特許第6398975号(P6398975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6398975-延伸フィルム及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398975
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】延伸フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/04 20060101AFI20180920BHJP
   B29B 13/06 20060101ALI20180920BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180920BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20180920BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180920BHJP
   B29K 25/00 20060101ALN20180920BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20180920BHJP
【FI】
   B29C55/04
   B29B13/06
   C08J5/18
   C08F297/04
   G02B5/30
   B29K25:00
   B29L7:00
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-526329(P2015-526329)
(86)(22)【出願日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2014068088
(87)【国際公開番号】WO2015005292
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-142814(P2013-142814)
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】石黒 淳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503342(JP,A)
【文献】 特開2010−191385(JP,A)
【文献】 特開2010−033080(JP,A)
【文献】 特開2003−342384(JP,A)
【文献】 特開2013−010853(JP,A)
【文献】 特開平05−245928(JP,A)
【文献】 特開2008−233754(JP,A)
【文献】 特開2008−221834(JP,A)
【文献】 特開2011−048162(JP,A)
【文献】 特開2007−226109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00− 55/30
B29B 13/00− 15/06
G02B 5/30
C08J 5/12− 5/22
C08F291/00−297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が50:50〜75:25であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化してなり、重量平均分子量(Mw)が50,000〜150,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であるブロック共重合体水素化物[2]からなる溶融押出しフィルムを、その幅方向に対して5〜80°の方向に連続的に斜め延伸して得られる延伸フィルム。
【請求項2】
前記芳香族ビニル化合物がスチレンであり、前記鎖状共役ジエン化合物がブタジエン及び/又はイソプレンである請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が50:50〜75:25であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化してなり、重量平均分子量(Mw)が50,000〜150,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であるブロック共重合体水素化物[2]のペレットを、押出機によって溶融させて、当該押出機に取り付けられたダイスからフィルム状に押出し、引き続いて、押出されたフィルムを、横及び縦方向に左右独立した速度の送り力若しくは引張り力または引取り力を付加できるテンター式延伸機を使用して、フィルムを幅方向に対して5〜80°の方向に連続的に斜め延伸して長尺の延伸フィルムを製造する方法において、
50〜120℃の温度で、2時間以上保持したブロック共重合体水素化物[2]のペレットを使用することを特徴とする、延伸フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みムラが小さく、位相差と配向軸の角度の精度に優れた、ブロック共重合体水素化物からなる斜め延伸フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)は、高画質、薄型、軽量、低消費電力等の特長をもち、テレビジョン、パーソナルコンピュータ等のフラットパネルディスプレイとして広く使用されている。また、カラー液晶ディスプレイには、単純マトリクス方式で構造が簡単な超ねじれネマチック(STN)液晶が用いられるが、STN液晶に基づく楕円偏光により、液晶ディスプレイ表示の色相が緑色ないし黄赤色を帯びるという問題を生じる。この問題を解決する手段の一つとして、位相差フィルムを用い、STN液晶の複屈折により位相差を補償し、楕円偏光を直線偏光に戻す対策が講じられている。
【0003】
位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、未延伸フィルムの長さ方向又は幅方向に一軸延伸したフィルムより、所望の配向軸を有するように延伸フィルムの辺に対して所定の傾斜角度となるように、その延伸フィルムを裁断する方法が知られている。
しかしながら、この方法では、最大面積が得られるように裁断しても、裁断ロスが必ず生じ、製品歩留まりに乏しいという問題があった。
【0004】
特許文献1には、ポリカーボネートやポリエステル等のプラスチックのフィルムを横または縦方向に一軸延伸しつつ、その延伸方向の左右を異なる速度で前記延伸方向とは相違する縦または横方向に引張延伸して、配向軸を前記一軸延伸方向に対して傾斜させる技術が提案されている。この方法によれば、縦横方向の延伸倍率の制御にて配向軸の傾斜角度を容易に変化させることができ、端辺に対して配向軸が種々の角度で傾斜した斜め配向フィルムを効率よく得ることができる。
しかしながら、この方法で得られる延伸フィルムは皺が発生したり、厚みムラ等が生じたりして、精度に優れたフィルムを得ることが困難であった。
【0005】
特許文献2には、ポリビニルアルコールフィルム等のポリマーフィルムの一方端の実質的な保持開始点から、実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L1、及びポリマーフィルムのもう一端の実質的な保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L2と、二つの実質的な保持解除点までの距離Wが、式(1):|L2−L1|>0.4Wの関係を満たし、かつポリマーフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低下させる光学用ポリマーフィルムの製造方法が記載されている。しかしながら、この方法で得られたフィルムにおいても、長期間使用したときに光学特性が変化したりする問題があった。
【0006】
特許文献3には、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体等の脂環式構造を有する重合体樹脂からなり、溶融押出成形により得られた未延伸フィルムを、その幅方向に対して1〜50°の方向に連続的に斜め延伸して得られる長尺の延伸フィルムが開示されている。また、この文献には、得られる斜め延伸フィルムを、例えば、位相差板として用い、長尺の1/4波長板と貼り合わせることにより、(楕)円偏光板の連続生産が可能となるため、高い生産性が得られることも開示されている。
しかしながら、ノルボルネン系重合体は工業的な供給量が少ないため、工業的により汎用性が高い樹脂を用いる斜め配向フィルムが望まれている。また、ビニル脂環式炭化水素重合体の斜め延伸フィルムには、位相差フィルムに望まれるような位相差が必ずしも十分に発現されず、斜め延伸されるフィルムの膜厚の均一性も必ずしも十分でない等の問題があった。
【0007】
特許文献4には、ビニル芳香族ブロックとブタジエンブロックの両方が実質的に完全に水素化されている、ビニル芳香族/ブタジエンブロック共重合体水素化物を溶融押出し成形して得られるフィルムを、延伸して得られる位相差フィルムが開示されている。
しかしながら、この文献には、連続的に斜め方向に延伸することに関しての記載はなく、また、斜め延伸したフィルムの位相差や位相差を制御するために望ましいブロック共重合体水素化物の分子量や分子量分布についての開示もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−9912号公報
【特許文献2】特開2002−86554号公報(US2004/0022965A)
【特許文献3】特開2003−342384号公報
【特許文献4】国際公開WO2009/067290号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、厚みムラが小さく、位相差と配向軸角度の精度に優れた、ブロック共重合体水素化物からなる斜め延伸フィルム、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の共重合体組成と特定の分子量及び分子量分布を有するブロック共重合体水素化物[2]を溶融押出し成形によりフィルムを成形し、得られた溶融押出しフィルムを幅方向に対して所定角度に斜め延伸することで、皺や厚みムラがなく、位相差と配向軸角度の精度に優れた、ブロック共重合体水素化物からなる延伸フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
かくして本発明の第1によれば、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が50:50〜75:25であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化してなり、重量平均分子量(Mw)が45,000〜150,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であるブロック共重合体水素化物[2]からなる溶融押出しフィルムを、その幅方向に対して5〜80°の方向に連続的に斜め延伸して得られる延伸フィルムが提供される。
本発明の延伸フィルムにおいては、前記芳香族ビニル化合物がスチレンであり、前記鎖状共役ジエン化合物がブタジエン及び/又はイソプレンであることが好ましい。
本発明の第2によれば、本発明の延伸フィルムの製造方法であって、前記ブロック共重合体水素化物[2]のペレットを、押出機によって溶融させて当該押出機に取り付けられたダイスからフィルム状に押出し、引き続いて、押出されたフィルムを、横及び縦方向に左右独立した速度の送り力若しくは引張り力または引取り力を付加できるテンター式延伸機を使用して、フィルムを幅方向に対して5〜80°の方向に連続的に斜め延伸して長尺の延伸フィルムを製造する方法において、50〜120℃の温度で、2時間以上保持したブロック共重合体水素化物[2]のペレットを使用することを特徴とする延伸フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皺や厚みムラがなく、位相差の精度と配向軸の角度の精度に優れたブロック共重合体水素化物からなる斜め延伸フィルム、及びその製造方法が提供される。
本発明の延伸フィルムは、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の光学用フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例及び比較例において用いる未延伸フィルムを左右のテンタークリップを所定の速度で移動させ、フィルムを幅方向に延伸させながら、フィルムの送り進路を曲げるようにすることで斜め延伸を行えるようにしたテンター延伸機の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の斜め延伸して得られる延伸フィルムは、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が50:50〜75:25であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[2]からなる。
本発明の延伸フィルムは、短冊状のものであっても、長尺状のものであってもよいが、取扱い性及び生産性の観点から、長尺状のものが好ましい。ここで、「長尺」とは、フィルムの幅方向に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
【0015】
1.ブロック共重合体[1]
本発明に用いるブロック共重合体水素化物[2]は、前駆体であるブロック共重合体[1]の全不飽和結合の90%以上を水素化して得られるものである。ブロック共重合体[1]は、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなる。
【0016】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものである。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少なすぎると、本発明の延伸フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
また、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。かかる成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[A]に対して、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少なすぎると、本発明の延伸フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
複数の重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0017】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものである。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、本発明の光学用フィルムを延伸した際の複屈折発現性が良好であり、フィルムの柔軟性も付与される。
また、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。かかる成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[B]に対して、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると、フィルムの複屈折発現性が低下するおそれがある。
重合体ブロック[B]が複数有る場合には、重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0018】
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の、炭素数1〜6のアルキル基置換スチレン;4−クロロスチレン、ジクロロスチレン、4−フルオロスチレン等の、ハロゲン置換スチレン;4−メトキシスチレン、3,5−ジメトキシスチレン等の、炭素数1〜6のアルコキシ基置換スチレン;4−フェニルスチレン等の、アリール基置換スチレン;等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の面で、極性基を含有しない、スチレン、炭素数1〜6のアルキル基置換スチレンが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。
【0019】
鎖状共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さから1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0020】
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;等の、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましく、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0021】
ブロック共重合体[1]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する際、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)としたとき、Mw(A1)とMw(A2)との比(Mw(A1)/Mw(A2))、及び、Mw(B1)とMw(B2)との比(Mw(B1)/Mw(B2))は、それぞれ2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
【0022】
ブロック共重合体[1]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[1]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]−[B]−[A])、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体([A]−[B]−[A] −[B]−[A])である。
【0023】
ブロック共重合体中[1]の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとした時に、wAとwBとの比(wA:wB)は、50:50〜75:25、好ましくは55:45〜70:30、より好ましくは60:40〜65:35である。wAが高過ぎる場合は、本発明で使用するブロック共重合体水素化物[2]の耐熱性は高くなるが、柔軟性が低く、切削面で光学用フィルムが割れ易くなり、wAが低過ぎる場合は、耐熱性が低下し、フィルムを延伸しても経時でフィルムが収縮して位相差を保持できなくなるため好ましくない。
【0024】
ブロック共重合体[1]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常45,000〜150,000、好ましくは50,000〜120,000、より好ましくは55,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[1]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、特に好ましくは1.2以下である。Mwが上記範囲を下回る場合は、ブロック共重合体[1]を水素化して得られるブロック共重合体水素化物[2]の機械的強度が十分でなく、フィルムを斜め延伸する際にフィルムが切れ易くなり、また、位相差の発現性も低くなるおそれがある。Mwが上記範囲を上回る場合は、ブロック共重合体水素化物[2]のフィルムの延伸時の温度を高くしなければ延伸できず、同時に位相差が発現し難くなる。Mw/Mnが上記範囲を上回る場合は、ブロック共重合体水素化物[2]のフィルムの斜め延伸での均一な延伸ができ難くなり、幅方向での膜厚の均一性や位相差の均一性が劣るおそれがある。
【0025】
ブロック共重合体[1]の製造方法としては、例えばリビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法等がある。
【0026】
2.ブロック共重合体水素化物[2]
本発明に係るブロック共重合体水素化物[2]は、上記のブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られるものである。その水素化率は、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形体の耐候性、耐熱性が良好である。ブロック共重合体水素化物[2]の水素化率は、H−NMRによる測定において求めることができる。
【0027】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開WO2011/096389号、国際公開WO2012/043708号等に記載された方法を挙げることができる。
【0028】
上記した方法で得られるブロック共重合体水素化物[2]は、水素化触媒及び/又は重合触媒を、ブロック共重合体水素化物[2]を含む反応溶液から除去した後、反応溶液から回収される。回収されたブロック共重合体水素化物[2]の形態は、特に限定されるものではない。通常はペレット形状にして、その後のフィルムの成形加工に供することができる。
【0029】
ブロック共重合体水素化物[2]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常45,000〜150,000、好ましくは50,000〜120,000、より好ましくは55,000〜100,000である。
また、ブロック共重合体水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、特に好ましくは1.2以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、成形したフィルムの機械強度や耐熱性が向上する。Mwが上記範囲の下限を下回る場合は、成形したフィルムの機械強度及び位相差発現性が低下し、望ましい位相差を有するフィルムが得られなくなるおそれがあり、Mwが上記範囲の上限を上回る場合は、フィルムを延伸した際に配向軸角度の精度が低下するおそれがある。また、Mw/Mnが上記範囲の上限を上回る場合は、フィルムを延伸した際に位相差の精度及び配向軸角度の精度が低下するおそれがある。
【0030】
ブロック共重合体水素化物[2]を溶融押出ししてフィルムを成形する際において、他の配合剤を配合してもよい。配合剤としては、格別限定はないが、層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0031】
ブロック共重合体水素化物[2]を溶融押出ししてフィルムを成形する際に、ダイスのリップ部に樹脂酸化劣化物の付着を抑えるために、酸化防止剤を添加することは有効である。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト等が挙げられる。イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート等が挙げられる。
酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、ブロック共重合体水素化物[2]100重量部に対して、通常0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0032】
3.ブロック共重合体水素化物[2]の溶融押出しフィルム
本発明に用いる溶融押出しフィルムは、通常、ブロック共重合体水素化物[2]を押出機によって溶融させて、当該押出機に取り付けられたダイスからシート状に押出し、押出されたシートを少なくとも1つの冷却ドラムに密着させて成形して引き取る方法で成形される。
光学フィルムの成形法としては、溶融押し出し法と溶液キャスト法がある。ブロック共重合体水素化物を製造する場合、重合・水素化工程が飽和のシクロヘキサン溶媒中で行われるため、そのままシクロヘキサン溶液から溶液キャスト法でフィルム化することも考えられる。しかしながら、設備を防爆仕様にしなければならず、厚膜のフィルムでは乾燥に時間がかかり過ぎること等の理由から、溶融押し出し法が工業的に生産する上で有利である。
【0033】
溶融押出し成形での成形条件は、使用するブロック共重合体水素化物[2]の組成や分子量等に合わせて適宜選択されるが、押出機のシリンダー温度は、通常190〜280℃、より好ましくは200〜260℃の範囲で設定される。フィルム引取り機の冷却ドラムの温度は、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃の範囲で設定される。
【0034】
溶融押出フィルムの厚みは、この後成形する斜め延伸フィルムの使用目的等に応じて適宜決定することができる。溶融押出しフィルムの厚みは、安定した延伸処理による均質な延伸フィルムが得られる観点から、通常50〜200μm、好ましくは80〜150μmである。溶融押出しフィルムは、ロール状に巻いて次の延伸工程に供することもでき、また、溶融押出し工程に連続した延伸工程に供することもできる。ここで成形する溶融押出しフィルムは、押出し方向に延伸されたものであっても良い。延伸倍率は、通常2倍以下、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以下である。
【0035】
本発明においては、ブロック共重合体水素化物[2]のペレットを、押出機によって溶融押出し成形する前に、所定加熱温度で所定時間保持したものを使用するのが好ましい。具体的には、通常50〜120℃、好ましくは60〜115℃、より好ましくは70〜110℃の温度で、2時間以上、好ましくは48時間以下、保持したものを使用する。ブロック共重合体水素化物[2]のペレットを上記の条件で加熱処理することにより、ペレット中の溶存空気量が低減され、これにより、押出しフィルムの厚みムラやダイラインの発生が抑制される。また、その後の延伸加工で均等な延伸が可能となる。
加熱処理の温度及び時間が上記範囲を下回る場合は、溶存空気の除去量が少なく、フィルム厚さのムラやダイラインの発生を十分抑止できなくなり、また、加熱処理の温度が上記範囲を上回る場合は、ブロック共重合体水素化物[2]のペレットがブロッキングを生じ易くなり、押出し成形に供することができなくなるおそれがあり、加熱処理の時間が上記範囲を上回る場合は、色調が悪化するおそれがある。
【0036】
加熱処理により除去される溶存空気量は、通常100ppm以上、好ましくは150ppm以上である。ペレットを加熱して放出される溶存空気量は、加熱処理前後でのペレットの重量減少量から測定することができる。また、ペレットから放出される溶存空気量はテプラーポンプを用いて測定することもできる。
加熱処理により溶存空気量を低減した後、室温に冷却しておくと、水分を遮断した雰囲気下でも再び空気を吸収して元に戻るため、加熱処理したペレットは、加熱状態を維持したまま溶融押出し工程に供するか、冷却後に再び空気を吸収して元に戻る前に溶融押出し工程に供することが必要である。冷却後は、通常1時間以内、好ましくは0.5時間以内に溶融押出し工程に供することが望ましい。
【0037】
4.延伸フィルム
以上のようにして得られた溶融押出しフィルムを、その幅方向に対して任意の角度θ(5°≦θ≦80°)の方向に連続的に斜め延伸することにより、フィルムの幅方向に対して角度θ(ただし、θ≦θ)の配向軸を有する延伸フィルムを得ることができる。
【0038】
角度θを5〜80°の間で任意の値に設定することにより、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzを所望の値となるようにすることができる。
【0039】
斜め延伸する方法としては、その幅方向に対して5〜80°の方向に連続的に延伸して、ポリマーの配向軸を所望の角度に傾斜させるものであれば特に制約されず、公知の方法を採用することができる。
【0040】
また、斜め延伸に用いる延伸機は特に制限されず、横又は縦方向に左右独立した速度の送り力若しくは引張り力または引取り力を付加できるようにした従来公知のテンター式延伸機を使用することができる。また、テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺のフィルムを連続的に斜め延伸処理することができるものであれば、特に制約されず、種々のタイプの延伸機を使用することができる。
【0041】
本発明に使用することができる斜めテンター延伸の例を図1に示す。図1に示すテンター延伸機は、テンター把持クリップ(図示せず)が走行するレール(3)に沿って、左右のテンタークリップを所定の速度(5L、5R)で移動させ、溶融押出しフィルム(1)を、予熱ゾーン(6)、延伸ゾーン(7)、固定ゾーン(8)を通して、幅方向に延伸させながら、延伸フィルム(2)の送り進路(4)を溶融押出しフィルム(1)の送り出し方向に対して角度θ方向に曲げるようにすることで斜め延伸を行なえるようにしたテンター延伸機である。このテンター延伸機は、フィルムの幅方向(A)に対して角度θ(5°≦θ≦80°)の配向軸(B)を有する斜め延伸フィルムを得ることができるものである。
【0042】
本発明に用いることができる斜め延伸方法は、図1に示すものに限られない。例えば、特開昭50−83482号公報、特開平2−113920号公報、特開平3−182701号公報、特開2000−9912号公報、特開2002−86554号公報、特開2002−22944号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0043】
溶融押出しフィルムを斜め延伸するときの温度は、ブロック共重合体水素化物[2]のガラス転移温度をTgとすると、好ましくは(Tg−40℃)から(Tg+20℃)の間、より好ましくは(Tg−30℃)から(Tg+10℃)の温度範囲である。
また、延伸倍率は、通常、1.2〜10倍、好ましくは1.3〜5倍、より好ましくは1.5〜3倍である。
【0044】
以上のようにして得られる本発明の斜め延伸フィルムは、幅方向に対して5°から80°の配向軸を有する。また、皺や厚みムラがなく、かつ、部位によるムラの小さい均等な位相差を有し、光学特性の安定性が優れるので、偏光フィルムや位相差フィルムとして有用である。
以上のようにして得られる本発明の斜め延伸フィルムは、幅方向に対して5°から80°の配向軸を有する。また、皺や厚みムラがなく、かつ、部位によるムラの小さい均等な位相差を有し、光学特性の安定性が優れるので、偏光フィルムや位相差フィルム,配向軸の角度15°のλ/2の位相差板、配向軸の角度75°のλ/4の位相差板等として有用である。
【実施例】
【0045】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例中の[部]及び[%]は、特に断りのない限り重量基準である。ただし、本発明は、以下の製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0046】
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行なった。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[2]の、主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)ガラス転移温度
ブロック共重合体水素化物をプレス成形して、長さ20mm、幅4mm、厚さ1mmの試験片を作成し、JIS K 7244−4法に基づき、損失弾性率測定装置(製品名「DMS6100」、セイコーインスツル社製)を用い、−100℃から+150℃の範囲で、振動周波数10Hz、昇温速度5℃/分で粘弾性スペクトルを測定し、損失係数tanδの高温側のピークトップ温度からガラス転移温度を求めた。
【0047】
(4)フィルムの厚さ
膜厚計(製品名「RC−1 ROTARY CALIPER」、明産社製)を用いて、延伸フィルムの幅方向に、フィルムの中央部1340mmにわたり5mm間隔で厚さを測定し、平均値をフィルムの厚さとした。
(5)面内のレターデーション値(Re)及び精度
位相差計(製品名「KOBRA(登録商標)21−ADH」、王子計測社製)を用いて、波長590nmで、延伸フィルムの幅方向に、フィルムの中央部1340mmにわたり5cm間隔で位相差を測定し、その平均値を測定値とした。また、位相差の最大値及び最小値のそれぞれと平均値との差の大きい方を精度(%)とした。位相差の精度は2%以下であれば良好と判断できる。
(6)配向軸の角度及び精度
偏光顕微鏡(製品名「ECLIPSE(登録商標) E600 POL」、ニコン社製)を用いて、延伸フィルムの幅方向に、フィルムの中央部1340mmにわたり5cm間隔で面内方向の遅相軸の、延伸フィルムの幅方向に対する角度を測定した。角度の平均値θを求め、配向軸の角度の精度は、配向軸の角度の最大値と最小値の差とした。配向軸の角度の精度は1°以下であれば良好と判断できる。
【0048】
[製造例1]
ブロック共重合体水素化物[2]−1
(ブロック共重合体[1]−1の合成)
内部が充分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン30.0部及びn−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.61部を加えて重合を開始させた。攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点で重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン40.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、脱水スチレンを30.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体[1]−1の重量平均分子量(Mw)は80,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=60:40であった。
【0049】
(ブロック共重合体水素化物[2]−1の合成)
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は81,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0050】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、コーヨ化学研究所社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター社製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット95部を作成した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は80,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0051】
[製造例2]
ブロック共重合体水素化物[2]−2
(ブロック共重合体[1]−2の合成)
スチレンとイソプレンを5回に分け、スチレン20.0部、イソプレン20.0部、スチレン20.0部、イソプレン20.0部及びスチレン20.0部をこの順に加える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。
得られたブロック共重合体[1]−2の重量平均分子量(Mw)は79,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=60:40であった。
【0052】
(ブロック共重合体水素化物[2]−2の合成)
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−2の重量平均分子量(Mw)は79,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0053】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−2のペレット91部を作成した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−2の重量平均分子量(Mw)は78,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は135℃であった。
【0054】
(実施例1)
製造例1で得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて85℃で、4時間加熱処理を行った。この加熱処理後のペレットを1時間以内に、ポリマーフィルター及び炭化タングステンを材質としたダイスリップ全幅における表面粗さRaの平均値0.03μmのダイスリップを有するT型ダイスを備えた押出し機に供給し、シリンダー温度230℃で、80℃に保持したキャスティングドラム上にシート状に押出し、延伸はせずに冷却し、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−1A1を得た。溶融押出しフィルム[2]−1A1はロールに巻き取った。
【0055】
加熱処理により除去されるブロック共重合体水素化物[2]−1ペレット中の溶存空気量の測定:
実施例1で使用したのと同じブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット5.0126gを精秤して、摺り合せコック及び摺り合せジョイント付きのガラス製試験管に入れた。摺り合せジョイントを介してテプラーポンプに接続し、25℃で試験管内の空気を25秒間で脱気した。試験管のコックを閉じ、試験管をオイルバスにて実施例1の加熱処理と同条件の80℃で4時間加熱し、ブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットに溶存している空気を放出させた。試験管を80℃に保持したまま、試験管内に放出された空気の量をテプラーポンプにより、25℃、常圧で測定した。測定した空気量は0.787mlであった。なお、同じ脱気条件で空の試験管を脱気した場合の、試験管内の残存空気量は0.01ml以下であり、無視できる量であった。空気の平均分子量を28.8として、放出された空気量を算出した結果、10.12×10−4gであり、ブロック共重合体水素化物[2]−1ペレットの重量に対し202ppmであった。
【0056】
次に、溶融押出しフィルム[2]−1A1をロールから引き出して、図1に示すようなテンター延伸機に連続的に供給して、テンター延伸機の把持手段の走行速度はフィルム両端でほぼ等しくなるようにして、延伸ゾーン温度143℃にてθ=45°で延伸を行い、幅1900mmの斜め延伸フィルムを得た。延伸後、得られた延伸フィルムの幅方向の中央部1340mmを残し両端部をトリミングし、ロールに巻き取り、幅1340mmの斜め延伸フィルム[F1]を得た。この斜め延伸フィルム[F1]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
製造例2で得られたブロック共重合体水素化物[2]−2のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を80℃とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−2A2を成形し、ロールに巻き取った。
【0058】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−2A2を使用し、延伸ゾーン温度を110℃とする以外は実施例1と同様にして延伸を行い、両端部をトリミングして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F2]を得た。この斜め延伸フィルム[F2]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例3)
製造例2で得られたブロック共重合体水素化物[2]−2のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−2A3を成形し、ロールに巻き取った。
【0060】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−2A3を使用し、実施例2と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F3]を得た。この斜め延伸フィルム[F3]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
[製造例3]
ブロック共重合体水素化物[2]−3
(ブロック共重合体[1]−3の合成)
重合開始剤であるn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)の量を1.10部とする以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−3の重量平均分子量(Mw)は44,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.02、wA:wB=60:40であった。
【0062】
(ブロック共重合体水素化物[2]−3の合成)
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−3の重量平均分子量(Mw)は44,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
【0063】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−3のペレット90部を作成した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−3の重量平均分子量(Mw)は43,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は121℃であった。
【0064】
[製造例4]
ブロック共重合体水素化物[2]−4
(ブロック共重合体[1]−4の合成)
重合開始剤であるn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)の量を0.40部とする以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−4の重量平均分子量(Mw)は121,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.15、wA:wB=60:40であった。
【0065】
(ブロック共重合体水素化物[2]−4の合成)
次に、上記重合体溶液を、水素化触媒を5.0部、温度を210℃とする以外は製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−4の重量平均分子量(Mw)は105,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.25であった。
【0066】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、温度280℃にして濃縮乾燥する以外は製造例1と同様にしてブロック共重合体水素化物[2]−4のペレット87部を作成した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−4の重量平均分子量(Mw)は98,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.53であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は109℃であった。
【0067】
[製造例5]
ブロック共重合体水素化物[2]−5
(ブロック共重合体[1]−5の合成)
反応器に脱水シクロヘキサン600部を導入した後、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.12部を加えて30分間攪拌し、水分を十分に除去する前処理を実施した。その後、重合開始剤であるn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.28部とする以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−5の重量平均分子量(Mw)は167,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、wA:wB=60:40であった。
【0068】
(ブロック共重合体水素化物[2]−5の合成)
次に、上記重合体溶液を、水素化触媒を6.0部、水素化反応条件を温度190℃、圧力4.5MPaで反応時間4時間に引き続き、温度200℃、圧力5.0MPaで反応時間5時間を追加する以外は製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−5の重量平均分子量(Mw)は168,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。
【0069】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、温度280℃にして濃縮乾燥する以外は、製造例1と同様にしてブロック共重合体水素化物[2]−5のペレット91部を作成した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−5の重量平均分子量(Mw)は166,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は144℃であった。
【0070】
(比較例1)
製造例3で得られたブロック共重合体水素化物[2]−3のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とし、押出し条件をシリンダー温度200℃、キャスティングドラム温度60℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−3A4を成形し、ロールに巻き取った。
【0071】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−3A4を使用し、延伸ゾーン温度を131℃とする以外は、実施例1と同様にして延伸を行ったが、3倍以上に延伸するとフィルムが破れ易く、また延伸による位相差の発現性が低く、斜め延伸フィルムで150nmの位相差を有する良好なフィルムは得られなかった。
【0072】
(比較例2)
製造例4で得られたブロック共重合体水素化物[2]−4のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とし、押出し条件をシリンダー温度235℃、キャスティングドラム温度50℃とするとする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−4A5を成形し、ロールに巻き取った。
【0073】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−4A5を使用し、延伸ゾーン温度を119℃とする以外は実施例1と同様にして延伸を行い、両端部をトリミングして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F5]を得た。この斜め延伸フィルム[F5]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例3)
製造例5で得られたブロック共重合体水素化物[2]−5のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を85℃、加熱処理時間を5時間行い、押出し条件をシリンダー温度250℃とすること以外は実施例1と同様にして、厚さ150μm、の長尺の溶融押出しフィルム[2]−5A6を成形し、ロールに巻き取った。
【0075】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−5A6を使用し、延伸ゾーン温度を153℃とする以外は実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F6]を得た。この斜め延伸フィルム[F6]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
[製造例6]
ブロック共重合体水素化物[2]−6
(ブロック共重合体[1]−6の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン30.0部、イソプレン45.0部、スチレン25.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.91部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−6の重量平均分子量(Mw)は46,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=55:45であった。
【0077】
(ブロック共重合体水素化物[2]−6の合成)
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−6の重量平均分子量(Mw)は48,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0078】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−6のペレット90部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−6の重量平均分子量(Mw)は48,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は129℃であった。
【0079】
[製造例7]
ブロック共重合体水素化物[2]−7
(ブロック共重合体[1]−7の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン35.0部、イソプレン30.0部、スチレン35.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.64部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−7の重量平均分子量(Mw)は66,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=70:30であった。
【0080】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−7の重量平均分子量(Mw)は70,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0081】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥器の温度を265℃、ポリマーフィルターの温度を265℃とする以外は、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−7のペレット93部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−7の重量平均分子量(Mw)は69,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0082】
[製造例8]
ブロック共重合体水素化物[2]−8
(ブロック共重合体[1]−8の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン35.0部、イソプレン30.0部、スチレン35.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.32部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−8の重量平均分子量(Mw)は141,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=70:30であった。
【0083】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−8の重量平均分子量(Mw)は143,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0084】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥器の温度を270℃、ポリマーフィルターの温度を270℃とする以外は、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−8のペレット88部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−8の重量平均分子量(Mw)は142,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.41、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0085】
[製造例9]
ブロック共重合体水素化物[2]−9
(ブロック共重合体[1]−9の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン40.0部、イソプレン20.0部、スチレン40.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.64部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−9の重量平均分子量(Mw)は67,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=80:20であった。
【0086】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−9の重量平均分子量(Mw)は72,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0087】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥器の温度を265℃、ポリマーフィルターの温度を265℃とする以外は、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−9のペレット91部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−9の重量平均分子量(Mw)は71,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は143℃であった。
【0088】
[製造例10]
ブロック共重合体水素化物[2]−10
(ブロック共重合体[1]−10の合成)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン20.0部、イソプレン60.0部、スチレン20.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.77部に変える以外は製造例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[1]−10の重量平均分子量(Mw)は52,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=40:60であった。
【0089】
次に、上記重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−10の重量平均分子量(Mw)は55,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0090】
水素化反応終了後、製造例1と同様に酸化防止剤を添加した後、製造例1と同様に濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[2]−10のペレット92部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[2]−10の重量平均分子量(Mw)は55,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、水素化率はほぼ100%、ガラス転移温度は120℃であった。
【0091】
(実施例4)
製造例1で得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を45℃、加熱処理時間を5時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−1A7を成形し、ロールに巻き取った。
【0092】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−1A7を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F7]を得た。この斜め延伸フィルム[F7]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例5)
製造例1で得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を85℃、加熱処理時間を1時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−1A8を成形し、ロールに巻き取った。
【0094】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−1A8を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F8]を得た。この斜め延伸フィルム[F8]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例6)
製造例6で得られたブロック共重合体水素化物[2]−6のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とする以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−6A9を成形し、ロールに巻き取った。
【0096】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−6A9を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F9]を得た。この斜め延伸フィルム[F9]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例7)
製造例7で得られたブロック共重合体水素化物[2]−7のペレットを使用する以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−7A10を成形し、ロールに巻き取った。
【0098】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−7A10を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F10]を得た。この斜め延伸フィルム[F10]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例8)
製造例8で得られたブロック共重合体水素化物[2]−8のペレットを使用し、押出し条件をシリンダー温度250℃とすること以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−8A11を成形し、ロールに巻き取った。
【0100】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−8A11を使用し、実施例1と同様にして幅1340mmの斜め延伸フィルム[F11]を得た。この斜め延伸フィルム[F11]について、厚さ、面内方向のレターデーション(Re)、配向軸の角度(θ)、を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例4)
製造例9で得られたブロック共重合体水素化物[2]−9のペレットを使用し、押出し条件をシリンダー温度260℃とすること以外は実施例1と同様にして、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−9A12を成形し、ロールに巻き取った。
【0102】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−9A12を使用し、実施例1と同様にして延伸を行なったが、延伸するとフィルムが破れ易く、斜め延伸フィルムで150nmの位相差を有する良好なフィルムは得られなかった。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例5)
製造例10で得られたブロック共重合体水素化物[2]−10のペレットを使用し、ペレットの加熱処理温度を60℃、加熱処理時間を5時間とし、押出し条件をシリンダー温度200℃、キャスティングドラム温度60℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルム[2]−10A13を成形し、ロールに巻き取った。
【0104】
次いで、溶融押出しフィルム[2]−10A13を使用し、延伸ゾーン温度を130℃とする以外は、実施例1と同様にして延伸を行ったが、延伸後のフィルムの位相差は経時で低下し易く、安定して150nmの位相差を有する斜め延伸フィルムは得られなかった。
【0105】
【表1】


【0106】
表1に示す結果から以下のことがわかる。
実施例1〜8の斜め延伸フィルム(本発明の斜め延伸フィルム)は、位相差の精度、配向軸角度の精度において、比較例2〜3で得られた斜め延伸フィルムに比べて優れており、良好と判断できる。
【0107】
ブロック共重合体水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)が本発明の範囲より小さい場合(比較例1)は、フィルムの機械的強度が十分でなく、斜め延伸時にフィルムが破れ易く、また延伸による位相差発現性が低く、望ましい位相差を有するフィルムが得られない。
【0108】
ブロック共重合体水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)が本発明の範囲を超える場合(比較例2)は、斜め延伸時にフィルム全幅で均等な延伸性が得られ難く、位相差の精度及び配向軸角度の精度ともに不十分となる。
ブロック共重合体水素化物[2]の分子量(Mw)が本発明の範囲より大きい場合(比較例3)は、斜め延伸時に配向軸の角度の精度が不十分となる。
【0109】
ブロック共重合体水素化物[2]の全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率wAと、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率wBとの比(wA:wB)が本発明の範囲外で、wAが多い場合(比較例4)は、機械的強度が弱く、斜め延伸時にフィルムが破れ易く、望ましい位相差を有するフィルムが得られず、また、wAが少ない場合(比較例5)は、耐熱性が十分でなく、斜め延伸したフィルムの位相差が経時で低下し易く、望ましい位相差を安定して維持できない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のブロック共重合体水素化物からなる斜め延伸フィルムは、厚みムラが小さく、位相差の精度と、配向軸角度の精度に優れたフィルムであり、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の光学用フィルムとして有用である。
また、本発明の延伸フィルムが長尺状のものである場合には、ロール状に巻き取って保存することができる。例えば、本発明の延伸フィルムを位相差板として用い、長尺の1/4波長板と貼り合わせて(楕)円偏光板を製造する場合には、連続生産が可能となるため、高い生産性が得られるという利点がある。
さらに、本発明の延伸フィルムは、所定の角度に延伸しているので、所定の角度になるように斜めに切り出す必要がなく、例えば、ロールトゥロール等のような連続処理が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1・・・溶融押出しフィルム
2・・・斜め延伸フィルム
3・・・テンター把持クリップ(図示せず)が走行するレール
4・・・搬送方向
5L・・・左移動速度
5R・・・右移動速度
6・・・予熱ゾーン
7・・・延伸ゾーン
8・・・固定ゾーン
A・・・幅方向
B・・・配向軸の方向
θ・・・配向軸の角度
θ・・・溶融押出しフィルム1の送り出し方向に対する延伸フィルム2の送り進路4のなす角度
図1