【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発/次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マークはマーク形成領域に形成されており、前記マークは凸部で構成され、前記マーク形成領域は凹部で構成され、前記凸部が撥インク部であり、前記凹部が親インク部である請求項1に記載の印刷装置。
前記マークはマーク形成領域に形成されており、前記マークは凸部で構成され、前記マーク形成領域は凹部で構成され、前記凸部が撥インク部であり、前記凹部が親インク部である請求項5に記載の印刷方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の印刷装置および印刷方法を詳細に説明する。本発明は、以下に説明する印刷装置および印刷方法の実施形態に限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「〜」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値β1〜数値β2とは、εの範囲は数値β1と数値β2を含む範囲であり、数学記号で示せばβ1≦ε≦β2である。
「平行」、「垂直」および「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
また、「同一」とは、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の印刷装置を示す模式図である。
図1に示すように印刷装置10は、印刷装置本体12と、記憶部14と、調整ユニット16と、制御部18とを有する。
印刷装置本体12は、印刷法により、基板31に予め定められたパターンを形成するものである。印刷装置本体12については後に詳細に説明する。
【0016】
記憶部14は、印刷装置10で利用される各種の情報が記憶されるものである。記憶部14には、印刷しようとするパターンのパターンデータが記憶されるが、このパターンデータは、外部から適宜入力される。
また、記憶部14には、後に詳細に説明するが、インクジェットヘッド40から吐出するインクの吐出パターンデータおよび吐出タイミングデータ、ならびにインクの吐出パターンデータを印刷版25の取り付け状態に応じて補正した補正パターンデータ、吐出タイミングデータを印刷版25の取り付け状態に応じて補正した補正吐出タイミングデータも記憶される。
【0017】
インクの吐出パターンデータとは、インクジェットヘッド40を用いてインクを印刷版25のパターン領域に付与する際の吐出パターンを示すデータのことである。
吐出タイミングデータとは、インクジェットヘッド40を用いて印刷版25のパターン領域にインクを付与する際に、印刷版25のパターン領域に、どのタイミングでインクを吐出するのかを示すデータのことである。
【0018】
記憶部14には、特定のパターンに対してインクが付与された印刷版25の版面25aの基準となる基準形状の情報が記憶される。
基準形状の情報とは、例えば、印刷版25のパターン領域に対して、インクを付与した際の理想的な状態を示す画像データである。また、印刷版25のパターン領域に対して、複数回にわたり、インクを付与する場合には、各回毎の理想的な状態を示す画像データである。例えば、パターン領域に対してインクジェット方式でインクを吐出し、ドットを形成してパターン領域にインクを付与した場合には、各回毎のインクの吐出により形成されるドットの理想的な配置を示す画像データを上述の基準形状の情報という。
【0019】
記憶部14には、後に詳細に説明するが、印刷版25に形成された、マーク90a〜90eの配置位置等の情報が記憶される。
また、転写後の印刷版25の版面25aの理想的な状態を示す画像データも基準形状の情報に含まれる。
記憶部14への基準形状の情報およびパターンデータの入力方法は、特に限定されるものではなく、各種のインターフェースを記憶部14に設け、記憶媒体、および有線、無線を問わないネットワークを介して入力することができる。
【0020】
調整ユニット16は、印刷版25へのインキングを高い精度で行うために、インクの吐出タイミング、画像データの補正等各種の調整をするものである。
調整ユニット16は、測定部16a、調整部16b、補正部16cおよび判定部16dを有する。
測定部16aは、版胴24の回転量を検出するものであり、版胴24に設けられた測定器37(
図2参照)から出力される版胴24の回転量に応じたパルス信号が入力され、この回転量に応じたパルス信号のパルス数をカウントすることで版胴24の回転量、インクジェットヘッド40の移動量、および印刷版25での位置情報等を得る。測定部16aに入力されるパルス信号のことをエンコーダ信号ともいう。
調整部16bは、読取部47で得られた、後に詳述するマーク90の位置とドット92の差のデータに基づき、画像記録部22のインクジェットヘッド40でのインクの吐出タイミングを調整するものである。調整部16bにて、インクジェットヘッド40でのインクの吐出タイミングの補正吐出タイミングデータが作成される。この補正吐出タイミングデータは記憶部14に記憶される。
【0021】
また、調整部16bは、後に詳細に説明するアライメントカメラ42で得られた版胴24に対する印刷版25の取り付け情報、またはインクの着滴位置の情報等に基づき、版面25aに吐出するインクの吐出パターンデータを補正して補正パターンデータ、または吐出タイミングデータを補正して補正吐出タイミングデータを作成する。
調整部16bによる補正吐出タイミングデータの作成のタイミングは、印刷版25を交換した際、または印刷版25を交換しなくても、予め定められた時間毎、例えば、1日1回の頻度でなされる。
また、例えば、印刷装置10を稼働した際に、判定部16dにおいて印刷版25の取り付け情報に基づき、印刷版25の傾き角度αを許容範囲と比較し、許容範囲外と判定されたときになされる。
【0022】
アライメントカメラ42で得られた印刷版25の取り付け情報に基づき、印刷版25が理想的な配置の印刷版25iに対して角度α傾いて配置された場合、補正部16cは、インクの吐出パターンデータをcosα倍し、補正パターンデータを作成する。この補正パターンデータは記憶部14に記憶される。
例えば、補正部16cによる補正パターンデータの作成は、判定部16dにおいて印刷版25の取り付け情報に基づき、印刷版25の傾き角度αを許容範囲と比較し、許容範囲外と判定されたときになされる。
また、補正部16cは、上述の版面観察部26で得られた、印刷版25の取り付け位置情報に基づいて、インクジェットヘッド40を回動させる回動量を算出し、記憶部14に記憶させる。制御部18にて、回動量に基づき、インクジェットヘッド40を回動させてインクを吐出させる。
【0023】
判定部16dは、版胴24に設けられた印刷版25の取り付け情報の取得に利用されるものである。判定部16dでは、後述するアライメントカメラ42で得られたアライメントマークの位置情報を用いて、アライメントマークA〜Dの位置を特定するものである。これにより、版胴24に設けられた印刷版25の取り付け情報を取得することができる。
判定部16dは、印刷版25の取り付け位置情報に基づき、印刷版25の傾き角度αを許容範囲と比較し、許容範囲にあるかを判定するものである。判定結果に応じた判定情報を制御部18に出力するものである。印刷版25の傾き角度αについては後に説明する。
判定部16dは、後述する印刷装置本体12の版面観察部26で得られた、特定のパターンに対してインクが付与された印刷版25の版面25aの情報と、記憶部14で記憶された特定のパターンに対してインクが付与された印刷版25の版面25aの基準となる基準形状の情報とを比較し、基準形状に対して予め定められた範囲にあるかを判定するものである。判定結果に応じた判定情報を制御部18に出力するものである。
【0024】
また、判定部16dでは、予め定められた範囲から外れる場合、外れた箇所等の特定もするものである。例えば、パターン領域に対してはみ出してインクが付与された場合には、インクのはみ出した部分を特定する。また、判定部16dでは、インクジェット方式でパターン領域に対してインクを付与する場合には、インクにより形成されるドットの位置のずれ、ドットが抜けた領域等を特定することができる。これにより、後述するように制御部18で特定された箇所に応じてインクの吐出量等を調整する。
【0025】
制御部18は、印刷装置本体12、記憶部14および調整ユニット16に接続されており、印刷装置本体12、記憶部14および調整ユニット16の各要素を制御するものである。
また、制御部18は、調整ユニット16で得られた各結果に応じて各部を制御する。制御部18により、例えば、調整ユニット16で吐出パターンデータの補正パターンデータが作成された場合、その補正パターンデータに基づいてインクをインクジェットヘッド40から吐出させる。
調整部16bにて、インクジェットヘッド40でのインクの吐出タイミングの補正吐出タイミングデータが作成される。
【0026】
次に、印刷装置本体12について説明する。
印刷装置本体12は、印刷を清浄な雰囲気でするためにケーシング20の内部20aに各部が設けられている。ケーシング20の内部20aを予め定められた清浄度となるように、フィルタ(図示せず)および空調設備(図示せず)が設けられている。
印刷装置本体12は、画像記録部22と、版胴24と、版面観察部26と、ステージ30と、乾燥部32と、イオナイザー33と、クリーニング部34と、メンテナンス部36とを有する。
版胴24の表面24aの周囲を囲むようにして、画像記録部22、版面観察部26、乾燥部32、イオナイザー33およびクリーニング部34が設けられている。クリーニング部34は版胴24の表面24aに接して設けられている。
【0027】
ステージ30上に基板31が配置されており、ステージ30が版胴24の下方の印刷位置Ppに配置された状態で版胴24が回転すると印刷版25と、基板31の表面31aとが接するように配置されている。これにより、基板31の表面31aに印刷版25の版面25aに予め定められたパターン状に付与されたインクが転写される。
なお、印刷された基板31では、インクの特性に応じて、例えば、熱、光等によりインクが焼成される。熱、光を用いたインクの焼成で利用される公知のものが適宜利用可能である。基板31に対するインクの焼成は、ケーシング20の内部20aでなされても、外部でなされてもよい。
【0028】
印刷装置10では、版胴24に設けた印刷版25のパターン領域にインクを付与するが、このインクの付与は1回で完了させてもよく、また複数回にわたってインクを付与してもよい。複数回にわたってインクを付与する場合、インクを付与する回数分、版胴24を回転させる。例えば、4回に分けてインクを付与する場合、版胴24を4回回転させる。インクを付与することをインキングという。また、複数回のうち、インクを1回行うことを走査するともいう。
【0029】
以下、印刷装置本体12の各部について説明する。
画像記録部22は、印刷版25の版面25aにインクを付与するものであり、画像記録部22により、版面25aに予め定められたパターンでインクが付与される。なお、画像記録部22の画像記録方式は特に限定されるものではなく、例えば、インクジェット方式が用いられる。
【0030】
版胴24は、回転軸24bを中心にして、一方向、例えば、Y方向に回転可能なものである。Y方向が回転方向である。Y方向のことを送り方向ともいう。また、版胴24は、印刷版25を保持した状態で回転させて、予め定められたパターン状に付与された印刷版25の版面25aのインクを基板31の表面31aに転写するためのものである。
回転軸24bには、例えば、版胴24を回転させるためのモータ(図示せず)がギア(図示せず)等を介して設けられている。また、ギアを介さないダイレクトドライブモータを設けることもできる。モータは制御部18にて制御される。また、回転軸24bには回転と回転量を検出する測定器37が設けられている。測定器37は、測定部16aに接続されており、例えば、ロータリーエンコーダで構成される。版胴24の回転量に応じてロータリーエンコーダで得られたパルス信号が測定部16aに入力される。測定部16aで、ロータリーエンコーダで得られたパルス信号のパルス数をカウントすることで版胴24の回転量、インクジェットヘッド40の移動量、および印刷版25での位置情報等を得ることができる。これにより、版胴24の回転量、インクジェットヘッド40の移動量、および印刷版25での位置情報等は、測定部16aのパルス数で表すことができる。
【0031】
転写される基板31は、特に限定されるものではないが、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)およびPC(ポリカーボネート)等のフイルム基板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、ならびにガラス基板を用いることができる。転写方法としては、ガラス基板等のリジッド基板では、上述のようにステージ30上に基板31を固定して版胴24に密着させることで転写できる。
なお、印刷版25にフイルムを使った場合には圧胴を用いて、フイルムを圧胴に固定して版胴24に密着させて転写する構成としてもよい。
【0032】
版面観察部26は、画像記録部22よりも版胴24のY方向の下流側に配置されている。版面観察部26は、インクが付与された印刷版25の版面25aの情報を取得するものである。また、版面観察部26は、基板31にインクが転写された後の印刷版25の版面25aの情報も取得するものである。
版面観察部26は、インク転写前後の印刷版25の版面25aの情報を取得することができれば、その構成は特に限定されるものではない。印刷版25は矩形状のものが多いため、ラインセンサとライン状の照明を用いることが好ましい。この場合、版面25aの情報として、版面撮像データが得られる。この版面撮像データが、調整ユニット16の判定部16dにて上述のように基準形状の情報と比較されて判定される。
【0033】
ラインセンサは、例えば、モノクロCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ、CCD(電荷結合素子)センサを用いることができる。なお、ラインセンサは、吐出されたインク液滴の陰影を観察するためカラーセンサーでなくてもよい。また、ラインセンサの前にレンズ、および各種のフィルタ等を設けてもよい。ライン状の照明としては、例えば、LED(発光ダイオード)を一直線状に並べたものを用いることができる。
版面観察部26は、制御部18に接続されており、版面観察部26での印刷版25の版面25aの情報の取得のタイミングは制御部18で制御され、取得された印刷版25の版面25aの情報は記憶部14に記憶される。
【0034】
インクに絶縁体等の透明インクを用いた場合、肉眼による識別が困難であるが、光源、ラインセンサ前に偏光フィルタを設けること、2箇所以上から照明を行う等により、ラインセンサによるインクの識別性を改善することができる。
また、印刷版25の版面25aの情報の取得は、走査毎に行うことで、着弾位置ずれ、サテライトおよび吐出滴量変化による膜厚むらを検出することが可能となる。例えば、膜厚と光学特性のとの関係を予め測定しておき、記憶部14に記憶しておくことにより、上述の関係と検出された光学特性とを比較することで膜厚を推定することができる。
【0035】
また、インクに銀ナノインクを用いた場合、銀ナノインクでは、乾燥とともに銀光沢が発現して、色または反射率が変化する。膜厚が薄いと乾燥が早く、厚いと乾燥が遅いため、検出までの予め設定された時間における膜厚と色、膜厚と反射率との関係を、予め計測しておくことで、膜厚を推定できる。
絶縁体等の透明インクの場合には、干渉縞で膜厚を判断することが可能である。膜厚と干渉縞との関係を予め測定しておくことで膜厚を推定できる。半導体等結晶性のあるインクの場合には、偏光フィルタを設けて、色で膜厚を推定することもできる。この場合も、予め膜厚と色との関係を測定しておくことで、膜厚を推定することができる。
【0036】
ステージ30は、基板31を載置し、搬送方向Vに移動して、基板31を予め定められた位置に搬送するものである。ステージ30には搬送機構(図示せず)が設けられている。この搬送機構は、制御部18に接続されており、制御部18にて搬送機構が制御されてステージ30が搬送方向Vに移動されて、ステージ30の位置が変えられる。
ステージ30は、まず、ケーシング20の外部から搬送された基板31が載置される開始位置Psに待機する。次に、ステージ30は、版胴24の下方の印刷位置Ppに移動される。次に、印刷後、ステージ30は印刷済みの基板31を載せた状態で終了位置Peに移動され、その後、基板31はケーシング20の外部に取り出される。ステージ30は、終了位置Peから開始位置Psに移動されて、基板31が搬入されるまでの間、待機する。
【0037】
乾燥部32は、印刷版25の版面25aのインクを乾燥させるものである。インクを乾燥させることができれば、乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ファンによる温風、冷風の吹き付け、赤外線ヒーターによる加熱、高周波の照射、およびマイクロ波照射等が挙げられる。
なお、自然乾燥にて印刷版25の版面25aのインクを乾燥できる場合、乾燥部32を必ずしも設ける必要がない。
【0038】
イオナイザー33は、印刷版25の版面25aの静電気を除電するものである。イオナイザー33により、印刷版25の版面25aの静電気が除去され、印刷版25の版面25aにゴミ、埃等の異物の付着が抑制される。また、印刷版25の版面25aが帯電している場合、インクが曲がることがあるが、このインクの曲がりを防止することができ、インクジェット吐出精度が向上する。
なお、イオナイザー33には、静電気除電器を用いることができ、例えば、コロナ放電方式、およびイオン生成方式のものを用いることができる。また、イオナイザー33は、乾燥部32のY方向における下流側に設けたが、画像記録部22により記録される前に、印刷版25の版面25aの静電気を除電することができれば、イオナイザー33を設ける位置は特に限定されるものではない。
【0039】
クリーニング部34は、版胴24および印刷版25に付着したインクを除去するものである。クリーニング部34は、版胴24および印刷版25に付着したインクを除去することができれば、その構成は、特に限定されるものではない。例えば、ローラを版胴24に押し付け、ローラにインクを転写させて、転写されたインクをふき取る構成である。
【0040】
メンテナンス部36は、画像記録部22の吐出特性等が予め定められた性能を発揮するかを調べる。メンテナンス部36は、予め定められた性能を発揮するようノズルのワイプ等をするところである。メンテナンス部36は、版胴24から離れた位置に設けられている。画像記録部22は、例えば、ガイドレール(図示せず)を介してメンテナンス部36に移送される。メンテナンス部36については後に詳細に説明する。
【0041】
以下、画像記録部22について詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態の印刷装置の画像記録部を示す模式図である。
画像記録部22に、インクジェット方式を用いたものを例にして説明する。
図2に示すように、画像記録部22は、インクジェットヘッド40と、アライメントカメラ42と、レーザ変位計44と、読取部47と、回動部49とを有し、これらはキャリッジ46に設けられている。このキャリッジ46はリニアモータ48により、版胴24の回転軸24bと平行な方向、すなわち、X方向に移動可能であり、インクジェットヘッド40はキャリッジ46によりX方向へ移動可能である。キャリッジ46の位置はリニアモータ48に設けられたリニアスケール(図示せず)の読み取り値から算出することができる。
【0042】
インクジェットヘッド40にはインクの吐出を制御するための吐出制御部43が設けられている。吐出制御部43でインクの吐出波形が調整される。吐出制御部43は制御部18に接続されている。吐出制御部43では、例えば、ユーザーインターフェースを通して、ユーザーが吐出電圧または吐出波形を調整することが可能である。なお、後述するようにインクの温度が調整された状態で吐出される。
【0043】
アライメントカメラ42、レーザ変位計44および読取部47も制御部18に接続されている。キャリッジ46にはZ方向に移動させるための駆動部(図示せず)が設けられており、この駆動部は制御部18に接続されており、制御部18によりキャリッジ46のZ方向の移動が制御される。ここで、Z方向とは、版胴24の表面24aに垂直な方向である。
【0044】
アライメントカメラ42は、インクの吐出位置、インクの吐出タイミング、パターンデータの補正をするためのアライメントマークの位置情報を得るためのものである。
アライメントカメラ42は、アライメントマークA〜Dを検出することができれば、その構成は特に限定されるものではない。
【0045】
アライメントカメラ42により、アライメントマークA〜Dが撮像されて、その撮像データが記憶部14に記憶され、判定部16dでアライメントマークA〜Dの位置が特定される。アライメントカメラ42と判定部16dは、版胴24に設けられた印刷版25の取り付け情報を取得する取付位置情報取得部として機能する。
アライメントマークA、Bの位置情報により、Y方向におけるインクの吐出開始位置、X方向の印刷版の拡縮および印刷版の傾き角度θの情報を得ることができる。アライメントマークA、Cの位置情報により、X方向におけるインクの吐出開始位置およびY方向の印刷版の拡縮の情報を得ることができる。アライメントマークA〜Dの位置情報により、例えば、印刷版の台形歪みの情報、すなわち、台形変形の情報を得ることができる。インクの吐出開始位置のことをインキング開始位置という。
印刷版25は、アライメントマークAとアライメントマークCを通る線Laが上述のY方向に平行であることが理想的である。しかし、印刷版25を版胴24に取り付ける際に、印刷版25が版胴24に対して、わずかであるが傾いてしまう。アライメントマークA〜Dの位置情報により、版胴24上での印刷版25の取り付け情報、例えば、版胴24のY方向に対する印刷版25の傾き等の情報を得ることができる。
【0046】
上述の得られた各種の情報により、インクの吐出開始位置、インクジェットヘッド40の位置およびインクの吐出タイミングを補正する。なお、これらの補正には、いずれもインクジェットによるインクの打滴の公知補正方法を用いることができる。
また、パターンデータについてのX方向の拡大縮小、Y方向の拡大縮小、傾き、および台形補正は、公知補正方法を用いることができる。
なお、アライメントマークは、少なくとも3つあればよく、X方向の印刷版の拡縮、印刷版の傾き角度θおよびY方向の印刷版の拡縮の情報を得ることができる。アライメントマークが4つあれば、印刷版25の台形歪みの情報も得ることができるため、4つあることが好ましい。さらには、アライメントマークA〜Dの内側にも複数のアライメントマークを設けることにより、非線形の補正を行うことができる。この場合、アライメントマークを用いた補正も公知補正方法を用いることができる。
【0047】
レーザ変位計44は、インクジェットヘッド40と印刷版25の版面25aとの距離を測定するものである。インクによる版膨潤または温度等による版胴径+版厚の変化により、アライメントマークAとアライメントマークCとのY方向における距離、すなわち、AC長が変化する。ここで、インクジェットヘッド40のインクは、測定部16aのパルス信号のタイミングで吐出するため版胴径の変化を受けず版の長さの変化に対応するが、基板31に転写したとき長さが変化してしまう。
【0048】
上述のAC長の変化があっても基板31上の印刷パターンの長さを一定にする目的で、このレーザ変位計44により、版胴径+版厚の変化を測定する。測定した結果に基づいて補正を行う。
補正の具体例としては、版胴24の回転軸24bから印刷版25の版面25aまでの距離変動を精密に測定して、その結果に基づいて、転写時の版胴24および基板31の移動相対速度を変化させることが挙げられる。
上述の補正の具体例以外に、例えば、版胴24または環境の温度を測定して、予め作成した版胴24の回転軸24bと印刷版25の版面25aまでの距離と温度との関係のテーブルに基づいて、転写時の版胴24および基板31の移動相対速度を変化させることが挙げられる。
上述の補正の具体例により、版膨潤または版胴径の変化があっても精度よく印刷が可能となる。なお、転写するときに、版側と基板側の送り速度に差を設けると転写パターンの送り方向の寸法が変化することが知られている。
【0049】
レーザ変位計44については、インクジェットヘッド40と印刷版25の版面25aとの距離を測定することができれば、その構成は特に限定されるものではない。
また、レーザ変位計44は、印刷版25の版面25a迄の距離を測定することで、版胴径+版厚の変化を測定することができる。これをY方向の拡大縮小に利用することができる。例えば、版胴24の直径または印刷版25の膜厚が、温度変化により変化するとアライメントマークAとアライメントマークCの間の長さが変化する。この長さの変化をパターンデータの補正に利用することができる。
【0050】
読取部47は、後述する印刷版25に形成された位置合せエリアM
1、M
2、M
3(
図5(a)参照)のマーク90(
図9参照)の位置とマーク90に対して吐出されたインクの複数の着滴位置の位置情報を取得し、Y方向におけるマークの位置とインクの着滴位置の差のデータを得るものである。
読取部47は、例えば、100万画素程度以上のCMOSまたはCCDを備えるカメラ(図示せず)と、カメラに接続された画像処理部(図示せず)を有する。画像処理部は、カメラと一体でも、別体でもよく、例えば、調整部16bに設けられる。
読取部47では、カメラでマーク90の画像とドット92(
図9参照)の画像を撮影し、マーク90像とドット92(
図9参照)の画像データを取得し、画像処理部でマーク90の位置情報と、着滴位置としてインクで形成されるドット92の位置情報を、例えば、座標データとして得る。そして、マーク90の位置情報の座標データとドット92の位置の座標データとからマーク90の位置とドット92の差のデータを得る。マーク90の位置とドット92の差のデータは、座標データ、または座標データを版胴24の測定器37から出力されるパルス信号に基づくパルス数等の形式で得られる。マーク90の位置とドット92の差のデータは調整部16bに出力される。調整部16bでは、座標データまたはパルス数で表現された補正吐出タイミングデータが作成される。
【0051】
読取部47において画像処理部による画像処理は、マーク90の輪郭抽出と、ドット92の輪郭抽出と、マーク90の中心線cm(
図9参照)とドット92の中心位置の算出である。
マーク90の中心線は、例えば、マーク90の輪郭を矩形とみなしてマーク90にあう矩形を求め、矩形のY方向の辺の二等分線を中心線とする。
ドット92の中心位置は、例えば、ドット92の輪郭を円とみなしてドット92に合う円を求め、その円の中心位置とする。
画像処理については、輪郭抽出、2次元図形の中心位置を特定することができれば、公知のものを適宜利用することができる。
読取部47を設ける位置は、位置合せエリアM
1、M
2、M
3を読み取ることができれば、特に限定されるものではない。しかし、インクジェットヘッド40と印刷版25の相対位置が振動によってずれても、読取部47がキャリッジ46にあることでその影響がなくなるため、読取部47はインクジェットヘッド40とともにキャリッジに搭載することが望ましい。
【0052】
上述のようにアライメントカメラ42、レーザ変位計44および読取部47を用いることで、アライメント精度、およびインクの吐出タイミング精度を高くすることができる。印刷装置10では、後述するように薄膜トランジスタの形成に利用される。薄膜トランジスタでは、10μm程度のずれでも、設計した特性とは異なる特性になってしまう。複数の薄膜トランジスタを形成する場合、10μm程度のずれがあっても特性がばらつくことになり、例えば、電子ペーパーに用いた場合、高い性能が得られないことになるが、このような特性のバラつきを抑制することができる。
【0053】
回動部49は、インクジェットヘッド40を版胴24の表面24aに垂直な線を中心として回動させるものである。回動部49により、印刷版25の傾きにインクジェットヘッド40の向きを合わせることができる。
【0054】
インクジェットヘッド40は、
図3(a)に示すように、印刷版25の全幅に対応する長さにわたって、複数のノズル41が千鳥配置されている。
千鳥配置を適用することで、ノズル41を高密度に配置させることができる。なお、ノズル41を配置する列数は、特に限定されるものではなく、一列でも二列でも、それ以上でもよい。また、ノズル41は、マトリクス状に配置してもよい。
インクジェットヘッド40の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、
図3(b)に示す構成でもよい。
図3(b)に示すインクジェットヘッド40は、X方向に、複数のヘッドモジュール40aが接続されている。この場合、複数のヘッドモジュール40a一列につなぎ合わせた構成に限定されるものではなく、複数のヘッドモジュール40aを千鳥状につなぎ合わせた構成でもよい。
図3(b)に示すインクジェットヘッド40では、吐出制御部43によりヘッドモジュール40a毎に吐出波形を調整することが可能である。また、ヘッドモジュール40a毎に吐出制御部43を設ければ、吐出制御部43毎に吐出波形を調整することが可能である。
【0055】
インクジェットヘッド40のインクを吐出させる方式は、特に限定されるものではなく、圧電素子のたわみ変形、ずり変形、縦振動等を利用して液体を吐出させる圧電方式、ヒーターによって液室内の液体を加熱して、膜沸騰現象を利用して液体を吐出させるサーマル方式、静電気力を利用する静電方式等、各種方式を用いることができる。
【0056】
次に、印刷装置10のインク供給機構について説明する。
図4は、本発明の実施形態の印刷装置のインク供給機構を示す模式図である。
図4に示すように、画像記録部22において、インクジェットヘッド40は、2つのサブタンク50、58が、それぞれ配管50c、58cを介して接続されている。配管50cには脱気ユニット51が設けられている。脱気ユニット51はインクジェットヘッド40に供給されるインクを脱気するものであり、公知のものを適宜利用することができる。
【0057】
サブタンク50は、インクジェットヘッド40に供給するインクを溜めておくものである。2つの水位センサ50aと温度調整ユニット50bとが設けられている。
水位センサ50aは、インクの水位を計測することができれば、その構成は特に限定されるものではなく、公知のものを適宜利用することができる。
温度調整ユニット50bは、インクの温度を調整するものである。これにより、インクの温度を調整することができる。インクの温度としては、例えば、15℃〜30℃程度であることが好ましい。温度調整ユニット50bは、インクの温度を調整することができれば、その構成は特に限定されるものではなく、公知のものを適宜用いることができる。
【0058】
サブタンク58は、インクジェットヘッド40から回収されたインクを溜めておくものである。2つの水位センサ58aと温度調整ユニット58bとが設けられている。
水位センサ58aは、水位センサ50aと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。温度調整ユニット58bも温度調整ユニット50bと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0059】
サブタンク58のインクをサブタンク50に移動させる循環部60がある。循環部60は、サブタンク50とサブタンク58をつなぐ配管60cと、配管60cに設けられてポンプ60aとフィルタ60bを有する。ポンプ60aは、サブタンク50およびサブタンク58のインク量を調整するためのものである。ポンプ60aは、サブタンク50とサブタンク58との間でインクを移動させることができれば、その構成は特に限定されるものではなく、公知のポンプを適宜利用することができる。フィルタ60bはサブタンク58からサブタンク50に移動するインクが通過し、このとき、ゴミ等を除去する。
【0060】
サブタンク50およびサブタンク58には、それぞれ配管64cが挿入されており、この配管64cにはポンプ64aが設けられている。また、配管64cには配管64dを介して圧力センサ64bが接続されている。なお、図示はしないが、配管64c、64dにはバルブ等が設けられている。これにより、サブタンク50、58は窒素ガスが充填される。また、窒素ガスの充填量を変えることで、サブタンク50とサブタンク58とで圧力差を生じさせて、容易に循環させることができる。
圧力センサ64bにより、サブタンク50とサブタンク58の圧力を測定することができる。圧力センサ64bによるサブタンク50とサブタンク58の各圧力の測定結果を用いることで、インクジェットヘッド40のメニスカス負圧および循環量を制御することができる。
【0061】
サブタンク50には、インクタンク52が配管62bを介して接続されている。配管62bにはポンプ62aとフィルタ62eが設けられている。インクタンク52内にはインク52bが充填されている。
インクタンク52には温度調整ユニット52aが設けられている。温度調整ユニット52aは温度調整ユニット50bと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
また、インクタンク52には、例えば、窒素ガスを充填したボンベ62cが配管62dを介して接続されている。これにより、インクタンク52内に窒素ガスが充填される。
【0062】
さらには、サブタンク50には、洗浄液ボトル54が配管62bを介して接続されている。配管62bにはポンプ62aとフィルタ62eが設けられている。洗浄液ボトル54内には洗浄液54bが充填されている。
洗浄液ボトル54には温度調整ユニット54aが設けられている。温度調整ユニット54aは温度調整ユニット50bと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
また、洗浄液ボトル54には、例えば、窒素ガスを充填したボンベ62cが配管62dを介して接続されている。これにより、洗浄液ボトル54内に窒素ガスが充填される。
なお、温度調整ユニット52aでインクの温度を調整することができるが、インクの温度は、サブタンク50のインクの温度>インクタンク52のインクの温度であることが好ましい。
【0063】
サブタンク58は、配管62fを介して廃液タンク56が接続されている。配管62fにはポンプ62aが接続されている。これにより、廃液タンク56内にサブタンク58内のインク52bを廃液として移動させることができる。
インク52bとしては、インクジェット用のナノメタルインクを利用することができる。具体的には、ULVAC製Agナノメタルインク(Ag1teH(型番)、L−Ag1TeH(型番))、およびAuナノメタルインク(シクロドデセン溶媒)インクジェットタイプを利用することができる。
【0064】
次に、印刷版25について説明する。
図5(a)は、本発明の実施形態の印刷装置に用いられる印刷版の一例を示す模式図であり、(b)は、本発明の実施形態の印刷装置に用いられる印刷版の一例を示す模式的断面図である。
図5(a)に示すように、例えば、印刷版25は、アライメントマークA〜Dが、それぞれ四隅に設けられており、吐出確認エリアT、印刷エリアG
11、G
12、スピットエリアG、印刷エリアG
21、G
22、スピットエリアG、印刷エリアG
31、G
32、吐出確認エリアTが形成されている。さらに、吐出確認エリアT、印刷エリアG
11、G
12、G
21、G
22、G
31、G
32、スピットエリアGの両側に、それぞれ位置合せエリアM
1、M
3が形成されている。X方向における印刷エリアG
11、G
21、G
31と印刷エリアG
12、G
22、G
32との間に位置合せエリアM
2が形成されている。スピットエリアGは位置合せエリアM
2で分断されている。
このようにX方向に沿って位置合せエリアM
1、M
2、M
3が3箇所、離間して形成されている。位置合せエリアM
1、M
2、M
3は、それぞれY方向に分割された複数の領域を有するものであり、例えば、8の領域を有する。位置合せエリアM
1は8の領域M
11〜M
18を有し、位置合せエリアM
2は8の領域M
21〜M
28を有し、位置合せエリアM
3は8の領域M
31〜M
38を有する。
【0065】
吐出確認エリアTは、インクジェットヘッド40により、テストパターン状にインクが吐出される領域である。吐出確認エリアTのインクは、評価後、クリーニング部34で取り除くか、または基板31に転写して取り除く。
スピットエリアGは、インクジェットヘッド40により、通常の吐出動作で、インクを吐出し、吐出確認に利用される領域である。
印刷エリアG
11〜G
31、G
12〜G
32の前に、吐出確認のための領域、吐出確認エリアTおよびスピットエリアGを設けることで、印刷エリアG
11〜G
31、G
12〜G
32へのインクの吐出を確実にすることができる。
【0066】
位置合せエリアM
1、M
2、M
3は、インクの着滴位置を確認して、インクの吐出タイミングを調べるためのものであり、マーク90が形成されている。各位置合せエリアM
1、M
2、M
3に複数のインクが着滴される。
位置合せエリアM
1、M
2、M
3は、3箇所であるが、これに限定されるものではなく、複数、例えば、3箇所以上であれば、インクの位置検出精度を向上させることができる。
位置合せエリアM
1、M
2、M
3は、X方向で複数箇所とすることで、異なるノズルでの比較が可能となる。特に、ラインタイプのインクジェットヘッド場合により多くのノズルを選択できるため有効である。また、インクジェットヘッド40と印刷版25との傾きも同時に検出することができる。
また、位置合せエリアM
1、M
2、M
3は、それぞれY方向を複数領域とすることでY方向の非線形な変形にも対応することができる。特に、版胴方式を用いた場合には前述のように様々な要因でY方向の非線形な変形があるので、それも含めた補正が可能となる。位置合せエリアM
1、M
2、M
3については、後に詳細に説明する。
【0067】
図5(b)に示すように、例えば、印刷版25は、凹部25bが形成されている。この凹部25bにインク52bが打滴されてパターン状のインクが付与される。凹部25bがインク52bに対して親液性である。なお、凹部25bの深さは数μm程度である。
印刷版25としては、樹脂、金属、ガラス等材料は限定されないが、樹脂版を用いると弾性があり、また印圧を下げることができるのでガラス等の脆性材料に印刷することが容易になる。印刷版25としては、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、ネオプレンゴム、ハイバロンゴム、ウレタンゴム等の種種のエラストマが使用できるが、離型性のよいPDMS(ポリジメチルシロキサン)等のシリコーンゴム、およびフッ素ゴム等が望ましい。PDMS(ポリジメチルシロキサン)等を用いることで転写性が向上して、転写後、印刷版25にインクが残ることが抑制されて、印刷版25の洗浄なしでも連続印刷が可能となる。これにより、印刷効率を向上させることができる。
なお、印刷版25は予め定められたパターン状に凹部25bが形成されたものを用いるが、凹部25bは、公知の方法で形成される。例えば、印刷版25は、一般的な手法で形成され、例えば、フォトリソグラフィー、インプリント、オフセット印刷版およびフレキソ印刷版と同様の手法を用いて形成される。
【0068】
図6は、本発明の実施形態の印刷装置のメンテナンス部の一例を示す模式図である。
図6に示すように、インクジェットヘッド40に対して、回転ローラ70が配置されている。この回転ローラ70は、回転軸70aを有し、回転軸70aを中心に回転する。回転ローラ70には、その周面70bに、インクジェットヘッド40の洗浄のためのウェブ72が巻きかけられている。このウェブ72は、インクジェットヘッド40のインク52bを取り除くことができれば、特に限定されるものではない。例えば、洗浄部74により洗浄液74aを、インクジェットヘッド40に直接、塗布または噴射して、回転ローラ70を回転させてウェブ72をインクジェットヘッド40に接触させてインク52bを取り除く。また、ウェブ72に洗浄部74により洗浄液74aを噴射して、回転ローラ70を回転させてウェブ72をインクジェットヘッド40に接触させてインク52bを取り除いてもよい。
【0069】
洗浄液には、例えば、インク溶解性のある溶剤またはインク成分のうち固形分が含まれない溶液が用いられる。ULVAC製Agナノメタルインク(Ag1teH(型番)、L−Ag1TeH(型番))、およびAuナノメタルインク(シクロドデセン溶媒)インクジェットタイプには、炭化水素系の溶剤を利用することができる。炭化水素系の溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン、シクロドデセンを用いることができる。
ウェブ72には、例えば、KBセーレン社製、サヴィーナ(登録商標)、東レ社製、トレシー(登録商標)、および帝人社製、ナノフロント(登録商標)、ミクロスター(登録商標)等のワイピングクロスを用いることができる。
【0070】
また、インクジェットヘッド40を洗浄するものとしては、
図6に示すものに限定されるものではない。例えば、ゴムブレード(図示せず)を有する構成とすることもできる。インクジェットヘッド40はキャリッジ46によりX方向に移動可能であるため、これを利用して、ゴムブレードを固定してインクジェットヘッド40の長手方向にインクをふき取る。また、インクジェットヘッド40を固定して、ゴムブレードを走査してワイプしてもよい。このとき、インクジェットヘッド40の長手方向と直交する短手方向にインクをふき取るとゴムブレードの移動距離を短くできるメリットがあり、これ以外にも、ふき取ったインクが他のノズルに入る可能性が少ないメリットがある。一方、インクジェットヘッド40の長手方向と平行な方向にインクをふき取るとインクジェットヘッド40のX軸を共有できるメリットがある。そこで装置構成またはコストを考慮した最適の形で設計することがよい。
なお、ゴムブレードまたはインクジェットヘッド40に洗浄液を付与して、インクをふき取るようにしてもよい。インクをふき取る時には、サブタンク50、58内の圧力を印刷時の圧力と別に設定することもできる。インク、インクジェットヘッド40またはワイプの条件によって最適な圧力を設定することが好ましい。
【0071】
ウェブ(図示せず)を用いる場合、インクジェットヘッド40を、例えば、X方向に移動させながら、ウェブを移動させてワイプする。これによりウェブ面が常にリフレッシュされる。ウェブには、上述のウェブ72と同じものを用いることができる。
なお、ウェブに洗浄液を事前に含ませて、インクをふき取ること、およびインクジェットヘッド40に洗浄液を付与して、インクをふき取ることのうち、少なくとも一方をしてもよい。インクをふき取る時にはサブタンク50、58内の圧力を印刷時の圧力と別に設定することもできる。インク、インクジェットヘッド40またはワイプの条件によって最適な圧力を設定することが好ましい。
【0072】
メンテナンス部36では、インクジェットヘッド40について、パージ、スピットおよびドリップ等の動作を行わせることもできる。
ここで、パージとは、インクジェットヘッド40をインク受け77上に配置し、この状態でサブタンク50の圧力を正圧にして、ノズル41からインクを押し出すことである。インク受け77は、キャップ、ワイプ部と共有することもできる。
【0073】
スピットとは、吐出動作のことである。これにより、ノズル詰まり、吐出曲がりを改善することができる。なお、スピットはパージと同様の場所で実施するが、スピット用のステーションを設けてもよい。この場合、吐出したインクが舞わないように下から吸引を行うことが好ましい。スピット時は、印刷時のインクジェットヘッド40に吐出波形と比較して駆動電圧を高くするか、または専用波形を用いる。専用波形は、印刷時の吐出波形と比較してインク液滴量が多く、インクの吐出速度が早くなるように設定する。
【0074】
ドリップとは、上述のパージ程、インクを強く押し出す回復動作ではなく、ゆっくりとインクが垂れることで回復させる動作である。これにより、ノズルの詰まり、インクの吐出曲がりを改善することができる。なお、ドリップもパージまたはスピットと同様の場所で実施するが、ドリップの際、サブタンク50内の圧力を印刷時の圧力よりも正圧側にすることで実施する。しかしながら、サブタンク50内の圧力は大気圧より正圧であり、かつパージ圧より低いことが好ましい。
【0075】
また、メンテナンス部36では、ノズル41の乾燥防止のため、キャップ機構(図示せず)を有してもよい。キャップ機構では、ノズル41にキャップした後、ノズル41周辺を窒素ガスで満たすものである。また、洗浄液をウェブ等に浸してキャップの中に配置することでノズル41の乾燥をより防止することもできる。
【0076】
図7は、本発明の実施形態の印刷装置のメンテナンス部の吐出観察部とノズル観察部を示す模式図である。
図7に示すように、メンテナンス部36では、インクジェットヘッド40から吐出されたインク液滴45を観察する吐出観察部76と、インクジェットヘッド40のノズル41(
図3(a)参照)を、ノズル41が形成された面側から観察するノズル観察部78とを有する。インク液滴45を受けるインク受け77がインクジェットヘッド40に対向して設けられている。
【0077】
吐出観察部76は、光源76aと撮像部76bを有し、光源76aと撮像部76bとが、インク液滴45を挟んで配置されている。光源76aには、LED光源およびストロボ光源を利用することができる。ストロボ光源としては、例えば、菅原製作所のナノパルスライトを用いることができる。
撮像部76bには、例えば、カメラレンズを備えたカメラを用いることができる。カメラレンズとしては、例えば、光学倍率0.5〜10倍、ワーキングディスタンスが30mm以上のカメラレンズが用いられる。カメラとしては、例えば、100万画素程度以上のモノクロCMOS、CCDを備えるカメラが用いられる。なお、吐出観察部76では、吐出されたインク液滴45の影を観察するためカラーである必要性はない。
【0078】
ノズル観察部78は、撮像部78aにレンズ78bの一方の端が接続され、このレンズ78bの他方の端に光源78cが設けられている。
撮像部78aには、例えば、100万画素程度以上のCMOS、CCDを備えるカメラが用いられ、カラー、およびモノクロのいずれも用いることができる。
レンズ78bとしては、例えば、光学倍率0.5〜10倍のカメラレンズが用いられる。カメラレンズには、インクが付着する可能性があるため、カメラレンズには取り替え、またはクリーニングが容易な保護フィルタを設けることが望ましい。
撮像部78aとレンズ78bとは一体でも別体でもよい。一体の場合、例えば、カメラレンズを備えたカメラを用いることができる。
光源78cには、例えば、LED(発光ダイオード)光源を利用することができ、同軸照明またはリング照明等を用いることができる。
【0079】
吐出観察部76およびノズル観察部78は、いずれも制御部18に接続されており、光源76a、78cと撮像部76b、78aの動作は制御部18で制御され、撮像部76b、78aで得られた撮像データは制御部18により、記憶部14に記憶される。制御部18でインクジェットヘッド40でのインクの吐出状態が、例えば、インクジェットヘッド40の吐出特性の設計値と比較されて、その比較結果が、記憶部14に記憶される。
【0080】
本発明の印刷装置10では、例えば、電子ペーパー等に用いられる薄膜トランジスタのゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極を作製することができる。
図8は、本発明の実施形態の印刷装置で形成される薄膜トランジスタの一例を示す模式図である。
図8に示す薄膜トランジスタ80(以下、TFT80という)は、ゲート電極82と、ゲート絶縁層(図示せず)と、ソース電極86aと、ドレイン電極86bと、半導体層(図示せず)と、保護層(図示せず)とを有する。
TFT80においては、ゲート電極82を覆うように、ゲート絶縁層(図示せず)が形成されている。このゲート絶縁層上にチャネル領域84として予め設定された隙間をあけて、ソース電極86aとドレイン電極86bとが形成されている。チャネル領域84上に活性層として機能する半導体層(図示せず)が形成されている。半導体層、ソース電極86aおよびドレイン電極86bを覆う保護層(図示せず)が形成されている。なお、チャネル領域84のチャネル長は数μm〜数十μmオーダである。薄膜トランジスタのドレイン電流は、チャネル長の影響を受け、チャネル長のばらつきは、薄膜トンランジスタの特性のばらつきに結びつく。
【0081】
次に、印刷装置10におけるインクの吐出タイミングの調整について説明する。
デジタルインキング方式では、印刷版25に対して正確にインキングすることが重要である。
インクの吐出タイミングを制御しているロータリーエンコーダ等の計測機器の分解能に限界があり、デジタル誤差が発生し、累積誤差として長寸法精度が低下する。例えば、1200dpi(dots per inch)の解像度でインキングする場合、21.166・・・μm間隔でインキングする必要がある。エンコーダ1パルスの距離を1μmとすると、21パルス、すなわち、21μmでインクを1回吐出するか、22パルス、すなわち、22μmでインクを1回吐出するかの何れかとなる。このため1回のインクの吐出での誤差は小さいが、大きな面積にインキングすることを考えるとこの誤差は累積される。例えば、1200dpiで254mmをインキングした場合には、ドット数は12,000となる。実際のインキング距離は21パルスで1回吐出とすると21μm(21パルス)×12000=252mmとなり、2mmずれが生じる。2mmのずれは、ポスター、チラシ等のグラフィック分野においては大きな問題とならないこともあるが、プリンテッドエレクトロニクス分野では、1〜10μmレベルでの位置あわせ、幅1〜10μmレベルの配線パターンが必要とされており、2mmのズレは桁外れに大きい。デジタルインキング方式では印刷版25とインク位置が大きくずれることになる。
【0082】
理想系における解決方法は、例えば、上述の特許文献2に開示されているように、2ヵ所のアライメントマーク位置を把握して、累積誤差がエンコーダの分解能を超えた段階で補正のパルスで調整することである。
しかしながら、吐出信号が入力されてからインクが印刷版25に着滴するまでには、例えば、吐出速度5m/s、ノズルと印刷版25との距離が1mmで、0.2msかかる。このため、ロータリーエンコーダでの読み取り位置、吐出タイミング、および着滴位置は一致しない。したがって、版の送りのわずかな揺らぎが着滴位置をずらすことになる。特に、基板が平面でなく、版胴に巻かれた状態では、ロータリーエンコーダに揺らぎはなくても、版胴24の偏芯または印刷版25の膜厚むらによって送り量が変わってしまう。さらに、版胴24の真円度、版胴24の送りの速度むら、印刷版25を版胴24に巻きつけたときの版変形、温湿度による版胴24もしくは印刷版25の歪、または印刷版25がインク溶媒を吸収することによる膨潤による印刷版25の変形によってもロータリーエンコーダでの読み取り位置、吐出タイミング、および着滴位置は一致しない。また、振動によって印刷版25とインクジェットヘッド40の位置関係がずれることもある。
【0083】
図9は、印刷版に形成されたインクの着滴位置の基準となるマークの第1の例を示す模式図である。以下の説明では、位置合せエリアM
1〜M
3において、位置合せエリアM
1を例にして説明するが、位置合せエリアM
2、M
3でも同じである。
図9に示すように位置合せエリアM
1には、インクの着滴位置の基準となるマーク90がY方向に沿って、複数等間隔で形成されている。マーク90は、インクの着滴位置の基準となるものであり、例えば、長辺がY方向に垂直に配置された長方形状である。マーク90が形成された領域がマーク形成領域27aである。マーク形成領域27aに並んでインクが着滴されるインク着滴領域27bがある。インク着滴領域27bには、例えば、X方向に並んで3つ、インクが着滴されてドット92が形成される。
【0084】
マーク90は、例えば、Y方向に20μmピッチで形成されている。ロータリーエンコーダは1パルス、1μmとする。この場合、設計値としては、20パルスでインクを1回吐出する。すなわち、20μmピッチでインクを吐出し、300mm長で15000画素となる。このとき、パルス数は300,000である。
図9では、一番上のマーク90とドット92のY方向の差Δ1が−35パルスであり、一番下のマーク90とドット92のY方向の差Δ2が−100パルスである。
なお、Y方向の差Δ1、Δ2の値のマイナスは、
図9において、ドット92がマーク90に対してY方向の反対側にあることを意味する。すなわち、ドット92がマーク90よりも上側にあることである。
【0085】
上述の1200dpiでインキングする長さ300mmをインキングする場合、20パルスでインクを1回吐出すると300mmには足りず、21パルスでインクを1回吐出すると315000パルスとなり、300mmを超えてしまう。この場合、調整部16bで、20パルスと21パルスを混在させてインキングする長さに対して誤差が最も小さくなるインクの吐出タイミングを求めて、インクの吐出タイミングを調整する。インクの吐出タイミングを調整する方法としては、インキングする長さ300mmにおいて誤差が最も小さくなるようにインクの吐出を間引く方法を用いることができる。この場合、公知方法を適宜利用することでき、例えば、特開2005−246123号公報の方法を用いることができる。
これ以外にも、使用するインクの吐出間隔を予め設定しておき、この吐出間隔を組合せでインキングする長さに対して誤差が最も小さくなる組合せを算出し、この組合せを利用することもできる。その他、1200dpi等のインキングの分解能と、ロータリーエンコーダ等の測定器37の分解能とによるデジタル誤差を解消できる方法を適宜利用することができる。
【0086】
ここで、マーク90は、特に限定されるものではないが、例えば、光学的に読み取り可能なもので構成される。例えば、マーク90は、印刷版25の印刷パターンの形成と同時に、同じく凹版の構成で形成される。マーク90が凹版であれば、マーク90が凹部になり、マーク形成領域27aが凸部になる。
印刷版25は、上述のように、一般的な手法で形成される。また、上述の特開2005−81726号公報に記載の手法を用いることで、マーク90を凹凸で構成することに加えてインクに対して親液性と撥液性を有するものを形成することもできる。
【0087】
Y方向の差とは、Y方向におけるマークの位置とインクの着滴位置の差のことである。上述のようにマークの位置とインクの着滴位置の差のデータは、読取部47で以下のようにして取得される。
まず、マーク90を撮影し、マーク90の位置情報を取得する。具体的には、マーク90の位置を読み取り、Y方向の中心線cmを求め、この中心線cmを基準とする。
ドット92の位置がインクの着滴位置を表すものである。3つのドット92を撮影し、3つのドット92の位置情報を取得し、3つのインクの着滴位置の位置情報を取得する。3つのドット92のY方向における中心位置の平均値cdを基準とする。マーク90のY方向の中心線cmと、ドット92のY方向における中心位置の平均値cdとの差を求める。この差を表すデータを得る。
なお、マーク90の中心線とドット92の中心位置の求め方は、上述の通りであるため、その詳細な説明は省略する。
【0088】
印刷装置10におけるマークは、上述の
図9に示すもの限定されるものではない。また、インクをマーク90に隣接して吐出したが、マーク90内にインクを吐出してもよい。ここで、
図10は、印刷版に形成されたインクの着滴位置の基準となるマークの第2の例を示す模式図である。
図10では、位置合せエリアM
1に、設計された吐出間隔P1に対してY方向に配置位置を変えたマーク90a〜90eがY方向に沿って、予め定められた配置間隔で形成されている。マーク90a〜90eの配置位置はインクの吐出間隔P1の整数倍ではない。符号Epは設計値として設定される吐出位置である。マーク90a〜90eはインクの着滴位置の基準となるものである。
マーク90a〜90eに対して、インクジェットヘッド40からインクを吐出し、ドット92を得る。マーク90a〜90eの配置位置とドット92の位置との差のデータを上述のように求める。
図10の例では、マーク90c内にドット92があり、マーク90cの位置がインクの最良吐出タイミングである。このときのマーク90cの位置とドット92の位置との差のデータをパルス数の形式で算出する。そして、上述の最良吐出タイミングを基にして、上述のようにインクの吐出タイミングを調整する。このように、マークの配置位置をY方向に少しずらした位置に配置することでマークの位置とインクの着滴位置との位置関係を容易に算出できる。
なお、マーク90a〜90eはY方向に沿って形成したが、これに限定されるものではなく、X方向に並べて形成してもよい。
【0089】
また、
図11に示すように、マーク94a〜94eをY方向に対して垂直ではなく斜めに形成してもよい。マーク94a〜94eはインクの着滴位置の基準となるものである。
ここで、
図11は印刷版に形成されたインクの着滴位置の基準となるマークの第3の例を示す模式図である。
図11では、位置合せエリアM
1に、Y方向に対する角度を変えたマーク94a〜94eがY方向に沿って形成されている。マーク94a〜94eのX方向の中心位置はインクの吐出間隔P1の整数倍になっている。符号Epは設計値として設定される吐出位置である。
【0090】
マーク94a〜94eに対してインクを吐出し、ドット92を得る。マーク94a〜94eの配置位置とドット92の位置の差のデータを上述のように求める。
図11の例では、マーク94eの位置に対してドット92の位置の差が小さく、すなわち、Y方向の差が小さく、マーク94eの位置がインクの最良吐出タイミングである。このときのマーク94eの位置とドット92の位置との差のデータをパルス数の形式で算出する。そして、上述の最良吐出タイミングを基にして、上述のようにインクの吐出タイミングを調整する。このように、マークをY方向に対して傾けて配置することで、マークとインクの着滴位置との位置関係を容易に算出できる。
なお、マーク94a〜94eはY方向に沿って形成したが、これに限定されるものではなく、X方向に並べて形成してもよい。
【0091】
ここで、
図12は、印刷版に形成されたインクの着滴位置の基準となるマークの第4の例を示す模式図である。
図12では、左から右のマークに進むにつれて時間が経過していることを示す。
図12では、位置合せエリアM
1に、設計された吐出間隔P1に対してY方向に配置位置を変えたマーク96a〜96eがY方向に沿って形成されている。マーク96a〜96eの配置位置はマーク90a〜90eと同じくインクの吐出間隔P1の整数倍ではない。符号Epは設計値として設定される吐出位置である。また、マーク96a〜96e以外の部分97は、インクに対して撥液性の撥インク部であり、インクを弾く。例えば、マーク96a〜96eは凹部であり、マーク96a〜96e以外の部分97は凸部である。
なお、マーク96a〜96eはインクの着滴位置の基準となるものである。マーク96a〜96e以外の部分97はマーク形成領域27aに相当する。
この場合、インクをマーク96a〜96eに吐出すると、例えば、マーク90a、90b、90d、90eのように、ずれてドット92が形成されても、部分97がインクを弾くため、時間が経過すると、ドット92はマーク90a、90b、90d、90e内に収まる。このため、タイミングがあっているマーク90cとの違いがなくなり、正確なマークの位置とドットの位置との差のデータを得ることができない。このように、部分97を、インクを弾くものとすることで、マークから多少ずれてインクを着滴してもマークにインクが移動してしまう。このことから、マーク96a〜96e外の部分97はインクを弾かないことが好ましい。
【0092】
なお、インクに対して撥液性、インクに対して親液性とは、以下に示すようにして評価することができる。
撥液性が予想される領域と親液性が予想される領域とに液滴を着滴させて、その液滴の挙動で評価を行う。着滴時の液滴量に対して液滴量が減少した領域が撥液性を有する撥インク部、液滴量が増加した領域が親液性を有する親インク部である。
なお、版作成の工程で撥液性と親液性が付与される。この場合、撥液性と親液性の評価は、撥液性の撥インク部、親液性の親インク部の境界に液滴を着滴させて、その液滴の挙動で評価を行う。着滴時の液滴量に対して液滴量が減少した領域が撥液性、液滴量が増加した領域が親液性である。
版の凹凸の境界と撥液性の撥インク部と親液性の親インク部の境界が一致している場合には、その凹凸から境界を見分けることができる。版の凹凸が小さく境界を見分けることが困難な場合には、境界付近に液滴を複数着滴させることで境界での液滴量の変化を評価することができる。また、版の凹凸の境界を示すアライメントマークを予め設けることで境界を知ることもできる。
【0093】
ここで、
図13は、印刷版に形成されたインクの着滴位置の基準となるマークの第5の例を示す模式図である。
図13は、
図12に比して、マーク96a〜96eとそれ以外の部分27cがインクに対して同じ撥液性である点が異なり、それ以外の構成は
図12に示す各構成物と同じである。このため、
図13は
図12と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。この場合、例えば、マーク96a〜96e以外の部分27cが凸部である。マーク96a〜96e以外の部分27cは、マーク形成領域27aに相当する。
図13に示すように、マーク96a〜96eとマーク96a〜96e以外の部分27cとを、同じ撥液性とし、撥インク部としてインクを弾くようにする。これにより、マーク90a、90b、90d、90eのように、ずれてドット92が形成された場合、時間が経過してもドット92は、ずれた状態となる。マーク90cはタイミングがあっており、時間が経過してもドット92はマーク90cに収まった状態にある。これにより、正確なマークの位置とドットの位置との差のデータを得ることができ、インクの吐出タイミングを高い精度で調整することができる。
【0094】
ここで、
図14は、印刷版に形成されたインクの着滴位置の基準となるマークの第6の例を示す模式図である。
図14は、
図12に比して、マーク96a〜96eがインクに対して撥液性の撥インク部であり、マーク96a〜96e以外の部分99がインクに対して親液性の親インク部である点が異なり、それ以外の構成は
図12に示す各構成物と同じである。このため、
図13は
図12と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。この場合、マーク96a〜96eが凸部であり、マーク96a〜96e以外の部分99が凹部である。なお、マーク96a〜96e以外の部分99はマーク形成領域27aに相当する。
図14に示すように、マーク96a〜96eがインクを弾き、マーク96a〜96e以外の部分99がインクを弾かないようにする。これにより、マーク90a、90b、90d、90eのように、ずれてドット92が形成された場合、時間が経過するとドット92は部分99に移動する。マーク90cはタイミングがあっており、時間が経過してもドット92はマーク90cに収まった状態にある。インクの着滴位置がマーク90cに一致したときのみ、インクが安定してマーク90cに載りドット92が形成される。これにより、より高い精度でマークの位置とドットの位置との差のデータを得ることができ、インクの吐出タイミングをより高い精度で調整することができる。
【0095】
次に、印刷装置10における印刷版25の傾き補正について説明する。
図15は本発明の実施形態の印刷装置の傾き補正の一例を示す模式図である。
なお、
図15では、理想的な配置の印刷版25iを想像線で示す。理想的な配置とは、版胴24のY方向と印刷版25のアライメントマークAとアライメントマークCを通る線Laが上述のY方向に平行であることをいう。
図15は、印刷版25が理想的な配置の印刷版25iに対して角度α傾いて配置された状態が示されている。
【0096】
印刷版25を版胴24に取り付けたときに傾きが生じてしまう。印刷版25が角度α回転して取り付けられた場合、Y方向の送り量とパターンのY方向長さが一致しなくなる。
この場合、まず、印刷版25の傾きを算出する。アライメントマークAとアライメントマークCの2つの位置を特定することにより、印刷版25の傾き、すなわち、角度αを算出することができる。より望ましくは前述と同様にマーク90とインクの着滴位置との比較で行う。これにより、インクジェット吐出の誤差も含めた印刷版25の傾きの補正が可能となる。
例えば、
図15に示すように、印刷版25の傾き検出のためのマーク140a、140b、140cは、印刷版25の辺に平行に伸びる直線とする。マーク140a〜140cは、それぞれ1本の直線であってもよく、複数の領域に分断されたものであってもよい。
また、マーク140a〜140cは、全て同じであることに限定されず、それぞれ角度が異なっていてもよい。角度が異なるマーク140a〜140cを設けることで、例えば、1つのマーク全域にインクが着滴していれば、そのマークの角度が印刷版25の傾き角度であることがわかる。
【0097】
マーク140a、140b、140cに合うようにインクジェットヘッド40でインクを着滴させて、印刷版25の傾きを算出する。インク着滴位置をより正確にするため、上述のようにマーク140a〜140cを撥インク部とし、マーク140a〜140c以外の部分を親インク部とする。これにより、マーク140a〜140cに着滴しなかったインクが、マーク140a〜140cでドットを形成することを排除することができる。
印刷版25の傾きが角度αであれば、Y方向の長さがLのものに対して、Y方向の送り量はL・cosθとなる。エンコーダ信号の出力間隔もcosαずれる。これらを考慮したインクの吐出タイミングを算出すればよい。
このときは、Y方向の長さは印刷版25とインクジェットヘッド40が一致するがX方向にズレが生じてしまう。これに対しては、インクジェットヘッド40を印刷版25の傾きと同じだけ傾けることとインクジェットヘッド40と印刷版25を相対的にX方向に移動させることで対応することができる。
マーク140a〜140cのインクの着滴は、読取部47で撮影され、画像処理等がなされる。エンコーダ信号の出力間隔の調整は16cでなされる。
【0098】
また、読取部47をX方向に走査した場合、インクジェットヘッド40の両側にあるノズルのインクの吐出タイミングがずれるため、Y方向でインクの着弾位置がずれてしまい、印刷版25にパターンを正確にインキングすることができない。このため、インクジェットヘッド40の両側にあるノズルのインクの吐出タイミングは調整部16bで調整される。また、インクジェットヘッド40を印刷版25の傾きの角度αに合わせて回動させる。これにより、Y方向でインクの着弾位置のずれを抑制することができる。すなわち、印刷版25の傾きを補正することができる。
【0099】
上述以外にも、インクジェット吐出する画像パターンを拡大縮小回転させることでも同様のことができる。例えば、印刷版25が角度α傾いている場合、形成するパターン89のパターンデータを補正部16cにてcosα倍して補正する。インクの吐出パターンデータを補正し、補正パターンデータを作成する。この補正パターンデータを用いて、パターンを形成する。
なお、複数のマーク140a〜140cを用意しておき、印刷版25の傾きに対応したマークを選択することで、読取部47での読取長さのずれを抑制することができる。
【0100】
印刷版25の傾きの補正について、より具体的には、例えば、
図16(a)に示すように、印刷版25が傾いており、回転方向Yに平行な配線パターン89aが印刷開始位置89sと印刷終了位置89eとでX方向に40μmずれているような場合、この配線パターン89aを1つのノズル41bによるインキングで作製するためには、配線パターン89aの40μmのずれに合わせてノズル41bの位置を、例えば、X方向と平行なDh方向に移動させる必要がある。すなわち、インクジェットヘッド40をDh方向に移動させる必要がある。なお、
図16(a)において、符号Hyは、インクジェットヘッド40をDh方向に移動させないときのノズル41bの移動方向を示す。移動方向HyはY方向の平行な方向である。符号Hmはインクジェットヘッド40をDh方向に移動させたときのノズル41bの移動方向を示す。移動方向HmはX方向と平行な方向である。
【0101】
また、例えば、
図16(b)に示すように、印刷版25が傾いているとき、ノズル41が千鳥配置されているインクジェットヘッド40を用いた場合、インクジェットヘッド40を傾けると、ノズル41の間隔t1、t2が、t1<t2となり、ノズル41間隔が不均一になる。このため、傾いた印刷版25に対して、常に一定の場所にインクジェットヘッド40が配置されるように、インクジェットヘッド40を、例えば、Dh方向に移動させる必要がある。具体的には、インクジェットヘッド40の位置が固定された場合、印刷版25が傾いていると、印刷版開始位置25sと印刷版終了位置25eとでは距離Dwずれる。このため、印刷版25のY方向への移動量に応じてインクジェットヘッド40をDh方向に移動させることで印刷版25に対して、常に一定の場所にインクジェットヘッド40を配置させることができる。
【0102】
以上のように印刷版25の傾き補正の方法を用いて印刷版25の傾きを補正することで、印刷版25が傾いて取り付けられても、インクの打滴位置のずれを抑制し、パターンの大きさおよび位置等を変えることなく、高い精度で印刷版25にパターンを形成することができる。これにより、印刷版25の取り付け精度が低い場合であっても印刷精度を向上させることができる。
なお、印刷版25の傾きについては、上述のように、許容範囲を設定しておき、許容範囲内であれば、印刷版25の傾き補正をしないようにしてもよい。
【0103】
次に、印刷装置10で形成される配線パターンについて説明する。
ここで、
図17(a)〜(c)は、本発明の実施形態の印刷装置で形成される配線パターンの形成工程を工程順に示す模式的断面図である。
図18(a)は、転写前の印刷版の第1の例を示す模式的断面図であり、(b)は、印刷版に転写後のパターンを示す模式的断面図である。
図19(a)は、転写前の印刷版の第2の例を示す模式的断面図であり、(b)は、印刷版に転写後のパターンを示す模式的断面図である。
図20(a)は、転写前の印刷版の第3の例を示す模式的断面図であり、(b)は、印刷版に転写後のパターンの一例を示す模式的断面図であり、(c)は、印刷版に転写後のパターンの他の例を示す模式的断面図である。
【0104】
印刷装置10で形成される配線パターンにおいては、
図17(a)に示すように、印刷版25の凹部25bにインク52bが打滴されて、中央に凹部110があるインク形状となっている。この状態で、
図17(b)に示すように、印刷版25を基板31に押し付け、
図17(c)に示すようにインクを基板31の表面31aに転写すると、凹部122のある配線パターン120が形成される。
なお、印刷版25でのインクの形状、および配線パターン120の形状は、例えば、コンフォーカル顕微鏡(OPTELICS H1200、レーザーテック社製)、および微細形状測定機サーフコーダ(ET4000−L、小坂研究所製)を用いて測定することができる。
【0105】
上述のように形成された配線パターン120(
図17(c)参照)は、印刷版25上での転写前のインク形状がそのまま基板31の表面31aに転写されることがわかった。例えば、インク形状が、印刷版25で、
図17(a)に示すように中央に凹部110がある場合、いわゆるコーヒーステイン形状をしていた場合、基板31上でも、
図17(c)に示す配線パターン120のように中央に凹部122がある形状、いわゆるコーヒーステイン形状であった。
版胴24から基板31に転写されて配線パターン120が形成されるため、配線パターン120は、印刷版25での形状を反転した形状になるとも考えられるが実際はそのようにはならなかった。基板31への転写のメカニズムは明確にはなっていないが、印刷版25にPDMS(ポリジメチルシロキサン)を用いているため転写時の印圧によってPDMS(ポリジメチルシロキサン)が変形して、基板とインクと印刷版(PDMS(ポリジメチルシロキサン))が密着しているためと考えられる。
このことは、転写前の印刷版上のインク形状をコントロールすることで配線パターンの断面形状を自由にコントロールすることができることを示唆している。
インクの揮発状態を変えることでコーヒーステインをコントロールすることが知られており、配線パターンの仕様に応じた形状をインク設計で可能なことを示している。また、PDMS(ポリジメチルシロキサン)は溶剤を吸収することが知られており、この吸収量を制御することでも同様の効果を得ることができる。
【0106】
例えば、
図18(a)に示すように、印刷版25でインク52bが、その表面112が平らな場合、
図18(b)に示すように基板31の表面31aに、表面が平らな配線パターン124が形成される。
また、例えば、
図19(a)に示すように、印刷版25でインク52bが、その表面114が凸な場合、
図19(b)に示すように基板31の表面31aに、表面128が凸な配線パターン126が形成される。
また、例えば、
図20(a)に示すように、印刷版25でインク52bが、その表面116が凹な場合、
図20(b)に示すように基板31の表面31aに、表面132が凹な配線パターン130が形成される。
なお、表面116が凹なインク52bでは、上述の
図20(a)、(b)に示しているが、
図20(c)に示す基板31の表面31a側に凹部136がある配線パターン134は形成されない。
【0107】
印刷装置10では、版面観察部26および判定部16dを設け、版面観察部26にて、インクが付与された印刷版25の版面25aを撮像して版面撮像データを得て、調整ユニット16の判定部16dにてインクの付与が適正であるか否かを判定することできる。調整ユニット16の判定部16dでの判定結果に応じて、次回以降のインクの付与方法、版面の修復等を行うことで、直接的な印刷結果ではないが、実際の基板による印刷結果相当の検査が可能となり、検査の信頼性が向上し、印刷精度を向上させることができる。しかも、印刷確認のために基板31を無駄にすることもない。さらには、検査ロール等の複雑な構成の必要がないため、装置コストも低減することができる。
また、ドクタリングが不要であり、ドクタリングに伴う印刷版25の版面25aの地汚れを防止し、かつ印刷版25の耐久性も改善することができる。
【0108】
次に、本実施形態の印刷方法について印刷装置10を用いて説明する。
図21は、本発明の実施形態の印刷方法を説明するための示す模式図である。
上述のように、版胴24を複数回回転させて、各回転毎に、インクをパターン領域内に付与する。
図21において、距離は版胴24の回転量を示したものであり、距離が0は、印刷版25の初期位置を示す。
また、
図21において、符号100は、インクの吐出するタイミングを示し、符号102はインクを乾燥する区間を示し、符号104は基板31に転写する区間を示す。また、符号106は、複数回印刷する場合、印刷版25の印刷の開始位置を示す。
【0109】
印刷装置10では、印刷しようとするパターンのパターンデータに基づいて、特定のパターンが基板31に印刷される。アライメントカメラ42でアライメントマークA〜Dの位置情報を取得し、印刷版25の取り付け位置情報を取得し、印刷版25の傾きを求める。が印刷版25の傾きが許容範囲内である場合、傾き補正をすることなくパターンを印刷する。この場合、読取部47で位置合せエリアM
1〜M
3のマーク90の位置情報と、インクの着滴位置情報、すなわち、ドット92の位置情報が取得され、マーク90の位置とドット92の位置の差のデータが算出されており、この差のデータに基づくインクジェットヘッド40からのインクの吐出タイミングが調整されている。この状態で、予め定められた吐出波形でインクを印刷版25に吐出し、インキングを行う。
一方、印刷版25の傾きが許容範囲から外れる場合、傾き補正をしてパターンを印刷する。このように印刷版25の傾き補正をすることで、印刷版25の取り付け精度が低い場合であっても印刷精度を向上させることができる。
【0110】
図21に示す例では、版胴24を4回回転させ、各回転毎にインクを打滴する。インクの打滴毎に、版面観察部26にて印刷版25の版面25aの情報を取得し、調整ユニット16の判定部16dにて判定し、その判定結果に基づいて、制御部18でインクの吐出量、吐出密度が調整されて、次のインクの打滴を実施する。この場合、印刷版25の凹部での不足がある場合には不足部分の周辺のインクの打滴量を多くし、形成されるドットを大きくする。これ以外にも、予め定められたインクの打滴数よりも多くして、打滴密度を高くする。
逆に、印刷版25の凹部で、先のインクの打滴の際に大きなドットとなってしまった場合、インクの打滴量を少なくし、形成されるドットを小さくする。これ以外にも、予め定められたインクの打滴数よりも少なくして、打滴密度を下げる。
また、インクジェットヘッド40が冗長ノズルを有する場合には、冗長ノズルを用いることもできる。
【0111】
例えば、2400dpiのパターンデータの場合、X方向、Y方向ともに1200dpiのパターンの4回走査、X方向600dpi、Y方向2400dpiのパターンの4回走査で、パターン領域へのインクの付与(インキング)を完了することができる。
また、例えば、X方向、Y方向ともに1200dpiの場合、1ノズルの隣接画素間距離(最小値)も21.2μmで吐出周波数の要求は低いものの、ノズル数がX方向で600dpiと比べて2倍必要となる。X方向の隣接画素間距離(最小値)は21.2μmとなりX方向着弾干渉の影響が懸念される。
一方、X方向600dpi、Y方向2400dpiの場合、ノズル数は上述のX方向1200dpiと比較して1/2となり、X方向の隣接画素間距離(最小値)は42.3μmとなりX方向着弾干渉の影響は減るものの、Y方向の隣接画素間距離(最小値)が10.6μmとなり、X方向、Y方向ともに1200dpiの場合と比較して2倍の高周波吐出が必要となる。
【0112】
次に、本実施形態の印刷装置10の印刷方法についてより具体的に説明する。
図22は、本発明の実施形態の印刷方法を示すフローチャートである。
最初に、インクをインクタンクに供給する(ステップS10)。ステップS10では、まず、インクタンクからサブタンクへインクを送液する。そして、サブタンクからインクジェットヘッド40にインクを供給する。
なお、インクの供給に際しては、洗浄液からインクに置換する。洗浄液を窒素ガスでインクジェットヘッド40から出した後、インクを供給することも可能であるが、窒素ガスを巻き込みやすい。このため、インクの供給は洗浄液から置換することが好ましい。
【0113】
洗浄液をインクジェットヘッド40に供給した状態で、吐出確認を行う。吐出確認の際、結果がよくない場合、メンテナンス部36を用いて吐出回復を行う。回復できない場合は、必要に応じてインクジェットヘッド40の交換を行う。
洗浄液からインクに置換に際しては、例えば、サブタンク50の洗浄液を下限まで減らす。次に、サブタンク50にインクを入れ、インクジェットヘッド40内の洗浄液をインクで押し流す。次に、サブタンク50のインクを下限まで減らす。インクジェットヘッド40内の洗浄液をインクで押し流し、サブタンク50のインクを下限まで減らすことを繰り返し行い、洗浄液をインクに置換する。
【0114】
次に、アライメントを実施する(ステップS12)。
この場合、インクジェットヘッド40の位置と版位置とのアライメントを行う。まず、アライメントマークA〜Cをアライメントカメラ42で読み取り、その位置を検出する。
次に、X方向の絶対距離を求める。この場合、例えば、アライメントマークA、Bがアライメントカメラ42の視野のX方向で同じ位置になったときのキャリッジ46位置(リニアスケール読み取り値)から算出する。
次に、Y方向の絶対距離を求める。この場合、アライメントマークA、Cのアライメントマークがアライメントカメラ42の視野のY方向で同じ位置になったときの測定部16aから出力される版胴24の回転位置情報から算出する。なお、Y方向は距離ではなく角度でのアライメント調整になる。
【0115】
次に、インクジェットヘッド40と印刷版25との相対的な傾きを求める。この場合、傾き角度θを求める。アライメントマークA,BのX方向位置だけでなく、Y方向についてもずれを計測する。アライメントカメラ42の視野のY方向も同じになったときの測定部16aから出力される版胴24の回転位置情報からY方向のずれを算出して、X方向の距離とY方向のずれから傾き角度θを算出する。あるいは、カメラの視野内でのY方向のずれから傾き角度θを算出することもできる。
また、アライメントマークA〜Cの位置情報から、印刷版25の版胴24に対する取り付け位置情報を得る。すなわち、どのように印刷版25が版胴24に取り付けられているかの情報を得る。そして、印刷版25の傾き角度αを求める。例えば、角度αは、X方向の距離とY方向のずれから算出することができる。
【0116】
上述のように得られたX方向の距離、Y方向の角度、傾き角度θは記憶部14に記憶される。制御部18では、X方向の距離、Y方向の角度、傾き角度θと、記憶部14に記憶された印刷するパターンデータに対してX方向およびY方向の拡大縮小処理、傾き角度θに基づくパターンデータの回転処理を行い、パターンデータを補正する。補正されたパターンデータに必要に応じて印刷版25の傾き補正を行う。
【0117】
次に、インクの吐出タイミングを確認する(ステップS14)。
ステップS14では、位置合せエリアM
1〜M
3のマーク90に対して、インクジェットヘッド40からインクを吐出し、ドット92を得る。次に、読取部47でマーク90の位置情報とマーク90に対して吐出されたインクの複数のドット92の位置情報、すなわち、インクの着滴位置の位置情報を取得する。そして、版胴24の回転方向におけるマーク90の位置とドット92の位置の差を求め、マーク90の位置とドット92の位置の差のデータを得る。なお、吐出タイミングを確認するステップS14が取得工程に相当する。
【0118】
次に、調整部16bで版胴24の回転方向におけるマーク90の位置とドット92の位置の差のデータに基づき、インクの吐出タイミングを調整する(ステップS16)。
ステップS16では、調整部16bで、上述のインキングする長さに対して誤差が最も小さくなるインクの吐出タイミングを求めて、インクの吐出タイミングが調整された補正吐出タイミングデータが作成される。吐出タイミングの調整には、例えば、特開2005−246123号公報の手法を用いることができる。なお、吐出タイミングを調整するステップS16が調整工程に相当する。
【0119】
次に、インクジェットヘッド40の吐出確認を行う(ステップS18)。
この場合、テストパターンの印刷物の評価、または吐出観察にて行う。
テストパターンの印刷の印刷物の評価は、印刷した基板の目視またはスキャナでの評価で行う。また、印刷版25に吐出のみを行い、転写を行わず、印刷版25上のインクをアライメントカメラ42で観察することで実施することもできる。
印刷版25には上述のように吐出確認エリアTを設けており、そこにインクを打滴する。版胴24に吐出確認エリアTを設けて、そこにインクを打滴してもよい。
吐出確認エリアTのインクは、評価後、クリーニング部34で取り除くか、または基板31に転写して取り除く。
【0120】
なお、吐出確認の結果が予め定められた範囲から外れていた場合、メンテナンス部36にて回復動作を行うか、または、吐出制御部43での吐出波形の最適化を行う。
吐出確認と合わせて、印刷版25へ打滴したインクの着弾位置の情報を、アライメントカメラ42を用いて取得する。調整ユニット16において、着弾位置のずれを判定し、X方向、Y方向、傾き角度θについて予め定められた範囲から外れている場合には、補正パターンデータの拡大縮小、回転等を再度調整する。
【0121】
次に、印刷版へのインキングを行う(ステップS20)。
パターンデータまたは補正パターンデータを吐出制御部43に送り、版胴24を回転させて、調整されたインクの吐出タイミングで、インクジェットヘッド40から予め定められた吐出波形でインクを印刷版25に吐出し、インキングを行う。例えば、版胴24を4回回転させて、すなわち、4回走査してパターン領域にインクを付与する。この場合、走査1回毎にスピットを行う。スピットは、印刷版25のスピットエリアGまたは版胴24上に設けたスピットのためのスピットエリア(図示せず)で行う。
スピットのタイミングは、印刷エリアにパターン形成した後であっても、印刷版1枚毎あってもよい。また、印刷版100枚毎のようにある印刷枚数毎に、パージ、ワイプおよびスピットをメンテナンス部36で実施し、さらに吐出確認を行うようにしてもよい。なお、印刷版へのインキングを行うステップS20が吐出工程に相当する。
【0122】
次に、インキングされた印刷版25を基板31に転写する(ステップS22)。
まず、ステージ30上に基板31を載置しておき、開始位置Psにて待機する。そして、印刷版25のパターンの位置合わせのために基板31のアライメントを行う。
次に、ステージ30を搬送方向Vに移動させて基板31を版胴24の下方の印刷位置Ppに配置する。そして、版胴24を回転させ、印刷版25と基板31の表面31aとを接触させて、印刷版25のインクを基板31に転写する。そして、転写後、ステージ30を搬送方向Vに移動させて、版胴24の下方の印刷位置Ppから印刷版25を終了位置Peに移動させる。その後、パターンが形成された印刷版25をステージ30から移動させ、ケーシング20の外部に取り出す。
【0123】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の印刷装置および印刷方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。