【実施例】
【0045】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例中の[部]及び[%]は、特に断りのない限り重量基準である。ただし、本発明は、以下の製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0046】
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行なった。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[2]の、主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、
1H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)ガラス転移温度
ブロック共重合体水素化物をプレス成形して、長さ20mm、幅4mm、厚さ1mmの試験片を作成し、JIS K 7244−4法に基づき、損失弾性率測定装置(製品名「DMS6100」、セイコーインスツル社製)を用い、−100℃から+150℃の範囲で、振動周波数10Hz、昇温速度5℃/分で粘弾性スペクトルを測定し、損失係数tanδの高温側のピークトップ温度からガラス転移温度を求めた。
【0047】
(4)フィルムの厚さ
膜厚計(製品名「RC−1 ROTARY CALIPER」、明産社製)を用いて、延伸フィルムの幅方向に、フィルムの中央部1340mmにわたり5mm間隔で厚さを測定し、平均値をフィルムの厚さとした。
(5)面内のレターデーション値(Re)及び精度
位相差計(製品名「KOBRA(登録商標)21−ADH」、王子計測社製)を用いて、波長590nmで、延伸フィルムの幅方向に、フィルムの中央部1340mmにわたり5cm間隔で位相差を測定し、その平均値を測定値とした。また、位相差の最大値及び最小値のそれぞれと平均値との差の大きい方を精度(%)とした。位相差の精度は2%以下であれば良好と判断できる。
(6)配向軸の角度及び精度
偏光顕微鏡(製品名「ECLIPSE(登録商標) E600 POL」、ニコン社製)を用いて、延伸フィルムの幅方向に、フィルムの中央部1340mmにわたり5cm間隔で面内方向の遅相軸の、延伸フィルムの幅方向に対する角度を測定した。角度の平均値θ
Sを求め、配向軸の角度の精度は、配向軸の角度の最大値と最小値の差とした。配向軸の角度の精度は1°以下であれば良好と判断できる。
【0048】
[製造例1]
ブロック共重合体水素化物[2]−1
(ブロック共重合体[1]−1の合成)
内部が充分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン30.0部及びn−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.61部を加えて重合を開始させた。攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点で重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン40.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、脱水スチレンを30.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体[1]−1の重量平均分子量(Mw)は80,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=60:40であった。
【0049】
(ブロック共重合体水素化物[2]−1の合成)
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は81,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0050】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、コーヨ化学研究所社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター社製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット95部を作成した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は80,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0051】
[製造例2]
ブロック共重合体水素化物[2]−2
(ブロック共重合体[1]−2の合成)
スチレンとイソプレンを5回に分け、スチレン20.0部、イソプレン20.0部、スチレン20.0部、イソプレン20.0部及びスチレン20.0部をこの順に加える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。
得られたブロック共重合体[1]−2の重量平均分子量(Mw)は79,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=60:40であった。
【0052】
(ブロック共重合体水素化物[2]−2の合成)
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−2の重量平均分子量(Mw)は79,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0053】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−2のペレット91部を作成した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−2の重量平均分子量(Mw)は78,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は135℃であった。
【0054】
(実施例1)
製造例1で得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて85℃で、4時間加熱処理を行った。この加熱処理後のペレットを1時間以内に、ポリマーフィルター及び炭化タングステンを材質としたダイスリップ全幅における表面粗さRaの平均値0.03μmのダイスリップを有するT型ダイスを備えた押出し機に供給し、シリンダー温度230℃で、80℃に保持したキャスティングドラム上にシート状に押出し、延伸はせずに冷却し、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−1A1を得た。溶融押出しフィルム[2]−1A1はロールに巻き取った。
【0055】
加熱処理により除去されるブロック共重合体水素化物[2]−1ペレット中の溶存空気量の測定:
実施例1で使用したのと同じブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット5.0126gを精秤して、摺り合せコック及び摺り合せジョイント付きのガラス製試験管に入れた。摺り合せジョイントを介してテプラーポンプに接続し、25℃で試験管内の空気を25秒間で脱気した。試験管のコックを閉じ、試験管をオイルバスにて実施例1の加熱処理と同条件の80℃で4時間加熱し、ブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットに溶存している空気を放出させた。試験管を80℃に保持したまま、試験管内に放出された空気の量をテプラーポンプにより、25℃、常圧で測定した。測定した空気量は0.787mlであった。なお、同じ脱気条件で空の試験管を脱気した場合の、試験管内の残存空気量は0.01ml以下であり、無視できる量であった。空気の平均分子量を28.8として、放出された空気量を算出した結果、10.12×10
−4gであり、ブロック共重合体水素化物[2]−1ペレットの重量に対し202ppmであった。
【0056】
次に、溶融押出しフィルム[2]−1A1をロールから引き出して、
図1に示すようなテンター延伸機に連続的に供給して、テンター延伸機の把持手段の走行速度はフィルム両端でほぼ等しくなるようにして、延伸ゾーン温度143℃にてθ
1=45°で延伸を行い、幅1900mmの斜め延伸フィルムを得た。延伸後、得られた延伸フィルムの幅方向の中央部1340mmを残し両端部をトリミングし、ロールに巻き取り、幅1340mmの斜め延伸フィルム[F1]を得た。この斜め延伸フィルム[F1]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
製造例2で得られたブロック共重合体水素化物[2]−2のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を80℃とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−2A2を成形し、ロールに巻き取った。
【0058】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−2A2を使用し、延伸ゾーン温度を110℃とする以外は実施例1と同様にして延伸を行い、両端部をトリミングして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F2]を得た。この斜め延伸フィルム[F2]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例3)
製造例2で得られたブロック共重合体水素化物[2]−2のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−2A3を成形し、ロールに巻き取った。
【0060】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−2A3を使用し、実施例2と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F3]を得た。この斜め延伸フィルム[F3]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
[製造例3]
ブロック共重合体水素化物[2]−3
(ブロック共重合体[1]−3の合成)
重合開始剤であるn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)の量を1.10部とする以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−3の重量平均分子量(Mw)は44,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.02、wA:wB=60:40であった。
【0062】
(ブロック共重合体水素化物[2]−3の合成)
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−3の重量平均分子量(Mw)は44,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
【0063】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−3のペレット90部を作成した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−3の重量平均分子量(Mw)は43,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は121℃であった。
【0064】
[製造例4]
ブロック共重合体水素化物[2]−4
(ブロック共重合体[1]−4の合成)
重合開始剤であるn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)の量を0.40部とする以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−4の重量平均分子量(Mw)は121,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.15、wA:wB=60:40であった。
【0065】
(ブロック共重合体水素化物[2]−4の合成)
次に、上記重合体溶液を、水素化触媒を5.0部、温度を210℃とする以外は製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−4の重量平均分子量(Mw)は105,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.25であった。
【0066】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、温度280℃にして濃縮乾燥する以外は製造例1と同様にしてブロック共重合体水素化物[2]−4のペレット87部を作成した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−4の重量平均分子量(Mw)は98,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.53であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は109℃であった。
【0067】
[製造例5]
ブロック共重合体水素化物[2]−5
(ブロック共重合体[1]−5の合成)
反応器に脱水シクロヘキサン600部を導入した後、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.12部を加えて30分間攪拌し、水分を十分に除去する前処理を実施した。その後、重合開始剤であるn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.28部とする以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−5の重量平均分子量(Mw)は167,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、wA:wB=60:40であった。
【0068】
(ブロック共重合体水素化物[2]−5の合成)
次に、上記重合体溶液を、水素化触媒を6.0部、水素化反応条件を温度190℃、圧力4.5MPaで反応時間4時間に引き続き、温度200℃、圧力5.0MPaで反応時間5時間を追加する以外は製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−5の重量平均分子量(Mw)は168,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。
【0069】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、温度280℃にして濃縮乾燥する以外は、製造例1と同様にしてブロック共重合体水素化物[2]−5のペレット91部を作成した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−5の重量平均分子量(Mw)は166,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は144℃であった。
【0070】
(比較例1)
製造例3で得られたブロック共重合体水素化物[2]−3のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とし、押出し条件をシリンダー温度200℃、キャスティングドラム温度60℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−3A4を成形し、ロールに巻き取った。
【0071】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−3A4を使用し、延伸ゾーン温度を131℃とする以外は、実施例1と同様にして延伸を行ったが、3倍以上に延伸するとフィルムが破れ易く、また延伸による位相差の発現性が低く、斜め延伸フィルムで150nmの位相差を有する良好なフィルムは得られなかった。
【0072】
(比較例2)
製造例4で得られたブロック共重合体水素化物[2]−4のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とし、押出し条件をシリンダー温度235℃、キャスティングドラム温度50℃とするとする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−4A5を成形し、ロールに巻き取った。
【0073】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−4A5を使用し、延伸ゾーン温度を119℃とする以外は実施例1と同様にして延伸を行い、両端部をトリミングして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F5]を得た。この斜め延伸フィルム[F5]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例3)
製造例5で得られたブロック共重合体水素化物[2]−5のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を85℃、加熱処理時間を5時間行い、押出し条件をシリンダー温度250℃とすること以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−5A6を成形し、ロールに巻き取った。
【0075】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−5A6を使用し、延伸ゾーン温度を153℃とする以外は実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F6]を得た。この斜め延伸フィルム[F6]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
[製造例6]
ブロック共重合体水素化物[2]−6
(ブロック共重合体[1]−6の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン30.0部、イソプレン45.0部、スチレン25.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.91部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−6の重量平均分子量(Mw)は46,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=55:45であった。
【0077】
(ブロック共重合体水素化物[2]−6の合成)
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−6の重量平均分子量(Mw)は48,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0078】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−6のペレット90部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−6の重量平均分子量(Mw)は48,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は129℃であった。
【0079】
[製造例7]
ブロック共重合体水素化物[2]−7
(ブロック共重合体[1]−7の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン35.0部、イソプレン30.0部、スチレン35.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.64部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−7の重量平均分子量(Mw)は66,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=70:30であった。
【0080】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−7の重量平均分子量(Mw)は70,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0081】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥器の温度を265℃、ポリマーフィルターの温度を265℃とする以外は、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−7のペレット93部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−7の重量平均分子量(Mw)は69,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0082】
[製造例8]
ブロック共重合体水素化物[2]−8
(ブロック共重合体[1]−8の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン35.0部、イソプレン30.0部、スチレン35.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.32部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−8の重量平均分子量(Mw)は141,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=70:30であった。
【0083】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−8の重量平均分子量(Mw)は143,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0084】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥器の温度を270℃、ポリマーフィルターの温度を270℃とする以外は、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−8のペレット88部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−8の重量平均分子量(Mw)は142,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.41、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0085】
[製造例9]
ブロック共重合体水素化物[2]−9
(ブロック共重合体[1]−9の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン40.0部、イソプレン20.0部、スチレン40.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.64部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−9の重量平均分子量(Mw)は67,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=80:20であった。
【0086】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−9の重量平均分子量(Mw)は72,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0087】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥器の温度を265℃、ポリマーフィルターの温度を265℃とする以外は、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−9のペレット91部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−9の重量平均分子量(Mw)は71,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0088】
[製造例10]
ブロック共重合体水素化物[2]−10
(ブロック共重合体[1]−10の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン20.0部、イソプレン60.0部、スチレン20.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.77部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−10の重量平均分子量(Mw)は52,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=40:60であった。
【0089】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−10の重量平均分子量(Mw)は55,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0090】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−10のペレット92部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−10の重量平均分子量(Mw)は55,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は120℃であった。
【0091】
(実施例4)
製造例1で得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を45℃、加熱処理時間を5時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−1A7を成形し、ロールに巻き取った。
【0092】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−1A7を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F7]を得た。この斜め延伸フィルム[F7]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例5)
製造例1で得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を85℃、加熱処理時間を1時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−1A8を成形し、ロールに巻き取った。
【0094】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−1A8を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F8]を得た。この斜め延伸フィルム[F8]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例6)
製造例6で得られたブロック共重合体水素化物[2]−6のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−6A9を成形し、ロールに巻き取った。
【0096】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−6A9を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F9]を得た。この斜め延伸フィルム[F9]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例7)
製造例7で得られたブロック共重合体水素化物[2]−7のペレットを使用する以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−7A10を成形し、ロールに巻き取った。
【0098】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−7A10を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F10]を得た。この斜め延伸フィルム[F10]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例8)
製造例8で得られたブロック共重合体水素化物[2]−8のペレットを使用し、押出し条件をシリンダー温度250℃とすること以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−8A11を成形し、ロールに巻き取った。
【0100】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−8A11を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F11]を得た。この斜め延伸フィルム[F11]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ
S)、を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例4)
製造例9で得られたブロック共重合体水素化物[2]−9のペレットを使用し、押出し条件をシリンダー温度260℃とすること以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−9A12を成形し、ロールに巻き取った。
【0102】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−9A12を使用し、実施例1と同様にして延伸を行なったが、延伸するとフィルムが破れ易く、斜め延伸フィルムで150nmの位相差を有する良好なフィルムは得られなかった。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例5)
製造例10で得られたブロック共重合体水素化物[2]−10のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とし、押出し条件をシリンダー温度200℃、キャスティングドラム温度60℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−10A13を成形し、ロールに巻き取った。
【0104】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−10A13を使用し、延伸ゾーン温度を130℃とする以外は、実施例1と同様にして延伸を行ったが、延伸後のフィルムの位相差は経時で低下し易く、安定して150nmの位相差を有する斜め延伸フィルムは得られなかった。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示す結果から以下のことがわかる。
実施例1〜8の斜め延伸フィルム(本発明の斜め延伸フィルム)は、位相差の精度、配向軸角度の精度において、比較例2〜3で得られた斜め延伸フィルムに比べて優れており、良好と判断できる。
【0107】
ブロック共重合体水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)が本発明の範囲より小さい場合(比較例1)は、フィルムの機械的強度が十分でなく、斜め延伸時にフィルムが破れ易く、また延伸による位相差発現性が低く、望ましい位相差を有するフィルムが得られない。
【0108】
ブロック共重合体水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)が本発明の範囲を超える場合(比較例2)は、斜め延伸時にフィルム全幅で均等な延伸性が得られ難く、位相差の精度及び配向軸角度の精度ともに不十分となる。
ブロック共重合体水素化物[2]の分子量(Mw)が本発明の範囲より大きい場合(比較例3)は、斜め延伸時に配向軸の角度の精度が不十分となる。
【0109】
ブロック共重合体水素化物[2]の全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率wAと、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率wBとの比(wA:wB)が本発明の範囲外で、wAが多い場合(比較例4)は、機械的強度が弱く、斜め延伸時にフィルムが破れ易く、望ましい位相差を有するフィルムが得られず、また、wAが少ない場合(比較例5)は、耐熱性が十分でなく、斜め延伸したフィルムの位相差が経時で低下し易く、望ましい位相差を安定して維持できない。