(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、溶解性に優れ、容易に合成可能な含フッ素アクリル化合物及びその製造方法、該化合物を含む硬化性組成物、並びに該組成物の硬化被膜を有する基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、このような含フッ素アクリル化合物として、特開2010−53114号公報(特許文献3)、特開2010−138112号公報(特許文献4)、特開2010−285501号公報(特許文献5)等において、複数のSi−H基を有するパーフルオロポリエーテル基に、末端に不飽和結合を有するアルコール化合物をヒドロシリル化により付加させる手法を提案し、具体的には、以下のような1級や3級のアルコール末端を導入した化合物を中間体とすることを例示している。
−CH
2CH
2CH
2OH
−CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OH
【化1】
【0010】
ここで、−CH
2OH型の1級アルコール末端を導入した含フッ素アルコール化合物を中間体として使用した場合、加熱や経時変化によって容易に増粘し、溶解性が低下してしまう場合があり、一方で、3級のアルコール末端の場合、1級の場合と比較して溶解性の低下は起こりにくいが、条件によってはアクリル基を導入する際の反応速度がきわめて遅くなることがあった。特にアクリル基を有するイソシアネート化合物との反応では、近年、毒性に対する懸念から触媒活性の高いスズ系触媒を使用することが困難となってきており、より安全だが触媒活性の低いチタン系、ジルコニウム系などの触媒に移行しているが、これらの触媒による3級アルコールとイソシアネートの反応では反応速度は極めて遅い傾向にある。
このため安定した溶解性を示し、容易に合成可能な新規の含フッ素アクリル化合物が求められてきた。
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために更なる検討を重ねた結果、下記一般式(3)又は(4)
[Rf
1−Z
1]
a−Q
1−[H]
b (3)
[H]
b−Q
2−Z
1−Rf
2−Z
1−Q
2−[H]
b (4)
(式中、Rf
1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の1価のパーフルオロポリエーテル基であり、Rf
2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の2価のパーフルオロポリエーテル基であり、Z
1は独立に炭素数1〜20の酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Q
1は少なくとも(a+b)個のケイ素原子を含む(a+b)価の連結基であり、Q
2は独立に少なくとも(b+1)個のケイ素原子を含む(b+1)価の連結基である。aは1〜10の整数であり、bは独立に1〜10の整数である。[ ]で括られたa個のZ
1及びb個のHはすべてそれぞれQ
1又はQ
2構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される含フッ素化合物と、下記一般式(5)
CH
2=CR
1−Z
2−CHR
2−OH (5)
(式中、Z
2は独立に炭素数1〜200の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。R
1は独立に水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、R
2は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、Z
2とR
1及び/又はZ
2とR
2はそれぞれ結合してR
1,R
2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよく、またR
1とR
2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ
2を含んだ環状構造をなしていてもよい。)
で表される末端不飽和基含有アルコールとをヒドロシリル化反応させて得られる2級のアルコール末端を有する含フッ素アルコール化合物が、1級のアルコール末端の含フッ素化合物と比較して加熱や経時変化による増粘が少なく、3級のアルコール末端の含フッ素化合物を用いた場合よりも反応速度が十分速いことを知見し、更に、該含フッ素アルコール化合物に下記式(6)及び/又は(7)
CH
2=CR
4COX (6)
CH
2=CR
4COOCH
2CH
2−N=C=O (7)
(式中、R
4は水素原子又はメチル基であり、Xはハロゲン原子である。)
で表される化合物を反応させて得られる下記一般式(1)又は(2)
【化2】
(式中、Rf
1、Rf
2、Z
1、Z
2、Q
1、Q
2、R
1、R
2、a、bは前述の通りである。R
3はそれぞれ独立に水素原子、又は酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよいアクリル基もしくはα置換アクリル基を有する1価の有機基であり、但し、R
3は分子中に平均して少なくとも1個の前記1価の有機基を有する。)
で表される含フッ素アクリル化合物が、安定した溶解性を示し、合成時の反応速度が十分速く、上記要求を満たすことを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記の含フッ素アクリル化合物、その製造方法及び硬化性組成物並びに基材を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)又は(2)で表される含フッ素アクリル化合物。
【化3】
(式中、Rf
1は下記式(i)、(ii)、(iii)
CF
3O−(CF
2O)
p−(CF
2CF
2O)
q−CF
2− (i)
(式中、pは0〜400の整数、qは0〜170の整数、p+qは2〜400の整数である。)
F[CF(CF
3)CF
2O]
r−CF(CF
3)− (ii)
(式中、rは1〜120の整数である。)
F[CF
2CF
2CF
2O]
s−CF
2CF
2− (iii)
(式中、sは1〜120の整数である。)
から選ばれる構造を有する1価のパーフルオロポリエーテル基であり、
Rf
2は下記式(iv)、(v)
−CF
2O−(CF
2O)
p−(CF
2CF
2O)
q−CF
2− (iv)
(式中、pは0〜400の整数、qは0〜170の整数、p+qは2〜400の整数である。)
【化4】
(式中、t+uは2〜120の整数である。)
から選ばれる構造を有する2価のパーフルオロポリエーテル基であり、
Z
1は下記式
−CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2CH
2−
−CH
2OCH
2CH
2−
−CH
2OCH
2CH
2CH
2−
【化5】
から選ばれる2価の炭化水素基であり、
Q
1は下記式(vi)〜(ix)
【化6】
(式中、a、bはそれぞれ独立に1〜10の整数であり、cは1〜5の整数である。各ユニットの並びはランダムであり、(a+b)個の各ユニット等の結合手は、[ ]で括られたa個のZ
1及びb個のCH
2のいずれかの基と結合する。
Tは(a+b)価の連結基であり、下記式(x)〜(xii)
【化7】
のいずれかである。)
から選ばれる(a+b)価の連結基であり、
Q
2は下記式(xv)〜(xviii)
【化8】
(式中、bは1〜10の整数であり、cは1〜5の整数である。各ユニットの並びはランダムであり、(b+1)個の各ユニット等の結合手は、Z
1及び[ ]で括られたb個のCH
2のいずれかの基と結合する。
T’は下記式(xix)〜(xxi)
【化9】
のいずれかである。)
から選ばれる(b+1)価の連結基であり、
Z
2は下記式
−CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2CH
2−
−CH
2[OC
2H
4]
d[OC
3H
6]
e[OC
4H
8]
f−
−CH
2[OC
2H
4]
d[OC
3H
6]
e[OC
4H
8]
fOCH
2−
(式中、dは0〜99の整数、eは0〜66の整数、fは0〜50の整数であり、合計として炭素数200以下を満たせばよい。繰り返し単位の配列は、種類にかかわらずランダムである。また各繰り返し単位は単体でなく構造異性体の混合物でもよい。)
から選ばれる2価の炭化水素基であり、
R
1は独立に水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、R
2は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、
Z
2とR
1及び/又はZ
2とR
2はそれぞれ結合してR
1,R
2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよく、またR
1とR
2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ
2を含んだ環状構造をなしていてもよい、下記式
【化10】
【化11】
から選ばれる2価の炭化水素基である。aは1〜10の整数であり、bは独立に1〜10の整数である。R
3はそれぞれ独立に水素原子、又は酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよいアクリル基もしくはα置換アクリル基を有する1価の有機基であり、但し、R
3は分子中に平均して少なくとも1個の前記1価の有機基を有する。)
〔2〕
一般式(1)及び(2)中の下記式
−Z
2−CHR
2−OR
3
で示される基が、下記式
−Z
3−OCH
2CH(CH
3)−OR
3
(式中、R
3は上記と同じである。Z
3は炭素数1〜199の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中に環状構造をなしていてもよく、また隣接するR
1とZ
3が結合してR
1と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよい。)
で示される基である〔1〕記載の含フッ素アクリル化合物。
〔3〕
一般式(1)及び(2)中の下記式
−Z
2−CHR
2−OR
3
で示される基が、下記式
−CH
2−[OC
3H
6]
n−OCH
2CH(CH
3)−OR
3
(式中、R
3は上記と同じである。nは0〜64の整数である。)
で示される基である〔2〕記載の含フッ素アクリル化合物。
〔4〕
下記一般式(8)又は(9)で表される〔1〕〜〔3〕のいずれか
に記載の含フッ素アクリル化合物。
【化12】
(式中、Rf
1、Rf
2、Q
1、Q
2、Z
1、a、bは前述の通りであり、nは0〜64の整数であり、R
4は水素原子又はメチル基である。)
〔5〕
式(1)又は(2)で表される含フッ素アクリル化合物が、下記式(A1)〜(A3)のいずれかである〔1
〕に記載の含フッ素アクリル化合物。
【化13】
(式中、Rf’は−CF
2O(CF
2O)
p1(CF
2CF
2O)
q1CF
2−であり、p1、q1はq1/p1=0.8〜1.5、q1+p1=5〜80を満足する数である。r1はそれぞれ2〜100の整数である。n1はそれぞれ独立に0〜30の整数である。)
〔6〕
下記一般式(3)又は(4)
[Rf
1−Z
1]
a−Q
1−[H]
b (3)
[H]
b−Q
2−Z
1−Rf
2−Z
1−Q
2−[H]
b (4)
(式中、Q
1、Q
2、Rf
1、Rf
2、Z
1、a、bは前述の通りであり、[ ]で括られたa個のZ
1及びb個のHはすべてそれぞれQ
1又はQ
2構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される含フッ素化合物と、下記一般式(5)
CH
2=CR
1−Z
2−CHR
2−OH (5)
(式中、R
1、R
2、Z
2は前述の通りである。)
で表される末端不飽和基含有アルコールとをヒドロシリル化反応させて得られる含フッ素アルコール化合物と、下記式(6)及び/又は(7)
CH
2=CR
4COX (6)
CH
2=CR
4COOCH
2CH
2−N=C=O (7)
(式中、R
4は水素原子又はメチル基であり、Xはハロゲン原子である。)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の含フッ素アクリル化合物の製造方法。
〔7〕
式(3)又は(4)で示される化合物が、下記(B−1)〜(B−8)
【化14】
【化46】
(式中
、r1はそれぞれ2〜100の整数である。)
から選ばれ、
式(5)の末端不飽和基含有アルコールが、下記式
CH
2=CH−CH
2−OCH
2CH(CH
3)−OH
CH
2=CH−CH
2−(OC
3H
6)
2−OCH
2CH(CH
3)−OH
CH
2=CH−CH
2−(OC
3H
6)
4−OCH
2CH(CH
3)−OH
CH
2=CH−CH
2−(OC
3H
6)
9−OCH
2CH(CH
3)−OH
【化47】
から選ばれるものである〔6〕記載の製造方法。
〔8〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の含フッ素アクリル化合物を含むことを特徴とする硬化性組成物。
〔9〕
〔8〕記載の硬化性組成物を基材表面に塗布・硬化させてなる基材。
【発明の効果】
【0013】
本発明の含フッ素アクリル化合物は、安定した溶解性を示し、合成時の反応速度が十分速く、容易に合成可能であるため、熱硬化型樹脂組成物に防汚性を付与するための添加剤、あるいは紫外線硬化型樹脂へ防汚性を付与する防汚添加剤等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の含フッ素アクリル化合物は、下記一般式(1)又は(2)で表されるものである。
【化15】
【0015】
上記式(1)、(2)中、Rf
1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の1価のパーフルオロポリエーテル基であり、Rf
2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の2価のパーフルオロポリエーテル基であり、Rf
1、Rf
2は特に以下の炭素数1〜3の構造を主な繰り返し単位として有するものが好適である。
−CF
2O−
−CF
2CF
2O−
−CF(CF
3)CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2O−
これらの構造は、いずれか一つの単独重合体、あるいは複数の構造からなるランダム、ブロック重合体でもよい。
【0016】
このような構造を有するRf
1の好適な例としては、例えば、以下の構造を挙げることができる。
CF
3O−(CF
2O)
p−(CF
2CF
2O)
q−CF
2−
(式中、pは0〜400、好ましくは0〜200の整数、qは0〜170、好ましくは0〜100の整数、p+qは2〜400、好ましくは3〜300の整数である。)
F[CF(CF
3)CF
2O]
r−CF(CF
3)−
(式中、rは1〜120、好ましくは1〜80の整数である。)
F[CF
2CF
2CF
2O]
s−CF
2CF
2−
(式中、sは1〜120、好ましくは1〜80の整数である。)
【0017】
また、Rf
2の好適な例としては、例えば、以下の構造を挙げることができる。
−CF
2O−(CF
2O)
p−(CF
2CF
2O)
q−CF
2−
(式中、pは0〜400、好ましくは0〜200の整数、qは0〜170、好ましくは0〜100の整数、p+qは2〜400、好ましくは3〜300の整数である。)
【化16】
(式中、t+uは2〜120、好ましくは4〜100の整数である。)
【0018】
これらのRf
1、Rf
2基の分子量は、該当する構造部分の数平均分子量が、それぞれ400〜20,000、好ましくは800〜10,000の範囲に含まれていればよく、その分子量分布については特に限定されるものではない。なお、本発明において、分子量は、
1H−NMR及び
19F−NMRに基づく末端構造と主鎖構造との比率から算出される数平均分子量である。
【0019】
上記Rf
1及びRf
2の結合手は、すべてZ
1に結合する。Z
1は炭素数1〜20、好ましくは2〜16の、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Z
1の特に好ましい構造としては、以下のものを挙げることができる。
−CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2CH
2−
−CH
2OCH
2CH
2−
−CH
2OCH
2CH
2CH
2−
【化17】
【0020】
上記式(1)、(2)において、a及びbはそれぞれ独立に1〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。
【0021】
上記式(1)において、Q
1は少なくとも(a+b)個のケイ素原子を含む(a+b)価の連結基であり、環状構造をなしていてもよい。このようなQ
1の好ましいものとして、それぞれ(a+b)個のSi原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合せからなる(a+b)価の連結基が挙げられる。特に好ましい構造として、具体的には、下記の構造が示される。
【0022】
但し、a及びbは上記式(1)のa、bと同じであり、それぞれ独立に1〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。cは1〜5の整数であり、好ましくは3〜5の整数である。各ユニットの並びはランダムであり、(a+b)個の各ユニット等の結合手は、[ ]で括られたa個のZ
1及びb個のCH
2のいずれかの基と結合する。
【0024】
ここで、Tは(a+b)価の連結基であり、例えば以下のものが例示される。
【化19】
【0025】
上記式(2)において、Q
2は少なくとも(b+1)個のケイ素原子を含む(b+1)価の連結基であり、環状構造をなしていてもよい。このようなQ
2の好ましいものとして、それぞれ(b+1)個のSi原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合せからなる(b+1)価の連結基が挙げられる。特に好ましい構造として、具体的には、下記の構造が示される。
但し、bは上記式(2)のbと同じであり、独立に1〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。cは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。各ユニットの並びはランダムであり、(b+1)個の各ユニット等の結合手は、Z
1及び[ ]で括られたb個のCH
2のいずれかの基と結合する。
【0027】
ここで、T’は(b+1)価の連結基であり、例えば以下のものが例示される。
【化21】
【0028】
上記式(1)、(2)において、Z
2は炭素数1〜200、好ましくは2〜80の、酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Z
2の好ましい構造としては、以下のものを挙げることができる。
−CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2CH
2−
−CH
2[OC
2H
4]
d[OC
3H
6]
e[OC
4H
8]
f−
−CH
2[OC
2H
4]
d[OC
3H
6]
e[OC
4H
8]
fOCH
2−
【0029】
ここで、dは0〜99の整数、eは0〜66の整数、fは0〜50の整数であり、合計として炭素数200以下を満たせばよい。繰り返し単位の配列は、種類にかかわらずランダムである。また各繰り返し単位は単体でなく構造異性体の混合物でもよい。
【0030】
Z
2として、特に好ましい構造としては、以下のものが挙げられ、中でもeが1〜30であるものが好適である。
−CH
2[OC
3H
6]
eOCH
2−
【0031】
上記式(1)、(2)中、R
1は水素原子又は炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価の炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価の炭化水素基であり、1価の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。R
1としては、水素原子及びメチル基が好適であり、R
2としては、メチル基が好適である。
【0032】
また、Z
2とR
1及び/又はZ
2とR
2はそれぞれ結合してR
1,R
2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよく、またR
1とR
2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ
2を含んだ環状構造をなしていてもよい。
Z
2とR
1又はZ
2とR
2が結合し、環状構造をなした例としては、以下のような構造を挙げることができる。なお、結合手は、OHとCHR
1又はCHR
2とCH
2に結合する。
【化22】
また、R
1とR
2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ
2を含んだ環状構造をなした例としては、以下のような構造を挙げることができる。なお、破線で示される結合手は、OHとCHR
1又はCHR
2とCH
2に結合する。
【化23】
【0033】
上記式(1)、(2)中、R
3はそれぞれ独立に水素原子、又は酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよいアクリル基もしくはα置換アクリル基を有する1価の有機基である。1価の有機基としては、末端に少なくとも1つ、好ましくは1〜5のアクリル基又はα置換アクリル基を有する基が好ましく、該置換基としては、メチル基、エチル基、F、CF
3、Cl、Brなどを挙げることができる。また、構造途中にアミド結合、エーテル結合、エステル結合などを有していてもよい。
【0034】
このような構造として、例えば、以下のものを挙げることができる。
CH
2=CHCO−
CH
2=C(CH
3)CO−
CH
2=C(C
2H
5)CO−
CH
2=CFCO−
CH
2=CClCO−
CH
2=CBrCO−
CH
2=C(CF
3)CO−
CH
2=CHCOOCH
2CH
2−NHCO−
CH
2=C(CH
3)COOCH
2CH
2−NHCO−
CH
2=C(CH
3)COOCH
2CH
2OCH
2CH
2−NHCO−
(CH
2=CHCOOCH
2CH
2)
2C(CH
3)−NHCO−
この中でも特に好適なのは
CH
2=CHCOOCH
2CH
2−NHCO−
CH
2=C(CH
3)COOCH
2CH
2−NHCO−
である。
但し、R
3は一部が水素原子でもよいが、全てが水素原子ではなく、一分子中に平均して1個以上の前記アクリル基及び/又はα置換アクリル基を含むものである。
【0035】
上記式(1)、(2)中の−Z
2−CHR
2−OR
3で示される基は、下記式
−Z
3−OCH
2CH(CH
3)−OR
3
で示される基であることが好ましい。
【0036】
ここで、Z
3は炭素数1〜199、好ましくは1〜60の、酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中に環状構造をなしていてもよく、また隣接するR
1とZ
3が結合してR
1と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよい。Z
3の好ましい構造としては、以下のものを挙げることができる。
−CH
2[OC
2H
4]
d[OC
3H
6]
e[OC
4H
8]
f−
(式中、d、e、fは上記と同じである。繰り返し単位の配列は、種類にかかわらずランダムである。また各繰り返し単位は単体でなく構造異性体の混合物でもよい。)
Z
3として、特に好ましい構造としては、以下のものが挙げられ、中でもeが1〜30であるものが好適である。
−CH
2[OC
3H
6]
e−
【0037】
更に、一般式(1)、(2)中の−Z
2−CHR
2−OR
3で示される基は、下記式
−CH
2−[OC
3H
6]
n−OCH
2CH(CH
3)−OR
3
(但し、nは0〜64、好ましくは0〜40、より好ましくは1〜30の整数である。)
で示される基であることがより好ましい。
【0038】
上記式(1)、(2)で表される含フッ素アクリル化合物としては、下記一般式(8)、(9)で表されるものが好ましい。
【化24】
(式中、Rf
1、Rf
2、Q
1、Q
2、Z
1、a、b、nは上記の通りであり、R
4は水素原子又はメチル基である。)
【0039】
上記式(1)、(2)で表される含フッ素アクリル化合物として、より具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化25】
【化26】
【化27】
(式中、Rf’は−CF
2O(CF
2O)
p1(CF
2CF
2O)
q1CF
2−であり、p1、q1はq1/p1=0.8〜1.5、q1+p1=5〜80を満足する数である。r1はそれぞれ2〜100、好ましくは2〜50の整数である。n1はそれぞれ独立に0〜30、好ましくは1〜15の整数である。)
【0040】
このような一般式(1)又は(2)で表される含フッ素アクリル化合物は、特にその合成法を制限されるものではないが、例えば、まず下記一般式(3)又は(4)
[Rf
1−Z
1]
a−Q
1−[H]
b (3)
[H]
b−Q
2−Z
1−Rf
2−Z
1−Q
2−[H]
b (4)
(式中、Rf
1、Rf
2、Z
1、Q
1、Q
2、a、bは上記と同じであり、[ ]で括られたa個のZ
1及びb個のHはすべてそれぞれQ
1又はQ
2構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物と、下記一般式(5)
CH
2=CR
1−Z
2−CHR
2−OH (5)
(式中、R
1、R
2、Z
2は上記と同じである。)
で表される末端不飽和基含有アルコール(分子中にアルケニル基と2級のアルコールを有する化合物)とをヒドロシリル化反応させることにより中間体である含フッ素アルコール化合物を得ることができる。
【0041】
ここで、上記式(3)、(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化28】
【0044】
【化31】
(式中、Rf’、r1は上記と同じである。)
【0045】
また、上記式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールとしては、下記一般式(a)で表されるものが例示できる。
CH
2=CR
1−Z
3−OCH
2CH(CH
3)−OH (a)
(式中、R
1、Z
3は上記と同じである。)
【0046】
上記式(a)で表される末端不飽和基含有アルコールとしては、下記一般式(b)で示されるものが好ましい。
CH
2=CH−CH
2−[OC
3H
6]
n−OCH
2CH(CH
3)−OH (b)
(式中、nは上記と同じである。)
【0047】
上記式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールとして、具体的には、下記に示すものを例示することができる。
CH
2=CH−CH
2−OCH
2CH(CH
3)−OH
CH
2=CH−CH
2−(OC
3H
6)
2−OCH
2CH(CH
3)−OH
CH
2=CH−CH
2−(OC
3H
6)
4−OCH
2CH(CH
3)−OH
CH
2=CH−CH
2−(OC
3H
6)
9−OCH
2CH(CH
3)−OH
【化32】
【0048】
このヒドロシリル化(付加)反応は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物と、式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールを混合し、白金族金属系の付加反応触媒存在下、反応温度50〜150℃、好ましくは60〜120℃で、1分〜48時間、特に10分〜12時間反応を行うことが望ましい。反応温度が低すぎると反応が十分に進行しないまま反応が停止してしまう場合があり、高すぎるとヒドロシリル化の反応熱による温度上昇で反応が制御できなくなり、突沸や原料の分解などが起こる場合がある。
【0049】
この場合、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物と、式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールとの反応割合は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物の[ ]で括られたHの総モル数に対して、式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールの末端不飽和基を0.5〜5.0倍モル、特に0.9〜2.0倍モル使用して反応させることが望ましい。式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールが、これより少なすぎると高い溶解性を持つ含フッ素アルコール化合物を得ることは困難であり、これ以上多すぎると反応溶液の均一性が低下して反応速度が不安定となり、また反応後に式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールの除去を行う場合に加熱、減圧、抽出等の条件を余剰の未反応のアルコールが増える分だけ厳しくする必要が出てくる。
【0050】
付加反応触媒は、例えば、白金、ロジウム又はパラジウム等の白金族金属を含む化合物を使用することができる。中でも白金を含む化合物が好ましく、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド/オクタノール錯体、あるいは活性炭に担持された白金を用いることができる。
付加反応触媒の配合量は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物に対し、含まれる金属量が0.1〜5,000質量ppmとなることが好ましく、より好ましくは1〜1,000質量ppmである。
【0051】
上記の付加反応は、溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤で希釈してもよい。このとき希釈溶剤は、トルエン、キシレン、イソオクタンなど、広く一般に用いられている有機溶剤を利用することができるが、沸点が目的とする反応温度以上でかつ反応を阻害せず、反応後に生成する式(1)又は(2)の化合物が、上記反応温度において可溶であるものが好ましい。このような溶剤としては、例えば、m−キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素変性エーテル系溶剤等の部分フッ素変性された溶剤が望ましく、特にm−キシレンヘキサフロライドが好ましい。
溶剤を使用する場合、その使用量は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物100質量部に対して、好ましくは5〜2,000質量部であり、より好ましくは50〜500質量部である。これより少なければ溶剤による希釈の効果が薄く、多ければ希釈度が高くなりすぎて反応速度の低下を招く場合がある。
【0052】
反応終了後、未反応の式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールや希釈溶剤を減圧留去、抽出、吸着等の公知の方法で除去することが好ましいが、これらを含んだ反応混合物のまま次の反応に使用することもできる。
【0053】
このようにして得られる含フッ素アルコール化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化33】
【0055】
【化35】
(式中、r1、n1、Rf’は上記と同じである。)
【0056】
次いで、上記で得られた含フッ素アルコール化合物にアクリル基を導入することにより、含フッ素アクリル化合物を得ることができる。含フッ素アルコール化合物にアクリル基を導入する方法として、一つは下記式(6)で表されるアクリル酸ハライドと反応させてエステルを形成する方法、もう一つは下記式(7)で表されるアクリル基を含有するイソシアネート化合物と反応させる方法が挙げられ、これらの方法により、本発明の目的とする含フッ素アクリル化合物を得ることができる。
【0057】
CH
2=CR
4COX (6)
CH
2=CR
4COOCH
2CH
2−N=C=O (7)
(式中、R
4は水素原子又はメチル基であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子である。)
【0058】
ここで、式(6)で表されるアクリル酸ハライドとしては、下記に示すものが挙げられる。
CH
2=CHCOX
CH
2=CCH
3COX
(式中、Xは上記と同じである。)
特にアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリドが好ましい。
【0059】
また、式(7)で表されるアクリル基を含有するイソシアネート化合物としては、下記に示すものが挙げられる。
CH
2=CHCOOCH
2CH
2−N=C=O
CH
2=CCH
3COOCH
2CH
2−N=C=O
【0060】
これらのアクリル酸ハライドあるいはアクリル基を含有するイソシアネート化合物は、含フッ素アルコール化合物の水酸基量の合計に対して等モル以上を仕込み反応させ、水酸基をすべて反応させてもよいが、含フッ素アルコール化合物1モルに対して平均して1モル以上のアクリル基を導入させればよく、水酸基を過剰とさせることで、未反応のアクリル酸ハライドあるいはアクリル基を含有するイソシアネート化合物を残存させないようにしてもよい。具体的には、反応系中の含フッ素アルコール化合物量をxモル、含フッ素アルコール化合物の水酸基量の合計をyモルとした場合、アクリル酸ハライドあるいはアクリル基を含有するイソシアネート化合物はxモル以上2yモル以下であることが望ましく、特に好ましくは0.6yモル以上1.3yモル以下である。少なすぎる場合、アクリル基が全く導入されない含フッ素アルコール化合物が残存する可能性が高くなり、生成物の溶解性が低くなってしまう可能性がある。多すぎる場合、未反応のアクリル酸ハライドあるいはアクリル基を含有するイソシアネート化合物の残存の除去が困難となる。
【0061】
これらの反応は、必要に応じて適当な溶剤で希釈して反応を行ってもよい。このような溶剤としては、含フッ素アルコール化合物の水酸基、アクリル酸ハライドのハロゲン原子、アクリル基を含有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しない溶剤であれば特に制限なく用いることができ、具体的には、トルエン、キシレン、イソオクタンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、m−キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素変性エーテル系溶剤などが挙げられる。この溶剤は、反応後に減圧留去等の公知の手法で除去してもよく、そのまま希釈溶液として目的の用途に使用してもよい。
【0062】
また、反応の際には、必要に応じて重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては特に制限はないが、通常、アクリル化合物の重合禁止剤として用いられるものを用いることができる。具体的には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4−tert−ブチルカテコール、ジブチルヒドロキシトルエン等を挙げることができる。
【0063】
含フッ素アルコール化合物にアクリル酸ハライドを反応させる場合、特にアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリドを反応させて、エステルを生成することが好ましい。該エステル生成反応は、上記反応中間体(含フッ素アルコール化合物)、受酸剤を混合攪拌しながらアクリル酸ハライドを滴下して行う。受酸剤はトリエチルアミン、ピリジン、尿素などが使用できる。
【0064】
滴下は、反応混合物の温度を0〜35℃に維持し、20〜60分かけて行う。その後、更に30分〜10時間攪拌を継続する。反応終了後、未反応のアクリル酸ハライド、反応により発生した塩及び反応溶媒等を留去、吸着、濾過洗浄等の方法で除去することで本発明の含フッ素アクリル化合物を得ることができる。
また、反応停止の際に、メタノール、エタノール等のアルコール化合物を系内に添加し、未反応のアクリル酸ハライドをエステル化してもよい。生成したアクリル酸エステル類は、未反応のアクリル酸ハライド除去と同様の方法で除去できるが、残存させたまま使用することもできる。
【0065】
含フッ素アルコール化合物とアクリル基を含有するイソシアネート化合物との反応の場合には、含フッ素アルコール化合物とアクリル基を含有するイソシアネート化合物を必要に応じて溶媒とともに攪拌し、反応を進行させる。
【0066】
この反応において、反応の速度を増加するために適切な触媒を加えてもよい。触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクタン酸第1錫などのアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムキレート化合物等が例示される。これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用できるが、特に環境への影響が低いチタン化合物、ジルコニウム化合物の使用が好ましい。
【0067】
これらの触媒を反応物総質量に対して、0.01〜2質量%、好ましくは0.05〜1質量%加えることにより、反応速度を増加させることができる。反応は0〜120℃、好ましくは10〜70℃の温度で、1分〜500時間、好ましくは10分〜48時間行う。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、反応温度が高すぎると副反応としてアクリル基の重合が起きてしまう可能性がある。
【0068】
反応終了後、未反応のイソシアネート化合物及び反応溶媒等を留去、吸着、濾過洗浄等の方法で除去することで本発明の含フッ素アクリル化合物を得ることができる。
また反応停止の際に、メタノール、エタノール等のアルコール化合物を系内に添加し、未反応のイソシアネート化合物とウレタン結合を形成させてもよい。生成したウレタンアクリレート類は、未反応のイソシアネート化合物と同様の方法で除去できるが、残存させたまま使用することもできる。
【0069】
本発明のもう一形態の実施形態は、以上のようにして得られる含フッ素アクリル化合物(A)を含む硬化性組成物であり、該硬化性組成物としては、特に、活性エネルギー線によって硬化するものが好適である。(A)成分は単独で硬化させることも可能であるが、例えば、(A)成分以外の活性エネルギー線硬化性成分(B)と配合することで、硬度などの(B)成分の硬化物としての特性を維持したまま、表面上に(A)成分による優れた防汚特性を与えることができる。
【0070】
本発明において適宜使用される(B)成分の活性エネルギー線硬化性成分は、(A)成分と混合、硬化可能であれば、いかなるものであっても使用することができるが、特にはアクリレート類であるのが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2〜6官能の(メタ)アクリル化合物、これらの(メタ)アクリル化合物をエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル変性品、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレート類、及びアクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等を含むものが挙げられる。
【0071】
また、ウレタンアクリレート類、ポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリイソシアネートと末端ジオールのポリエステルに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリオールに過剰のジイソシアネートと反応させて得られるポリイソシアネートに、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるものを使用することもできる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートから選ばれる水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートを反応させたウレタンアクリレート類が好ましい。上記化合物は単独でも2種以上を併用してもよい。また組成物の物性調整のため1官能のアクリレート類を配合してもよい。
【0072】
また、本発明の硬化性組成物は、(C)成分として光重合開始剤を含有することで、紫外線によって硬化する硬化性組成物とすることができる。
(C)成分の光重合開始剤は、紫外線照射によりアクリル化合物を硬化させることができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられ、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明の硬化性組成物において、各成分の配合量は、所望する撥水性、撥油性、組成物の溶解性、硬化条件等に応じて適宜決定すればよく、(A)成分、(B)成分、(C)成分の配合比率は特に制限されないが、例えば(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1〜10,000質量部が好ましく、より好ましくは5〜1,000質量部、特に好ましくは10〜200質量部である。更に、(C)成分を用いる場合には、(C)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分の合計量を100質量部としたときに、0.1〜10質量部が好ましく、特に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0074】
なお、上記(B)成分及び(C)成分が配合されたハードコート剤は各社からさまざまなものが市販されている。本発明の硬化性組成物は、このような市販品のハードコート剤に(A)成分を添加したものであってもよい。市販品のハードコート剤として、例えば、荒川化学工業(株)「ビームセット」、大橋化学工業(株)「ユービック」、オリジン電気(株)「UVコート」、カシュー(株)「カシューUV」、JSR(株)「デソライト」、大日精化工業(株)「セイカビーム」、日本合成化学(株)「紫光」、藤倉化成(株)「フジハード」、三菱レイヨン(株)「ダイヤビーム」、武蔵塗料(株)「ウルトラバイン」等が挙げられる。
【0075】
[その他の添加剤]
本発明の硬化性組成物には、更に、目的に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、及びフィラー等を配合することもできる。また、上記のように市販品のハードコート剤を用いる場合であっても、目的に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、及びフィラー等を配合することができる。
【0076】
有機溶剤としては、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル類;酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシルなどのエステル類などを挙げることができる。上記溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤の使用量は特に制限されるものではないが、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対し、50〜10,000質量部が好ましく、特に100〜1,000質量部が好ましい。
【0077】
また、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、及びフィラーとしては、特に制限されず公知のものを本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
【0078】
本発明の硬化性組成物の硬化方法は特に限定されないが、例えば、(B)成分を含有する場合は、活性エネルギー線によって硬化させることができ、更に(C)成分の光重合開始剤を含有する場合は、紫外線によって硬化させることができる。
【0079】
以上のように、本発明の硬化性組成物であれば、ハードコート組成物の硬化性成分と含フッ素アクリル化合物の相溶性が良好であり、紫外線等の活性エネルギー線によって硬化可能であり、防汚性、耐擦傷性に優れた硬化樹脂層を形成することができる硬化性組成物となる。
【0080】
更に、本発明では、上述した本発明の硬化性組成物を表面に塗布し硬化させた基材を提供する。上述のように、本発明の硬化性組成物を用いれば、基材の表面に優れた表面特性を有する硬化被膜(硬化樹脂層)を形成することが可能になる。特に、アクリルハードコートの表面に撥水性、撥油性、防汚性を付与するのに有用である。これによって、指紋、皮脂、汗などの人脂、化粧品等による汚れが付着しにくくなり、かつ拭き取り性にも優れたハードコート表面を基材に与えることができる。このため、本発明の硬化性組成物は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある基材(物品)の表面に対する塗装膜もしくは保護膜を提供することができる。
【0081】
本発明の硬化性組成物を用いて形成される硬化被膜(硬化樹脂層)は、タブレット型コンピュータ、ノートPC、携帯電話・スマートフォン等の携帯(通信)情報端末、デジタルメディアプレイヤー、電子ブックリーダーなど人の手で持ち歩く各種機器の筐体、時計型・眼鏡型ウェアラブルコンピュータ;液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションプロジェクションディスプレイ、CRT、トナー系ディスプレイなどの各種フラットパネルディスプレイ及びTVの画面などの表示操作機器表面、自動車の外装、ピアノや家具の光沢表面、大理石等の建築用石材表面、トイレ、風呂、洗面所等の水周りの装飾建材、美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、フォトフレーム用カバー、腕時計、自動車窓用ガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプなどの透明なガラス製又は透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネートなど)部材、各種ミラー部材等の塗装膜及び表面保護膜として有用である。
【0082】
特に、タッチパネルディスプレイなど人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器、例えば、タブレット型コンピュータ、ノートPC、携帯電話、携帯(通信)情報端末、デジタルメディアプレイヤー、電子ブックリーダー、デジタルフォトフレーム、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、自動車用等のナビゲーション装置、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、デジタルサイネージ(電子看板)、セキュリティーシステム端末、POS端末、リモートコントローラなど各種コントローラ、車載装置用パネルスイッチなどの表示入力装置などの表面保護膜として有用である。
【0083】
更に本発明の硬化性組成物により形成される硬化被膜は、光磁気ディスク、光ディスク等の光記録媒体;メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイスの表面保護被膜としても有用である。
【実施例】
【0084】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0085】
[合成例1]
還流装置と攪拌装置を備えた1L四つ口フラスコに、下記式
【化36】
で表される化合物(I)200g(Si−H価0.00061mol/g)、ポリプロピレングリコールの片末端アリルエーテル(日本油脂(株)製ユニルーブMA−35、分子量639、アルコールの2級含有率100%)89g(アリル基量0.0016mol/g)、m−キシレンヘキサフロライド300gを仕込み、窒素雰囲気下で90℃まで加熱攪拌した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(Pt単体として1.1×10
-6molを含有)を投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続し、
1H−NMRで原料のアリル基、Si−H基に由来するピークが消失したのを確認した。次いで攪拌装置を備えた5Lのフラスコにヘキサン3Lを仕込み、攪拌しながら、室温まで冷却した前記反応溶液を滴下して更に1時間攪拌した。攪拌停止後に2時間静置して、上層のヘキサン層をデカントで取り除き、得られた沈殿物から残存した溶媒をエバポレーターで除去し、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(II)272gを得た。
【化37】
【0086】
化合物(II)の
1H−NMRケミカルシフトを表1に示す。
【表1】
【0087】
[合成例2]
ユニルーブMA−35に代えてリナロールオキシド(ピラノイド)(3−ヒドロキシ−2,2,6−トリメチル−6−ビニルテトラヒドロピラン)22gを使用した以外は、実施例1と同様にして、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(III)201gを得た。
【化38】
【0088】
化合物(III)の
1H−NMRケミカルシフトを表2に示す。
【表2】
【0089】
[合成例3]
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた2,000mL三つ口フラスコに、下記式
CH
2=CH−CH
2−O−CH
2−Rf’−CH
2−O−CH
2−CH=CH
2
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
q(OCF
2)
pOCF
2−
(q/p=0.9、p+q≒45)
で表されるパーフルオロポリエーテル500g[0.125mol]と、m−キシレンヘキサフロライド700g、及びテトラメチルシクロテトラシロキサン361g[1.50mol]を投入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(Pt単体として1.1×10
-6molを含有)を投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続した。
1H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤と過剰のテトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧留去した。その後活性炭処理を行い、下記式で示される無色透明の液状化合物(IV)498gを得た。
【化39】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
q(OCF
2)
pOCF
2−
(q/p=0.9、p+q≒45)
【0090】
乾燥空気雰囲気下で、上記で得られた化合物(IV)50.0g[Si−H基量0.0669mol]に対して、2級のアルコール末端を有するペンタプロピレングリコールモノアリルエーテル27.5g[0.0789mol]、m−キシレンヘキサフロライド50.0g、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10
-7molを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。
1H−NMR及びIRでSi−H基が消失したのを確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。次いで攪拌装置を備えた2Lのフラスコにヘキサン500mLを仕込み、攪拌しながら室温まで冷却した前記反応溶液を滴下して更に1時間攪拌した。攪拌停止後に2時間静置して、上層のヘキサン層をデカントで取り除き、得られた沈殿物から残存した溶媒をエバポレーターで除去し、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(V)45.1gを得た。
【化40】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
q(OCF
2)
pOCF
2−
(q/p=0.9、p+q≒45)
【0091】
化合物(V)の
1H−NMRケミカルシフトを表3に示す。
【表3】
【0092】
[合成例4]
乾燥空気雰囲気下で、合成例3の化合物(IV)50.0g[Si−H基量0.0669mol]、2−アリルオキシエタノール7.05g[アリル基量0.0690mol]、m−キシレンヘキサフロライド50.0g、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10
-7molを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。
1H−NMR及びIRでSi−H基が消失したのを確認した後、溶剤と過剰の2−アリルオキシエタノールを減圧留去し、活性炭処理を行い、下記式で示される淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル含有化合物(VI)55.2gを得た。
【化41】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
q(OCF
2)
pOCF
2−
(q/p=0.9、p+q≒45)
【0093】
化合物(VI)の
1H−NMRケミカルシフトを表4に示す。
【表4】
【0094】
[合成例5]
ユニルーブMA−35に代えてリナロールオキシド(フラノイド)(2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)−5−メチル−5−ビニルテトラヒドロフラン)22gを使用した以外は、実施例1と同様にして、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(VII)198gを得た。
【化42】
【0095】
化合物(VII)の
1H−NMRケミカルシフトを表5に示す。
【表5】
【0096】
[実施例1、2及び比較例1]
合成例で得られた含フッ素アルコール化合物(II)、(III)及び(VII)について各化合物10.0gとメチルエチルケトン10.0g、4−メトキシヒドロキノン0.01gをそれぞれ還流装置と攪拌機を備えた2つ口の100mLナスフラスコに仕込み、更に以下の表6に示す量の2−イソシアナトエチルアクリレートを加え、乾燥雰囲気下で40℃に加熱した。次いで、そこにテトラオクチルチタネートの10質量%メチルエチルケトン溶液0.2gを加え、40℃で加熱を継続した。反応溶液は12時間ごとにサンプリングをして、IRスペクトルの測定を行い、イソシアネート基由来の2,280cm
-1のピークが消失した時間を確認した。結果を表6に併記する。
【0097】
【表6】
【0098】
実施例1と実施例2の反応液は、イソシアネート基のピーク消失後にそれぞれ室温まで冷却したのちに、ヘキサン100gを投入して1時間攪拌した。攪拌終了後、濾紙により濾過を行い、濾紙上に残った成分をm−キシレンヘキサフロライドで溶解させ、80℃/0.13kPaで2時間減圧留去を行い、目的とする含フッ素アクリル化合物を得た。
【0099】
実施例1の化合物を下記に示す。
【化43】
収量 9.2g
【0100】
実施例1の化合物の
1H−NMRケミカルシフトを表7に示す。
【表7】
【0101】
実施例2の化合物を下記に示す。
【化44】
収量 8.5g
【0102】
実施例2の化合物の
1H−NMRケミカルシフトを表8に示す。
【表8】
【0103】
[実施例3、4及び比較例2、3]
合成例で得られた含フッ素アルコール化合物(V)及び(VI)を、ガラスシャーレに仕込み、窒素雰囲気下で100℃/12時間加熱したサンプルをそれぞれ(V’)、(VI’)とした。
合成例で得られた含フッ素アルコール化合物(V)及び(VI)と、これらを加熱処理した(V’)及び(VI’)について各化合物10.0gとメチルエチルケトン10.0g、4−メトキシヒドロキノン0.01gをそれぞれ還流装置と攪拌機を備えた2つ口の100mLナスフラスコに仕込み、更に以下の表9に示す量の2−イソシアナトエチルアクリレートを加え、乾燥雰囲気下で40℃に加熱した。次いで、そこにテトラオクチルチタネートの10質量%メチルエチルケトン溶液0.2gを加え、40℃で加熱を継続した。各反応溶液を12時間後にサンプリングして、IRスペクトルの測定を行い、いずれの場合もイソシアネート基由来の2,280cm
-1のピークの消失を確認した。
【0104】
反応液は、イソシアネート基のピーク消失後にそれぞれ室温まで冷却したのちに、ヘキサン100g中に投入して1時間攪拌した。攪拌終了後、濾紙により濾過を行い、濾紙上に残った成分をm−キシレンヘキサフロライドで溶解させ、50℃/0.13kPaで2時間減圧留去を行い、目的とする含フッ素アクリル化合物を得た。
得られた含フッ素アクリル化合物を、メチルイソブチルケトンで20質量%に希釈した溶液5質量部と1,6−ヘキサンジオールジアクリレート100質量部を混合し、室温で1時間静置した後に、目視確認をして濁りが発生していなければ溶解とした。これらの結果を表9に併記する。
【0105】
【表9】
【0106】
実施例3及び4の化合物を下記に示す。
【化45】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
q(OCF
2)
pOCF
2−
(q/p=0.9、p+q≒45)
【0107】
実施例3及び4の化合物の
1H−NMRケミカルシフトを表10に示す。
【表10】
【0108】
[硬化物の作製と硬化物表面の防汚性の評価]
(A)成分として実施例1〜3及び比較例2の化合物を1質量部、(B)成分として4官能アクリレート(EBECRYL 40(ダイセル・オルネクス社製)を100質量部、(C)成分として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを3質量部、及び溶剤として2−プロパノールを142質量部混合し、硬化性組成物を調製した。
調製した各組成物をポリカーボネート基板上にワイヤーバーNo.7で塗工した(ウエット膜厚16.0μm)。塗工後100℃、1minの乾燥を行った後、コンベヤ式メタルハライドUV照射装置(パナソニック電工製)を使用し、窒素雰囲気中で、積算照射量1,600mJ/cm
2の紫外線を塗工面に照射して組成物を硬化させた。得られた硬化膜の水接触角、オレイン酸接触角、マジックハジキ性を測定・評価した。比較のため(A)成分を含まないサンプルについても比較例4として同様の評価を行った。これらの結果を表11に示す。
【0109】
(測定・評価方法)
1)水接触角測定
接触角計(共和界面科学社製 DropMaster)を用い、2μLの液滴を硬化膜上に滴下して1秒後の接触角を測定した。N=5の平均値を測定値とした。
【0110】
2)オレイン酸接触角測定
接触角計(共和界面科学社製 DropMaster)を用い、7μLの液滴を硬化膜上に滴下して1秒後の接触角を測定した。N=5の平均値を測定値とした。
【0111】
3)マジックハジキ性の評価
硬化膜表面にマジックペン(ゼブラ社 ハイマッキー(登録商標)太字)で直線を描き、そのはじき具合を目視観察によって評価した。
【0112】
【表11】