(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1スイッチ回路は、前記第1ホール素子が有する前記複数の端子のうち、前記第1平面において、前記第1ホール素子を中心とした予め定められた回転方向に前記駆動端子を選択して切り換える請求項5または6に記載の検出装置。
前記第1スイッチ回路は、前記第1ホール素子が有する前記複数の端子のうち、前記第1平面において、前記第1ホール素子を中心として8の字に前記駆動端子を選択して切り換える請求項6に記載の検出装置。
前記第1スイッチ回路は、前記第1ホール素子が有する前記複数の端子を、前記駆動端子、前記電流出力端子、前記正の測定端子、および前記負の測定端子の予め定められた2つの組み合わせのいずれかに切り換える請求項6に記載の検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る第1の磁気センサ100の断面の構成例を示す。
図1は、磁気センサ100のXZ面の断面図の一例を示す。第1の磁気センサ100は、当該磁気センサ100に入力する磁場に応じて検出信号を出力する。
図1は、第1の磁気センサ100に+Y方向の磁場が入力する例を示す。第1の磁気センサ100は、第1ホール素子10と、第2ホール素子20と、基板110と、磁気収束板120と、磁気収束板122とを備える。
【0010】
第1ホール素子10および第2ホール素子20は、XY平面に略平行に形成され、Z軸方向と略平行な磁場を検出する。第1ホール素子10および第2ホール素子20は、一例として、X軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたY軸方向の起電力(ホール効果)を発生させる素子である。第1ホール素子10および第2ホール素子20は、半導体等で形成されてよい。
図1は、第1ホール素子10および第2ホール素子20がY軸に略平行に配置される例を示す。
【0011】
基板110は、シリコン等の半導体によって形成され、半導体回路および半導体素子等を含んでよい。基板110は、ICチップであってよく、この場合、端子を備え、外部の基板、回路、および配線等と電気的に接続される。
図1において、基板110の表面および裏面がXY面と略平行に配置され、XY面に垂直な軸をZ軸とした。即ち、X、Y、Z軸は互いに直交する座標系である。基板110は、第1ホール素子10および第2ホール素子20が内部または表面に形成されてよく、この場合、基板110の製造過程において第1ホール素子10および第2ホール素子20が形成されることが望ましい。
【0012】
磁気収束板120および磁気収束板122は、検出対象の磁場の向きを変更して収束させる。磁気収束板120および磁気収束板122は、基板110と略平行に設けられ、磁気センサ100に入力する磁場を曲げる。磁気収束板120および磁気収束板122は、基板110の表面側または裏面側に設けられてよい。また、磁気収束板120および磁気収束板122は、基板110に接して設けられてよく、これに代えて、基板110とは絶縁層等を介して設けられてもよい。
図1は、磁気収束板120および磁気収束板122が基板110の表面側に接して設けられ、第1ホール素子10および第2ホール素子20の上方にそれぞれ配置される例を示す。
【0013】
磁気収束板120および磁気収束板122は、磁性材料等で形成され、例えば、X軸方向および/またはY軸方向の磁場を、Z軸方向の成分が発生するように曲げ、Z軸方向に感度を有する第1ホール素子10および第2ホール素子20にそれぞれ入力させる。
図1は、磁気収束板120および磁気収束板122が、+Y方向に入力する磁場を曲げ、第1ホール素子10に+Z方向の磁場を、第2ホール素子20に−Z方向の磁場をそれぞれ発生させて入力させる例を示す。
【0014】
図2は、本実施形態に係る第1の磁気センサ100の上面の構成例を示す。即ち、
図2は、
図1におけるXY平面を示し、+Z方向側から第1の磁気センサ100を見た平面視の一例を示す。
図2において、磁気収束板120が+Y方向に入力する磁場を曲げて第1ホール素子10に入力させる+Z方向の磁場を+Bと示し、磁気収束板122が+Y方向に入力する磁場を曲げて第2ホール素子20に入力させる−Z方向の磁場を−Bと示した。
【0015】
図3は、本実施形態に係る第2の磁気センサ100の断面の構成例を示す。
図3は、磁気センサ100のXZ面の断面図の一例を示す。第2の磁気センサ100は、当該磁気センサ100に入力する磁場に応じて検出信号を出力する。第2の磁気センサ100は、電流が流れることによって発生する磁場を検出し、流れる電流の量に応じた検出信号を出力する電流センサとして機能する。これに代えて、第2の磁気センサ100は、電流導体と一体に形成され、電流センサ装置として提供されてもよい。
【0016】
電流導体130は、予め定められた向きに延伸する。また、電流導体130は、第1ホール素子10および第2ホール素子20の間の点の上方または下方において、第1ホール素子10および第2ホール素子20を含む平面と平行に延伸する。
図1は、第2の磁気センサ100が、電流導体130に電流が+X方向に流れ、ZY平面において当該電流を中心に反時計回りに発生する磁場のZ成分を検出する例を示す。第2の磁気センサ100は、第1ホール素子10と、第2ホール素子20と、基板110とを備える。
【0017】
第1ホール素子10および第2ホール素子20は、XY平面に略平行に形成され、Z軸方向と略平行な磁場を検出する。第1ホール素子10および第2ホール素子20は、一例として、X軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたY軸方向の起電力(ホール効果)を発生させる素子である。第1ホール素子10および第2ホール素子20は、半導体等で形成されてよい。
図3は、第1ホール素子10および第2ホール素子20がY軸に略平行に配置され、+Z方向に配置された電流導体130が発生する磁場のZ成分を検出する例を示す。
【0018】
基板110は、シリコン等の半導体によって形成され、半導体回路および半導体素子等を含んでよい。基板110は、ICチップであってよく、この場合、端子を備え、外部の基板、回路、および配線等と電気的に接続される。
図3において、基板110の表面および裏面がXY面と略平行に配置され、XY面に垂直な軸をZ軸とした。基板110は、第1ホール素子10および第2ホール素子20が内部または表面に形成されてよく、この場合、基板110の製造過程において第1ホール素子10および第2ホール素子20が形成されることが望ましい。
【0019】
図4は、本実施形態に係る第2の磁気センサ100の上面の構成例を示す。即ち、
図2は、
図3におけるXY平面を示し、+Z方向側から第2の磁気センサ100を見た平面視の一例を示す。
図4において、電流導体130に流れる+X方向の電流iによって発生する磁場のうち、第1ホール素子10に入力する+Z方向の磁場を+Bと示し、第2ホール素子20に入力する−Z方向の磁場を−Bと示した。
【0020】
以上の本実施形態に係る第1の磁気センサ100および第2の磁気センサ100が有するホール素子は、出力信号に素子固有のオフセット信号を含めて出力する。このようなオフセット信号を低減すべく、非特許文献1に記載されているスピニングカレント法等を利用していた。当該スピニングカレント法は、第1位相と第2位相を繰り返すスピニングカレントクロックに基づき、ホール素子に流す電流の方向を切り換え、磁場入力に応じた信号成分とオフセットによる信号成分の極性を反転させる。
【0021】
例えば、第1位相において、+Z方向の磁場入力Bに対して、+X方向に通電した第1のホール素子は、+Y方向側の端子からホール起電力信号+V
Sを発生する(−Y方向側の端子からホール起電力信号−V
Sを発生する)と共に、+Y方向のオフセット電圧+V
Oを出力する。この場合、当該第1のホール素子は、同じ+Z方向の磁場入力に対して、第2位相において−Y方向に通電すると、+X方向側の端子からホール起電力信号+V
Sを発生する(−X方向側の端子からホール起電力信号−V
Sを発生する)と共に、+X方向のオフセット電圧+V
Oを出力する。したがって、第1位相においてホール素子のY軸方向の端子から出力電圧V
h11を取得し、第2位相においてホール素子のX軸方向の端子から出力電圧V
h12を取得することで、ホール素子の磁場Bの検出信号は次式のように示される。
(数1)
V
h11=+2V
S+V
O
V
h12=−2V
S+V
O
【0022】
このように、通電方向を切り換えることにより、(数1)式のように、ホール素子の検出信号のうち、ホール起電力信号V
Sの信号成分の符号を、第1位相と第2位相において反転させることができる。即ち、スピニングカレント法は、スピニングカレントクロックによってホール起電力信号V
Sを変調して変調信号にすると共に、オフセット電圧V
OをDC信号出力とするので、周波数領域で2つの信号を分離することができ、理想的には、フィルタ等を用いて当該オフセット信号を除去することができる。
【0023】
このようなスピニングカレント法は、オフセット信号を低減する一方で、過渡的にスパイク信号を発生させる。例えば、第1位相においてX軸方向の端子に通電したホール素子は、浮遊容量等の容量成分に電荷が充電され、第2位相においてX軸方向の端子から出力電圧を出力する場合に、充電した電荷を放電する。
【0024】
この場合、一例として、第1位相においてバイアス+V
Bが印加されるX軸方向の電流供給側の(−X方向側の)端子は、容量成分に+電荷が充電されて当該容量成分の電位が+V
Bとなる。そして、第2位相において当該端子の電位は、充電された+電荷が放電して、第1位相から第2位相に切り換わった時点から放電が終了して定常状態(即ち、ホール起電力信号−V
S)へと移行するまでの期間に、電位が+V
Bから―V
S+V
Oへと減衰曲線を描く。また、第1位相においてバイアス−V
Bが印加されるX軸方向の電流出力側の(+X方向側の)端子は−電荷が充電されて当該容量成分の電位が−V
Bとなる。そして、第2位相において当該端子の電位は、充電された−電荷が放電して、第1位相から第2位相に切り換わった時点から放電が終了するまでの期間に、電位が−V
BからV
Sへと絶対値が増加する増加曲線を描く。
【0025】
したがって、第2位相におけるX軸方向の端子間の電圧は、定常状態においては、(数1)式と同様に−2V
S+V
Oとなるが、第1位相から第2位相に切り換わった時点から放電が終了するまでの期間は、両端子における減衰・増加曲線の差分として、+側のスパイク信号V
SP(t)が形成される。
【0026】
同様に、第2位相においてバイアス+V
Bが印加されるY軸方向の電流供給側の(+Y方向側の)端子は、容量成分に+電荷が充電されて当該容量成分の電位が+V
Bとなる。そして、第1位相において当該端子の電位は、充電された+電荷が放電して、第2位相から第1位相に切り換わった時点から放電が終了して定常状態(即ち、ホール起電力信号+V
S)へと移行するまでの期間に、電位が+V
Bから+V
S+V
Oへと減衰曲線を描く。また、第2位相においてバイアス−V
Bが印加されるY軸方向の電流出力側の(−Y方向側の)端子は−電荷が充電されて当該容量成分の電位が−V
Bとなる。そして、第1位相において当該端子の電位は、充電された−電荷が放電して、第2位相から第1位相に切り換わった時点から放電が終了するまでの期間に、電位が−V
Bから−V
Sへと絶対値が増加する増加曲線を描く。
【0027】
したがって、第1位相におけるX軸方向の端子間の電圧は、定常状態においては、(数1)式と同様に+2V
S+V
Oとなるが、第2位相から第1位相に切り換わった時点から放電が終了するまでの期間は、両端子における減衰・増加曲線の差分として、+側のスパイク信号V
SP(t)が形成される。
【0028】
即ち、第1のホール素子は、次式のように、過渡的なスパイク信号V
SP(t)を含む検出信号を出力する。なお、スパイク信号V
SP(t)は、時間的に変動する信号なので、周波数的には広帯域に広がってしまい、オフセット信号のようにホール起電力信号V
Sと周波数的に分離することはできない。
(数2)
V
h11=+2V
S+V
O+V
SP(t)
V
h12=−2V
S+V
O+V
SP(t)
【0029】
このようなスパイク信号を低減すべく、特許文献1等に記載されているように、通電方向の切り換え方向を互いに逆向きにした、1対のホール素子を設けることが知られている。例えば、+Z方向に磁場Bが印加された第1のホール素子は、第1位相から第4位相において+X方向、−Y方向、−X方向、+Y方向と、電流を流す方向をXY平面において時計回りに略90度ずつ順に変更され、検出信号を、+Y方向側、−X方向側、+Y方向側、−X方向側の端子を正極として順に取得することを繰り返す。これにより、第1のホール素子の第1位相から第4位相で取得される信号V
h11〜V
h14は、次式で示される。
(数3)
V
h11=+2V
S+V
O−V
SP(t)
V
h12=−2V
S+V
O+V
SP(t)
V
h13=−2V
S+V
O+V
SP(t)
V
h14=+2V
S+V
O−V
SP(t)
【0030】
そして第1のホール素子と同一方向の磁場Bが印加される第2のホール素子は、第1位相から第4位相において+X方向、+Y方向、−X方向、−Y方向と、電流を流す方向をXY平面において反時計回りに略90度ずつ順に変更され、検出信号を、+Y方向側、+X方向側、+Y方向側、+X方向側の端子を正極として順に取得することを繰り返す。これにより、第2のホール素子の第1位相から第4位相で取得される信号V
h21〜V
h24は、次式で示される。
(数4)
V
h21=+2V
S+V
O+V
SP(t)
V
h22=−2V
S+V
O−V
SP(t)
V
h23=−2V
S+V
O−V
SP(t)
V
h24=+2V
S+V
O+V
SP(t)
【0031】
(数3)式および(数4)式に示すように取得された検出信号に対して、略同一時刻に検出された信号同士の和を取ることにより、次式に示す信号を取得することができる。
(数5)
V
h11+V
h21=+4V
S+2V
O
V
h12+V
h22=−4V
S+2V
O
V
h13+V
h23=−4V
S+2V
O
V
h14+V
h24=+4V
S+2V
O
【0032】
このように、第1のホール素子および第2のホール素子の検出信号の和を算出することにより、理想的にはスパイク信号をキャンセルすることできる。また、(数5)式に示す信号は、(数1)式と同様に、ホール素子の検出信号のうち、スピニングカレントクロック(より正確には、クロック信号の1/2のクロック)によってホール起電力信号V
Sを変調してDC信号にすると共に、オフセット電圧V
Oを変調信号出力とする。したがって、ホール起電力信号V
Sおよびオフセット電圧V
Oは、周波数領域で分離することができ、理想的には、フィルタ等を用いて当該オフセット信号を除去することができる。即ち、スピニングカレント法を用い、ホール素子対の通電方向および信号取得方向を制御することにより、スパイク信号およびオフセットを低減することができる。
【0033】
しかしながら、上記の例は、第1のホール素子および第2のホール素子に同一方向の磁場Bが印加される場合に限られる。即ち、
図1から
図4で説明したように、第1のホール素子および第2のホール素子に逆向きに磁場が印加される場合、上記の制御を実行すると、スパイク信号が強調されてしまい、磁場の検出特性が悪化する場合が生じていた。特に、磁気センサの検出信号を連続時間で処理する連続時間信号処理においては、スパイク状の信号がそのまま誤差信号となってしまい、性能劣化を引き起こしていた。
【0034】
そこで、本実施形態に係る検出装置は、第1のホール素子および第2のホール素子に逆向きに磁場が印加された場合の検出信号を取得して、スパイク信号およびオフセットを低減させる。このような検出装置について、
図5を用いて説明する。
【0035】
図5は、本実施形態に係る検出装置200の構成例を示す。検出装置200は、外部から入力する磁場を検出する。検出装置200は、第1ホール素子10と、第2ホール素子20と、第1スイッチ回路210と、第2スイッチ回路212と、第1増幅部220と、第2増幅部222と、第1加算部230と、第2加算部232と、増幅部240と、第1切換部250と、クロック発生部260とを備える。
【0036】
第1ホール素子10および第2ホール素子20は、検出対象の磁場が逆向きに印加される。即ち、第1ホール素子10および第2ホール素子20は、
図1から
図4で説明した磁気センサ100が有する第1ホール素子10および第2ホール素子20と略同一の素子でよい。第1ホール素子10および第2ホール素子20は、それぞれ複数の端子を有する。第1ホール素子10および第2ホール素子20が有する複数の端子は、それぞれ、駆動端子、電流出力端子、正の測定端子、および負の測定端子のいずれかとして機能してよい。
【0037】
第1ホール素子10が有する複数の端子は、第1平面上において第1ホール素子10から相異なる複数の方向にそれぞれ延伸する。例えば、第1ホール素子10が有する複数の端子は、
図1から
図4で説明した磁気センサ100のXY平面において、相異なる複数の方向にそれぞれ延伸する。この場合、第1ホール素子10が有する複数の端子は、X軸およびY軸に対して、それぞれ線対称な形状に設けられてよい。
【0038】
第2ホール素子が有する複数の端子は、第1平面上において第1ホール素子10が有する複数の端子と同一方向に延伸する。第2ホール素子20が有する複数の端子は、
図1から
図4で説明した磁気センサ100のXY平面において、相異なる複数の方向にそれぞれ延伸してよく、X軸およびY軸に対して、それぞれ線対称な形状に設けられてよい。第1ホール素子10および第2ホール素子は、略相似な形状に設けられてよく、また、略同一形状に形成されることが望ましい。
【0039】
図5は、第1ホール素子10および第2ホール素子20が、4つの端子を有する例を示す。即ち、第1ホール素子10は、端子12、端子14、端子16、および端子18を有し、第2ホール素子20は、端子22、端子24、端子26、および端子28を有する。ここで、当該4つの端子のうち、2つの端子は、第1の方向に並んでよく、残りの2つは、当該第1の方向とは異なる第2の方向に並んでよい。この場合、第1の方向および第2の方向は、XY平面において直交してよい。例えば、第1ホール素子10および第2ホール素子20は、XY平面において、十字形状に形成されてよい。
図5は、第1ホール素子10および第2ホール素子20が、十字形状に形成された4つの端子をそれぞれ有する例を示す。
【0040】
また、当該第1の方向が、XY平面においてX軸と予め定められた角度を有するように、第1ホール素子10および第2ホール素子20は、基板110に形成されてよい。例えば、当該第1の方向はX軸と略平行でよい(この場合、当該第2の方向はY軸と略平行となってよい)。これに代えて、当該第1の方向はX軸およびY軸となす角がそれぞれ略45度の方向と略平行でよい(この場合、当該第2の方向はX軸となす角が略45度でY軸となす角が略135度の方向と略平行となってよい)。
【0041】
第1ホール素子10および第2ホール素子20は、第1の方向に駆動電流を流し、第2の方向から測定電圧を出力してよく、これに代えて、第2の方向に駆動電流を流し、第1の方向から測定電圧を出力してもよい。例えば、第1ホール素子10は、端子12および端子14の間で駆動電流を流し、端子16および端子18の間で測定電圧を外部に出力してよく、これに代えて、端子16および端子18の間で駆動電流を流し、端子12および端子14の間で測定電圧を外部に出力してよい。
【0042】
第1ホール素子10および第2ホール素子20は、第1の方向に駆動電流を流す場合、当該第1の方向には、駆動電流を注入する駆動端子および電流を出力する電流出力端子として機能する2つの端子がそれぞれ並ぶ。そして、第2の方向には、正の測定端子および負の測定端子として機能する2つの端子がそれぞれ並ぶ。また、第1ホール素子10および第2ホール素子20は、第2の方向に駆動電流を流す場合、当該第2の方向には、駆動電流を注入する駆動端子および電流を出力する電流出力端子として機能する2つの端子がそれぞれ並ぶ。そして、第1の方向には、正の測定端子および負の測定端子として機能する2つの端子がそれぞれ並ぶ。
【0043】
第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10が有する複数の端子間において、駆動電流を注入する駆動端子、正の測定端子、および負の測定端子を切り換える。第1スイッチ回路210は、定電流を流す定電流源および外部に測定電圧を出力する外部接続端子を有する。第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10が有する複数の端子と接続され、当該複数の端子、定電流源、および外部接続端子の間の接続を切り換える。
【0044】
図5の例において、第1スイッチ回路210は、端子12、端子14、端子16、および端子18のそれぞれを、駆動端子、電流出力端子、正の測定端子、および負の測定端子のいずれか1つとして機能するように切り換える。例えば、第1スイッチ回路210は、第1の方向に駆動電流を流す場合、端子12および端子14を定電流源にそれぞれ接続して駆動端子および電流出力端子としてそれぞれ機能させ、端子16および端子18を外部接続端子にそれぞれ接続して正の測定端子および負の測定端子としてそれぞれ機能させる。
【0045】
第1スイッチ回路210は、例えば、各端子の接続の第1の組み合わせと第2の組み合わせとを、切り換えてよい。第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10が有する複数の端子を、第1ホール素子10の第1方向に駆動電流を流す駆動端子および電流出力端子と、第1方向とは異なる第2方向から第1ホール素子10の測定電圧を出力させる正の測定端子および負の測定端子の第1の組み合わせと、第1ホール素子10の第2方向に駆動電流を流す駆動端子および電流出力端子と、第1方向から第1ホール素子10の測定電圧を出力させる正の測定端子および負の測定端子との第2の組み合わせと、のいずれかに切り換えてよい。
【0046】
第2スイッチ回路212は、第2ホール素子20が有する複数の端子間において、駆動電流を注入する駆動端子、正の測定端子、および負の測定端子を切り換える。第2スイッチ回路212は、定電流を流す定電流源および外部に測定電圧を出力する外部接続端子を有する。第2スイッチ回路212は、第2ホール素子20が有する複数の端子と接続され、当該複数の端子、定電流源、および外部接続端子の間の接続を切り換える。
【0047】
図5の例において、第2スイッチ回路212は、端子22、端子24、端子26、および端子28のそれぞれを、駆動端子、電流出力端子、正の測定端子、および負の測定端子のいずれか1つとして機能するように切り換える。例えば、第2スイッチ回路212は、第1の方向に駆動電流を流す場合、端子22および端子24を定電流源にそれぞれ接続して駆動端子および電流出力端子としてそれぞれ機能させ、端子26および端子28を外部接続端子にそれぞれ接続して正の測定端子および負の測定端子としてそれぞれ機能させる。
【0048】
第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210が第1ホール素子10の駆動端子を正の測定端子に切り換えることに応じて、第2ホール素子20における駆動端子を負の測定端子に切り換える。また、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210が第1ホール素子10の駆動端子を負の測定端子に切り換えることに応じて、第2ホール素子20における駆動端子を正の測定端子に切り換えてもよい。第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210の切換動作と同期して、第2ホール素子20の切換動作を実行してよい。また、第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212は、予め定められた周期で切換動作を実行してよい。
【0049】
例えば、第1スイッチ回路210が端子12から端子14へと駆動電流を流している状態から、端子12および端子14をそれぞれ外部接続端子に接続する状態へと切り換える場合、第2スイッチ回路212は、端子22から端子24へと駆動電流を流している状態から、端子22および端子24をそれぞれ外部接続端子に接続する状態へと切り換えてよい。この場合において、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210が端子12および端子14を外部接続端子に接続する極性とは逆極性となるように、端子22および端子24をそれぞれ外部接続端子に接続する。
【0050】
また、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10が有する複数の端子のうち、予め定められた順序で駆動端子を選択して切り換え、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210が駆動端子を選択する順序と同じ順序で、第2ホール素子20が有する複数の端子のうち駆動端子を選択して切り換える。例えば、第1スイッチ回路210が、駆動端子を端子12、端子18、端子14、端子16、端子12、・・・の順に(即ち、XY平面において反時計回りに)切り換えた場合、第2スイッチ回路212は、駆動端子を端子22、端子26、端子24、端子28、端子22、・・・の順に(即ち、反時計回りに)切り換えてよい。
【0051】
この場合、第2スイッチ回路212は、選択順序は同じにしても、駆動端子とする端子の位置を異ならせてもよい。例えば、第1スイッチ回路210が、駆動端子を端子12、端子18、端子14、端子16、端子12、・・・の順に(反時計回りに)切り換えた場合、第2スイッチ回路212は、駆動端子を端子26、端子24、端子28、端子22、端子26、・・・の順に(反時計回りに)切り換えてよい。このような第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212の切換については、後に述べる。
【0052】
第1増幅部220は、第1ホール素子10の出力信号を増幅する。第1増幅部220は、差動増幅回路でよい。また、第1増幅部220は、電圧を電流に変換するトランジスタ差動対でもよい。第1増幅部220は、例えば、第1スイッチ回路210の外部接続端子に接続され、第1ホール素子10の出力信号(例えば、V
hall1+、V
hall1−)を受けとって増幅する。第1増幅部220は、増幅した信号を第1加算部230および第2加算部232に供給する。
【0053】
第2増幅部222は、第2ホール素子20の出力信号を増幅する。第2増幅部222は、差動増幅回路でよい。また、第2増幅部222は、電圧を電流に変換するトランジスタ差動対でもよい。第2増幅部222は、例えば、第2スイッチ回路212の外部接続端子に接続され、第2ホール素子20の出力信号(例えば、V
hall2+、V
hall2−)を受けとって増幅する。第2増幅部222は、増幅した信号を第1加算部230および第2加算部232に供給する。
【0054】
第1加算部230は、入力した信号を加算して出力する。第1加算部230は、例えば、第1増幅部220および第2増幅部222に接続され、第1ホール素子10の出力信号のうちの一方(例えば、V
hall1+)と、第2ホール素子20の出力信号のうちの一方(例えば、V
hall2+)とを受け取り、加算して出力する。第1加算部230は、連続時間で同時加算して出力してよい。即ち、第1加算部230は、第1ホール素子10の正の測定端子および第2ホール素子20の正の測定端子からそれぞれ出力される出力信号を加算する。なお、当該加算は電流加算でもよい。第1加算部230は、加算した信号を増幅部240に供給する。
【0055】
第2加算部232は、入力した信号を加算して出力する。第2加算部232は、例えば、第1増幅部220および第2増幅部222に接続され、第1ホール素子10の出力信号のうちの他方(例えば、V
hall−)と、第2ホール素子20の出力信号のうちの他方(例えば、V
hall2−)とを受け取り、加算して出力する。第2加算部232は、連続時間で同時加算して出力してよい。即ち、第2加算部232は、第1ホール素子10の負の測定端子および第2ホール素子20の負の測定端子からそれぞれ出力される出力信号を加算する。なお、当該加算は電流加算でもよい。第2加算部232は、加算した信号を増幅部240に供給する。
【0056】
増幅部240は、第1加算部230が出力する信号と、第2加算部232が出力する信号とを、入力して増幅する。増幅部240は、差動増幅回路でよい。また、増幅部240は、電流電圧変換回路でもよい。増幅部240は、増幅した信号を第1切換部250に供給する。
【0057】
第1切換部250は、入力する信号の正負を予め定められたタイミングで反転する。第1切換部250は、第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212の切り換えタイミングと同期したタイミングで、信号の正負を反転してよい。
【0058】
第1切換部250は、例えば、入力する信号を増幅部240から2つの信号線を用いた差動信号として受けとり、2つの信号線を用いた差動信号として出力する。この場合、第1切換部250は、入力信号線の一方を出力信号線の一方に接続し、かつ、入力信号線の他方を出力信号線の他方に接続するか、入力信号線の一方を出力信号線の他方に接続し、かつ、入力信号線の他方を出力信号線の一方に接続するか、を切り換えてよい。
【0059】
第1切換部250は、出力信号を外部へ検出装置200の出力信号として出力する。第1切換部250は、バッファアンプ等を介して、出力信号を外部へ出力してよい。また、第1切換部250は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部器を介して、出力信号を外部へ出力してもよい。
【0060】
クロック発生部260は、クロック信号を発生させて、第1スイッチ回路210、第2スイッチ回路212、第1切換部250に供給する。クロック発生部260は、クロック信号をスピニングカレントクロック信号として、それぞれ供給する。クロック発生部260は、例えば、数kHzから数百kHzの周波数のクロック信号を発生させてよい。
【0061】
なお、検出装置200は、増幅動作を安定化すべく、フィードバックループを備えてよい。フィードバックループは、分圧部270と、第2切換部280と、増幅部290とを有する。
【0062】
分圧部270は、第1切換部250の出力を分圧する。分圧部270は、複数の抵抗器を有し、抵抗器の抵抗値に応じた分圧信号を出力する。分圧部270は、第1切換部250の出力が2つの信号線(一方を正の信号、他方を負の信号とする)による差動出力の場合、当該2つの信号線のそれぞれに接続され、それぞれの分圧信号を生成して出力してよい。分圧部270は、一例として、負の信号は抵抗値R
1およびR
2を有する2つの抵抗器によって出力信号を分圧比R
1/(R
1+R
2)で分圧して出力する。また、正の信号は抵抗値R
3およびR
4を有する2つの抵抗器によって出力信号を分圧比R
3/(R
3+R
4)で分圧して出力する。分圧部270は、分圧信号を第2切換部280に供給する。
【0063】
第2切換部280は、分圧信号の供給先を選択して切り換える。第2切換部280は、クロック発生部260のクロック信号に応じて分圧信号の供給先を選択して切り換える。即ち、第1ホール素子10および第2ホール素子20の出力信号は、第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212によって、クロック発生部260のクロック信号のタイミングで変調されるので、当該変調に同期してフィードバック信号の供給先を切り換える。
【0064】
例えば、第2切換部280は、第1切換部250の正(プラス側)の信号出力の分圧信号を、変調信号がプラス側の信号になっている期間に当該プラス側の信号を伝送する一方の信号線に供給するように切り換える。この場合、第2切換部280は、第1切換部250の負(マイナス側)の信号出力の分圧信号を、正の信号出力の分圧信号を供給する信号線とは異なる他方の信号線に供給するように切り換えてよい。また、第2切換部280は、第1切換部250の正の信号出力の分圧信号を、変調信号がマイナス側の信号になっている期間に当該マイナス側の信号を伝送する他方の信号線に供給するように切り換えてよい。この場合、第2切換部280は、第1切換部250の負の信号出力の分圧信号を、一方の信号線に供給するように切り換えてよい。
【0065】
第2切換部280は、増幅部290を介して、分圧信号をフィードバック信号として第1加算部230および第2加算部232にそれぞれ供給する。この場合、第1加算部230および第2加算部232は、第1増幅部220、第2増幅部222、およびフィードバック信号を合計した信号を増幅部240にそれぞれ供給する。
【0066】
増幅部290は、第2切換部280と第1加算部230および第2加算部232の間に設けられ、フィードバック信号を増幅する。増幅部290は、バッファアンプとして機能してもよい。また、フィードバック信号が十分に供給できる場合、増幅部290は、なくてもよい。
【0067】
なお、第1増幅部220、第2増幅部222、増幅部290の増幅率をそれぞれ、G
1、G
2、G
3とし、第1切換部250の出力信号をV
OUT1、V
OUT2とすると、次式が成立する。
(数6)
V
OUT1=(1+R
2/R
1){(G
1/G
3)V
hall1++(G
2/G
3)V
hall2+}
V
OUT2=(1+R
4/R
3){(G
1/G
3)V
hall1−+(G
2/G
3)V
hall2−}
【0068】
以上の本実施形態に係る検出装置200は、第1ホール素子10および第2ホール素子20にそれぞれ逆向きに磁場が印加される場合において、第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212の切換を予め定められた順に制御する。第1スイッチ回路210が切り換える第1ホール素子10の接続状態について、
図6から
図9を用いて説明する。また、第2スイッチ回路212が切り換える第2ホール素子20の接続状態について、
図10から
図13を用いて説明する。
【0069】
図6は、本実施形態に係る第1ホール素子10の接続の第1の例を示す。
図6は、第1スイッチ回路210が、+Z方向に磁場Bが印加された第1ホール素子10の端子12を駆動端子、端子14を電流出力端子として選択して定電流源にそれぞれ接続し、端子12から端子14に電流iを流す例を示す。なお、定電流源は、電流を供給するプラス側のコモンバイアスV
C+と電流を受けとるマイナス側のコモンバイアスV
C−を有してよく、この場合、第1スイッチ回路210は、端子12をプラス側のコモンバイアスV
C+に、端子14をマイナス側のコモンバイアスV
C−にそれぞれ接続する。なお、Vc
+とVc
−はホール素子のコモン電圧から見た差分電圧でその電位を表しているものとし、以下においてはVc
−=−Vc
+であるとして説明を行う。
【0070】
また、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10の端子16を正の測定端子、端子18を負の測定端子として選択して外部接続端子に接続にそれぞれ接続し、端子16および端子18から出力される出力信号を第1増幅部220に供給する。
図6の例において、第1ホール素子10は、磁場Bの方向および電流iの方向に応じて、端子16からプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall1+として出力する。したがって、第1スイッチ回路210は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第1増幅部220の差動入力のプラス側の入力に供給する。そして、第1ホール素子10は、端子18からマイナス側のホール起電力信号−V
sigを出力信号V
hall1−として出力する。したがって、第1スイッチ回路210は、マイナス側のホール起電力信号−V
sigを第1増幅部220の差動入力のマイナス側の入力に供給する。
【0071】
図7は、本実施形態に係る第1ホール素子10の接続の第2の例を示す。
図7は、第1スイッチ回路210が、+Z方向に磁場Bが印加された第1ホール素子10の端子16を駆動端子、端子18を電流出力端子として選択して定電流源にそれぞれ接続し、端子16から端子18に電流iを流す例を示す。また、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10の端子12を正の測定端子、端子14を負の測定端子として選択して外部接続端子に接続にそれぞれ接続し、端子12および端子14から出力される出力信号を第1増幅部220に供給する。
【0072】
図7の例において、第1ホール素子10は、磁場Bの方向および電流iの方向に応じて、端子14側にプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall1−として出力する。したがって、第1スイッチ回路210は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第1増幅部220の差動入力のマイナス側の入力に供給する。
【0073】
図8は、本実施形態に係る第1ホール素子10の接続の第3の例を示す。
図8は、第1スイッチ回路210が、+Z方向に磁場Bが印加された第1ホール素子10の端子14を駆動端子、端子12を電流出力端子として選択し、端子14から端子12に電流iを流す例を示す。また、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10の端子16を正の測定端子、端子18を負の測定端子として選択し、端子16および端子18から出力される出力信号を第1増幅部220に供給する。
図8の例において、第1ホール素子10は、端子18側にプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall1−として出力する。したがって、第1スイッチ回路210は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第1増幅部220の差動入力のマイナス側の入力に供給する。
【0074】
図9は、本実施形態に係る第1ホール素子10の接続の第4の例を示す。
図9は、第1スイッチ回路210が、+Z方向に磁場Bが印加された第1ホール素子10の端子18を駆動端子、端子16を電流出力端子として選択し、端子18から端子16に電流iを流す例を示す。また、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10の端子12を正の測定端子、端子14を負の測定端子として選択し、端子12および端子14から出力される出力信号を第1増幅部220に供給する。
図9の例において、第1ホール素子10は、端子12側にプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall1+として出力する。したがって、第1スイッチ回路210は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第1増幅部220の差動入力のプラス側の入力に供給する。
【0075】
図10は、本実施形態に係る第2ホール素子20の接続の第1の例を示す。
図10は、第2スイッチ回路212が、−Z方向に磁場Bが印加された第2ホール素子20の端子22を駆動端子、端子24を電流出力端子として選択して定電流源にそれぞれ接続し、端子22から端子24に電流iを流す例を示す。また、第2スイッチ回路212は、第2ホール素子20の端子26を正の測定端子、端子28を負の測定端子として選択して外部接続端子に接続にそれぞれ接続し、端子26および端子28から出力される出力信号を第2増幅部222に供給する。
図10の例において、第2ホール素子20は、磁場Bの方向および電流iの方向に応じて、端子26にプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall2+として出力する。したがって、第2スイッチ回路212は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第2増幅部222の差動入力のプラス側の入力に供給する。
【0076】
図11は、本実施形態に係る第2ホール素子20の接続の第2の例を示す。
図11は、第2スイッチ回路212が、−Z方向に磁場Bが印加された第2ホール素子20の端子28を駆動端子、端子26を電流出力端子として選択し、端子28から端子26に電流iを流す例を示す。また、第2スイッチ回路212は、第2ホール素子20の端子24を正の測定端子、端子22を負の測定端子として選択し、端子24および端子22から出力される出力信号を第2増幅部222に供給する。
図11の例において、第2ホール素子20は、端子22側にプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall2−として出力する。したがって、第2スイッチ回路212は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第2増幅部222の差動入力のマイナス側の入力に供給する。
【0077】
図12は、本実施形態に係る第2ホール素子20の接続の第3の例を示す。
図12は、第2スイッチ回路212が、−Z方向に磁場Bが印加された第2ホール素子20の端子24を駆動端子、端子22を電流出力端子として選択し、端子24から端子22に電流iを流す例を示す。また、第2スイッチ回路212は、第2ホール素子20の端子26を正の測定端子、端子28を負の測定端子として選択し、端子26および端子28から出力される出力信号を第2増幅部222に供給する。
図12の例において、第2ホール素子20は、端子28側にプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall2−として出力する。したがって、第2スイッチ回路212は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第2増幅部222の差動入力のマイナス側の入力に供給する。
【0078】
図13は、本実施形態に係る第2ホール素子20の接続の第4の例を示す。
図13は、第2スイッチ回路212が、−Z方向に磁場Bが印加された第2ホール素子20の端子26を駆動端子、端子28を電流出力端子として選択し、端子26から端子28に電流iを流す例を示す。また、第2スイッチ回路212は、第2ホール素子20の端子24を正の測定端子、端子22を負の測定端子として選択し、端子24および端子22から出力される出力信号を第2増幅部222に供給する。
図13の例において、第2ホール素子20は、端子24側にプラス側のホール起電力信号+V
sigを出力信号V
hall2+として出力する。したがって、第2スイッチ回路212は、プラス側のホール起電力信号+V
sigを第2増幅部222の差動入力のプラス側の入力に供給する。
【0079】
本実施形態に係る検出装置200は、以上の第1ホール素子10の接続および第2ホール素子20の接続を組み合わせて、オフセット信号と、過渡的なスパイク信号とを除去する。例えば、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10が有する複数の端子のうち、第1平面において、第1ホール素子10を中心とした予め定められた回転方向に駆動端子を選択して切り換える。即ち、第1スイッチ回路210は、
図6、
図7、
図8、
図9、
図6、・・・に示す接続の順に、クロック発生部260のクロックに応じて、第1ホール素子10の接続を切り換えてよい。この場合、第1スイッチ回路210は、端子12、端子16、端子14、端子18、端子12、・・・と、第1ホール素子10を中心として時計回りに駆動端子を選択して切り換えることになる。
【0080】
そして、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210が駆動端子を選択する順序と同じ順序で、第2ホール素子20の駆動端子を選択して切り換える。即ち、第2スイッチ回路212は、
図10、
図11、
図12、
図13、
図10、・・・に示す接続の順に、クロック発生部260のクロックに応じて、第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。この場合、第2スイッチ回路212は、端子22、端子28、端子24、端子26、端子22、・・・と、第2ホール素子20を中心として時計回りに駆動端子を選択して切り換えることになる。
【0081】
検出装置200がこのように第1ホール素子10および第2ホール素子20の接続を切り換えた場合の信号波形について、
図14を用いて説明する。
図14は、本実施形態に係るホール素子の駆動端子を、時計回りに選択して切り換えた場合の信号波形の一例を示す。
図14の横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。
【0082】
クロック発生部260は、クロック位相φ1、φ2、φ3およびφ4を時間的に切り換えるクロック信号を発生する。クロック発生部260が発生するクロック信号は、スピニングカレント法のチョッパークロックとして機能する。
【0083】
図14の第1ホール素子の波形において、クロック位相がφ1からφ2に切り換わる部分は、第1スイッチ回路210が、
図6の接続から
図7の接続へと第1ホール素子10の接続を切り換えた場合の信号波形の例を示す。この場合、端子12は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C+から−V
sigへと減少する減衰カーブを描く。また、端子14は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C−から+V
sigへと増加する増加カーブを描く。したがって、端子12をプラス側とした端子12および端子14の差動信号は、2V
C+から−2V
sigへと過渡的に減少する減衰曲線を示し、その後、−2V
sigの一定値を保つ。
【0084】
また、
図14の第1ホール素子の波形において、クロック位相がφ2からφ3に切り換わる部分は、第1スイッチ回路210が、
図7の接続から
図8の接続へと切り換えた場合の信号波形の例を示す。この場合、端子16は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わり、端子18は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わる。したがって、クロック位相がφ1からφ2に切り換わる場合と同様に、端子16をプラス側とした端子16および端子18の差動信号は、2V
C+から−2V
sigへと過渡的に減少する減衰曲線を示し、その後、−2V
sigの一定値を保つ。
【0085】
また、
図14の第1ホール素子の波形において、クロック位相がφ3からφ4に切り換わる部分は、第1スイッチ回路210が、
図8の接続から
図9の接続へと切り換えた場合の信号波形の例を示す。この場合、端子12は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C−から+V
sigへと増加する増加カーブを描く。また、端子14は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C+から−V
sigへと減少する減衰カーブを描く。したがって、端子12をプラス側とした端子12および端子14の差動信号は、2V
C−から+2V
sigへと過渡的に増加する増加曲線を示し、その後、+2V
sigの一定値を保つ。
【0086】
また、
図14の第1ホール素子の波形において、クロック位相がφ4からφ1に切り換わる部分は、第1スイッチ回路210が、
図9の接続から
図6の接続へと切り換えた場合の信号波形の例を示す。この場合、端子16は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わり、端子14は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わる。したがって、クロック位相がφ3からφ4に切り換わる場合と同様に、端子16をプラス側とした端子16および端子18の差動信号は、2V
C−から+2V
sigへと過渡的に増加する増加曲線を示し、その後、+2V
sigの一定値を保つ。
【0087】
したがって、第1ホール素子10の出力信号の波形は、クロック信号の切り換えに伴い、+2V
sigおよび−2V
sigが切り換わる変調信号と、プラス側およびマイナス側に発生するスパイク信号と、オフセット信号を含む信号となる。なお、オフセット信号は、プラス側のDC成分として発生するが、
図14においては記載を省いている。
【0088】
図14の第2ホール素子の波形において、クロック位相がφ1からφ2に切り換わる部分は、第2スイッチ回路212が、
図10の接続から
図11の接続へと第2ホール素子20の接続を切り換えた場合の信号波形の例を示す。この場合、端子24は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C−から−V
sigへと増加する増加カーブを描く。また、端子22は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C+から+V
sigへと減少する減衰カーブを描く。したがって、端子24をプラス側とした端子24および端子22の差動信号は、2V
C−から−2V
sigへと過渡的に増加する増加曲線を示し、その後、−2V
sigの一定値を保つ。
【0089】
また、
図14の第2ホール素子の波形において、クロック位相がφ2からφ3に切り換わる部分は、第2スイッチ回路212が、
図11の接続から
図12の接続へと第2ホール素子20の接続を切り換えた場合の信号波形の例を示す。この場合、端子26は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わり、端子28は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わる。したがって、端子26をプラス側とした端子26および端子28の差動信号は、2V
C−から−2V
sigへと過渡的に増加する増加曲線を示し、その後、−2V
sigの一定値を保つ。
【0090】
また、
図14の第2ホール素子の波形において、クロック位相がφ3からφ4に切り換わる部分は、第2スイッチ回路212が、
図12の接続から
図13の接続へと第2ホール素子20の接続を切り換えた場合の信号波形の例を示す。この場合、端子24は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C+から+V
sigへと減少する減衰カーブを描く。また、端子22は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わるので、過渡的には、V
C−から−V
sigへと増加する増加カーブを描く。したがって、端子24をプラス側とした端子24および端子22の差動信号は、2V
C+から+2V
sigへと過渡的に減少する減衰曲線を示し、その後、+2V
sigの一定値を保つ。
【0091】
また、
図14の第2ホール素子の波形において、クロック位相がφ4からφ1に切り換わる部分は、第2スイッチ回路212が、
図13の接続から
図10の接続へと第2ホール素子20の接続を切り換えた例場合の信号波形の例を示す。この場合、端子26は、プラス側のコモンバイアスV
C+の接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わり、端子28は、マイナス側のコモンバイアスV
C−の接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わる。したがって、端子26をプラス側とした端子26および端子28の差動信号は、2V
C+から+2V
sigへと過渡的に減少する減衰曲線を示し、その後、+2V
sigの一定値を保つ。
【0092】
したがって、第2ホール素子20の出力信号の波形は、クロック信号の切り換えに伴い、+2V
sigおよび−2V
sigが切り換わる変調信号と、プラス側およびマイナス側に発生するスパイク信号と、オフセット信号を含む信号となる。なお、オフセット信号は、プラス側のDC成分として発生するが、
図14においては記載を省いている。
【0093】
このように、第2スイッチ回路は、第1スイッチ回路の駆動端子を選択する順序と同じ順序で第2ホール素子の駆動端子を切り換え、かつ、第1スイッチ回路が駆動端子を測定端子に切り換えることに応じて、第2ホール素子における駆動端子を逆極性の測定端子に切り換える。これにより、第2ホール素子20の出力信号の波形は、第1ホール素子10の出力信号の波形と比較して、変調信号の変調の向きを一致させ、スパイク信号の発生する正負の向きを反転させることができる。
【0094】
第1加算部230および第2加算部232は、このような第1ホール素子10および第2ホール素子20の出力信号を加算する。加算後の信号は、
図14に示すように、変調の向きが一致した変調信号を加算することにより、変調信号の振幅値が2倍になり、反転したスパイク信号が加算によりキャンセルされる。なお、オフセット信号は、DC成分として存在するが、
図14においては記載を省いている。これにより、検出装置200は、クロック信号の1/2の周波数で変調されたホール起電力信号と、オフセットのDC成分とを有する信号を加算信号として取得することができる。
【0095】
第1切換部250は、クロック発生部260のクロック信号に基づき、当該加算信号を復調する。即ち、第1切換部250は、クロック発生部260のクロック信号1/2の周波数のクロック(復調クロック)で、当該加算信号の極性を反転させる。これにより、第1切換部250は、ホール起電力信号をDC信号として出力することができる。なお、オフセット信号は、復調によって、逆に変調信号となるので、フィルタ等で除去することができる。これに代えて、オフセット信号は、第1切換部250に入力される前のDC成分の段階で、フィルタ等で除去されてもよい。
【0096】
以上のように、本実施形態に係る検出装置200は、2つのホール素子に入力する磁場の向きがそれぞれ異なってしまう場合であっても、ホール素子のオフセットをキャンセルすると共に、過渡的なスパイク信号を低減することができる。また、検出装置200は、ホール素子の駆動端子を選択する順序を同一にした簡便な制御で、ホール起電力信号を取得することができる。これによって、検出装置200は、精度の良い磁気センサ、電流センサ等を、提供することができる。
【0097】
以上のように、本実施形態に係る検出装置200は、2つのホール素子の駆動端子を選択する順序を、時計回りに選択する例を説明した。これに代えて、検出装置200は、2つのホール素子の駆動端子を選択する順序を、反時計回りに選択してもよい。即ち、第1スイッチ回路210は、
図6、
図9、
図8、
図7、
図6、・・・に示す接続の順に、第1ホール素子10の接続を切り換え、第2スイッチ回路212は、
図10、
図13、
図12、
図11、
図10、・・・に示す接続の順に、第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。
【0098】
このように、検出装置200は、2つのホール素子の駆動端子を選択する順序を、同一の回転方向に切り換える場合、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210の駆動端子の選択とは位相をずらして、第2ホール素子20の駆動端子を選択して切り換えてもよい。例えば、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210の駆動端子の選択と比較して90度位相をずらして、第2ホール素子20の駆動端子を選択して切り換えてよい。
【0099】
より具体的には、第1スイッチ回路210は、
図6、
図7、
図8、
図9、
図6、・・・に示す接続の順に、第1ホール素子10の接続を切り換え、第2スイッチ回路212は、
図11、
図12、
図13、
図10、
図11、・・・に示す接続の順に、第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。なお、この場合、第2スイッチ回路212は、
図11および
図13の接続において、正の測定端子を端子22に、負の測定端子を端子24に接続する。
【0100】
また、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210の駆動端子の選択と比較して180度位相をずらして、第2ホール素子20の駆動端子を選択して切り換えてもよい。より具体的には、第1スイッチ回路210は、
図6、
図7、
図8、
図9、
図6、・・・に示す接続の順に、第1ホール素子10の接続を切り換え、第2スイッチ回路212は、
図12、
図13、
図10、
図11、
図12、・・・に示す接続の順に、第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。なお、この場合、第2スイッチ回路212は、
図10から
図13の接続の全てにおいて、正の測定端子と負の測定端子の接続を反転させる。
【0101】
また、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210の駆動端子の選択と比較して270度位相をずらして、第2ホール素子20の駆動端子を選択して切り換えてよい。より具体的には、第1スイッチ回路210は、
図6、
図7、
図8、
図9、
図6、・・・に示す接続の順に、第1ホール素子10の接続を切り換え、第2スイッチ回路212は、
図13、
図10、
図11、
図12、
図13、・・・に示す接続の順に、第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。なお、この場合、第2スイッチ回路212は、
図10および
図12の接続において、正の測定端子を端子28に、負の測定端子を端子26に接続する。
【0102】
これに代えて、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10が有する複数の端子のうち、第1平面において、第1ホール素子10を中心として8の字に駆動端子を選択して切り換えてもよい。この場合、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210の駆動端子の選択の順序と同一の順序で(即ち、8の字に)、第2ホール素子20の駆動端子を切り換える。
【0103】
より具体的には、第1スイッチ回路210は、
図6、
図7、
図9、
図8、
図6、・・・に示す接続の順に、第1ホール素子10の接続を切り換え、第2スイッチ回路212は、
図10、
図11、
図13、
図12、
図10、・・・に示す接続の順に、第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。なお、この場合、第1スイッチ回路210は、
図8および
図9の接続において、第2スイッチ回路212は、
図12および
図13の接続において、正の測定端子と負の測定端子の接続を逆にする。
【0104】
検出装置200がこのように第1ホール素子10および第2ホール素子20の接続を切り換えた場合の、信号波形の例を
図15に示す。
図15は、本実施形態に係るホール素子の駆動端子を、8の字に選択して切り換えた場合の信号波形の一例を示す。
図15の横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。なお、
図15において、クロック位相がφ1からφ2に切り換わる場合、およびφ3からφ4に切り換わる場合の信号波形の変化は、
図14で説明した変化と同様に説明できるのでここでは説明を省略する。ただし、φ3からφ4に切り換わる場合のスパイク信号の極性は、
図14と逆となる。
【0105】
図15の第1ホール素子の波形は、クロック位相がφ2からφ3に切り換わると共に、第1スイッチ回路210が、
図7の接続から
図9の接続へと第1ホール素子10の接続を切り換えた例を示す。なお、第1スイッチ回路210は、
図9における正の測定端子と負の測定端子の接続を逆に接続する。この場合、端子14は、プラス側のホール起電力信号+V
sigの接続からマイナス側のホール起電力信号−V
sigに切り換わるので、過渡的には、+V
sigから−V
sigへと減少する減衰カーブを描く。
【0106】
また、端子12は、マイナス側のホール起電力信号−V
sigの接続からプラス側のホール起電力信号+V
sigに切り換わるので、過渡的には、−V
sigから+V
sigへと増加する増加カーブを描く。したがって、端子14をプラス側とした端子14および端子12の差動信号は、2V
sigから−2V
sigへと過渡的に減少する減衰曲線を示し、その後、−2V
sigの一定値を保つ。このような減衰曲線は、コモンバイアスからの変動ではないので、例えば、クロック位相がφ1からφ2に切り換わる場合の減衰曲線よりも大きな変動にはならない。したがって、クロック位相がφ2からφ3に切り換わる場合、スパイク信号は発生するが、当該スパイク信号は、クロック位相がφ1からφ2に切り換わる場合のスパイク信号よりもピーク値が極めて小さくなる。また、このスパイク信号は磁場が入力されていない時は発生しないため、オフセットに寄与しない。
【0107】
このようなスパイク信号の発生は、クロック位相がφ4からφ1に切り換わる場合の第1ホール素子10の信号波形も同様に説明できるのでここでは説明を省略する。また、クロック位相がφ2からφ3に切り換わる場合、およびφ4からφ1に切り換わる場合の第2ホール素子20の信号波形も同様に説明できるのでここでは説明を省略する。
【0108】
このように、第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212が、駆動端子の選択を8の字に切り換える場合も、第2ホール素子20の出力信号の波形は、第1ホール素子10の出力信号の波形と比較して、変調信号の変調の向きを一致させ、スパイク信号の発生する正負の向きを反転させることができる。したがって、第1加算部230および第2加算部232による加算により、変調信号の振幅値が2倍になり、反転したスパイク信号をキャンセルすることができる。
【0109】
また、ホール起電力信号は変調され、オフセット信号はDC成分となるので、周波数領域で分離することができる。なお、第1切換部250による復調の動作は、
図14で説明した動作と略同一なのでここでは省略する。以上のように、駆動端子の選択を8の字に切り換える場合も、ホール素子のオフセットを低減させると共に、過渡的なスパイク信号を低減することができる。なお、プロセスの製造ばらつきによって第1ホール素子10、第2ホール素子20の浮遊容量がずれ、第1ホール素子10、第2ホール素子20のどちらかのスパイク信号の強度がより大きく、スパイク信号をキャンセルできない場合がある。このような場合であっても、駆動端子の選択を8の字に切り換えることにより、復調後の残留したスパイク信号は、復調クロックの位相切り換え毎に、ホール起電力信号を基準として極性が反転しながら発生するため、平均的に誤差が極めて低減されたものにすることができる。
【0110】
これに代えて、第1スイッチ回路210は、第1ホール素子10が有する複数の端子を、駆動端子、電流出力端子、正の測定端子、および負の測定端子の予め定められた2つの組み合わせのいずれかに切り換えてもよい。この場合、第2スイッチ回路212は、第1スイッチ回路210の駆動端子の選択の順序と同一の順序で(即ち、予め定められた2つの組み合わせのいずれかに)、第2ホール素子20の駆動端子を切り換える。
【0111】
より具体的には、第1スイッチ回路210は、
図6、
図7、
図6、
図7、
図6、・・・に示す接続の順に、第1ホール素子10の接続を切り換え、第2スイッチ回路212は、
図12、
図13、
図12、
図13、
図12、・・・に示す接続の順に、第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。即ち、第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212は、クロック位相がφ1、φ2、φ1、φ2、・・・と切り換わるように、第1ホール素子10および第2ホール素子20の接続を切り換えてよい。なお、この場合、第2スイッチ回路212は、
図12および
図13の接続において、正の測定端子と負の測定端子の接続を逆にする。
【0112】
検出装置200がこのように第1ホール素子10および第2ホール素子20の接続を切り換えた場合の、信号波形の例を
図16に示す。
図16は、本実施形態に係るホール素子の駆動端子を、予め定められた2つの接続の間を切り換える場合の信号波形の一例を示す。
図16の横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。なお、
図16において、クロック位相が切り換わる場合の信号波形の変化は、
図14で説明した変化と同様に説明できるのでここでは説明を省略する。
【0113】
図16より、第1スイッチ回路210および第2スイッチ回路212が、駆動端子の選択を予め定められた2つの接続の間を切り換える場合も、第2ホール素子20の出力信号の波形は、第1ホール素子10の出力信号の波形と比較して、変調信号の変調の向きを一致させ、スパイク信号の発生する正負の向きを反転させることができる。したがって、第1加算部230および第2加算部232による加算により、変調信号の振幅値が2倍になり、反転したスパイク信号をキャンセルすることができる。また、ホール起電力信号は変調され、オフセット信号はDC成分となるので、周波数領域で分離することができる。なお、プロセスの製造ばらつきによって第1ホール素子10、第2ホール素子20の浮遊容量がずれ、第1ホール素子10、第2ホール素子20のどちらかのスパイク信号の強度がより大きく、スパイク信号をキャンセルできない場合がある。このような場合であっても、駆動端子の選択を予め定められた2つの接続の間を切り換えることにより、復調後の残留したスパイク信号は、復調クロックの位相切り換え毎に、ホール起電力信号を基準として極性が反転しながら発生するため、平均的に誤差が極めて低減されたものにすることができる。
【0114】
以上の本実施形態に係る検出装置200は、2つのホール素子を用いて、ホール素子のオフセットをキャンセルすると共に、過渡的なスパイク信号を低減させる例を説明した。これに代えて、検出装置200は、3以上のホール素子を用いてもよい。
【0115】
例えば、基板110に不純物をドープする等の処理でホール素子を形成する場合、ホール素子内部で不純物濃度が一定にならず、不純物濃度の濃淡が一定の方向に傾く濃度勾配が生じる場合がある。このような場合、同一の磁場を入力させても、ホール素子の駆動端子の位置によってオフセットの信号強度が変動してしまうことがある。
【0116】
そこで、検出装置200は、3以上のホール素子を用いることで、それぞれのホール素子の駆動端子の位置を異ならせて、濃度勾配によるオフセットの変動を平均化させて、当該オフセットの信号成分を低減できる。このような検出装置200の例を、
図17および
図18を用いて説明する。
【0117】
図17は、本実施形態に係るホール素子を4つ用いた場合の磁気センサ100の上面の構成例を示す。
図17は、
図2に示す第1の磁気センサ100の変形例であり、
図2に示された本実施形態に係る磁気センサ100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例の磁気センサ100は、第3ホール素子30と、第4ホール素子40とを更に備える。
図17は、矢印112の方向に、濃度勾配が発生している例を説明する。
【0118】
第3ホール素子30は、検出対象の磁場が第1ホール素子10と同じ向きに印加され、第1ホール素子10の複数の端子とそれぞれ同一方向に延伸する複数の端子を有する。第3ホール素子30は、端子32と、端子34と、端子36と、端子38とを有し、第1ホール素子10と略同一形状に形成される。第3ホール素子30は、一例として、XY平面において第1ホール素子10とX軸と平行な方向に並んで形成される。第3ホール素子30は、磁気収束板120により、第1ホール素子10と略同一の磁場が入力される。第3ホール素子30は、例えば、+Y方向の磁場が磁気センサ100に入力した場合、+Z方向の磁場が入力する。
【0119】
第4ホール素子40は、検出対象の磁場が第2ホール素子20と同じ向きに印加され、第2ホール素子20の複数の端子とそれぞれ同一方向に延伸する複数の端子を有する。第4ホール素子40は、端子42と、端子44と、端子46と、端子48とを有し、第2ホール素子20と略同一形状に形成される。第4ホール素子40は、一例として、XY平面において第2ホール素子20とX軸と平行な方向に並んで形成される。第4ホール素子40は、磁気収束板122により、第2ホール素子20と略同一の磁場が入力される。第4ホール素子40は、例えば、+Y方向の磁場が磁気センサ100に入力した場合、−Z方向の磁場が入力する。
【0120】
なお、第1ホール素子10、第2ホール素子20、第3ホール素子30、および第4ホール素子40は、中心から異なる4つ方向に延伸する4つの端子を有する十字形状を有してよい。また、当該4つの端子の延伸方向は、X軸およびY軸となす角がそれぞれ略45度および略135度となる4つの方向でよい。
【0121】
本実施形態に係る検出装置200は、このような磁気センサ100に対して、互いに異なる方向を向く端子を第1ホール素子10、第2ホール素子20、第3ホール素子30、および第4ホール素子40の駆動端子とするように切り換える。例えば、検出装置200は、クロック信号のクロック位相φ1において、第1ホール素子10の端子12、第2ホール素子20の端子24、第3ホール素子30の端子32、および第4ホール素子40の端子44を、駆動端子としてよい。そして、検出装置200は、クロック信号に応じて、それぞれのホール素子の駆動端子を、時計回りまたは反時計回りに切り換えてよい。これに代えて、検出装置200は、クロック信号に応じて、それぞれのホール素子の駆動端子を、8の字に切り換えてもよい。
【0122】
図18は、本実施形態に係るホール素子を4つ用いた場合の、検出装置200の構成例を示す。
図18は、
図5に示す検出装置200の変形例であり、
図5に示された本実施形態に係る検出装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例の検出装置200は、第3スイッチ回路214と、第4スイッチ回路216と、第3増幅部224と、第4増幅部226とを更に備える。
【0123】
第3スイッチ回路214は、第3ホール素子30が有する複数の端子間において、駆動電流を注入する駆動端子、正の測定端子、および負の測定端子を切り換える。第3増幅部224は、第3ホール素子30の出力信号を増幅する。第3増幅部224は、差動増幅回路でよい。また、第3増幅部224は、電圧を電流に変換するトランジスタ差動対でも良い。第3増幅部224は、例えば、第3スイッチ回路214の外部接続端子に接続され、第3ホール素子30の出力信号(例えば、V
hall3+、V
hall3−)を受けとって増幅し、増幅した信号を第1加算部230および第2加算部232に供給する。
【0124】
第4スイッチ回路216は、第4ホール素子40が有する複数の端子間において、駆動電流を注入する駆動端子、正の測定端子、および負の測定端子を切り換える。第4増幅部226は、第4ホール素子40の出力信号を増幅する。第4増幅部226は、差動増幅回路でよい。また、第4増幅部226は、電圧を電流に変換するトランジスタ差動対でも良い。第4増幅部226は、例えば、第4スイッチ回路216の外部接続端子に接続され、第4ホール素子40の出力信号(例えば、V
hall4+、V
hall4−)を受けとって増幅し、増幅した信号を第1加算部230および第2加算部232に供給する。
【0125】
第1加算部230および第2加算部232は、第1増幅部220、第2増幅部222、第3増幅部224、第4増幅部226、および増幅部290からそれぞれ受けとる信号を加算して、増幅部240にそれぞれ供給する。なお、当該加算は電流加算でも良い。
【0126】
以上の検出装置200において、
図17で説明したように、第1スイッチ回路210、第2スイッチ回路212、第3スイッチ回路214、および第4スイッチ回路216は、互いに異なる方向を向く端子を第1ホール素子10、第2ホール素子20、第3ホール素子30、および第4ホール素子40の駆動端子とするように切り換える。これにより、検出装置200は、濃度勾配によるオフセットの変動を平均化させて、当該オフセットの信号成分を低減することができる。また、検出装置200は、ホール素子のオフセットを低減させると共に、過渡的なスパイク信号を低減させることができる。
【0127】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0128】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。