【実施例】
【0031】
(実施例1)黄銅鉱と輝水鉛鉱の分離(その1)
(1)試料調整
純粋な黄銅鉱および輝水鉛鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整は試料をメノウ乳鉢で粉砕した後、篩分けすることにより行った。鉱物の酸化を防止するために窒素ガス雰囲気中で処理を行った。粒度調整により、黄銅鉱の粒度を38〜125μm、輝水鉛鉱の粒度を1mm以下とした。
【0032】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄銅鉱および輝水鉛鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料をるつぼに入れて種々の条件でマイクロ波を照射することにより磁化処理を行った。磁化処理の条件は、マイクロ波の電力を3パターン(100、300、500W)、処理時間を4パターン(0、10、30、60秒)とした。マイクロ波の照射にはパナソニック株式会社製の家庭用電子レンジ(型番:NE-T156)を用いた。
【0033】
磁化処理の後、試料を放冷してから各試料の磁化率を測定した。磁化率の測定には、Bartington Instruments社製の磁化率測定装置(Magnetic susceptibility meter(型番:M3)およびSingle Frequency Sensor(型番:MS2G))を用いた。
【0034】
各試料の磁化率を
図3に示す。
図3に示すグラフの横軸は磁化処理の処理時間、縦軸は磁化率である。
図3より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁化率が高くなることが分かる。一方、輝水鉛鉱は何れの条件においても磁化率がほぼ0であることが分かる。
【0035】
(3)磁力選鉱
(1)で調整した黄銅鉱および輝水鉛鉱の試料を1:1の重量比率で混合し、重量が0.5gの試料を用意した。この試料に対して(2)と同様の手順で磁化処理を行った。ここで、マイクロ波の電力を300W、処理時間を60秒とした。
【0036】
つぎに、水平な机上に置いた磁石の上面に薬包紙を広げた。磁化処理後の試料を薬包紙上に載せ、直ちに薬包紙を磁石ごと傾斜させた。そうすると、試料の一部は薬包紙上に残り、残部は机上に落下した。薬包紙上に残った試料を磁着物、机上に落下した試料を非磁着物とした。机上に落下した非磁着物を回収し、繰り返し同様の操作を行ったところ、最終的にはほぼ同重量の磁着物と非磁着物とに分離することができた。
【0037】
得られた磁着物および非磁着物の鉱物種を金属顕微鏡観察により特定したところ、磁着物は実質的に全量が黄銅鉱、非磁着物は実質的に全量が輝水鉛鉱であることが分かった。これにより、前記磁化処理および磁力選鉱により黄銅鉱と輝水鉛鉱を十分に分離できることが確認された。また、前記磁化処理の条件において、黄銅鉱と輝水鉛鉱を十分に分離でることから、マイクロ波の電力を300W以上とした場合に、処理時間を60秒以上としても、磁力選鉱における回収率がこれ以上上昇しないことが確認された。
【0038】
本実施例の結果から、表1に示す組成の原料を前記磁化処理および磁力選鉱に付し、非磁着物を回収することで、例えば表3に示す品位のモリブデナイト精鉱を生産できる。すなわち、輝水鉛鉱を随伴する黄銅鉱から品位の高いモリブデン精鉱を効率よく生産できる。
【表3】
【0039】
(実施例2)黄銅鉱と硫砒銅鉱の分離(その1)
(1)試料調整
純粋な黄銅鉱および硫砒銅鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整の手順や条件は実施例1と同一である。粒度調整により、黄銅鉱の粒度を38〜125μm、硫砒銅鉱の粒度を38〜125μmとした。
【0040】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄銅鉱および硫砒銅鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料に対して磁化処理を行い、磁化処理後の試料の磁化率を測定した。磁化処理の手順および磁化率の測定方法は実施例1と同一である。
【0041】
各試料の磁化率を
図4に示す。
図4より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁化率が高くなることが分かる。一方、硫砒銅鉱は何れの条件においても磁化率がほぼ0であることが分かる。
【0042】
(3)磁力選鉱
(1)で調整した黄銅鉱および硫砒銅鉱の試料を1:1の重量比率で混合し、重量が0.5gの試料を用意した。この試料に対して(2)と同様の手順で磁化処理を行った。ここで、マイクロ波の電力を300W、処理時間を60秒とした。
【0043】
つぎに、水平な机上に置いた磁石の上面に薬包紙を広げた。磁化処理後の試料を薬包紙上に載せ、直ちに薬包紙を磁石ごと傾斜させた。そうすると、試料の一部は薬包紙上に残り、残部は机上に落下した。薬包紙上に残った試料を磁着物、机上に落下した試料を非磁着物とした。机上に落下した非磁着物を回収し、繰り返し同様の操作を行ったところ、最終的にはほぼ同重量の磁着物と非磁着物とに分離することができた。
【0044】
得られた磁着物および非磁着物の鉱物種を金属顕微鏡観察により特定したところ、磁着物は実質的に全量が黄銅鉱、非磁着物は実質的に全量が硫砒銅鉱であることが分かった。これにより、前記磁化処理および磁力選鉱により黄銅鉱と硫砒銅鉱を十分に分離できることが確認された。また、前記磁化処理の条件において、黄銅鉱と硫砒銅鉱を十分に分離でることから、マイクロ波の電力を300W以上とした場合に、処理時間を60秒以上としても、磁力選鉱における回収率がこれ以上上昇しないことが確認された。
【0045】
本実施例の結果から、表2に示す組成の原料を前記磁化処理および磁力選鉱に付し、磁着物を回収することで、例えば表4に示す品位の銅精鉱を生産できる。すなわち、硫砒銅鉱を随伴する黄銅鉱から、砒素品位の低い銅精鉱を効率よく生産できる。
【表4】
【0046】
(実施例3)黄銅鉱と輝水鉛鉱の分離(その2)
(1)試料調整
鉱石を粉砕し、浮遊選鉱により脈石を除去し、試料を得た。試料の鉱物組成を鉱物自動分析装置(MLA装置 FEI社製、型番:MLA650FEG)で分析した。その結果、試料は実質的に黄銅鉱と輝水鉛鉱のみであり、黄銅鉱と輝水鉛鉱の割合は1:4であった。また、化学分析により試料の品位を分析したところ、表5に示す結果が得られた。表5に示す品位は表1に示す品位と同程度であることから、この試料は一般的な浮遊選鉱処理により得られる精鉱と同等の物であることが分かる。
【表5】
【0047】
(2)磁化処理
(1)で調整した試料を5g用意した。この試料に対してマイクロ波を照射することにより磁化処理を行った。磁化処理の条件は、マイクロ波の電力を300W、処理時間を60秒とした。マイクロ波の照射にはパナソニック株式会社製の家庭用電子レンジ(型番:NE-T156)を用いた。
【0048】
(3)磁力選鉱
つぎに、水平な机上に置いた磁石の上面に薬包紙を広げた。磁化処理後の試料を薬包紙上に載せ、直ちに薬包紙を磁石ごと傾斜させた。そうすると、試料の一部は薬包紙上に残り、残部は机上に落下した。薬包紙上に残った試料を磁着物、机上に落下した試料を非磁着物とした。机上に落下した非磁着物を回収し、繰り返し同様の操作を行った。ここで、繰り返し回数を5回とした。
【0049】
回収された非磁着物の重量は3.9gであった。試料には黄銅鉱と輝水鉛鉱が1:4の割合で含まれていたことから、試料中の輝水鉛鉱のほぼ全てを非磁着物として回収できたことが確認された。また、化学分析により非磁着物の品位を分析したところ、モリブデン品位は49重量%であった。出発物質が鉱石であっても黄銅鉱と輝水鉛鉱を分離できることが確認できた。
【0050】
(実施例4)黄銅鉱と硫砒銅鉱の分離(その2)
(1)試料調整
鉱石を粉砕し、浮遊選鉱により脈石を除去し、試料を得た。試料の鉱物組成を鉱物自動分析装置(MLA装置 FEI社製、型番:MLA650FEG)で分析した。その結果、試料は実質的に黄銅鉱と硫砒銅鉱のみであり、黄銅鉱と硫砒銅鉱の割合は67:2であった。また、化学分析により試料の品位を分析したところ、表6に示す結果が得られた。表6に示す品位は表2に示す品位と同程度であることから、この試料は一般的な浮遊選鉱処理により得られる精鉱と同等の物であることが分かる。
【表6】
【0051】
(2)磁化処理
(1)で調整した試料を5g用意した。この試料に対してマイクロ波を照射することにより磁化処理を行った。磁化処理の条件は、マイクロ波の電力を300W、処理時間を60秒とした。マイクロ波の照射にはパナソニック株式会社製の家庭用電子レンジ(型番:NE-T156)を用いた。
【0052】
(3)磁力選鉱
つぎに、水平な机上に置いた磁石の上面に薬包紙を広げた。磁化処理後の試料を薬包紙上に載せ、直ちに薬包紙を磁石ごと傾斜させた。そうすると、試料の一部は薬包紙上に残り、残部は机上に落下した。薬包紙上に残った試料を磁着物、机上に落下した試料を非磁着物とした。机上に落下した非磁着物を回収し、繰り返し同様の操作を行った。ここで、繰り返し回数を5回とした。
【0053】
回収された磁着物と非磁着物の鉱物種を金属顕微鏡観察により特定したところ、磁着物は実質的に全量が黄銅鉱、非磁着物は実質的に全量が硫砒鉄鉱であることが分かった。これにより、試料中の黄銅鉱のほぼ全てを磁着物として回収できたことが確認された。出発物質が鉱石であっても黄銅鉱と硫砒銅鉱を分離できることが確認できた。
【0054】
(実施例5)黄銅鉱と輝水鉛鉱の分離(その3)
(1)試料調整
純粋な黄銅鉱および輝水鉛鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整は試料をメノウ乳鉢で粉砕した後、篩分けすることにより行った。鉱物の酸化を防止するために窒素ガス雰囲気中で処理を行った。粒度調整により、黄銅鉱の粒度を38〜125μm、輝水鉛鉱の粒度を1mm以下とした。
【0055】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄銅鉱および輝水鉛鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料をるつぼに入れて種々の条件でマイクロ波を照射することにより磁化処理を行った。磁化処理の条件は、マイクロ波の電力を3パターン(100、300、500W)、処理時間を3パターン(0、30、60秒)とした。マイクロ波の照射にはパナソニック株式会社製の家庭用電子レンジ(型番:NE-T156)を用いた。
【0056】
磁化処理の後、試料を放冷してから各試料の磁化強度を測定した。磁化強度の測定には、Bartington Instruments社製の磁化率測定装置(Magnetic susceptibility meter(型番:M3)およびSingle Frequency Sensor(型番:MS2G))を用いた。
【0057】
各試料の磁化強度を
図5に示す。
図5に示すグラフの横軸は磁化処理の処理時間、縦軸は磁化強度である。
図5中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Moly」は輝水鉛鉱を意味する。
図5より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。一方、輝水鉛鉱は何れの条件においても磁化強度がほぼ0であることが分かる。
【0058】
(3)磁力選鉱
(2)で磁化処理した後の試料に対して磁力選鉱を行った。磁力選鉱には日本磁力選鉱株式会社製の交流対極磁選機(型式:G−30+30型)を用いた(
図2参照)。電磁ドラムの間の磁束密度を3パターン(0.5、1.0、2.0T)とした。交流対極磁選機により試料を磁着物と非磁着物とに分離し、磁着物回収率を求めた。ここで、磁着物回収率とは、磁力選鉱前の試料の重量に対する磁着物の重量の割合を意味する。
【0059】
図6に各試料の磁着物回収率を示す。
図6に示すグラフの横軸は磁化処理の処理時間、縦軸は磁着物回収率である。
図6中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Molybd」は輝水鉛鉱を意味する。
図6より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁着物回収率が高いことが分かる。また、試料の磁化強度が弱くても磁束密度を大きくすることで磁着物回収率を高くすることができ、逆に試料の磁化強度が強い場合には磁束密度を小さくしても磁着物回収率を高く維持できることが分かる。一方、輝水鉛鉱は何れの条件においても磁着物回収率はほぼ0であることが分かる。
【0060】
磁化処理においてマイクロ波の電力を100W以上、処理時間を30秒以上とし、磁力選鉱において磁束密度を1.0T以上とすることが好ましい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を70%以上とし、かつ輝水鉛鉱の磁着物回収率をほぼ0とできる。より好ましくは、磁化処理においてマイクロ波の電力を300W以上、処理時間を30秒以上とし、磁力選鉱において磁束密度を1.0T以上とすればよい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を80%以上とし、かつ輝水鉛鉱の磁着物回収率をほぼ0とできる。さらに好ましくは、磁化処理においてマイクロ波の電力を300W以上、処理時間を60秒以上とすればよい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を90%以上とし、かつ輝水鉛鉱の磁着物回収率をほぼ0とでき、黄銅鉱と輝水鉛鉱を十分に分離できる。
【0061】
(実施例6)黄銅鉱と硫砒銅鉱の分離(その3)
(1)試料調整
純粋な黄銅鉱および硫砒銅鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整の手順や条件は実施例5と同一である。粒度調整により、黄銅鉱の粒度を38〜125μm、硫砒銅鉱の粒度を38〜125μmとした。
【0062】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄銅鉱および硫砒銅鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料に対して磁化処理を行い、磁化処理後の試料の磁化強度を測定した。磁化処理の手順および磁化強度の測定方法は実施例5と同一である。
【0063】
各試料の磁化強度を
図7に示す。
図7中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Enar」は硫砒銅鉱を意味する。
図7より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。一方、硫砒銅鉱は何れの条件においても磁化強度がほぼ0であることが分かる。
【0064】
(3)磁力選鉱
(2)で磁化処理した後の試料に対して磁力選鉱を行い、磁着物回収率を求めた。磁力選鉱の手順は実施例5と同一である。
【0065】
図8に各試料の磁着物回収率を示す。
図8中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Enargite」は硫砒銅鉱を意味する。
図8より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁着物回収率が高いことが分かる。硫砒銅鉱は何れの条件においても磁着物回収率が黄銅鉱の磁着物回収率よりも十分に小さいことが分かる。
【0066】
磁化処理においてマイクロ波の電力を100W以上、処理時間を30秒以上とし、磁力選鉱において磁束密度を1.0T以上とすることが好ましい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を70%以上とし、かつ硫砒銅鉱の磁着物回収率をほぼ0とできる。より好ましくは、磁化処理においてマイクロ波の電力を300W以上、処理時間を30秒以上とし、磁力選鉱において磁束密度を1.0T以上とすればよい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を80%以上とし、かつ硫砒銅鉱の磁着物回収率をほぼ0とできる。さらに好ましくは、磁化処理においてマイクロ波の電力を300W以上、処理時間を60秒以上とすればよい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を90%以上とし、かつ硫砒銅鉱の磁着物回収率をほぼ0とでき、黄銅鉱と硫砒銅鉱を十分に分離できる。
【0067】
(実施例7)黄銅鉱と砒四面銅鉱の分離
(1)試料調整
純粋な黄銅鉱および砒四面銅鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整の手順や条件は実施例5と同一である。粒度調整により、黄銅鉱の粒度を38〜125μm、砒四面銅鉱の粒度を38〜125μmとした。
【0068】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄銅鉱および砒四面銅鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料に対して磁化処理を行い、磁化処理後の試料の磁化強度を測定した。磁化処理の手順および磁化強度の測定方法は実施例5と同一である。
【0069】
各試料の磁化強度を
図9に示す。
図9中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Tenn」は砒四面銅鉱を意味する。
図9より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。一方、砒四面銅鉱は何れの条件においても磁化強度がほぼ0であることが分かる。
【0070】
(3)磁力選鉱
(2)で磁化処理した後の試料に対して磁力選鉱を行い、磁着物回収率を求めた。磁力選鉱の手順は実施例5と同一である。
【0071】
図10に各試料の磁着物回収率を示す。
図10中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Tenn」は砒四面銅鉱を意味する。
図10より、黄銅鉱マイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁着物回収率が高いことが分かる。砒四面銅鉱は何れの条件においても磁着物回収率が黄銅鉱の磁着物回収率よりも十分に小さいことが分かる。
【0072】
磁化処理においてマイクロ波の電力を100W以上、処理時間を30秒以上とし、磁力選鉱において磁束密度を1.0T以上とすることが好ましい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を70%以上とし、かつ砒四面銅鉱の磁着物回収率をほぼ0とできる。より好ましくは、磁化処理においてマイクロ波の電力を300W以上、処理時間を30秒以上とし、磁力選鉱において磁束密度を1.0T以上とすればよい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を80%以上とし、かつ砒四面銅鉱の磁着物回収率をほぼ0とできる。さらに好ましくは、磁化処理においてマイクロ波の電力を300W以上、処理時間を60秒以上とすればよい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を90%以上とし、かつ砒四面銅鉱の磁着物回収率をほぼ0とでき、黄銅鉱と砒四面銅鉱を十分に分離できる。
【0073】
(実施例8)黄銅鉱と硫砒鉄鉱の分離
(1)試料調整
純粋な黄銅鉱および硫砒鉄鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整の手順や条件は実施例5と同一である。粒度調整により、黄銅鉱の粒度を38〜125μm、硫砒鉄鉱の粒度を38〜125μmとした。
【0074】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄銅鉱および硫砒鉄鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料に対して磁化処理を行い、磁化処理後の試料の磁化強度を測定した。磁化処理の手順および磁化強度の測定方法は実施例5と同一である。
【0075】
各試料の磁化強度を
図11に示す。
図11中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Aspy」は硫砒鉄鉱を意味する。
図11より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。硫砒鉄鉱はマイクロ波の電力が100W、300Wの場合には磁化強度がほぼ0である。しかし、マイクロ波の電力が500Wの場合には、硫砒鉄鉱の磁化強度は黄銅鉱の磁化強度よりも強くなることが分かる。
【0076】
(3)磁力選鉱
(2)で磁化処理した後の試料に対して磁力選鉱を行い、磁着物回収率を求めた。磁力選鉱の手順は実施例5と同一である。
【0077】
図12に各試料の磁着物回収率を示す。
図12中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Aspy」は硫砒鉄鉱を意味する。
図12より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁着物回収率が高いことが分かる。硫砒鉄鉱はマイクロ波の電力が100〜300Wであり、処理時間が30秒以下であれば磁着物回収率がほぼ0であることが分かる。
【0078】
磁化処理においてマイクロ波の電力を100W以上300W以下とし、処理時間を25秒以上30秒以下とし、磁力選鉱において磁束密度を2.0T以上にすることが好ましい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を80%以上とし、かつ硫砒鉄鉱の磁着物回収率をほぼ0とでき、黄銅鉱と硫砒鉄鉱を十分に分離できる。
【0079】
(実施例9)黄銅鉱と黄鉄鉱の分離
(1)試料調整
純粋な黄銅鉱および黄鉄鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整の手順や条件は実施例5と同一である。粒度調整により、黄銅鉱の粒度を38〜125μm、黄鉄鉱の粒度を38〜125μmとした。
【0080】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄銅鉱および黄鉄鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料に対して磁化処理を行い、磁化処理後の試料の磁化強度を測定した。磁化処理の手順および磁化強度の測定方法は実施例5と同一である。
【0081】
各試料の磁化強度を
図13に示す。
図13中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「py」は黄鉄鉱を意味する。
図13より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。黄鉄鉱はマイクロ波の電力が100W、300Wの場合には磁化強度がほぼ0である。しかし、マイクロ波の電力が500Wの場合には、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。
【0082】
(3)磁力選鉱
(2)で磁化処理した後の試料に対して磁力選鉱を行い、磁着物回収率を求めた。磁力選鉱の手順は実施例5と同一である。
【0083】
図14に各試料の磁着物回収率を示す。
図14中「cpy」は黄銅鉱を意味し、「Py」は黄鉄鉱を意味する。
図14より、黄銅鉱はマイクロ波の電力が強く、処理時間が長いほど磁着物回収率が高いことが分かる。黄鉄鉱はマイクロ波の電力が100〜300Wの場合には処理時間に関係なく磁着物回収率がほぼ0である。また、マイクロ波の電力が500Wの場合には処理時間が30秒以下であれば磁着物回収率がほぼ0である。
【0084】
磁化処理においてマイクロ波の電力を100W以上300W以下とし、処理時間を60秒以上とすることが好ましい。この条件であれば、黄銅鉱の磁着物回収率を90%以上とし、かつ黄鉄鉱の磁着物回収率をほぼ0とでき、黄銅鉱と黄鉄鉱を十分に分離できる。
【0085】
(実施例10)黄鉄鉱と輝水鉛鉱の分離
(1)試料調整
純粋な黄鉄鉱および輝水鉛鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整の手順や条件は実施例5と同一である。粒度調整により、黄鉄鉱の粒度を38〜125μm、輝水鉛鉱の粒度を1mm以下とした。
【0086】
(2)磁化処理
(1)で調整した黄鉄鉱および輝水鉛鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料に対して磁化処理を行い、磁化処理後の試料の磁化強度を測定した。磁化処理の手順および磁化強度の測定方法は実施例5と同一である。
【0087】
各試料の磁化強度を
図15に示す。
図15中「py」は黄鉄鉱を意味し、「Moly」は輝水鉛鉱を意味する。
図15より、黄鉄鉱はマイクロ波の電力が100〜300Wの場合には磁化強度がほぼ0である。しかし、マイクロ波の電力が500Wの場合には、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。一方、輝水鉛鉱は何れの条件においても磁化強度がほぼ0であることが分かる。
【0088】
(3)磁力選鉱
(2)で磁化処理した後の試料に対して磁力選鉱を行い、磁着物回収率を求めた。磁力選鉱の手順は実施例5と同一である。
【0089】
図16に各試料の磁着物回収率を示す。
図16中「Py」は黄鉄鉱を意味し、「Molybd」は輝水鉛鉱を意味する。
図16より、黄鉄鉱はマイクロ波の電力が100〜300Wの場合には処理時間に関係なく磁着物回収率がほぼ0である。また、マイクロ波の電力が500Wの場合には処理時間が60秒以上であれば磁着物回収率が高くなる。一方、輝水鉛鉱は何れの条件においても磁着物回収率はほぼ0であることが分かる。
【0090】
磁化処理においてマイクロ波の電力を500W以上とし、処理時間を60秒以上とすることが好ましい。この条件であれば、黄鉄鉱の磁着物回収率を70%以上とし、かつ輝水鉛鉱の磁着物回収率をほぼ0とでき、黄鉄鉱と輝水鉛鉱を十分に分離できる。
【0091】
(実施例11)硫砒鉄鉱と黄鉄鉱の分離
(1)試料調整
純粋な硫砒鉄鉱および黄鉄鉱の試料を準備し、それぞれに対して粒度調整を行った。粒度調整の手順や条件は実施例5と同一である。粒度調整により、硫砒鉄鉱の粒度を38〜125μm、黄鉄鉱の粒度を38〜125μmとした。
【0092】
(2)磁化処理
(1)で調整した硫砒鉄鉱および黄鉄鉱の試料を複数用意した。各試料の重量は0.5gとした。各試料に対して磁化処理を行い、磁化処理後の試料の磁化強度を測定した。磁化処理の手順および磁化強度の測定方法は実施例5と同一である。
【0093】
各試料の磁化強度を
図17に示す。
図17中「Aspy」は硫砒鉄鉱を意味し、「Py」は黄鉄鉱を意味する。
図17より、硫砒鉄鉱はマイクロ波の電力が100〜300Wの場合には磁化強度がほぼ0である。しかし、マイクロ波の電力が500Wの場合には、処理時間が長いほど磁化強度が強くなることが分かる。黄鉄鉱はマイクロ波の電力が100〜300Wの場合には磁化強度がほぼ0である。マイクロ波の電力が500Wの場合には、処理時間が長いほど磁化強度が強くなるが、硫砒鉄鉱の磁化強度よりも弱いことが分かる。
【0094】
(3)磁力選鉱
(2)で磁化処理した後の試料に対して磁力選鉱を行い、磁着物回収率を求めた。磁力選鉱の手順は実施例5と同一である。
【0095】
図18に各試料の磁着物回収率を示す。
図18中「Aspy」は硫砒鉄鉱を意味し、「Py」は黄鉄鉱を意味する。
図18より、硫砒鉄鉱はマイクロ波の電力が500W以上であるか、マイクロ波の電力が100〜300Wであっても処理時間が60秒以上であれば磁着物回収率が高いことが分かる。黄鉄鉱はマイクロ波の電力が100〜300Wの場合には処理時間に関係なく磁着物回収率がほぼ0である。また、マイクロ波の電力が500Wの場合には処理時間が30秒以下であれば磁着物回収率がほぼ0である。
【0096】
磁化処理においてマイクロ波の電力を500W以上とし、処理時間を25秒以上30秒以下とし、磁力選鉱において磁束密度を1.0T以上にすることが好ましい。この条件であれば、硫砒鉄鉱の磁着物回収率を70%以上とし、かつ黄鉄鉱の磁着物回収率をほぼ0とできる。より好ましくは、磁化処理においてマイクロ波の電力を500W以上とし、処理時間を25秒以上30秒以下とし、磁力選鉱において磁束密度を2.0T以上にすればよい。この条件であれば、硫砒鉄鉱の磁着物回収率を80%以上とし、かつ黄鉄鉱の磁着物回収率をほぼ0とでき、硫砒鉄鉱と黄鉄鉱を十分に分離できる。