特許第6402005号(P6402005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402005樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402005
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20181001BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20181001BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20181001BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20181001BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   C08J5/24CEZ
   C08J5/06
   D21H15/02
   B32B5/28 A
   H05K1/03 610T
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-224603(P2014-224603)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-89022(P2016-89022A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】角谷 武徳
(72)【発明者】
【氏名】三輪 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】小野 博文
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大和
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/175315(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/022025(WO,A1)
【文献】 特開2012−036529(JP,A)
【文献】 特開平09−307203(JP,A)
【文献】 特開平10−037054(JP,A)
【文献】 特開2008−127540(JP,A)
【文献】 特開2006−316253(JP,A)
【文献】 特開2006−035647(JP,A)
【文献】 特開2009−096167(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
B32B 1/00−43/00
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生セルロース微細繊維を70質量%以上含有するセルロース微細繊維層を少なくとも一層含む単層または3層以下の複数層から構成され、下記(1)〜(3)のすべての要件を満足するセルロースナノファイバー不織布と、
(1)セルロース微細繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上1.0μm以下、
(2)透気抵抗度が1s/100ml以上40s/100ml以下、
(3)膜厚が8μm以上22μm以下、
前記セルロースナノファイバー不織布中の繊維同士を固着する固着剤と、
前記セルロースナノファイバー不織布と固着剤とに接する樹脂と、を有し、
前記固着剤の貯蔵弾性率が、前記樹脂の貯蔵弾性率よりも高いことを特徴とする樹脂含有シート。
【請求項2】
前記固着剤のガラス転移温度が、前記樹脂のガラス転移温度または軟化温度よりも高い請求項1記載の樹脂含有シート。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバー不織布の繊維同士を固着剤組成物により固着させた後、該固着されたセルロースナノファイバー不織布に樹脂組成物を含浸して得られる請求項1または2記載の樹脂含有シート。
【請求項4】
前記固着剤組成物の粘度が1Pa・s以下である請求項3記載の樹脂含有シート。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の樹脂含有シートを、基板に密着させて得られることを特徴とする構造体。
【請求項6】
請求項5記載の構造体を有することを特徴とする配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた力学強度、弾性率、および耐屈曲性を有し、電子機器用の配線板等に好適な樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用の配線板としては、一般に、ガラス繊維やアラミド繊維などからなる基材にエポキシ等の樹脂を含浸させて得られるプリプレグ(半硬化状態の樹脂絶縁層)を、銅等の金属箔に密着させ、エッチング法で回路を形成したものが用いられている。また、配線板には、部品実装時におけるはんだの流出を防止するために、ソルダーレジストが設けられている。配線板には、実装信頼性を高めるために高強度(高弾性率)であることが望まれており、その構成部材であるプリプレグやソルダーレジストについても、同様に高弾性率化が図られている。また、電子機器にはフレキシブル配線板が使用されており、高密度化・薄型の要求からフレキシブル配線板にも多層化の要求がある。従来のフレキシブル配線板の多層化材料としては、ボンディングシートやカバーレイがあり、配線板としての耐屈曲性が求められている。
【0003】
配線板材料に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、絶縁信頼性および配線との応力緩和の両機能を得るために、コア層の両面に異なる強度(弾性率)の樹脂層を設けたプリプレグが記載されている。また、特許文献2には、所定の弾性率を有するプリプレグが記載されている。この技術はプリプレグシートと回路基板との仮固定を目的とし、弾性率を組成物によって制御しているものである。
【0004】
さらに、特許文献3には、プリプレグ中に2種の樹脂組成物を用いる技術が開示されている。このプリプレグにおいては2種の樹脂組成物を表面側ほど弾性率が大きくなるように偏在させている。さらにまた、特許文献4には、金属箔との接着性を改良するためにプリプレグ表面に接着層を設ける技術が記載されている。さらにまた、特許文献5には、薄板ガラスと、セルロースナノファイバーと樹脂の複合材を用いる配線板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−088280号公報
【特許文献2】特開2006−179716号公報
【特許文献3】特開2010−095557号公報
【特許文献4】特開2004−168943号公報
【特許文献5】特開2008−242154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のプリプレグおよび配線板では、十分な力学強度と耐屈曲性を有することができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、力学強度を向上させつつ、耐屈曲性についても向上した樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のことを見出した。
すなわち、微細な繊維からなる不織布、例えば、セルロースナノファイバー不織布においては、繊維同士が絡み合いや相互作用により集合体を形成している。よって、繊維の集合体に対し一方向に張力をかけると、繊維同士が接点で滑って引き離され、集合体にはほつれが生じ、最終的には破断することになる。
【0009】
前述したように、配線板には、ガラスクロスや、アラミド繊維と樹脂とからなるプリプレグのような樹脂含有シートが用いられるので、配線板の強度を確保するためには、このような、繊維の集合体における繊維同士の滑りを防止することが重要となる。一方で、前述したように、樹脂含有シートには、フレキシブル配線板に要求される耐屈曲性も要求される。
【0010】
上記検討の結果、本発明者らは、以下の構成とすることにより、力学強度と耐屈曲性とのバランスをとることができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の樹脂含有シートは、再生セルロース微細繊維を70質量%以上含有するセルロース微細繊維層を少なくとも一層含む単層または3層以下の複数層から構成され、下記(1)〜(3)のすべての要件を満足するセルロースナノファイバー不織布と、
(1)セルロース微細繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上1.0μm以下、
(2)透気抵抗度が1s/100ml以上40s/100ml以下、
(3)膜厚が8μm以上22μm以下、
前記セルロースナノファイバー不織布中の繊維同士を固着する固着剤と、
前記セルロースナノファイバー不織布と固着剤とに接する樹脂と、を有し、
前記固着剤の貯蔵弾性率が、前記樹脂の貯蔵弾性率よりも高いことを特徴とするものである。
【0012】
本発明において、前記固着剤のガラス転移温度は、前記樹脂のガラス転移温度または軟化温度よりも高いことが好ましい。本発明の樹脂含有シートは、前記セルロースナノファイバー不織布の繊維同士を固着剤組成物により固着させた後、該固着されたセルロースナノファイバー不織布に樹脂組成物を含浸して得ることができる。この場合、前記固着剤組成物の粘度は、1Pa・s以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の構造体は、上記本発明の樹脂含有シートを、基板に密着させて得られることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の配線板は、上記本発明の構造体を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、力学強度を向上しつつ、耐屈曲性を向上した樹脂含有シートを得ることが可能となった。すなわち、本発明においては、繊維成分として再生セルロース微細繊維を用いて特定の物性を有するセルロースナノファイバー不織布を構成するとともに、このセルロースナノファイバー不織布中の繊維同士を固着する固着剤の貯蔵弾性率を、セルロースナノファイバー不織布と固着剤とに接する樹脂の貯蔵弾性率よりも高くしたことで、高強度・高弾性率化を図りつつ、耐屈曲性も向上した樹脂含有シートを得るための材料の条件を見出したものである。これは、配線板用の樹脂絶縁材には高強度化が要求されているが、例えば、エポキシ等の高弾性率材料を用いると耐屈曲性が悪化するものであるところ、本発明においては、高弾性率化を実現しつつ、この耐屈曲性の問題を解決するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の樹脂含有シートの構造をモデル的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の樹脂含有シートの構造を示す説明図を示す。本発明の樹脂含有シートは、主として繊維成分と樹脂成分から形成されるシート状体であり、図示するように、セルロースナノファイバー不織布11と、セルロースナノファイバー不織布11中の繊維1同士を固着する固着剤2と、セルロースナノファイバー不織布11と固着剤2とに接する樹脂3と、を有している。なお、図中の符号Sは、セルロースナノファイバー不織布11内で固着剤2および樹脂3のいずれも含浸されていない空間を示す。本発明の樹脂含有シートにおいては、セルロースナノファイバー不織布11を構成する繊維1と、固着剤2と、樹脂3とが、全体として1つの層を形成しているものといえる。本発明の樹脂含有シートにおいては、繊維1同士を固着する固着剤2の貯蔵弾性率が、いずれかの温度において、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高い点が重要である。
【0018】
すなわち、本発明者らは鋭意検討の結果、樹脂含有シートに含まれる各種成分の役割には2つあり、1つは、繊維同士の滑りを抑制して、樹脂含有シートを高強度および高弾性率化するための固着剤としての役割であり、もう1つは、耐屈曲性を向上させる役割であることを見出した。かかる観点から、本発明者らはさらに検討した結果、樹脂含有シートに含まれる樹脂成分の役割として、高強度の確保については固着剤が担っており、これら固着剤と樹脂との貯蔵弾性率やガラス転移温度の関係を規定し、また、耐屈曲性の確保については固着剤と樹脂とセルロースナノファイバー不織布が存在することで、これら両性能をともに良好に確保できることを見出したものである。このように、樹脂成分の役割を2つに分けて、高弾性率と良好な耐屈曲性とを両立させた技術は、従来、知られていない。
【0019】
本発明を概念的に説明すると、セルロースナノファイバー不織布に含まれる繊維同士の接点を固着剤により固着したことで、一方向に張力をかけた場合でも、接点で滑りが生じないので、セルロースナノファイバー不織布を高強度・高弾性率化することができる。さらに、セルロースナノファイバー不織布と固着剤に接するように樹脂を含浸することで、樹脂含有シートとしての、良好な耐屈曲性も得ることができるものである。よって、本発明の樹脂含有シートによれば、要求性能としての高い弾性率を固着剤により確保しつつ、耐屈曲性も確保することができ、単にエポキシ等の高弾性率材料を用いることによっては得られなかった、高強度と良好な耐屈曲性との双方を兼ね備えた樹脂含有シートを得ることが可能となった。
【0020】
[セルロースナノファイバー不織布]
本発明の樹脂含有シートに用いるセルロースナノファイバー不織布は、再生セルロース微細繊維を70質量%以上含有するセルロース微細繊維層を少なくとも一層含む単層または3層以下の複数層から構成される。好ましくは、再生セルロース微細繊維は75質量%以上である。再生セルロース微細繊維が70質量%未満となると、樹脂の含浸性の観点から好ましくない。
【0021】
まず、上記セルロースナノファイバー不織布を構成する再生セルロース微細繊維について説明する。本発明において、再生セルロースとは、天然セルロースを溶解または結晶膨潤(マーセル化)処理し再生して得られる物質であって、粒子線回折によって格子面間隔0.73nm、0.44nmまたは0.40nmに相当する回折角を頂点とする結晶回折パターン(セルロースII型結晶)を与えるような分子配列を有するβ−1,4結合グルカン(グルコース重合体)をいい、例えば、レーヨン、キュプラ、テンセル等の再生セルロース繊維を意味する。これらの中でも、微細化のし易さの観点から、繊維軸方向への分子配向性の高いキュプラまたはテンセルを原料として微細化した繊維を用いることが好ましい。
【0022】
上記セルロースナノファイバー不織布に含まれるセルロース微細繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径は、1.0μm以下であることが必要であり、好ましくは0.7μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。ここで、比表面積相当繊維径について説明する。まず、窒素吸着によるBET法を用いて比表面積を評価し、この比表面積に対し、樹脂含有シートを構成する繊維が、仮想的に、繊維間の融着が全く起こっていない理想状態であり、かつセルロース密度がd(g/cm)であってL/D(L:繊維長,D:繊維径(共に単位:μm))が無限大である円柱としての繊維によって表面が構成されると仮定した円柱モデルによって、比表面積と繊維径に関する次式、
比表面積=4/(dD) (m/g)
を誘導した。BET法による比表面積を上式の比表面積として代入し、セルロース密度としてd=1.50g/cmを代入することにより繊維径Dに換算した数値を、比表面積相当繊維径と定義する。ここで、BET法による比表面積測定は、比表面積・細孔分布測定装置(ベックマン・コールター社製)にて、試料約0.2gに対する液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を同装置のプログラムに則り測定した後、比表面積を算出することにより行った。
【0023】
本発明の樹脂含有シートは、上記セルロース微細繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径を上記範囲に選択することにより、均一な厚み分布をもつものとすることができる。上記セルロース微細繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が1.0μmを超えると、繊維径が太すぎるために、微細繊維により形成される微多孔構造の分布が大きくなり、すなわち、大きな孔径の孔が散在するものとなるため、薄くて均一性に優れた樹脂含有シートが得られなくなる。
【0024】
一方、上記セルロース微細繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径は、0.20μm以上とすることが必要であり、好ましくは0.25μm以上である。上記セルロース微細繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm未満となると、繊維径が細すぎるために孔径が小さくなり、樹脂の含浸性が悪化してしまう。
【0025】
また、再生セルロース微細繊維の最大繊維太さは3μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.5μm以下、最も好ましくは2μm以下である。ここで、最大繊維太さが3μm以下であるとは、以下の条件で測定されるセルロース不織布の電子顕微鏡(SEM)において、画像上で3μmを超える繊維径の繊維が全く確認できないことを意味する。
【0026】
ここで、セルロースナノファイバー不織布の表面SEM画像を1万倍相当の倍率にて採取し、この画像中に含まれるいずれの交絡繊維についても繊維径が3μm以下であり、かつ、同様にセルロース微細繊維層の表面の任意の部分を同一条件のSEM画像で観察し、合計100本以上の繊維について同じように3μmを超える繊維径の繊維が確認できない場合、最大繊維径が3μm以下であると定義する。ただし、画像において数本の微細繊維が多束化して3μmを超える繊維径となっていることが明確に確認できる場合には、3μmを超える繊維径をもつ繊維とはしないものとする。再生セルロース微細繊維の最大繊維太さを3μm以下とすることで、本発明で規定する薄膜の樹脂含有シートを製造するのに孔径等の均一性が確保しやすくなり、好ましい。
【0027】
上記セルロースナノファイバー不織布は、透気抵抗度が1s/100ml以上、40s/100ml以下の範囲であることが必要であり、好ましくは6s/100ml以上、35s/100ml以下の範囲内である。ここで、透気抵抗度は、JIS P 8117に記載のガーレー試験機法に基づき測定される数値を意味する。微細な繊維で構成されていながらピンホールなく均一なシートを、透気抵抗度が1s/100mlより低いシートとして製造することは困難であり、よって、透気抵抗度が1s/100mlより低いと、樹脂含有シートとしての機能を発現しなくなる。また、透気抵抗度が40s/100mlを超える場合には、セルロースナノファイバー不織布の空孔率が著しく低下するか、あるいは孔径が小さくなり過ぎ、樹脂の含浸性が悪くなるため、本発明の樹脂含有シートに用いるセルロースナノファイバー不織布としては好ましくない。
【0028】
上記セルロースナノファイバー不織布は、再生セルロース微細繊維をシート状に加工して得ることができるが、加工上および機能上の制約により、膜厚が8μm以上、22μm以下であることが必要である。ここで、膜厚の測定は、面接触型の膜厚計、例えば、Mitutoyo製の膜厚計(Model ID−C112XB)等を用い、樹脂含有シートから10.0cm×10.0cmの正方形片を切り取り、種々な位置についての5点の測定値の平均値を求めて、膜厚T(μm)とする。また、膜厚の測定で切り取った10.0cm×10.0cmの正方形片の膜厚T(μm)と、その重さW(g)から、以下の式を用いて膜の目付W0(g/m)を算出することができる。
W0=100×W
【0029】
上記セルロースナノファイバー不織布は、好ましくは、膜厚が9μm以上、20μm以下であり、最も好ましくは、9μm以上18μm以下である。膜厚を上記の範囲とすることで、低内部抵抗等の電気特性(機能面)や樹脂含有シートを捲回してデバイスを組み立てる際の取り扱い性が極めて良好な樹脂含有シートとすることができる。厚みが8μmよりも薄いと、デバイス組み立て工程において取り扱い難くなり不適切となり、経時的劣化に伴うショートの発生や、長期安定性を損なう問題も生ずる。また、厚みが22μmよりも大きいと、コンパクト化等の点で好ましくない。
【0030】
上記セルロースナノファイバー不織布に用いられるセルロース微細繊維層の目付は、好ましくは4g/m以上、13g/m以下であり、より好ましくは5g/m以上、12g/m以下である。目付が4g/m以上であると、各種デバイスへの組み立て工程において取り扱い性が良好となり、長期安定性の観点からも好ましい。目付が13g/m以下であると、薄膜化でき、樹脂含有シートとしてコンパクト化等の望ましい効果が得られる。
【0031】
上記セルロースナノファイバー不織布に用いられる、再生セルロース微細繊維を70質量%以上含むセルロース微細繊維層には、再生セルロース微細繊維の他に、さらに、天然セルロース微細繊維が30質量%未満で含まれていてもよい。天然セルロース微細繊維を使用することで、その構成単位であるミクロフィブリルの細さから、0.20μm未満の繊維径の微細セルロース繊維の製造が比較的容易に得られ、またより細く繊維長/繊維径比率の大きな天然セルロース微細繊維の混在により、セルロースナノファイバー不織布の強度を増大させることができる。これを30質量%未満で含むことで、セルロース微細繊維層の強度が増加し、デバイスを組み立てる際の取り扱い性が極めて良好なセルロースナノファイバー不織布が得られる。より好ましくは20質量%未満である。
【0032】
上記セルロースナノファイバー不織布に用いられる、セルロース微細繊維層中の天然セルロース微細繊維は、最大繊維太さが2μm以下であることが好ましい。最大繊維径を2μm以下とすることで、微細繊維による微多孔構造に基づいた高い均一性を利用して、良好に薄膜化を図ることができる。
【0033】
セルロースの最大繊維径が2μmを超えない天然セルロース微細繊維としては、広葉樹または針葉樹から得られる木材パルプ、精製リンターあるいは各種植物種(竹、麻系繊維、バガス、ケナフ、リンター等)からの精製パルプ等を高度に微細化処理したものの他に、セルロース生産菌(バクテリア)の作るバクテリアセルロース(BC)のようなネバードライで微細繊維の集合体である天然セルロース微細繊維も含まれる。
【0034】
また、上記セルロースナノファイバー不織布に用いられる、再生セルロース微細繊維を70質量%以上含むセルロース微細繊維層には、再生セルロース微細繊維の他に、さらに、セルロース以外の有機ポリマーからなる微細繊維が、30質量%未満で含まれていてもよい。より好ましくは25質量%以下である。かかる有機ポリマーとしては、微細繊維を製造し得る有機ポリマーであればいかなるものも使用することができ、例えば、芳香族系あるいは脂肪族系のポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、芳香族系ポリアミド、ポリイミド、絹、羊毛等のセルロース以外の天然有機ポリマーを挙げることができるが、これらに限定されない。かかる有機ポリマーからなる微細繊維は、有機繊維を叩解、あるいは高圧ホモジナイザー等による微細化処理により高度にフィブリル化あるいは微細化させた微細繊維、各種ポリマーを原料としてエレクトロスピニング法によって得られる微細繊維、各種ポリマーを原料としてメルトブロウン法によって得られる微細繊維等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、特に、全芳香族ポリアミドであるアラミド繊維を高圧ホモジナイザーにより微細化した微小繊維状アラミド、ティアラ(登録商標)(ダイセル化学工業(株)製)は、平均繊維径0.2〜0.3μm、平均繊維長500〜600μmとされ、アラミド繊維の高耐熱性、高い化学的安定性も相まって、上記微細繊維として好適に使用することができる。
【0035】
[セルロースナノファイバー不織布の製造方法]
次に、セルロース微細繊維の製造方法について記載する。セルロース繊維の微細化は、再生セルロース繊維および天然セルロース繊維ともに、前処理工程、叩解処理工程および微細化工程を経ることが好ましい。特に、再生セルロース繊維を微細化する場合には、前処理工程は油剤を除去するための、場合によって界面活性剤を使用する水洗工程にて実施できるが、天然セルロース繊維の前処理工程においては、100〜150℃の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、酵素処理等、またはこれらの組み合わせによって、原料パルプが以降の工程で微細化し易い状態にしておくことは有効である。上記前処理工程の際に、1質量%以下の濃度の無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸など)ないしは有機酸(酢酸、クエン酸など)を添加してオートクレーブ処理を行うことも、場合によっては有効である。これらの前処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面や間隙に存在するリグニンやヘミセルロース等の不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細化された繊維のα−セルロース純度を高める効果もあるため、セルロースナノファイバー不織布の耐熱性の向上に大変有効であることもある。
【0036】
叩解処理工程以降については、再生セルロース繊維および天然セルロース繊維ともに、以下の内容で製造する。叩解処理工程においては、原料パルプを0.5質量%以上4質量%以下、好ましくは0.8質量%以上3質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、ビーターやディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を高度に促進させる。ディスクレファイナーを用いる場合には、ディスク間のクリアランスを極力狭く(例えば、0.1mm以下)設定して、処理を行うと、極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件を緩和でき、有効な場合がある。
【0037】
好ましい叩解処理の程度は、以下のように定められる。本発明者らによる検討によれば、叩解処理を行うにつれCSF値(セルロースの叩解の程度を示す。JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法で評価)が経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると再び増大していく傾向が確認され、微細セルロース繊維を調製するためには、前処理として、CSF値が一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続け、CSF値が増加している状態まで叩解することが好ましいことが分かった。本明細書中、未叩解からCSF値が減少する過程でのCSF値を***ml↓、ゼロとなった後に増大する傾向におけるCSF値を***ml↑と表現する。かかる叩解処理においては、再生セルロース、天然セルロースを問わず叩解工程のCSF値は少なくともゼロよりも叩解度が高いことが好ましく、CSF30ml↑よりも叩解度が高いことがより好ましい。このような叩解度に調製した水分散体ではフィブリル化が高度に進行し、特に再生セルロースに関しては、かかる叩解処理と後述するさらなる微細化処理とを組み合わせることにより、比表面積相当繊維径が、0.20μm以上0.70μm以下である微細繊維を得ることができる。CSF値が少なくともゼロあるいはその後増大する***ml↑の値をもつ高度に叩解された水分散体は均一性が増大し、その後の高圧ホモジナイザー等による微細化処理での詰まりを軽減できるという製造効率上の利点がある。さらに、天然セルロースの微細繊維を製造する場合には、上記叩解工程とさらなる微細化処理とを組み合わせることにより、微細繊維のスラリーとして、CSF50ml↑よりも叩解されていることがセルロースナノファイバー不織布の強度補強の観点から好ましいが、より好ましくはCSF100ml↑以上である。
【0038】
また、再生セルロースの微細繊維を製造する場合には、上記叩解工程とさらなる微細化処理とを組み合わせることにより、微細繊維のスラリーとして、CSF20ml↑よりも叩解されていることが、セルロースナノファイバー不織布の強度補強の観点から好ましいが、より好ましくはCSF50ml↑以上である。
【0039】
セルロース微細繊維の製造には、上述した叩解工程に引き続き、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー等による微細化処理を施すことが好ましい。この際の水分散体中の固形分濃度は、上述した叩解処理に準じ、0.5質量%以上4質量%以下、好ましくは0.8質量%以上3質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下である。この範囲の固形分濃度の場合、詰まりが発生せず、しかも効率的な微細化処理が達成できる。
【0040】
使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザー等を挙げることができ、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザー等の高圧衝突型の微細化処理機を意味し、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
【0041】
セルロース微細繊維の繊維径は、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件(装置の選定や操作圧力およびパス回数)またはこの微細化処理前の前処理の条件(例えば、オートクレーブ処理、酵素処理、叩解処理等)によって制御することができる。
【0042】
さらに、本発明に使用できるセルロース微細繊維としては、表面の化学処理を加えたセルロース系の微細繊維、および、TEMPO酸化触媒によって6位の水酸基が酸化され、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)となったセルロース系の微細繊維を使用することもできる。前者の場合は、目的に応じて種々の表面化学処理を施すことにより、例えば、セルロース微細繊維の表面に存在する一部あるいは大部分の水酸基が酢酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステルを含むエステル化されたもの、メチルエーテルを代表とするアルキルエーテル、カルボキシメチルエーテルを代表とするカルボキシエーテル、シアノエチルエーテルを含むエーテル化されたものを、適宜調製して使用することができる。また、後者、すなわち、TEMPO酸化触媒によって6位の水酸基が酸化されたセルロース微細繊維の調製においては、必ずしも高圧ホモジナイザーのような高エネルギーを要する微細化装置を使用することは必要なく、微細セルロースの分散体を得ることができる。例えば、文献(A.Isogai et al.,Biomacromolecules,7,1687−1691(2006))に記載されるように、天然セルロースの水分散体に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカルのようなTEMPOと呼ばれる触媒とハロゲン化アルキルを共存させ、これに次亜塩素酸のような酸化剤を添加し、一定時間反応を進行させることにより、水洗等の精製処理後に、通常のミキサー処理を施すことによって極めて容易に微細セルロース繊維の分散体を得ることができる。
【0043】
なお、本発明では、上記の原料の異なる再生セルロースまたは天然セルロース系の微細繊維やフィブリル化度の異なる天然セルロースの微細繊維、表面を化学処理された天然セルロースの微細繊維などを2種類以上、本発明で規定する量混合させてセルロース微細繊維層を形成させることも有効である場合がある。
【0044】
上記セルロースナノファイバー不織布に用いられるセルロース微細繊維層は、反応性架橋剤を10質量%以下含んでいても強度補強のために有効であることがある。反応性架橋剤とは、多官能性イソシアネートに由来する反応体のことを言い、多官能性イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との付加反応により生成した樹脂をいう。反応性架橋剤を10質量%以下含んでいることで、セルロース微細繊維層の強度が増加し、デバイスを組み立てる際の取り扱い性が極めて良好なセルロースナノファイバー不織布となる。反応性架橋剤の含有量は、より好ましくは6質量%以下である。
【0045】
上記セルロースナノファイバー不織布に用いられるセルロース微細繊維層中の反応性架橋剤を形成する、反応性架橋剤多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多官能性イソシアネート、芳香脂肪族多官能性イソシアネート、脂環族多官能性イソシアネート、脂肪族多官能性イソシアネート等が挙げられる。黄変性が少ないという観点から脂環族多官能性イソシアネートおよび脂肪族多官能性イソシアネートが好ましい。また、多官能性イソシアネート化合物は1種類または2種類以上含まれていてもよい。
【0046】
芳香族多官能性イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族多官能性イソシアネートが挙げられる。
【0047】
脂環族多官能性イソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族多官能性イソシアネートが挙げられる。
【0048】
脂肪族多官能性イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族多官能性イソシアネート等が挙げられる。
【0049】
活性水素含有化合物としては、例えば、1価アルコール、多価アルコールおよびフェノール類を含む水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が挙げられる。また、空気中あるいは反応場に存在する水や二酸化炭素なども含まれる。活性水素含有化合物は、1種類または2種類以上が含まれていてもよい。
【0050】
1価アルコールとしては、例えば、炭素数1〜20のアルカノール(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールおよびステアリルアルコール等)、炭素数2〜20のアルケノール(オレイルアルコールおよびリノリルアルコール等)および炭素数7〜20の芳香脂肪族アルコール(ベンジルアルコールおよびナフチルエタノール等)等が挙げられる。
【0051】
多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜20の2価アルコール[脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,10−デカンジオール、等)、脂環式ジオール(シクロヘキサンジオールおよびシクロヘキサンジメタノール等)および芳香脂肪族ジオール{1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等}等]、炭素数3〜20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリンおよびトリメチロールプロパン等)等]および炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリンおよびジペンタエリスリトール等)および糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシドおよびその誘導体)]等が挙げられる。
【0052】
フェノール類としては、例えば、1価のフェノール(フェノール、1−ヒドロキシナフタレン、アントロールおよび1−ヒドロキシピレン等)および多価フェノール[フロログルシン、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)および米国特許3265641号明細書に記載のポリフェノール等]等が挙げられる。
【0053】
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20のモノハイドロカルビルアミン[アルキルアミン(ブチルアミン等)、ベンジルアミンおよびアニリン等]、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびジエチレントリアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミンおよびイソホロンジアミン等)、炭素数2〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミンおよびジフェニルメタンジアミン等)、炭素数2〜20の複素環式ポリアミン(ピペラジンおよびN−アミノエチルピペラジン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等)、ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ヒドラジン(ヒドラジンおよびモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッドおよびテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジンおよび1−シアノグアニジン等)およびジシアンジアミド等が挙げられる。
【0054】
チオール基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20の1価のチオール化合物(エチルチオール等のアルキルチオール、フェニルチオールおよびベンジルチオール)および多価のチオール化合物(エチレンジチオールおよび1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。
【0055】
カルボキシル基含有化合物としては、1価のカルボン酸化合物(酢酸等のアルキルカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸)および多価のカルボン酸化合物(シュウ酸やマロン酸等のアルキルジカルボン酸およびテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等)等が挙げられる。
【0056】
上記セルロースナノファイバー不織布は、再生セルロース微細繊維を70質量%以上含有するセルロース微細繊維層の他に、3層以下の複数層の構造の一層として、目付が3g/m以上15g/m以下である不織布あるいは紙である基材層を含んでいてもよい。目付が3g/m以上15g/m以下である不織布あるいは紙である基材層を含んでいることで、薄膜のセルロース微細繊維層自体の強度が不足していたとしても、基材層が強度を補うために、セルロースナノファイバー不織布としての機能(樹脂含有シートとしての低内部抵抗等)を保持しながら、デバイスを組み立てる際の取り扱い性が極めて良好な樹脂含有シートとすることができる。
【0057】
上記セルロースナノファイバー不織布に用いられる基材層としては、例えば、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、木材パルプやコットンリンター等の天然セルロース繊維、ビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨン等の再生セルロース繊維およびリヨセルやテンセル等の精製セルロース繊維の群から選ばれる少なくとも1種からなる不織布または紙である。電解液や複合化樹脂の含浸性の観点から、セルロースであることが好ましい。また、上記基材層は、本発明で規定する膜厚範囲からメルトブローンあるいはエレクトロスピニング系の不織布であると好適に使用でき、さらに、カレンダー処理により薄膜化した基材を用いることがより好ましい。
【0058】
また、上記セルロースナノファイバー不織布は、用途によっては、含有金属イオン量の一つの尺度となる塩素イオン含有濃度が40ppm以下であることが好ましい。塩素イオン含有濃度が40ppm以下であると、Na,Ca等の金属イオン類も相対的に低い濃度で含まれることとなり、その結果、例えばプリント配線板のようなデバイスの電気特性の阻害を抑制することができるためである。さらに好ましくは30ppm以下、最も好ましくは25ppm以下であると、より好適に耐熱性が発現される。塩素イオン濃度の評価はイオンクロマトグラフィー法で行うことができる。
【0059】
[固着剤組成物]
固着剤2を形成する固着剤組成物としては、セルロースナノファイバー不織布11中の繊維1に付着して、繊維1同士を固着させることができるものであればよく、繊維同士が互いに接し合う接点部のみを固着するものであっても、繊維1の全体を被覆して固着するものであってもよい。固着剤組成物の使用量としては、繊維1同士を固着させることができ、耐屈曲性に悪影響が及ばない程度の量であればよく、繊維1を固着剤2により固着させた集合体において、有機溶媒を除いた固形分で、繊維1と固着剤2との体積比が99:1〜50:50の範囲、特には、99:1〜60:40の範囲であることが好ましい。繊維1と固着剤2との体積比がこの範囲であると、繊維1同士が固着剤により十分に固着されて所望の高強度が得られるものとなるとともに、その後の樹脂3の含浸により良好な耐屈曲性が確保できるものとなり、好ましい。特には、固着剤2の使用量は、固着剤2の適用前後において、セルロースナノファイバー不織布11の膜厚が実質的に変化しない程度の量であることが好ましい。ここで、膜厚が実質的に変化しないとは、セルロースナノファイバー不織布11が固着剤組成物の溶剤成分等により膨潤して見かけ上厚みを増すような場合を膜厚の変化に含まないとの意味である。また、固着剤組成物は、繊維に付着させる際に液体であることが好ましく、温度や圧力を変えることで液体にして用いることができるものであってもよい。特には、固着剤組成物の、25℃にてE型粘度計におけるローター回転数5rpmで測定した粘度が1Pa・s以下、例えば、1〜0.0001Pa・sであることが好ましく、これにより、繊維1の集合体の内部まで、固着剤組成物を含浸させることができ、繊維同士を、より確実に固着させることができる。
【0060】
また、固着剤組成物は、熱または光により硬化するものを用いる。ここでいう硬化とは、熱または光のエネルギーにより液体から固体に化学変化することを意味する。固着剤組成物としては、その用途に応じて、慣用の成分を用いることができ、1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。固着剤組成物に用いられる慣用の成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤、熱硬化触媒、光硬化性樹脂、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、有機溶媒などが挙げられ、具体的には、以下に示すものが使用可能である。
【0061】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも特に、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂が、絶縁層としての信頼性が優れているために好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形または半固形であってもよい。中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂としては、具体的には例えば、三菱化学(株)製のjER828等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0063】
エポキシ樹脂を用いて硬化物を形成する場合には、エポキシ樹脂の他に、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)等のイミダゾール系硬化剤、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン等のアミン系硬化剤、ポリアミド、ビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂、フェノールフェニルアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂等のフェノール系硬化剤、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物等の酸無水物系硬化剤、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、脂肪族または芳香族の一級または二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などの公知の硬化剤を使用できる。硬化剤の配合量は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜150質量部、より好ましくは0.5〜100質量部である。硬化剤の配合量を、0.1質量部以上とすることで樹脂組成物を十分に硬化させることができ、150質量部以下とすることで、配合量に見合った効果を効率的に得ることができる。
【0064】
また、熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもできる。
【0065】
ポリイミド樹脂としては、一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と芳香族ジアミンとの合成反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られるものと、既に有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものが挙げられる。
【0066】
芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いられる。これらの中でも、特に、少なくとも成分の1つとして、ピロメリット酸二無水物を用いることが好ましい。
【0067】
芳香族多価カルボン酸無水物等の多価カルボン酸と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。これらの中でも、特に、少なくとも成分の1つとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0068】
ポリイミドワニスとしては、新日本理化(株)製のリカコートSN20、リカコートPN20、リカコートEN20、東レ(株)製のトレニース、宇部興産(株)製U−ワニス、JSR(株)製のオプトマー、日産化学(株)製のSE812、住友ベークライト(株)製のCRC8000が挙げられる。
【0069】
合成反応により得られるかまたは上市されているポリアミック酸溶液を、加熱等により処理することで、ポリアミック酸からポリイミドへの環化(イミド化)が行なわれる。ポリアミック酸は、加熱のみによる方法、または、化学的方法によって、イミド化することが可能である。加熱のみによる方法の場合、ポリアミック酸を、例えば、200〜350℃で加熱処理することによってイミド化する。また、化学的方法は、イミド化を速やかに進行させるために塩基性触媒を利用しつつ、ポリアミック酸を加熱処理して、完全にイミド化する方法である。上記塩基性触媒としては、特に限定されず、従来公知の塩基性触媒が用いられ、例えば、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、各種3級アミン等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0070】
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂としては、活性エネルギー線の照射により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、特には、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーおよび光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
【0071】
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0072】
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0073】
光硬化性樹脂としては、脂環エポキシ化合物、オキセタン化合物およびビニルエーテル化合物等も好適に用いることができる。このうち脂環エポキシ化合物としては、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、1−[1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3’,4’−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、シクロヘキセンオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物などが挙げられる。
【0074】
オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体などの多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等のオキセタン化合物が挙げられる。
【0075】
ビニルエーテル化合物としては、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル、αおよび/またはβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物などが挙げられる。市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)製の2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0076】
光硬化性樹脂を用いる場合には、上述した光硬化性樹脂に加えて、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤等が用いられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアルキルフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;またはキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類、チタノセン系開始剤、オキシムエステル系開始剤などが挙げられる。これらは、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤等と併用してもよい。これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン(例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン)、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフエニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2−ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体;N−ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物;鉄アレン錯体等を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0079】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、重合反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。このような光塩基発生剤としては、例えば、α−アミノアセトフェノン化合物や、オキシムエステル化合物、アシルオキシイミノ基,N−ホルミル化芳香族アミノ基、N−アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。これらの光塩基発生剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0080】
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよび上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン類;N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアニリン、ジブチルアニリン、ジイソプロピルアニリン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶媒等を挙げることができる。これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドンやメチルエチルケトンは、取扱いが容易であるため好ましい。
【0081】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂含有シートにおいて、樹脂3は、固着剤2とセルロースナノファイバー不織布11とに接するものである。本発明において、樹脂3は、弾性や耐屈曲性を阻害しない程度であればよく、セルロースナノファイバー不織布11の外側を被覆していてもよい。樹脂組成物の含浸率としては、樹脂含有シートの貯蔵弾性率や耐屈曲性を阻害しない程度であれば特に限定はないが、樹脂含有シート中の樹脂の濃度として、10〜99体積%、特には、10〜70体積%であることが好ましい。樹脂組成物の含浸率を上記範囲内とすることで、良好な耐屈曲性と、高強度とをバランス良く得ることができる。
【0082】
樹脂3を形成する樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のうちから選ばれる少なくとも1種類を含むものとすることができ、その用途に応じて、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、硬化物または成形物の物性の観点から、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂を用いることがさらに好ましい。樹脂組成物として、熱硬化性樹脂ないし光硬化性樹脂を使用する場合には、固着剤組成物について挙げたのと同様の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、有機溶媒等を適宜使用することが可能であるが、本発明においては、樹脂組成物および固着剤組成物として、それぞれ異なる成分からなるものを使用することが必要である。また、熱可塑性樹脂としては、以下に示すものが使用可能である。
【0083】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、アクリル、変性アクリル、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸等の汎用プラスチック類、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、ポリカーボネート、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステルイミド、熱可塑性ポリイミド等のエンジニアリングプラスチック類、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ウレタン系、アミド系、塩化ビニル系、水添系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。本発明においては、樹脂複合体を使用することもでき、例えば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の樹脂複合体として、エポキシ樹脂−PSF、エポキシ樹脂−PPS、エポキシ樹脂−PES等が使用できる。
【0084】
本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物には、その他の成分として、着色剤を配合することもできる。
【0085】
着色剤としては、着色顔料や染料等としてカラーインデックスで表される公知慣用のものが使用可能である。例えば、Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4 15:6、16、60、Solvent Blue 35、63、68、70、83、87、94、97、122、136、67、70、Pigment Green 7、36、3、5、20、28、Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、108、193、147、199、202、110、109、139 179 185 93、94、95、128、155、166、180、120、151、154、156、175、181、1、2、3、4、5、6、9、10、12、61、62、62:1、65、73、74、75、97、100、104、105、111、116、167、168、169、182、183、12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、152、170、172、174、176、188、198、Pigment Orange 1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73、Pigment Red 1、2、3、4、5、6、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、112、114、146、147、151、170、184、187、188、193、210、245、253、258、266、267、268、269、37、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53:1、53:2、57:1、58:4、63:1、63:2、64:1、68、171、175、176、185、208、123、149、166、178、179、190、194、224、254、255、264、270、272、220、144、166、214、220、221、242、168、177、216、122、202、206、207、209、Solvent Red 135、179、149、150、52、207、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、Pigment Brown 23、25、Pigment Black 1、7等が挙げられる。
【0086】
また、本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物には、必要に応じて、消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
【0087】
消泡剤・レベリング剤としては、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用できる。
【0088】
チクソトロピー付与剤・増粘剤としては、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク、マイカ、ゼオライト等の粘土鉱物や、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤などが使用できる。
【0089】
カップリング剤としては、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、アセチル等であり、反応性官能基としてビニル、メタクリル、アクリル、エポキシ、環状エポキシ、メルカプト、アミノ、ジアミノ、酸無水物、ウレイド、スルフィド、イソシアネート等である、例えば、ビニルエトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン等のビニル系シラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシラン、Ν―β―(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン化合物、Ν−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノ系シラン化合物等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイル化チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス−(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、エチレン性不飽和ジルコネート含有化合物、ネオアルコキシジルコネート含有化合物、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ−ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N−エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m−アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3−メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2−ビス(2−プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2−(ビス2−プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト−O,O等のジルコネート系カップリング剤、ジイソブチル(オレイル)アセトアセチルアルミネート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤等が使用できる。
【0090】
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が使用できる。
【0091】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコーンポリマー等が使用できる。
【0092】
本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物は、その他、硫酸バリウム、シリカ、ハイドロタルサイト等の無機フィラー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機フィラー、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、過酸化物分解剤、熱重合禁止剤、密着促進剤、防錆剤、表面処理剤、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤、pH調整剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
【0093】
[貯蔵弾性率]
本発明においては、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことが必要である。ここで、固着剤2の貯蔵弾性率とは、繊維1は含まずに、固着剤組成物の成分のみの配合物を、成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味する。同様に、樹脂3の貯蔵弾性率についても、硬化性樹脂の場合には成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味し、熱可塑性樹脂の場合には、溶融成膜後に溶剤を除去して得られる塗膜の貯蔵弾性率を意味する。また、貯蔵弾性率とは、試料の硬さの一指標値であって、一定の温度変化を加えながら試料に対し周期的な荷重をかけて歪を検出する動的粘弾性測定と呼ばれる評価を行って、検出した歪から算出される値であり、この値が高いほど優れた力学強度を示していることを意味する。本発明においては、いずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いものであればよく、その好適範囲は、固着剤2の貯蔵弾性率については30〜0.1GPaであり、より好ましくは20〜0.5GPaであり、樹脂3の貯蔵弾性率については10〜0.001GPaであり、より好ましくは5〜0.01GPaであり、いずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が樹脂3の貯蔵弾性率よりも0.1GPa以上大きいことが好ましい。特には、150〜250℃の範囲内のいずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましく、150〜250℃の全温度範囲において、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことがより好ましい。これにより、本発明の樹脂含有シートは、150〜250℃の高温領域でも使用可能となるので、用途が広がることから、好ましい。
【0094】
[ガラス転移温度]
本発明においては、固着剤2のガラス転移温度が、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度よりも高いことが好ましい。ここで、固着剤2のガラス転移温度とは、繊維1は含まずに、固着剤組成物の成分のみの配合物を、成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜のガラス転移温度を意味する。同様に、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度についても、硬化性樹脂の場合には成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜のガラス転移温度を意味し、熱可塑性樹脂の場合には、溶融成膜後に溶剤を除去して得られる塗膜の軟化温度を意味する。また、ガラス転移温度とは、前述の動的粘弾性測定から得られた貯蔵弾性率(E′)と損失弾性率(E″)の比(E″/E′)から算出される値(損失正接)が最大のときの温度のことであり、この温度が高いほど優れた耐熱性を示していることを意味する。本発明においては、ガラス転移温度の上限については特に制限されないが、その好適範囲は、固着剤2のガラス転移温度については130℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度については70℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、固着剤2のガラス転移温度が樹脂3のガラス転移温度または軟化温度よりも5℃以上大きいことが好ましい。
【0095】
[樹脂含有シートの製造]
本発明の樹脂含有シートは、セルロースナノファイバー不織布11を固着剤組成物で処理して繊維1同士を固着させた後、固着されたセルロースナノファイバー不織布11に樹脂組成物を含浸することにより、得ることができる。本発明の樹脂含有シートは、例えば、キャリアフィルム等の被塗布物上に繊維を配置した状態で、固着剤組成物および樹脂組成物を順次塗布、含浸させて、固着剤組成物および樹脂組成物中に含まれる有機溶媒を揮発乾燥することにより、ドライフィルムとして製造することもでき、所望に応じ、さらに、その上にカバーフィルムを貼り合わせてもよい。この際、樹脂組成物が、固着剤組成物の繊維に対する固着性能を阻害するものでなければ、樹脂組成物の塗布プロセスは、固着剤の乾燥前であっても乾燥後であっても、いずれでもよい。
【0096】
この場合、本発明の固着剤組成物および樹脂組成物は、必要に応じ、各成分を配合、分散、希釈して、塗布方法に適した粘度に調整し、塗布することができる。上述したように、固着剤組成物については、セルロースナノファイバー不織布11に浸透させて繊維1同士を固着させることができるものであればよく、また、樹脂組成物については、セルロースナノファイバー不織布11の少なくとも一方の面、特には両方の面を、金属箔等に対し密着させることができるものであればよい。
【0097】
被塗布物としては、ドライフィルム用のキャリアフィルムが好ましいが、金属箔表面や回路形成された配線板表面に直接塗布してもよい。塗布方法の具体例としては、ピペット等を用いた滴下法、ディップコート法、バーコーター法、スピンコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スリットコート法、ブレードコート法、リップコート法、コンマコート法、フィルムコート法等の各種コート法や、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の各種印刷法が挙げられる。
【0098】
また、キャリアフィルムとカバーフィルムとは、ドライフィルムに用いられる材料として公知のものを、いずれも使用することができ、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。キャリアフィルムとカバーフィルムとは、同一のフィルム材料を用いても、異なるフィルム材料を用いてもよいが、カバーフィルムについては、樹脂3との接着性が、キャリアフィルムよりも小さいものが好ましい。
【0099】
本発明の樹脂含有シートを基板に密着させることで、構造体を得ることができる。基板としては、金属箔基板や、回路基板(回路形成された配線板)などが挙げられる。本発明の樹脂含有シートを基板表面に熱密着させることで、樹脂絶縁層を形成することができ、その繰り返しにより、金属箔層と樹脂絶縁層とをそれぞれ複数層で積層することもできる。なお、樹脂含有シートは、キャリアフィルム上で製造した際に、樹脂含有シート同士で積層してもよく、金属箔等との密着時に樹脂含有シート同士で積層してもよい。
【0100】
本発明の樹脂含有シートを用いて構造体を作製する際に、固着剤組成物および樹脂組成物が熱硬化性樹脂ないし光硬化性樹脂の組合せである場合には、加熱硬化のみの方法、活性エネルギー線照射のみの方法、活性エネルギー線の照射後に加熱硬化させる方法、または、加熱硬化後に活性エネルギー線を照射する方法を用いることで、構造体を作製することができる。また、ドライフィルムを用いる場合には、カバーフィルムがある場合にはカバーフィルムを剥がして、基板表面に樹脂含有シートを熱密着させ、次いで、キャリアフィルムを剥がし、上記硬化方法により硬化させて、構造体を製造することができる。なお、固着剤組成物および樹脂組成物として、ともに熱硬化性樹脂を用いる場合には、繊維同士の固着および樹脂の含浸の、双方の加熱硬化プロセスを同時に実施してもよい。また、加熱を行う際の加熱温度については、目的とする基材に含まれる繊維や固着剤が高熱により分解しない範囲であれば、特に下限および上限の制限はなく、活性エネルギー線照射を行う際の露光量場合についても、露光量が低すぎて未硬化部分が生ずることがなければ、特に下限および上限の制限はない。
【0101】
また、本発明の樹脂含有シートを作製する際に、樹脂組成物が熱可塑性樹脂である場合には、ペレット形状やシート形状の熱可塑性樹脂を加熱または加熱、圧着する手法を用いることもできる。ここで、熱可塑性樹脂を、固着剤により固着したセルロースナノファイバー不織布内に含浸させるためには、装置を用いて加圧することは必須要件ではないが、加圧を行うことにより熱可塑性樹脂のセルロースナノファイバー不織布内への浸入がより容易となる。加圧を行う場合、目的とする樹脂含有シートの形状を損なわない限り、特に圧力の上限はない。この樹脂含有シートを基体表面に熱密着することにより、構造体を成形することができる。また、ドライフィルムを用いて構造体を成形する際には、前記同様に作製することができる。
【0102】
なお、上記において、乾燥時、加熱硬化時または加熱加圧時に用いられる装置としては、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン、加熱・加圧ロール、プレス機等が挙げられる。また、活性エネルギー線照射の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0103】
本発明の樹脂含有シートの構成部材であるセルロースナノファイバー不織布、セルロースナノファイバー不織布中の繊維同士を固着剤により固着したもの(以下、「中間体」とも称する)、および、ドライフィルムの厚みについては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、特に中間体については、固着剤により繊維同士が互いに固着されているものであればよいので、その厚みは、セルロースナノファイバー不織布の厚みと同等、または、セルロースナノファイバー不織布の厚みの2倍を超えない程度の膜厚であることが好ましい。具体的には、セルロースナノファイバー不織布の厚みの1〜1.5倍の範囲内であることがより好ましい。中間体の厚みがセルロースナノファイバー不織布の厚みの2倍を超えると、固着剤そのものの物性の影響が出るため、好ましくない。
【0104】
本発明の樹脂含有シートを基板表面に形成し、硬化または成形して得られる構造体は、配線板用のコア材として使用することができ、エッチング処理等を行うことで、配線板用の層間絶縁材として使用することもできる。また、樹脂含有シートを回路形成された配線板表面に形成し、回路配線のみを覆うようにパターニング処理および硬化または成形して構造体とすれば、配線板の最外層であるソルダーレジスト等として使用することもできる。
【0105】
以上説明したような構成の本発明の樹脂含有シートは、電子機器用の配線板等に適用することができ、例えば、配線板用の層間絶縁材やソルダーレジスト、コア材等に好適に適用することができ、これにより、本発明の所期の効果を得ることができるものである。その他、例えば、繊維同士を固着剤組成物で固着し、樹脂を浸透、乾燥させて、半硬化である状態(Bステージ)の樹脂絶縁層を形成し、樹脂絶縁層と金属箔を積層プレスすることで、多層板を作製することもできる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例、比較例によって制限されるものではない。なお、以下の表中の配合量は、すべて質量部を示す。
【0107】
[ポリアミック酸ワニス1の合成]
窒素置換させた攪拌機付属の三つ口フラスコに、脱水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒(和光純薬工業(株)製)を入れ、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)(和光純薬工業(株)製)と1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)(和光純薬工業(株)製)とを1:1のモル比で配合し、室温で16時間以上撹拌して、樹脂固形分割合が7.5質量%であるポリアミック酸ワニス1を得た。
【0108】
[ポリアミック酸ワニス2の合成]
窒素置換させた攪拌機付属の三つ口フラスコに、脱水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒(和光純薬工業(株)製)を入れ、p−フェニレンジアミン(PDA)(和光純薬工業(株)製)と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)(和光純薬工業(株)製)とを1:1のモル比で配合し、室温で16時間以上撹拌して、樹脂固形分割合が7.5質量%であるポリアミック酸ワニス2を得た。
【0109】
[固着剤組成物または樹脂組成物の調製]
下記表1中に、固着剤組成物または樹脂組成物として使用される組成物1〜4の配合内容を示す。下記表1中の組成物1〜4の記載に従い、各組成物を調製した。組成物1の複数成分系の場合は、各成分を配合した後、自転・公転ミキサーを用いて攪拌し、調製した。
【0110】
[固着剤または樹脂の貯蔵弾性率等評価用試験片の作製]
各組成物1〜4をそれぞれ、厚さ18μmの銅箔にアプリケーターを用いて塗布し、塗膜を得た。
組成物1については、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、150℃、60分間の大気条件下で加熱させてエポキシ樹脂硬化物を得た。銅箔を除去したところ、厚みは50μmであった。この硬化物を用いて、幅5mm、長さ50mmの貯蔵弾性率等評価用試験片を作製した。
組成物2については、塗布後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間の窒素条件下(100ml/min.)で加熱してイミド化物を得た。銅箔を除去したところ、厚みは50μmであった。その後、上記と同様にして評価用試験片を作製した。
組成物3については、加熱操作を300℃、60分間の窒素条件下で行った以外は組成物2と同様にして評価用試験片を作製した。
組成物4については、高密度ポリエチレンペレット(比重0.95)をプレス機に適量投入して、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却して成形体を得た後に個片化したところ、厚みは50μmであった。その後、上記と同様にして評価用試験片を作製した。
【0111】
[樹脂含有シートおよびシートについての貯蔵弾性率評価用試験片の作製]
下記表2中に、各実施例および比較例の樹脂含有シートないしシートの構成を示す。
【0112】
[セルロースナノファイバー不織布の製造]
双日(株)により入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。得られた精製テンセル繊維(カット糸)を固形分1.5質量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解処理を続けた。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから約14時間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で15ml↑の叩解水分散体(固形分濃度:1.5質量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で1回および5回の微細化処理を実施し、それぞれ微細セルロース繊維の水分散体M1およびM2(固形分濃度:共に1.5質量%)を得た。
【0113】
続いて、上記水分散体M2を固形分濃度0.1質量%まで希釈し、ブレンダーで分散した後、PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20,大気下25℃での水透過量:0.03ml/cm・s、微細セルロース繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/mの微細セルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
【0114】
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cmの圧力で1分間プレスした後、湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにやはり湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させ、得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色の均一なセルロース微細繊維から構成されるシート(25cm×25cm)を得た。
【0115】
さらに、得られた微細セルロースシートをカレンダー機(由利ロール社製)により、150℃×1.55t/20cmの熱プレス処理を実施することで、膜厚17μm、比表面積相当繊維径0.442μm、透気抵抗度11s/100ml、空孔率62%、塩素イオン含有濃度19ppmの白色のセルロースナノファイバー不織布を得た。
【0116】
(実施例1の中間体の作製)
下記表2中の実施例1については、上記セルロースナノファイバー不織布を用いて、ここに、上記組成物1(粘度0.0005Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、150℃、60分間で加熱硬化させて、セルロースナノファイバー不織布および固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0117】
(実施例2の中間体の作製)
下記表2中の実施例2については、実施例1と同様のセルロースナノファイバー不織布に、上記組成物2(粘度0.001Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間で加熱してイミド化し、セルロースナノファイバー不織布および固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0118】
(実施例3の中間体の作製)
下記表2中の実施例3については、実施例1と同様のセルロースナノファイバー不織布に、上記組成物3(粘度0.001Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、300℃、60分間で加熱してイミド化し、セルロースナノファイバー不織布および固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0119】
(比較例4の中間体の作製)
実施例1と同様に、上記組成物1を使用してセルロースナノファイバー不織布および固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0120】
実施例1〜3および比較例4の各中間体の厚みは33〜35μmであり、セルロースナノファイバー不織布の厚みからの厚みの増大は3〜5μmとわずかだった。
【0121】
(各実施例および比較例の樹脂含有シートないしシートの作製)
実施例1については、上記組成物4をプレス機に投入して、140℃で溶融させた後に、上記で得られた各中間体に含浸させ、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却させることで、固着剤(エポキシ樹脂組成物)で固着されたセルロースナノファイバー不織布に、樹脂(高密度ポリエチレン樹脂)が含浸された樹脂含有シートを作製した。
【0122】
実施例2、実施例3については、上記組成物1を、上記で得られた各中間体に対し、繊維全体に行き渡るように適量で塗布し、含浸させ、上記固着剤または樹脂の評価用試験片の作製と同様の条件で、加熱硬化させることで、固着剤(ポリイミド)で固着されたセルロースナノファイバー不織布に樹脂(エポキシ樹脂硬化物)が含浸された樹脂含有シートを作製した。
【0123】
実施例1〜3の各樹脂含有シートの厚みは、中間体の厚みよりも10〜20μm厚くなった。その後、各樹脂含有シートについて、上記と同様の条件で、評価用試験片を作製した。
【0124】
比較例1については、上記組成物1を、セルロースナノファイバー不織布に対し、繊維全体に行き渡るように適量で塗布し、含浸させ、上記固着剤または樹脂の評価用試験片の作製と同様の条件で、加熱硬化させることで、固着剤を含まないセルロースナノファイバー不織布に樹脂(エポキシ樹脂硬化物)が含浸されたシートを作製した。
【0125】
比較例2については、セルロースナノファイバー不織布に、上記組成物2を比較例1と同様に塗布、含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間の大気条件下で加熱してイミド化し、固着剤を含まないセルロースナノファイバー不織布に樹脂(ポリイミド)が含浸されたシートを作製した。
【0126】
比較例3については、上記組成物4をプレス機に投入して、140℃で溶融させた後に、セルロースナノファイバー不織布に含浸させ、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却させることで、固着剤を含まないセルロースナノファイバー不織布に樹脂(高密度ポリエチレン樹脂)が含浸されたシートを作製した。
【0127】
比較例4については、比較例2におけるセルロースナノファイバー不織布を上記組成物1からなる固着剤を有する中間体に変えて使用した以外は、比較例2と同様に樹脂含有シートを作製した。
【0128】
その後、各シートについて、上記と同様に評価用試験片を作製した。
【0129】
なお、樹脂分濃度は、下記表2に示したように、実施例1〜3および比較例1〜4について同程度であった。ここで、樹脂分濃度は、固着剤量={1−(セルロースナノファイバー不織布の体積/中間体の体積)}×100[体積%]、樹脂量={1−(中間体の体積/樹脂含有シートまたはシートの体積)}×100[体積%](体積は、質量および比重を基に換算)から、それぞれ求めた。
【0130】
[貯蔵弾性率等の測定]
固着剤または樹脂の貯蔵弾性率等評価用試験片を用いて、DMA粘弾性測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製 DMA7100)の引張モードを用い、測定周波数1Hz、最小張力および最小圧縮力200mN、歪振幅10μm、昇温速度5℃/分、大気下条件で粘弾性を測定し、50℃、150℃および250℃における貯蔵弾性率を得るとともに、ガラス転移温度または軟化温度を得た。その結果を下記表1に示す。
【0131】
【表1】
*1:jER828,三菱化学(株)製
*2:2−エチル−4−メチルイミダゾール,四国化成(株)製
*3:和光純薬工業(株)製
*4:比重0.95
【0132】
[樹脂含有シートまたはシートの貯蔵弾性率の評価]
樹脂含有シートまたはシート評価用試験片については、シート中のセルロースナノファイバー不織布またはアラミド不織布の繊維のバイアス(斜め)方向が装置の引張方向となるように試験片を取り付け、最小張力および圧縮力を50mNとした以外は、上記と同様にして粘弾性を測定し、50℃、150℃および250℃における貯蔵弾性率を得た。ここで、バイアス(斜め)方向に測定するのは、セルロースナノファイバー不織布そのものの弾性率の影響を極力排除し、固着効果による弾性率向上の影響を調べるためである。各実施例については、固着剤を付着させていない比較例のシートと比べたとき、貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きい場合は〇、小さい場合は×とした。
【0133】
具体的に説明すると、実施例1の樹脂含有シートは、50℃、150℃、250℃のいずれの温度においても、固着剤を使用しなかった比較例3のシートよりも貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
【0134】
実施例2、実施例3の樹脂含有シートにおいても、それぞれ固着剤を使用しなかった比較例1のシートと比較して貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
【0135】
一方、比較例4の樹脂含有シートは、50℃、150℃、250℃のいずれの温度においても、固着剤を使用しなかった比較例2のシートよりも貯蔵弾性率E[GPa]の値が小さくなるため、「×」とした。その結果を下記表2に示す。
【0136】
[耐屈曲性評価用試験片の作製]
セルロースナノファイバー不織布をキャリアフィルム上に配置したこと以外は、上記と同様にして固着剤組成物を塗布、含浸させて、各中間体を作製した。その後、乾燥後の固着剤の表面に、樹脂組成物を成形または塗布し、乾燥させた後、カバーフィルムを貼り合わせて、ドライフィルムを得た。このドライフィルムの両面に厚み18μmの表面未処理銅箔を重ね合わせて(密着させる際にキャリアフィルムおよびカバーフィルムは剥離した)、真空プレス機で、加圧条件を1MPa、加熱条件を、実施例1については150℃×10分、実施例2、比較例4については250℃×60分、実施例3については300℃×60分として成形し、樹脂層と銅箔とが密着した耐屈曲性評価用試験片を作製した。また、比較例1〜3については、固着剤組成物を塗布、含浸しないこと以外は同様にドライフィルムを作製、真空プレス機で加圧し、比較例1〜3のシート作製と同様の温度条件で耐屈曲性評価用試験片を作製した。
【0137】
[耐屈曲性の評価]
耐屈曲性評価用試験片を用いて、屈曲半径0.8mm、屈曲速度175回/分、折り曲げ角度135°、荷重200g、樹脂層が内側になる向きに曲げて、屈曲試験を行った。試験片が破断するまでの折り曲げ回数が100回以上の場合を〇、70〜99回を△、69回以下を×とした。その結果を下記表2に示す。評価結果が〇である場合、耐屈曲性に優れるといえる。
【0138】
【表2】
【0139】
上記表2に示すように、実施例1〜3の固着剤の貯蔵弾性率は、樹脂の貯蔵弾性率に比べていずれも大きく、一方、比較例4では、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率に比べて小さくなっている。また、比較例1〜3では、樹脂のみを用いて、固着剤を用いていない。
【0140】
上記表2に示す通り、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも高い固着剤を用いて、セルロースナノファイバー不織布を固着し、さらに樹脂を含浸させた実施例の樹脂含有シートは、樹脂のみを含浸させた比較例のシートと比べ、耐屈曲性に優れており、かつ、貯蔵弾性率が大きいことがわかる。
【0141】
例えば、実施例1と比較例3とを対比すると明らかなように、セルロースナノファイバー不織布の繊維同士を固着組成物により固着させ、さらにセルロースナノファイバー不織布に樹脂組成物を含浸させた実施例の樹脂含有シートは、セルロースナノファイバー不織布の繊維同士を固着組成物により固着させていない比較例3と比較して、いずれの温度においても貯蔵弾性率が高いので、力学強度が高いことが分かった。
【0142】
特に、実施例2および実施例3の樹脂含有シートは、250℃の貯蔵弾性率が1GPaを超えており、高温時の力学強度にも優れていることがわかる。一方、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも低い比較例4では、樹脂含有シートとしての貯蔵弾性率が低くなった。
【0143】
以上より、セルロースナノファイバー不織布中の繊維同士を固着する固着剤と、固着された繊維に接する樹脂とを有し、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも高い樹脂含有シートを用いることにより、優れた力学強度、弾性率および耐屈曲性を実現することが可能であることが確かめられた。かかる本発明の樹脂含有シートは、電子機器用の配線板等に適用することができ、例えば、配線板用の層間絶縁材やソルダーレジスト、コア材等に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1 繊維
2 固着剤
3 樹脂
11 セルロースナノファイバー不織布
S 空間
図1