(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エチレン性二重結合と酸性基を有し、酸価が10〜300mgKOH/gである、光硬化性を有するアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)と、光重合開始剤(B)と、ベンゾフェノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格、シアノアクリレート骨格またはトリアジン骨格を有し、かつエチレン性二重結合を有する反応性紫外線吸収剤(C1)を含む反応性紫外線吸収剤(C)と、重合禁止剤(D)と、撥インク剤(E)とを含有することを特徴とする、有機EL素子用、量子ドットディスプレイ用、TFTアレイ用または薄膜太陽電池用のネガ型感光性樹脂組成物。
前記ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の前記反応性紫外線吸収剤(C)の含有割合が0.01〜20質量%であり、前記重合禁止剤(D)の含有割合が0.001〜1質量%である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
前記撥インク剤(E)がフッ素原子を有し、前記撥インク剤(E)中のフッ素原子の含有率が1〜40質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
請求項1〜9のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする有機EL素子用、量子ドットディスプレイ用、TFTアレイ用または薄膜太陽電池用の樹脂硬化膜。
基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成された隔壁であって、請求項10に記載の樹脂硬化膜からなることを特徴とする有機EL素子用、量子ドットディスプレイ用、TFTアレイ用または薄膜太陽電池用の隔壁。
基板表面に複数のドットと隣接するドット間に位置する隔壁とを有する光学素子であって、該光学素子は有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池であり、前記隔壁が請求項11に記載の隔壁で形成されていることを特徴とする光学素子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、次の用語は、それぞれ、下記の意味で使用される。
「(メタ)アクリロイル基」は、「メタクリロイル基」と「アクリロイル基」の総称である。(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリル樹脂もこれに準じる。
【0013】
式(x)で表される基を、単に基(x)と記載することがある。
式(y)で表される化合物を、単に化合物(y)と記載することがある。
ここで、式(x)、式(y)は、任意の式を示している。
【0014】
「ある成分を主として構成される樹脂」または「ある成分を主体とする樹脂」とは、該成分の割合が樹脂全量に対して50質量%以上を占めることをいう。
【0015】
「側鎖」とは、炭素原子からなる繰り返し単位が主鎖を構成する重合体において、主鎖を構成する炭素原子に結合する、水素原子またはハロゲン原子以外の基である。
【0016】
「感光性樹脂組成物の全固形分」とは、感光性樹脂組成物が含有する成分のうち後述する硬化膜を形成する成分を指し、感光性樹脂組成物を140℃で24時間加熱して溶媒を除去した残存物から求める。なお、全固形分量は仕込み量からも計算できる。
【0017】
樹脂を主成分とする組成物の硬化物からなる膜を「樹脂硬化膜」という。
感光性樹脂組成物を塗布した膜を「塗膜」、それを乾燥させた膜を「乾燥膜」という。該「乾燥膜」を硬化させて得られる膜は「樹脂硬化膜」である。また、「樹脂硬化膜」を単に「硬化膜」ということもある。
【0018】
樹脂硬化膜は、所定の領域を複数の区画に仕切る形に形成された隔壁の形態であってもよい。隔壁で仕切られた区画、すなわち隔壁で囲まれた開口部に、例えば、以下の「インク」が注入され、「ドット」が形成される。
【0019】
「インク」とは、乾燥、硬化等した後に、光学的および/または電気的な機能を有する液体を総称する用語である。
有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイおよび薄膜太陽電池においては、各種構成要素としてのドットを、該ドット形成用のインクを用いてインクジェット(IJ)法によりパターン印刷することがある。「インク」には、かかる用途に用いられるインクが含まれる。
【0020】
「撥インク性」とは、上記インクをはじく性質であり、撥水性と撥油性の両方を有する。撥インク性は、例えば、インクを滴下したときの接触角により評価できる。「親インク性」は撥インク性と相反する性質であり、撥インク性と同様にインクを滴下したときの接触角により評価できる。または、インクを滴下したときのインクの濡れ広がりの程度(インクの濡れ広がり性)を所定の基準で評価することにより親インク性が評価できる。
【0021】
「ドット」とは、光学素子における光変調可能な最小領域を示す。有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイおよび薄膜太陽電池においては、白黒表示の場合に1ドット=1画素であり、カラー表示の場合に例えば3ドット(R(赤)、G(緑)、B(青)等)=1画素である。
「パーセント(%)」は、特に説明のない場合、質量%を表す。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、光硬化性を有するアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)と、光重合開始剤(B)と、反応性紫外線吸収剤(C)と、重合禁止剤(D)と、撥インク剤(E)と、を含有する有機EL素子用、量子ドットディスプレイ用、TFTアレイ用または薄膜太陽電池用のネガ型感光性樹脂組成物である。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、架橋剤(F)、2官能以上のチオール化合物(G)、リン酸化合物(H)、着色剤(I)、溶媒(J)、その他の任意成分を含有する。
以下、各成分について説明する。
【0023】
(アルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A))
アルカリ可溶性樹脂には符号(AP)、アルカリ可溶性単量体には符号(AM)を付して、それぞれ説明する。以下、アルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)をアルカリ可溶性樹脂等(A)ということもある。
【0024】
アルカリ可溶性樹脂(AP)としては、1分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有する感光性樹脂が好ましい。アルカリ可溶性樹脂(AP)が分子中にエチレン性二重結合を有することで、ネガ型感光性樹脂組成物の露光部は、光重合開始剤(B)から発生したラジカルにより重合して硬化する。
【0025】
このようにして充分に硬化した露光部はアルカリ現像液にて除去されない。また、アルカリ可溶性樹脂(AP)が分子中に酸性基を有することで、アルカリ現像液にて、硬化していないネガ型感光性樹脂組成物の非露光部を選択的に除去できる。その結果、硬化膜を、所定の領域を複数の区画に仕切る形の隔壁の形態とすることができる。
【0026】
酸性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基およびリン酸基等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エチレン性二重結合としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基およびビニルオキシアルキル基等の付加重合性を有する二重結合が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、エチレン性二重結合が有する水素原子の一部または全てが、メチル基等のアルキル基で置換されていてもよい。
【0027】
エチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(AP)としては、酸性基を有する側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖とを有する樹脂(A−1)、およびエポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とが導入された樹脂(A−2)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
樹脂(A−1)は、例えば、以下の(i)または(ii)の方法で合成できる。
(i)側鎖に酸性基以外の反応性基、例えば、水酸基、およびエポキシ基等の反応性基を有する単量体と、側鎖に酸性基を有する単量体とを共重合させ、反応性基を有する側鎖と、酸性基を有する側鎖とを有する共重合体を得る。次いで、この共重合体と、上記反応性基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物を反応させる。または、側鎖にカルボキシ基等の酸性基を有する単量体を共重合させた後、酸性基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物を反応後に酸性基が残る量、反応させる。
【0029】
(ii)上記(i)と同様の酸性基以外の反応性基を側鎖に有する単量体と、この反応性基に対して結合し得る官能基および保護されたエチレン性二重結合を有する化合物を反応させる。次いで、この単量体と側鎖に酸性基を有する単量体とを共重合させた後、エチレン性二重結合の保護を外す。または、側鎖に酸性基を有する単量体と、側鎖に保護されたエチレン性二重結合を有する単量体とを共重合させた後、エチレン性二重結合の保護を外す。
なお、(i)および(ii)は溶媒中で実施することが好ましい。
【0030】
上記方法のうちでも、(i)の方法が好ましく用いられる。以下、(i)の方法について具体的に説明する。
【0031】
反応性基として水酸基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
反応性基として水酸基を有する単量体を用いる場合、共重合させる酸性基を有する単量体は、後述のカルボキシ基を有する単量体の他に、リン酸基を有する単量体として、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。水酸基を反応性基として有する単量体と酸性基を有する単量体との共重合は、従来公知の方法で行うことができる。
【0033】
得られた共重合体と反応させる、水酸基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物としては、エチレン性二重結合を有する酸無水物、イソシアナート基とエチレン性二重結合とを有する化合物、塩化アシル基とエチレン性二重結合とを有する化合物等が挙げられる。
【0034】
エチレン性二重結合を有する酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、および2−ブテン−1−イルサクシニックアンハイドライド等が挙げられる。
【0035】
イソシアナート基とエチレン性二重結合とを有する化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、および1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
塩化アシル基とエチレン性二重結合とを有する化合物としては、(メタ)アクリロイルクロライド等が挙げられる。
【0036】
反応性基としてエポキシ基を有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、および3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
反応性基としてエポキシ基を有する単量体と共重合させる酸性基を有する単量体としては、上記水酸基を反応性基として有する単量体で説明したのと同様の単量体が使用でき、エポキシ基を反応性基として有する単量体と酸性基を有する単量体の共重合についても、従来公知の方法で行うことができる。
【0037】
得られた共重合体と反応させる、エポキシ基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物としては、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物等が挙げられる。かかる化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸およびこれらの塩、二塩基酸の場合はモノエステル等が挙げられる。なお、ここで生じた水酸基とカルボン酸の脱水縮合部分が環状構造の一部をなす酸無水物とを反応させ、樹脂(A−1)中にカルボキシ基を導入してもよい。
【0038】
反応性基としてカルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸およびこれらの塩、二塩基酸の場合はモノエステル等が挙げられる。なお、これらの単量体は上述した酸性基を有する単量体としても用いられる。
【0039】
反応性基としてカルボキシ基を有する単量体を用いる場合、上記のとおり、この単量体を重合させる。得られた重合体と反応させる、カルボキシ基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物として、エポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物が挙げられる。かかる化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、および3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、この場合、カルボキシ基を有する重合体と反応させる、カルボキシ基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物の量は、反応後に重合体においてカルボキシ基が酸性基として側鎖に残る量とする。
【0040】
樹脂(A−2)は、エポキシ樹脂と、後述するカルボキシ基とエチレン性二重結合とを有する化合物とを反応させた後に、多価カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより合成することができる。
【0041】
具体的には、エポキシ樹脂と、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物とを反応させることにより、エポキシ樹脂にエチレン性二重結合が導入される。次に、エチレン性二重結合が導入されたエポキシ樹脂に多価カルボン酸またはその無水物を反応させることにより、カルボキシ基を導入することができる。
【0042】
エポキシ樹脂としては特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、下式(A−2a)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、下式(A−2b)で表されるフルオレニル置換ビスフェノールA型エポキシ樹脂、または下式(A−2c)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0043】
【化2】
(式(A−2a)中、vは1〜50の整数であり、2〜10の整数が好ましい。またベンゼン環の水素原子はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、または、一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい。)
【0044】
【化3】
(式(A−2b)中、R
31、R
32、R
33およびR
34は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基であり、wは0または1〜10の整数である。)
【0045】
【化4】
(式(A−2c)中、ベンゼン環の水素原子はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、または、一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい。zは0または1〜10の整数である。)
【0046】
なお、式(A−2a)〜(A−2c)で表されるエポキシ樹脂と、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物とを反応させた後に、多価カルボン酸無水物を反応させる場合、多価カルボン酸無水物として、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物を用いることが好ましい。
【0047】
カルボキシ基とエチレン性二重結合とを有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸およびこれらの塩、二塩基酸の場合はモノエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0048】
アルカリ可溶性樹脂(AP)としては、現像時の硬化膜の剥離が抑制されて、高解像度のドットのパターンを得ることができる点、ドットが直線状である場合のパターンの直線性が良好である点、平滑な硬化膜表面が得られやすい点で、樹脂(A−2)を用いることが好ましい。なお、パターンの直線性が良好であるとは、得られる隔壁の縁に欠け等がなく直線的であることをいう。
【0049】
樹脂(A−2)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、および式(A−2a)〜(A−2c)で表されるエポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂が特に好ましい。
【0050】
樹脂(A−2)は、市販品を使用することができる。市販品としては、いずれも商品名で、KAYARAD PCR−1069、K−48C、CCR−1105、CCR−1115、CCR−1159H、CCR−1235、TCR−1025、TCR−1064H、TCR−1286H、ZAR−1535H、ZAR−2001H、ZAR−2002H、ZFR−1491H、ZFR−1492H、ZCR−1571H、ZCR−1569H、ZCR−1580H、ZCR−1581H、ZCR−1588H、ZCR−1642H、ZCR−1664H(以上、日本化薬社製)、EX1010(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0051】
アルカリ可溶性樹脂(AP)が、1分子中に有するエチレン性二重結合の数は、平均3個以上が好ましく、6個以上が特に好ましく、6〜200個が最も好ましい。エチレン性二重結合の数が上記範囲の下限値以上であると、露光部分と未露光部分とのアルカリ溶解度に差がつきやすく、より少ない露光量での微細なパターン形成が可能となる。
【0052】
アルカリ可溶性樹脂(AP)の質量平均分子量(Mw)は、1.5×10
3〜30×10
3が好ましく、2×10
3〜15×10
3が特に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、500〜20×10
3が好ましく、1.0×10
3〜10×10
3が特に好ましい。質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)が上記範囲の下限値以上であると、露光時の硬化が充分であり、上記範囲の上限値以下であると、現像性が良好である。
【0053】
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)は、特に断りのない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により、ポリスチレンを標準物質として、測定されたものをいう。
【0054】
アルカリ可溶性樹脂(AP)の酸価は、10〜300mgKOH/gが好ましく、30〜150mgKOH/gが特に好ましい。酸価が上記範囲であると、ネガ型用感光性組成物の現像性が良好になる。
【0055】
アルカリ可溶性単量体(AM)としては、例えば、酸性基とエチレン性二重結合とを有する単量体(A−3)が好ましく用いられる。酸性基およびエチレン性二重結合は、アルカリ可溶性樹脂(AP)と同様である。アルカリ可溶性単量体(AM)の酸価についても、アルカリ可溶性樹脂(AP)と同様の範囲が好ましい。
単量体(A−3)としては、2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエチルフタル酸等が挙げられる。
【0056】
ネガ型感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)の含有割合は、5〜80質量%が好ましく、10〜60質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の光硬化性および現像性が良好である。
【0057】
(光重合開始剤(B))
本発明における光重合開始剤(B)は、光重合開始剤としての機能を有する化合物であれば特に制限されず、光によりラジカルを発生する化合物が好ましい。
【0058】
光重合開始剤(B)としては、メチルフェニルグリオキシレート、9,10−フェナンスレンキノン等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類;アントラキノン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等のアミノ安息香酸類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキシド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン類等が挙げられる。
【0059】
光重合開始剤(B)のなかでも、ベンゾフェノン類、アミノ安息香酸類および脂肪族アミン類は、その他のラジカル開始剤と共に用いると、増感効果を発現することがあり好ましい。
光重合開始剤(B)としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、または2,4−ジエチルチオキサントンが好ましい。さらに、これらとベンゾフェノン類、例えば、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンとの組み合わせが特に好ましい。
光重合開始剤(B)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の光重合開始剤(B)の含有割合は、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.1〜2000質量%が好ましく、0.1〜1000質量%がより好ましい。かかる(B)の含有割合が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の光硬化性および現像性が良好である。
【0061】
(反応性紫外線吸収剤(C))
反応性紫外線吸収剤(C)としては、波長が200〜400nmの紫外線領域に吸収を有する化合物であって反応性を有する各種有機系化合物が特に制限なく使用できる。反応性紫外線吸収剤(C)としては、これらの化合物の1種を単独で用いることも、2種以上を併用することも可能である。
【0062】
反応性紫外線吸収剤(C)の反応性は、反応性紫外線吸収剤(C)が光や熱等で反応する官能基を有することで具現化される。反応性紫外線吸収剤(C)は、光で反応する官能基を有することが好ましい。反応性紫外線吸収剤(C)は反応性を有することでネガ型感光性樹脂組成物が硬化する際に、光硬化性を有するアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)等の反応性成分と反応して、得られる硬化膜や隔壁に強固に固定される。これにより、反応性紫外線吸収剤(C)の硬化膜や隔壁からのブリードアウトは低いレベルに抑制される。
【0063】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、露光時に照射される光を、反応性紫外線吸収剤(C)が適度に吸収し、さらに後述の重合禁止剤(D)が重合を制御することで、該組成物の硬化を穏やかに進行させることが可能となる。これにより、非露光部における硬化の進行が抑制され、開口部の現像残渣の減少に寄与できる。さらに、高解像度のドットのパターンが得られるとともに、パターンの直線性の向上に寄与できる。
【0064】
反応性紫外線吸収剤(C)としては、ベンゾフェノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格、シアノアクリレート骨格またはトリアジン骨格を有し、かつエチレン性二重結合を有する反応性紫外線吸収剤(C1)が好ましい。
【0065】
反応性紫外線吸収剤(C1)のうちベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては下記式(C11)で示される化合物が、ベンゾフェノン骨格を有する化合物としては下記式(C12)で示される化合物が、シアノアクリレート骨格を有する化合物としては下記式(C13)で示される化合物またはトリアジン骨格を有する化合物としては下記式(C14)で示される化合物がそれぞれ挙げられる。
【0066】
【化5】
ただし、式(C11)中、R
11〜R
19はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、または、ベンゼン環に直接もしくは酸素原子を介して結合する1価の置換もしくは非置換の炭化水素基であって、炭素原子間にエチレン性二重結合、エーテル性酸素原子およびエステル結合から選ばれる1種以上を有してもよい炭化水素基を示す。R
11〜R
19のうち少なくとも1つはエチレン性二重結合を有する。
【0068】
ただし、式(C12)中、R
20〜R
29はそれぞれ、式(C11)中のR
11〜R
19と同じ意味を示す。なお、R
20〜R
29のうち少なくとも1つはエチレン性二重結合を有する。
【0069】
式(C13)中、R’は置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、R
51〜R
60はそれぞれ、式(C11)中のR
11〜R
19と同じ意味を示す。なお、R
51〜R
60のうち少なくとも1つはエチレン性二重結合を有する。
【0070】
式(C14)中、R
30〜R
44はそれぞれ、式(C11)中のR
11〜R
19と同じ意味を示す。なお、R
30〜R
44のうち少なくとも1つはエチレン性二重結合を有する。
【0071】
式(C11)〜式(C14)において、R
11〜R
19、R
20〜R
29、R
51〜R
60、R
30〜R
44等でそれぞれ示される置換基が有するエチレン性二重結合の数は、各式について1〜6の範囲が好ましく、1〜3の範囲がさらに好ましい。
【0072】
式(C11)〜式(C14)において、エチレン性二重結合を有し、エーテル性酸素原子を有してもよい1価の置換または非置換の炭化水素基である場合のR
11〜R
60としては、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する炭素数1〜20の、直鎖もしくは分岐状のアルキレン基、芳香族炭化水素基、オキシアルキレン基等が挙げられる。
エチレン性二重結合を有しない、エーテル性酸素原子を有してもよい1価の置換または非置換の炭化水素基である場合のR
11〜R
60としては、炭素数1〜20の、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、芳香族炭化水素基、オキシアルキル基が挙げられる。
【0073】
これらのうちでも紫外線吸収剤(C1)としては、化合物(C11)が好ましい。化合物(C11)としては、式(C11)において、R
19が水酸基であって、R
16またはR
13として(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基を有する化合物(C11)が好ましい。R
11〜R
19における上記以外の基は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または塩素原子が好ましい。R
16が(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基である場合、R
13は水素原子または塩素原子であることが好ましい。
【0074】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基等が挙げられる。
【0075】
化合物(C11)として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−(メタ)アクリロイルオキシ−2H−ベンゾトリアゾ−ルなどが挙げられる。
【0076】
これらのなかでも、化合物(C11)としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0077】
化合物(C12)としては、式(C12)において、R
20および/またはR
21が水酸基であり、R
28および/またはR
23として(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基を有する化合物(C12)が好ましい。R
20〜R
29における上記以外の基は水素原子が好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基としては上記式(C11)におけるのと同様の基が挙げられる。
【0078】
化合物(C12)として具体的には、2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0079】
これらのなかでも、化合物(C12)としては、2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0080】
化合物(C13)としては、式(C13)において、R’が炭素数1〜3のアルキル基であり、R
53および/またはR
58として(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基を有する化合物(C13)が好ましい。R
51〜R
60における上記以外の基は水素原子が好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基としては上記式(C11)におけるのと同様の基が挙げられる。
【0081】
化合物(C13)として具体的には、エチル−2−シアノ−3,3−ジ[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)]アクリレート、プロピル2−シアノ−3,3−ジ[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)]、メチル2−シアノ−3,3−ジ[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)]等が挙げられる。
【0082】
これらの中でも化合物(C13)としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジ[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)]アクリレートが好ましい。
【0083】
化合物(C14)としては、式(C14)において、トリアジン骨格に結合する3個のフェニル基の少なくとも1個が、2位に水酸基を有し、4位に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基を有するフェニル基である化合物(C14)が好ましい。なお、フェニル基に結合する残りの基は水素原子が好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する基としては上記式(C11)におけるのと同様の基が挙げられる。
【0084】
化合物(C14)として具体的には、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)]−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ[2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)]−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ[2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)]−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0085】
これらのなかでも、化合物(C14)としては、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)]−1,3,5−トリアジンが好ましい。
【0086】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の反応性紫外線吸収剤(C)の含有割合は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.01〜1000質量%が好ましく、0.01〜400質量%がより好ましい。かかる(C)の含有割合が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の現像残渣が低減される、パターン直線性が良好である。
【0087】
(重合禁止剤(D))
本発明における重合禁止剤(D)は、重合禁止剤としての機能を有する化合物であれば特に制限されず、光エネルギーをよく吸収してアルカリ可溶性樹脂等(A)の反応を阻害するラジカルを発生する化合物が好ましい。本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、露光時に照射される光を、上記反応性紫外線吸収剤(C)が適度に吸収し、さらに重合禁止剤(D)が重合を制御することで、該組成物の硬化を穏やかに進行させることが可能となる。これにより、非露光部における硬化の進行が抑制され、開口部の現像残渣の減少に寄与できる。さらに、高解像度のドットのパターンが得られるとともに、パターンの直線性の向上に寄与できる。
【0088】
重合禁止剤(D)として具体的には、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ−p−ニトロフェニルメチル、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、4−メトキシフェノール、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等の一般的な反応の重合禁止剤を用いることができる。なかでも、2−メチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4−メトキシフェノール等が好ましい。さらに、保存安定性の点からハイドロキノン系重合禁止剤が好ましく、2−メチルハイドロキノンを用いるのが特に好ましい。
【0089】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の重合禁止剤(D)の含有割合は0.001〜1質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.001〜100質量%が好ましく、0.001〜20質量%がより好ましい。かかる(D)の含有割合が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の現像残渣が低減され、パターン直線性が良好である。
【0090】
(撥インク剤(E))
本発明における撥インク剤(E)は、これを含有するネガ型感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する過程で上面に移行する性質(上面移行性)および撥インク性を有する。撥インク剤(E)を用いることで、得られる硬化膜の上面を含む上層部は、撥インク剤(E)が密に存在する層(以下、「撥インク層」ということもある。)となり、硬化膜上面に撥インク性が付与される。
【0091】
上記性質を有する撥インク剤(E)としては、上面移行性と撥インク性の観点からフッ素原子を有することが好ましく、その場合、撥インク剤(E)中のフッ素原子の含有率は1〜40質量%が好ましく、5〜35質量%がより好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。撥インク剤(E)のフッ素原子の含有率が上記範囲の下限値以上であると、硬化膜上面に良好な撥インク性を付与でき、上限値以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物中の他の成分との相溶性が良好になる。
【0092】
また、撥インク剤(E)は、エチレン性二重結合を有する化合物が好ましい。撥インク剤(E)がエチレン性二重結合を有することで、上面に移行した撥インク剤(E)のエチレン性二重結合にラジカルが作用して、撥インク剤(E)同士またはあるいは撥インク剤(E)とネガ型感光性樹脂組成物が含有するエチレン性二重結合を有する他成分と(共)重合による架橋が可能となる。なお、この反応は任意に含有するチオール化合物(G)により促進される。
【0093】
これにより、ネガ型感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜の製造において、撥インク剤(E)の硬化膜の上層部、すなわち撥インク層における定着性を向上できる。本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、特にチオール化合物(G)を含有する場合には、露光の際の露光量が低い場合であっても撥インク剤(E)を撥インク層に充分に定着させることができる。撥インク剤(E)がエチレン性二重結合を有する場合は上記のとおりである。撥インク剤(E)がエチレン性二重結合を有しない場合には、撥インク剤(E)の周辺に存在するアルカリ可溶性樹脂等(A)を主体とする光硬化成分の硬化が充分に行われることで、撥インク剤(E)を充分に定着させることができる。
【0094】
通常、エチレン性二重結合がラジカル重合する場合、硬化膜や隔壁の大気に接する面ほど酸素による反応阻害を受けやすいが、チオール化合物(G)によるラジカル反応は酸素による阻害はほとんど受けないため、低露光量での撥インク剤(E)の定着に特に有利である。さらに、隔壁製造においては、現像を行う際に、撥インク剤(E)が撥インク層から脱離したり、撥インク層の上面が剥がれたりするのを充分に抑制できる。
【0095】
撥インク剤(E)としては、例えば、加水分解性シラン化合物の部分加水分解縮合物が挙げられる。加水分解性シラン化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。加水分解性シラン化合物の部分加水分解縮合物からなり、かつフッ素原子を有する撥インク剤(E)として、具体的には、以下の撥インク剤(E1)が挙げられる。フッ素原子を有する撥インク剤(E)として、主鎖が炭化水素鎖であり、側鎖にフッ素原子を含む化合物からなる撥インク剤(E2)を用いてもよい。
撥インク剤(E1)および撥インク剤(E2)は、単独で、または組み合わせて用いられる。本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、耐紫外線/オゾン性の点に優れる点で、特に撥インク剤(E1)を用いることが好ましい。
【0096】
<撥インク剤(E1)>
撥インク剤(E1)は、加水分解性シラン化合物混合物(以下、「混合物(M)」ともいう。)の部分加水分解縮合物である。該混合物(M)は、フルオロアルキレン基および/またはフルオロアルキル基と加水分解性基とを有する加水分解性シラン化合物(以下、「加水分解性シラン化合物(s1)」ともいう。)を必須成分として含み、任意に加水分解性シラン化合物(s1)以外の加水分解性シラン化合物を含む。混合物(M)が任意に含有する加水分解性シラン化合物としては、以下の加水分解性シラン化合物(s2)〜(s4)が挙げられる。混合物(M)が任意に含有する加水分解性シラン化合物としては、加水分解性シラン化合物(s2)が特に好ましい。
【0097】
加水分解性シラン化合物(s2);ケイ素原子に4個の加水分解性基が結合した加水分解性シラン化合物。
加水分解性シラン化合物(s3);エチレン性二重結合を有する基と加水分解性基とを有し、フッ素原子を含まない加水分解性シラン化合物。
加水分解性シラン化合物(s4);ケイ素原子に結合する基として炭化水素基と加水分解性基のみを有する加水分解性シラン化合物。
以下、加水分解性シラン化合物(s1)〜(s4)について説明する。
【0098】
<1>加水分解性シラン化合物(s1)
加水分解性シラン化合物(s1)を用いることで、撥インク剤(E1)はフッ素原子をフルオロアルキレン基および/またはフルオロアルキル基の形で有し、優れた上面移行性と撥インク性を有する。加水分解性シラン化合物(s1)が有するこれらの性質をより高いレベルとするためには、加水分解性シラン化合物(s1)は、フルオロアルキル基、ペルフルオロアルキレン基およびペルフルオロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有することがより好ましく、ペルフルオロアルキル基を有することが特に好ましい。また、エーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキル基も好ましい。すなわち、加水分解性シラン化合物(s1)として最も好ましい化合物は、ペルフルオロアルキル基および/またはエーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキル基を有する化合物である。
【0099】
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアナート基、アミノ基およびアミノ基の少なくとも1つの水素がアルキル基で置換された基等が挙げられる。加水分解反応により水酸基(シラノール基)となり、さらに分子間で縮合反応してSi−O−Si結合を形成する反応が円滑に進みやすい点から、炭素原子数1〜4のアルコキシ基およびハロゲン原子が好ましく、メトキシ基、エトキシ基および塩素原子がより好ましく、メトキシ基およびエトキシ基が特に好ましい。
加水分解性シラン化合物(s1)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0100】
加水分解性シラン化合物(s1)としては、下式(ex−1)で表される化合物が好ましい。
(A−R
F11)
a−Si(R
H11)
bX
11(4−a−b) …(ex−1)
式(ex−1)中、各記号は以下のとおりである。
R
F11は、少なくとも1つのフルオロアルキレン基を含む、エーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜16の2価の有機基である。
R
H11は炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
aは1または2、bは0または1、a+bは1または2である。
Aはフッ素原子または下式(Ia)で表される基である。
−Si(R
H12)
cX
12(3−c) …(Ia)
R
H12は炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
cは0または1である。
X
11およびX
12は加水分解性基である。
X
11が複数個存在する場合、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
X
12が複数個存在する場合、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
A−R
F11が複数個存在する場合、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
【0101】
化合物(ex−1)は、2または3官能性の加水分解性シリル基を1個または2個有する含フッ素加水分解性シラン化合物である。
【0102】
R
H11およびR
H12は、炭素原子数1〜3の炭化水素基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(ex−1)中、aが1であり、bが0または1であることが特に好ましい。
X
11およびX
12の具体例および好ましい様態は上記のとおりである。
【0103】
加水分解性シラン化合物(s1)としては、下式(ex−1a)で表される化合物が特に好ましい。
T−R
F12−Q
11−SiX
113 …(ex−1a)
式(ex−1a)中、各記号は以下のとおりである。
R
F12は炭素原子数2〜15のエーテル性酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルキレン基である。
Tはフッ素原子または下式(Ib)で表される基である。
−Q
12−SiX
123 …(Ib)
X
11およびX
12は加水分解性基である。
3個のX
11は互いに異なっていても同一であってもよい。
3個のX
12は互いに異なっていても同一であってもよい。
Q
11およびQ
12は炭素原子数1〜10のフッ素原子を含まない2価の有機基を示す。
【0104】
式(ex−1a)においてTがフッ素原子である場合、R
F12は、炭素原子数4〜8のペルフルオロアルキレン基、および、炭素原子数4〜10のエーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素原子数4〜8のペルフルオロアルキレン基がより好ましく、炭素原子数6のペルフルオロアルキレン基が特に好ましい。
また、式(ex−1a)においてTが基(Ib)である場合、R
F12は、炭素原子数3〜15のペルフルオロアルキレン基、および、炭素原子数3〜15のエーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0105】
R
F12が上記例示した基であると、撥インク剤(E1)が良好な撥インク性を有し、かつ、化合物(ex−1a)は溶媒への溶解性に優れる。
【0106】
R
F12の構造としては、直鎖構造、分岐構造、環構造、および部分的に環を有する構造等が挙げられ、直鎖構造が好ましい。
【0107】
R
F12の具体例としては、以下の基が挙げられる。
−(CF
2)
4−、−(CF
2)
6−、−(CF
2)
8−、
−CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2−、−CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2−、−CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2−、−CF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2OCF
2CF
2−。
−CF
2CF
2CF
2OCF
2−、−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)−、−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2−、−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)−、−CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2−、−CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)−、−CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)−。
【0108】
Q
11およびQ
12は、右側の結合手にSiが、左側の結合手にR
F12がそれぞれ結合するとして表示した場合、具体的には、−(CH
2)
i1−(i1は1〜5の整数。)、−CH
2O(CH
2)
i2−(i2は1〜4の整数。)、−SO
2NR
1−(CH
2)
i3−(R
1は水素原子、メチル基、またはエチル基、i3は1〜4の整数であり、R
1と(CH
2)
i3との炭素原子数の合計は4以下の整数である。)、−(C=O)−NR
1−(CH
2)
i4−(R
1は上記同様であり、i4は1〜4の整数であり、R
1と(CH
2)
i4との炭素原子数の合計は4以下の整数である。)で表される基が好ましい。Q
11およびQ
12としては、i1が2〜4の整数である−(CH
2)
i1−がより好ましく、−(CH
2)
2−が特に好ましい。
【0109】
なお、R
F12がエーテル性酸素原子を含まないペルフルオロアルキレン基である場合、Q
11およびQ
12としては、−(CH
2)
i1−で表される基が好ましい。i1は2〜4の整数がより好ましく、i1は2が特に好ましい。
R
F12がエーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキル基である場合、Q
11およびQ
12としては、−(CH
2)
i1−、−CH
2O(CH
2)
i2−、−SO
2NR
1−(CH
2)
i3−、および−(C=O)−NR
1−(CH
2)
i4−で表される基が好ましい。この場合においても、−(CH
2)
i1−がより好ましく、i1が2〜4の整数がさらに好ましく、i1は2が特に好ましい。
【0110】
Tがフッ素原子の場合、化合物(ex−1a)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
F(CF
2)
4CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
F(CF
2)
6CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
F(CF
2)
6CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
F(CF
2)
8CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
F(CF
2)
3OCF(CF
3)CF
2O(CF
2)
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
F(CF
2)
2O(CF
2)
2O(CF
2)
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3。
【0111】
Tが基(Ib)である場合、化合物(ex−1a)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
(CH
3O)
3SiCH
2CH
2(CF
2)
4CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3SiCH
2CH
2(CF
2)
6CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3SiCH
2CH
2(CF
2)
6CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3SiCH
2CH
2(CF
2)
2OCF
2(CF
3)CFO(CF
2)
2OCF(CF
3)CF
2O(CF
2)
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3。
【0112】
本発明において、化合物(ex−1a)としては、なかでも、F(CF
2)
6CH
2CH
2Si(OCH
3)
3およびF(CF
2)
3OCF(CF
3)CF
2O(CF
2)
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3が特に好ましい。
【0113】
混合物(M)における加水分解性シラン化合物(s1)の含有割合は、該混合物から得られる部分加水分解縮合物におけるフッ素原子の含有率が1〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%となる割合であることが好ましい。加水分解性シラン化合物(s1)の含有割合が上記範囲の下限値以上であると、硬化膜の上面に良好な撥インク性を付与でき、上限値以下であると、該混合物中の他の加水分解性シラン化合物との相溶性が良好になる。
【0114】
<2>加水分解性シラン化合物(s2)
本発明における混合物(M)に加水分解性シラン化合物(s2)を含ませることで、撥インク剤(E1)を含むネガ型感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜において、撥インク剤(E1)が上面移行した後の造膜性を高められる。すなわち、加水分解性シラン化合物(s2)中の加水分解性基の数が多いことから、上面移行した後に撥インク剤(E1)同士が良好に縮合し、上面全体に薄い膜を形成して撥インク層となると考えられる。
また、混合物(M)に加水分解性シラン化合物(s2)を含ませることで、撥インク剤(E1)は炭化水素系の溶媒に溶解しやすくなる。
加水分解性シラン化合物(s2)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0115】
加水分解性基としては、加水分解性シラン化合物(s1)の加水分解性基と同様のものを用いることができる。
【0116】
加水分解性シラン化合物(s2)は、下式(ex−2)で表すことができる。
SiX
24 …(ex−2)
式(ex−2)中、X
2は加水分解性基を示し、4個のX
2は互いに異なっていても同一であってもよい。X
2としては、前記X
11およびX
12と同様の基が用いられる。
【0117】
化合物(ex−2)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。また、化合物(ex−2)として、必要に応じてその複数個を予め部分加水分解縮合して得た部分加水分解縮合物を用いてもよい。
Si(OCH
3)
4、Si(OC
2H
5)
4、
Si(OCH
3)
4の部分加水分解縮合物、
Si(OC
2H
5)
4の部分加水分解縮合物。
【0118】
混合物(M)における加水分解性シラン化合物(s2)の含有割合は、加水分解性シラン化合物(s1)の1モルに対して、0.01〜5モルが好ましく、0.05〜3モルが特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると撥インク剤(E1)の造膜性が良好であり、上限値以下であると撥インク剤(E1)の撥インク性が良好である。
【0119】
<3>加水分解性シラン化合物(s3)
本発明における混合物(M)に、加水分解性シラン化合物(s3)を含ませることで、エチレン性二重結合を有する基を介して撥インク剤(E1)同士あるいは撥インク剤(E1)とネガ型感光性樹脂組成物が含有するエチレン性二重結合を有する他成分との(共)重合が可能となり好ましい。これにより、上に説明したとおり、撥インク層における撥インク剤(E1)の定着性を高める効果が得られる。
【0120】
加水分解性シラン化合物(s3)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
加水分解性基としては、加水分解性シラン化合物(s1)の加水分解性基と同様のものを用いることができる。
エチレン性二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基およびビニルフェニル基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0121】
加水分解性シラン化合物(s3)としては、下式(ex−3)で表される化合物が好ましい。
(Y−Q
3)
g−Si(R
H3)
hX
3(4−g−h) …(ex−3)
式(ex−3)中の記号は、以下のとおりである。
Yはエチレン性二重結合を有する基である。
Q
3は炭素原子数1〜6のフッ素原子を含まない2価の有機基である。
R
H3は炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
X
3は加水分解性基である。
gは1または2、hは0または1、g+hは1または2である。
Y−Q
3が複数個存在する場合、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
X
3が複数個存在する場合、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
【0122】
R
H3としては、前記R
H11およびR
H12と同様の基が用いられる。
X
3としては、前記X
11およびX
12と同様の基が用いられる。
【0123】
Yとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基およびビニルフェニル基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
Q
3の具体例としては、炭素原子数2〜6のアルキレン基およびフェニレン基等が挙げられる。なかでも、−(CH
2)
3−が好ましい。
gが1であり、hが0または1であることが好ましい。
化合物(ex−3)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0124】
化合物(ex−3)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、
CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、
CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、
[CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3]CH
3Si(OCH
3)
2、
[CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3]CH
3Si(OC
2H
5)
2。
【0125】
混合物(M)における加水分解性シラン化合物(s3)の含有割合は、加水分解性シラン化合物(s1)の1モルに対して、0.1〜5モルが好ましく、0.5〜4モルが特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、撥インク剤(E1)の上面移行性が良好であり、また、上面移行後に上面を含む撥インク層において撥インク剤(E1)の定着性が良好であり、さらに、撥インク剤(E1)の貯蔵安定性が良好である。上限値以下であると撥インク剤(E1)の撥インク性が良好である。
【0126】
<4>加水分解性シラン化合物(s4)
本発明の混合物(M)において加水分解性シラン化合物(s2)を用いる場合、ネガ型感光性樹脂組成物を硬化してなる隔壁において、その上面の端部に盛り上がりが形成される場合がある。
加水分解基の数の多い加水分解性シラン化合物(s2)によって生成されるシラノール基同士の反応により、撥インク剤(E1)の造膜性が増す。しかしながら、その反応性が高いが故に、上記盛り上がりが起こると考えられる。そして、加水分解性シラン化合物(s2)の一部を加水分解基の数の少ない加水分解性シラン化合物(s4)に置き換えることで、シラノール基同士の反応が抑えられ、上記盛り上がりの発生が抑えられると考えられる。
【0127】
加水分解性シラン化合物(s4)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
加水分解性基としては、加水分解性シラン化合物(s1)の加水分解性基と同様のものを用いることができる。
【0128】
加水分解性シラン化合物(s4)としては、下式(ex−4)で表される化合物が好ましい。
(R
H4)
j−SiX
4(4−j) …(ex−4)
式(ex−4)中、各記号は以下のとおりである。
R
H4は炭素原子数1〜20の炭化水素基である。
X
4は加水分解性基である。
jは1〜3の整数であり、好ましくは2または3である。
R
H4が複数個存在する場合、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
X
4が複数個存在する場合、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
【0129】
R
H4としては、jが1の場合には、炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基等が好ましい。jが2または3の場合には、R
H4は炭素原子数1〜6の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜3の炭化水素基がより好ましい。
X
4としては、前記X
11およびX
12と同様の基が用いられる。
【0130】
化合物(ex−4)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。なお、式中Phはフェニル基を示す。
(CH
3)
3−Si−OCH
3、(CH
3CH
2)
3−Si−OC
2H
5、(CH
3)
3−Si−OC
2H
5、(CH
3CH
2)
3−Si−OCH
3、(CH
3)
2−Si−(OCH
3)
2、(CH
3)
2−Si−(OC
2H
5)
2、(CH
3CH
2)
2−Si−(OC
2H
5)
2、(CH
3CH
2)
2−Si−(OCH
3)
2、Ph−Si(OC
2H
5)
3、Ph−Si(OCH
3)
3、C
10H
21−Si(OCH
3)
3。
【0131】
混合物(M)における加水分解性シラン化合物(s4)の含有割合は、加水分解性シラン化合物(s1)の1モルに対して、0.05〜5モルが好ましく、0.3〜3モルが特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、隔壁上面の端部の盛り上がりを抑制できる。上限値以下であると撥インク剤(E1)の撥インク性が良好である。
【0132】
<5>その他の加水分解性シラン化合物
混合物(M)は、任意に加水分解性シラン化合物(s1)〜(s4)以外の加水分解性シラン化合物を1種または2種以上含むことができる。
その他の加水分解性シラン化合物としては、メルカプト基と加水分解性基とを有し、フッ素原子を含まない加水分解性シラン化合物、エポキシ基と加水分解性基とを有し、フッ素原子を含有しない加水分解性シラン化合物、オキシアルキレン基と加水分解性基を有し、フッ素原子を含まない加水分解性シラン化合物等が挙げられる。
【0133】
具体的には、例えば、HS−(CH
2)
3−Si(OCH
3)
3、HS−(CH
2)
3−Si(CH
3)(OCH
3)
2、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、CH
3O(C
2H
4O)
kSi(OCH
3)
3(ポリオキシエチレン基含有トリメトキシシラン)(ここで、kは例えば約10である。)等が挙げられる。
【0134】
<6>撥インク剤(E1)
撥インク剤(E1)は、混合物(M)の部分加水分解縮合物である。撥インク剤(E1)の一例として、化合物(ex−1a)を含み、化合物(ex−2)〜(ex−4)を任意で含み、化合物(ex−1a)中の基Tがフッ素原子である混合物(M)の部分加水分解縮合物である、撥インク剤(E11)の平均組成式を下式(II)に示す。
【0135】
[T−R
F12−Q
11−SiO
3/2]
n1・[SiO
2]
n2・[(Y−Q
3)
g−Si(R
H3)
hSiO
(4−g−h)/2]
n3[(R
H4)
j−SiO
(4−j)/2]
n4 …(II)
式(II)中、n1〜n4は構成単位の合計モル量に対する各構成単位のモル分率を示す。n1>0、n2≧0、n3≧0、n4≧0、n1+n2+n3+n4=1である。その他の各符号は、上述のとおりである。ただし、Tはフッ素原子である。
【0136】
なお、撥インク剤(E11)は、実際は加水分解性基またはシラノール基が残存した生成物(部分加水分解縮合物)であるので、この生成物を化学式で表すことは困難である。式(II)で表される平均組成式は、撥インク剤(E11)において加水分解性基またはシラノール基の全てがシロキサン結合となったと仮定した場合の化学式である。また、式(II)において、化合物(ex−1a)、(ex−2)〜(ex−4)にそれぞれ由来する単位は、ランダムに配列していると推測される。
【0137】
式(II)で表される平均組成式中の、n1:n2:n3:n4は混合物(M)における化合物(ex−1a)、(ex−2)〜(ex−4)の仕込み組成と一致する。
各成分のモル比は、各成分の効果のバランスから設計される。
n1は、撥インク剤(E11)におけるフッ素原子の含有率が上記好ましい範囲となる量において、0.02〜0.4が好ましい。
n2は、0〜0.98が好ましく、0.05〜0.6が特に好ましい。
n3は、0〜0.8が好ましく、0.2〜0.5が特に好ましい。
n4は、0〜0.5が好ましく、0.05〜0.3が特に好ましい。
なお、上記各成分の好ましいモル比は、化合物(ex−1a)中のTが基(Ib)である場合も同様である。
【0138】
また、上記各成分の好ましいモル比は、混合物(M)が加水分解性シラン化合物(s1)を含有し、加水分解性シラン化合物(s2)〜(s4)を任意で含む場合においても、同様に適用できる。すなわち、撥インク剤(E1)を得るための混合物(M)における加水分解性シラン化合物(s1)〜(s4)の好ましい仕込み量は、それぞれ上記n1〜n4の好ましい範囲に相当する。
【0139】
撥インク剤(E1)の質量平均分子量(Mw)は、500以上が好ましく、1,000,000未満が好ましく、10,000未満が特に好ましい。
質量平均分子量(Mw)が下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する際に、撥インク剤(E1)が上面移行しやすい。上限値未満であると、撥インク剤(E1)の溶媒への溶解性が良好になる。
撥インク剤(E1)の質量平均分子量(Mw)は、製造条件により調節できる。
【0140】
撥インク剤(E1)は、上述した混合物(M)を、公知の方法により加水分解および縮合反応させることで製造できる。
この反応には、通常用いられる塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等の無機酸、あるいは、酢酸、シュウ酸およびマレイン酸等の有機酸を触媒として用いることが好ましい。また、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ触媒を用いてもよい。
上記反応には公知の溶媒を用いることができる。
上記反応で得られる撥インク剤(E1)は、溶媒とともに溶液の性状でネガ型感光性樹脂組成物に配合してもよい。
【0141】
<撥インク剤(E2)>
撥インク剤(E2)は、主鎖が炭化水素鎖であり、フッ素原子を有する側鎖を含む化合物である。撥インク剤(E2)の質量平均分子量(Mw)は、100〜1,000,000が好ましく、5,000〜100,000が特に好ましい。質量平均分子量(Mw)が下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する際に、撥インク剤(E2)が上面移行しやすい。上限値未満であると、撥インク剤(E2)の溶媒への溶解性が良好になる。
【0142】
撥インク剤(E2)は、エーテル性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基および/またはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基を有する側鎖を含む重合体であることが好ましい。
【0143】
フルオロアルキル基は直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
エーテル性酸素原子を含まないフルオロアルキル基の具体例としては、以下の構造が挙げられる。
−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CHF
2、−(CF
2)
2CF
3、−(CF
2)
3CF
3、−(CF
2)
4CF
3、−(CF
2)
5CF
3、−(CF
2)
6CF
3、−(CF
2)
7CF
3、−(CF
2)
8CF
3、−(CF
2)
9CF
3、−(CF
2)
11CF
3、−(CF
2)
15CF
3。
【0144】
エーテル性酸素原子を含むフルオロアルキル基の具体例としては、以下の構造が挙げられる。
−CF(CF
3)O(CF
2)
5CF
3、
−CF
2O(CF
2CF
2O)
r1CF
3、
−CF(CF
3)O(CF
2CF(CF
3)O)
r2C
6F
13、
および−CF(CF
3)O(CF
2CF(CF
3)O)
r3C
3F
7。
上記式中、r1は1〜8の整数、r2は1〜4の整数、r3は1〜5の整数である。
【0145】
フルオロアルキル基としては、撥インク性が良好になる点で、ペルフルオロアルキル基が好ましい。
フルオロアルキル基の炭素原子数は4〜15であることが好ましい。フルオロアルキル基の炭素原子数が4〜15であれば、撥インク性に優れ、また、撥インク剤(E2)を製造する際に、フルオロアルキル基を有する単量体と後述する該単量体以外の単量体との相溶性が良好となる。
【0146】
撥インク剤(E2)としては、フルオロアルキル基を含む重合単位を有する重合体であることが好ましい。フルオロアルキル基を有する重合単位は、フルオロアルキル基を有する重合性単量体を重合させることにより重合体に導入することが好ましい。また、反応部位を有する重合体に適宜化合物を反応させる各種変性方法によって、フルオロアルキル基を重合体に導入することもできる。
【0147】
撥インク剤(E2)の主鎖を構成する炭化水素鎖として、具体的には、エチレン性二重結合を有する単量体の重合で得られる主鎖、−Ph−CH
2−(ただし、「Ph」はベンゼン骨格を示す。)の繰り返し単位からなるノボラック型の主鎖等が挙げられる。
撥インク剤(E2)を、エチレン性二重結合を有する単量体の重合で得る場合には、エチレン性二重結合を有するとともにフルオロアルキル基を有する単量体を単独で、または必要に応じてその他のエチレン性二重結合を有する単量体と重合させればよい。以下、撥インク剤(E2)の主鎖が、エチレン性二重結合を有する単量体の重合で得られる主鎖の場合について説明する。
【0148】
エチレン性二重結合を有するとともにフルオロアルキル基を有する単量体としては、CH
2=CR
4COOR
5R
f、CH
2=CR
4COOR
6NR
4SO
2R
f、CH
2=CR
4COOR
6NR
4COR
f、CH
2=CR
4COOCH
2CH(OH)R
5R
fおよびCH
2=CR
4CR
4=CFR
fが挙げられる。
【0149】
上記式中、R
fはフルオロアルキル基を、R
4は水素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子またはメチル基を、R
5は単結合または炭素数1〜6の2価有機基を、R
6は炭素数1〜6の2価有機基を、それぞれ示す。R
fが示すフルオロアルキル基の好ましい態様は上記と同様である。R
4が示すハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0150】
R
5、R
6の具体例としては、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH(CH
3)−、−CH
2CH
2CH
2−、−C(CH
3)
2−、−CH(CH
2CH
3)−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
2CH
2CH
3)−、−CH
2(CH
2)
3CH
2−および−CH(CH
2CH(CH
3)
2)−が挙げられる。
上記の重合性単量体は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0151】
撥インク剤(E2)は、撥インク剤(E2)のアルカリ可溶性が良好となる点で、酸性基を有する側鎖を含む重合体であることが好ましい。
なお、フルオロアルキル基を有する側鎖に酸性基が含まれていてもよい。また、フルオロアルキル基を有する側鎖とは別に、酸性基を有し、フルオロアルキル基を有しない側鎖があってもよい。
酸性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの酸性基またはその塩が好ましい。
【0152】
撥インク剤(E2)は、光架橋性を有し、ネガ型感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜の製造過程において、硬化膜の上層部において互いにあるいはネガ型感光性樹脂組成物が含有するエチレン性二重結合を有する他成分と結合することで、撥インク剤(E2)の定着性を向上できる点で、エチレン性二重結合を有する側鎖を含む重合体であることが好ましい。
【0153】
1つの側鎖に2以上のエチレン性二重結合を含む重合体が特に好ましい。
なお、フルオロアルキル基を有する側鎖にエチレン性二重結合が含まれていてもよい。また、フルオロアルキル基を有する側鎖とは別に、エチレン性二重結合を有し、フルオロアルキル基を有しない側鎖があってもよい。エチレン性二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基およびビニルフェニル基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0154】
撥インク剤(E2)は、オキシアルキレン基を有する側鎖を含む重合体であってもよい。オキシアルキレン基は、複数のオキシアルキレン基が連結したポリオキシアルキレン鎖(POA鎖)の形態で、含まれていてもよい。
【0155】
オキシアルキレン基自体は光架橋性を有しないが、オキシアルキレン基を有する撥インク剤(E2)は、エチレン性二重結合を有する場合と同様に、硬化膜の製造過程において上層部で互いにあるいはネガ型感光性樹脂組成物が含有する他成分と結合することで、撥インク剤(E2)の定着性を向上できる。オキシアルキレン基は親水性を有するので、現像液に対する濡れ性を高める効果もある。
なお、フルオロアルキル基を有する側鎖にオキシアルキレン基が含まれていてもよい。また、フルオロアルキル基を有する側鎖とは別に、オキシアルキレン基を有し、フルオロアルキル基を有しない側鎖があってもよい。
【0156】
撥インク剤(E2)は、酸性基を有する側鎖、エチレン性二重結合を有する側鎖、およびオキシアルキレン基を有する側鎖のうち1種以上の側鎖を含むことができる。1つの側鎖に、酸性基、エチレン性二重結合、およびオキシアルキレン基のうち2種以上が含まれていてもよい。
【0157】
撥インク剤(E2)は、酸性基を有する側鎖、エチレン性二重結合を有する側鎖、およびオキシアルキレン基を有する側鎖以外の任意の基を有する側鎖を含むことができる。
【0158】
酸性基を有し、フルオロアルキル基を有しない側鎖の導入方法としては、フルオロアルキル基を有する単量体と、酸性基を有し、フルオロアルキル基を有しない単量体とを共重合させる方法が好ましい。また、反応部位を有する重合体に適宜化合物を反応させる各種変性方法によって、酸性基を重合体に導入することもできる。
【0159】
カルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸およびこれらの塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0160】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンおよびp−ヒドロキシスチレンが挙げられる。またこれらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル、エチルおよびn−ブチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシおよびn−ブトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、またはアミド基に置換された化合物が挙げられる。
【0161】
スルホ基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩が挙げられる。
【0162】
反応部位を有する重合体に適宜化合物を反応させる各種変性方法によって、カルボキシ基を重合体に導入する方法としては、例えば、1)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に酸無水物を反応させる方法、2)エチレン性二重結合を有する酸無水物をあらかじめ共重合させ、後に水酸基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0163】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
水酸基を有する単量体は、末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖(POA鎖)を有する単量体であってもよい。
例えば、CH
2=CHOCH
2C
6H
10CH
2O(C
2H
4O)
k1H、CH
2=CHOC
4H
8O(C
2H
4O)
k1H、CH
2=CHCOOC
2H
4O(C
2H
4O)
k1H、CH
2=C(CH
3)COOC
2H
4O(C
2H
4O)
k1H、CH
2=CHCOOC
2H
4O(C
2H
4O)
k2(C
3H
6O)
k3HおよびCH
2=C(CH
3)COOC
2H
4O(C
2H
4O)
k2(C
3H
6O)
k3H等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記式中、k1は1〜100の整数、k2は0〜100の整数、k3は1〜100の整数、k2+k3は1〜100である。
【0165】
酸無水物としては、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物が挙げられる。無水ピバリン酸および無水トリメリット酸が挙げられる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、無水3−メチルフタル酸、無水メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、無水cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、2−ブテン−1−イルスシニックアンハイドライド等のエチレン性二重結合を有する酸無水物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0166】
水酸基を有する化合物としては、1つ以上の水酸基を有している化合物であればよく、前記に示した水酸基を有する単量体の具体例、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノールおよび2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類が挙げられる。なかでも分子内に1個の水酸基を有する化合物が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0167】
上記方法によれば、酸性基を含む側鎖、酸性基とエチレン性二重結合を含む側鎖、あるいは酸性基とオキシアルキレン基を含む側鎖の導入が可能である。
【0168】
水酸基および酸性基を含まず、ポリオキシアルキレン鎖(POA鎖)を有する単量体、例えば、下式(POA−1)、(POA−2)で表される単量体を用いることもできる。
CH
2=CR
71−COO−W−(R
72−O)
k4−R
73 …(POA−1)
CH
2=CR
71−O−W−(R
72−O)
k4−R
73 …(POA−2)
(式(POA−1)、(POA−2)中、R
71は、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアリール基で置換されたアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数3〜20のシクロアルキル基、である。R
72は炭素原子数1〜5のアルキレン基である。R
73は炭素原子数1〜4のアルキル基である。Wは、単結合または炭素数が1〜10のフッ素原子を有しない2価の有機基である。k4は6〜30の整数である。)
【0169】
その他、所望の組成に応じて、公知の単量体および反応を適宜選択することで、酸性基を有する側鎖、エチレン性二重結合を有する側鎖、およびオキシアルキレン基を有する側鎖のうち、1種または2種以上の側鎖を含み、フッ素原子を有する側鎖、好ましくはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基および/またはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基を有する側鎖を含む重合体として撥インク剤(E2)を得ることができる。なお、この際、撥インク剤(E2)におけるフッ素原子の含有率が上記好ましい範囲となるように、用いる単量体の配合割合を適宜調整することが好ましい。
【0170】
撥インク剤(E2)の主鎖が−Ph−CH
2−の繰り返し単位からなるノボラック型の主鎖である場合、通常、主鎖を構成するベンゼン骨格(Ph)に、フッ素原子を有する側鎖を有し、および任意に酸性基を有する基、エチレン性二重結合を有する基、オキシアルキレン基が結合した重合体が撥インク剤(E2)として用いられる。上記フッ素原子を有する側鎖は、好ましくはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基および/またはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基を有する側鎖である。酸性基、エチレン性二重結合を有する基、オキシアルキレン基については、上に説明したエチレン性二重結合を有する単量体の重合で得られる主鎖を有する撥インク剤(E2)の場合と同様のものが挙げられる。なお、この場合も、撥インク剤(E2)におけるフッ素原子の含有率が上記好ましい範囲となるように、撥インク剤(E2)を分子設計することが好ましい。
【0171】
このような撥インク剤(E2)は、ベンゼン骨格にあらかじめ上記各基が導入された単量体を重合することで製造してもよく、反応部位、具体的には、水酸基、アミノ基、メルカプト基、スルホン酸基、カルボン酸基、カルボニル基、エチレン性二重結合等を有する重合体を得た後に、該反応部位に適宜化合物を反応させる変性方法によって、上記各基を重合体に導入してもよい。
【0172】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の撥インク剤(E)の含有割合は、0.01〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.03〜1.5質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.01〜500質量%が好ましく、0.01〜300質量%がより好ましい。かかる(E)の含有割合が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の上面は優れた撥インク性を有する。上記範囲の上限値以下であると、硬化膜と基材との密着性が良好になる。
【0173】
(架橋剤(F))
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が任意に含有する架橋剤(F)は、1分子中に2個以上のエチレン性二重結合を有し酸性基を有しない化合物である。ネガ型感光性樹脂組成物が架橋剤(F)を含むことにより、露光時におけるネガ型感光性樹脂組成物の硬化性が向上し、低い露光量でも硬化膜を形成することができる。
【0174】
架橋剤(F)としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、およびウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0175】
光反応性の点からは、多数のエチレン性二重結合を有することが好ましい。例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートおよびウレタンアクリレート等が好ましい。
架橋剤(F)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0176】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の架橋剤(F)の含有割合は、10〜60質量%が好ましく、20〜55質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.1〜1200質量%が好ましく、0.2〜1100質量%がより好ましい。
【0177】
(チオール化合物(G))
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が任意に含有するチオール化合物(G)は、1分子中にメルカプト基を2個以上有する化合物である。本発明のネガ型感光性樹脂組成物がチオール化合物(G)を含有すれば、露光時に光重合開始剤(B)から生成したラジカルによりチオール化合物(G)のラジカルが生成してアルカリ可溶性樹脂等(A)やネガ型感光性樹脂組成物が含有するその他成分のエチレン性二重結合に作用する、いわゆるエン−チオール反応が生起する。このエン−チオール反応は、通常のエチレン性二重結合がラジカル重合するのと異なり、酸素による反応阻害を受けないため、高い連鎖移動性を有し、さらに重合と同時に架橋も行うため、硬化物となる際の収縮率も低く、均一なネットワークが得られやすい等の利点を有する。
【0178】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が、チオール化合物(G)を含有する場合には、上述のようにして低露光量でも充分に硬化でき、特に酸素による反応阻害を受け易い隔壁上面を含む上層部においても光硬化が充分に行われることから隔壁上面に良好な撥インク性を付与することが可能となる。
【0179】
チオール化合物(G)中のメルカプト基は、1分子中に2〜10個含むことが好ましく、2〜8個がより好ましく、2〜5個がさらに好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物の保存安定性の観点からは、3個が特に好ましい。
【0180】
チオール化合物(G)の分子量は特に制限されない。チオール化合物(G)における、[分子量/メルカプト基数]で示されるメルカプト基当量(以下、「SH当量」ともいう。)は、低露光量での硬化性の観点から、40〜1,000が好ましく、40〜500がより好ましく、40〜250が特に好ましい。
【0181】
チオール化合物(G)としては、具体的には、トリス(2−メルカプトプロパノイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールトリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリフェノールメタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリフェノールメタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタン トリス(3−メルカプトブチレート)、2、4,6−トリメルカプト−S−トリアジン等が挙げられる。
チオール化合物(G)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0182】
ネガ型感光性樹脂組成物がチオール化合物(G)を含有する場合、その含有割合は、ネガ型感光性樹脂組成物中の全固形分が有するエチレン性二重結合の1モルに対してメルカプト基が0.0001〜1モルとなる量が好ましく、0.0005〜0.5モルがより好ましく、0.001〜0.5モルが特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.1〜1200質量%が好ましく、0.2〜1000質量%がより好ましい。かかる(G)の含有割合が上記範囲であると、低露光量においてもネガ型感光性樹脂組成物の光硬化性および現像性が良好である。
【0183】
(リン酸化合物(H))
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、得られる硬化膜における基材やITO等の透明電極材料等に対する密着性を向上させるために、任意にリン酸化合物(H)を含むことができる。
【0184】
このようなリン酸化合物(H)としては、硬化膜の基材や透明電極材料等に対する密着性を向上できるものであれば特に限定されるものではないが、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するリン酸化合物であることが好ましい。
【0185】
分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するリン酸化合物としては、リン酸(メタ)アクリレート化合物、すなわち、分子内に少なくともリン酸由来のO=P構造と、(メタ)アクリル酸系化合物由来のエチレン性不飽和二重結合である(メタ)アクリロイル基とを有する化合物やリン酸ビニル化合物が好ましい。
【0186】
本発明に用いるリン酸(メタ)アクリレート化合物としては、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタアクリロイルオキシエチル)カプロエートアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0187】
また、リン酸化合物(H)としては、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するリン酸化合物以外にも、フェニルホスホン酸などが使用できる。
【0188】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、リン酸化合物(H)として、これに分類される化合物の1種を単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0189】
ネガ型感光性樹脂組成物がリン酸化合物(H)を含有する場合、その含有割合は、ネガ型感光性樹脂組成物中の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.01〜200質量%が好ましく、0.1〜100質量%がより好ましい。かかる(H)の含有割合が上記範囲であると、得られる硬化膜と基材等との密着性が良好である。
【0190】
(着色剤(I))
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、用途に応じて、硬化膜、特には隔壁に遮光性を付与する場合に、着色剤(I)を含有する。本発明における着色剤(I)としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料およびアゾメチン系黒色顔料等の各種無機顔料または有機顔料が挙げられる。
着色剤(I)としては赤色顔料、青色顔料および緑色顔料等の有機顔料および/または無機顔料の混合物を用いることもできる。
【0191】
好ましい有機顔料の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、メチル−2−シアノアクリレート、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、C.I.ピグメントブラック1、6、7、12、20、31、C.I.ピグメントブルー15:6、ピグメントレッド254、ピグメントグリーン36、ピグメントイエロー150等が挙げられる。
【0192】
着色剤(I)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明のネガ型感光性樹脂組成物が、着色剤(I)を含有する場合には、全固形分中の着色剤(I)の含有割合は、15〜65質量%が好ましく、20〜50質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、15〜1500質量%が好ましく、20〜1000質量%がより好ましい。かかる(I)の上記範囲であると得られるネガ型感光性樹脂組成物は感度が良好であり、また、形成される隔壁は遮光性に優れる。
【0193】
(溶媒(J))
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、溶媒(J)を含有することで粘度が低減され、ネガ型感光性樹脂組成物の基材表面への塗布がしやすくなる。その結果、均一な膜厚のネガ型感光性樹脂組成物の塗膜が形成できる。
溶媒(J)としては公知の溶媒が用いられる。溶媒(J)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0194】
溶媒(J)としては、アルキレングリコールアルキルエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、アルコール類、ソルベントナフサ類等が挙げられる。なかでも、アルキレングリコールアルキルエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、およびアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよび2−プロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒がさらに好ましい。
【0195】
ネガ型感光性樹脂組成物における溶媒(J)の含有割合は、組成物全量に対して50〜99質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、65〜90質量%が特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂等(A)の100質量%に対しては、0.1〜3000質量%が好ましく、0.5〜2000質量%がより好ましい。
【0196】
(その他の成分)
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物はさらに、必要に応じて、熱架橋剤、高分子分散剤、分散助剤、シランカップリング剤、微粒子、硬化促進剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤およびハジキ防止剤等の他の添加剤を1種または2種以上含有してもよい。
【0197】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、上記各成分の所定量を混合して得られる。本発明のネガ型感光性樹脂組成物は有機EL素子用、量子ドットディスプレイ用、TFTアレイ用または薄膜太陽電池用であり、例えば、有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池に用いる硬化膜や隔壁の形成に用いることで特に効果が発揮できる。本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いれば、上面に良好な撥インク性を有する硬化膜、特には隔壁の製造が可能である。また、撥インク剤(E)のほとんどは、撥インク層に充分に定着しており、撥インク層よりも下の部分の隔壁に低濃度で存在する撥インク剤(E)も隔壁が充分に光硬化しているため、現像時に、撥インク剤(E)が隔壁で囲まれた開口部内にマイグレートしにくく、よってインクが均一に塗布できる開口部が得られる。
【0198】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、また、露光時に照射される光を、反応性紫外線吸収剤(C)が適度に吸収し、さらに重合禁止剤(D)が重合を制御することで、該組成物の硬化を穏やかに進行させることが可能となる。これにより、非露光部における硬化の進行が抑制され、開口部の現像残渣の減少に寄与できる。さらに、高解像度のドットのパターンが得られるとともに、パターンの直線性の向上に寄与できる。
【0199】
また、ネガ型感光性樹脂組成物が硬化する際に、反応性紫外線吸収剤(C)は光硬化性を有するアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)等の反応性成分と反応して、得られる硬化膜や隔壁に強固に固定される。これにより、反応性紫外線吸収剤(C)の硬化膜や隔壁からのブリードアウトは低いレベルに抑制されアウトガスの発生量が低減される。
【0200】
[樹脂硬化膜および隔壁]
本発明の実施形態の樹脂硬化膜は、上記の本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成される。本発明の実施形態の樹脂硬化膜は、例えば、基板等の基材の表面に本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して溶媒等を除去した後、露光することで硬化して得られる。本発明の実施形態の樹脂硬化膜は光学素子、特には、有機EL素子や量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池に用いられる場合に特に顕著な効果が発揮される。
【0201】
本発明の隔壁は、基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成された上記の本発明の硬化膜からなる隔壁である。隔壁は、例えば、上記の樹脂硬化膜の製造において、露光前にドット形成用の区画となる部分にマスキングを施し、露光した後、現像することで得られる。現像によって、マスキングにより非露光の部分が除去されドット形成用の区画に対応する開口部が隔壁とともに形成される。本発明の実施形態の隔壁は、光学素子、特には、有機EL素子や量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池に用いられる場合に特に顕著な効果が発揮される。
【0202】
以下、本発明の実施形態の隔壁の製造方法の一例を、
図1A〜1Dを用いて説明するが、隔壁の製造方法は以下に限定されない。なお、以下の製造方法は、ネガ型感光性樹脂組成物が溶媒(J)を含有するものとして説明する。
【0203】
図1Aに示すように、基板1の一方の主面全体にネガ型感光性樹脂組成物を塗布して、塗膜21を形成する。このとき、塗膜21中には撥インク剤(E)が全体的に溶解し、均一に分散している。なお、
図1A中、撥インク剤(E)は模式的に示してあり、実際にこのような粒子形状で存在しているわけではない。
【0204】
次に、
図1Bに示すように、塗膜21を乾燥させて、乾燥膜22とする。乾燥方法としては、加熱乾燥、減圧乾燥および減圧加熱乾燥等が挙げられる。溶媒(J)の種類にもよるが、加熱乾燥の場合、加熱温度は50〜120℃が好ましい。
この乾燥過程において、撥インク剤(E)は乾燥膜の上層部に移行する。なお、ネガ型感光性樹脂組成物が、溶媒(J)を含有しない場合であっても、塗膜内で撥インク剤(E)の上面移行は同様に達成される。
【0205】
次に、
図1Cに示すように、隔壁に囲まれる開口部に相当する形状のマスキング部31を有するフォトマスク30を介して、乾燥膜22に対して光を照射し露光する。乾燥膜22を露光した後の膜を露光膜23と称す。露光膜23において、露光部23Aは光硬化しており、非露光部23Bは乾燥膜22と同様の状態である。
【0206】
照射する光としては、可視光;紫外線;遠紫外線;KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、F
2エキシマレーザ光、Kr
2エキシマレーザ光、KrArエキシマレーザ光およびAr
2エキシマレーザ光等のエキシマレーザ光;X線;電子線等が挙げられる。
照射する光としては、波長100〜600nmの光が好ましく、300〜500nmの光がより好ましく、i線(365nm)、h線(405nm)またはg線(436nm)を含む光が特に好ましい。また、必要に応じて330nm以下の光をカットしてもよい。
【0207】
露光方式としては、全面一括露光、スキャン露光等が挙げられる。同一箇所に対して複数回に分けて露光してもよい。この際、複数回の露光条件は同一でも同一でなくても構わない。
【0208】
露光量は、上記いずれの露光方式においても、例えば、5〜1,000mJ/cm
2が好ましく、5〜500mJ/cm
2がより好ましく、5〜300mJ/cm
2がさらに好ましく、5〜200mJ/cm
2が特に好ましく、5〜50mJ/cm
2が最も好ましい。なお、露光量は、照射する光の波長、ネガ型感光性樹脂組成物の組成および塗膜の厚さ等により、適宜好適化される。
【0209】
単位面積当たりの露光時間は特に制限されず、用いる露光装置の露光パワーおよび必要な露光量等から設計される。なお、スキャン露光の場合、光の走査速度から露光時間が求められる。
単位面積当たりの露光時間は通常1〜60秒程度である。
【0210】
次に、
図1Dに示すように、アルカリ現像液を用いた現像を行い、露光膜23の露光部23Aに対応する部位のみからなる隔壁4が形成される。隔壁4で囲まれた開口部5は、露光膜23において非露光部23Bが存在していた部位であり、現像により非露光部23Bが除去された後の状態を、
図1Dは示している。非露光部23Bは、上に説明したとおり、撥インク剤(E)が上層部に移行してそれより下の層にほとんど撥インク剤(E)が存在しない状態でアルカリ現像液により溶解、除去されるため、撥インク剤(E)は、開口部5にはほとんど残存しない。
【0211】
なお、
図1Dに示す隔壁4において、その上面を含む最上層は撥インク層4Aである。撥インク剤(E)がエチレン性二重結合を有する側鎖を有しない場合、露光の際に、撥インク剤(E)はそのまま最上層に高濃度に存在して撥インク層となる。露光の際、撥インク剤(E)の周辺に存在するアルカリ可溶性樹脂等(A)、さらに任意に含有するチオール化合物(G)やそれ以外の光硬化成分は、強固に光硬化して撥インク剤(E)は撥インク層に定着する。
【0212】
撥インク剤(E)がエチレン性二重結合を有する側鎖を有する場合、撥インク剤(E)は互いにおよび/または、アルカリ可溶性樹脂等(A)、さらに任意に含有するチオール化合物(G)やその他の光硬化成分とともに光硬化して、撥インク剤(E)が強固に結合した撥インク層4Aを形成する。
【0213】
上記のいずれの場合も、撥インク層4Aの下側には、主としてアルカリ可溶性樹脂等(A)および任意に含有するチオール化合物(G)、さらにそれ以外の光硬化成分が光硬化して、撥インク剤(E)をほとんど含有しない層4Bが形成される。
このようにして、撥インク剤(E)は、撥インク層4Aその下部層4Bを含む隔壁に充分に定着しているため、現像時に開口部にマイグレートすることがほとんどない。
【0214】
現像後、隔壁4をさらに加熱してもよい。加熱温度は130〜250℃が好ましい。加熱により隔壁4の硬化がより強固なものとなる。また、撥インク剤(E)は撥インク層4A内により強固に定着する。
【0215】
このようにして得られる本発明の樹脂硬化膜および隔壁4は、露光が低露光量で行われる場合であっても、上面に良好な撥インク性を有する。また、隔壁4においては、現像後、開口部5に撥インク剤(E)が存在することがほとんどなく、開口部5におけるインクの均一な塗工性を充分に確保できる。
【0216】
なお、開口部5の親インク性をより確実に得ることを目的として、上記加熱後、開口部5に存在する可能性があるネガ型感光性樹脂組成物の現像残渣等を除去するために、隔壁4付きの基板1に対して紫外線/オゾン処理を施してもよい。
【0217】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から形成される隔壁は、例えば、幅が100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。また、隣接する隔壁間の距離(パターンの幅)は300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。隔壁の高さは0.05〜50μmであることが好ましく、0.2〜10μmであることが特に好ましい。
【0218】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から形成される隔壁は、上記幅に形成された際の縁の部分に凹凸が少なく直線性に優れる。なお、隔壁における高い直線性の発現は、特に、アルカリ可溶性樹脂としてエポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とが導入された樹脂(A−2)を用いた場合に顕著である。それにより、たとえ微細なパターンであっても精度の高いパターン形成が可能となる。このような精度の高いパターン形成が行えれば、特に、有機EL素子用の隔壁として有用である。
【0219】
本発明の隔壁は、IJ法にてパターン印刷を行う際に、その開口部をインク注入領域とする隔壁として使用できる。IJ法にてパターン印刷を行う際に、本発明の隔壁を、その開口部が所望のインク注入領域と一致するように形成して用いれば、隔壁上面が良好な撥インク性を有することから、隔壁を超えて所望しない開口部すなわちインク注入領域にインクが注入されることを抑制できる。また、隔壁で囲まれた開口部は、インクの濡れ広がり性が良好であるので、インクを所望の領域に白抜け等が発生することなく均一に印刷することが可能となる。
【0220】
本発明の隔壁を用いれば、上記のとおりIJ法によるパターン印刷が精巧に行える。よって、本発明の隔壁は、ドットがIJ法で形成される基板表面に複数のドットと隣接するドット間に位置する隔壁を有する光学素子、特に有機EL素子や量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池の隔壁として有用である。
【0221】
[光学素子]
本発明の光学素子としての有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池としては、基板表面に複数のドットと隣接するドット間に位置する上記本発明の隔壁とを有する有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池である。本発明の光学素子(有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池)において、ドットはIJ法により形成されることが好ましい。
【0222】
有機EL素子とは、有機薄膜の発光層を陽極と陰極で挟んだ構造であり、本発明の隔壁は有機発光層を隔てる隔壁用途、有機TFT層を隔てる隔壁用途、塗布型酸化物半導体を隔てる隔壁用途などに用いることができる。
【0223】
また、有機TFTアレイ素子とは、複数のドットが平面視マトリクス状に配置され、各ドットに画素電極とこれを駆動するためのスイッチング素子としてTFTが設けられ、TFTのチャネル層を含む半導体層として有機半導体層が用いられる素子である。有機TFTアレイ素子は、例えば、有機EL素子あるいは液晶素子等に、TFTアレイ基板として備えられる。
【0224】
本発明の実施形態の光学素子、例えば、有機EL素子について、上記で得られた隔壁を用いて、開口部にIJ法によりドットを形成する例を以下に説明する。なお、本発明の有機EL素子等の光学素子におけるドットの形成方法は以下に限定されない。
図2Aおよび
図2Bは、上記
図1Dに示す基板1上に形成された隔壁4を用いて有機EL素子を製造する方法を模式的に示すものである。ここで、基板1上の隔壁4は、開口部5が、製造しようとする有機EL素子のドットのパターンに一致するように形成されたものである。
【0225】
図2Aに示すように、隔壁4に囲まれた開口部5に、インクジェットヘッド9からインク10を滴下して、開口部5に所定量のインク10を注入する。インクとしては、ドットの機能に合わせて、有機EL素子用として公知のインクが適宜選択して用いられる。
【0226】
次いで、用いたインク10の種類により、例えば、溶媒の除去や硬化のために、乾燥および/または加熱等の処理を施して、
図2Bに示すように、隔壁4に隣接する形で所望のドット11が形成された有機EL素子12を得る。
【0227】
本発明の実施形態の光学素子(有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池)、は、本発明の隔壁を用いることで、製造過程において隔壁で仕切られた開口部にインクがムラなく均一に濡れ広がることが可能であり、これにより精度よく形成されたドットを有する光学素子(有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイまたは薄膜太陽電池)である。
【0228】
なお、有機EL素子は、例えば、以下のように製造できるがこれに限定されない。
ガラス等の透光性基板にスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透光性電極をスパッタ法等によって成膜する。この透光性電極は必要に応じてパターニングされる。
次に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用い、塗布、露光および現像を含むフォトリソグラフィ法により、各ドットの輪郭に沿って、平面視格子状に隔壁を形成する。
次に、ドット内に、IJ法により、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層および電子注入層の材料をそれぞれ塗布および乾燥して、これらの層を順次積層する。ドット内に形成される有機層の種類および数は適宜設計される。
最後に、アルミニウム等の反射電極、またはITO等の透光性電極を蒸着法等によって形成する。
【0229】
また、量子ドットディスプレイは、例えば、以下のように製造できるがこれに限定されない。
ガラス等の透光性基板にスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透光性電極をスパッタ法等によって成膜する。この透光性電極は必要に応じてパターニングされる。
次に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用い、塗布、露光および現像を含むフォトリソグラフィ法により、各ドットの輪郭に沿って、平面視格子状に隔壁を形成する。
次に、ドット内に、IJ法により、正孔注入層、正孔輸送層、量子ドット層、正孔阻止層および電子注入層の材料をそれぞれ塗布および乾燥して、これらの層を順次積層する。ドット内に形成される有機層の種類および数は適宜設計される。
最後に、アルミニウム等の反射電極、またはITO等の透光性電極を蒸着法等によって形成する。
【0230】
さらに本発明の実施形態の光学素子は、例えば以下のように製造される、青色光変換型の量子ドットディスプレイにも応用可能である。
ガラス等の透光性基板に本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用い、各ドットの輪郭に沿って、平面視格子状に隔壁を形成する。
【0231】
次に、ドット内に、IJ法により青色光を緑色光に変換するナノ粒子溶液、青色光を赤色光に変換するナノ粒子溶液、必要に応じて青色のカラーインクを塗布、乾燥して、モジュールを作製する。青色を発色する光源をバックライトとして使用し前記モジュールをカラーフィルター代替として使用することにより、色再現性の優れた液晶ディスプレイが得られる。
【0232】
TFTアレイは、例えば、以下のように製造できるがこれに限定されない。
ガラス等の透光性基板にアルミニウムやその合金等のゲート電極をスパッタ法等によって成膜する。このゲート電極は必要に応じてパターニングされる。
【0233】
次に、窒化ケイ素等のゲート絶縁膜をプラズマCVD法等によって形成する。ゲート絶縁膜上にソース電極、ドレイン電極を形成してもよい。ソース電極およびドレイン電極は、例えば、真空蒸着やスパッタリングでアルミニウム、金、銀、銅やそれらの合金などの金属薄膜を形成し、作製することができる。ソース電極およびドレイン電極をパターニングする方法としては、金属薄膜を形成後、レジストを塗装し、露光、現像して電極を形成させたい部分にレジストを残し、その後、リン酸や王水などで露出した金属を除去、最後にレジストを除去する手法がある。また、金などの金属薄膜を形成させた場合は、予めレジストを塗装し、露光、現像して電極を形成させたくない部分にレジストを残し、その後金属薄膜を形成後、金属薄膜と共にフォトレジストを除去する手法もある。また、銀や銅等の金属ナノコロイド等を用いてインクジェット等の手法により、ソース電極およびドレイン電極を形成してもよい。
【0234】
次に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、塗布、露光および現像を含むフォトリソグラフィ法により、各ドットの輪郭に沿って、平面視格子状に隔壁を形成する。
次にドット内に半導体溶液をIJ法によって塗布し、溶液を乾燥させることによって半導体層を形成する。この半導体溶液としては有機半導体溶液、無機の塗布型酸化物半導体溶液も用いることができる。ソース電極、ドレイン電極は、この半導体層形成後にインクジェットなどの手法を用いて形成されてもよい。
最後にITO等の透光性電極をスパッタ法等によって成膜し、窒化ケイ素等の保護膜を成膜することで形成する。
【実施例】
【0235】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例1〜15が実施例であり、例16〜18が比較例である。
【0236】
各測定は以下の方法で行った。
[数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)]
分子量測定用の標準試料として市販されている重合度の異なる複数種の単分散ポリスチレン重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を、市販のGPC測定装置(東ソー社製、装置名:HLC−8320GPC)を用いて測定した。ポリスチレンの分子量と保持時間(リテンションタイム)との関係をもとに検量線を作成した。
各試料について、テトラヒドロフランで1.0質量%に希釈し、0.5μmのフィルタを通過させた後、上記装置を用いてGPCを測定した。上記検量線を用いて、GPCスペクトルをコンピュータ解析することにより、試料の数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を求めた。
【0237】
[PGMEA接触角]
静滴法により、JIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、基材上の測定表面の3ヶ所にPGMEA滴を載せ、各PGMEA滴について測定した。液滴は2μL/滴とし、測定は20℃で行った。接触角は、3測定値の平均値(n=3)から求めた。なお、PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの略号である。
【0238】
各例で用いた化合物の略語は以下の通りである。
(アルカリ可溶性樹脂等(A))
A−21: クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をアクリル酸、次いで1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸と反応させて、アクリロイル基とカルボキシル基とを導入した樹脂をヘキサンで精製した樹脂、固形分70質量%、酸価60mgKOH/g。
A−22:ビスフェノールA型エポキシ樹脂にカルボキシル基とエチレン性二重結合を導入した樹脂、固形分70質量%、酸価60mgKOH/g。
A−23:式(A−2a)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂に、エチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(固形分:70質量%、PGMEA:30質量%。MW=4000、酸価70mgKOH/g。)。
A−24:式(A−2b)で表されるエポキシ樹脂に、エチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(固形分:70質量%、PGMEA:30質量%。MW=3000、酸価50mgKOH/g。)。
【0239】
(光重合開始剤(B))
IR907:商品名;IRGACURE907、BASF社製、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン。
IR369:商品名:IRGACURE369、BASF社製、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン。
OXE01:商品名;OXE01、BASF社製、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)。
OXE02:商品名;OXE02、チバスペシャルティケミカルズ社製、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)。
【0240】
(光重合開始剤(B);非反応性紫外線吸収剤(増感剤))
EAB:4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン。
Tinuvin 329:BASF社製、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェノール。
【0241】
(反応性紫外線吸収剤(C))
C−1:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール。
【0242】
(重合禁止剤(D))
BHT:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
MHQ:2−メチルハイドロキノン
MEHQ:4−メトキシフェノール
【0243】
(撥インク剤(E)の原料としての加水分解性シラン化合物)
化合物(ex−1a)に相当する化合物(ex−11):F(CF
2)
6CH
2CH
2Si(OCH
3)
3(公知の方法で製造した。)。
化合物(ex−1a)に相当する化合物(ex−12):F(CF
2)
8CH
2CH
2Si(OCH
3)
3(公知の方法で製造した。)。
化合物(ex−1a)に相当する化合物(ex−13):F(CF
2)
4CH
2CH
2Si(OCH
3)
3(公知の方法で製造した。)。
【0244】
化合物(ex−2)に相当する化合物(ex−21):Si(OC
2H
5)
4。
【0245】
化合物(ex−3)に相当する化合物(ex−31):CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3。
化合物(ex−4)に相当する化合物(ex−41):(CH
3)
3SiOCH
3。
化合物(ex−4)に相当する化合物(ex−42):トリメトキシフェニルシラン。
化合物(ex−4)に相当する化合物(ex−43):トリエトキシフェニルシラン。
【0246】
(撥インク剤(E2)の原料)
C6FMA:CH
2=C(CH
3)COOCH
2CH
2(CF
2)
6F
C4α−Clアクリレート:CH
2=C(Cl)COOCH
2CH
2(CF
2)
4F
MAA:メタクリル酸
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
IBMA:イソボルニルメタクリレート
V−65:(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))
n−DM:n−ドデシルメルカプタン
BEI:1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート。
AOI:2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート。
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート
TBQ:t−ブチル−p−ベンゾキノン
MEK:2−ブタノン
【0247】
(架橋剤(F))
F−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
F−2:ペンタエリスリトールアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、トリペンタエリスリトールアクリレート、テトラペンタエリスリトールアクリレートの混合品。
【0248】
(チオール化合物(G))
PE−1:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)。
【0249】
(リン酸化合物(H))
H−1:モノ(2−メタアクリロイルオキシエチル)カプロエートアシッドホスフェート。
H−2:フェニルホスホン酸。
【0250】
(溶媒(J))
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
EDM:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル。
IPA:2−プロパノール。
EDGAC:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
【0251】
[撥インク剤(E)の合成]
撥インク剤(E1)および撥インク剤(E2)を以下のとおり合成、または準備した。
【0252】
(合成例1:撥インク剤(E1−1)液の調製)
撹拌機を備えた1,000cm
3の三口フラスコに、化合物(ex−11)、化合物(ex−21)、化合物(ex−31)を入れて、加水分解性シラン化合物混合物を得た。次いで、この混合物にPGMEを入れて、原料溶液とした。
【0253】
得られた原料溶液に、1%塩酸水溶液を滴下した。滴下終了後、40℃で5時間撹拌して、撥インク剤(E1−1)のPGME溶液(撥インク剤(E1−1)濃度:10質量%、以下、「撥インク剤(E1−1)溶液」ともいう。)を得た。
【0254】
なお、反応終了後、反応液の成分をガスクロマトグラフィを使用して測定し、原料としての各化合物が検出限界以下になったことを確認した。
得られた撥インク剤(E1−1)の製造に用いた原料加水分解性シラン化合物の仕込み量等を表1に示す。
【0255】
(合成例2〜10:撥インク剤(E1−2)〜(E1−10)の合成)
原料組成を表1に示すものとした以外は、合成例1と同様にして、撥インク剤(E1−2)〜(E1−10)の溶液(いずれも化合物濃度:10質量%、以下、各溶液を「撥インク剤(E1−2)〜(E1−10)溶液」ともいう。)を得た。
【0256】
合成例1〜10で得られた撥インク剤の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、フッ素原子の含有率(質量%)、C=Cの含有量(mmol/g)および酸価(mgKOH/g)を測定した結果を、表2に示す。
【0257】
【表1】
【0258】
(合成例11:撥インク剤(E2−1)の合成)
撹拌機を備えた内容積1,000cm
3のオートクレーブに、MEKの415.1g、C6FMAの81.0g、MAAの18.0g、2−HEMAの81.0g、重合開始剤V−65の5.0gおよびn−DMの4.7gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃で24時間重合させ、さらに70℃にて5時間加熱し、重合開始剤を不活性化し、共重合体の溶液を得た。共重合体は、数平均分子量が5,540、質量平均分子量が13,200であった。
【0259】
次いで、撹拌機を備えた内容積300cm
3のオートクレーブに上記共重合体の溶液の130.0g、BEIの33.5g、DBTDLの0.13g、TBQの1.5gを仕込み、撹拌しながら、40℃で24時間反応させ、粗重合体を合成した。得られた粗重合体の溶液にヘキサンを加えて再沈精製した後、真空乾燥し、撥インク剤(E2−1)の65.6gを得た。
【0260】
(撥インク剤(E2−2)の準備)
撥インク剤(E2−2)として、メガファックRS102(商品名、DIC社製:下記式(E2F)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、n/m=3〜4である。)を準備した。
【0261】
【化7】
【0262】
(合成例12:撥インク剤(E2−3)の合成)
撹拌機を備えた内容積1,000cm
3のオートクレーブに、C4α−Clアクリレートの317.5g、MAAの79.4g、IBMAの47.7g、2−HEMAの52.94g、n−DMの4.6g、MEKの417.7gを入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃で24時間重合させ、さらに70℃にて5時間加熱し、重合開始剤を不活性化し、共重合体の溶液を得た。共重合体は、数平均分子量が5,060、質量平均分子量が8,720であった。固形分濃度を測定すると30重量%であった。
【0263】
次いで、撹拌機を備えた内容積300cm
3のオートクレーブに上記共重合体の溶液の130.0g、AOIの3.6g(共重合体の水酸基に対して0.8等量)、DBTDLの0.014g、TBQの0.18gを仕込み、撹拌しながら、40℃で24時間反応させ、粗重合体を合成した。得られた粗重合体の溶液にヘキサンを加えて再沈精製した後、真空乾燥し、撥インク剤(E2−3)の35.8gを得た。
【0264】
撥インク剤(E2−1)〜(E2−3)の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、フッ素原子の含有率(質量%)、C=Cの含有量(mmol/g)および酸価(mgKOH/g)を表2に示す。
【0265】
【表2】
【0266】
[例1:ネガ型感光性樹脂組成物の製造および樹脂硬化膜、隔壁の製造]
(ネガ型感光性樹脂組成物の製造)
上記例1で得られた(E1−1)液の0.16g(撥インク剤(E1−1)を固形分として0.016g含有、残りは溶媒のPGME)、A−21の15.1g(固形分は10.3g、残りは溶媒のEDGAC)、IR907の1.5g、EABの1.3g、C−1の1.3g、MHQの0.011g、F−1の10.4g、PGMEAの65.2g、IPAの2.5g、および水の2.5gを200cm
3の撹拌用容器に入れ、5時間撹拌してネガ型感光性樹脂組成物を製造した。表3に、固形分濃度と、固形分における各成分の含有量(組成)および溶媒における各成分の含有量(組成)を示す。
【0267】
なお、撥インク剤(E1−1)に関して、仕込み換算では固形分は0.018gと算出されるが、加水分解性基が脱離してメタノールあるいはエタノール等が生成されるので、実際には0.018g以下となる。どのくらいの加水分解性基が脱離したかを求めることは難しいので、ほぼすべての加水分解性基が脱離したと仮定して、固形分を0.016gとしている。
【0268】
(樹脂硬化膜、隔壁の製造)
10cm四方のガラス基板をエタノールで30秒間超音波洗浄し、次いで、5分間のUV/O
3処理を行った。UV/O
3処理には、UV/O
3発生装置としてPL2001N−58(センエンジニアリング社製)を使用した。254nm換算の光パワー(光出力)は10mW/cm
2であった。なお、以下の全てのUV/O
3処理においても本装置を使用した。
【0269】
上記洗浄後のガラス基板表面に、スピンナを用いて、上記ネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上で乾燥させ、膜厚2.4μmの乾燥膜を形成した。得られた乾燥膜に対して、開口パターンを有するフォトマスク(遮光部が100μm×200μm、光透過部が20μmの格子状パターン)を介して、365nm換算の露光パワー(露光出力)が25mW/cm
2である超高圧水銀ランプのUV光を全面一括照射した。露光の際に、330nm以下の光はカットした。また、乾燥膜とフォトマスクとの離間距離は50μmとした。各例において、露光条件は、露光時間が4秒間であり、露光量が100mJ/cm
2であった。
【0270】
次いで、上記露光処理後のガラス基板を2.38質量%テトラメチル水酸化アンモニウム水溶液に40秒間浸漬して現像し、非露光部を水により洗い流し、乾燥させた。次いで、ホットプレート上、230℃で60分間加熱することにより、フォトマスクの開口パターンに対応したパターンを有する硬化膜(隔壁)を得た。
【0271】
また、上記と同様にしてガラス基板表面に乾燥膜を形成し、フォトマスクを使用せずに上記露光条件と同様の条件で乾燥膜を露光し、次いで、ホットプレート上、230℃で60分間加熱することにより、樹脂硬化膜付きガラス基板を得た。
【0272】
[例2〜18]
上記例1において、ネガ型感光性樹脂組成物を表3〜5に示す組成に変更した以外は、同様の方法で、ネガ型感光性樹脂組成物、樹脂硬化膜および隔壁を製造した。
【0273】
(評価)
例1〜18において得られたネガ型感光性樹脂組成物、樹脂硬化膜および隔壁について、以下の評価を実施した。結果を表3〜5の下欄に示す。
【0274】
<PCT密着性>
上記で得られた樹脂硬化膜付きガラス基板について、樹脂硬化膜をカッターにて、2mm間隔でマス目の数が25個となるように、碁盤目状に傷を付けた。次に、このガラス基板を121℃、100RH%、2気圧の条件下に24時間曝す、PCT(プレッシャークッカー)試験を実施した。試験後の樹脂硬化膜付きガラス基板の樹脂硬化膜上、カッターでマス目を作った部分に粘着テープ(ニチバン社製、商品名:セロテープ(登録商標))を貼り、直後にこの粘着テープを剥がした。マス目の剥がれが少なかったもの(残っていたマス目が60%以上のもの)を○、マス目の剥がれが多かったもの(残っていたマス目が60%未満のもの)を×として樹脂硬化膜の付着状態を評価した。
【0275】
<XPSによる現像残渣のC/In比>
上記ガラス基板の代わりに、ガラス基板上にITO層を有するITO基板を用い、そのITO層上に例1〜18のネガ型感光性樹脂組成物をそれぞれ用いて、上記と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁付きのITO基板における開口部の中央部分について以下の条件でX線光電子分光法(XPS)により表面解析を行った。XPSにより測定された開口部表面のC/In値(炭素原子濃度に対するインジウム原子濃度の比の値)が7未満のものを「◎」、7〜12のものを「○」、12以上のものを「×」とした。
【0276】
[XPSの条件]
装置:アルバックファイ社製Quantera‐SXM
X線源:Al Kα
X線のビームサイズ:約20μmφ
測定エリア:約20μmφ
検出角:試料面から45°
測定ピーク:C1s
測定時間(Acquired Timeとして):5分以内
解析ソフト:MultiPak
【0277】
<隔壁上面の撥インク性>
上記で得られた隔壁上面のPGMEA接触角を上記の方法で測定した。
○:接触角40°以上
×:接触角40°未満
【0278】
<パターン直線性>
上記のようにして光透過部20μm幅のフォトマスクを用いて得られた隔壁を顕微鏡で観察し、ギザツキが観測されない場合を○、観測された場合を×とした。
【0279】
【表3】
【0280】
【表4】
【0281】
【表5】
【0282】
表3〜5から明らかなように、実施例に相当する例1〜15の、撥インク剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物において、反応性紫外線吸収剤(C)と重合禁止剤(D)を併用しているため、基板上への隔壁形成において、基材界面での硬化性が向上されPCT密着性が良好であり、かつ隔壁上面が良好な撥インク性を有するとともに、開口部の反応を抑制し残渣を低減することによってXPSによる現像残渣のC/In比が良好である。
【0283】
これに対して、比較例に相当する例16〜18の、撥インク剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物においては、いずれの例も、反応性紫外線吸収剤(C)と重合禁止剤(D)のいずれか一方しか含まないので、基板上への隔壁形成において、基材界面での硬化性が向上されずPCT密着性が良好でないため隔壁自体の形状保持が困難である、および/または、開口部の反応を抑制し残渣を低減することができず、XPSによる現像残渣のC/In比が不十分である。なお、例18においては重合禁止剤(D)と組み合わせて紫外線吸収剤を用いているものの、反応性紫外線吸収剤(C)ではなく非反応性紫外線吸収剤であるために、PCT密着性が良好でない。