【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法では、回路網の調整できない要素がマッチングしていなかったり、可変要素が正確に調整できなかったり、寄生要素が存在したりする場合に、位相関係を完全に直交にし、振幅を完全に等しくすることができない。例えば、理想的でないコンポーネント(例えば、抵抗Rが他の抵抗と比べて大きすぎたり、小さすぎたりする場合や、コンデンサCに同じ問題がある場合など)のために、1つの直交信号パス中のRC回路の周波数が低すぎる一方で、他方の直交信号パス中のCR回路の周波数が高すぎるということが生じる。
図1は、上述のダシルバによる米国特許第5644260号の実施形態における特性を示すグラフである。これは、特定の周波数(ここでは、100MHz)において、2つの直交信号の振幅は等しいが、2つの直交信号間の位相差(位相デルタ)は、その周波数スペクトラム(この例では100MHzのLO周波数において)を横切るときに変化することを示しており、その位相差は、90度ではなく、100度である。適切な位相関係を実現するため、ダシルバの米国特許第5644260号の
図7の実施形態では、検出された振幅に合わせて、変動のないVcal信号を利用して位相関係を調整しており、このとき、Vcal信号の値は、局部発振器から入力信号の特定周波数に関して、ルックアップ・テーブルに記憶された値から選択される。しかし、Vcal信号では、時間経過や温度が原因で生じる回路網のダイナミックな変化を考慮できないので、回路網を周波数について校正する必要が生じ、更に、もし校正ができなければ、ある程度の位相エラーが常に存在することになる。
【0006】
上述以外の方法としては、もし振幅のマッチング(合致)が重要でなければ、位相検出器とフィードバック・ループを用いて、一方の直交(RC)パス又は他方の直交(CR)パスのどちらを、位相が完全に直交になるまで調整するというものがあり、これは、米国特許第4908532号(発明者:チャドウィック)に説明されている。しかし、振幅のマッチングを無視するというのは、信号が限られた段数の回路を通過するにしても、振幅エラーを起こすことになる。種々の振幅差が存在する広い範囲に渡って位相差が90度なので、その範囲の一方の端部や他方の端部では、制限増幅器で振幅を制限できない信号に苦しむことになる。これは、2つのミキサ間のマッチングが悪化する原因となる。それは、2つのミキサそれぞれの入力端子において、局部発振器の信号レベルは同じではないからである。
【0007】
そこで、局部発振器に由来する2つの直交信号について、振幅を等しくし、理想的な直交位相関係とするための、直交周波数コンバータ用の自動直交回路網が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、位相及び振幅検出機能を有する自動直交回路網を提供するもので、これは、局部発振器に由来する2つの直交信号について、振幅を等しくし、理想的な直交位相関係を実現する。RC回路が第1の直交パスを提供し、CR回路が第2の直交パスを提供する。RC回路/CR回路の出力信号の振幅が検出されて、振幅制御信号が生成される。また、RC回路/CR回路の出力信号は、それぞれ振幅がリミッタで制限され、これらリミッタの出力端子における出力信号間の位相が検出されて、位相制御信号が生成される。これら振幅及び位相制御信号を合成し、RC回路/CR回路を自動的に整合(align)させるためのRC回路/CR回路それぞれの制御信号を生成することで、2つの直交信号は、振幅が等しく、理想的な直交位相関係となる。
【0009】
より具体的には、本発明の概念1は、所望周波数信号について振幅が等しく、位相が理想的に直交する直交出力信号を生成する自動直交回路網であって、
上記所望周波数信号を入力信号として1対の中間直交信号を夫々の出力端子に生成する1対の直交信号パスと、
上記中間直交信号夫々の振幅を検出し、振幅制御信号を生成する振幅検出手段と、
上記中間直交信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成する位相差検出手段と、
上記振幅及び位相制御信号を合成して、1対の上記直交パスを整合させる夫々の直交制御信号を自動的に生成し、上記直交出力信号を等しい振幅とし、位相を理想的な直交とする合成手段と
を具えている。
【0010】
本発明の概念2は、上記概念1の自動直交回路網であって、このとき、1対の上記直交信号パスが、
上記所望周波数信号を入力信号とし、出力端子を有するRC回路と、
上記所望周波数信号を入力信号とし、出力端子を有するCR回路と、
上記RC及びCR回路夫々の上記出力端子に結合された入力端子を有し、夫々の出力端子から上記中間直交信号を供給する上記RC及びCR回路夫々の線形増幅器と
を有している。
【0011】
本発明の概念3は、上記概念2の自動直交回路網であって、上記振幅検出手段が、
上記中間直交信号の1つを入力信号として、第1振幅信号を生成する第1ダイオード検出器と、
上記中間直交信号のもう1つを入力信号として、第2振幅信号を生成する第2ダイオード検出器と、
上記第1及び第2振幅信号を合成し、上記第1及び第2振幅信号の差分である振幅制御信号を出力端子に生成する合成手段と
を有している。
【0012】
本発明の概念4は、上記概念3の自動直交回路網であって、このとき、上記位相差検出手段が、
上記中間信号の1つを受ける入力端子を夫々有し、夫々の出力端子に上記直交出力信号を生成する上記RC及びCR回路夫々の制限増幅器と、
上記制限増幅器の上記出力端子に結合された入力端子と、位相差信号を生成する出力端子とを有する位相検出器と、
上記位相差信号を第1入力信号とし、グランド信号を第2入力信号として、位相制御信号を出力端子に生成する比較器と
を有している。
【0013】
本発明の概念5は、上記概念4の自動直交回路網であって、このとき、上記合成手段が、
上記振幅及び位相制御信号を加算し、上記RC回路に関する第1制御信号を生成する加算手段と、
上記振幅及び位相制御信号の差分を生成し、上記CR回路に関する第2制御信号を生成する差分生成手段と
を有し、これによって、上記RC及びCR回路を自動的に整合させ、上記直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させることを特徴としている。
【0014】
本発明の概念6は、夫々に入力される1つの周波数信号から複数の直交出力信号を生成するRC直交パス及びCR直交パスを有すると共に、上記RC直交パス及びCR直交パス夫々からの上記直交出力信号の振幅を検出し、上記周波数信号に由来する上記直交出力信号の振幅が、特定周波数において確実に等しくなるようにする振幅制御信号を生成する振幅検出手段とを有する改良型直交回路網であって、
上記直交出力信号の振幅を制限し、制限直交出力信号を直交出力信号として生成する制限手段と、
上記制限直交出力信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成する位相差検出手段と、
上記振幅及び位相制御信号を合成し、上記RC直交パス及びCR直交パスの夫々を自動的調整して、上記制限直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させるのを確実にする合成制御信号を生成する合成手段と
を具えることを特徴としている。
【0015】
本発明の概念7は、上記概念6の改良型直交回路網であって、このとき、上記位相差検出手段は、上記制限直交出力信号を入力信号とし、上記位相制御信号を出力信号とする位相検出器を有している。
【0016】
本発明の概念8は、上記概念7の改良型直交回路網であって、このとき、上記合成手段は、
上記振幅検出手段及び上記位相検出器からの上記振幅及び位相制御信号を入力信号とし、上記RC直交パスを調整する上記振幅及び位相制御信号の和である第1合成制御信号を出力信号とする第1合成部と、
上記振幅検出手段及び上記位相検出器からの上記振幅及び位相制御信号を入力信号とし、上記CR直交パスを調整する上記振幅及び位相制御信号の差である第2合成制御信号を出力信号とする第2合成部と
を有し、上記第1及び第2合成制御信号は、上記制限直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させるのを確実にする合成信号であることを特徴としている。
【0017】
本発明の概念9は、上記概念8の改良直交回路網であって、このとき、上記制限手段は、
上記RC直交パスからの出力信号を入力信号として受けるように結合され、上記位相検出器の入力端子の1つに結合された出力端子に第1制限直交出力信号を生成する第1制限増幅器と、
上記CR直交パスからの出力信号を入力信号として受けるように結合され、上記位相検出器のもう1つの入力端子に結合された出力端子に第2制限直交出力信号を生成する第2制限増幅器と
を有し、このとき、上記第1及び第2制限直交出力信号が上記制限直交出力信号であることを特徴としている。
【0018】
本発明の概念10は、振幅が等しく位相が理想的に直交する直交信号を1つの周波数信号について自動的に生成する方法であって、
上記周波数信号を1対の直交信号パスに入力し、上記直交信号パス夫々の出力端子に1対に中間直交信号を生成するステップと、
上記中間直交信号夫々の振幅を検出し、振幅制御信号を生成するステップと、
上記中間直交信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成するステップと、
上記振幅及び位相制御信号を合成し、1対の上記直交パスを整合させる夫々の直交制御信号を自動的に生成することで、出力される上記直交信号について、振幅を等しくするとともに、位相を理想的に直交させるステップと
を具えている。
【0019】
本発明の概念11は、上記概念10の方法であって、上記中間直交信号の振幅を制限し、制限直交信号を、位相差検出ステップで入力される上記中間直交信号として生成するステップを更に具えている。
【0020】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。