(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400003
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】リソグラフィー装置用ミラー構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20180920BHJP
G02B 7/182 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
G02B7/182
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-524788(P2015-524788)
(86)(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公表番号】特表2015-529846(P2015-529846A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2013066189
(87)【国際公開番号】WO2014020112
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】102012213671.1
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/678,771
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ディルク シャファー
【審査官】
今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−246030(JP,A)
【文献】
国際公開第02/35274(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0146768(US,A1)
【文献】
特開2004−56125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
G02B 5/00−5/08、5/10−5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー本体(22,52)を製造するステップであり、前記ミラー本体(22,52)は、前記ミラー本体(22,52)の前壁(24,54)、後壁(28,58)及び側壁(26,56,64)によって画定される空洞(32,62)を持ち、前記側壁は前記前壁(24,54)と前記後壁(28,58)との間に配置され、少なくとも1つの支持要素(38,68)を前記前壁(24,54)と前記後壁(28,58)との間の前記空洞(32,62)に設ける、ミラー本体(22,52)を製造するステップと、
前記ミラー本体を製造するステップの後に、前記支持要素(38,68)を少なくとも部分的に除去するステップとを含み、
前記ミラー本体(22,52)を製造するステップは、
前記側壁(26,56,64)と前記支持要素(38,68)とを、前記前壁(24,54)の後側と前記後壁(28,58)の前側との間に配置するステップ、及び、
前記前壁(24,54)と前記側壁(26,56,64)と前記後壁(28,58)と前記支持要素(38,68)とを加熱して、前記前壁(24,54)と前記側壁(26,56,64)と前記後壁(28,58)と前記支持要素(38,68)とを融合させるステップを含む、
リソグラフィー装置用ミラー構造体(20,50)の製造方法。
【請求項2】
前記支持要素(38,68)を、少なくとも、前記支持要素(38,68)が前記前壁(24,54)から前記後壁(28,58)まで連続的にもはや延在していない程度まで、除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持要素(38,68)を完全に除去する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持要素(38,68)を少なくとも部分的に除去するステップを機械的除去によって達成する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記後壁(28,58)から前記支持要素(38,68)を機械的に除去する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記側壁(26,56)の穴(44)を通じて前記支持要素(38,68)を機械的に除去する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
レーザ光(48)の照射によって前記支持要素(38,68)を少なくとも部分的に除去する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記支持要素(38,68)に吸収剤を与えて、前記レーザ光(48)に対する前記支持要素(38,68)の吸収率を、前記側壁(26,56)よりも高くする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数方向からのレーザ光(49)の照射によって前記支持要素(38,68)を少なくとも部分的に除去する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
エッチング液を前記空洞(32,62)に満たし、前記支持要素(38,68)を前記エッチング液により化学的に破壊する工程によって、前記支持要素(38,68)を少なくとも部分的に除去する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記支持要素(38,68)は円柱形状、角錐台形状又は円錐台形状である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記前壁(24,54)と前記後壁(28,58)との間に、複数の支持要素(38,68)を設ける、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記支持要素(38,68)を前記ミラー本体(52)の中心と前記側壁(26,56)との間に楕円状に配置する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
融合前に、前記側壁(26,56)及び前記支持要素(38,68)を、前記前壁(24,54)又は前記後壁(28,58)と一体的に形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記支持要素(38,68)に少なくとも1つの所定の破壊部位を設ける、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記支持要素(38,68)が前記前壁(24,54)及び前記後壁(28,58)と同じ材料で構成される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ゼロクロス温度で0になる、温度依存性の熱膨張係数を持つ材料で前記ミラー本体(22,52)を製造する、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
支承要素(34)を前記後壁(28,58)の後側に取り付けるステップをさらに含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2012年8月2日に出願された独国特許出願DE 10 2012 213 671.1号と、2012年8月2日に出願された米国特許出願US 61/678,771号との優先権を主張する。これらの出願の全内容を参照することにより本明細書に援用する(参照による援用)。
【0002】
本発明は、リソグラフィー装置用ミラー構造体、特に極端紫外線リソグラフィー装置用ミラー構造体に関するものであり、また該ミラー構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
マスクパターンをシリコンウエハ等の基板上に転写するために、リソグラフィー装置が、集積回路すなわちICの製造時に使用される。この場合、照明装置によって生み出された光線を、マスクを通過させて基板上へ向ける。複数の光学素子で構成される露光レンズは、光線の焦点を基板に合わせる役割を果たす。このようなリソグラフィー装置の例は、特にEUV(極端紫外線)リソグラフィー装置であり、このEUVリソグラフィー装置は5nmから30nmの範囲、例えば13nmの光波長で露光動作を行う。そのような短波長により、ウエハ上に小さな構造を結像することが可能になる。この波長範囲の光は大気中のガスに吸収されるため、このようなEUVリソグラフィー装置の光路は高真空内に配置される。さらに、上述した波長範囲において十分に透過的な材料は存在しないため、EUV放射を形成し案内するための光学素子としてミラーを用いている。
【0004】
開口数が大きなEUVリソグラフィー装置は、大径のミラーを必要とする。大径のミラーは、第一に製造に費用がかかり、第二にひずみがほとんど無い状態で取り付け作動させることがより困難である。ひずみがほとんど無い状態で取り付け作動させるために、ミラー表面の外側だが当該表面と同じ平面内に、複数の支承部を備えるミラーを用いることができる。
図1は、このようなミラー構造体の一例の背面図を示す。
図1に示すミラー構造体10は楕円形のミラー基板12を備え、ミラー基板12の手前側には反射面が設けられている。突起14(いわゆる「ラグ」)がミラー基板12の周縁の3箇所に設けられている。これらの突起14は、ミラー基板12と一体に設けられている。支承要素16が3つの突起14の後側又は手前側にそれぞれ設けられている。ミラーはこれら3つの支承要素16によってリソグラフィー装置のフレームに取り付けられる。この場合には、アクチュエータを支承要素16とフレームとの間に設けることができ、アクチュエータを用いてミラーの位置及び姿勢を調整することができる。
【0005】
図1に示す構造体の欠点は、ミラー構造体10の重心のはるか外側に位置する突起が、不所望な質量分布の結果として、ミラー構造体10の剛性に悪影響を及ぼすことである。さらに、突起14はミラー構造体10の総質量と関係し、その結果ミラー構造体10が全体としてより重くなり、このことはさらに可動性及びミラーの動きにおいて不利である。最後に、突起14を設けるとミラー構造体10の全径がより大きくなる。
【0006】
特許文献1(
図3A参照)は、比較的小さな力によってすでに変形している、相対的に薄いミラー本体310を有する光学素子を開示している。相対的に厚い基板本体320が、当該ミラー本体の後ろに配置されている。ミラー本体を駆動させるための膨張式ベローズ330がミラー本体と基板本体との間に配置されている。
【0007】
公開され審査された独国特許出願の特許文献2は、反射板と、キャリア板と、これら2つの板の間のハニカム状の支持骨格とを有する光学ミラーを開示する。支持骨格の個々のセルは六角形の断面を持つ。ハニカム状の支持骨格は、長手方向の縁で互いに溶接された、複数のY字型の構成要素から形成される。前記Y字型の構成要素に、均圧孔を設けることができる。
【0008】
特許文献3は、光学素子、特にミラー又は回折格子等の反射素子を開示する。当該光学素子は、光学活性面を持つ入射側の前部と、後部とを有し、前部と後部との間に空洞を設けた本体を備える。空洞は実質的に光学活性面の全面に沿って延び、冷却媒体を受け入れる役割を果たす。本体はさらに、少なくとも1つの冷却媒体用入口と少なくとも1つの冷却媒体用出口とを備える。複数の、流れに影響を及ぼす影響要素を空洞に分布させた形で配置する。当該影響要素は、前部から後部まで延びて、前部と後部とを接続する。
【0009】
特許文献4は、流体を充填する少なくとも1つの空間を備える、光学システムの光学素子を開示する。当該少なくとも1つの空間は、大気圧に対して封止され、画定面に取り囲まれる。空間の少なくとも1つの画定面に対して、照明光を少なくとも部分的に当てる。空間内部の流体圧力の変化が、光学素子の非点収差結像特性の変化をもたらすように構成される。このために、流体源が流体供給ラインを介して空間に流体接続される。さらに、流体充填の圧力制御装置を設ける。
【0010】
特許文献5は、基板及び表面を持つ光学構造体と光学構造体の冷却装置とを備えるEUV投影露光装置用光学装置に関するものである。光学素子は基板側がEUVスペクトル領域で光学活性である。前記冷却装置は冷却媒体を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,880,942号明細書
【特許文献2】独国出願公開第1 952 584号明細書
【特許文献3】独国出願公開第10 2010 034 476 号明細書
【特許文献4】独国出願公開第100 00 193 号明細書
【特許文献5】独国出願公開第10 2011 010 462 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述した課題の少なくとも1つが解決される、リソグラフィー装置用ミラー構造体の製造方法を提供することであり、かかるミラー構造体を提供することである。本発明の目的は特に、大径であり、ひずみを良好に分離する、リソグラフィー装置用ミラー構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、ミラー本体を製造するステップであり、ミラー本体は、ミラー本体の前壁、後壁及び側壁によって画定される空洞を持ち、側壁は前壁と後壁との間に配置され、少なくとも1つの支持要素を前壁と後壁との間の空洞に設ける、ミラー本体を製造するステップと、ミラー本体を製造するステップの後に、支持要素を少なくとも部分的に除去するステップとを含む、リソグラフィー装置用ミラー構造体の製造方法によって達成される。
【0014】
支持要素を「前壁と後壁との間に設ける」とは、支持要素が前壁から後壁まで連続的に延在することを意味する。その結果、ミラー本体を製造するステップの間、支持要素は前壁及び後壁を互いに支持する。それ故に、ミラー本体を製造するステップが、壁の材料を融合させるために当該材料を加熱するステップを含む場合には、前壁及び/又は後壁のたわみを防止することができる。ミラー本体を製造した後に支持要素を少なくとも部分的に除去するため、支持要素は、完成したミラー本体の動的挙動又は完成したミラー本体の剛性に影響しない。この場合において、「少なくとも部分的に除去する」とは、支持要素が、もはや前壁から後壁まで連続的に延在しておらず、少なくとも一部で分断しており、前壁と後壁とが互いに機械的に分離されていることを意味し得る。例えば、支持要素の少なくとも一部を除去して、支持要素を、前壁に接触する部分と後壁に接触する部分とに分割して、これらの部分が互いに接触しないようにすることができる。
【0015】
空洞をミラー本体内に設けているため、ミラー構造体の重量をさらに大きく減少させることができる。同時に、周方向側壁によって、ミラーを大径とすると共に、ミラー構造体の剛性を十分確保することができる。この際に、側壁をミラー構造体の全周に沿って設けることができる。この場合に、ミラー構造体の剛性を、単純に側壁の厚みによって設定することができる。この際に、「前壁」又は「手前側」とは、ミラー構造体に反射される光線が作用する、ミラー本体の壁又は側を示す。そして「後壁」又は「後側」とは、手前側とは反対側を向く、壁又は側を示す。この場合に、「側壁」とは、外壁と(存在する場合には)内壁との全体を指すと理解することができる。
【0016】
可能な一実施形態では、ミラー本体の製造後、支持要素を完全に除去する。このようにして、第1にはミラー本体の重量を減少させ、第2にはミラー本体の対称性を向上させてその結果ミラー本体の動的特性を向上させる。
【0017】
支持要素を少なくとも部分的に除去するステップを、例えば機械的除去によって達成することができ、例えばドリル又はミル等を用いた除去加工で達成することができる。この際に、後壁から支持要素を機械的に除去することができる。この場合に、除去後に残る穴をミラー本体の後壁に配置して、この穴がミラー本体の手前側での光線の案内に影響しないようにする。
【0018】
これに代えて、側壁の穴を通じて支持要素を機械的に除去することもできる。ひいては、1つだけの穴によって複数の支持要素を除去することもできる。側壁が全周性ではなくむしろカットアウトを持つ場合には、追加的な穴を設けなくとも支持要素を除去することができる。
【0019】
他の形態によれば、レーザ光の照射によって支持要素を少なくとも部分的に除去する。この場合には、ミラー本体に穴を設けなくても支持要素を除去することができる。レーザ光に対する支持要素の吸収率が向上するように、支持要素に吸収剤を与えることで、レーザ光による除去を加速させることができる。複数方向からレーザ光を同時に照射することで支持要素を少なくとも部分的に除去すれば、レーザ光による除去を同様に加速させることができる。
【0020】
他の形態によれば、エッチング液を空洞に満たし支持要素を化学的に破壊する工程によって、支持要素を少なくとも部分的に除去する。この形態では、支持要素を除去する間にミラー本体に機械的負荷がかからない。
【0021】
支持要素を、例えば円柱形状、円錐台形状又は角錐台形状とすることができる。円錐台形状は機械的安定性について有利である。支持要素の横断面形状を、支持要素を除去する方法によって選択することができる。
【0022】
前壁と後壁との間に複数の支持要素を設けることもできる。複数の支持要素を設けることで、ミラー本体が大径でも信頼性を安定させることができる。この際に、前壁の中点と側壁との間に、例えば楕円状に支持要素を配置することができる。
【0023】
ミラー本体を製造するステップは、例えば、側壁と支持要素とを、前壁の後側と後壁の前側との間に配置するステップ、及び、前壁と、側壁と、後壁と、支持要素とを加熱して、前壁と側壁と後壁と支持要素とを融合させるステップを含むことができる。
【0024】
この場合、前壁、側壁、(1つ又は複数の)支持要素及び後壁を必ずしも別個に設ける必要はなく、融合前に、側壁及び支持要素を、前壁又は後壁と一体的に形成することもできる。
【0025】
さらに、支持要素に少なくとも1つの所定の破壊部位を設けることができる。その結果として、支持要素の設定した部位で、前壁と後壁との間の接続を分断することができる。
【0026】
上述した方法は、支承要素を後壁の後面に取り付けるステップをさらに含むことができる。省スペースミラー構造体の後壁の後面に支承要素を設けることができる。
【0027】
ゼロクロス温度で0になる、温度依存性の(線)熱膨張係数を持つ材料でミラー本体を製造することができる。つまり、温度の関数としての熱膨張係数の特性曲線は、すなわちこのゼロクロス温度で、少なくとも1つのゼロ交差を有する。この温度又は少なくともこの温度に十分近い温度で、極端紫外線リソグラフィー装置を動作させる場合には、温度変動がミラー構造体の形状に影響を与えず、その結果ミラー構造体の結像特性が温度に依存することを、防止し又は最小化させる。このようないわゆるゼロ膨張材料の例は、ZERODUR(ショット社の登録商標)及びULE(コーニング社の登録商標)である。
【0028】
さらに、前壁と、後壁と、前壁及び後壁の間に配置される側壁とを持つミラー本体を備え、前壁と、後壁と、側壁とは中空の空洞を画定し、空洞の最大横方向長さの、ミラー本体の最大横方向長さに対する比率が少なくとも0.75:1である、極端紫外線リソグラフィー装置用ミラー構造体によって上述した目的を達成する。空洞が「中空」とは、空洞には、前壁、後壁及び側壁の材料とは異なる材料から成る追加的な構造的要素は、何ら含まれておらず、特に、前壁及び後壁を、互いに支持又は互いに機械的に連結する構造的要素は何ら含まれていないことを意味し得る。しかしながら、同じ材料から成る1つ若しくは複数の構造的要素が、又は、同じ材料から成る(単一の)周方向内側壁が、前壁及び後壁を互いに支持することができる。後者の場合は、空洞を実質的にリング形状とすることができる。したがって言い換えれば、空洞を、ミラー本体の材料により画定される、ミラー本体内の領域とみなすことができる。正確には、1つの空洞を設けることが好ましく、言い換えれば、空洞はミラー本体の対向する側壁間で連続的に延在する。このようにして、前壁と後壁とをより良く分離することができる。
【0029】
前壁と後壁との間の空洞により、前壁と後壁との間を良好に機械的に分離することができる。さらに、空洞によってミラー構造体の総重量を減少させることができる。空洞又はミラー本体の基部が円形状である場合、「最大横方向長さ」は直径に相当する。基部が楕円形状である場合、「最大横方向長さ」は楕円体の長軸線の長さに相当する。空洞の最大横方向長さがミラー本体の最大横方向長さよりも小さいことは言うまでもない。
【0030】
空洞の最大横方向長さの、ミラー本体の最大横方向長さに対する比率は、上述したものに限定されず、例えば、少なくとも0.8:1、少なくとも0.85:1、少なくとも0.9:1、少なくとも0.95:1又は少なくとも0.995とすることもできる。
【0031】
空洞の最大高さの、ミラー本体の最大高さに対する比率を、例えば0.5:1以下とすることができる。当該比率もこの範囲に限定されるものではなく、例えば0.2:1以下、0.1:1以下又は0.05:1以下とすることもできる。このような平たい空洞も、前壁と後壁とを良好に機械的に分離することができる。平たい空洞はさらに、ミラー構造体の製造を単純化する。また、最大高さの、最大横方向長さに対する比率が、1:5未満、1:10未満又は1:20未満であることを特徴とすることができる。
【0032】
ミラー構造体は、ミラー構造体を極端紫外線リソグラフィー装置の構造的要素に接続するための支承要素をさらに備えることができ、支承要素を後壁の外側に設ける。構造的要素を例えば、極端紫外線リソグラフィー装置の負荷を除去するフレームとすることができる。これにより、省スペースミラー構造体を提供することができる。さらにこの場合には、支承要素を後壁に接続している際に発生する変形力は、前壁すなわちミラーの手前側に、直接は影響しない。
【0033】
前壁と後壁との間の空洞に少なくとも1つの支持要素を設けることができる。したがって、すべての支持要素を除去する必要はない。空洞に残る支持要素は、ミラーの剛性を全体的に向上させる安定支持部位として機能することができる。
【0034】
支持要素を、前壁及び後壁と同じ材料で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】第1の典型的実施形態に従う方法によって製造されたミラー構造体の概略横断面図である。
【
図4A】ミラー構造体の製造方法の第1の典型的実施形態を示す図である。
【
図4B】ミラー構造体の製造方法の第1の典型的実施形態を示す図である。
【
図4C】ミラー構造体の製造方法の第1の典型的実施形態を示す図である。
【
図4D】ミラー構造体の製造方法の第1の典型的実施形態を示す図である。
【
図4E】ミラー構造体の製造方法の第1の典型的実施形態を示す図である。
【
図4F】ミラー構造体の製造方法の第1の典型的実施形態を示す図である。
【
図4G】ミラー構造体の製造方法の第1の典型的実施形態を示す図である。
【
図5】第1の典型的実施形態の支持要素を除去するステップの代替形態を示す図である。
【
図6】第1の典型的実施形態の支持要素を除去するステップの他の代替形態を示す図である。
【
図7】第1の典型的実施形態の支持要素を除去するステップのさらなる代替形態を示す図である。
【
図8A】第2の典型的実施形態に従う方法により製造されたミラー本体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
添付図面を参照して、さらに典型的実施形態を説明する。
【0037】
他に記載しない限り、複数図の同一の符号は、同一の構成要素又は機能的に同一の構成要素を示す。さらに、図面中の図の縮尺は必ずしも正確である必要はないことに留意するべきである。
【0038】
図2は、第1の典型的実施形態に従う方法によって製造されたミラー構造体20の概略横断面図である。
図3は、このミラー構造体20の背面図である。ここで説明するミラー構造体20は、リソグラフィー装置内で、特にEUVリソグラフィー装置内で光線を案内するのに適している。
【0039】
本実施形態では、ミラー構造体20は、前壁24と側壁26と後壁28とを有するミラー本体22を備える。図示した実施例では、ミラー本体22は平面視で円形であるが(
図3参照)、ミラー本体22を長円形、楕円形又は腎臓形とすることもできる。さらに、ミラー本体22を凹面鏡のミラー本体として設計する。動作温度での熱膨張係数がゼロに近い材料が適切であり、特にミラー本体22の材料として適切である。そのような材料を「ゼロ膨張材料」とも呼ぶ。そのような材料の例は、ガラスセラミック材料、チタンをドーピングした石英ガラス又は適切な添加剤を有するコーディエライトである。
【0040】
前壁24の手前側に、すなわち光線経路に対向する側に反射膜30を設ける。この反射膜は、EUV領域で光を反射するのに適している。前壁24の後側に側壁26を設ける。側壁を、例えば前壁24の縁の周りでリング形状として具現化することができる。側壁26の後側に後壁28を設ける。前壁24、側壁26及び後壁28は一体に形成され、それゆえに同じ材料で構成される。ミラー本体22の前壁24、側壁26及び後壁28は、1つの空洞32を画定する。図示した典型的実施形態では、空洞は中空である。すなわち、空洞には、前壁、後壁及び側壁の材料とは異なる材料から成る構造的要素は、何ら含まれておらず、特に、前壁と後壁とを、互いに支持又は互いに機械的に連結するような構造的要素は何ら含まれていない。
【0041】
ミラー構造体20を、複数の支承要素34によってリソグラフィー装置の構造的要素(より詳細には図示せず)に取り付ける。例として、ミラー構造体20をリソグラフィー装置の力消散フレームに取り付けることができる。この取付を能動的とすることも受動的とすることもできる。支承要素34を追加的な連結要素によってリソグラフィー装置のフレームに取り付けることができる。能動的取り付けの場合、支承要素34の末端部をそれぞれアクチュエータの一方側に固定することができ、アクチュエータの他方側をフレームに固定する。これによりミラー構造体20の位置及び姿勢の調整ができる。受動的取付の場合、支承要素34の末端部をそれぞれの減衰要素の一方側に固定することができる。減衰要素の例はバネ要素であり、このバネ要素の他方側をフレームに固定する。これにより、ミラー構造体20への振動等の伝達を減衰させることができる。能動的取付と受動的取付とを組み合わせることもできる。
【0042】
複数の支承要素34をほぼ円柱形状とすることができ、例えばそれぞれの円柱形状の平らな側面の一方を後壁28に接続する。支承要素34と後壁28との間の接続領域を、以下「リンク領域」とも呼ぶ。支承要素34を円筒形状とすることができ、このことは総重量をさらに減少させるのに役立つ。しかしながら、支承要素を中実の円柱として具現化することもできる。支承要素34が少なくとも部分的には円筒形状である場合、すなわち例えば支承要素34の少なくともリンク領域が円筒形状である場合には、リンク面積を減少させることができ、これにより接続中の局所的なひずみを減少させることができる。支承要素34を、ミラー本体22の材料とは異なる材料で製造することができる。例えば、支承要素34を、インバー(鉄とニッケルの合金)等の熱膨張係数が小さな金属から製造することができる。3つの支承要素34が、後壁28の3つの適切な箇所に接続されている場合には、比較的低重量でバランスのとれた取付が生じる。しかしながら、4つ以上の支承要素34を設けることもできる。
【0043】
一般に、ここで説明する構造体をあらゆるサイズのミラーに適用できるが、ミラーが大径の場合、すなわちミラーの最大直径が例えば30cm又は40cmを超え、さらには100cm以上もの場合に、以下さらに説明する、ひずみ分離効果が特に有益となる。
【0044】
空洞32により、ミラー構造体20が大きなミラー形状に非常によく適合するように、ミラー構造体20の総重量を大幅に減少させることができる。さらに、突起又はラグを設ける必要がないため、そしてそれ故にリンク領域をミラー構造体20の反射面30により近付けて配置することができるため、従来のミラー構造体と比較して全径を減少させることができる。同時に、リング形状の側壁26は、ミラー構造体20が比較的低重量でも剛性を比較的高くできるような、補強効果を持つ。
【0045】
さらに、支承要素34を後壁28の外側に接続することで、ひずみを広範囲で分離できる。この点について、例えば支承要素34と後壁28との間のリンク領域で、局所的なひずみが発生することがある。このひずみは、例えば製造中、支承要素214を後壁28に接着接合するのに用いる接着材が収縮する場合等に発生することがある。支承要素34を前壁24の高さに設けるのではなく、むしろ支承要素34を前壁の後ろに隣接する後壁28に接続させているため、そのような局所的ひずみにより発生する力も、ミラー本体及びミラー本体上の反射面に直接伝達されない。それどころか、後壁28は若干の弾性を持ち、この弾性によりひずみの分離を達成できる。さらに、支承要素34を後壁28へ接続した結果として、取付時及び/又は駆動時に発生する力を前壁24から大幅に分離させることができるため、この構造体によってひずみをほとんど発生させずに取付及び/又は駆動を行うこともできる。
【0046】
一体的又はモノリシックなミラー本体22を製造するのに想定される方法のひとつでは、前壁24、側壁26及び後壁28を相互に積み重ね、加熱して融合させる。このことで、前壁24、側壁26及び後壁28の間が密接に接続される。すなわち、前壁24、側壁26及び後壁28の接続が原子間力又は分子間力により維持され、この接続は接続手段の破壊のみによって分離され得る。
【0047】
しかしながら、本方法において個々の構成要素を融合させるために融点まで又は融点付近まで加熱しなければならず、ミラーが大径の場合には、前壁24又は後壁28がそのような温度での低剛性によりたわみ、それ故に形状が変化するおそれがあるという問題が発生する。また前壁24については、ひずみを内部的に補正することが難しくそれ故にミラーの結像特性に悪影響を及ぼすことがあるため、僅かなひずみさえも回避すべきである。そして後壁28についても、ひずみがミラーの動的挙動に影響するおそれがあり、それ故に好ましくない。
【0048】
本発明に係るミラーの製造方法によれば、前壁24と後壁28との間に支持要素を設ける。当該支持要素は加熱中ミラー本体22を支持する。加熱後これらの支持要素を元のように取り除く。
【0049】
本方法の第1の典型的実施形態を、
図4A−4Hを用いて以下説明する。
【0050】
第1ステップS1では、ミラー本体22の前壁24を、基板36上に配置する(
図4A参照)。基板36は、後続の加熱工程の温度でも、形状を維持し前壁24とは融合しない材料から製造される。さらに、基板36は、基板36上に配置される前壁24の手前側の形状に実質上対応する形状を持つ。
【0051】
第2ステップS2では、側壁26及び支持要素38を、前壁24の後面上に配置する(
図4B参照)。このために、前壁24の後面を実質的に平面とすることが好ましい。さらに、前壁24の後面に凹部を設けることもでき、支持要素38及び/又は側壁を凹部に挿入することができる。図示した実施例では、支持要素38は中実の円柱形状であるが、以下でより詳細に述べるように、他の形状とすることもできる。支持要素38の高さは、側壁26の高さと実質的に同じである。図示した実施例では、1つの支持要素38を前壁24のほぼ中点に設け、他の(例えば8つの)支持要素38を当該中点と側壁26との間に円状に設ける。
【0052】
第3ステップS3では、後壁28を側壁26及び支持要素38の上に配置する(
図4C参照)。この場合、後壁28を側壁26と同一平面で終端させることができるが、後壁28を側壁26から突出させることもできる。支持要素38はこのようにして、前壁24、側壁26及び後壁28によって形成される空洞32内に配置される。
【0053】
第4ステップS4では、前壁24、側壁26、後壁28及び支持要素38を融合させて、一体的なミラー本体22を形成する(
図4D参照)。このために、温度を例えば融点まで上昇させ、温度を特定の時間(例えば10分)維持する。支持要素38を前壁24と後壁28との間に設けたため、支持要素38は、後壁28が自身の重みのために、たわみ、ひずむことを防止する。
【0054】
支持要素38を空洞に残すこともできるが、支持要素38はミラー本体22の動的挙動に影響を与える。特に、支持要素38は前壁24と後壁28との間の機械的分離をより困難にする。このため、第5ステップS5では、ミラー本体22の冷却後、支持要素38を少なくとも部分的に除去する(
図4E参照)。この場合において、「少なくとも部分的に除去する」とは、支持要素38が前壁24と後壁28とを互いに機械的に、もはや結合しなくなるように、支持要素38の少なくとも一部を除去することを意味し得る。支持要素38を完全に除去することもできる。支持要素38を完全に除去することで、第1にミラー本体の重量を減少させ、その結果、第2にミラー本体の対称性を向上させることができ、ミラー本体の動的特性が向上する。
【0055】
支持要素を少なくとも部分的に除去した結果として、前壁24と後壁28との分離が達成される。このために、図示した典型的実施形態では、支持要素38を後壁28の後側から機械的に除去する。このために、ガラスドリル、ガラスミル又は研削工具等の適切な工具40を用いて、後壁28の支持要素38上に穴42を設ける。その後、工具40を用いて機械加工で支持要素38を除去する。さらに、漸増する穿孔径を有する複数のドリル穴によって支持要素38を除去することができる。すなわち、例えば、初めに工具を用いて支持要素38の直径よりも小さい穿孔径のドリル穴を予め開け、次に、工具を用いて開けた、少なくとも支持要素38の直径と一致する直径の主ドリル穴から、支持要素38を除去する。
【0056】
第6ステップS6では、上述した支承要素34を後壁28の後面に固定する(
図4F参照)。支承要素34を後壁28に、例えば接着接合したりハンダ付けしたりできる。
【0057】
第7ステップS7では、ミラー本体22を基板36から取り外し、前壁24の前面に反射層30を貼り付ける(
図4G参照)。このようにして、
図2及び
図3に示すミラー構造体20が完成する。必要に応じて、第6ステップ又は第7ステップの前に、ミラー表面を最終加工する追加のステップを行うこともできる。
【0058】
上述した典型的実施形態に従う方法によって、ミラー本体22の個々の部分が融合する間、前壁24及び後壁28が相互に支持され、大部分のたわみを防止することができる。融合後、支持要素38を少なくとも部分的に除去しているため、支持要素38によるミラー本体22の固有振動数への影響は全くないか又は些細なものであり、前壁24及び後壁28を互いに分離させることができる。支持要素38を後壁28から除去した後、後壁28には穴42が残るが、この穴42は比較的小さく、穴42によるミラー本体の固有振動数及び動的特性への影響は全くないか又は些細なものである。特に、穴42によるミラー本体22の剛性低下はごく些細なものである。
【0059】
支持要素38の数及び配置を、ミラー本体22の形状によって決めることができる。この点において、ミラー本体が比較的小さい場合には、ミラー本体22の中心に1つのみの支持要素を設ければ十分である場合がある。この場合に、「ミラー本体の中心」は、例えば加熱中に前壁24又は後壁28が固有の自重変形によって最もたわむ、ミラー本体の位置を示すことがある。ミラー本体が非常に大きな面積の場合には、ミラー本体22の中心の支持要素38とともに又はこれに代えて、ミラー本体22の中心と外周側壁26との間に複数の支持要素38を設けることができる。この支持要素38を、ミラー本体22の基本的な形状によって、例えばミラー本体22の中心の周りに円状又は楕円状に、配置させることができる。ミラー構造体が特に大きい場合に、支持要素38を、ミラー本体22の中心と外周側壁26との間に、2列以上設けることもできる。
【0060】
図5は、上述した典型的実施形態の支持要素38を取り除くステップS5の代替形態を示す。この代替形態によれば、支持要素38を機械的に除去し、支持要素38を少なくとも部分的に後壁28からではなく側壁26から除去する。このために、まず1つ又は複数の穴44を側壁26に設けて、この穴を通じて、上述した工具40を導入して支持要素38を除去する。この際に、穴44の幅を、支持要素38の幅相当とすることができる。
【0061】
本形態の利点は、側壁26の1つの穴44を通じて、複数の支持要素38を除去することができ、最終的には、ミラー本体22に残る穴がより少なくなることである。側壁26が全周性ではなくカットアウトを持つ場合には、追加的な穴を設けなくとも、このカットアウトを通じて工具40を導入することができる。しかしながら、本形態では、支持要素が円形断面を有する場合、工具40は支持要素38の丸みを帯びた側壁に作用し、このことで除去工程がより困難になる。従って、工具40の支持要素38上での滑りを防止するために、支持要素38に予め設けたドリル穴又は小凹部等を持たせ、工具40の先端を予め設けたドリル穴又は小凹部等へ導入することができる。また、前壁24の後側にガイド溝を設けることもでき、工具40を側壁26から当該ガイド溝に沿って個々の支持要素38まで案内することができる。さらに、支持要素38の一端を側面から除去する間、支持要素38の反対端で最大の力が作用し、最終的に支持要素38の反対端を破壊してこの領域から離脱させることができる。無制御な破壊を防止するため、及び/又は除去工程を単純化するために、支持要素38沿いに、1つ又は複数の所定の破壊部位を設けて、除去中に特定の剪断力を超えた場合に、この所定の破壊部位で支持要素38を破壊することができる。さらに、支持要素38の軸線沿いに2つの所定の破壊部位を設けて、側壁26の穴44を通じて導入したプランジャを用いて、支持要素38のこれら所定の破壊部位間の部分を破壊することもできる。
【0062】
図6は、上述した典型的実施形態の支持要素38を取り除くステップS5の他の代替形態を示す。この代替形態によれば、液状エッチング液を後壁28に設けた穴47から空洞32に満たす工程により、支持要素38を機械的にではなくむしろ化学的に除去する。この際、エッチング液を、フッ化水素酸等の、支持要素38を化学的に除去するのに適した任意の化学物質とすることができる。本形態では、エッチング液が空洞32の内壁をも浸食するが、空洞32を画定する要素の寸法決めにおいて、この浸食を考慮することができる。さらに、エッチングされる支持要素38の直径を最小化させることで、エッチング時間を最小化させることができる。例えば、上述したように、所定の破壊部位を設けることができ、又は支持要素38を円筒状とすることができる。エッチング工程の間、空洞32をエッチング液で完全に満たすことができ、その結果、空洞32及び支持体38の全壁に沿って均一なエッチングを行うことができる。しかしながら同様に、空洞32にエッチング液を特定の充填高さまでのみ充填して、支持要素38の下部のみを化学的に除去することもできる。
【0063】
この形態の利点は、支持要素38を除去する間に、ミラー本体22に、上述した形態でドリル穴を開ける力によって発生する機械的負荷がかからないことである。
【0064】
図7は、上述した典型的実施形態の支持要素38を取り除くステップS5のさらなる代替形態を示す。
図7は、
図4DのB−B線に沿った横断面図を示す。この代替形態によれば、支持要素38はレーザ光の照射によって少なくとも部分的に除去される。このために、1つ又は複数のレーザ光源46をミラー本体の外側に設け、レーザ光源46により支持要素38へ向け得るレーザ光48を発生させる。
図7のレーザ光源46の配置は単なる概略であることを考慮すべきであり、特に、側壁26でのレーザの屈折効果等を考えていないことを考慮すべきである。
【0065】
レーザ光48はガラス製の側壁26を貫通する。この際、除去する支持要素38で集束し、側壁26を非集束状態で貫通するように、レーザ光48を調整することができる。その結果として、側壁26はレーザ光48によってわずかな程度だけ加熱される。除去する支持要素38はレーザ光48を吸収し、その結果融点まで加熱される。レーザ光48を用いて支持要素38を除去する間に、ミラー本体22に穴を設ける必要はない。この場合にも、支持要素38の対応する部位に、所定の破壊部位等の形で直径が減少した領域を設けることができる。1つのレーザ光源46のみを用いた照射で支持体38を溶解させることもできるが、複数の方向からレーザ光48を支持要素38へ同時に向けることによって除去工程を加速させるために、2つ以上のレーザ光源46を用いることが好適である。ビームスプリッタ等を用いて、1つのみのレーザ光源からのレーザ光を複数の光線に分配し、ミラーを用いて、これらの光線を複数の方向から除去する支持要素38へ向けることも、同様にできる。この場合には、1つのみのレーザ光源を設けるべきであり、これにより製造のコスト効率を向上させることができる。
【0066】
除去工程をさらに加速させるために、レーザ光をより吸収するように支持要素38を調整することができる。例として、レーザ光48の波長域の光を吸収する、対応する顔料又は他の吸収剤を、支持要素38に混合させることができる。
【0067】
図8A、
図8B、
図9A及び
図9Bは、第2の典型的実施形態に従うミラー本体52を備える、正確には支持要素を除去する前の、ミラー構造体50を示す。この場合において、
図8Aはミラー本体52の平面図を示し、
図8Bはミラー本体52の斜視図を示し、
図9Aはミラー本体52の空洞を通る断面図を示し、
図9Bは
図9AのA−A線に沿うミラー本体52の断面図を示す。ミラー本体52も、前壁54、側壁56(64)及び後壁58を備える。これらの壁は空洞62を画定する。
【0068】
第1の典型的実施形態と同様に、ミラー本体52は平面図で円形状であり、凹面鏡として具現化される。ミラー本体52の直径d1を例えば400〜1000mmとすることができ、例として約800mmとすることができる。側壁56の厚さd2を例えば10〜150mmとすることができ、例として約100mmとすることができる。この場合に、空洞62の直径(すなわち横方向最大長さ)d3の、ミラー本体52の直径(すなわち横方向最大長さ)d1に対する比率を、少なくとも0.75:1、少なくとも0.8:1又は少なくとも0.85:1とすることができる。その結果として、空洞62の直径d3を、例えば300〜980mmとすることができ、例として約600mmとすることができる。
【0069】
ミラー本体52の最大高さh1を、例えば200〜400mmとすることができ、例として約300mmとすることができる。後壁の最大高さh2を、例えば20〜80mmとすることができ、例として約40mmとすることができる。側壁の最大高さh3を、例えば2〜50mmとすることができ、例として約20mmとすることができる。この場合に、空洞62の最大高さh3の、ミラー本体52の最大高さh1に対する比率を、0.5:1以下、0.1:1以下又は0.05:1以下とすることができる。
【0070】
第2の典型的実施形態に従うミラー本体52は、ミラー中心の周りに円形状の内側壁64が設けられており、内側壁64が半径方向内部に空洞62を画定する点で、第1の典型的実施形態のミラー本体22と異なる。さらに、ミラー本体52の中心を通る、つまり前壁54、内側壁64及び後壁58を通る、矩形の貫通孔66を設ける。円形状の内側壁64の例えば外径d4を200〜400mmとすることができ、例として約300mmとすることができる。貫通孔66のアスペクト比を1:2とすることができ、例えば、高さd5を100mmとし、幅d6を200mmとすることができる。光線は当該貫通孔66を通ってリソグラフィー装置に入ることができる。例えば、ミラー本体52を持つミラー構造体により反射された光を、さらなるミラーによって反射させて貫通孔66を通過させることができる。逆方向のビーム光路もあり得る。
【0071】
ミラー中心付近に貫通孔を持つこのようなミラーを、特に近視野ミラーとして用いることができ、それに応じて当該ミラーを大径とすることができる。上述した理由のため、ミラー本体52の内部に空洞62を設け、ミラー本体52の製造中に支持要素68を設けることが好適である。ミラー本体52の個々の要素を融合させた後、この支持要素を再び除去する。
【0072】
支持要素68は、円柱形状ではなく円錐台形状で具現化されることが、上述した典型的実施形態の支持要素38とは異なる。この場合、支持要素68の底部の直径d7は例えば25〜50mm、例として40mmであり、頂部の直径d8は例えば5〜30mm、例として20mmである。この場合、支持要素68を直径d9(例えば450mm)の円状に(より一般的には楕円状に)配置する。
【0073】
第1の典型的実施形態で説明した工程によって同様に、前壁54、側壁56及び後壁58からミラー本体52を製造する。したがって、融合時に支持要素68が支持することに関して同様の効果が生まれる。
【0074】
この形態では支持要素68が円錐台形状のため、支持要素68を前壁54の後面に、より容易に配置することができる。特に、後壁58を配置する際に支持要素が倒れるおそれがない。それ故に、第1の典型的実施形態よりも安定した構造が可能である。さらに、支持要素68の円錐台頂部を後壁58側に配置して、円錐台頂部に対応する直径を工具で除去することで、支持要素68を取り除くことができるようにする。すなわち、工具で除去する径を円錐台基部の直径よりも小さくすることができる。その結果として、後壁58に残る穴も比較的小さくなり、ひいてはミラー本体52の動的挙動への影響がより少なくなる。
【0075】
図8及び
図9に従う第2の典型的実施形態では、空洞が第1の典型的実施形態よりも小さくなる。従って、ミラー本体62の剛性はより向上するが、空洞62による重量削減はより小さくなる。
【0076】
上述した実施形態は単なる例示を目的とするものであり、特許請求の範囲が保護する範囲に則って、上述した実施形態を多様に変化させることができることを考慮すべきである。特に、上述した実施形態の複数の構成を互いに組み合わせることもできる。
【0077】
例えば、第1の典型的実施形態の側壁26を必ずしもミラー本体22の縁に設ける必要はなく、縁から離した、半径方向内側にオフセットした形で配置することもできる。従って、より大径のミラー表面をより軽量に実現することができる。さらに、側壁26を2つの部分で具現化することもでき、この側壁26は外側壁56と内側壁64とを備える。
【0078】
さらに、前壁24(54)、側壁26(56)及び支持要素38(68)を1つの要素から初めにモノリシックに製造することもできる。例えば、対応する原料要素を融合することによって、空洞32(62)に相当する材料を除去することによって、又は対応する型で成型することによって、この製造を行うことができる。
【0079】
上述した典型的実施形態ではさらに、前壁24(54)を基板36上に配置したが、当然ながら、後壁28(58)の後側を相応に成形した基板上に配置して、後壁28(58)上に支持要素及び前壁を配置することもできる。さらに、後壁28(58)を必ずしも平面状に具現化する必要はなく、後壁28(58)を前壁24(54)の光学面の湾曲に沿わせることもできる。
【符号の説明】
【0080】
10 ミラー構造体
12 ミラー基板
14 突起
16 支承要素
20 ミラー構造体
22 ミラー本体
24 前壁
26 側壁
28 後壁
30 反射膜
32 空洞
34 支承要素
36 基板
38 支持要素
40 工具
42 穴
44 穴
46 レーザ光源
48 レーザ光
50 ミラー構造体
52 ミラー本体
54 前壁
56 側壁
58 後壁
62 空洞
64 内側壁
66 貫通孔
68 支持要素