特許第6401902号(P6401902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6401902
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】直交回路網及び直交信号生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/36 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   H04L27/36
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-237962(P2013-237962)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2014-103668(P2014-103668A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】13/681,278
(32)【優先日】2012年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・エフ・ガリソン
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・エル・ヴェイス
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・エイ・オールセン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ディー・アールス
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−075157(JP,A)
【文献】 米国特許第06313680(US,B1)
【文献】 特開平08−018397(JP,A)
【文献】 特開平09−148882(JP,A)
【文献】 特開2000−332841(JP,A)
【文献】 特開平07−183929(JP,A)
【文献】 特開2001−313544(JP,A)
【文献】 特開平06−283966(JP,A)
【文献】 特開2000−013168(JP,A)
【文献】 米国特許第06172543(US,B1)
【文献】 米国特許第08269543(US,B2)
【文献】 米国特許第05644260(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望周波数信号について振幅が等しく、位相が理想的に直交する直交出力信号を生成する直交回路網であって、
上記所望周波数信号を入力信号として1対の中間直交信号を夫々の出力端子に生成する1対の直交信号パスと、
上記中間直交信号夫々の振幅を検出し、振幅制御信号を生成する振幅検出手段と、
上記中間直交信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成する位相差検出手段と、
上記振幅及び位相制御信号を合成して、1対の上記直交パスを整合させる夫々の直交制御信号を自動的に生成し、上記直交出力信号を等しい振幅とし、位相を理想的な直交とする合成手段と
を具え
1対の上記直交信号パスが、
上記所望周波数信号を入力信号とし、出力端子を有するRC回路と、
上記所望周波数信号を入力信号とし、出力端子を有するCR回路と
を有し、
上記合成手段が、
上記振幅制御信号及び上記位相制御信号を加算し、上記RC回路に関する第1制御信号を生成する加算手段と、
上記振幅制御信号及び上記位相制御信号の差分を生成し、上記CR回路に関する第2制御信号を生成する差分生成手段と
を有する直交回路網。
【請求項2】
上記振幅検出手段が、
上記中間直交信号の1つを入力信号として、第1振幅信号を生成する第1ダイオード検出器と、
上記中間直交信号のもう1つを入力信号として、第2振幅信号を生成する第2ダイオード検出器と、
上記第1及び第2振幅信号を合成し、上記第1及び第2振幅信号の差分である上記振幅制御信号を出力端子に生成する合成手段と
を有することを特徴とする請求項記載の直交回路網。
【請求項3】
上記位相差検出手段が、
上記中間信号の1つを受ける入力端子を夫々有し、夫々の出力端子に上記直交出力信号を生成する上記RC及びCR回路夫々の制限増幅器と、
上記制限増幅器の上記出力端子に結合された入力端子と、位相差信号を生成する出力端子とを有する位相検出器と、
上記位相差信号を第1入力信号とし、グランド信号を第2入力信号として、上記位相制御信号を出力端子に生成する比較器と
を有することを特徴とする請求項又は記載の直交回路網。
【請求項4】
夫々に入力される1つの周波数信号から複数の直交出力信号を生成するRC直交パス及びCR直交パスを有すると共に、上記RC直交パス及びCR直交パス夫々からの上記直交出力信号の振幅を検出し、上記周波数信号に由来する上記直交出力信号の振幅が、特定周波数において確実に等しくなるようにする振幅制御信号を生成する振幅検出手段とを有する直交回路網であって、
上記直交出力信号の振幅を制限し、制限直交出力信号を直交出力信号として生成する制限手段と、
上記制限直交出力信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成する位相差検出手段と、
上記振幅及び位相制御信号を合成し、上記RC直交パス及びCR直交パスの夫々を自動的調整して、上記制限直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させるのを確実にする合成制御信号を生成する合成手段と
を具え
上記合成手段は、
上記振幅検出手段及び上記位相検出器からの上記振幅制御信号及び上記位相制御信号を入力信号とし、上記RC直交パスを調整する上記振幅制御信号及び上記位相制御信号の和である第1合成制御信号を出力信号とする第1合成部と、
上記振幅検出手段及び上記位相検出器からの上記振幅制御信号及び上記位相制御信号を入力信号とし、上記CR直交パスを調整する上記振幅制御信号及び上記位相制御信号の差である第2合成制御信号を出力信号とする第2合成部と
を有し、
上記第1及び第2合成制御信号は、上記制限直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させるのを確実にする合成信号である直交回路網。
【請求項5】
振幅が等しく位相が理想的に直交する直交信号を1つの周波数信号について自動的に生成する方法であって、
上記周波数信号を1対の直交信号パスであるRC回路及びCR回路夫々入力し、上記RC回路及び上記CR回路夫々の出力端子に1対に中間直交信号を生成するステップと、
上記中間直交信号夫々の振幅を検出し、振幅制御信号を生成するステップと、
上記中間直交信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成するステップと、
上記振幅制御信号及び上記位相制御信号を加算し、上記RC回路に関する第1制御信号を生成するステップと、
上記振幅制御信号及び上記位相制御信号の差分を生成し、上記CR回路に関する第2制御信号を生成するステップと、
上記第1及び第2制御信号に応じて、出力される上記直交信号について、振幅を等しくするとに、位相を理想的に直交させるステップと
を具える直交信号生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交周波数コンバータに関し、特に、位相及び振幅を検出し、直交周波数コンバータの出力信号中の位相エラー及び振幅エラーを除去する自動直交回路網に関する。
【背景技術】
【0002】
直交(I/Q)周波数コンバータは、直交局部発振(LO)信号で駆動される1対のミキサを有し、これらの性能に依存している。このとき、直交LO信号とは、つまり、周波数が同じで、位相が90度ずれた2つの信号のことである。望ましい結果を得るためのシンプルな方法は、2つの位相シフト・パスを有する直交回路網に単一の周波数を入力するもので、このとき、一方の位相シフト・パスが、シャント・コンデンサ(C)がつながった直列の抵抗(R)、つまり、RCを有し、もう一方の位相シフト・パスが、シャント抵抗がつながった直列のコンデンサ、つまり、CRを有している。もしこれら抵抗が等しく、また、これらコンデサが等しければ、その単一周波数の入力に関して、2つのパスの出力信号の振幅が等しく、位相が互いに直交するという、ある特定の周波数が存在する。その特定周波数以外では、位相関係は維持されるものの、振幅は変化する。
【0003】
1つの局部発振器(LO)から互いに直交する信号を生成する1つの方法では、複数の振幅検出器とフィードバック制御ループとを利用し、これら直交信号間の振幅がマッチング(合致)するまで、RCパス及びCRパス中の抵抗又はコンデンサの値を調整する。この方法は、米国特許第5644260号明細書(発明者:ダシルバ)及び英国特許第1345274号明細書(発明者:ラッツェル)で説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5644260号明細書
【特許文献2】英国特許第1345274号明細書
【特許文献3】米国特許第4908532号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法では、回路網の調整できない要素がマッチングしていなかったり、可変要素が正確に調整できなかったり、寄生要素が存在したりする場合に、位相関係を完全に直交にし、振幅を完全に等しくすることができない。例えば、理想的でないコンポーネント(例えば、抵抗Rが他の抵抗と比べて大きすぎたり、小さすぎたりする場合や、コンデンサCに同じ問題がある場合など)のために、1つの直交信号パス中のRC回路の周波数が低すぎる一方で、他方の直交信号パス中のCR回路の周波数が高すぎるということが生じる。図1は、上述のダシルバによる米国特許第5644260号の実施形態における特性を示すグラフである。これは、特定の周波数(ここでは、100MHz)において、2つの直交信号の振幅は等しいが、2つの直交信号間の位相差(位相デルタ)は、その周波数スペクトラム(この例では100MHzのLO周波数において)を横切るときに変化することを示しており、その位相差は、90度ではなく、100度である。適切な位相関係を実現するため、ダシルバの米国特許第5644260号の図7の実施形態では、検出された振幅に合わせて、変動のないVcal信号を利用して位相関係を調整しており、このとき、Vcal信号の値は、局部発振器から入力信号の特定周波数に関して、ルックアップ・テーブルに記憶された値から選択される。しかし、Vcal信号では、時間経過や温度が原因で生じる回路網のダイナミックな変化を考慮できないので、回路網を周波数について校正する必要が生じ、更に、もし校正ができなければ、ある程度の位相エラーが常に存在することになる。
【0006】
上述以外の方法としては、もし振幅のマッチング(合致)が重要でなければ、位相検出器とフィードバック・ループを用いて、一方の直交(RC)パス又は他方の直交(CR)パスのどちらを、位相が完全に直交になるまで調整するというものがあり、これは、米国特許第4908532号(発明者:チャドウィック)に説明されている。しかし、振幅のマッチングを無視するというのは、信号が限られた段数の回路を通過するにしても、振幅エラーを起こすことになる。種々の振幅差が存在する広い範囲に渡って位相差が90度なので、その範囲の一方の端部や他方の端部では、制限増幅器で振幅を制限できない信号に苦しむことになる。これは、2つのミキサ間のマッチングが悪化する原因となる。それは、2つのミキサそれぞれの入力端子において、局部発振器の信号レベルは同じではないからである。
【0007】
そこで、局部発振器に由来する2つの直交信号について、振幅を等しくし、理想的な直交位相関係とするための、直交周波数コンバータ用の自動直交回路網が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、位相及び振幅検出機能を有する自動直交回路網を提供するもので、これは、局部発振器に由来する2つの直交信号について、振幅を等しくし、理想的な直交位相関係を実現する。RC回路が第1の直交パスを提供し、CR回路が第2の直交パスを提供する。RC回路/CR回路の出力信号の振幅が検出されて、振幅制御信号が生成される。また、RC回路/CR回路の出力信号は、それぞれ振幅がリミッタで制限され、これらリミッタの出力端子における出力信号間の位相が検出されて、位相制御信号が生成される。これら振幅及び位相制御信号を合成し、RC回路/CR回路を自動的に整合(align)させるためのRC回路/CR回路それぞれの制御信号を生成することで、2つの直交信号は、振幅が等しく、理想的な直交位相関係となる。
【0009】
より具体的には、本発明の概念1は、所望周波数信号について振幅が等しく、位相が理想的に直交する直交出力信号を生成する自動直交回路網であって、
上記所望周波数信号を入力信号として1対の中間直交信号を夫々の出力端子に生成する1対の直交信号パスと、
上記中間直交信号夫々の振幅を検出し、振幅制御信号を生成する振幅検出手段と、
上記中間直交信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成する位相差検出手段と、
上記振幅及び位相制御信号を合成して、1対の上記直交パスを整合させる夫々の直交制御信号を自動的に生成し、上記直交出力信号を等しい振幅とし、位相を理想的な直交とする合成手段と
を具えている。
【0010】
本発明の概念2は、上記概念1の自動直交回路網であって、このとき、1対の上記直交信号パスが、
上記所望周波数信号を入力信号とし、出力端子を有するRC回路と、
上記所望周波数信号を入力信号とし、出力端子を有するCR回路と、
上記RC及びCR回路夫々の上記出力端子に結合された入力端子を有し、夫々の出力端子から上記中間直交信号を供給する上記RC及びCR回路夫々の線形増幅器と
を有している。
【0011】
本発明の概念3は、上記概念2の自動直交回路網であって、上記振幅検出手段が、
上記中間直交信号の1つを入力信号として、第1振幅信号を生成する第1ダイオード検出器と、
上記中間直交信号のもう1つを入力信号として、第2振幅信号を生成する第2ダイオード検出器と、
上記第1及び第2振幅信号を合成し、上記第1及び第2振幅信号の差分である振幅制御信号を出力端子に生成する合成手段と
を有している。
【0012】
本発明の概念4は、上記概念3の自動直交回路網であって、このとき、上記位相差検出手段が、
上記中間信号の1つを受ける入力端子を夫々有し、夫々の出力端子に上記直交出力信号を生成する上記RC及びCR回路夫々の制限増幅器と、
上記制限増幅器の上記出力端子に結合された入力端子と、位相差信号を生成する出力端子とを有する位相検出器と、
上記位相差信号を第1入力信号とし、グランド信号を第2入力信号として、位相制御信号を出力端子に生成する比較器と
を有している。
【0013】
本発明の概念5は、上記概念4の自動直交回路網であって、このとき、上記合成手段が、
上記振幅及び位相制御信号を加算し、上記RC回路に関する第1制御信号を生成する加算手段と、
上記振幅及び位相制御信号の差分を生成し、上記CR回路に関する第2制御信号を生成する差分生成手段と
を有し、これによって、上記RC及びCR回路を自動的に整合させ、上記直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させることを特徴としている。
【0014】
本発明の概念6は、夫々に入力される1つの周波数信号から複数の直交出力信号を生成するRC直交パス及びCR直交パスを有すると共に、上記RC直交パス及びCR直交パス夫々からの上記直交出力信号の振幅を検出し、上記周波数信号に由来する上記直交出力信号の振幅が、特定周波数において確実に等しくなるようにする振幅制御信号を生成する振幅検出手段とを有する改良型直交回路網であって、
上記直交出力信号の振幅を制限し、制限直交出力信号を直交出力信号として生成する制限手段と、
上記制限直交出力信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成する位相差検出手段と、
上記振幅及び位相制御信号を合成し、上記RC直交パス及びCR直交パスの夫々を自動的調整して、上記制限直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させるのを確実にする合成制御信号を生成する合成手段と
を具えることを特徴としている。
【0015】
本発明の概念7は、上記概念6の改良型直交回路網であって、このとき、上記位相差検出手段は、上記制限直交出力信号を入力信号とし、上記位相制御信号を出力信号とする位相検出器を有している。
【0016】
本発明の概念8は、上記概念7の改良型直交回路網であって、このとき、上記合成手段は、
上記振幅検出手段及び上記位相検出器からの上記振幅及び位相制御信号を入力信号とし、上記RC直交パスを調整する上記振幅及び位相制御信号の和である第1合成制御信号を出力信号とする第1合成部と、
上記振幅検出手段及び上記位相検出器からの上記振幅及び位相制御信号を入力信号とし、上記CR直交パスを調整する上記振幅及び位相制御信号の差である第2合成制御信号を出力信号とする第2合成部と
を有し、上記第1及び第2合成制御信号は、上記制限直交出力信号の振幅を等しくし、位相を理想的に直交させるのを確実にする合成信号であることを特徴としている。
【0017】
本発明の概念9は、上記概念8の改良直交回路網であって、このとき、上記制限手段は、
上記RC直交パスからの出力信号を入力信号として受けるように結合され、上記位相検出器の入力端子の1つに結合された出力端子に第1制限直交出力信号を生成する第1制限増幅器と、
上記CR直交パスからの出力信号を入力信号として受けるように結合され、上記位相検出器のもう1つの入力端子に結合された出力端子に第2制限直交出力信号を生成する第2制限増幅器と
を有し、このとき、上記第1及び第2制限直交出力信号が上記制限直交出力信号であることを特徴としている。
【0018】
本発明の概念10は、振幅が等しく位相が理想的に直交する直交信号を1つの周波数信号について自動的に生成する方法であって、
上記周波数信号を1対の直交信号パスに入力し、上記直交信号パス夫々の出力端子に1対に中間直交信号を生成するステップと、
上記中間直交信号夫々の振幅を検出し、振幅制御信号を生成するステップと、
上記中間直交信号間の位相差を検出し、位相制御信号を生成するステップと、
上記振幅及び位相制御信号を合成し、1対の上記直交パスを整合させる夫々の直交制御信号を自動的に生成することで、出力される上記直交信号について、振幅を等しくするとともに、位相を理想的に直交させるステップと
を具えている。
【0019】
本発明の概念11は、上記概念10の方法であって、上記中間直交信号の振幅を制限し、制限直交信号を、位相差検出ステップで入力される上記中間直交信号として生成するステップを更に具えている。
【0020】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、局部発振入力信号についての直交信号の振幅は確実に等しくする一方で、位相は理想的な直交関係にならない従来技術を説明するグラフである。
図2図2は、本発明による自動直交回路網のブロック図である。
図3図3は、本発明による自動直交回路網からの出力信号を描いたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2を参照すると、局部発振器(LO)からの信号が1対のパスに入力される。第1のパス(RC)は、グラウンドに結合された第1コンデンサ14と直列な第1可変抵抗12を有し、第2のパス(CR)は、グラウンドに結合された第2可変抵抗18と直列な第2コンデンサ16を有する。夫々のパスの抵抗/コンデンサ接続点は、夫々対応するバッファ線形増幅段20及び22の入力端子に結合される。増幅段20及び22からの出力信号は、夫々対応するダイオード・ピーク検出器24及び26に供給され、増幅段20及び22からの出力信号の振幅が夫々検出される。ダイオード・ピーク検出器24及び26からの振幅信号は、第1差動DC増幅器28に入力され、その出力端子に現れる差分は、DC振幅制御信号であって、もし2つの信号の振幅が等しければゼロであるし、また、どちらの信号の振幅が大きいかに応じてプラスかマイナスのどちらの差分が現れる。
【0023】
夫々の増幅段20及び22の後、これらパスは、夫々対応する制限増幅段30及び32を駆動し、これらの出力信号は、LO入力信号に対して所望の直交コンポーネント(LO−I及びLO−Q)となる。また、これら出力信号は、位相検出器34にも入力される。位相検出器34からの出力信号は、第2差動DC増幅器36に入力され、第2差動DC増幅器36の第2入力端子はグラウンドに接続される。第2差動DC増幅器36は、位相制御信号を供給し、もし位相関係が理想的な直交位相であるならゼロとなり、もし位相関係が理想的な直交位相でないならゼロ以外となる。
【0024】
差動DC増幅器28及び36夫々からのDC制御信号は、夫々の合算回路網38及び40に入力される。このとき、一方は、加算器として動作し、他方は減算器として動作する。加算器38からの出力信号は、第1パスの入力部にある第1可変抵抗12を制御する一方、減算器40からの出力信号は、第2パスにおけるグラウンドに接続された第2可変抵抗18を制御する。LO−I及びLO−Qの振幅が等しく、位相関係が理想的な直交であれば、差動DC増幅器28及び36の入力端子夫々におけるDCエラー信号はゼロまで低減し、DC制御信号はその値を維持する。
【0025】
”現実”の環境では、直交パス夫々のRC及びCR回路は理想的ではなく、また、制限増幅器30及び32は、これら自身が入力信号振幅に応じた位相エラーを生じさせてしまう。ダシルバやチャドウィックによる上述の米国特許に示された従来技術は、どれもこうした問題に対して完全には答えていない。チャドウィックの米国特許の技術だけでは、位相検出器34を調整可能範囲の中心にくるようにするものがなく、RC/CR回路は、位相を一定に維持しようとして、調整可能範囲の一端から他端までふらつく。結果的に、RC/CR回路は、夫々の調整可能範囲の一端へと追いやられ、ここから復帰するのが困難となる。ダシルバの米国特許の技術では、RC/CR回路が、単一の周波数でのみ、それらの振幅がバランスするので、そこに固定されるように機能する。しかし、それでも、理想的な直交位相関係を壊してしまう大きな位相エラーが生じることがあり、このエラーは自動的には修正できない。
【0026】
図3は、振幅及び位相の両検出機能を用いて、2つの直交信号パスで生じるどのような位相/振幅エラーでも自動的に補正する図2の回路網で得られる結果のグラフを示す。この結果では、RC及びCR回路が自動的に正しく整合されるため、LO周波数(この例では100MHz)において、振幅が等しく、また、全周波数範囲に渡って位相関係が90度で一定である。この例のグラフでは、実線102はRC回路の振幅を示し、実線104はCR回路の振幅を示し、100MHzで交差する(即ち、振幅が等しい)ことが示されている。また、破線112は、RC回路の位相を示し、100MHzでは−45度である。破線114は、CR回路の位相を示し、100MHzでは+45度である。そして、破線112及び114間の位相差は、全周波数範囲に渡って90度に維持されている。
【0027】
このように、本発明は、RC/CR回路間の振幅差を検出すると共に、直交出力信号間の理想的な直交位相からの変位を検出してフィードバックする振幅及び位相の両方の検出機能を有する自動直交回路網を提供する。このとき、振幅差及び理想直交位相からの変位に基いて、RC/CR回路を整合させる自動制御信号が生成され、これにより、2つの直交信号の振幅を等しくするよう制御されると共に、これら直交信号間の位相関係が理想的な直交位相となるように制御される。
【符号の説明】
【0028】
12 第1可変抵抗
14 第1コンデンサ
16 第2コンデンサ
18 第2可変抵抗
20 バッファ線形増幅段
22 バッファ線形増幅段
24 ダイオード・ピーク検出器
26 ダイオード・ピーク検出器
28 第1差動DC増幅器
30 制限増幅段(Limiting amplifier stage)
32 制限増幅段
34 位相検出器
36 第2差動DC増幅器
38 合算回路網(加算器)
40 合算回路網(減算器)
図1
図2
図3