特許第6402969号(P6402969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402969シラン化合物およびその重合体、ならびにその重合体からなる液晶配向層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402969
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】シラン化合物およびその重合体、ならびにその重合体からなる液晶配向層
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20181001BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20181001BHJP
   C09K 19/56 20060101ALI20181001BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20181001BHJP
   C08G 77/18 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   C07F7/18 JCSP
   C07F7/18 G
   C07F7/18 Y
   G02F1/1337 530
   C09K19/56
   C09K19/38
   C08G77/18
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-83561(P2014-83561)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-203019(P2015-203019A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 浩史
(72)【発明者】
【氏名】西山 伊佐
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−130282(JP,A)
【文献】 特開2007−197399(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106896(WO,A1)
【文献】 特表2007−519617(JP,A)
【文献】 特開平10−078584(JP,A)
【文献】 特開2001−064143(JP,A)
【文献】 Angew. Chem. Int. Ed. ,2011年,50,5834−5838
【文献】 Synthetic Communicatins,2009年,39,2178−2195
【文献】 Eur. J. Org. Chem.,2006年,2851−2855
【文献】 Colloid Polym Sci,2012年,290,1765−1775
【文献】 Mol. Materials,1998年,9,333−342
【文献】 LIQUID CRYSTALS,1996年,20,5,635−640
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C08G 77/18
C09K 19/38
C09K 19/56
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、P1、P2及びP3はそれぞれ独立して、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、単結合、 -(CH2)u-(uは1から20の整数を表し、1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-NRCONR-、-CH=CH-、-CC-、-OCOO-で置換されていても良い。Rは水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2CF2-、-CC-を表し、A1及びA2はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン、トランス−1,4−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、p及びqはそれぞれ独立して0又は1を表し、X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-CO-O-、-O-CO-又は-CH=CH-で置換されていても良く、
Zは、一般式(IIa)で表され、
【化2】
(式中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表し、R1は水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基であって、かつ、R1中の1つの-CH2-基または2以上の非隣接の-CH2-基は-O-で置換されている)を表し、rは1又は2を表す)で表されるシラン化合物。
【請求項2】
一般式(I)
【化3】
(式中、P1、P2及びP3はそれぞれ独立して、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、単結合、 -(CH2)u-(uは1から20の整数を表し、1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-NRCONR-、-CH=CH-、-CC-、-OCOO-で置換されていても良い。Rは水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2CF2-、-CC-を表し、A1及びA2はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン、トランス−1,4−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、p及びqはそれぞれ独立して0又は1を表し、X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-CO-O-、-O-CO-又は-CH=CH-で置換されていても良く、
Zは、一般式(IIa)で表され、
【化4】
(式中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表し、R1は水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基であって、かつ、R1中の1つの-CH2-基または2以上の非隣接の-CH2-基は-O-で置換されている)を表し、rは1又は2を表す)で表されるシラン化合物を含有する組成物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン。
【請求項3】
組成物が、一般式(II)
【化5】
(式中、P4、P5、P6はそれぞれ独立して、塩素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基であり、Z4、Z5、Z6、Z7 はそれぞれ独立して、単結合、 -(CH2)u-(uは1から20の整数を表し、一つ以上の-CH2-基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-NRCONR-、-CH=CH-、-CC-、-OCOO-で置換されていても良い。Rは水素原子または炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2CF2-、-CC-を表し、A3、A4、A5はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン、トランス−1,4−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、s、t、vはそれぞれ独立的に0、または1を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、アルケニルオキシ基、ステロイド骨格を有する一価の有機基を表す)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項2記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のポリオルガノシロキサンを用いた垂直配向モード液晶表示素子用の液晶配向層。
【請求項5】
請求項4記載の液晶配向層を用いた垂直配向モード液晶表示素子。
【請求項6】
請求項2又は3に記載のポリオルガノシロキサンを用いた水平配向モード液晶表示素子用の液晶配向層。
【請求項7】
請求項6記載の液晶配向層を用いた水平配向モード液晶表示素子。
【請求項8】
重合性液晶組成物のポリマーにより構成される光学異方体において、該重合性液晶組成物中の重合性液晶分子を、請求項4又は6の何れか一項に記載の液晶配向層を用いて配向させたことを特徴とする光学異方体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子における液晶の配向層を製造するための材料、もしくは、液晶表示素子の光学補償等に使用する光学異方性フィルム等に利用できる材料、ならびにその原料となるシラン化合物およびその重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶を配向させるための配向層は、液晶の配列の秩序を保ち液晶分子の有する屈折率異方性に基づく光学特性を発現するために重要なものであり、液晶表示素子を構成するために必須の構成部材である。液晶表示素子において、液晶の配向は、その表示特性に大きな影響を及ぼすことから種々の方式が検討されてきており、大きく分けて垂直配向型と水平配向型の二通りに分類できる。
【0003】
垂直配向型の液晶層を用いた液晶表示装置(VAモード液晶表示装置と呼ばれることもある。)は、高コントラストなどの優れた表示特性から広くディスプレイに使用されている。しかし、その視野角特性は必ずしも十分とは言えず、改善のために様々な手法が検討されてきた。視野角特性の改善方法として、一つの画素中に各々配向方向の異なる複数の液晶ドメインを形成する(配向分割構造を導入する)マルチドメイン垂直配向方式(MVA方式)が一般化している。MVA方式においては、配向分割構造を形成するためには、液晶分子の傾斜配向を制御することが必要であり、その手法としては、電極に設けたスリット(開口部)あるいはリブ(突起構造)を設置する方法が用いられている。しかし、スリットやリブを用いると、従来のTNモードで用いられていた配向膜によってプレチルト方向を規定した場合と異なり、スリットやリブが線状であることから、液晶分子に対する配向規制力が画素内で不均一となるため、応答速度に分布が生じるといった問題がある。更に、スリットやリブを設けた領域の光の透過率が低下するので、表示輝度が低下するという問題もある。
【0004】
傾斜配向を制御する別の方法として、光又は熱により重合可能なモノマーを液晶に混入しておき、電圧印加によって液晶分子が傾斜した状態でモノマーを重合させることで液晶分子の傾斜方向を記憶させるポリマー配向支持(PSA;Polymer Sustained Alignment)技術が開示されている(特許文献1参照)。この方法は、スリットやリブを設けた方法における、応答速度の分布や光透過率の低下の問題を解決し得るものである。しかし、この方法では液晶材料中にモノマーを混入することによる特性の変化、プロセス制御の難しさ、残存モノマーの悪影響等の問題点がある。
【0005】
これらの問題を回避するためには、VAモード液晶表示装置についても、配向膜により傾斜配向を制御することによって配向分割構造を形成することが好ましい。垂直配向膜に傾斜配向を制御する力を付与する方法としては、ラビング法があり、ポリイミド等からなる配向膜を基板上に塗布し、さらに配向膜をラビング布でこする事により配向方向およびプレチルト角の制御が行われる。しかし、ラビング法では精密な配向分割構造を形成することが困難であり、摩擦による静電気や不純物成分の発生という問題がある。
【0006】
一方、水平配向型の液晶層を用いた液晶表示装置の一つとして、IPSモード液晶表示装置が挙げられる。IPSモード液晶表示装置は、コントラストや色味などの視野角依存性が小さく、その優れた表示特性から広くディスプレイに使用されている。IPSモードでは、黒表示における視野角依存性および色再現性を低減するためには、電極表面で1度以下の低プレチルト角であることが要求される。水平配向を達成する場合においても、一般的な配向方法としてラビング法が用いられている。しかし、ポリイミド配向膜のラビン
【0007】
グ処理によって水平配向処理を行うと、液晶分子に与えるプレチルト角は1度を超えてしまうため、表示特性が低下するといった問題がある。
【0008】
こうした問題から、垂直配向型、水平配向型のいずれの配向方式においても、配向膜を用いた配向方向およびプレチルト角の制御は表示特性の向上のために重要である。配向膜により傾斜配向を制御する方法としては、ラビング処理によるものの他に、光配向法が知られている(特許文献2参照)。光配向法においては、光の照射パターンを変化させることにより精密な配向分割構造を容易に形成でき、ラビング処理と比較して、配向膜に対して非接触で処理を施すことができるので静電気や不純物の発生は起こりにくいことから、上述の問題を解決し、表示特性を向上できるものと期待される。
【0009】
上記の液晶表示素子用の光配向層となり得る材料としては、アゾベンゼン誘導体のように光化学的に異性化可能な部位を有する化合物(特許文献3参照)、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体等の光化学的に架橋可能な部位を有する化合物(特許文献4、5、6、7参照)、ポリイミド誘導体等異方的な光分解を生じる化合物等が知られている。しかしながら、これらの化合物を用いた光配向法では、通常の配向膜を利用する場合と比較して、電圧保持率(VHR)が低い、残留電荷に起因する残留電圧(RDC)が高い、焼き付きが起こりやすいなどの問題を有している。したがって、液晶の傾斜配向を制御する性能を発現し、かつ、アクティブマトリクス駆動においても使用できる信頼性等の諸特性が必要であり、これらを満たす液晶用光配向層が求められていた。
【0010】
以上のように、液晶の配向およびプレチルト角の制御に優れ、さらには高い電圧保持率(VHR)を有すると共に、残留電圧(RDC)が低く、焼き付きが発生しにくい液晶配向層が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−149647号公報
【特許文献2】特許2682771号
【特許文献3】特開平5−232473号公報
【特許文献4】特開平6−287453号公報
【特許文献5】特開平9−118717号公報
【特許文献6】特表2002−517605号公報
【特許文献7】特開2009−258650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、液晶の配向およびプレチルト角の制御に優れ、高い電圧保持率(VHR)を有するとともに、残留電圧(RDC)が低い液晶配向層を提供し、さらに該液晶配向層に用いる重合体、該重合体を構成する化合物、該液晶配向層を用いた液晶表示素子を提供することにある。また、該液晶配向層により重合性液晶組成物を配向させることで得られる光学異方体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、上記課題を解決するために様々な材料を鋭意検討した結果、特定のシラン化合物から得られるポリマー(重合体)を基板上に塗布し、硬化することで、電圧保持率(VHR)、残留電圧(RDC)、焼き付きなどの点において改良された液晶配向層が得られることを見出し本願発明の完成に至った。
本発明は、一般式(I)
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、P1、P2及びP3はそれぞれ独立して、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、単結合、 -(CH2)u-(uは1から20の整数を表し、1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-NRCONR-、-CH=CH-、-CC-、-OCOO-で置換されていても良い。Rは水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2CF2-、-CC-を表し、A1及びA2はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン、トランス−1,4−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、p及びqはそれぞれ独立して0又は1を表し、X及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つのCH2基又は2つ以上の非隣接のCH2基は-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CH-で置換されていても良く、Zは、一般式(IIa)又は(IIb)で表され、
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表し、R1は水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基又は環員数3から8のシクロアルキル基を表すが、R1及びR2中の1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-COO-、-OCO-、-CO-NH-、-NH-CO-又は-NCH3-で置換されているか、R1及びR2中の水素原子はシアノ基、もしくはハロゲン原子で置換されている。)を表し、rは1又は2を表す。)で表される化合物、及び、この化合物を含む組成物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン、さらにはこれを用いた液晶配向層を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシラン化合物、及びポリオルガノシロキサンを用いることにより、液晶の配向およびプレチルト角の制御に優れた液晶配向層を作製することができる。当該配向層は、高い電圧保持率(VHR)を有すると共に、残留電圧(RDC)が低く、焼き付きが発生しにくいことから、優れた表示品位および信頼性を示す液晶表示装置を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(シラン化合物の態様)
本願発明のシラン化合物は、具体的には一般式(I)
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、P1、P2及びP3はそれぞれ独立して、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、単結合、 -(CH2)u-(uは1から20の整数を表し、1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-NRCONR-、-CH=CH-、-CC-、-OCOO-で置換されていても良い。Rは水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2CF2-、-CC-を表し、A1及びA2はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン、トランス−1,4−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、p及びqはそれぞれ独立して0又は1を表し、X及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2基-は-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CH-で置換されていても良く、
Zは、一般式(IIa)又は(IIb)で表され、
【0022】
【化4】
【0023】
(式中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表し、R1は水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基又は環員数3から8のシクロアルキル基を表すが、R1及びR2中の1つの-CH2-基または2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-COO-、-OCO-、-CO-NH-、-NH-CO-又は-NCH3-で置換されているか、R1及びR2中の水素原子はシアノ基、もしくはハロゲン原子で置換されている)を表し、rは1又は2を表す)で表される。
【0024】
純度が高く、かつ分子量の大きいポリオルガノシロキサンを得るためには、P1、P2及びP3はメチル基、エチル基、塩素原子、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。特に、P1、P2及びP3のうち、2〜3つがメトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、0〜1つがメチル基であることが好ましい。
【0025】
配向安定性を高く、かつ電圧保持率を高くするためには、Z1としては、-(CH2)u-が好ましく、uは2〜12が好ましく、4〜11が好ましく、6〜10が更に好ましい。また、Z2及びZ3としては、単結合、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-が好ましく、単結合、-COO-、-OCO-がより好ましい。更にA1及びA2としては、トランス−1,4−シクロヘキシレン、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン又は1,4−フェニレン基が好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレン、又は1,4−フェニレン基がより好ましい。Aとしてはフッ素原子、メチル基、メトキシ基で置換されていてもよい1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基又は1,4−フェニレン基が好ましく、メトキシ基で置換されていてもよい1,4−フェニレン基がより好ましい。X及びYとしては水素原子、シアノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。Zとしては、メトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、2-シアノエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基又は2-アセトキシエトキシ基が好ましく、メトキシエトキシ基又は2-シアノエトキシ基が更に好ましい。
【0026】
一般式(I)で表される化合物としては、更に具体的には以下のような化合物を挙げることができる。
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、P1、P2、P3及びuは一般式(I)における定義と同じ)
【0029】
【化6】
【0030】
(式中、P1、P2、P3及びuは一般式(I)における定義と同じ)
【0031】
【化7】
【0032】
(式中、P1、P2、P3及びuは一般式(I)における定義と同じ)
【0033】
【化8】
【0034】
(式中、P1、P2、P3及びuは一般式(I)における定義と同じ)
【0035】
【化9】
【0036】
(式中、P1、P2、P3及びuは一般式(I)における定義と同じ)
ここで、P1、P2及びP3はメチル基、エチル基、塩素原子、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。特に、P1、P2及びP3のうち、2〜3つがメトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、0〜1つがメチル基であることが好ましい。また、uは2、4、6から選択するのが好ましい。
【0037】
(ポリオルガノシロキサンの態様)
本発明のポリオルガノシロキサンは、一般式(I)で表される化合物を含有する組成物を、水及び触媒の存在下において加水分解または加水分解・縮合させることによって製造できる。前記組成物中の一般式(I)で表される化合物の含有量は、5%〜100%が好ましく、9%〜100%がより好ましく、13%〜100%が特に好ましい。
【0038】
前記ポリオルガノシロキサンの製造の際、一般式(I)で表される化合物以外に、他のシラン化合物を混合させることはプレチルトの制御、塗布性、膜物性(硬度など)の観点から好ましい。ここで使用することができる他のシラン化合物は、本技術分野でシラン化合物と認識されるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0039】
例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランは配向膜の密着性確保、及び加熱硬化による膜物性向上が期待できるため、好ましい。このようなシラン化合物の使用量は、一般式(I)で表される化合物1モルに対して、0.01〜0.5モルであることが好ましく、0.02〜0.4モルであることがより好ましい。
【0040】
例えば、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシランはプレチルト角を大きくし、レベリング性を高くする効果を期待できるため好ましい。このようなシラン化合物の使用量は、一般式(I)で表される化合物1モルに対して、0.001〜0.1モルであることが好ましく、0.002〜0.08モルであることがより好ましい。
【0041】
例えば、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、エイコシルトリメトキシシランはプレチルト角を大きくする効果を期待できるため好ましい。このようなシラン化合物の使用量は、一般式(I)で表される化合物1モルに対して、0〜0.3モルであることが好ましく、0〜0.25モルであることがより好ましい。
【0042】
例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−sec−ブトキシシランは、加熱硬化による膜物性向上が期待できるため好ましい。このようなシラン化合物の使用量は、一般式(I)で表される化合物1モルに対して、0〜0.1モルであることが好ましく、0〜0.08モルであることがより好ましい。
【0043】
例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランはポリオルガノシロキサンの基礎骨格用として有用性が高く、好ましい。このようなシラン化合物の使用量は一般式(I)で表される化合物1モルに対して、0〜20モルであることが好ましく、0.01〜5モルであることが好ましい。
【0044】
商品名で、例えばKC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業(株)製)、SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)等の部分縮合物もシラン化合物として使用することができる。
【0045】
特にプレチルトを高く、安定に保持する目的からは、以下に示すようなシラン化合物を使用することが好ましい。
【0046】
【化10】
【0047】
(式中、P4、P5及びP6はそれぞれ独立して、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Z4、Z5、Z6及びZ7 はそれぞれ独立して、単結合、 -(CH2)u-(uは1から20の整数を表し、一つの-CH2-基又は2つ以上の非隣接の-CH2-基は-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-NRCONR-、-CH=CH-、-CC-、-OCOO-で置換されていても良い。Rは水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。)、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2CF2-、-CC-を表し、A3、A4及びA5はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン、トランス−1,4−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、s、t又はvはそれぞれ独立して0又は1を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルケニルオキシ基、ステロイド骨格を有する一価の有機基、又はフッ素原子を表す。)
このような化合物の中でも、純度が高く、かつ分子量を大きいポリオルガノシロキサンを得るためには、P4、P5及びP6はメチル基、エチル基、塩素原子、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。特に、P4、P5及びP6のうち、2〜3つがメトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、0〜1つがメチル基であることが好ましい。
【0048】
プレチルトを高く安定に保持する目的において、このようなシラン化合物の使用量は、一般式(I)で表される化合物1モルに対して、0.1〜0.4モルであることが好ましく、0.15〜0.3モルであることがより好ましい。
【0049】
配向安定性を高く、かつ電圧保持率を高くするためには、Z4としては、-(CH2)u-が好ましく、uは2〜6が好ましく、2〜4が更に好ましい。また、Z5、Z6及びZ7としては、単結合、-COO-又は-OCO-が好ましく、単結合が特に好ましい。更にA3、A4及びA5としては、トランス−1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン基が好ましい。R3としては、アルキル基、コレステニル基又はコレスタニル基が好ましい。
【0050】
一般式(II)で表される化合物としては、更に具体的には以下のような化合物を挙げることができる。
【0051】
【化11】
【0052】
(式中、P4、P5、P6及びuは一般式(II)における定義と同じ)
このようなシラン化合物の使用量は一般式(I)で表される化合物1モルに対して、0.1〜0.5モルであることが好ましく、0.1〜0.4モルであることがより好ましい。
【0053】
水の使用量は、全シラン化合物に対して、0.5〜100倍モル使用することが好ましい。
触媒としては、酸、アルカリ金属化合物、有機塩基等を用いることができる。触媒としては、塩基を使用することが好ましい。塩基としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン等の3級有機アミンを使用することが好ましい。塩基の使用量は、シラン化合物に対して0.05〜3倍モル使用することが好ましい。
加水分解・縮合反応時には、加熱温度は40〜130℃に設定することが好ましい。また、有機溶媒を加えても良い。使用できる溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0054】
[液晶配向層の形成方法]
本発明のポリオルガノシロキサンに対し、光照射を行うことによって、液晶分子に対する配向制御能力の付与および液晶分子の配向の熱と光に対する安定性の付与が可能である。
本発明の液晶配向層(光配向膜)の製造方法の例としては、本発明のポリオルガノシロキサンを溶媒に溶解させ、基板上に塗布した後、塗膜を光照射して配向制御能力を発現させて光配向膜とする方法が挙げられる。
【0055】
本発明のポリオルガノシロキサンを溶媒に溶解させて溶液とする際、他の高分子材料を添加しても良い。高分子材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等を挙げることができる。
【0056】
また、塗布時のレベリング性を確保することを目的として界面活性剤を添加しても良い。含有することができる界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類、シリコーン誘導体等を挙げることができ、特に含フッ素界面活性剤、シリコーン誘導体が好ましい。更に具体的には「MEGAFAC F−110」、「MEGAFACF−113」、「MEGAFAC F−120」、「MEGAFAC F−812」、「MEGAFAC F−142D」、「MEGAFAC F−144D」、「MEGAFAC F−150」、「MEGAFAC F−171」、「MEGAFACF−173」、「MEGAFAC F−177」、「MEGAFAC F−183」、「MEGAFAC F−195」、「MEGAFAC F−824」、「MEGAFAC F−833」、「MEGAFAC F−114」、「MEGAFAC F−410」、「MEGAFAC F−493」、「MEGAFAC F−494」、「MEGAFAC F−443」、「MEGAFAC F−444」、「MEGAFAC F−445」、「MEGAFAC F−446」、「MEGAFAC F−470」、「MEGAFAC F−471」、「MEGAFAC F−474」、「MEGAFAC F−475」、「MEGAFAC F−477」、「MEGAFAC F−478」、「MEGAFAC F−479」、「MEGAFAC F−480SF」、「MEGAFAC F−482」、「MEGAFAC F−483」、「MEGAFAC F−484」、「MEGAFAC F−486」、「MEGAFAC F−487」、「MEGAFAC F−489」、「MEGAFAC F−172D」、「MEGAFAC F−178K」、「MEGAFAC F−178RM」、「MEGAFAC R−08」、「MEGAFAC R−30」、「MEGAFAC F−472SF」、「MEGAFAC BL−20」、「MEGAFAC R−61」、「MEGAFAC R−90」、「MEGAFAC ESM−1」、「MEGAFAC MCF−350SF」(以上、DIC株式会社製)、
「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント501」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「FTX-400P」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212MH」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「FTX-209F」、「FTX-213F」、「FTX-233F」、「フタージェント245F」、「FTX-208G」、「FTX-240G」、「FTX-206D」、「FTX-220D」、「FTX-230D」、「FTX-240D」、「FTX-207S」、「FTX-211S」、「FTX-220S」、「FTX-230S」、「FTX-750FM」、「FTX-730FM」、「FTX-730FL」、「FTX-710FS」、「FTX-710FM」、「FTX-710FL」、「FTX-750LL」、「FTX-730LS」、「FTX-730LM」、「FTX-730LL」、「FTX-710LL」(以上、ネオス社製)、
「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−340」、「BYK−344」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−358N」、「BYK−361N」、「BYK−357」、「BYK−390」、「BYK−392」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−Silclean3700」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2700」(以上、テゴ社製)等の例をあげることができる。界面活性剤の好ましい添加量は、本発明のポリオルガノシロキサンに対して、0.005〜1質量%含有することが好ましく、0.01〜0.5質量%含有することがさらに好ましく、0.02〜0.1質量%含有することが特に好ましい。含有量が0.005質量%より低いときは膜厚ムラ低減効果が得にくい。
【0057】
前記ポリオルガノシロキサンを溶解させるために使用する溶媒は、本発明のポリマーおよび任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましく、例えば、1,1,2−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、ブトキシエタノール、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、フェノキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は一種を単独で用いてもよいし、二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0058】
前記基板の材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート及びトリアセチルセルロースなどが挙げられる。これらの基板には、Cr、Al、In−SnOからなるITO膜、SnOからなるNESA膜などの電極層(導電層)が設けられていてもよい。これらの電極層のパターニングには、フォト・エッチング法を適用できる。また、電極層を形成する際にマスクを用いる方法等によっても前記電極層をパターニングすることができる。さらに、前記基板上には、カラーフィルタ層などが形成されていてもよい。
【0059】
本発明のポリオルガノシロキサンの溶液を基板上に塗布する方法としては、例えばスピンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの方法が挙げられる。塗布する際の溶液の固形分濃度は、0.5〜10重量%が好ましく、基板上に溶液を塗布する方法、粘性、揮発性等を考慮してこの範囲より選択することがさらに好ましい。又、塗布後に該塗布面を加熱する事により、溶媒を除去するのが好ましく、乾燥条件は、好ましくは50〜300℃、より好ましくは80〜200℃において、好ましくは2〜200分、より好ましくは2〜100分である。
【0060】
照射光としては、偏光を使用することが好ましい。光の照射角度は、目的とするプレチルトによって適宜調整すれば良いが、小さいプレチルトを所望の場合には、基板法線方向から照射することが好ましく、大きいプレチルトが所望の場合には、基板法線方向から40〜60度方向から紫外線を照射することが好ましい。
【0061】
VAモード用の配向膜として用いる場合、一般的には、プレチルト角は87〜89°であるのが好ましい。又、TNモードやECBモード用の配向膜として用いる場合、一般的には、プレチルト角は1〜7°であるのが好ましく、IPSモードの配向膜として用いる場合、プレチルト角は0〜0.5°であるのが好ましい。
【0062】
前記ポリマーからなる塗膜を硬化させる際に照射する光は、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、270nmから450nmの紫外線が更に好ましく、波長310nm付近の紫外光を使用することが特に好ましい。
【0063】
光源としては、例えば、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。これらの光源からの光に対して、偏光フィルタや偏光プリズムを用いることで直線偏光が得られる。又、このような光源から得た紫外光及び可視光は、干渉フィルタや色フィルタなどを用いて、照射する波長範囲を制限してもよい。又、照射エネルギーは、15mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、20mJ/cm2〜300mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は2〜500mW/cm2であることがより好ましく、5〜300mW/cm2であることがさらに好ましい。
形成される光配向膜の膜厚は、10〜250nm程度が好ましく、10〜100nm程度がより好ましい。
光照射後に光配向膜の信頼性や膜物性を向上させることを目的として、加熱処理を行っても良い。その際の加熱処理条件は、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜200℃において、好ましくは2〜200分、より好ましくは2〜100分である。
【0064】
[液晶表示素子の製造方法]
上記の方法で形成された配向膜(光配向膜)を用いて、例えば以下のようにして、一対の基板間に液晶組成物を挟持する液晶セル及びこれを用いた液晶表示素子を製造することができる。
本発明における上記配向膜が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することで液晶セルを製造することができる。又、2枚の基板のうち1枚のみに上記配向膜が形成されていてもよい。
【0065】
前記液晶セルの製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、それぞれの配向膜が対向するように2枚の基板を配置し、2枚の基板の間に一定の間隙(セルギャップ)を保った状態で周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
【0066】
前記液晶セルはODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法でも製造することができる。手順としては、例えば、前記配向膜を形成した基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに配向膜面上に液晶を滴下した後、配向膜が対向するようにもう1枚の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法により前記液晶セルを製造する場合でも、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、注入時の流動配向を除去することが望ましい。
【0067】
前記シール剤としては、例えばエポキシ樹脂等を用いることができる。又、前記セルギャップを一定に保つためには、2枚の基板を張り合わせるのに先立って、スペーサーとしてシリカゲル、アルミナ、アクリル樹脂などのビーズを用いることができ、これらのスペーサーは前記配向膜塗膜上に散布してもよいし、シール剤と混合した上で2枚の基板を張り合わせてもよい。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクチック型液晶を用いることができる。
【0068】
垂直配向型液晶セルの場合には、負の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ナフタレン系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。
水平配向型液晶セルの場合には、正の誘電率異方性を有するものが好ましく、例えばシアノベンゼン系液晶、ジフルオロベンゼン系液晶、トリフルオロベンゼン系液晶、トリフルオロメチルベンゼン系液晶、トリフルオロメトキシベンゼン系液晶、ピリミジン系液晶、ナフタレン系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。
こうして製造した上記液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。かくして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、信頼性等の諸性能に優れるものである。
【0069】
[光学異方体の製造方法]
前記光配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、該重合性液晶組成物中の重合性液晶分子を配向させた状態で重合させることで光学異方体を製造することもできる。
【0070】
重合性液晶組成物とは、単独又は他の液晶化合物との組成物において液晶性を示す、重合性液晶を含む液晶組成物である。例えば、Handbo ok of Liquid Crystals (D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)、あるいは、特開平7−294735号公報、特開平8−3111号公報、特開平8−29618号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−148079号公報、特開2000−178233号公報、特開2002−308831号公報、特開2002−145830号公報に記載されているような、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、エポキシ基といった重合性官能基とを有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−149522号公報に記載されているようなアリルエーテル基を有する棒状重号性液晶化合物、あるいは、例えば、Handbook of Liquid Crystals(D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)や、特開平07−146409号公報に記載されているディスコティック重合性化合物があげられる。
【0071】
光学異方体の別の製造方法として、基板上に本発明のシラン化合物、もしくは本発明のポリオルガノシロキサンを塗布した後、偏光紫外線を照射することによって複屈折性を誘起させる方法を挙げることができる。本発明のシラン化合物、もしくは本発明のポリオルガノシロキサンの塗布する膜厚は、目的とする位相差によって調整すれば良いが、0.1〜200μmが好ましく、0.5〜100μmが更に好ましく、1〜40μmが特に好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、例を挙げて本願発明を更に詳述するが、本願発明はこれらによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0073】
(実施例1)
以下の経路にしたがって本発明のシラン化合物を合成した。
【0074】
【化12】
【0075】
4-ヒドロキシ安息香酸メチル76g、4-ブロモ-1-ブテン54g及び炭酸カリウム34gをジメチルホルムアミド500mlに溶解させ、60℃で7時間撹拌した。この反応溶液を室温まで冷却し、水1000ml、10%塩酸水溶液を100ml加えた後、トルエンを用いて抽出し、トルエンを減圧留去することにより93gの(S-1-1)の粗生成物108gを得た。これに水400ml、エタノール400ml、水酸化ナトリウム20gを加えた後、4時間加熱還流させた。この反応溶液を室温まで冷却した後、水500mlを加え、更に10%塩酸水溶液を滴下した。滴下を水層が弱酸性になるまで行ったところ、結晶が析出した。析出した液晶を濾取・乾燥し、(S-1-2)の化合物63gを得た。
【0076】
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸97g、2−メトキシエタノール46g、p-トルエンスルホン酸10gをシクロヘキサン500mlおよびジイソプロピルエーテル70mlに溶解させ、生成する水を除去しながら8時間加熱還流した。室温に冷却した後、酢酸エチルを用いて抽出し、酢酸エチルを減圧留去することにより(S-1-3)の粗生成物111gを得た。これを2倍量のメタノールから再結晶を行い、(S-1-3)の化合物82gを得た。
【0077】
次に、得られた(S-1-2)の化合物60g、(S-1-3)の化合物73g、4,4-ジメチルアミノピリジン5.0gをジクロロメタン1000mlに溶解させ、窒素雰囲気下で3℃に冷却した。ジクロロメタン200mlで希釈したジイソプロピルカルボジイミド40gを滴下し、滴下終了後、室温で12時間撹拌した。撹拌終了後、有機層を10%塩酸、飽和食塩水で洗浄した後、ジクロメタンを減圧留去し、(S-1-4)の粗生成物140gを得た。これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)、及びメタノールからの再結晶により精製して(S-1-4)の化合物86gを得た。
【0078】
次に、(S-1-4)の化合物80g、トリメトキシシラン115g及び塩化白金酸0.03gを窒素気流下で10時間還流させた。得られた反応混合物をシリカゲルカラムで精製し、本発明のシラン化合物(S-1-5)を24g得た。
シラン化合物(S-1-5)の物性値
1H NMR(CDCl3)δ 0.58(t、7Hz、2H)、1.30(tt、7Hz、7Hz、2H)、1.76(tt、7Hz、7Hz、2H)、3.30(s、3H)、3.55(s、9H)、3.65(t、7Hz、2H)、3.83(s、3H)、4.06(t、7Hz、2H)、4.27(t、7Hz、2H)、6.31(d、15Hz、1H)、7.14〜8.11(m、8H)
【0079】
(参考例1)
以下の経路にしたがって、シラン化合物(S-2-2)を合成した。
【0080】
【化12】
シラン化合物(S-2-2)の物性値
1H NMR(CDCl3)δ 0.58(t、7Hz、2H)、0.90(t、8Hz、3H)、1.25〜1.86(m、29H)、2.72(m、1H)、3.55(s、9H)、4.06(t、7Hz、2H)、6.91(d、8Hz、2H)、7.39(d、8H、2H)
【0081】
(参考例2)
以下の経路にしたがって、シラン化合物(S-3-2)を合成した。
【0082】
【化13】
【0083】
シラン化合物 (S-3-2)の物性値
1H NMR(CDCl3)δ 0.58(t、7Hz、2H)、0.91〜2.50(m、42H)、3.55(s、9H)、3.99〜4.06(m、3H)、5.37(t、6Hz、1H)、6.82(d、8Hz、2H)、7.10(d、8Hz、2H)
【0084】
(参考例3)
誘電率異方性が負である下記組成のネマチック液晶組成物(N-1)を調製した。
【0085】
【化14】
【0086】
ネマチック液晶組成物(N-1)のネマチック-等方性液体相転移温度は、84.4℃であった。
【0087】
(実施例2)
実施例1で合成した(S-1-5)の化合物2.0g、メチルトリメトキシシラン2.5g、メチルイソブチルケトン22.5g、トリエチルアミン0.6gの混合物を室温で撹拌しながら、水5gを10分かけて滴下した後、80℃で6時間撹拌した。得られた反応物をシリカゲルカラムで精製し、本発明のポリオルガノシロキサン(S-4)を得た。
【0088】
(実施例3)
実施例1で合成した(S-1-5)の化合物1.8g、参考例1で合成した(S-2-2)の化合物0.18g、メチルトリメトキシシラン2.5g、メチルイソブチルケトン22.5g、トリエチルアミン0.6gの混合物を室温で撹拌しながら、水5gを10分かけて滴下した後、80℃で6時間撹拌した。得られた反応物をシリカゲルカラムで精製し、本発明のポリオルガノシロキサン(S-5)を得た。
【0089】
(実施例4)
実施例1で合成した(S-1-5)の化合物1.8g、参考例2で合成した(S-3-2)の化合物0.25g、メチルトリメトキシシラン2.5g、メチルイソブチルケトン22.5g、トリエチルアミン0.6gの混合物を室温で撹拌しながら、水5gを10分かけて滴下した後、80℃で6時間撹拌した。得られた反応物をシリカゲルカラムで精製し、本発明のポリオルガノシロキサン(S-6)を得た。
【0090】
(実施例5)
実施例2で合成したポリオルガノシロキサン(S-4)をシクロペンタノン中に0.5%溶解させ、室温で10分間撹拌した。次に、溶液をスピンコーターを用いて基材であるITO付きガラス基板上に塗布し、100℃で30分間乾燥した。
【0091】
次に、超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルタを介して、紫外光(波長313nm、照射強度:10mW/cm)の直線偏光を、ポリオルガノシロキサンを塗布したガラス基板に対して垂直方向から照射した。照射量は100mJ/cmであった。
【0092】
上記方法で得られたポリオルガノシロキサン薄膜を形成したガラス基板を2枚用いて、照射した偏光の振動方向が180度の角度をなすように(お互いに平行になるように)に対峙させて、セルギャップ5μmの液晶セルを作成した。この液晶セルに参考例4で調製したネマチック液晶組成物(N-1)を真空注入した。得られたセルを2枚の偏光板の間に挟んで確認したところ、一軸に水平配向していることが確かめられた。
【0093】
次に、ラビングしたポリイミド配向膜を形成したガラス基板を2枚用いて作成したセルギャップ5μmのアンチパラレル液晶セルに、ネマチック液晶組成物(N-1)を注入したものを用意し、本発明のポリオルガノシロキサンを配向層として液晶セルの配向方向を確認したところ、液晶長軸方向と偏光の振動方向は平行であることが確かめられた。このセルのプレチルト角を測定したところ0.0度であった。
【0094】
この液晶セルの電圧保持率(印加電圧5V、パルス幅60マイクロ秒、フレーム時間167ミリ秒)を(株)東陽テクニカ製の「VHR-AMP01」により23℃で測定したところ、99.0%であった。また、この液晶セルに、直流10Vの電圧を重畳した60Hz/±10Vの短形波を60℃で60分間印加し、1秒間短絡した上で10分後に液晶セル内の残留電圧(RDC)を測定したところ30mVであった。
【0095】
(実施例6)
実施例3で合成したポリオルガノシロキサン(S-5)をシクロペンタノン中に0.5%溶解させ、室温で10分間撹拌した。次に、溶液をスピンコーターを用いて基材であるITO付きガラス基板上に塗布し、100℃で30分間乾燥した。
【0096】
次に、超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルタを介して、ポリオルガノシロキサンを塗布したガラス基板の法線より45度傾いた方向から偏光紫外光(波長313nm、照射強度:10mW/cm)の直線偏光(P偏光)を、塗布したガラス基板に対して斜め45垂直方向から照射した。照射量は100mJ/cmであった。
【0097】
上記方法得られたポリオルガノシロキサン薄膜を形成したガラス基板を2枚用いて、照射した偏光の振動方向が180度の角度をなすように(お互いに平行になるように)に対峙させて、セルギャップ5μmの液晶セルを作成した。この液晶セルに参考例4で調製したネマチック液晶組成物(N-1)を真空注入した。得られたセルを2枚の偏光板の間に挟んで確認したところ、ほぼ垂直配向していることが確かめられた。また、プレチルト測定を行い、プレチルト角が87度であること、また、プレチルト角の方向(液晶が垂直配向から3度倒れた方向)は、照射した偏光の振動方向と一致することが確かめられた。
【0098】
この液晶セルの電圧保持率(印加電圧5V、パルス幅60マイクロ秒、フレーム時間167ミリ秒)を(株)東陽テクニカ製の「VHR-AMP01」により23℃で測定したところ、99.0%であった。また、この液晶セルに、直流10Vの電圧を重畳した60Hz/±10Vの短形波を60℃で60分間印加し、1秒間短絡した上で10分後に液晶セル内の残留電圧(RDC)を測定したところ35mVであった。
【0099】
(実施例7)
実施例4で合成したポリオルガノシロキサン(S-6)をシクロペンタノン中に0.5%溶解させ、室温で10分間撹拌した。次に、溶液をスピンコーターを用いて基材であるITO付きガラス基板上に塗布し、100℃で30分間乾燥した。
【0100】
次に、超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルタを介して、ポリオルガノシロキサンを塗布したガラス基板の法線より45度傾いた方向から偏光紫外光(波長313nm、照射強度:10mW/cm)の直線偏光(P偏光)を、塗布したガラス基板に対して斜め45垂直方向から照射した。照射量は100mJ/cmであった。
【0101】
上記方法得られたポリオルガノシロキサン薄膜を形成したガラス基板を2枚用いて、照射した偏光の振動方向が180度の角度をなすように(お互いに平行になるように)に対峙させて、セルギャップ5μmの液晶セルを作成した。この液晶セルに参考例4で調製したネマチック液晶組成物(N-1)を真空注入した。得られたセルを2枚の偏光板の間に挟んで確認したところ、ほぼ垂直配向していることが確かめられた。また、プレチルト測定を行い、プレチルト角が88度であること、また、プレチルト角の方向(液晶が垂直配向から3度倒れた方向)は、照射した偏光の振動方向と一致することが確かめられた。
【0102】
この液晶セルの電圧保持率(印加電圧5V、パルス幅60マイクロ秒、フレーム時間167ミリ秒)を(株)東陽テクニカ製の「VHR-AMP01」により23℃で測定したところ、99.1%であった。また、この液晶セルに、直流10Vの電圧を重畳した60Hz/±10Vの短形波を60℃で60分間印加し、1秒間短絡した上で10分後に液晶セル内の残留電圧(RDC)を測定したところ30mVであった。