(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受け部材は、前記操作部材による一方向への回動変位で押動される第1受け面と、前記操作部材による他方向への回動変位で押動される第2受け面とを有し、前記第1受け面及び第2受け面への押動により前記スイッチ本体を開から閉にする請求項1記載の双眼鏡。
前記受け部材は第1係合部を有し、前記防振規制部材は前記第1係合部に係合する第2係合部を有し、前記第1係合部と前記第2係合部との係合により、前記受け部材が前記スイッチ本体を開にする中立状態で前記防振規制部材を前記防振規制位置にし、前記受け部材が前記スイッチ本体を閉にする押動状態で前記防振規制部材を前記防振位置にする請求項6記載の双眼鏡。
前記第1リンク部材を前記保持部材の配列方向である第1方向に移動させる第1ボイスコイルモータと、前記第2リンク部材を前記第1方向に直交する第2方向に移動させて前記第3回動軸の周りに回動させる第2ボイスコイルモータとを有する請求項9記載の双眼鏡。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態の双眼鏡30は、望遠光学系により構成された左右1対の左側望遠光学系37L及び右側望遠光学系37Rにより、遠景の光学像を拡大して観察するために使用される光学観察装置である。双眼鏡30には、後述する防振装置45(
図2参照)が設けられている。防振装置45は、双眼鏡30の前後方向をY軸、前後方向に直交する幅方向をX軸、Y軸及びX軸に直交する垂直な軸をZ軸とした場合に、X軸周りのピッチ方向の像振れと、Z軸周りのヨー方向の像振れを補正する。
【0021】
双眼鏡30は、本体部31と、左右1対の左側接眼部33L及び右側接眼部33Rとを備えている。本体部31の前面31aには、左右1対の左側対物開口32L及び右側対物開口32Rが設けられている。左側接眼部33L及び右側接眼部33Rは、本体部31の背面側に設けられている。双眼鏡30は、本体部31を把持して左側対物開口32L及び右側対物開口32Rを被観察物に向け、左側接眼部33L及び右側接眼部33Rを両眼で覗くことにより、被観察物の拡大された像を観察することができる。
【0022】
左側対物開口32L及び右側対物開口32Rの奥には、左側対物光学系35L及び右側対物光学系35Rが設けられている。左側対物光学系35L及び右側対物光学系35Rは、互いの光軸64a(
図2等参照)を平行に左右1対で並べて配置されている。
【0023】
左側接眼部33L及び右側接眼部33Rの内部には、左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36Rが設けられている。左側対物光学系35L、右側対物光学系35R、左側接眼光学系36L、及び右側接眼光学系36Rは、それぞれ正の合成焦点距離を有するレンズで構成されている。なお、左側対物光学系35L、右側対物光学系35R、左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36Rは、図面の煩雑化を防ぐため、それぞれ1枚のレンズとして図示しているが、それぞれ複数枚のレンズで構成してもよい。
【0024】
左側対物光学系35L及び左側接眼光学系36Lは、双眼鏡30の前後方向(Y軸方向)に沿うように設定された左眼用光軸BL上に配置されており、左側望遠光学系37Lを構成する。また、右側対物光学系35R及び右側接眼光学系36Rは、双眼鏡30の前後方向に直交する幅方向(X軸方向)において、左眼用光軸BLと平行に設定された右眼用光軸BR上に配置されており、右側望遠光学系37Rを構成する。なお、以降では、Y軸方向において、対物側を前方、前端とし、接眼側を後方、後端とする。
【0025】
本体部31の内部には電池収容室39(
図2参照)が設けられている。電池収容室39には、後述する第1ボイスコイルモータ56及び第2ボイスコイルモータ57(
図2,
図20,
図21参照)並びに防振制御回路91(
図22参照)の電源となる電池42(
図2参照)が収容されている。電池42は、四角形板状に構成されている。本体部31の背面側上部には、ピント調整を行う際に回動操作されるピント調整ノブ40が設けられている。また、ピント調整ノブ40と同軸上に本発明の回動操作式の電源スイッチ(操作スイッチ)10(
図4も参照)が設けられている。電源スイッチ10は、回動操作時に防振制御回路91を作動させる。
【0026】
図2は双眼鏡30の水平方向断面、
図3は左眼用光軸BLに沿った垂直方向断面を表している。
図2及び
図3に示すように、双眼鏡30は、筐体43、左側対物鏡筒44L、右側対物鏡筒44R、防振装置45、制御基板46、左側正立光学系47L、右側正立光学系47R、左側接眼鏡筒48L及び右側接眼鏡筒48Rを備えている。防振光学系を含む防振装置45と左側正立光学系47Lは、左側望遠光学系37Lに含まれる。また、防振装置45と右側正立光学系47Rは、右側望遠光学系37Rに含まれる。
【0027】
筐体43は、筐体本体50と、左側接眼筐体51Lと、右側接眼筐体51Rとを備えている。筐体本体50は、本体部31の外装である。左側接眼筐体51Lは、左側接眼部33Lの外装である。右側接眼筐体51Rは、右側接眼部33Rの外装である。筐体本体50には、左側対物鏡筒44L、右側対物鏡筒44R、防振装置45及び制御基板46が収容される。左側接眼筐体51Lには、左側正立光学系47L及び左側接眼鏡筒48Lが収容される。また、右側接眼筐体51Rには、右側正立光学系47R及び右側接眼鏡筒48Rが収容される。筐体本体50には、支持部材53が固定されている。支持部材53は、防振装置45を上下から支持する。
【0028】
左側接眼筐体51L及び右側接眼筐体51Rには、左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36Rをそれぞれ外部に露呈させるために、左側接眼開口52L及び右側接眼開口52Rがそれぞれ設けられている。また、左側接眼筐体51L及び右側接眼筐体51Rは、筐体本体50のY軸方向に沿う中心軸に対してそれぞれ回動自在となるように嵌合されている。これにより、双眼鏡使用者の両眼の間隔に合わせて左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36RのX軸方向の幅の調整が可能になる。
【0029】
左側対物鏡筒44L及び右側対物鏡筒44Rは、円筒形状をしており、内部に左側対物光学系35L及び右側対物光学系35Rをそれぞれ収容している。左側対物鏡筒44L及び右側対物鏡筒44Rは、図示しない保持機構によって光軸64a方向に移動自在となるように保持されている。保持機構は、ピント調整ノブ40の回動操作により、左側対物鏡筒44L及び右側対物鏡筒44Rを光軸64a方向に移動させる。
【0030】
図4は、電源スイッチ10の全体構成を示す斜視図である。電源スイッチ10は、操作部材としての操作ダイヤル11と、連動機構12と、受け部材13と、スイッチ本体14と、防振規制部材としての防振規制レバー15とを有する。
【0031】
図5に示すように、操作ダイヤル11は、ピント調整ノブ40が一端に固定されるピント調整軸16に回動自在に取り付けられている。ピント調整軸16は、支持部材53(
図8参照)に取付軸部17により回動自在に取り付けられている。ピント調整軸16の他端には雄ネジ部16aが形成されており、この雄ネジ部16aに移動ブラケット18が螺合している。移動ブラケット18はピント調整軸16の周方向に対して回動不能に且つピント調整軸16の軸方向に移動自在に取り付けられる。移動ブラケット18は左側対物鏡筒44L及び右側対物鏡筒44R(
図2参照)に連係されている。従って、ピント調整ノブ40の回動操作によりピント調整軸16が回転すると、移動ブラケット18を介して左側対物鏡筒44L及び右側対物鏡筒44Rが光軸方向に移動してピントの調整が行われる。
【0032】
操作ダイヤル11の外周面には指掛け部11aが突出して形成されている。指掛け部11aは例えば操作ダイヤル11の外周方向に120度の間隔で2個設けられている。操作ダイヤル11は、取付筒11bと外筒11cとを円盤部11dで連結した中空の二重筒状に形成されている。
【0033】
連動機構12は、操作ダイヤル11の指掛け部11aによる回動操作によって、回動変位を受け部材13の押動変位に変換する機構である。連動機構12は、ねじりコイルバネ19と、中間レバー21と、揺動レバー25(
図4参照)とを備えている。
【0034】
操作ダイヤル11の取付筒11bの外周面には、ねじりコイルバネ19が取り付けられている。ねじりコイルバネ19は、操作ダイヤル11が指掛け部11aへの指掛けにより揺動されると、操作ダイヤル11を中立位置に戻すように付勢する。中立位置とは、ピント調整軸16の中心軸を通る鉛直線に対して、指掛け部11aが線対称となる位置である。この中立位置では、左側対物鏡筒44L及び右側対物鏡筒44R、並びに左側接眼鏡筒48L及び右側接眼鏡筒48Rに対して指掛け部11aが同じ傾斜角度になる。この中立位置に操作ダイヤル11が位置決めされることにより、双眼鏡30を右手又は左手、又は両手で保持した状態で、左右の手の人指し指や中指の先端が指掛け部11aに位置する。
【0035】
操作ダイヤル11の取付筒11bと外筒11cとの間で、円盤部11dには係止穴11eが形成されている。係止穴11eには、中間レバー21の一端部21aが係止する。中間レバー21は、中間レバー保持部材22により、その中央部を支点として鉛直方向に揺動自在に取り付けられている。また、中間レバー21の係止穴11e側の軸部には、ゴム製の保持ブラケット24が取り付けられている。保持ブラケット24は、円周方向に複数の同心溝を有し、操作ダイヤル11が中立位置の状態で、自身の弾性により中間レバー21を水平に保持している。中間レバー21の他端部21bには、係合ピン21cが水平方向に突出して形成されている。この係合ピン21cは、
図6に示す揺動レバー25の一端の係合穴25dに係合し、中間レバー21の揺動で、揺動レバー25も揺動する。
【0036】
図6及び
図7に示すように、揺動レバー25は、取付軸25aにより回動自在に支持されている。
図4に示すように、操作ダイヤル11が中立位置の場合には、揺動レバー25は水平状態となって、第1当接部25b及び第2当接部25c同士が同じ水平レベルになる。
【0037】
図6〜
図8に示すように、揺動レバー25の下方には、揺動レバー25の第1当接部25b及び第2当接部25cに接触する受け部材13が設けられている。受け部材13は鉛直方向に長く形成されており、支持部材53に、取付ネジ13aにより鉛直方向でスライド自在に取り付けられている。本実施形態では、受け部材13は、T形の受け部13bと、2個のスライダ本体13c,13dとを鉛直方向に連結して一体に形成されている。2個のスライダ本体13c,13dの連結部には、両者13c,13dを水平方向にずらして段部13eが形成されている。
【0038】
スライダ本体13cの一方の側部にはバネ係止部13fが形成されている。このバネ係止部13fに第1コイルバネ26aの一端が係止する。第1コイルバネ26aの他端は支持部材53に係止しており、第1コイルバネ26aによって、受け部材13が鉛直方向で上方に付勢される。この付勢によって受け部材13は上方に移動した中立状態が保持される。中立状態では、受け部13bの第1受け面13gに揺動レバー25の第1当接部25bが当接し、第2受け面13hに揺動レバーの第2当接部25cが当接する。
【0039】
段部13eの近くにはスイッチ本体14が配される。スイッチ本体14は、取付ネジ14aにより支持部材53に固定される。スイッチ本体14は、長さの異なる第1スイッチ片14b及び第2スイッチ片14cと係合片14dとを有する。第1スイッチ片14b及び第2スイッチ片14cは対向して配置されている。長い方の第1スイッチ片14bの先端には、ブロック状の係合片14dが取り付けられている。受け部13bの第1受け面13g及び第2受け面13hに揺動レバー25の当接部25b,25cがそれぞれ当接している中立状態では、段部13eは係合片14dを押動することはなく、スイッチ本体14は開となっている。
【0040】
図9に示すように、揺動レバー25が第1当接部25bを下げる方向に揺動すると、第1当接部25bが受け部材13の第1受け面13gを押し下げる。これにより、受け部材13が中立位置から下方に移動した押動位置に変位する。また、
図10に示すように、揺動レバー25が第2当接部25cを下げる方向に揺動すると、第2当接部25cが受け部材13の第2受け面13hを押し下げる。これにより、受け部材13が中立位置から下方に移動した押動位置に変位する。
【0041】
受け部材13の押動位置への変位により、係合片14dが段部13eに接触して、第1スイッチ片14bが曲げられる。この曲げによって第1及び第2スイッチ片14b,14cが接触し、スイッチ本体14が閉となる。また、受け部材が中立位置に戻ると、係合片14dと段部13eとの接触が無くなる。これにより、各スイッチ片14b,14cが弾性復元して両者が離れるため、スイッチ本体14が開となる。
【0042】
図7及び
図8に示すように、受け部材13の下端部には第1係合部としての係合孔13kが形成されている。この係合孔13kには、組立状態で防振規制レバー15の係合ピン(第2係合部)15aが入れられる。防振規制レバー15は、水平方向に伸びた取付軸15bにより揺動自在に支持部材53に取り付けられている。防振規制レバー15にはバネ係止部15cが突出して形成されている。このバネ係止部15cに第2コイルバネ26bの一端が係止する。第2コイルバネ26bの他端は支持部材53に係止している。この第2コイルバネ26bによって、防振規制レバー15が鉛直方向に向くように付勢されている。
【0043】
防振規制レバー15は、上部に第1規制部材としての第1規制ピン15d、及び第2規制部材としての第2規制ピン15eが突出して形成されている。そして、受け部材13が揺動レバー25の揺動によって下方に押動されると、係合ピン15aが係合孔13kにより下方に押されることで防振規制レバー15が揺動する。この揺動により、防振規制レバー15は、
図6及び
図7に示す鉛直方向に起立した係止状態の防振規制位置から、
図9および
図10に示す揺動して傾斜した係止解除状態の防振位置との間で変位する。
【0044】
図7に示す係止状態では、防振規制レバー15の第1規制ピン15dが、
図11に示す防振部材としての第1リンク部材66の第1係合孔66cに入り込み、第1リンク部材66の水平方向(第1方向)への移動を規制する。また、係止状態では、防振規制レバー15の第2規制ピン15eが防振部材としての第2リンク部材67の第2係合孔67bに入り込み、第2リンク部材67の垂直方向(第2方向)への移動を規制する。これら各ピン15d,15eによって、防振装置45の第1リンク部材66、第2リンク部材67の移動が規制される。
【0045】
係止解除状態では、第1規制ピン15dが第1係合孔66cから離脱し、第2規制ピン15eが第2係合孔67bから離脱する。このため、防振装置45の各フレームの移動規制が解除されて、第1リンク部材66及び第2リンク部材67は移動が可能になる。
【0046】
受け部材13が揺動レバー25の揺動により押し下げられた押動状態では、スイッチ本体14が閉となり、防振制御回路91がONになる。また、防振規制レバー15が防振規制位置から防振位置になると防振制御回路91がONになるため、防振制御が可能になる。
【0047】
第1係合孔66cは水平方向で次第に開拡するガイド面66dを有する。また、第2係合孔67bは垂直方向で次第に開拡するガイド面67cを有する。第1規制ピン15dは先端がテーパー状のガイド面を有する。第2規制ピン15eは円柱状であり、この外周面がガイド面として機能する。
【0048】
操作ダイヤル11の指掛け部11aによる回動操作を止めて、指掛け部11aから指を離したり、力を弛めたりすると、操作ダイヤル11が中立位置に戻る。操作ダイヤル11が中立位置に戻ると、連動機構12による受け部材13の押動が無くなる。また、受け部材13は第1コイルバネ26aにより上方に付勢されているので、受け部材13の押動が停止すると、受け部材13が上方に移動して中立位置に復帰する。受け部材13の中立位置への復帰により、係合ピン15a及び係合孔13kを介して連動している防振規制レバー15が係止解除状態の防振位置から係止状態の防振規制位置になる。この防振規制位置への変位の際に、各ガイド面66d,67cによって各規制ピン15d,15eが案内されるため、円滑に且つ迅速に各規制ピン15d,15eが各係合孔66c,67bに入り込み、第1リンク部材66及び67を中立位置に戻すことができる。各係合孔66c,67bを含むガイド面66d,67cのY軸方向からの投影長さを、各リンク部材66,67の移動ストローク以上にすることにより、防振制御中のどの位置であっても各規制ピン15d,15eを各係合孔66c,67bに戻すことができる。また、受け部材13の上方移動により、段部13eによる係合片14dへの押動もなくなり、スイッチ本体14が開となる。
【0049】
次に防振装置45の構成を説明する。防振装置45は、手振れなどによって光学像に生じた像振れを補正するための装置である。この防振装置45は、左側対物光学系35L及び右側対物光学系35Rと、左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36Rとの間に配置される。
図12に示すように、防振装置45は、左側防振ユニット54L、右側防振ユニット54R、リンク機構55、第1ボイスコイルモータ56及び第2ボイスコイルモータ57を備えている。
【0050】
左側防振ユニット54Lは、左側望遠光学系37Lにおける像振れを補正する機構である。左側防振ユニット54Lは、左側対物光学系35Lと左側接眼光学系36Lとの間に配置され、左側望遠光学系37Lの一部を構成している。また、右側防振ユニット54Rは、右側望遠光学系37Rにおける像振れを補正する機構である。右側防振ユニット54Rは、右側対物光学系35Rと右側接眼光学系36Rとの間に配置され、右側望遠光学系37Rの一部を構成している。
【0051】
リンク機構55は、左側防振ユニット54Lと右側防振ユニット54Rとの間を連結し、像振れ補正時に左側防振ユニット54Lと右側防振ユニット54Rとに同一の動作をさせるための機構である。第1ボイスコイルモータ56及び第2ボイスコイルモータ57は、左側防振ユニット54Lと右側防振ユニット54Rとの間に配置され、リンク機構55を駆動することにより、左側防振ユニット54L及び右側防振ユニット54Rに同一の動作をさせる。
【0052】
左側正立光学系47L及び右側正立光学系47Rは、防振装置45により像振れが補正された光学像の上下左右を反転して、左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36Rに入射させる光学系である。左側正立光学系47L及び右側正立光学系47Rには、例えばポロプリズムやダハプリズムなどの正立プリズムが用いられる。
【0053】
左側接眼鏡筒48L及び右側接眼鏡筒48Rは、円筒形状をしており、内部に左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36Rをそれぞれ収容している。
【0054】
図13に示すように、左側防振ユニット54Lは、鏡枠59と、第1反射部材60と、保持板61と、第2反射部材62とを備えている。鏡枠59は、前面側及び背面側が開放された箱形状である。第1反射部材60は、鏡枠59内に固定される。保持板61は、鏡枠59内に回動自在に支持される。第2反射部材62は、保持板61の上面に固定される。第1反射部材60及び第2反射部材62には、例えば、表面反射型の反射ミラーが用いられている。なお、鏡枠59は、本発明の保持部材に相当する。また、第1反射部材60及び第2反射部材62は、鏡筒内の少なくとも一部の光学部材に相当する。
【0055】
第1反射部材60は、鏡枠59内に挿入されて、反射面が下方を向くように鏡枠59の内壁上面に接着剤などで固定されている。
図3に示すように、X軸方向から見た鏡枠59の内壁上面は、左側対物光学系35Lの光軸である第1光軸64aに対して45°の角度となるように傾斜されている。従って、鏡枠59内に固定された第1反射部材60も第1光軸64aに対して45°の角度となるように保持される。
【0056】
図13に戻って、保持板61は、矩形の板状部材である。保持板61の上面には、反射面が上方を向くように、第2反射部材62が接着剤などで固定されている。保持板61の両側面には、1対の回動ピン61aが設けられている。1対の回動ピン61aは、保持板61が鏡枠59内に挿入された場合に、鏡枠59の両側面に設けられた1対の軸受け穴59aに挿入される。これにより、保持板61及び第2反射部材62は、鏡枠59内に回動自在に保持される。1対の軸受け穴59aで支持される1対の回動ピン61aは、本発明の第2回動軸112を構成する。
【0057】
保持板61の下面には、下方に向かって突出されたブラケット61bが設けられている。ブラケット61bの先端には、Y軸方向に突出された連結ピン61cが設けられている。保持板61は、連結ピン61cを介してリンク機構55により回動される。なお、保持板61は、双眼鏡30に振れが加えられていない状態(中立状態:
図16及び
図18の状態)では、第2反射部材62が第1反射部材60と平行になるように、リンク機構55によって角度が保持されている。
【0058】
図3及び
図17に示すように、鏡枠59の上面及び下面の同一のZ軸上には、1対の軸受けボス59bが設けられている。軸受けボス59bは、支持部材53の内壁上面及び内壁下面に立設された1対の軸受けピン53a(
図3参照)によって回動自在に支持される。これにより、鏡枠59に保持された第1反射部材60及び第2反射部材62は、Z軸周りで一体に回動可能となる。1対の軸受けボス59bにより支持される軸受けピン53aは、本発明の第1回動軸111(
図13及び
図14参照)として機能する。また、鏡枠59の前面側の上部及び下部には、1対の上部連結ボス59c及び下部連結ボス59dが、同一のZ軸上に設けられている。1対の上部連結ボス59c及び下部連結ボス59dは、リンク機構55との連結に利用される。
【0059】
第1反射部材60は、左側対物光学系35Lの第1光軸64aを反射により偏向して、第1光軸64aに対して直角な第2光軸64b(
図3、
図12等参照)とする。第2光軸64bは、Z軸方向と平行である。第2反射部材62は、第2光軸64bを反射により偏向して、第1光軸64aと平行な第3光軸64c(
図3、
図12等参照)とする。第1光軸64a及び第3光軸64cは、Y軸方向と平行である。
【0060】
保持板61の回動ピン61aは、第2反射部材62の反射面と第2光軸64bとの交点を通り、第1光軸64aと第2光軸64bとがなす平面に垂直な第2回動軸112として機能する。従って、第2反射部材62は、回動ピン61aの周りで回動することにより、第3光軸64cの偏向方向を変更し、ピッチ方向の像振れを補正することができる。
【0061】
鏡枠59の軸受けボス59bは、第2光軸64bと中心軸が一致する同心に設けられており、第1回動軸111として機能する。従って、第1反射部材60及び第2反射部材62は一体で、軸受けボス59bの周りを回動して第3光軸64cの偏向方向を変更することにより、ヨー方向の像振れを補正することができる。第1回動軸111は、第1光軸64a及び第3光軸64cを含む面内にあり第1光軸64a又は第3光軸64cに交差する。
【0062】
なお、右側防振ユニット54Rは、左側防振ユニット54Lと同一の構成を有しており、左側防振ユニット54Lと同様に筐体本体50によってZ軸周りで回動自在に支持されている。また、右側防振ユニット54Rは、左側防振ユニット54Lと同様の構造でリンク機構55と連結されている。従って、右側防振ユニット54Rの詳しい説明は省略する。
【0063】
図14に示すように、リンク機構55は、第1リンク部材66と、第2リンク部材67とを備えている。第1リンク部材66は、左側防振ユニット54Lと右側防振ユニット54Rの鏡枠59同士を連結する。第1リンク部材66によって連結された左右1対の鏡枠59は、第1光軸64a同士を平行に保持した状態で並べられる。
【0064】
左右1対の鏡枠59が第1リンク部材66によって連結されることにより、鏡枠59の軸受けボス59bと上部連結ボス59cとを有する枠上板と、同じく鏡枠59の軸受けボス59bと下部連結ボス59dとを有する枠下板とが中間リンクとして機能する。これら中間リンクによって第1リンク部材66をX軸方向に水平移動する4節リンク部が構成される。
【0065】
第2リンク部材67は、左側防振ユニット54Lと右側防振ユニット54Rに保持される左右1対の第2反射部材62同士を連結する。第2リンク部材67は、第1リンク部材66により回動自在に支持される。
【0066】
第1リンク部材66は、第1ブラケット69と、第2ブラケット70と、1対の連結部71とを備える。第1ブラケット69の下面には、鏡枠59の上部連結ボス59cに挿入される連結ピン69aが左右1対に設けられている。第2ブラケット70の上面には、鏡枠59の下部連結ボス59dに挿入される連結ピン70aが左右1対に設けられている。1対の連結部71は、第1ブラケット69と第2ブラケット70とが一体になるように垂直方向に配されている。
【0067】
1対の連結部71には、鏡枠59の間で左右1対の第3ブラケット72(
図16及び
図17も参照)がそれぞれ設けられている。第3ブラケット72は、Y軸方向で接眼光学系36L,36R側に突出している。第3ブラケット72には、連結穴72aが同一のX軸上にそれぞれ設けられている。また、1対の連結部71には、第3ブラケット72が設けられているのとは反対側の辺に、切欠き71aがそれぞれ設けられている。この切欠き71a内には、第2リンク部材67が収納される。
【0068】
第2リンク部材67は、棒状のリンク本体74と、左右1対の連結アーム75とを備える。リンク本体74は、X軸方向に延設されている。リンク本体74には、鏡枠59の間で左右1対の連結アーム75がそれぞれ設けられている。連結アーム75は、Y軸方向で接眼光学系36L,36R側に突出している。連結アーム75は、第3ブラケット72の内側で第3ブラケット72に近接して設けられている(
図16及び
図17参照)。
【0069】
連結アーム75の側面には、連結ピン75aが設けられている。連結ピン75aは、第1リンク部材66の第3ブラケット72に設けられた連結穴72aに挿入される。連結穴72aで支持される連結ピン75aは、本発明の第3回動軸113(
図21参照)を構成する。第2リンク部材67は、第3回動軸113を構成する連結アーム75と第3ブラケット72とが連結することにより、第3回動軸113の軸周りで回動自在となるように、第1リンク部材66によって支持される。
【0070】
リンク本体74の両端には、当接部77がそれぞれ設けられている。当接部77は、保持板61の連結ピン61cに下方から当接する。
図15に示すように、当接部77の当接面77aは凸状の円周面から構成されている。当接面77aと連結ピン61cが互いの円周面により接触することにより、第2リンク部材67が回動しても当接部77と連結ピン61cとが点接触となり、しかも相互の中心間距離は変化することがなくなる。従って、第2リンク部材67の回動を連結ピン61cに円滑に伝えることができる。
【0071】
リンク本体74の両端には1対の付勢部材78が取り付けられている。付勢部材78は、保持板61の連結ピン61cを当接部77に当接するように付勢する。付勢部材78としては、例えば金属からなるねじりコイルバネ、又は板バネ等が用いられている。付勢部材78が連結ピン61cを付勢して当接部77が連結ピン61cと当接することにより、リンク本体74が、保持板61を介して左右1対の第2反射部材62と係合する。
【0072】
図16及び
図17に示すように、リンク機構55は、第1リンク部材66をX軸方向に移動させることにより、左側防振ユニット54L及び右側防振ユニット54Rの鏡枠59を、軸受けボス59bを中心にZ軸に平行な第1回動軸111周りで回動させる。これにより、左側防振ユニット54L及び右側防振ユニット54Rの第1反射部材60及び第2反射部材62がそれぞれ一体で回動するので、第3光軸64cの偏向方向が変更され、ヨー方向の像振れが補正される。
【0073】
また、
図18及び
図19に示すように、第2リンク部材67が連結ピン75a(第3回動軸113)を中心に回動した場合には、左側防振ユニット54L及び右側防振ユニット54Rの第2反射部材62がそれぞれ回動する。これにより、第3光軸64cの偏向方向が変更され、ピッチ方向の像振れが補正される。
【0074】
図14及び
図16に示すように、Y軸方向における第1リンク部材66の第3ブラケット72の長さ(連結ピン69aから連結穴72aまでの長さ)Laと、同方向における第2リンク部材67の連結アーム75の長さ(リンク本体74の中心から連結ピン75aまでの長さ)Lbと、鏡枠59の上部連結ボス59cから軸受けボス59bまでの長さLcとは、同一とされている。また、第3回動軸113を構成する連結ピン75aが連結される連結穴72aのZ軸方向の高さと、第2回動軸112を構成する回動ピン61aが挿入される軸受け穴59aのZ軸方向の高さとは、同一とされている。これにより、第2回動軸112と第3回動軸113とは中心線が一致する同心に配置される。また、防振ユニット54を第1リンク部材66で回動させる際の回動半径である長さLcと、第2反射部材62を第2リンク部材67で回動させる際の回動半径である長さLb、Lcとが同一となっているので、防振ユニット54が第1回動軸111周りに回動し傾いている状態でも、第2リンク部材67の回動が可能となっている。
【0075】
第1ボイスコイルモータ56及び第2ボイスコイルモータ57は、検出用磁石88、及びZ軸用位置センサ89(
図21参照)とともに本実施形態の駆動装置58(
図23参照)を構成する。また、
図2に示すように、第1ボイスコイルモータ56及び第2ボイスコイルモータ57は、左側望遠光学系37L及び右側望遠光学系37Rの中央に位置する。なお、左側望遠光学系37L及び右側望遠光学系37Rの中央とは、X軸方向において左側望遠光学系37L及び右側望遠光学系37Rに挟まれ、且つY軸方向において左側対物光学系35L及び右側対物光学系35Rの前端と、左側接眼光学系36L及び右側接眼光学系36Rの後端との間に位置する領域をいう。
【0076】
図20に示すように、第1ボイスコイルモータ56は、第1コイル80と、第1駆動用磁石81と、ヨーク82A,82Bとを備えている。第1コイル80は、銅線等を巻いて形成され、断面略長方形の筒状の空芯コイルであり、第1リンク部材66の取付部66aに取り付けられている。
【0077】
ヨーク82A,82Bは、金属板から形成され、第1コイル80及び第1駆動用磁石81を挟み込む位置に配され、第1駆動用磁石81の磁気を第1コイル80に導く。ヨーク82Bは、第1駆動用磁石81の背面及び両側面を覆う断面U字形状に形成されており、筐体本体50に固定される。ヨーク82Bは、第1駆動用磁石81の磁力により第1駆動用磁石81と吸着している。ヨーク82Aは、ヨーク82Bと一体に固着され、第1駆動用磁石81の前面側を覆う。第1コイル80は、ヨーク82Aと第1駆動用磁石81との間に配置され、第1駆動用磁石81が発生する磁界内で移動自在とされている。
【0078】
第1ボイスコイルモータ56は、いわゆるフラットコイル式のボイスコイルモータ(Voice Coil Motor)であり、第1コイル80に電流を流すことにより、第1駆動用磁石81の磁界の中で第1コイル80がX軸方向に移動し、第1リンク部材66を駆動する。第1ボイスコイルモータ56の駆動により、第1リンク部材66は、X軸方向に沿って移動する。
【0079】
第1ブラケット69の上面には、検出用磁石83が埋め込まれている。一方、筐体本体50の内壁上面には、X軸用位置センサ84が設けられている。X軸用位置センサ84は、検出用磁石83と対面する位置に配され、第1コイル80を含む第1リンク部材66のX軸方向の移動量を計測する。X軸用位置センサ84は、例えば、ホール素子などの磁気センサであり、検出用磁石83の磁気を検出して、磁気の強さに応じた検出信号を出力する。
【0080】
図21に示すように、第2ボイスコイルモータ57は、第2コイル85と、第2駆動用磁石86と、ヨーク87とを備えている。第2コイル85は、第1コイル80と同様に銅線等から形成された筒状の空芯コイルであり、第2リンク部材67の1対の取付部67aに取り付けられている。
【0081】
リンク本体74は、中央に切欠き74aを有する。第2駆動用磁石86は、切欠き74aの内部に配される。1対の取付部67aは、切欠き74aよりも前方に突出して形成されている。このため、第2駆動用磁石86は、第2コイル85の背面側に配される。ヨーク87は、金属板から形成され、第2コイル85及び第2駆動用磁石86を挟み込む位置に配され、第2駆動用磁石86の磁気を第2コイル85に導く。ヨーク87は、第2駆動用磁石86の前面及び背面を覆う断面U字形状に形成されており、図示しない連結部材を介して第1ボイスコイルモータ56のヨーク82Aに固定される。ヨーク87は、第2駆動用磁石86の磁力により第2駆動用磁石86と吸着している。第2コイル85は、ヨーク87と第2駆動用磁石86との間に配置され、第2駆動用磁石86が発生する磁界内で移動自在とされている。
【0082】
第2ボイスコイルモータ57は、第1ボイスコイルモータ56と同様のボイスコイルモータであり、第2コイル85に電流を流すことにより、第2駆動用磁石86の磁界の中で第2コイル85がZ軸方向に移動し、第2リンク部材67を駆動する。第2ボイスコイルモータ57の駆動により、第2リンク部材67は、第3回動軸113の周りに回動する。
【0083】
リンク本体74には、保持部74bが形成されている。保持部74bには、検出用磁石88が埋め込まれている。すなわち、検出用磁石88は、第2リンク部材67と一体となって移動する。保持部74bは、切欠き74aに対して右側防振ユニット54Rが位置する側に配されている。第1リンク部材66には、保持片66bを介してZ軸用位置センサ89が取り付けられている。Z軸用位置センサ89は、検出面89a(
図23、
図24A〜
図24D参照)が検出用磁石88と対面する位置に配され、第2コイル85を含む第2リンク部材67のZ軸方向の移動量を計測する。Z軸用位置センサ89は、X軸用位置センサ84と同様の磁気センサであり、検出用磁石88の磁気を検出して、磁気の強さに応じた検出信号を出力する。
【0084】
保持片66bは、Z軸用位置センサ89の周囲を覆う矩形枠状である。保持片66bは、例えば、結合ネジ90を介して第1リンク部材66に締結されており、X軸方向において第2コイル85とは離間した位置であり、取付部67aと保持部74bの間に挟まれた位置でZ軸用位置センサ89を保持する。これにより、検出用磁石88は、X軸方向においてZ軸用位置センサ89に対して第2コイル85とは反対側、すなわち右側防振ユニット54Rが位置する側に配されている。
【0085】
また、保持片66bは、剛性を有しており、X軸方向において検出用磁石88に対して所定間隔D(
図24A〜
図24D参照)を保ってZ軸用位置センサ89を保持する。例えばX軸方向における検出用磁石88の移動ストローク(変移量の最大値)をHMAX(
図24A参照)とした場合、所定間隔Dは、移動ストロークHMAXの50%〜200%であることが好ましい。
【0086】
図22に示すように、制御基板46に設けられている防振制御回路91は、ROM(Read Only Memory)92と、CPU(Central Processing Unit)93と、振れ量測定センサ94と、ドライバ95,96とを備える。ROM92には、制御プログラムが記憶されている。CPU93は、制御プログラムに基づいて防振装置45を制御する。振れ量測定センサ94は、双眼鏡30のX軸周り及びZ軸周りの振れ量を測定する。ドライバ95,96は、振れ量測定センサ94が測定した振れ量に応じて、像振れが解消するように第1ボイスコイルモータ56及び第2ボイスコイルモータ57をそれぞれ駆動する。CPU93には、電源スイッチ10、X軸用位置センサ84及びZ軸用位置センサ89が接続されている。防振制御回路91は、電源スイッチ10がONとなった場合に作動し、X軸用位置センサ84及びZ軸用位置センサ89からの検出信号に応じて、CPU93の制御の下、ドライバ95,96を介して第1ボイスコイルモータ56及び第2ボイスコイルモータ57を駆動させ、像振れを解消させる。
【0087】
図23に示すように、防振装置45は、第1ボイスコイルモータ56、第2ボイスコイルモータ57、検出用磁石88、Z軸用位置センサ89などから構成される駆動装置58によって駆動され、これにより光学像の像振れが補正される。第2コイル85及び検出用磁石88は、第2リンク部材67を介して第1リンク部材66に取り付けられており、第1コイル80及びZ軸用位置センサ89は、第1リンク部材66に固定的に取り付けられているので、第1コイル80を通電状態にした場合、第1コイル80、第2コイル85、検出用磁石88、及びZ軸用位置センサ89がともにX軸方向に移動する。一方、第2コイル85を通電状態にした場合、第2コイル85及び検出用磁石88がZ軸方向に移動するが、第1コイル80及びZ軸用位置センサ89はZ軸方向に移動しない。
【0088】
また、検出用磁石83は、第1リンク部材66に固定的に取り付けられているので、第1コイル80を通電状態にした場合、第1コイル80と一体となって検出用磁石83がX軸方向に移動する。一方、第2コイル85を通電状態にした場合、検出用磁石83はZ軸方向に移動しない。X軸用位置センサ84は、筐体本体50に取り付けられているので、第1コイル80、第2コイル85のいずれを通電状態にした場合でもX軸方向、Y軸方向に移動しない。
【0089】
図24Aに示すように、防振装置45が中立状態の場合、第2コイル85、検出用磁石88、及びZ軸用位置センサ89は、Z軸方向において同じ位置に配されている。そして、
図24Bに示すように、第2コイル85を通電状態とし、第1コイル80を非通電状態とした場合、第2コイル85と一体となって検出用磁石88がZ軸方向に移動するので、Z軸用位置センサ89が検出する磁気が変化する。すなわち、Z軸用位置センサ89は、Z軸方向における検出用磁石88の変移量Vを検出することができる。
【0090】
図24Cに示すように、第1コイル80を通電状態とし、第2コイル85を非通電状態とした場合、第1コイル80、第2コイル85、検出用磁石88、及びZ軸用位置センサ89がともにX軸方向に移動する。この場合、第2コイル85、検出用磁石88はZ軸方向には移動しない。検出用磁石88及びZ軸用位置センサ89は所定間隔Dを保ったままX軸方向に移動し、検出用磁石88はZ軸方向に移動しないため、Z軸用位置センサ89が検出する磁気は変化しない。すなわち、Z軸方向における検出用磁石88の変移量は検出されない(変移量が0)。一方、検出用磁石83は、第1コイル80と一体となってX軸方向に移動するので、X軸方向における検出用磁石83の変移量Hを検出することができる。
【0091】
図24Dに示すように、第1コイル80及び第2コイル85をともに通電状態とした場合、第1コイル80、第2コイル85、検出用磁石88、及びZ軸用位置センサ89がともにX軸方向に移動しながら、第2コイル85と一体となって検出用磁石88がZ軸方向に移動する。このため、Z軸用位置センサ89が検出する磁気が変化する。すなわち、Z軸用位置センサ89は、第1コイル80と一体となってX軸方向に移動しながら、Z軸方向における検出用磁石88の変移量を検出することができる。また、検出用磁石83は、第1コイル80と一体となってX軸方向に移動するので、X軸用位置センサ84は、X軸方向における検出用磁石83の変移量Hを検出することができる。
【0092】
次に、上記実施形態の作用について説明する。双眼鏡30は例えば左手で左側望遠光学系37Lが右手で右側望遠光学系37Rが保持されて使用される。このとき、両手の中指又は人指し指を伸ばすことで、操作ダイヤル11の各指掛け部11aに各指を掛けることができる。
【0093】
操作ダイヤル11は、右側の指掛け部11aが下方に押されると、連動機構12の中間レバー21及び揺動レバー25が揺動し、揺動レバー25の第1当接部25bが押し下げられて、受け部材13が下方に移動する(
図9参照)。また、左側の指掛け部11aが下方に押されると、連動機構12の中間レバー21及び揺動レバー25が揺動し、揺動レバー25の第2当接部25cが押し下げられて、受け部材13が下方に移動する(
図10参照)。このように、左右のいずれの指掛け部11aへの押動操作によっても、受け部材13を下方に下げることができる。
【0094】
受け部材13の下方への移動によって、段部13eがスイッチ本体14の係合片14dに接触し、第1スイッチ片14bを曲げて、第1及び第2スイッチ片14b,14cが接触して閉じられるため、スイッチ本体14がONになる。また、スイッチ本体14がONになる直前に、防振規制レバー15が防振規制位置から防振位置に変位し始めて、各規制ピン15d,15eが各係合孔66c,67bから離脱するため、第1リンク部材66,第2リンク部材67の移動が可能になり、防振制御が開始される。
【0095】
また、指掛け部11aから指を離したり、力を抜いたりすることにより、各コイルバネ26a,26bの付勢により、受け部材13は上方にスライドして初期位置に戻る。また、操作ダイヤル11も受け部材13の初期位置への移動に連動し、且つねじりコイルバネ19の付勢によって中立位置に戻る。受け部材13が初期位置に戻ると、防振規制レバー15が防振位置から
図6及び
図7に示す防振規制位置になり、各規制ピン15d,15eが各係合孔66c,67bに係合して、第1リンク部材66,第2リンク部材67の移動が規制される。また、受け部材13が初期位置に戻ると、段部13eからスイッチ本体14の係合片14dが離れて、スイッチ本体14が開になり、防振制御がOFFになる。
【0096】
このように、指掛け部11aを押している間だけ、防振装置45を動かすことができ、常時防振装置がONになるものと比べて、消費電力を抑えることができる。しかも、操作ダイヤル11の指掛け部11aに指を掛けて押すだけの簡単な操作で、防振制御が可能になり、使い勝手が向上する。
【0097】
操作ダイヤル11の指掛け部11aはダイヤル本体から両側に突出して形成され、指掛け部11a同士のX軸方向における距離は、大体ダイヤル本体の直径分だけ離れている。このため、ダイヤル本体の直径分だけ双眼鏡30の中央部から両側に向けて離れて指掛け部11aが位置することになる。従って、右手や左手を把持位置からずらして操作する必要もなく、且つ右手および左手のいずれからでも、簡単に指掛け部11aにアクセスしてスイッチ本体14をONにすることができる。
【0098】
[第2実施形態]
なお、第1実施形態では、連動機構12により操作ダイヤル11の回動操作を受け部材13に伝達しているが、
図25,
図26に示す第2実施形態のように、操作ダイヤル101に揺動レバー102を設け、操作ダイヤル101の回動操作によって揺動レバー102を直接に揺動させてもよい。この場合には、上記実施形態と同様に揺動レバー102の揺動によって、受け部材103を鉛直方向に移動させる。この移動により、受け部材103は、
図25に示す中立位置と、
図26に示す押動位置との間で変位する。
【0099】
受け部材103は、受け部103bとスライダ本体13cとの取付角度を、第1実施形態の受け部13bから90度変更した以外は第1実施形態と同様に構成されており、第1実施形態と同一構成部材に同一符号が付してある。第2実施形態でも、操作ダイヤル101の揺動操作によって防振装置45のロック解除とスイッチ本体14のONとを行うことができる。
【0100】
上記各実施形態では、斜め上側に向けて指掛け部11aを突出させているが、指掛け部11aは斜め下側に向けて突出させてもよい。この場合には、指掛け部11aを両手の親指により回動させることができる。指掛け部11aは斜め上側及び斜め下側の両方で左右に各1対突出させてもよく、この場合には、中指や人指し指の他に親指でも操作が可能になり、操作性が向上する。
【0101】
上記各実施形態では、円盤状の操作ダイヤル11,101を操作部材として用いたが、指掛け部11aが突出していればよく、円盤状に限定されることなく種々の形状の操作部材を用いることができる。上記各実施形態では、スイッチ本体14として、接触片を有するメカニカルスイッチを用いたが、他の光学式センサや磁気センサ等で開閉するスイッチを用いてもよい。また、操作ダイヤル11,101は、ピント調整軸に取り付けているが、双眼鏡30の中央部に配される軸であれば、他の軸を用いてもよい。また、双眼鏡30の中央部とは、双眼鏡30の中心の他に、中心を含む近傍エリアを含む。要は、両手で双眼鏡30を把持した際に、両手の指が指掛け部11aに届く位置であればよい。
【0102】
上記実施形態では、防振規制レバー15を防振規制部材として用いたが、防振を規制できるものであればよく、揺動タイプの他にスライドタイプなどの防振規制部材を用いてもよい。防振規制レバー15の揺動は、受け部材13に設けた係合孔13kと防振規制レバー15に設けた係合ピン15aとの係合により行っているが、受け部材13に係合ピンを設け、防振規制レバー15に係合孔を設けてもよい。
【0103】
上記実施形態では、防振装置45の電源スイッチ10として本発明の操作スイッチを用いているが、その他の各種操作のスイッチとして用いてもよい。
【0104】
また、防振装置45も実施形態のものに限られず、各種方法による防振装置を用いてもよい。防振装置45は、対物光学系の第1光軸64aに対し、第1反射部材60を45°の角度で傾けることにより、第1光軸64aに対して偏向される第2光軸64bの角度を90°にしているが、この第1光軸64aと第2光軸64bとがなす角度は、90°より小さくても又は大きくてもよい。また、第1反射部材60及び第2反射部材62を一体で回動させる場合に、回動軸として第2光軸64bを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、第1光軸64aと第1反射部材60の反射面との交点を通り、かつ第1光軸64aと第2光軸64bからなる平面内の軸であれば、自由に選択可能である。
【0105】
上記実施形態では、第1反射部材60を鏡枠59に固定し、第2反射部材62を保持板61に固定して回動自在に保持したが、逆に第2反射部材62を鏡枠59に固定し、保持板を介して第1反射部材を回動自在に保持してもよい。
【0106】
上記実施形態では、反射部材として表面反射ミラーを用いたが、裏面反射するプリズムを反射部材として用いてもよい。上記実施形態では、複数の光軸間の位置関係を表すために直角、平行などの用語を用い、あるいは45°、90°などの具体的な数値角度を用いて説明している。しかしながら、これらは光学系において要求される精度に応じた誤差で許容される範囲を含むものである。