記表1に示す配合割合で、細骨材、粗骨材、混和剤及び、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを予め添加した水(実施例3)又はトリエチレングリコールブチルエーテルを予め添加した水(実施例4)を配合して、実施例3〜4の各コンクリートを調製した。
但し、水に予め添加するトリエチレングリコールブチルエーテル又はトリエチレングリコールブチルエーテルは、普通ポルトランドセメント100質量部に対して0.03質量部となるように、予め水に添加して用いた。
【0034】
(比較例6)
普通ポルトランドセメントクリンカをジョークラッシャー及びブラウンミルで粉砕した普通ポルトランドセメントと、天然二水石膏とを、SOの含有量が2.0質量%となるように混合した。得られた混合物をボールミルで粉砕して粉末度3300cm/gの普通ポルトランドセメントを調製した。
調製した普通ポルトランドセメント(C)に、下記表1に示す配合割合で、細骨材、粗骨材、混和剤、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び水を配合して、比較例6のコンクリートを調製した。
【0035】
【表1】
【0036】
(試験例1)強度試験
実施例1〜4及び比較例1〜6の各コンクリートについて、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に規定された試験方法に基づき、凝結の始発時間及び終結時間、並びに材齢7日及び28日における圧縮強度を測定した。
その結果を、下記表2に示す。
【0037】
(試験例2)空気連行性試験
実施例1〜4及び比較例1〜6の各コンクリートについて、JIS A 1129−2「モルタル及びコンクリートの長さ試験方法 第2部コンタクトゲージ」に基づき、空気量を測定した。また、スランプ値も測定した。
その結果を、下記表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2より、本発明の実施例1及び実施例2では、通常使用されている空気連行剤である界面活性剤を添加した比較例3及び比較例4よりも良好な空気連行効果を確認することができた。一方、比較例1及び比較例2では、空気連行性は認められず、無添加の比較例5と同等の空気連行作用を示した。
【0040】
(2)粉砕助剤効果
(実施例5〜6、比較例7〜11)
普通ポルトランドセメントクリンカをジョークラッシャー及びブラウンミルで粉砕した普通ポルトランドセメントと、天然二水石膏とを、SOの含有量が2.0質量%となるように混合した。
該混合物に、それぞれトリエチレングリコールモノエチルエーテル(実施例5)、トリエチレングリコールブチルエーテル(実施例6)、ジエチレングリコール(比較例7)、トリエタノールアミン(比較例8)、アニオン系界面活性剤のマイティAE−02(比較例9)、アルキルエーテル系陰イオン界面活性剤のマスターエア(比較例10)の各化合物を、前記混合物100質量部に対して0.03質量部となるように添加した。
なお、比較例11、前記混合物に何も添加しないこと以外は、実施例5同様に粉砕した。
【0041】
(試験例3)粉砕効率試験
得られた各混合物をボールミルで粉砕して、粉砕時間と粉末度との関係求め、その結果を下記表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3より、本発明の実施例5及び実施例6は、通常使用されている粉剤助剤を添加した比較例7及び比較例8と同等以上の粉剤助剤効果を確認することができた。一方、比較例9及び比較例10は、顕著な粉剤助剤効果は認められず、無添加の比較例11と同等の粉砕効率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、凍結融解性に優れるため、例えば寒冷地の歩道や車道等の道路舗装体や河川の護岸等の土木構造体や建築構造体の種々の用途に適用することができる。