特許第6402977号(P6402977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402977
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】捺染剤及び布帛物
(51)【国際特許分類】
   D06P 1/44 20060101AFI20181001BHJP
   D06P 1/649 20060101ALI20181001BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20181001BHJP
   D06M 15/572 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   D06P1/44 H
   D06P1/649
   D06P5/30
   D06M15/572
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-139595(P2014-139595)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-17240(P2016-17240A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】木戸 智子
(72)【発明者】
【氏名】髭白 朋和
(72)【発明者】
【氏名】栗山 ちさと
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−518249(JP,A)
【文献】 特表2008−531778(JP,A)
【文献】 特表2007−523985(JP,A)
【文献】 特開2013−010816(JP,A)
【文献】 特開昭63−037160(JP,A)
【文献】 特開2011−144355(JP,A)
【文献】 特開2012−031385(JP,A)
【文献】 特開2012−140602(JP,A)
【文献】 特開2011−052135(JP,A)
【文献】 特開2009−074078(JP,A)
【文献】 特開2015−163678(JP,A)
【文献】 特開2015−174876(JP,A)
【文献】 特開2015−218191(JP,A)
【文献】 米国特許第04812492(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0001980(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0154481(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P
D06M
C09B
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、顔料分散剤と、水溶性溶媒及び/または水と、ポリオール(a1)としてビスフェノール化合物1分子に対して1モル〜20モルのアルキレンオキサイドが付加したものと、芳香族ポリカルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール(a1−1)と、アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオールと、ポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂バインダーと、尿素、尿素誘導体、ピロリドン誘導体、アルキルグリシン、及び糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つの湿潤剤を含有することを特徴とする捺染剤。
【請求項2】
前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドである請求項1に記載の捺染剤。
【請求項3】
前記顔料分散剤がスチレン−マレイン酸共重合体である請求項1または2に記載の捺染剤。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオール(a1−1)全量に含まれる芳香族環式濃度がモル/kg以上である請求項1〜3のいずれかに記載の捺染剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の捺染剤を布帛に印捺した布帛物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の捺染剤を布帛に印捺する捺染方法。
【請求項7】
インクジェット印刷方式またはスクリーン印刷方式で印捺する請求項6に記載の捺染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に布帛に印捺する用途に適した捺染剤及び布帛物に関する。
【背景技術】
【0002】
織布や不織布、編布などの布帛に、文字、絵、図柄などの画像を印捺する捺染方法として、水性の顔料インクを使用した顔料捺染法が知られている。顔料捺染法は、着色顔料及びバインダー樹脂からなる顔料組成物である捺染剤を印刷した後、必要に応じ乾燥硬化工程を経て基材に固着させる方法である。この印刷方法としては、スクリーン紗の図柄を布帛に連続的に印刷するシルクスクリーン法(例えば特許文献1参照)、あるいはノズルよりインクを噴射し布帛に付着せしめるインクジェット記録法等(例えば特許文献2参照)が知られている。
【0003】
顔料捺染法は染料を使用した捺染法に比べ、繊維種による着色剤の選定を必要とせず、加工方法も単純であり、また蒸し工程や水洗・ソーピング工程も必要としないため、エネルギーコストがかからない。しかも廃液が発生しないため、環境面において安全な加工方法である。しかしながら顔料捺染法は、洗濯堅牢度などの堅牢性を得るために、十分量の顔料固着用バインダー樹脂を必要とし、時としてこのバインダー樹脂による不具合が生じる場合があった。
【0004】
堅牢性を付与するための顔料固着用バインダー樹脂としては、通常、高分子量のアクリルやウレタンなどの水分散型樹脂が使用される。
スクリーン紗による捺染加工では、これら高分子量のバインダー樹脂を十分量添加していても、問題なく印刷は可能である。しかしバインダー樹脂は皮膜化しやすいために、時として、該バインダー樹脂が乾燥固着して、水に不溶性の樹脂膜が張り、スクリーン紗の目詰まりなどの問題を引き起こすことがあった。特に、細かい絵柄(網点又は線)のある写真調の図柄に適用すると、乾燥が早いためハイライト部が目詰りし易い。また、版上にインクが残っている状態で印刷作業を停止した時には、版上でインクが乾燥し、印刷作業を再開した際、乾燥固着したインクが容易に再溶解せず(これを、以後再溶解性と称す)にインク転移がしづらく、印刷ができない問題があった。
【0005】
一方、インクジェット記録法では、数十μmの非常に細いノズルからインク滴を吐出して画像を記録する印刷方法であるため、ノズル先端でのインクの乾燥固着は、吐出安定性に直接悪影響を与える。
【0006】
これに対し、吐出安定性、洗浄性に優れるインクとして、例えば特許文献3では、インク中の水不溶性ポリマーに由来する遊離ポリマーの含有量がインク全質量に対して1.0質量%以下であって、湿潤剤が尿素、尿素誘導体、ピロリドン誘導体、アルキルグリシン若しくはグリシルベタイン、及び糖類から選ばれる少なくとも1種である水性顔料組成物が開示されている。しかしながら、該インクを捺染用のインクとして布帛への印捺に適用した場合、堅牢性を得ることが困難であった。また、充分な堅牢性を得るために多量のバインダー樹脂を配合したインクは、インク粘度が高くなりすぎて吐出自体が困難であるという問題や、吐出安定性を確保するために尿素のような特定の湿潤剤を添加しすぎることで、保存安定性が悪化してしまうという問題があった。
【0007】
また、インクジェット記録法による顔料捺染法に関し、特許文献4には、顔料を水に分散可能とした分散体と、水と、ポリウレタン樹脂とを少なくとも含んでなるインクジェット記録用水性顔料組成物であって、記分散体が樹脂微粒子を含むポリマー層で被覆することによって水に分散可能とした顔料を含み、前記分散体の平均粒径が20〜300nmであり、かつ前記ポリウレタン樹脂が、構成成分として、下記式(I)または/および式(II)で表される化合物を含んでなる、堅牢性と吐出安定性に優れたインクジェット記録用水性顔料組成物が開示されている。しかしながら、印字の長期休止後のノズル詰まりに対する知見については、なんら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−332523号公報
【特許文献2】特開2009−215506号公報
【特許文献3】特開2011−42771号公報
【特許文献4】特開2011−246634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、保存安定性と再溶解性に優れた捺染剤、及び該捺染剤を布帛に印捺した布帛物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の構造を有するウレタン樹脂をバインダー樹脂として使用し、尿素、尿素誘導体、ピロリドン誘導体、アルキルグリシン、及び糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つの湿潤剤を含有することで、シルクスクリーン法であってもインクジェット記録法であっても問題なく使用でき、再溶解性に優れた捺染剤が得られることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、顔料と、水溶性溶媒及び/または水と、ポリオール(a1)としてポリカルボン酸とポリオールを反応させて得られるポリエステルポリオール(a1−1)と、アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオールと、ポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂と、尿素、尿素誘導体、ピロリドン誘導体、アルキルグリシン、及び糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つの湿潤剤を含有する捺染剤を提供する。
【0012】
また本発明は、前記記載の捺染剤を布帛に印捺した布帛物を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載の捺染剤を布帛に印捺する捺染方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の捺染剤は、1分子中にポリエステル構造及び親水性基とを有するウレタン樹脂と尿素、尿素誘導体、ピロリドン誘導体、アルキルグリシン、及び糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つの湿潤剤を含有することで、保存安定性と再溶解性に優れる。また本発明の捺染剤は、シルクスクリーン法であってもインクジェット記録法であっても問題なく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(顔料)
本発明で使用する顔料は特に限定はなく、通常、スクリーン記録用インクや水性インクジェット記録用インクの顔料として使用されているものを着色剤として使用できる。具体的には、水や水溶性有機溶剤に分散可能な公知の無機顔料や有機顔料が使用できる。無機顔料としては例えば、酸化チタン、酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0016】
顔料の具体例としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100、等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等が、デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、269等が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、 15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0017】
本発明においては、顔料表面に水分散性付与基を有し、分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆる自己分散型顔料(表面処理顔料)でも良いし、顔料表面の全体をポリマーで被覆し、これにより分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆるカプセル顔料(水分散性ポリマー包含顔料)でも良いし、分散剤により分散された顔料を使用してもよい。
【0018】
本発明で使用する顔料は、ドライパウダー及びウェットケーキのいずれも用いることができる。また、これらの顔料は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明で使用する顔料は、その粒子径が25μm以下のものからなる顔料が好ましく、1μm以下のものからなる顔料が特に好ましい。粒子径がこの範囲にあれば、顔料の沈降が発生しにくく、顔料分散性が良好となる。
粒子径の測定は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定した値を採用することができる。
【0020】
(水溶性溶媒及び/または水)
本発明で使用する水溶性溶媒及び/または水は、従来よりインクジェット記録用水性インクの調製に用いられているものをいずれも使用できる。
水溶性溶媒としては、例えば、1価又は多価のアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、グリコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類,エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類および多価アルコールアラルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノンアセトン、N−メチルー2−ピロリドン、m−ブチロラクトン、グリセリンのポリオキシアルキレン付加物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。これらは、単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
【0021】
また水としては、水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、捺染剤を長期保存する場合にカビまたはバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0022】
(ウレタン樹脂)
本発明は、ポリオール(a1)としてポリカルボン酸とポリオールを反応させて得られるポリエステルポリオール(a1−1)と、アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオールと、ポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるウレタン樹脂を使用する。(以下本ウレタン樹脂を「ウレタン樹脂(A)」と称す)
【0023】
また、本発明では、親水性基とともにポリエステル構造を有するウレタン樹脂(A)を使用することが、本発明の課題を解決するうえで必須である。
【0024】
前記ポリエステル構造は、エステル結合を有する脂肪族、脂環族または芳香族構造からなるものである。前記ポリエステル構造は、ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計質量に対して、10〜90質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0025】
ここで、前記ポリエステル構造の代わりに、ポリエーテル構造を有するウレタン樹脂(A)を用いて得た捺染剤では、保存安定性および再溶解性の低下を引き起こす場合がある。
【0026】
前記ポリエステル構造としては、ポリカルボン酸と低分子量ポリオールとをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール由来の構造であることが好ましく、更に芳香族構造を有するものであることが、保存安定性および再溶解性を向上するうえで好ましい。
【0027】
また、前記ウレタン樹脂(A)は、捺染剤中における分散安定性を付与するうえで親水性基を有する。
前記親水性基としては、一般にアニオン性基やカチオン性基、ノニオン性基といわれるものを使用することができるが、なかでもアニオン性基やカチオン性基を使用することが好ましい。
【0028】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散性を維持するうえで好ましい。
【0029】
前記アニオン性基としてのカルボキシル基やスルホン酸基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等が挙げられるが、なかでも、水酸化カリウムやその水溶液を用いて中和することが、環境に配慮された製品を提供するうえで特に好ましい。
【0030】
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができる。
前記3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸等を使用することができる。また、前記3級アミノ基の一部又は全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類を使用することができる。
【0031】
前記親水性基は、前記ウレタン樹脂(A)全体に対して100mmol/kg〜1200mmol/kg存在することがより一層良好な水分散性を付与し、150mmol/kg〜1000mmol/kgの範囲であることがより好ましい。
【0032】
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。なかでもオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基を使用することが、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
【0033】
前記親水性基は、前記ウレタン樹脂(A)全体に対して0.5〜30%存在することがより一層良好な水分散性を付与し、1〜20%の範囲であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明の捺染剤は、後述する架橋剤(F)を使用する場合がある。前記架橋剤(F)を使用する場合、前記ウレタン樹脂(A)としては、前記架橋剤(F)の有する官能基と架橋反応しうる官能基[X]を有するものを使用することが好ましい。
前記官能基[X]としては、前記親水性基として使用可能なカルボキシル基やカルボキシレート基等が挙げられる。前記カルボキシル基等は、水性媒体(C)中においてウレタン樹脂(A)の水分散安定性に寄与し、それらが架橋反応する際には、前記官能基[X]としても作用し、前記架橋剤(F)の一部架橋反応しうる。
前記官能基[X]としてカルボキシル基等を使用する場合、前記ウレタン樹脂(A)としては、2〜50の酸価を有するものであることが好ましく、5〜40の酸価を有するものを使用することが、更に好ましい。
【0035】
前記ウレタン樹脂(A)は、例えばポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって製造することができる。
前記ポリオール(a1)としては、前記ウレタン樹脂(A)にポリエステル構造を付与する観点からポリエステルポリオール(a1−1)を使用し、かつ、前記ウレタン樹脂(A)に親水性基を付与する観点から親水性基を有するポリオールを使用する。
【0036】
前記ポリエステルポリオール(a1−1)としては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0037】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば概ね分子量が50〜300程度である、エチレングリコールやプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ポリオールや、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族環式構造含有ポリオール、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族構造含有ポリオールを使用することができる。
【0038】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸や、テレフタル酸ジメチル、オルソフタル酸等の芳香族ポリカルボン酸、及びそれらの無水物またはエステル形成性誘導体等を使用することができる。
【0039】
前記ポリエステルポリオール(a1−1)として使用可能な芳香族構造含有ポリエステルポリオールは、例えば、前記低分子量のポリオール及びポリカルボン酸の組み合わせとして、いずれか一方または両方に芳香族構造を有するものを使用することによって製造することができる。
【0040】
具体的には、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコールやジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ポリオールと、テレフタル酸やイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ポリカルボン酸とを組み合わせ反応させることによって得られるものを使用することができる。また、ビスフェノールA等の芳香族構造含有ポリオールと前記脂肪族ポリカルボン酸とを反応させることによっても製造することができる。
【0041】
前記芳香族ポリカルボン酸は、前記ポリカルボン酸の全量に対して、前記オルソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びそのエステル化物からなる群より選ばれる1種以上を合計5質量%〜100質量%の範囲で含有するものを使用することが好ましく、30質量%〜100質量%の範囲で含有するものを使用することがより好ましく、50質量%〜100質量%の範囲で含有する物を使用することが捺染剤を得るうえでより好ましい。
【0042】
前記オルソフタル酸及び無水フタル酸のうち1種以上は、前記芳香族ポリカルボン酸の全量に対して合計0.5質量%〜30質量%の範囲で使用することが好ましく、0.5質量%〜20質量%の範囲で使用することがより好ましく、1質量%〜8質量%の範囲で使用することが更に好ましい。また、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びそれらのエステル化物からなる群より選ばれる1種以上は、前記芳香族ポリカルボン酸の全量に対して、合計70質量%〜99.5質量%の範囲で含まれることが好ましく、92質量%〜99質量%の範囲で含有するものを使用することがより好ましく、80質量%〜99.5質量%の範囲で使用することが、に優れた捺染剤を得るうえでより好ましい。
【0043】
ポリカルボン酸としては、前記芳香族ポリカルボン酸以外の、例えば脂肪族ポリカルボン酸等を併用してもよいが、前記芳香族ポリカルボン酸を前記ポリカルボン酸の全量に対して、90質量%以上の範囲で使用することが好ましく、95質量%〜100質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0044】
前記芳香族構造含有ポリオールは、ビスフェノール化合物にアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールと、芳香族ポリカルボン酸とをエステル化反応させて得られる。
【0045】
前記芳香族構造含有ポリオールは、ビスフェノール化合物の有する水酸基にアルキレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物と、芳香族ポリカルボン酸とをエステル化反応させることによって製造することができる。
【0046】
前記アルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノール化合物の有する水酸基にアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールであって、前記ビスフェノール化合物を開始剤としてアルキレンオキサイドを周知慣用の方法で付加させることによって製造することができる。
【0047】
前記ビスフェノール化合物としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、フッ素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールA、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンジフェノール等を使用することができる。なかでもビスフェノールAを使用することが、保存安定性および再溶解性を向上するうえで好ましい。
【0048】
前記ビスフェノール化合物の有する水酸基に付加しうるアルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を使用することができ、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドからなる群より選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0049】
前記アルキレンオキサイド付加物としては、前記ビスフェノール化合物1分子に対して、1モル〜20モルのアルキレンオキサイドが付加したものを使用することが好ましく、1モル〜10モルのアルキレンオキサイドが付加したものを使用することがより好ましく、2モル〜4モルのアルキレンオキサイドが付加したものを使用することが、ウレタン樹脂中における芳香族環濃度を低下させず、保存安定性および再溶解性に優れた製造可能な捺染剤を得るうえでさらに好ましい。
【0050】
前記ポリエーテルエステルポリオールを製造する際には、前記ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物と芳香族ポリカルボン酸とともに、その他のポリオール(a1−2)等を組み合わせ使用することもできる。
【0051】
前記その他のポリオール(a1−2)としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、ネオペンチルグリコール等を使用することができる。
【0052】
前記その他のポリオール(a1−2)は、前記ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物と芳香族ポリカルボン酸とその他のポリオール(a1−2)との合計質量に対して1質量%〜30質量%の範囲で使用してもよい。
【0053】
前記ポリオールと前記ポリカルボン酸との反応は、前記ポリオールの有する水酸基と、前記ポリカルボン酸の有するカルボキシル基とをエステル化反応することによって行うことができる。
【0054】
具体的には、前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを、必要に応じて触媒の存在下、窒素等の不活性気体で置換した反応容器中で常圧または減圧下で反応することができる。前記反応は、100℃〜300℃の範囲で行うことが好ましい。
【0055】
前記触媒としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酢酸塩や、亜鉛、マンガン、コバルト、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、ジルコニウム等を含む化合物等を使用することができる。なかでも、エステル交換反応や重縮合反応等に有効なテトラアルキルチタネートや蓚酸スズを使用することが好ましい。
【0056】
前記触媒は、前記ポリエーテルエステルポリオールの製造に使用する前記した各種原料の合計質量に対して、0.005質量%〜1.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0057】
前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールは、特に保存安定性の観点から、使用するポリエステルポリオール(a1−1)全量に含まれる芳香族環式濃度が2.5モル/kg以上となるように使用することが好ましく、芳香族環式濃度が3.0モル/kg以上となるように使用することがなお好ましい。
なお前記ポリエステルポリオール(a1−1)は、同一種(ここで同一種とは、原料となるポリカルボン酸やポリオールの種類や分子量等のパラメータが同一であることを示す)のポリエステルポリオールを1種のみ使用してもよいし、異なる種(ここで「異なる種」とは、原料となるポリカルボン酸やポリオールの種類が異なったり、分子量等のパラメータが異なることを示す)ポリエステルポリオールを複数種使用してもよく特に限定されない。
なお、異なるポリエステルポリオールを複数種使用する場合の芳香族環式濃度は、使用するポリエステルポリオール全種類の総全量に対して、芳香族環式濃度を算出すればよい。
【0058】
前記ポリエステルポリオール(a1−1)としては、200〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。なかでも前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールとしては、を向上するうえで250〜3000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0059】
また、前記親水性基含有ポリオールとしては、例えば前記したポリエステルポリオール(a1−1)以外のアニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができる。なかでも、アニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましく、アニオン性基含有ポリオールを使用することがより好ましい。
【0060】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸や、それらとジカルボン酸とを反応して得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオール等を使用することができる。なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。
【0061】
前記カルボキシル基含有ポリオールは、前記ウレタン樹脂(A)の酸価が10〜70となる範囲で使用することが好ましく、10〜50となる範囲で使用することがより好ましい。なお、本発明で言う酸価は、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
【0062】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるコーティング剤の水分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.5〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.5〜2.0(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
【0063】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和されていることが好ましい。
また、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていることが好ましい。前記4級化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等を使用することができ、ジメチル硫酸を使用することが好ましい。
【0064】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0065】
前記親水性基含有ポリオールは、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオールの全量に対して、0.3質量%〜20.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0066】
前記その他のポリオールとしては、前記親水性基含有ポリオール以外に、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等を使用することができる。
【0067】
前記その他のポリオールに使用可能なポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレングリコールやプロプレングリコール等を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0068】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0069】
また、前記その他のポリオールに使用可能なポリエステルポリオールとしては、例えばエチレングリコールやプロピレングリコール等と、オルソフタル酸やイソフタル酸、アジピン酸やセバシン酸等のポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0070】
また、前記その他のポリオールに使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルと各種ポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0071】
また、前記その他のポリオールとしては、前記したものの他に、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、ネオペンチルグリコール等の比較的低分子量のポリオールを使用することもできる。
【0072】
前記ポリオール(a1)と反応しウレタン樹脂(A)を形成するポリイソシアネート(a2)としては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。なかでも、脂肪族環式構造含有ジイソシアネートを使用することが、優れた保存安定性および再溶解性を付与するうえでより好ましい。
【0073】
前記ウレタン樹脂(A)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記したポリエーテルエステルポリオール(a1−1)を含有するポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)と、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって製造することができる。前記有機溶剤を使用した場合には、前記ウレタン樹脂(A)を水性媒体(B)中に分散等する際に、必要に応じて前記有機溶剤を蒸留等の方法で除去することが好ましい。
【0074】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0075】
前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応は、例えば、前記ポリオール(a1)が有する水酸基に対する前記ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0076】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な鎖伸長剤は、ウレタン樹脂(A)の分子量を大きくし、保存安定性および再溶解性を向上することを目的として使用することができる。
【0077】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0078】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0079】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を使用することができる。
【0080】
前記鎖伸長剤は、例えば前記鎖伸長剤の有するアミノ基及び活性水素原子含有基の当量が、前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られたウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の当量に対して、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0081】
前記鎖伸長剤は、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを反応させる際、または、反応後に使用することができる。また、前記で得たウレタン樹脂(A)を水性媒体(B)中に分散させ水性化する際に、前記鎖伸長剤を使用することもできる。
【0082】
前記方法で得られたウレタン樹脂(A)は、保存安定性の観点から、5,000〜100,000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、6,000〜80,000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
【0083】
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、反応時間短縮の観点から、硬化促進剤を組み合わせ使用することができる。
【0084】
前記硬化促進剤としては、例えば3級アミン系触媒や有機金属系触媒を用いることができる。3級アミン系触媒としては例えば、トリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、エチルモルホリン等を使用することができる。有機金属系触媒としては例えば、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレエート、重炭酸ソーダ等を使用することができる。
【0085】
前記方法で得られたウレタン樹脂(A)としては、前記したとおり親水性基を有するウレタン樹脂を使用することが好ましいが、前記ウレタン樹脂(A)として前記親水性基を有さないものを使用することもできる。かかる場合には、ウレタン樹脂(A)の分散に寄与しうるものとして後述する界面活性剤を併用することが好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)として親水性基含有ウレタン樹脂を使用する場合であっても、水分散安定性を更に向上する観点から、必要に応じて同様の界面活性剤を使用してもよい。
【0086】
かかる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系界面活性剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤を使用することができる。なかでもウレタン水性組成物の分散安定性を向上する観点から、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤を使用することが好ましい。
【0087】
前記界面活性剤を使用する場合には、保存安定性、再溶解性の観点から、ウレタン樹脂(A)の全量に対して0.5質量%〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0088】
前記方法で得られたウレタン樹脂(A)を水性媒体(B)中へ分散する方法としては、例えば以下の方法1及び2が挙げられる。
【0089】
〔方法1〕前記ウレタン樹脂(A)として親水性基含有ウレタン樹脂を使用する場合、前記方法で得られたウレタン樹脂の有する親水性基の一部または全部を、必要に応じて前記塩基性化合物等を用いて中和または4級化したものと、水性媒体(B)とを混合し、攪拌することによって、ウレタン樹脂(A)の水分散体を得る方法。
【0090】
〔方法2〕前記ウレタン樹脂(A)として親水性基を有さないウレタン樹脂を使用する場合、前記方法で得られたウレタン樹脂と後述する界面活性剤等とを攪拌条件下にて混合した後、水性媒体(B)を投入することで乳化分散、もしくは乳化機等を用い強制的に乳化分散することによってウレタン樹脂(A)の水分散体を得る方法。
【0091】
前記ウレタン樹脂(A)の製造を、無溶剤下ではなく有機溶剤存在下で行った場合には、前記方法1及び2によってウレタン樹脂(A)の水分散体を製造した後、必要に応じて前記有機溶剤を蒸留等の方法で除去することが好ましい。
【0092】
前記ウレタン樹脂(A)の溶媒となる前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0093】
上記方法1及び2のいずれの場合も、ウレタン樹脂(A)を水性媒体(B)中に水分散する際に、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用することができる。
【0094】
このようにして得られたウレタン樹脂(A)は、水性媒体中にウレタン樹脂(A)が分散された状態となっている。捺染剤として調整する際には、このように、ウレタン樹脂(A)が水性媒体中に分散された水分散体となっていると、配合させやすく好ましい。このとき、前記水性媒体は、前記ウレタン樹脂(A)の組成物の全量に対して、30質量%〜90質量%の範囲で含まれることが、水分散安定性に優れた捺染剤を得るうえで好ましい。
【0095】
前記ウレタン樹脂(A)の水分散体の粒径は、インクジェットインクの吐出性の観点から5nm〜1000nmの範囲であることが好ましく、10nm〜400nmの範囲であることがなお好ましい。
【0096】
前記ウレタン樹脂(A)は、捺染剤全量に対して0.3質量%〜12質量%の範囲で使用することが一般的である。0.6質量%〜9質量%が好ましく、さらには、1.0質量%〜6質量%が最も好ましい。
【0097】
前記ウレタン樹脂(A)と顔料との比率は、通常スクリーン記録用インクやインクジェット記録用インクに使用する範囲の比率でよく、例えばウレタン樹脂と顔料との比率=1:3〜8:1の範囲が好ましい。
堅牢度は前述の通り使用するウレタン樹脂の分子量が寄与し、高い分子量であるほど高い堅牢度を与えるが、この他に、バインダーの使用量も堅牢度に寄与する。従って、より高い堅牢度を得るためには、バインダーの使用量は多いほうが好ましく、本発明のウレタン樹脂においては、例えば1:1〜8:1であると、より高い堅牢度を与える。但し高分子量のバインダー樹脂の過剰な使用は、高粘度化につながるため、インクジェット記録用インクに適用する場合は、粘度とのバランスを考慮してバインダーの使用量を決定することが好ましい。
【0098】
(湿潤剤)
本発明の捺染剤は、尿素、尿素誘導体、ピロリドン誘導体、後述の一般式(1)で表されるアルキルグリシン、及び糖類から選ばれる少なくとも1種を含有して構成される。湿潤剤は固体湿潤剤であることが好ましい。本発明において、湿潤剤とは保水機能を有し、25℃で固体の水溶性化合物を意味する。
【0099】
前記尿素誘導体の例としては、尿素の窒素上の水素をアルキル基、もしくはアルカノールで置換した化合物、チオ尿素、チオ尿素の窒素上の水素をアルキル基、もしくはアルカノールで置換した化合物等が挙げられ、具体的には、N−メチル尿素、N,N−ジメチル尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシブチル尿素、エチレンチオ尿素、又はジエチルチオ尿素等が挙げられる。
【0100】
前記ピロリドン誘導体の例としては、ピロリドンの窒素上の水素をアルキル基、又はアルカノールで置換した化合物が挙げられ、具体的には、2−メチルピロリドン、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−ラウリルピロリドン、又はβ−ヒドロキシエチルピロリドン等が挙げられる。
【0101】
前記アルキルグリシンは、一般式(1)で表される。
【0102】
【化1】

【0103】
一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に直鎖又は分岐の炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。
アルキルグリシンの例としては、N−メチルグリシン、N,N−ジメチルグリシン、N,N,N−トリメチルグリシン、N−エチル−N−メチルグリシン、N,N−ジエチルグリシン、N−イソプロピル−N−メチルグリシン、N−イソプロピル−N−エチルグリシン、N,N−ジイソプロプルグリシン、N,N−ジブチルグリシン、N−ブチル−N−メチルグリシン、又はN−ブチル−N−エチルグリシンなどが挙げられる。
【0104】
前記糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類があげられ、具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース、などがあげられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、及びセルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
【0105】
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール)、及び酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸、アミノ酸、チオ糖など)があげられる。特に糖アルコールが好ましく、中でもマルチトール、ソルビトール、イノシトール又はキシリトールが好ましい。
【0106】
これらの湿潤剤は、水素結合性が高いため、インクの乾燥防止効果が高い。そのため、これらを含むインクは、低湿環境下であっても水分を蒸発し難く、再溶解性に優れると考えられる。
【0107】
本発明の捺染剤における湿潤剤の含有量は、インク全質量に対し、0.5〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。保湿剤が0.5質量%より少ない場合は、充分な再溶解性が得られない傾向にある。また、逆に20質量%よりも多い場合は、印捺物の堅牢度が低下する傾向にある。
【0108】
本発明においては、捺染剤中のバインダー樹脂であるウレタン樹脂(A)と湿潤剤の比率(バインダー樹脂の質量/湿潤剤の質量)が0.01〜2.0であることが好ましく、0.1〜2.0であることがより好ましく、0.1〜1.0であることが最も好ましい。
【0109】
(捺染剤の製造方法)
本発明の捺染剤は、前記顔料の高濃度水分散液(顔料ペースト)を作成し、それを水溶性溶媒及び/または水で希釈し、前記ウレタン樹脂(A)、必要に応じてその他の添加剤を添加してた水性顔料組成物として調製することができる。
【0110】
前記顔料を前記水溶性溶媒及び/または水に分散させて顔料ペーストを得る方法は特に限定はなく、公知の分散方法を使用することが好ましい。この時使用する分散剤も、公知の顔料分散剤を使用して水に分散してもよいし、界面活性剤を使用してもよい。
前記顔料分散剤としては水性樹脂がよく、好ましい例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、及び該水性樹脂の塩が挙げられる。
前記共重合体の塩を形成するための化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化アルカリ金属類、およびジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどが挙げられる。これらの塩を形成するための化合物の使用量は、前記共重合体の中和当量以上であることが好ましい。
また市販品を使用することも勿論可能である。市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製品)のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン(株)のDisperbykシリーズ、BYK−シリーズ、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のEFKAシリーズ等を使用できる。
【0111】
また、分散方法としては、例えば以下(1)〜(3)を示すことができる。
(1)顔料分散剤及び水を含有する水性媒体に、顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を該水性媒体中に分散させることにより、顔料ペーストを調製する方法。
(2)顔料、及び顔料分散剤を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を、水を含む水性媒体中に添加し、攪拌・分散装置を用いて顔料ペーストを調製する方法。
(3)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し顔料ペーストを調製する方法。
【0112】
混練機としては、特に限定されることなく、例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどがあげられる。
また、攪拌・分散装置としても特に限定されることなく、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を挙げられる。
これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
前記顔料ペーストに占める顔料量は5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。顔料量が5質量%より少ない場合は、前記顔料ペーストから調製した水性インクの着色が不充分であり、充分な画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に60質量%よりも多い場合は、顔料ペーストにおいて顔料の分散安定性が低下する傾向がある。
【0114】
また、粗大粒子が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製前後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去することが好ましい。
【0115】
分散工程の後に、イオン交換処理や限外処理による不純物除去工程を経て、その後に後処理を行っても良い。イオン交換処理によって、カチオン、アニオンといったイオン性物質(2価の金属イオン等)を除去することができ、限外処理によって、不純物溶解物質(顔料合成時の残留物質、分散液組成中の過剰成分、有機顔料に吸着していない樹脂、混入異物等)を除去することができる。イオン交換処理は、公知のイオン交換樹脂を用いる。限外処理は、公知の限外ろ過膜を用い、通常タイプ又は2倍能力アップタイプのいずれでもよい。
【0116】
前記顔料ペーストを作成した後、適宜希釈し必要に応じた添加剤を添加して、目的に応じた捺染剤を得る。本発明の捺染剤は捺染剤として好ましく使用できる。この場合前記捺染剤の形態は、着色したい繊維に応じて浸染、捺染など好ましい処理方法に合わせて任意に選択される。例えば用途が、捺染用に適したスクリーン記録用インクでは、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を使用し、最終的な顔料濃度は1〜10質量%の範囲が好ましい。このような場合、前記添加剤は、前記のバインダー樹脂と一緒に添加することが好ましい。
【0117】
また、例えば用途が浸染用の捺染剤の場合は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等とバインダー樹脂を使用し、最終的な顔料濃度は1〜10質量%の範囲が好ましい。また粘度は1mPa・s〜100mPa・sの範囲で装置に合わせて任意に設定される。また、例えば、用途が、スプレー捺染用の捺染剤では添加剤として、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等とバインダー樹脂を使用し、最終的な顔料濃度は1〜10質量%の範囲が好ましい。また粘度は1mPa・s〜100mPa・sの範囲で装置に合わせて任意に設定される。
【0118】
また、例えば用途が、捺染用に適したインクジェット記録用インクでは、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を使用し、最終的な顔料濃度は、充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での顔料の分散安定性を確保するために、1〜20質量%であることが好ましい。このような場合、前記添加剤は、前記バインダー樹脂と一緒に添加することが好ましい。また希釈率は、前記界面活性剤水溶液の濃度を鑑みた上で、必要濃度に希釈し、その後超音波処理を行うことで、インクジェット記録用インクを調整することができる。
【0119】
防腐剤または防かび剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(アーチケミカルズ社のプロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルLV、プロキセルAQ、プロキセルBD20、プロキセルDL)等が挙げられる。
【0120】
粘度調整剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、スターチ等の主として水溶性の天然あるいは合成高分子物が挙げられる。
【0121】
pH調整剤の具体例としては、コリジン、イミダゾール、燐酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ほう酸等が挙げられる。
【0122】
キレート化剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ三酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、イミノ二酢酸、ウラミル二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸及びこれらの塩(水和物を含む)等があげられる。
【0123】
酸化防止剤または紫外線吸収剤の具体例としては、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類等、L−アスコルビン酸およびその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024等、あるいはランタニドの酸化物等が挙げられる。
【0124】
前記希釈、添加剤の添加方法は、特に限定なく従来一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、前記顔料ペーストと、バインダー樹脂、添加剤として界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤または紫外線吸収剤、防腐剤等、希釈率に応じた溶媒を混合した後、各種分散機や攪拌機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、パールミル等を利用して分散・混合する方法が挙げられる。必要に応じてこの後に更に各種添加剤を添加してもよい。
【0125】
また、前記添加剤と、顔料や顔料分散剤、前記ウレタン樹脂とを安定に溶解または分散させて保持する目的で、水溶性有機溶媒をさらに添加してもよい。
【0126】
前期水溶性溶媒としては、例えば、1価又は多価のアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、グリコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類,エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類および多価アルコールアラルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノンアセトン、酢酸エチル、N−メチルー2−ピロリドン、m−ブチロラクトン、グリセリンのポリオキシアルキレン付加物、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミドプロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。これらは、単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
【0127】
また、本発明の捺染剤は、その浸透性を制御するため、界面活性剤が含まれていてもよい。その際使用する界面活性剤は、本発明の捺染剤に存在する他の成分と相溶性のよいものが好ましい。また、浸透性が高く安定な界面活性剤が好ましい。
【0128】
具体的には、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤の利用が好ましい。
両性界面活性剤の好ましい例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0129】
非イオン界面活性剤の好ましい例としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられ、特に、アセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は捺染剤に添加された場合、発泡性が少なく、また優れた消泡性機能を有するので好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどが挙げられるが、市販品で入手も可能で、例えば、エアープロダクツ社(英国)のサーフィノール61、82、104、465,485、TGや、日信化学工業株式会社のオルフィンSTG、オルフィンE1010等が挙げられる。
【0130】
界面活性剤の添加量は、好ましくは、前記捺染剤の全量に対して、0.01重量%以上10重量%以下であり、より好ましい上限値は5.0重量%であり、好ましい下限値は0.5重量%である。
【0131】
さらに、本発明の捺染剤をインクジェット記録法に適用する場合は、その表面張力を20mN/m以上60mN/m以下と調整することが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、20mN/m以上40mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると非吸収基材でのはじきが発生し易い傾向がある。 また粘度は、1.2mPa・s以上20.0 mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2.0 mPa・s以上 15.0mPa・s未満、更に好ましくは3.0mPa・s以上 12.0 mPa・s未満である。粘度がこの範囲において、優れた吐出性と、長期間にわたる良好な噴射性の維持が達成できる。表面張力は前記界面活性剤により適宜調整可能である。
【0132】
(被着体)
本発明の製造方法で得た捺染剤を各種インクとして使用する際は、紙等の汎用の被着体はもちろん、布帛、人工皮革、天然皮革等に対しても印字することができる。特に布帛に対しての印捺に特に優れる。
本発明で使用する布帛は、繊維で構成される媒体であることが好ましく、織物の他不織布でもよい。素材は綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等の任意の天然・合成繊維からなる布帛を用いることができる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において部および%は質量部を示す。
【0134】
<ポリエステルポリオールの調整>
(合成例1)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、アジピン酸69.7質量部、ブタンジオール49.8質量部及びジブチル錫オキサイド0.05質量部を仕込み180〜230℃24時間エステル化した後、酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、脂肪族ポリエステルポリオール(PES−1)〔酸価0.3、水酸基価56.1、芳香族環式濃度0mol/Kg〕を得た。
【0135】
なお、前記酸価は、水酸化カリウム法にしたがって滴定することにより産出した値であり、水酸基価は、JISK1557−1記載に準拠した方法によって測定した値である。
【0136】
(合成例2)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸42.1質量部、セバシン酸21.4質量部、アジピン酸9.3質量部、エチレングリコール7.7質量部、ネオペンチルグリコール25.8質量部、ブタンジオール11.2質量部、及びジブチル錫オキサイド0.05質量部を仕込み180〜230℃24時間エステル化した後、酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルポリオール(PES−2)〔酸価0.3、水酸基価56.1、芳香族環式濃度2.53mol/kg〕を得た。
【0137】
(合成例3)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸33.0部、テレフタル酸33.0部、ブタンジオール23.5部、ネオペンチルグリコール27.2部及びジブチル錫オキサイド0.04部を仕込み180〜230℃で酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルポリオール(PES−3)〔酸価0.2、水酸基価112.2、芳香族環式濃度3.98mol/Kg〕を得た。
【0138】
【表1】
芳香族環式濃度(モル/kg):合成したPES−1〜PES−3に含まれる芳香族環式濃度である。
【0139】
<ポリエーテルエステルポリオールの調製>
(合成例4)
4つ口フラスコに、ジエチレングリコール336質量部、SEO−2(ビスフェノールSのエチレンオキサイド2モル付加物、日華化学株式会社製)1039質量部、無水フタル酸626質量部、テトラブチルチタネート0.06質量部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエーテルエステルポリオール(PES−4)は、常温で黄色固体であり、酸価が9.23、水酸基価が107.7であった。
【0140】
(合成例5)
4つ口フラスコに、ニューポール−BPE−20T(ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物、三洋化成工業株式会社製)2167質量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル473質量部、テレフタル酸ジメチル301質量部、無水フタル酸15質量部、テトラブチルチタネート0.06質量部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエーテルエステルポリオール(PES−5)は、常温で黄色固体であり、酸価が0.08、水酸基価が102.0であった。
【0141】
(合成例6)
4つ口フラスコに、ニューポール−BPE−20T 3009質量部、イソフタル酸369質量部、テレフタル酸ジメチル540質量部、無水フタル酸82質量部、テトラブチルチタネート0.06質量部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエーテルエステルポリオール(PES−6)は、常温で淡黄色固体であり、酸価が0.05、水酸基価が111.6であった。
【0142】
(合成例7)
4つ口フラスコに、テレフタル酸830質量部、イソフタル酸830質量部、エチレングリコール374質量部、ネオペンチルグリコール598質量部、テトラブチルチタネート0.06質量部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(PES−7)は、常温で淡黄色固体であり、酸価が0.2、水酸基価が74.5であった。
【0143】
【表2】
芳香族環式濃度(モル/kg):合成したPES−4〜PES−7に含まれる芳香族環式濃度である。
【0144】
表2中の略称について、以下に説明する。
ポリエーテルポリオール1;「SEO−2」、日華化学株式会社製、ビスフェノールSのエチレンオキサイド2モル付加物
ポリエーテルポリオール2;「ニューポール−BPE−20T」、三洋化成工業株式会社製、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物
「芳香族環構造の含有率」;ポリエーテルエステルポリオール全体に対する芳香族環構造の質量割合であり、原料の仕込み量に基づいて算出した。
【0145】
<ウレタン樹脂の合成>
(製造例1)
反応容器に合成例1で得られた脂肪族ポリエステルポリオール(PES−1)100質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン94.1質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2−ジメチロールプロピオン酸8.8質量部、1,4−ブタンジオール4.2質量部を加え、次いでトリレンジイソシアネート28.1質量部、ジブチル錫ジラウレート0.08質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、ノルマルブタノール0.4質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、親水性基を有するウレタン樹脂の不揮発分60質量%溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン6.7質量部及び水710質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%の樹脂組成物(PUD−1)を得た。
【0146】
(製造例2)
反応容器に合成例2で得られた芳香族ポリエステルポリオール(PES−2)100質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン94.1質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2−ジメチロールプロピオン酸8.8質量部、1,4−ブタンジオール4.2質量部を加え、次いでトリレンジイソシアネート28.1質量部、ジブチル錫ジラウレート0.08質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、ノルマルブタノール0.4質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、親水性基を有するウレタン樹脂の不揮発分60質量%溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン6.7質量部及び水710質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%の樹脂組成物(PUD−2)を得た。
【0147】
(製造例3)
反応容器に合成例3で得られた芳香族ポリエステルポリオール(PES−3)100質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン91.0質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2−ジメチロールプロピオン酸8.1質量部を加え、次いでトリレンジイソシアネート28.4質量部、ジブチル錫ジラウレート0.08質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、ノルマルブタノール0.4質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、親水性基を有するウレタン樹脂の不揮発分60質量%溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、25%アンモニア水溶液を4.1質量部及び水質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水710質量部を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%の樹脂組成物(PUD−3)を得た。
【0148】
(製造例4)
反応容器に合成例1で得られた脂肪族ポリエステルポリオール(PES−1)50質量部と反応容器に合成例2で得られた芳香族ポリエステルポリオール(PES−2)50質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン94.1質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2−ジメチロールプロピオン酸8.8質量部、1,4−ブタンジオール4.2質量部を加え、次いでトリレンジイソシアネート28.1質量部、ジブチル錫ジラウレート0.08質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、ノルマルブタノール0.4質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、親水性基を有するウレタン樹脂の不揮発分60質量%溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン6.7質量部及び水710質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%の樹脂組成物(PUD−4)を得た。
【0149】
【表3】
芳香族環式濃度(モル/kg):合成したPUD−1〜PUD−4に含まれる芳香族環式濃度である。
【0150】
(製造例5)
反応容器に合成例1で得られた芳香族ポリエーテルエステルポリオール(PES−4)の1000質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン900質量部を加え十分に攪拌し溶解させ、2,2’−ジメチロールプロピオン酸80質量部とネオペンチルグリコール5部を加え、次いでヘキサメチレンジイソシアネート284質量部を加えて75℃で8時間反応した。次いで、50℃まで冷却し、トリエチルアミン61質量部加えて中和した後、水7,000質量部を加えて水溶化した。得られた透明な反応生成物を減圧下、40℃〜60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行うことによって、不揮発分20質量%の安定な水性ウレタン樹脂組成物(PUD−5)を得た。
【0151】
(製造例6)
前記ポリエーテルエステルポリオールPES−4の代わりに、ポリエーテルエステルポリオールPES−5を使用し、かつ、ヘキサメチレンジイソシアネートの使用量を262質量部に変更すること以外は製造例5と同様の方法によって、不揮発分20質量%の安定な水性ウレタン樹脂組成物(PUD−6)を得た。
【0152】
(製造例7)
前記ポリエーテルエステルポリオールPES−4の代わりに、ポリエーテルエステルポリオールPES−6を使用し、かつ、ヘキサメチレンジイソシアネートの使用量を276質量部に変更すること以外は製造例5と同様の方法によって、不揮発分20質量%の安定な水性ウレタン樹脂組成物(PUD−7)を得た。
【0153】
(製造例8)
前記ポリエーテルエステルポリオールPES−4の代わりに、ポリエーテルエステルポリオールPES−7を400質量部とポリエステルポリオールPES−5を600質量部使用し、かつ、ヘキサメチレンジイソシアネートの使用量を237質量部に変更すること以外は、製造例5と同様の方法によって、不揮発分20質量%の安定な水性ウレタン樹脂組成物(PUD−8)を得た。
【0154】
(製造例9)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリオキシテトラメチレングリコール(重量平均分子量:2,000)1000質量部、2.2’−ジメチロールプロピオン酸78.7質量部、酢酸エチル884.3質量部を加え、均一に混合した後、ヘキサメチレンジイソシアネート237.7質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で約4時間反応させることによって、酢酸エチル溶液を得た。
次いで、前記方法で得られたウレタンプレポリマーの酢酸エチル溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミン68.3質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水2849.1質量部を加え、次いで、80質量%水加ヒドラジン(ヒドラジンの一水和物、全体に対して80質量%がヒドラジン)18.4質量部を加え反応させた。
反応終了後、酢酸エチルを減圧下留去し、その不揮発分が35質量%となるようイオン交換水を加えることによって組成物(I)を得た。
【0155】
【表4】
芳香族環式濃度(モル/kg):合成したPUD−5〜PUD−9に含まれる芳香族環式濃度である。
【0156】
<顔料ペーストの作成>
スチレン−マレイン酸ハーフエステル((株)岐阜セラック製造所製の製品名「DSS−25」、酸価:116mgKOH/g、重量平均分子量:42,000、SP:11.0)15部、水酸化カリウム1.57部(スチレン−マレイン酸ハーフエステル中の酸性基の総量に対して0.90当量に相当する量)及び水83.43部を、撹拌機を用いて、70℃で混合撹拌することにより、半透明の樹脂分散液を得た。前記樹脂分散液40部及び銅フタロシアニン顔料(DIC社製の製品名FASTOGEN BLUE 5327 WET)20部(固形分換算)、水40部を混合撹拌し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで6時間摩砕した。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、ミルベースを得た。上記で得たミルベースを混合撹拌し、出力600Wで超音波ホモジナイザーを用いて、3時間細分化処理して、顔料ペーストを得た。
【0157】
<実施例 捺染剤の調製>
前記顔料ペースト20部と、溶媒(水、水溶性溶媒、油溶性溶媒等)、ウレタン樹脂としてPUD−1 17.4部、尿素(もしくはヒドロキシエチル尿素) 0.5部(もしくは10部)添加して、実施例の捺染剤を得た。各捺染剤の組成は別表に示した。各例の添加時に分散攪拌機(特殊機化工業(株)製のTKホモディスパー L)にて十分攪拌した。
【0158】
<比較例 捺染剤の調製>
前記顔料ペースト20部と、溶媒(水、水溶性溶媒、油溶性溶媒等)、ウレタン樹脂としてPUD−5 17.4部、尿素(もしくはヒドロキシエチル尿素)0.5部(もしくは5部)を添加して、実施例の捺染剤を得た。各捺染剤の組成は別表に示した。各例の添加時に分散攪拌機(特殊機化工業(株)製のTKホモディスパー L)にて十分攪拌した。
【0159】
<再溶解性の評価>
得られた実施例及び比較例の捺染剤30μLをスライドガラス上に塗布し、実験室温で50℃にて10分間放置し、試験板を作製した。その後、室温の水に60秒間浸漬し、再び溶解するかを目視で確認した。30秒間浸漬し、取り出した後にスライドガラス上に着色成分が確認されず、かつ浸漬液に粒状の未溶解分が確認されなかったものを「◎」、スライドガラスもしくは浸漬液に若干の溶け残りが確認されたものを「○」、スライドガラスもしくは浸漬液に明らかに未溶解物があるものを「△」、スライドガラスもしくは浸漬液に著しく未溶解物があるものを「×」と判定した。 なお、本実験において「良好」と判定のでる捺染剤は、スクリーン記録法で再溶解性を示し、あるいはインクジェット記録法において、印字の長期休止後のクリーニング操作で、容易に吐出可能となる。
【0160】
<保存安定性の評価>
実施例、及び比較例で得た捺染剤20mlをガラス容器に密閉し、50℃で4週間静置した後、次のように評価した。
A:初期粘度からの変化率±10%未満
B:初期粘度からの変化率±10〜15%未満
C:初期粘度からの変化率±15%以上
【0161】
実施例及び比較例の捺染剤の組成、各種評価結果を表5〜8に示す。なお表中の配合の単位は部である。
【0162】
【表5】
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
【表8】
【0166】
表5〜8の結果から、本発明(実施例)の、ポリエステル構造を有するウレタン樹脂(A)と湿潤剤を使用した捺染剤は、いずれも保存安定性および再溶解性は良好であった。一方ポリエステル構造を有さないウレタン樹脂を使用した比較例1〜2は、共に不良であった。