特許第6402703号(P6402703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6402703-欠陥領域の判定方法 図000002
  • 特許6402703-欠陥領域の判定方法 図000003
  • 特許6402703-欠陥領域の判定方法 図000004
  • 特許6402703-欠陥領域の判定方法 図000005
  • 特許6402703-欠陥領域の判定方法 図000006
  • 特許6402703-欠陥領域の判定方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402703
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】欠陥領域の判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   H01L21/66 N
   H01L21/66 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-224369(P2015-224369)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-92400(P2017-92400A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】冨井 和弥
(72)【発明者】
【氏名】菊地 博康
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−501533(JP,A)
【文献】 特開2006−112871(JP,A)
【文献】 特開2003−142544(JP,A)
【文献】 特開2006−278515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの欠陥領域を判定する方法であって、
(1)前記シリコンウェーハを、波長266nmのレーザーを用いたパーティクルカウンタによるヘイズ測定における表面のヘイズレベルが0.06ppm以下となるように鏡面加工する工程、
(2)15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なパーティクルカウンタを用いて、前記鏡面加工したシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を測定する工程、
(3)該測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布から前記シリコンウェーハの欠陥領域を判定する工程、
を有することを特徴とする欠陥領域の判定方法。
【請求項2】
前記欠陥領域として、V領域、OSF領域、N領域を判定することを特徴とする請求項1に記載の欠陥領域の判定方法。
【請求項3】
前記(3)工程より前に、前記シリコンウェーハと同じ酸素濃度でかつ欠陥領域が既知のシリコンウェーハの表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を前記(2)工程で用いるパーティクルカウンタで測定し、欠陥領域とシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布の対応関係を予め求めておき、前記(3)工程において、前記予め求めておいた対応関係に基づいて、前記(2)工程で測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布から前記シリコンウェーハの欠陥領域を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の欠陥領域の判定方法。
【請求項4】
前記シリコンウェーハを、酸素濃度が5〜20ppma(JEIDA)のものとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の欠陥領域の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの欠陥領域をパーティクルカウンタを用いて判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョクラルスキー(CZ)法で製造されたシリコン単結晶には、FPD(Flow Pattern Defect)、LSTD(Laser Scattering Tomography Defect)、COP(Crystal Originated Particle)などのグローンイン(Grown−in)欠陥と呼ばれる欠陥が存在し、これらはデバイス特性を悪化させる一因となるため、これらの欠陥を低減することが重要視されている。
【0003】
これらの欠陥を説明するに当たって、まず、シリコン単結晶に取り込まれるVacancy(以下、V)と呼ばれる空孔型の点欠陥と、Interstitial−Si(以下、I)と呼ばれる格子間型シリコン点欠陥のそれぞれについて、一般的に知られていることを説明する。
【0004】
シリコン単結晶において、V領域とは、シリコン原子の不足から発生する凹部や穴のようなものが多い領域であり、I領域とは、シリコン原子が余分に存在することにより発生する転位や余分なシリコン原子の塊が多い領域である。特に、V領域で発生するFPD、LSTD、COP等のグローンイン欠陥は、デバイス工程において酸化膜耐圧特性を悪化させる一因であることが知られている。また、V領域とI領域の間には、原子の不足や余分が無い(少ない)Neutral領域(以下、N領域)が存在する。そして、上記のグローンイン欠陥(FPD、LSTD、COP等)とは、あくまでもVやIが過飽和な状態のときに発生するものであり、多少の原子の偏りがあっても、飽和以下であれば、グローンイン欠陥としては存在しないことが分かっている。
【0005】
更に、V領域とI領域との境界近辺にはOSF(酸化誘起積層欠陥、Oxidation Induced Stacking Fault)と呼ばれる欠陥が、結晶成長軸に対する垂直方向の断面で見たときに、リング状に分布していることが確認されている(以下、OSFが発生する領域を「OSF領域」と記す)。また、これらの欠陥領域は、結晶育成時の引上げ速度などによって変化することが知られている。
【0006】
前述のグローンイン欠陥を評価する方法としては、特許文献1や特許文献2のような熱処理や酸化処理を用いる方法や、特許文献3のようなエッチングを用いる方法が一般的である。また、欠陥領域、特にN領域を判定する方法としても、特許文献4のように酸化処理を行う方法が知られており、更にこれにCuデポジション法を併せて実施する方法も知られている。
【0007】
また、特許文献5のように、単結晶製造時に炉内温度などの製造条件を調節することによってV領域やN領域などの所望の欠陥領域を有するシリコン単結晶を製造する方法も提案されているが、特にN領域に求められる製造条件は難しく、安定した製品が得られにくい。従って、このような方法で単結晶の製造を行う場合においても、品質検査としての欠陥領域の判定をすることは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−297995号公報
【特許文献2】特開2000−269288号公報
【特許文献3】特開2000−058509号公報
【特許文献4】特開2004−153083号公報
【特許文献5】特開平11−79889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
インゴットから切り出したウェーハの欠陥領域(V領域、OSF領域、N領域)を判定する場合、上記の特許文献1〜4のように熱処理等を実施し、その後OSF検査や酸化膜耐圧評価、ウェーハライフタイム検査などを行うことが一般的である。しかし、これらの方法では前述の熱処理だけで20時間程度を要し、その後のOSF検査などを含めると判定までに最短でも丸1日が必要となる。更に、これらの検査は破壊検査であるため製品の収率を落とす原因でもあった。
【0010】
本発明は、前述のような問題に鑑みてなされたものであり、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの欠陥領域を短時間にかつ非破壊検査にて判定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの欠陥領域を判定する方法であって、(1)前記シリコンウェーハを、波長266nmのレーザーを用いたパーティクルカウンタによるヘイズ測定における表面のヘイズレベルが0.06ppm以下となるように鏡面加工する工程、(2)15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なパーティクルカウンタを用いて、前記鏡面加工したシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を測定する工程、(3)該測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布から前記シリコンウェーハの欠陥領域を判定する工程、を有する欠陥領域の判定方法を提供する。
【0012】
このような方法であれば、欠陥領域を判定するシリコンウェーハのヘイズレベルを所定の値以下とし、所定の検出精度のパーティクルカウンタを用いることで、結晶欠陥を感度良く検出することができ、測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布からシリコンウェーハの欠陥領域を短時間にかつ非破壊検査にて判定することができる。
【0013】
また、前記欠陥領域として、V領域、OSF領域、N領域を判定することが好ましい。
【0014】
本発明の欠陥領域の判定方法は、V領域、OSF領域、N領域の判定に特に有効である。
【0015】
また、前記(3)工程より前に、前記シリコンウェーハと同じ酸素濃度でかつ欠陥領域が既知のシリコンウェーハの表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を前記(2)工程で用いるパーティクルカウンタで測定し、欠陥領域とシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布の対応関係を予め求めておき、前記(3)工程において、前記予め求めておいた対応関係に基づいて、前記(2)工程で測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布から前記シリコンウェーハの欠陥領域を判定することが好ましい。
【0016】
このように、欠陥領域とシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布の対応関係を予め求めておくことで、シリコンウェーハの欠陥領域をより短時間で判定することができる。
【0017】
また、前記シリコンウェーハを、酸素濃度が5〜20ppma(JEIDA)のものとすることが好ましい。
【0018】
このような酸素濃度のものであれば、欠陥領域ごとの欠陥数や欠陥密度分布の違いがより明確になるため、シリコンウェーハの欠陥領域をより正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の欠陥領域の判定方法であれば、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハにおいて、V領域、OSF領域、N領域などの欠陥領域を正確に判定することができ、また判定にかかる時間を大幅に短縮することができる。更に、本発明の欠陥領域の判定方法であれば、この判定をパーティクルカウンタを用いて非破壊検査で行うため、製品の収率低下を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の欠陥領域の判定方法の一例を示すフロー図である。
図2】CZ法で引上げ速度を減少させながら成長させたシリコン単結晶における各欠陥領域を示す模式図である。
図3図2のシリコン単結晶において、A−A、B−B、C−Cの箇所から切り出したシリコンウェーハ面内の欠陥を模式的に示すウェーハマップである。
図4】実施例1で測定したウェーハ(i)〜(iii)の欠陥密度分布を示すウェーハマップである。
図5】比較例1で測定したウェーハ(i)〜(iii)の欠陥密度分布を示すウェーハマップである。
図6】比較例2で測定したウェーハ(i)〜(iii)の欠陥密度分布を示すウェーハマップである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述のように、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの欠陥領域を短時間にかつ非破壊検査にて判定する方法の開発が求められていた。
【0022】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、欠陥領域を判定するシリコンウェーハのヘイズレベルを所定の値以下とし、更に所定の検出精度のパーティクルカウンタを用いて結晶欠陥を測定して、その結果から欠陥領域を判定することで、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0023】
即ち、本発明は、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの欠陥領域を判定する方法であって、(1)前記シリコンウェーハを、波長266nmのレーザーを用いたパーティクルカウンタによるヘイズ測定における表面のヘイズレベルが0.06ppm以下となるように鏡面加工する工程、(2)15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なパーティクルカウンタを用いて、前記鏡面加工したシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を測定する工程、(3)該測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布から前記シリコンウェーハの欠陥領域を判定する工程、を有する欠陥領域の判定方法である。
【0024】
なお、ここでパーティクルカウンタについて簡単に説明する。パーティクルカウンタは一般的に入射系と検出系とを備えており、シリコンウェーハに入射光を照射し、その散乱光の強度から、このシリコンウェーハ表面に存在する欠陥をLPD(Light Point Defect)として検出する。パーティクルカウンタが前述のLPD数をカウントする際に、ウェーハ表面に存在する数〜数十nm程度の粗さが妨害要因となることが知られている。この数〜数十nm程度の粗さがヘイズである。通常、ヘイズによる散乱光の大きさは入射光強度に対する比で表し、例えば、入射光強度1に対し散乱光の強度がその100万分の1の場合は、散乱光の強度(即ち、ヘイズレベル)を1ppmと表す。
【0025】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の欠陥領域の判定方法の一例を示すフロー図である。図1の欠陥領域の判定方法では、以下の(1)〜(3)工程で欠陥領域を判定する。
(1)CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハを、表面のヘイズレベルが0.06ppm以下となるように鏡面加工する工程
(2)15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なパーティクルカウンタを用いて、鏡面加工したシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を測定する工程
(3)測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布からシリコンウェーハの欠陥領域を判定する工程
以下、各工程について更に詳しく説明する。
【0027】
[(1)工程]
(1)工程では、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハを、表面のヘイズレベルが0.06ppm以下となるように鏡面加工する。
【0028】
(1)工程の前段階として、CZ法で製造されたシリコン単結晶から欠陥領域を判定するシリコンウェーハを切り出す(スライス工程)。次いで、鏡面加工の前に、面取り工程、ラッピング・平面研削・両頭研削工程、エッチング工程等を行ってもよい。なお、これらの工程は公知の方法で行えばよい。
【0029】
次に、このようにして用意したシリコンウェーハを鏡面加工する。鏡面加工は研磨工程と洗浄工程からなり、研磨工程では、上記のようにエッチング等を行ったシリコンウェーハの平坦度を更に向上させ、またそのシリコンウェーハの表面を鏡面化させる。なお、ここで述べた「平坦度」には、様々な周波数成分があり、大きな波長のWarp(反り)やうねり、小さな波長の粗さやマイクロラフネス、ヘイズなどが含まれる。
【0030】
ヘイズに関連した周波数成分は、研磨工程に使用する研磨剤、研磨布、研磨温度などを調節することで、低減させることができる。より具体的には、例えば、研磨剤に含まれるシリカの平均粒径を30nm以下とし、研磨布には細長い微細な穴(ナップ)を多数形成したナップ層を設け、そのナップ層はエーテル系樹脂などで軟質に仕上げることが好ましいが、もちろんこれらに限定されない。
【0031】
上記の研磨工程後の洗浄工程では、研磨工程で使用された研磨液や研磨剤をシリコンウェーハから除去し、またシリコンウェーハ表層に付着した金属不純物や環境起因のパーティクルを除去する。
【0032】
なお、洗浄工程においては、上記の研磨工程で作り上げたシリコンウェーハ表面のヘイズ品質を悪化させないことが重要であり、洗浄液や洗浄温度などを調節することで、ヘイズ品質を悪化させずに洗浄することができる。より具体的には、例えば、洗浄工程として一般的なSC1での洗浄後に、フッ酸と更にオゾンを用いた洗浄を実施し、シリコンウェーハのエッチング代を0.1〜2.0nmとすることが好ましいが、もちろんこれらに限定されない。
【0033】
これら研磨条件や洗浄条件等は、波長266nmのレーザーを用いたパーティクルカウンタによるヘイズ測定で、ヘイズレベルが0.06ppm以下となるようにすることができる条件であれば、従来公知のいずれの条件も採用できる。
【0034】
次に、鏡面加工後のシリコンウェーハ表面のヘイズレベルを測定する。このとき、本発明では、波長266nmのレーザーを用いたパーティクルカウンタによるヘイズ測定を行う。このようなヘイズ測定に用いることができる装置としては、例えば、KLA−Tencor社製SurfScan SP3のDWOモード等を挙げることができる。なお、レーザーの波長によりヘイズの検出精度が異なるため、レーザーの波長が異なるパーティクルカウンタを使用した場合には同じヘイズの値にならない点に注意が必要である。
【0035】
本発明では、上記のようにして測定した鏡面加工後のシリコンウェーハ表面のヘイズレベルが0.06ppm以下となるように鏡面加工を行う。即ち、測定したヘイズレベルが0.06ppmを超えている場合には、同じウェーハに対し再度鏡面加工を行う、あるいは別のウェーハで鏡面加工をやり直すなどして、鏡面加工後の表面のヘイズレベルが0.06ppm以下のシリコンウェーハを用意する。
【0036】
[(2)工程]
(2)工程では、15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なパーティクルカウンタを用いて、上記(1)工程で鏡面加工したシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を測定する。
【0037】
パーティクルカウンタを用いることで、上記のようにシリコンウェーハ表面に存在する結晶欠陥をLPDとして検出し、そのLPD数をカウントすることで、シリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を測定することができる。
【0038】
なお、本発明では、このとき15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なパーティクルカウンタを使用する。これよりも検出精度の低いパーティクルカウンタ(例えば、20nm程度のサイズの欠陥までしか測定できないもの)を使用した場合には、各欠陥領域ごと(特に、OSF領域とN領域)の欠陥数や欠陥密度分布の違いが不明確になるため、これらの領域を判別できなくなる。なお、15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なパーティクルカウンタとしては、例えば、KLA−Tencor社製SurfScan SP5等を挙げることができる。
【0039】
[(3)工程]
(3)工程では、上記(2)工程で測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布からシリコンウェーハの欠陥領域を判定する。なお、本発明の欠陥領域の判定方法は、V領域、OSF領域、N領域の判定に特に有効である。
【0040】
ここで、各欠陥領域とマップの特徴について説明する。図2は、CZ法で引上げ速度を減少させながら成長させたシリコン単結晶における各欠陥領域を示す模式図である。図2に示されるように、CZ法で引上げ速度を減少させながら成長させたシリコン単結晶1には、V領域2、N領域3、OSF領域4、及びI領域5が存在する。これらの各欠陥領域の特徴については上述の通りである。また、図2中の、A−A、B−B、C−Cは、シリコン単結晶1から各欠陥領域を含むシリコンウェーハを切り出す場合の切り出し箇所を示しており、図3は、この図2中のA−A、B−B、C−Cの箇所から切り出したシリコンウェーハ面内の欠陥密度分布を模式的に示している。
【0041】
図3に示されるように、A−Aの箇所から切り出した全面V領域のシリコンウェーハでは、シリコンウェーハ全面にFPD、LSTD、COPなどのグローンイン欠陥が発生する。また、B−Bの箇所から切り出したV領域、N領域、及びOSF領域を含むシリコンウェーハでは、熱酸化処理によって顕在化するリング状の欠陥(OSFリング)が発生し、更に中央部にはV領域で示したグローンイン欠陥が発生する。一方、C−Cの箇所から切り出した全面N領域のシリコンウェーハでは、熱処理等を施しても欠陥の発生が非常に少ない。このように、本来、各欠陥領域ごとに欠陥数や欠陥密度分布が異なるため、パーティクルカウンタの欠陥の検出感度を高めることができれば、エッチングや熱処理等を施さなくてもパーティクルカウンタで測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布からシリコンウェーハの欠陥領域を判定することができると考えられる。
【0042】
そこで、(3)工程より前に、欠陥領域を判定するシリコンウェーハと同じ酸素濃度でかつ欠陥領域が既知の別のシリコンウェーハの表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布を上記の(2)工程で使用するパーティクルカウンタを用いて測定し、欠陥領域とシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布の対応関係を予め求めておき、(3)工程において、予め求めておいた対応関係に基づいて、(2)工程で測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布からシリコンウェーハの欠陥領域を判定することができる。このように、欠陥領域とシリコンウェーハ表面の欠陥数及び/又は欠陥密度分布の対応関係を予め求めておくことで、シリコンウェーハの欠陥領域をより短時間で判定することができる。
【0043】
また、本発明では、欠陥領域を判定するシリコンウェーハを、酸素濃度(初期酸素濃度)が5〜20ppma(JEIDA)のものとすることが好ましい。これは、パーティクルカウンタで測定される欠陥数がシリコンウェーハの酸素濃度と関係しているためである。酸素濃度が5ppma以上であれば、V領域及びOSF領域の欠陥数が増加するので、V領域、OSF領域、N領域の各領域ごとの欠陥数や欠陥密度分布の違いがより明確となり、パーティクルカウンタによる欠陥数及び/又は欠陥密度分布の測定結果のみでも(即ち、上記のように予め求めておいた対応関係に基づいた判定を行わなくとも)欠陥領域のより正確な判定が可能となる。酸素濃度が8ppma以上であれば、欠陥領域ごとの違いが更に明確となるので、更に好ましい。また、酸素濃度が20ppma以下であれば、V領域の測定においてパーティクルカウンタの欠陥数がオーバーフローする恐れがないため、好ましい。
【0044】
以上のように、本発明の欠陥領域の判定方法であれば、CZ法で製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハにおいて、V領域、OSF領域、N領域などの欠陥領域を正確に判定することができ、また判定にかかる時間を大幅に短縮することができる。更に、本発明の欠陥領域の判定方法であれば、この判定をパーティクルカウンタを用いて非破壊検査で行うため、製品の収率低下を防止することもできる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
実施例1及び比較例1、2では、同じシリコン単結晶から切り出した欠陥領域が既知のシリコンウェーハを使用した。なお、シリコン単結晶は、CZ法で引上げ速度を変えながら成長させた直径300mm、初期酸素濃度11ppma(JEIDA)のものとした。また、シリコンウェーハとしては、(i)全面がV領域のもの、(ii)V領域、OSF領域、及びN領域を含むもの、(iii)全面がN領域のもの、の3種類を用意し、それぞれ常法に従って、面取り工程、ラッピング・平面研削・両頭研削工程、エッチング工程を行った。
【0047】
[実施例1]
上記のようにして用意したシリコンウェーハ(i)〜(iii)に対して、常法に従って、研磨工程及び洗浄工程を行い、鏡面加工した。次に、この鏡面加工後のウェーハ表面のヘイズレベルをKLA−Tencor社製SurfScan SP3のDWOモード(レーザー波長:266nm)で測定し、いずれのウェーハでもヘイズレベルが0.055〜0.060ppmであることを確認した。次に、15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なKLA−Tencor社製SurfScan SP5を用いて、鏡面加工したウェーハ表面の欠陥数及び欠陥密度分布を測定した。14nm以上の欠陥を検出させた各ウェーハの欠陥密度分布(ウェーハマップ)を図4に示す。なお、欠陥数はウェーハ(i)で約60,000個、ウェーハ(ii)で約10,000個、ウェーハ(iii)で約200個であった。
【0048】
まず、欠陥数のみを比較すると、ウェーハ(i)、ウェーハ(ii)、ウェーハ(iii)でそれぞれ欠陥数に顕著な違いがあり、これらのウェーハをそれぞれ区別することができた。次に、欠陥密度分布を比較すると、図4に示されるように、ウェーハ(i)ではウェーハ全面にグローンイン欠陥が顕在化しており、ウェーハ(ii)では外周付近のリング状の欠陥(OSFリング)と中央部にはV領域起因と思われる欠陥が顕在化しており、ウェーハ(iii)ではウェーハ全面にわたって欠陥が非常に少ないことから、これらのウェーハをそれぞれ区別することができた。これらの結果から、シリコンウェーハ(i)は全面V領域であり、シリコンウェーハ(ii)はV領域、OSF領域、及びN領域を含み、シリコンウェーハ(iii)は全面N領域であると判定することができた。
【0049】
更に、上記のようにして測定したウェーハ(i)〜(iii)の欠陥数及び欠陥密度分布と、予め求めておいた初期酸素濃度11ppma(JEIDA)のシリコン単結晶における欠陥領域とシリコンウェーハ表面の欠陥数及び欠陥密度分布の対応表(不図示)をもとに欠陥領域の判定を行ったところ、シリコンウェーハ(i)は全面V領域であり、シリコンウェーハ(ii)はV領域、OSF領域、及びN領域を含み、シリコンウェーハ(iii)は全面N領域であると判定することができた。
【0050】
[比較例1]
実施例1で欠陥数及び欠陥密度分布を測定した鏡面加工後のシリコンウェーハに対し、20nmまでのサイズの欠陥しか測定できないKLA−Tencor社製SurfScan SP3のDWOモードを用いて、欠陥数及び欠陥密度分布を測定した。26nm以上の欠陥を検出させた欠陥密度分布(ウェーハマップ)を図5に示す。なお、欠陥数はウェーハ(i)で約200個、ウェーハ(ii)で約40個、ウェーハ(iii)で約40個であった。
【0051】
まず、欠陥数のみを比較すると、ウェーハ(i)の欠陥数はウェーハ(ii)及びウェーハ(iii)の欠陥数に比べると多いものの、ウェーハ(ii)とウェーハ(iii)の欠陥数はほぼ同数であり、ウェーハ(ii)とウェーハ(iii)を区別することができなかった。次に、欠陥密度分布を比較すると、図5に示されるように、ウェーハ(i)ではウェーハ(ii)及びウェーハ(iii)に比べるとウェーハ中央部に多くの欠陥が見られるものの、ウェーハ(ii)とウェーハ(iii)ではウェーハ全面にわたって欠陥が非常に少なく、ウェーハ(ii)とウェーハ(iii)を区別することができなかった。このように、欠陥検出能力が20nmレベルの(即ち、15nm以下のサイズの欠陥の測定が不可能な)パーティクルカウンタを使用した場合には、鏡面加工後のヘイズレベルを0.06ppm以下にしても欠陥領域の判定ができないことが分かる。
【0052】
[比較例2]
実施例1と同様にしてシリコンウェーハ(i)〜(iii)を準備し、研磨条件を変更して鏡面加工を行い、いずれのウェーハでも鏡面加工後のウェーハ表面のヘイズレベルが0.068〜0.072ppmであることを確認した。次に、15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能なKLA−Tencor社製SurfScan SP5を用いて、鏡面加工したウェーハ表面の欠陥数及び欠陥密度分布を測定した。14nm以上の欠陥を検出させた欠陥密度分布(ウェーハマップ)を図6に示す。なお、いずれのウェーハでもパーティクルカウンタの欠陥数がオーバーフローしており、欠陥数は測定できなかった。
【0053】
上記のように、いずれのウェーハでもパーティクルカウンタの欠陥数がオーバーフローしており、また図6に示されるように、正確な欠陥密度分布が得られなかったため、ウェーハ(i)〜(iii)を区別することができなかった。これは、鏡面加工後のヘイズ成分の低減が不十分であるために、シリコンウェーハ表面の欠陥成分とヘイズ成分が、パーティクルカウンタではともに欠陥として検出されたためである。このことから、鏡面加工後のヘイズレベルが0.06ppmを超える場合には、欠陥検出能力が10nmレベルの(即ち、15nm以下のサイズの欠陥の測定が可能な)パーティクルカウンタを使用しても、欠陥領域の判定ができないことが分かる。
【0054】
以上のことから、本発明の欠陥領域の判定方法のように、欠陥領域を判定するシリコンウェーハのヘイズレベルを所定の値以下とし、所定の検出精度のパーティクルカウンタを用いることで、結晶欠陥を感度良く検出することができ、測定した欠陥数及び/又は欠陥密度分布からシリコンウェーハの欠陥領域を短時間にかつ非破壊検査にて判定できることが明らかとなった。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
1…シリコン単結晶、 2…V領域、 3…N領域、 4…OSF領域、
5…I領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6